IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 光精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-表示カバー 図1
  • 特許-表示カバー 図2
  • 特許-表示カバー 図3
  • 特許-表示カバー 図4
  • 特許-表示カバー 図5
  • 特許-表示カバー 図6
  • 特許-表示カバー 図7
  • 特許-表示カバー 図8
  • 特許-表示カバー 図9
  • 特許-表示カバー 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】表示カバー
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/22 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
G01B3/22 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022107604
(22)【出願日】2022-07-04
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021111357
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593146017
【氏名又は名称】光精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(72)【発明者】
【氏名】西村 憲一
(72)【発明者】
【氏名】西村 昌能
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈博
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-317172(JP,A)
【文献】実開昭57-114902(JP,U)
【文献】実開昭55-162105(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00-3/08
G01B 3/11-3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目盛りが表示される目盛板と、回動軸を中心に前記目盛板上で回動して前記目盛りを指し示す指針と、前記目盛板よりも大径で厚みのある円盤形状を有し少なくとも前記目盛りと前記指針とを外部から目視可能な透明部を備え前記目盛板および前記指針を覆いかつ前記目盛板と一緒に周方向に回動可能な前面カバーと、を備えた計測器に対して装着可能な表示カバーであって、
前記計測器の前面カバーよりも内径が僅かに大径の円環形状であって内周面の周方向の複数箇所に軸方向に直線状、破線状または点線状に存在する凸部を有し前記前面カバーの外周に装着可能な円環部と、
前記円環部の軸方向一端側から内径方向および周方向に庇状に延びるとともに前記前面カバーに装着された状態においては前記前面カバーの透明部の外周縁部を覆い前記目盛りまたはその近傍まで先端部が到達する表示面部と、
を備える、ことを特徴とする表示カバー。
【請求項2】
前記表示面部は、軸方向断面において、前記円環部の軸方向一端側から前記先端部に向かって前記計測器の透明部の表面に近づくように傾斜する、ことを特徴とする請求項1に記載の表示カバー。
【請求項3】
前記表示面部は、軸方向断面において、前記円環部の軸方向一端側から径方向外側に延びる拡張部を前記円環部の周方向の一部の範囲に有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測器に対して装着可能な表示カバーに関するものである。計測器は、目盛りが表示される目盛板と、回動軸を中心に目盛板上で回動して目盛りを指し示す指針と、これらを覆う前面カバーと、を備えた目盛りを指針で指すタイプのものであり、典型的には、指針表示型のダイヤルゲージである。
【背景技術】
【0002】
指針表示型のダイヤルゲージは、被測定物の外形寸法等の基準値に対する誤差を指針と目盛りで表示する計測器であり、寸法誤差として許容される所定幅の上下の限界値を目盛りの近傍で明示するために2本のリミット針が設けられている。これら2本のリミット針は、例えば、指針や目盛板を覆う透明カバーの周囲に設けられている外枠リングに沿って当該リングの全周を移動可能に構成されている。そのため、例えば、ダイヤルゲージの使用中に作業者の手等がリミット針に触れた場合には誤ってリミット針の位置がズレてしまう場合がある。また、2本のリミット針では、1つの所定幅しか明示できないため、例えば、複数の許容範囲等を示すことは難しい。
