(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ノンフライ麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20221018BHJP
【FI】
A23L7/109 B
(21)【出願番号】P 2022083837
(22)【出願日】2022-05-23
【審査請求日】2022-05-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522203237
【氏名又は名称】橋本 久信
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】橋本 久信
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-033647(JP,A)
【文献】特開2008-161174(JP,A)
【文献】特開平09-065844(JP,A)
【文献】特開昭62-155056(JP,A)
【文献】特開2005-110562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾麺をα化してα化麺を取得するα化工程と、
前記α化麺を冷凍する冷凍工程と、
冷凍した前記α化麺を風乾する風乾工程と、を有し、
前記冷凍工程は、風速0.1~2.0m/秒の空気に前記α化麺を曝しながら、前記α化麺の温度を-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持することを含
み、
前記α化工程は、2か月以上熟成した乾麺をα化してα化麺を取得する工程であることを特徴とする、ノンフライ麺の製造方法。
【請求項2】
前記冷凍工程において、前記α化麺に曝される空気の風速が0.1~1.5m/秒であること特徴とする、請求項1に記載のノンフライ麺の製造方法。
【請求項3】
前記冷凍工程において、前記α化麺の温度が-5℃超0℃以下の温度帯で維持される時間が36時間以上であることを特徴とする、請求項2に記載のノンフライ麺の製造方法。
【請求項4】
前記冷凍工程は、麺塊成型用トレイに形成された複数の凹部それぞれに、所定量ずつ充填されたα化麺を冷凍する工程であることを特徴とする、請求項1に記載のノンフライ麺の製造方法。
【請求項5】
前記複数の凹部が、前記麺塊成型用トレイの外周に沿って配列する複数の外側凹部と、前記複数の外側凹部に囲まれた少なくとも一つの中央凹部とからなることを特徴とする、請求項4に記載のノンフライ麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンフライ麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺は、お湯で数分間茹でたり、お湯を注いで数分間おいておくだけで喫食できるようにした加工麺である。即席麺は、調理の簡便さや保存性の高さなどから、日本のみならず、世界各国で製造及び販売されている。
【0003】
即席麺は、生麺又は乾麺をα化した後、必要に応じて冷凍した上で、α化麺から水分を除去することで製造されるが、α化麺から水分を除去する乾燥方法の違いによって3種に分類することができる。具体的には、即席麺は、フライ麺、ノンフライ麺、フリーズドライ麺の3種に分類することができる。
【0004】
フライ麺は、油で揚げることでα化麺から水分を除去した即席麺(油揚げ即席麺)であり、例えば、特許文献1に記載されている。ノンフライ麺は、風乾することでα化麺から水分を除去した即席麺(風乾即席麺)であり、例えば、特許文献2に記載されている。フリーズドライ麺は、真空凍結乾燥によりα化麺から水分を除去した即席麺(凍結乾燥即席麺)であり、例えば、特許文献3に記載されている。
【0005】
ノンフライ麺は、フライ麺やフリーズドライ麺と比較して、湯戻ししたときに生麺(α化した生麺)により近い粘弾性を感じることができ、また、フライ麺のように水分の除去に油を用いていないことから、カロリーを低く抑えることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-176881号公報