【0003】
そこで、例えば、下記特許文献1に開示される「ダイヤルゲージ目盛り用リミット範囲表示ステッカ」が考案されている。この表示ステッカは、切り欠きのあるリング状シートをダイヤルゲージの透明カバーに貼着するものである。これにより、目盛板の目盛りに対して、例えば、複数の許容範囲を明示することが可能になり、また透明カバーに貼着された薄いシート状であることから、作業中に作業者の手等が触れても簡単には剥がれたり移動したりすることがない。そのため、リミット針に代わり、寸法誤差の許容限界値を柔軟に明示可能にしている。また、複数の許容範囲等を示すことも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭57-114902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の表示ステッカは、ダイヤルゲージの透明カバーに対して裏面の接着剤層により貼着されるものであるため、接着剤層の接着力が弱ければ作業中に剥がれてしまうおそれがある。また接着力が強すぎれば表示ステッカが剥がれ難くなるため、例えば、ダイヤルゲージによる計測対象が変更された場合における表示ステッカを貼り替え作業上の問題になり得る。また、ダイヤルゲージが使用される作業空間に霧状の潤滑剤等が含まれる場合には表示ステッカの接着力が弱まり剥がれ易くなり得るという問題も生じ得る。
【0006】
また、このような表示ステッカをダイヤルゲージの透明カバーに貼り付ける代わりに、透明カバー内の目盛板に許容限界値を表示した紙片を貼り付ける方策がある。しかしこのような方策では、透明カバーを取り外して目盛板に表示紙片を取り付ける際に作業者が誤って指針に触れる可能性がある。また、この作業には透明カバーの脱着を伴うことから、表示紙片の貼り付け作業のほかに透明カバーの取り外しと取り付けの作業が必要になる。そのため、作業時間がかかり得るという問題もある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、寸法誤差の許容範囲等を複数箇所に明示し、かつ、着脱作業を容易にし得る表示カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項1の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項1の表示カバーは円環部と表示面部を備える。円環部は、計測器の前面カバーよりも内径が僅かに大径の円環形状であって内周面の周方向の複数箇所に軸方向に直線状、破線状または点線状に存在する凸部を有し、計測器の前面カバーの外周に装着される。表示面部は、その先端部が円環部の軸方向一端側から内径方向および周方向に庇状に延びるとともに計測器の前面カバーに装着された状態においては前面カバーの透明部の外周縁部を覆い目盛りまたはその近傍まで到達する。これにより、表示面部の先端部は、目盛板の周囲において目盛りまたはその近傍まで到達するため、このような先端部を含めて表示面部に、例えば、計測器の指針が指し示す目盛りに対する良否等の判定情報を色や文字等で複数箇所に表示することが可能になる。
【0009】
また、円環部は、計測器の前面カバーに装着する際には、前面カバーの外周と円環部の内周面との間に介在する凸部が両者間に嵌入するため、円環部を前面カバーに嵌合させることができ、当該表示カバーを容易に装着することが可能になる。またこのように前面カバーの周囲に円環部が嵌合することで装着されている当該表示カバーは、例えば、作業者が両手の親指以外の人差し指等を円環部に掛けて親指で前面カバーを押しながら円環部を手前に引くように力を加えることにより、前面カバーと円環部の嵌合を解くことができるので、前面カバーから当該表示カバーを容易に取り外すことが可能になる。
【0010】
さらに、円環部は、内周面の周方向の複数箇所に軸方向に直線状、破線状または点線状に存在する凸部を有するため、円環部をその周方向に回動させた場合には、前面カバーもそれに伴って回動させることが可能になる。これにより、前面カバーと一緒に目盛板も周方向に回動させることが可能になるので、例えば、当該計測器がダイヤルゲージ等である場合には、円環部を回すことで指針の任意の回動位置に対するゼロ位置合わせ(目盛りの0(ゼロ)点合わせ)の操作を行うことができる。
【0011】
特に、計測器の前面カバーの外周に軸方向に線状に延びる溝部(直線状の凹部)が複数箇所に存在する場合には、その溝幅および溝深さや溝部の周方向位置に適合するように、当該凸部の形状および円環部の周方向位置を決定することによって、前面カバーの溝部と円環部の凸部が互いに良好に噛み合わせることが可能になる。例えば、前面カバーの溝部の数と円環部の凸部とを同数にしたり、前面カバーの溝部の数を整数で割った数を円環部の凸部の数にしたりする。これにより、前面カバーに対する円環部の周方向の滑りが抑制されるため、容易に両者を一体に回動させることができる。このような技術的思想は「計測器が前面カバーの外周に複数の凹部または凸部を有する場合において、円環部は、凹部内に収まり得る凸形状部または凸部を収め得る凹形状部を内周に有する」というように表現することができる。
【0012】
また、特許請求の範囲に記載された請求項2の技術的手段を採用する。この手段によると、表示面部は、軸方向断面において、円環部の軸方向一端側から先端部に向かって計測器の透明部の表面に近づくように傾斜する。これにより、傾斜することなく透明部の表面を覆うように表示面部が延びた場合に比べて、表示面部の長さが長くなるため、表示面部による表示面積を増加させることが可能になる。
【0013】
また、特許請求の範囲に記載された請求項3の技術的手段を採用する。この手段によると、表示面部は、軸方向断面において、円環部の軸方向一端側から径方向外側に延びる拡張部を円環部の周方向の一部の範囲に有する。これにより、表示面部に加えて、このような拡張部においても文字情報等を表示させることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、表示面部の先端部は、目盛板の周囲において目盛りまたはその近傍まで到達するため、このような先端部を含めて表示面部に、例えば、計測器の指針が指し示す目盛りに対する良否等の判定情報を色や文字等で複数箇所に表示することが可能になる。また、円環部を前面カバーに嵌合させることが可能になるため、当該表示カバーを容易に装着したり、前面カバーから当該表示カバーを容易に取り外したりすることが可能になる。したがって、寸法誤差の許容範囲等を複数箇所に明示し、かつ、着脱作業を容易にすることができる。
【0015】
請求項2の発明では、傾斜することなく透明部の表面を覆うように表示面部が延びた場合に比べて、表示面部の長さが長くなるため、表示面部による表示面積を増加させることが可能になる。したがって、例えば、計測器の指針が指し示す目盛りに対する良否等の判定情報を色や文字等によって、より多く表示することができる。
【0016】
請求項3の発明では、表示面部に加えて、このような拡張部においても文字情報等を表示させることが可能になる。したがって、例えば、計測器の指針が指し示す目盛りに対する良否等の判定情報を色や文字等によって、さらに多く表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るダイヤルゲージカバーをダイヤルゲージに装着した状態例を示す説明図である。図1(A)はダイヤルゲージの正面方向から見た図、図1(B)は、図1(A)に示す矢印1B方向から見た一部断面を含む図である。
図2】本第1実施形態のダイヤルゲージカバーの構成例を示す図である。図2(A)は正面図、図2(B)は背面図、図2(C)は右側面図または左側面図、図2(D)は、図2(B)に示す2D線矢印方向から見た断面図である。
図3図2に示すダイヤルゲージカバーの使用例を表した説明図である。図3(A)は判定情報を表示する前の状態、図3(B)は判定情報を表示した後の状態、をそれぞれ示す図である。
図4】本第1実施形態のダイヤルゲージカバーの他の構成例(改変例1)を示す図である。図4(A)は正面図、図4(B)は背面図、図4(C)は平面図、図4(D)は底面図、図4(E)は右側面図または左側面図、図4(F)は、図4(B)に示す4F線矢印方向から見た断面図、図4(G)は表示面部の断面部分の拡大図である。
図5図4に示すダイヤルゲージカバーの使用例を説明図である。図5(A)はダイヤルゲージカバーをダイヤルゲージに装着した状態を示す一部断面を含む図、図5(B)は判定情報や型番情報を表示した後の状態を示す図である。
図6】本第2実施形態のダイヤルゲージカバーの構成例を示す図である。図6(A)は正面図、図6(B)は背面図、図6(C)は右側面図または左側面図、図6(D)は、図6(B)に示す6D線矢印方向から見た断面図である。