【文献】特開2001-333716号公報
【文献】特開2013-048592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ノンフライ麺は、お湯により喫食可能な麺に湯戻しするにあたり時間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明は、湯戻りしやすいノンフライ麺の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]生麺又は乾麺をα化してα化麺を取得するα化工程と、前記α化麺を冷凍する冷凍工程と、冷凍した前記α化麺を風乾する風乾工程と、を有し、前記冷凍工程は、風速0.1~2.0m/秒の空気に前記α化麺を曝しながら、前記α化麺を-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持することを含むことを特徴とする、ノンフライ麺の製造方法。
[2] 前記冷凍工程において、前記α化麺に曝される空気の風速が0.1~1.5m/秒であること特徴とする、[1]に記載のノンフライ麺の製造方法。
[3] 前記冷凍工程において、前記α化麺の温度が-5℃超0℃以下の温度帯で維持される時間が36時間以上であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のノンフライ麺の製造方法。
[4]前記冷凍工程は、麺塊成型用トレイに形成された複数の凹部それぞれに、所定量ずつ充填されたα化麺を冷凍する工程であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一つに記載のノンフライ麺の製造方法。
[5]前記複数の凹部が、前記麺塊成型用トレイの外周に沿って配列する複数の外側凹部と、前記複数の外側凹部に囲まれた少なくとも一つの中央凹部とからなることを特徴とする、[4]に記載のノンフライ麺の製造方法。
[6]前記α化工程は、2か月以上熟成した乾麺をα化してα化麺を取得する工程であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか一つに記載のノンフライ麺の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湯戻りしやすいノンフライ麺の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1はノンフライ麺の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は麺塊成型用トレイT1を示す図である。
【
図3】
図3は麺塊成型用トレイT1を積み重ねた図である。
【
図4】
図4は麺塊成型用トレイT2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態は、ノンフライ麺の製造方法に関する。ノンフライ麺は、生麺又は乾麺をα化して得られる麺(以下、「α化麺」という)から水分を除去することで製造される即席麺のうち、風乾することでα化麺から水分を除去した風乾即席麺である。本実施形態の製造方法で製造されるノンフライ麺の種類としては、例えば、そうめん、中華麺、うどん、そば、ほうとう、パスタを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本実施形態のノンフライ麺の製造方法は、
図1に示すように、α化工程S101と、冷凍工程S102と、風乾工程S103を有する。
【0015】
α化工程S101は、生麺又は乾麺をα化してα化麺を取得する工程である。
【0016】
まず、α化工程S101で用いることができる生麺及び乾麺のうち、生麺について説明する。α化工程S101で用いることができる生麺は、麺用原料と練水の混練物である麺生地を麺線化して得られる麺である。
【0017】