図7図6に示すダイヤルゲージカバーをダイヤルゲージに装着した状態例を示す説明図である。図7(A)はダイヤルゲージの正面方向から見た図、図7(B)は、図7(A)に示す矢印7B方向から見た一部断面を含む図である。
図8】本第2実施形態のダイヤルゲージカバーの他の構成例(改変例2)を示す図である。図8(A)は正面図、図8(B)は背面図、図8(C)は右側面図または左側面図、図8(D)は、図8(B)に示す8D線矢印方向から見た断面図である。
図9図8に示すダイヤルゲージカバーをダイヤルゲージに装着した状態例を示す説明図である。図9(A)はダイヤルゲージの正面方向から見た図、図9(B)は、図9(A)に示す矢印9B方向から見た一部断面を含む図である。
図10】本第2実施形態のダイヤルゲージカバーの他の構成例(改変例3)を示す図である。図10(A)は正面図、図10(B)は背面図、図10(C)は右側面図または左側面図、図10(D)は、図10(B)に示す10D線矢印方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の表示カバーの第1実施形態であるダイヤルゲージカバーを、計測器としてのダイヤルゲージに装着して使用する場合の例について各図を参照して説明する。まず、ダイヤルゲージ10の構成例を図1を参照して簡単に説明する。図1には、本第1実施形態に係るダイヤルゲージカバー20をダイヤルゲージ10に装着した状態例を示す説明図として、ダイヤルゲージ10の正面方向から見た図(図1(A))、図1(A)に示す矢印1B方向から見た一部断面を含む図(図1(B))が図示されている。
【0019】
図1(A)および図1(B)に示すように、ダイヤルゲージ10は、主に、本体ケース11、ステム12、スピンドル13、測定子14、表示部15、外枠リング16、外枠クランプ17、キャップ18等により構成されており、本体ケース11に固定されたステム12を通って本体ケース11から出入自在に突出するスピンドル13の移動量(突出量)を直線距離として精密に測り得るスピンドル式のダイヤルゲージである。典型的には、例えば、機械部品の検査工程等において、外形寸法の基準となるマスターに対する、被測定物の寸法誤差を測定する場合に使用される。
【0020】
スピンドル13は、その先端には被測定物に接触し得る測定子14が設けられており、後端側にはスピンドル13の直線運動を回転運動に変換する図略のラック・アンド・ピニオン機構やそのラックギヤの動きを拡大する拡大伝達機構が設けられている。ピニオンギヤは、拡大伝達機構を介して表示部15の指針15dに連結されている。これらの機構は本体ケース11内に収容されている。本体ケース11には、スピンドル13の後端が本体ケース11から突出した場合に外部への露出を防ぐキャップ18が取り付けられている。
【0021】
表示部15は、円環形状を有し周方向に目盛り15bが表示される目盛板15aと、回動軸15cを中心に目盛板15a上で回動して目盛り15bを指し示す指針15dと、目盛板15aよりも大径で厚みのある円盤形状を有し少なくとも目盛り15bと指針15dとを外部から目視可能に覆う透明カバー15eと、を備えている。回動軸15cは、前述の拡大伝達機構等を介してピニオンギヤに連結されており、スピンドル13の移動量に応じて指針15dを回動させ得るように構成されている。なお、符号15fは、透明カバー15eの外周縁を指し示す。
【0022】
表示部15の外周には、スプライン状の複数の溝(以下「スプライン溝」という)が全周に形成された外枠リング16が設けられている。外枠リング16は、表示部15の目盛板15aと透明カバー15eと一緒にその周方向に回動自在であり、指針15dの任意の回動位置において目盛板15aのゼロ位置合わせ(目盛り15bの0(ゼロ)点合わせ)ができるように構成されている。ダイヤルゲージ10では、目盛板15a、透明カバー15eおよび外枠リング16は、機械的に一体に構成されており、また外枠クランプ17の操作により本体ケース11から着脱自在に構成されている。なお、ゼロ位置合わせは、マスターの測定時に指針15dが指した位置に目盛り15bの0(ゼロ)が合うように作業者が外枠リング16を回すことにより行われる。
【0023】
このように構成されるダイヤルゲージ10は、例えば、スタンド50に保持されて使用される。スタンド50は、例えば、作業テーブル上に載置されたり取り付けられたりしてダイヤルゲージ10を支持固定する計測補助器具であり、クランプつまみ53の操作により開閉するクランプ52によってダイヤルゲージ10のステム12を挟持してブラケット51により支持する。なお、図1には、スタンド50のブラケット51を保持する支軸や基台は図示されていないことに注意されたい。
【0024】
次に本第1実施形態のダイヤルゲージカバー20の構成を図1および図2を参照しながら説明する。図2(A)にはダイヤルゲージカバー20の正面図、図2(B)には同背面図、図2(C)には同右側面図または左側面図、図2(D)には図2(B)に示す2D線矢印方向から見たダイヤルゲージカバー20の断面図、がそれぞれ図示されている。なお、これらの各図により、ダイヤルゲージカバー20の外観形状は、意匠に係る物品「表示カバー」の意匠として把握することができる。図2(C)に示すダイヤルゲージカバー20の側面図は、左右同様に現れる。また、平面図および底面図についても図2(C)の側面図と同様に現れる。
【0025】
ダイヤルゲージカバー20は、円環部21と表示面部22により構成されている。これらは、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂により一体に成形されている。なお、耐水性や耐久性に優れた特殊な紙材で成形されていてもよい。本第1実施形態では、少なくとも表示面部22においては、油性マーカーペン等による任意色(緑色、黄色、赤色等)の着色を可能にするため、例えば、成形後において白色になる合成樹脂や紙材が使用される。後述するように、油性マーカーペン等による着色に代えて、任意色のシールを貼付する場合には、成形後の合成樹脂や紙材の色は白色以外でもよい。
【0026】
円環部21は、その内径がダイヤルゲージ10の外枠リング16の外径よりも僅かに大径に設定された軸方向長さが短い円筒形状に形成されている。円環部21の軸方向長さは、ダイヤルゲージ10の外枠リング16に装着可能な大きさ、つまり外枠リング16の軸方向長さよりも長くかつ装着状態において表示部15の周囲に存在する外枠クランプ17やキャップ18に接触しない長さに設定されている。
【0027】
円環部21の周壁(筒壁)は、円環部21の一端部21aから他端部21bに向かって板厚が薄くなるように設定されており、それに伴い内周面21cの内径も一端部21aから他端部21bに向かって拡径するように設定されている(Dc→Dd(>Dc))。本第1実施形態では、円環部21の周壁は、その厚さが例えば最厚部において1mmに設定されている。この周壁の厚さは、ダイヤルゲージカバー20が装着されたダイヤルゲージ10をスタンド50で保持したり、スタンド50に保持されたダイヤルゲージ10にダイヤルゲージカバー20を装着したりする際に、ステム12を挟持するクランプ52に円環部21の外周面21dが接触しない値である。つまり、図1に示すように、円環部21の周壁は、円環部21の外周面21dとクランプ52との隙間SPに入り得る板厚に設定される。
【0028】
円環部21の内周面21cには、周方向にほぼ等間隔で軸方向(円環部21の一端部21aから他端部21bまたはその逆方向)に直線状に延びる凸部25が複数箇所に形成されている。本第1実施形態では、ダイヤルゲージカバー20はダイヤルゲージ10の外枠リング16に装着されることから、外枠リング16に形成されているスプライン溝に基づいて、凸部25の幅および高さやその数が設定される。即ち、凸部25の幅は外枠リング16のスプライン溝の幅よりも僅かに狭く、その高さは同スプライン溝の深さよりも僅かに浅く(低く)設定され、また凸部25の数は、同スプライン溝の数を整数で割った数に設定される。
【0029】
例えば、外枠リング16のスプライン溝の数が100である場合にはその1/10の10に設定されたり、その1/20の5に設定されたりする。これにより、外枠リング16のスプライン溝と円環部21の凸部25とが互いに良好に噛み合わさることが可能になるため、外枠リング16に対する円環部21の周方向の滑りが抑制されて容易に外枠リング16と円環部21を一体に回動させることができる。つまり、円環部21を回すと、ゼロ位置合わせの操作を行うことができる。
【0030】
本第1実施形態では、前述したように、円環部21の周壁が一端部21aから他端部21bに向かって板厚が薄くなるように設定されている。そのため、凸部25の高さがその長手方向の位置に関わらず一定でも他端部21bから一端部21aに向かうほど凸部25の高さが大きくなる楔のように機能する。つまり、ダイヤルゲージカバー20を外枠リング16に装着する際に外枠リング16が円環部21の他端部21bから一端部21aに嵌入する(嵌入量が大きくなる)ほど嵌合度合いが増す楔のように機能する凸部25を介して外枠リング16が内周面21cに強く嵌合し得るように構成されている。なお、後述する改変例1のダイヤルゲージカバー30のように、円環部21の周壁の板厚を一定に構成し、凸部35のように凸部25を楔状に構成しても、外枠リング16と円環部21のこのような嵌合が得られる。