麺生地の原料である麺用原料は、製造しようとするノンフライ麺の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、麺用原料の主原料としては、小麦粉、そば粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉などの穀粉や、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉などの澱粉を用いることができる。また、麺用原料の副原料としては、例えば、食塩、卵(卵粉)、増粘剤、調味料、油脂類、レシチン、無機塩類(炭酸塩、リン酸塩)、エチルアルコール、かん粉、ソルビット、活性グルテン、大豆蛋白、酵素剤、色素を用いることができる。各原料の配合割合は、製造しようとする即席麺の種類に応じて適宜選択することができ、公知の配合割合としてもよい。
【0018】
麺生地は、上述した麺用原料と練水を混練して得られる混錬物である。麺用原料と練水の混錬は、常法に従って行えばよく、特に限定されるものではないが、例えば、得られる混合物がそぼろ状になるまで、麺用原料と練水とを混錬すればよい。麺用原料と練水の混錬には、例えば、バッチミキサー、フロージェットミキサー、真空ミキサーを用いてもよい。
【0019】
麺生地の麺線化は、常法に従って行えばよく、例えば、塊にした麺生地をエクストルーダ等で押し出して麺線化する方法や、塊にした麺生地をロールによって圧延した後、切刃と呼ばれる切出しロールにより切出して麺線化する方法や、塊にした麺生地を所定の太さになるまで伸ばした後、これを所定の長さに切出して麺線化する方法を挙げることができる。なお、麺線の太さは、製造しようとする即席麺の種類に応じて適宜選択することができる。
【0020】
次に、α化工程S101で用いることができる生麺及び乾麺のうち、乾麺について説明する。α化工程S101で用いることができる乾麺は、上述した生麺から水分を除去した乾燥麺(α化されていない乾燥麺)である。生麺からの水分の除去は、常法に従って行えばよく、例えば、生麺を空気に晒す風乾処理を用いることができる。風乾処理は、生麺から水分を除去できれば、加熱・冷却した空気で行ってもよく、加熱・冷却していない常温の空気で行ってもよい。例えば、20~40℃で風乾処理することができる。風乾処理の時間は、生麺から水分を除去できる時間であればよく特に限定されないが、例えば、10~24時間とすることができる。
【0021】
α化工程S101において乾麺を用いる場合、2か月以上熟成した乾麺を用いることが好ましい。2か月以上熟成した乾麺を用いることで、製造されるノンフライ麺がより確実に湯戻りしやすくなる。なお、本明細書において、乾麺の熟成は、腐敗しない環境に乾麺を所定期間放置しておくこと指す。乾麺の熟成環境は、乾麺が腐敗しない環境であればよいが、温度30~40℃、湿度(相対湿度)60%以上、及び暗所の環境であることが好ましい。前述した環境で乾麺を熟成させると、α化処理中に麺からデンプンが溶けだしにくくなり(糊化しにくくなり)、後述する冷凍工程S102において麺同士が接着しにくくなる。その結果、風乾工程S103を経て得られるノンフライ麺は、湯戻しの際に、よりほぐれやすくなり、より確実に湯戻りしやすくなる。また、本明細書において、熟成期間は、乾麺を得てから(生麺の水分の除去が完了してから)乾麺が腐敗しない環境に乾麺を放置しておいた期間を指す。
【0022】
α化工程S101では、上述した方法で得ることができる生麺又は乾麺をα化する。生麺又は乾麺のα化は、生麺又は乾麺に含まれるデンプンをα化する処理であり、例えば、生麺又は乾麺をお湯で煮る処理や、生麺又は乾麺を蒸気で蒸す処理を用いることができる。処理条件は、生麺又は乾麺に含まれるデンプンがα化されるものであればよく、従来公知の処理条件を用いることができるが、例えば、95℃~100℃のお湯で3~10分間煮る条件や、100℃~200℃の蒸気で3~10分間蒸す条件を用いることができる。当該技術分野では、そうめん類などの細い麺は短く、うどん類などの太い麺は長く茹でることが一般的である。
【0023】
α化工程S101で得られたα化麺は、α化直後に後述する冷凍工程S102に用いられてもよいが、霜の形成を抑制したり、細菌の繁殖を抑制したりする観点からは、粗熱を取り除いてから(例えば、α化麺が10~20℃になってから)後述する冷凍工程S102に用いられることが好ましい。なお、粗熱を取り除く方法としては、α化麺を水(例えば、10℃~20℃の水)に浸漬する方法を挙げることができる。