【0031】
なお、円環部21の周壁が一端部21aから他端部21bに向かって板厚が薄くなることにより凸部25が傾斜する度合いと、同じ傾斜度合いまたはほぼ同じ傾斜度合いでダイヤルゲージ10の外枠リング16がその軸方向において目盛板15aから離れて透明カバー15eに近づく方向に縮径(透明カバー15eから離れて目盛板15aに近づく方向に拡径)している場合には当該外枠リング16が円環部21に入り込み始めや途中過程では嵌合することなく入り込み深さの最深部またはその近傍において所定の嵌合度合いで嵌合することが可能になる。
【0032】
また、円環部21の周壁の厚さおよび凸部25の高さを一定に構成してもよい。前述したように、円環部21の周壁が一端部21aから他端部21bに向かって板厚が薄くなるように設定するのではなく、円環部21の周壁の板厚をその軸方向および周方向において同じまたはほぼ同じになるように構成し、かつ凸部25の高さもその長手方向位置にかかわらず同じまたはほぼ同じになるように構成してよい。これにより、例えば、ダイヤルゲージ10の外枠リング16が縮径したり拡径したりすることなく一定の外径を有する場合には、当該外枠リング16が円環部21に嵌入する嵌入量に関係なく一定の嵌合度合いを得ることが可能になる。
【0033】
円環部21の一端部21aには、内径方向および周方向に庇状に延びる表示面部22が形成されている。表示面部22は、ダイヤルゲージカバー20がダイヤルゲージ10の外枠リング16に装着された状態において、表示部15の透明カバー15eの外周縁15fを覆うとともに、表示面部22の先端部22aが表示部15の目盛り15bやその近傍まで到達し得るように構成されている。本第1実施形態では、表示面部22は、軸方向断面において、円環部21の一端部21a(基端部22b)から先端部22aに向かってダイヤルゲージ10の透明カバー15eの表面に近づくように傾斜している。これにより、先端部22aが目盛り15bに近づくことから、次に説明するように表示面部22に表示される判定情報等と目盛り15bとの対応関係を見やすくなり、また表示面部22の表示面積が増加するため、より多くの情報が表示可能になる。
【0034】
表示面部22は、ダイヤルゲージ10の目盛り15bの表示位置が目盛板15aの中心や回動軸15cに近いほど表示面部22として確保可能な幅が広くなり、同位置が目盛板15aの中心や回動軸15cから遠いほど表示面部22として確保可能な幅が狭くなる。そのため、表示面部22により表示可能な面積を増加させたい場合には、表示面部22を径方向外側に拡張する必要があるが、これについては後述する。なお、本第1実施形態では、表示面部22は、その基端部22bの厚さが2~3mmに設定されており、また先端部22aの厚さが0.5mmに設定されている。先端部22aにより囲まれる円形枠(目盛り15bを囲む表示面部22)の内径はDaであり、円環部21、つまりダイヤルゲージカバー20の外径はDbである。
【0035】
このように構成されるダイヤルゲージカバー20は、図3(A)に示すように何も着色等がされていない表示面部22に対して、油性マーカーペン等により着色されて使用される。図3(B)に示すダイヤルゲージカバー20の例では、ダイヤルゲージ10の目盛り15bの0(ゼロ)を中心とした所定範囲に対し、寸法誤差の判定情報23aとして「合格品であることを明示する緑色」が着色されている。またこの判定情報23aの両側の所定範囲には、寸法誤差の判定情報23bとして「準合格品であることを明示する黄色」が着色され、そして残りの範囲には、寸法誤差の判定情報23cとして「不合格品であることを明示する赤色」が着色されている。判定情報23a,23bの範囲は寸法誤差の許容範囲の例であり、判定情報23cは寸法誤差の非許容範囲の例である。
【0036】
なお、このような判定情報23a~23cは、表示面部22に表示する情報の一例であり、表示色や表示内容は任意である。また、このような油性マーカーペン等による着色に代えて、例えば、判定情報23a~23c等を構成する色情報や文字情報が印刷された円弧状の帯状シールを、表示面部22に貼着してもよい。また、ダイヤルゲージカバー20が紙製である場合には、判定情報23a~23cを構成する色情報を水性マーカーペンにより着色してもよいし、その他の情報をボールペン等により記入してもよい。また着色用や表記用のインクが馴染むようなコーティング剤で表示面部22の表面を覆った後、色情報や文字情報等を表示させてもよい。