【0024】
冷凍工程S102は、α化麺を冷凍する処理であり、風速0.1~2.0m/秒の空気にα化麺を曝しながら、α化麺の温度を-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持することを含む工程である。
【0025】
冷凍工程S102におけるα化麺の冷凍は、風速0.1~2.0m/秒の空気にα化麺を曝しながら、α化麺の温度を-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持することができるものであれば、どのような冷凍機を用いて行われてもよいが、例えば、エアブラスト冷凍機を用いることができる。エアブラスト冷凍機は、冷却した空気(冷気)で食品を冷凍する装置であり、例えば、冷凍室内の冷気で室内に放置(載置)した食品を冷凍するバッチ式エアブラスト冷凍機や、内部の空気を冷却したトンネルに食品が通過させることで通過する食品を冷凍するトンネル式エアブラスト冷凍機が含まれる。α化麺が曝される空気の風速が調整しやすいことから、エアブラスト冷凍機として、バッチ式エアブラスト冷凍機を用いることが好ましい。
【0026】
冷凍工程S102では、α化麺は、0.1~2.0m/秒の風速の空気に晒される。α化麺が曝される空気(α化麺に接する空気)の風速は、0.1~2.0m/秒であればよいが、より確実に湯戻りしやすいノンフライ麺を製造する観点からは、0.1~1.5m/秒であることが好ましく、0.1~1.0m/秒であることがより好ましい。α化麺が曝される空気(α化麺に接する空気)の風速が0.1~2.0m/秒であれば、α化麺が曝されない空気(α化麺に接しない空気)の風速については特に限定されるものではない。α化麺が曝される空気の風速は、例えば、冷凍機に設けられる送風機により調整することができる。なお、α化麺が曝される空気(α化麺に接する空気)の風速は、α化麺から10cmの離れた位置の風速の30秒間の平均値を指し、風速の測定には風速計(例えば、エリックヒル社製の風力計HT625C)を用いることができる。
【0027】
冷凍工程S102では、風速0.1~2.0m/秒の空気に晒されながらα化麺が冷凍されるが、冷凍過程におけるα化麺の温度は、少なくとも、-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持される。-5℃超0℃以下の温度帯で維持する時間は、20時間以上であればよいが、より確実に湯戻りしやすいノンフライ麺を製造する観点からは、36時間以上であることが好ましく、48時間以上であることがより好ましい。なお、-5℃超0℃以下の温度帯で維持する時間の上限値は、特に限定されるものではないが、例えば、74時間以下とすることができる。
【0028】
冷凍工程S102におけるα化麺の冷凍は、α化麺の温度が-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持されれば、-5℃超0℃以下の温度帯のまま終了させてもよいが、より確実に湯戻りしやすいノンフライ麺を製造する観点からは、α化麺の温度が-5℃以下になってから冷凍処理を終了することが好ましい。
【0029】
なお、冷凍工程S102で冷凍するα化麺(α化工程S101で得られたα化麺(0℃超))の温度を0℃まで低下させる時間は、特に限定されるものではないが、冷凍過程でα化麺が腐敗することを抑制する観点からは、24時間以下であることが好ましく、16時間以下であることがより好ましい。
【0030】