【0037】
このように着色等がされたダイヤルゲージカバー20は、円環部21の内周に外枠リング16を嵌入させることによって、内周面21cで楔のように機能する凸部25を介して外枠リング16が内周面21cに嵌合する。これにより、作業者は、ワンタッチでダイヤルゲージカバー20をダイヤルゲージ10に装着することができる。ダイヤルゲージ10に装着されたダイヤルゲージカバー20は、図1(A)や図3(B)に示すように、表示面部22の先端部22aが目盛板15aの周囲において目盛り15bの近くに達することから、寸法誤差の許容範囲等を複数箇所に明示することができる。
【0038】
このようにして装着されたダイヤルゲージカバー20をダイヤルゲージ10から取り外す場合には、例えば、作業者が両手の親指以外の人差し指等を円環部21に掛けて親指でダイヤルゲージ10の透明カバー15eを押しながら円環部21を手前に引くように力を加えることによって、外枠リング16と円環部21の嵌合を解くことが可能になるので、外枠リング16からダイヤルゲージカバー20を容易に取り外すことができる。
【0039】
[第1実施形態の改変例]
次に、表示面部22により表示可能な面積を増加させ得るダイヤルゲージカバー30の構成例(改変例1)について図4および図5を参照しながら説明する。図4(A)にはダイヤルゲージカバー30の正面図、図4(B)には同背面図、図4(C)には同平面図、図4(D)には同底面図、図4(E)には同右側面図または左側面図、図4(F)には図4(B)に示す4F線矢印方向から見たダイヤルゲージカバー30の断面図、図4(G)には表示面部の断面部分の拡大図、がそれぞれ図示されている。なお、これらの各図により、ダイヤルゲージカバー30の外観形状は、意匠に係る物品「表示カバー」の意匠として把握することができる。図4(E)に示すダイヤルゲージカバー30の側面図は、左右同様に現れる。
【0040】
図4に示すように、改変例1のダイヤルゲージカバー30は、表示面部22を径方向外側に拡張した拡張部31を有する点が前述したダイヤルゲージカバー20と主に異なる。そのため、ダイヤルゲージカバー20と実質的に同一の構成部分については、図4および図5において同一符号を付し、またそれらの説明を省略する。ダイヤルゲージカバー30は、円環部21と表示面部22と拡張部31により構成されている。これらは、ダイヤルゲージカバー20と同様に、合成樹脂や紙材により一体に成形されている。
【0041】
拡張部31は、その外径がダイヤルゲージ10の外枠リング16よりも大きく張り出すように設定されている。本第1実施形態では、表示面部22の基端部22bだけを板状に拡張した形状ではなく、円環部21の外周面21dをそのまま大径に(肉厚を厚く)して拡張部31を形成している。なお、図4(F)に表した二点鎖線Lのように、円環部21の一端部21aを板状に拡張して拡張部31を形成してもよい。
【0042】
このように径方向外側に張り出す拡張部31は、ダイヤルゲージカバー30をダイヤルゲージ10に装着した場合、ダイヤルゲージ10を保持するスタンド50に接触する可能性がある。即ち、装着時にスタンド50方向においてもダイヤルゲージカバー30の拡張部31が形成されている場合にはその外周面31aがスタンド50のクランプ52に接触してしまう可能性が高い。そこで、装着時にスタンド50方向に向く所定範囲においては拡張部31を除いた切欠部32を設けることにより、拡張部31とクランプ52の接触を回避している(図5(A)参照)。所定範囲は、例えば、先端部22aにより囲まれる円形枠において、ダイヤルゲージカバー30の装着時に真下を向く扇形状の中心角θ(例えば60度)として定義することが可能である。
【0043】
図4(F)や図4(G)に示すように、ダイヤルゲージカバー30の円環部21は、その周壁が一定の厚さに設定されている。前述のダイヤルゲージカバー20では、円環部21の周壁が一端部21aから他端部21bに向かい板厚が薄くなるように設定されていたため、一端部21aから他端部21bに向かって拡径するように内周面21cに傾斜が付与されていたが(図2(D)参照)、ダイヤルゲージカバー30の円環部21は内径Ddが一定であり、内周面21c’も傾斜していない。これに対して、内周面21c’に形成される凸部35の形状が楔状に構成されている。