冷凍工程S102におけるα化麺の温度や、α化麺の温度が所定温度帯(-5℃超0℃以下)で維持される時間は、α化麺が曝される空気の温度や風速によって調整することができる。α化麺が曝される空気の温度が高くなったり、α化麺が曝される空気の風速が低くなったりするほど、α化麺の温度が低下しにくくなり、α化麺の温度が所定温度帯(-5℃超0℃以下)で維持される時間が長くなる。一方、α化麺が曝される空気の温度が低くなったり、α化麺が曝される空気の風速が高くなったりするほど、α化麺の温度が低下しやすくなり、α化麺の温度が所定温度帯(-5℃超0℃以下)で維持される時間が短くなる。冷凍工程S102では、これらの関係を考慮して、α化麺の温度が-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持されるように、α化麺が曝される空気の温度及び風速を調整すればよい。α化麺が曝される空気の具体的な温度や風速は、冷凍しようとするα化麺の量によっても異なるが、例えば、風速が0.1~2.0m/秒の範囲内であり、温度が-10℃~-5℃の範囲内であることが挙げられる。
【0031】
なお、冷凍工程S102では、α化麺が曝される空気の風速は0.1~2.0m/秒である。このため、冷凍工程S102において、α化麺が曝される空気の風速は、0.1~2.0m/秒の範囲内で調整する。また、α化麺は、一般的に0℃以下で凍結する。このため、冷凍工程S102において、α化麺が曝される空気の温度は、0℃以下の範囲内で調整する。冷凍工程S102において、α化麺が曝される空気の温度や風速は、冷凍工程S102の途中で変更されてもよく、所定値で固定されてもよい。
【0032】
ここで、本明細書において、α化麺の温度とは、α化麺の表面温度を指し、例えば、α化麺の表面に温度計(例えば、(株)ティアンドディ社製のRTR-502)を接触させることで測定できる。また、α化麺を後述する麺塊にして冷凍する場合、α化麺の温度とは、麺塊の表面から露出しない(麺塊の内部に埋没する)α化麺の表面温度を指し、例えば、麺塊に温度計(温感センサーが配置される部分)を挿入し、麺塊の表面から露出しないα化麺の表面に温度計を接触させることで測定できる。なお、α化麺の表面温度の測定には、軽微な誤差が発生することもあるため、±0.1℃の測定誤差は許容するものとする。
【0033】
冷凍工程S102において、冷凍されるα化麺は、空気に晒されることができれば、どのような状態で冷凍されてもよい。例えば、α化麺は、所定量のα化麺を玉状の塊にまとめた麺塊にして冷凍されてもよい。
【0034】
α化麺を麺塊にして冷凍する場合には、例えば、
図2に示すような麺塊成型用トレイT1を用いることができる。麺塊成型用トレイT1には、複数の凹部R1~R5が形成されており、これらの凹部R1~R5のそれぞれにα化麺を所定量ずつ充填することで、凹部R1~R5のそれぞれの内部に麺塊が形成される。複数の凹部が形成される麺塊成型用トレイT1を用いることで、効率よく麺塊を形成することができる。なお、麺塊成型用トレイT1における凹部の数は、2つ以上であればよく、特に限定されるものではない。
【0035】
麺塊成型用トレイT1には、
図1に示すように、凹部R1~R5の側面及び底面(内面)に複数の水切り穴Wが形成されていてもよい。凹部R1~R5の内面に水切り穴Wが形成されることで、麺塊に含まれる余分な水分を取り除くことができる。
【0036】
また、麺塊成型用トレイT1は、
図2に示すように、複数の麺塊成型用トレイT1を積み重ねたときにトレイT1間に所定のスペースSが開くように、麺塊成型用トレイT1を積み重ねるための積重部Pを有していてもよい。積重部Pは、麺塊成型用トレイT1の積重方向上方に向かって突出する凸部P1と、麺塊成型用トレイT1の積重方向上方に向かって窪む窪部P2とが連結した部材であり、複数の麺塊成型用トレイT1を積み重ねたとき、凸部P1は積重方向上方に配置される麺塊成型用トレイT1の窪部P2に挿入され、窪部P2には積重方向下方に配置される麺塊成型用トレイT1の凸部P1が挿入される。
図2に示すように、複数の麺塊成型用トレイT1を積み重ねたときにトレイT1間に所定のスペースSが開くことで、麺塊成型用トレイT1間を空気が通過しやすくなり、積み重ねられる全ての麺塊成型用トレイT1について、α化麺(麺塊)に曝される空気の風速を0.1~2.0m/秒に調整しやすくなる。
【0037】
α化麺を麺塊にして冷凍する場合、麺塊の厚み(麺塊の高さ)は、特に限定されるものではなく、例えば、1~5cmとすることができる。
【0038】
ここで、冷凍工程S102では、α化麺の温度を-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持しているが、α化麺が維持される-5℃超0℃以下の温度帯は、α化麺に含まれる水分が氷結晶となり、その氷結晶が成長していく温度帯である。このため、このような温度帯(-5℃超0℃以下)にα化麺を20時間以上曝すことで、α化麺中に形成される氷結晶を十分に成長させることができる。そして、この氷結晶が後述する乾燥工程S103で取り除かれることで、氷結晶が存在していた部位に、お湯(水)が浸入しやすい大きさの空隙が形成される。また、冷凍工程S102では、風速0.1~2.0m/秒の空気にα化麺を曝しながら冷凍しているが、このような風速の空気がα化麺に曝されることで、α化麺全体が冷凍されやすくなり、十分に成長した氷結晶がα化麺全体に形成される。このため、後述する乾燥工程S103を経て製造されるノンフライ麺には、お湯(水)が浸入しやすい空隙(氷結晶が存在していた部位に形成される空隙)が麺全体に形成される。その結果、本実施形態で製造されるノンフライ麺は、お湯を使用して湯戻しするときに、空隙を介して麺全体にお湯(水)が浸入しやすくなり、湯戻りしやすくなる。
【0039】
一方、冷凍工程S102において、α化麺の温度が-5℃超0℃以下の温度帯で維持される時間が20時間未満である場合には、α化麺中に形成される氷結晶が十分に成長しない。このため、後述する乾燥工程S103で氷結晶が取り除かれることで形成される空隙には水が浸入しにくくなり、製造されるノンフライ麺は湯戻りしにくいものとなる。また、冷凍工程S102において、冷凍過程でα化麺に曝される空気の風速が0.1m/秒未満であると、α化麺から熱が逃げにくくなくなり、α化麺全体に氷結晶が形成されにくくなる。その結果、空隙(氷結晶が存在していた部位に形成される空隙)がノンフライ麺全体に形成されず、製造されるノンフライ麺は湯戻りしにくいものとなる。また、冷凍工程S102において、冷凍過程でα化麺に曝される空気の風速が2.0m/秒を超えると、α化麺が乾燥して白化する冷凍焼けがα化麺全体に広がりやすくなる。冷凍焼けがα化麺全体に広がると、α化麺に含まれる水分が不足し、氷結晶が十分に成長できない。その結果、後述する乾燥工程S103で氷結晶が取り除かれることで形成される空隙には水が浸入しにくくなり、製造されるノンフライ麺は湯戻りしにくいものとなる。
【0040】
なお、冷凍工程S102において、α化麺の冷凍に用いることができる麺塊成型用トレイは、
図1に示したような、複数の凹部が一方向に配列するものであってもよいが、
図2に示すような、複数の凹部が同一平面内(凹部の底面が同一平面内)で2方向に配列する麺塊成型用トレイT2を用いることが好ましい。
【0041】
麺塊成型用トレイT2は、
図2に示すように、麺塊成型用トレイTの外周Pに沿って配列する複数の外側凹部Ro1~16と、複数の外側凹部Ro1~16に囲まれた複数の中央凹部Ri1~9を有している。これらの外側凹部Ro1~16と中央凹部Ri1~9のそれぞれにα化麺を所定量ずつ充填することで、外側凹部Ro1~16と中央凹部Ri1~9のそれぞれの内部に麺塊が形成される。複数の凹部が同一平面内で2方向に配列する麺塊成型用トレイT2を用いることで、より効率よく麺塊を形成することができる。
【0042】
風乾工程S103は、冷凍工程S102において冷凍されたα化麺を風乾する工程である。風乾工程S103における風乾は、冷凍されたα化麺を空気に曝すことでα化麺に含まれる水分(氷結晶を構成する水分を含む)を除去する処理である。
【0043】
風乾工程S103における風乾は、冷凍されたα化麺に含まれる水分を除去できれば、加熱・冷却した空気で行ってもよく、加熱・冷却してない常温の空気で行ってもよい。例えば、風乾工程S103における風乾は、30~60℃の空気で行うことができる。製造するノンフライ麺の品質(色や風味)を向上する観点から、風乾工程S103における風乾は、30℃~45℃の空気で行うことが好ましく、35℃~40℃の空気で行うことがより好ましい。
【0044】
風乾工程S103における風乾処理の時間は、冷凍されたα化麺に含まれる水分を除去できる時間であればよく、特に限定されるものではないが、即席麺に係る日本農林規格(JAS規格)によると水分含有量が14.5%以下であるものが即席麺(ノンフライ麺)であると定義されていることから、α化麺における水分含有量(α化麺100質量%における水分含有量)が14.5%以下となるような時間であることが好ましい。例えば、風乾処理を30℃~45℃の空気で行う場合、風乾処理の時間を8時間以上にすることで、α化麺に含まれる水分含有量を14.5%以下とすることができる。
【0045】
風乾工程S103における風乾処理により、冷凍されたα化麺が解凍されるとともに、α化麺に含まれる水分が除去され、ノンフライ麺が製造される。
【0046】
以上説明した本実施形態のノンフライ麺の製造方法によれば、麺全体に水が浸入しやすい空隙(氷結晶が存在していた部位に形成される空隙)が形成される。その結果、本実施形態の製造方法で製造されるノンフライ麺は、熱湯を使用して湯戻しするときに、空隙を介して麺全体に水が浸入しやすくなり、湯戻りしやすくなる。
【0047】
なお、本実施形態のノンフライ麺の製造方法は、上述したα化工程S101、冷凍工程S102、及び風乾工程S103を有していれば、これらの工程の他に、他の工程を有していてもよい。例えば、本実施形態のノンフライ麺の製造方法は、風乾工程S103により得られたノンフライ麺を容器詰め(例えば、袋詰め)する工程をさらに有するものであってもよい。
【実施例】
【0048】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
[乾麺1(そうめん)の製造]
中力小麦粉(横山製粉製「舞雪」)95質量部、と強力小麦粉(横山製粉製「DO」)5質量部を均一に混合して原料粉を得た。食塩9質量部を水91質量部に溶かした水溶液を原料粉に対して45質量%加え、バッチミキサーによって30分間混錬して麺生地を得た。塊にした麺生地を手延べ製法により、所定の太さになるまで伸ばした後、これを所定の長さに切出して生麺を得た。得られた生麺を30℃~40℃の空気に10時間曝すことで生麺から水分を除去して直径1.1mmの乾麺1(そうめん)を得た。
【0050】
[乾麺2(中華麺)の製造]
中力小麦粉(横山製粉製「舞雪」)90質量部、と強力小麦粉(横山製粉製「DO」)10質量部を均一に混合して原料粉を得た。食塩4質量部とモンゴルかん水5質量部を水91質量部に溶かした水溶液を原料粉に対して35質量%加え、バッチミキサーによって20分間混錬して麺生地を得た。塊にした麺生地をロールによって圧延した後、切出しロールにより幅1.7mm(18番の切り刃を使用)に切出して麺線化し、生麺を得た。得られた生麺を30℃~40℃の空気に10時間曝すことで生麺から水分を除去して乾麺2(中華麺)を得た。
【0051】
[乾麺3(ほうとう)の製造]
中力小麦粉(横山製粉製「舞雪」)95質量部、と強力小麦粉(横山製粉製「DO」)5質量部を均一に混合して原料粉を得た。食塩9質量部を水91質量部に溶かした水溶液を原料粉に対して35質量%加え、バッチミキサーによって20分間混錬して麺生地を得た。塊にした麺生地をロールによって圧延した後、切出しロールにより厚み1mm幅1cm(3番の切り刃を使用)に切出して麺線化し、生麺を得た。得られた生麺を30℃~40℃の空気に10時間曝すことで生麺から水分を除去して乾麺3(ほうとう)を得た。
【0052】
[実施例1~9及び比較例1~25]
上述した方法で取得した乾麺1(そうめん)を100℃の熱湯で3分間煮ることで乾麺をα化してα化麺を得た。粗熱を取り除いたα化麺(15℃程度)を、
図4に示す麺塊成型用トレイT2の凹部(外側凹部Ro1~16及び中央凹部Ri1~9)に所定量ずつ充填して、バッチ式エアブラスト冷凍機(日立製のプレハブ冷凍庫)内に放置した。冷凍機内の温度は-7℃に設定し、α化麺(麺塊)が曝される空気の風速は下記表1に示す条件とした。麺塊成型用トレイT2を、冷凍機に放置してから取り出すまでの時間を変更することで、α化麺の温度が-5℃超0℃以下の温度帯で維持される時間を変更した。α化麺の温度が-5℃超0℃以下の温度帯で維持される時間は、下記表1に示す通りであった。冷凍機から取り出したα化麺を30℃~45℃の空気に8時間曝すことで、α化麺に含まれる水分含有量を14.5%以下にして、実施例1~9及び比較例1~25のノンフライ麺(そうめん)を製造した。
【0053】
なお、表1において、「時間」はα化麺の温度が-5℃超0℃以下の温度帯で維持される時間を示し、α化麺の温度は、麺塊に温度計((株)ティアンドディ社製のRTR-502)を挿入して、麺塊の表面から露出しないα化麺の表面に温度計を接触させることで測定した。また、表1において、「風速」は、α化麺(麺塊)が曝される空気の風速(α化麺から10cmの離れた位置の30秒間の平均値)を示し、風速の測定には風速計(エリックヒル社製の風力計HT625C)を用いた。また、表1において、「冷凍完了時の温度」は、冷凍機からα化麺を取り出したときのα化麺の温度を指す。
【0054】
[実施例10]
乾麺1(そうめん)に代えて乾麺2(中華麺)を用いたこと及び乾麺2を100℃の熱湯で5分間煮てα化麺を得たこと以外は、実施例5と同様の方法で実施例10のノンフライ麺を製造した。
【0055】
[実施例11]
乾麺(そうめん)に代えて乾麺3(ほうとう)を用いたこと及び乾麺3を100℃の熱湯で10分間煮てα化麺を得たこと以外は、実施例5と同様の方法で実施例11のノンフライ麺を製造した。
【0056】
【0057】
[外観評価]
各実施例及び比較例のノンフライ麺をパネラー5名に目視で確認してもらい、白化(冷凍焼け)の有無について下記評価基準に従って評価した。パネラー5名の評価点の平均値を下記表2に示す。
<評価基準>
3点:白化(冷凍焼け)が確認できない。
2点:一部に白化(冷凍焼け)が確認できる。
1点:全体に白化(冷凍焼け)が確認できる。
【0058】
[復元性評価]
各実施例及び比較例のノンフライ麺(麺質量:65g)をそれぞれ容器に移し、お湯(100℃)を約330ml加えて3分間放置した。3分経過後の即席麺をパネラー5名に食してもらい、湯戻りの性能(復元性)について下記評価基準に従って評価した。パネラー5名の評価点の平均値を下記表2に示す。なお、パネラーには、即席麺の開発者などの官能評価をするのに適切な者を選定し、極端に好き嫌いのある者やアレルギーのある者などは除外した。
<評価基準>
3点:良好
(硬さを感じず容易に食すことができる。)。
2点:どちらとも言えない
(やや硬さを感じることもあるが食すことができる(一部の麺について芯が残る感覚がある。))。
1点:不良
(硬さを感じ食すことが困難(麺の大部分について芯が残る感覚がある。又は、麺の大部分について麺の表面及び中心ともに硬い。))。
【0059】
【0060】
上記表2に示す結果から明らかなとおり、α化麺を冷凍する冷凍工程において、風速0.1~2.0m/秒の空気にα化麺を曝しながら、α化麺の温度を-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持した実施例1~11のノンフライ麺は、復元性の評価結果が2.0以上となった。実施例1~11の中でも特に、冷凍工程において、α化麺に曝される空気の風速が0.1~1.5m/秒であり、且つ、-5℃超0℃以下の温度帯で維持される時間が36時間以上である、実施例2、3、5及び6は、復元性の評価結果が3.0であった。一方、冷凍工程において、α化麺に曝される空気の風速が0.1~2.0m/秒の範囲外であったり、-5℃超0℃以下の温度帯で維持される時間が20時間未満であったりした比較例1~25のノンフライ麺は、復元性の評価結果が1.4以下であった。この結果から、実施例1~11の製造方法によれば、湯戻りしやすいノンフライ麺を製造できることが理解できた。
【要約】
【課題】 湯戻りしやすいノンフライ麺の製造方法を提供する。
【解決手段】 生麺又は乾麺をα化してα化麺を取得するα化工程と、前記α化麺を冷凍する冷凍工程と、冷凍した前記α化麺を風乾する風乾工程と、を有し、前記冷凍工程は、風速0.1~2.0m/秒の空気に前記α化麺を曝しながら、前記α化麺の温度を-5℃超0℃以下の温度帯で20時間以上維持することを含むことを特徴とする、ノンフライ麺の製造方法。
【選択図】
図1