【0044】
凸部35は、円環部21の他端部21bから一端部21aに向かうほど凸部35の高さが大きくなる楔状に構成されている点を除いて、凸部35の幅、長さ、形成する位置や数は、凸部25と同様に設定されている。凸部35は、その一端部35a(一端部21aの側)が最も高く、同他端部35b(他端部21bの側)が最も低くなるように形成されている。凸部35の最大高さは、凸部25の高さと同じ大きさである。
【0045】
このように凸部35を構成することによって、ダイヤルゲージカバー30を外枠リング16に装着する際に外枠リング16が円環部21の他端部21bから一端部21aに嵌入するほど楔のように機能する凸部35を介して外枠リング16が内周面21c’に強く嵌合し得る。なお、前述したダイヤルゲージカバー20のように、円環部21の一端部21aから他端部21bに向かって板厚が薄くなるように円環部21の周壁を構成し、凸部25のようにその高さがその長手方向の位置に関わらず一定になるように凸部35を構成しても、外枠リング16と円環部21のこのような嵌合が得られる。
【0046】
なお、凸部35の高さが他端部21bから一端部21aに向かって高くなることにより凸部35の頂部が傾斜する度合いと、同じ傾斜度合いまたはほぼ同じ傾斜度合いでダイヤルゲージ10の外枠リング16が目盛板15aから離れる方向に縮径(目盛板15aに近づく方向に拡径)している場合には当該外枠リング16が円環部21に入り込み始めや途中過程では嵌合することなく入り込み深さの最深部またはその近傍において所定の嵌合度合いで嵌合することが可能になる。
【0047】
また、凸部35の高さを一定に構成してもよい。前述したように、円環部21の他端部21bから一端部21aに向かうほど凸部35の高さが大きくなる楔状に構成するのではなく、凸部35の高さをその長手方向位置にかかわらず同じまたはほぼ同じになるように構成してよい。これにより、例えば、ダイヤルゲージ10の外枠リング16が縮径したり拡径したりすることなく一定の外径を有する場合には、当該外枠リング16が円環部21に嵌入する嵌入量に関係なく一定の嵌合度合いを得ることが可能になる。
【0048】
このように改変例1のダイヤルゲージカバー30を構成することにより、表示面部22に加えて、このような拡張部31においても文字情報等を表示させることが可能になるので、ダイヤルゲージ10の指針15dが指し示す目盛り15bに対する良否等の判定情報を色や文字等でさらに多く表示することができる。また例えば、図5(B)に示すように、ダイヤルゲージカバー30を用いて良否判定が行われる被測定物の製品番号(図5(B)に表されている「123A567」等)を拡張部31に表示したり、製品情報等をコード化した二次元バーコードを拡張部31に表示したりすることが可能になる。
【0049】
以上説明したように、本第1実施形態のダイヤルゲージカバー20,30では、円環部21は、ダイヤルゲージ10の外枠リング16よりも内径Ddが僅かに大径の円環形状であって内周面21c,21c’の周方向の複数箇所に軸方向に直線状に存在する凸部25,35を有し、外枠リング16の外周に装着される。表示面部22は、その先端部22aが円環部21の一端部21aから内径方向および周方向に庇状に延びるとともに外枠リング16に装着された状態においては透明カバー15eの外周縁15fを覆い目盛り15bまたはその近傍まで到達する。これにより、表示面部22の先端部22aは、目盛板15aの周囲において目盛り15bの近くに達するため、このような先端部22aを含めて表示面部22に、例えば、ダイヤルゲージ10の指針15dが指し示す目盛り15bに対する良否等の判定情報23a~23cを色や文字等で複数箇所に表示することが可能になる。
【0050】
また、円環部21は、ダイヤルゲージ10の外枠リング16に装着する際には、外枠リング16の外周と円環部21の内周面21c,21c’との間に介在する凸部25,35が両者間に嵌入するため、円環部21を外枠リング16に嵌合させることができ、ダイヤルゲージカバー20を容易に装着することが可能になる。またこのように外枠リング16の周囲に円環部21が嵌合することで装着されているダイヤルゲージカバー20は、例えば、作業者が両手の親指以外の人差し指等を円環部21に掛けて親指で透明カバー15eを押しながら円環部21を手前に引くように力を加えることにより、外枠リング16と円環部21の嵌合を解くことができるので、外枠リング16からダイヤルゲージカバー20を容易に取り外すことが可能になる。したがって、寸法誤差の許容範囲等を複数箇所に明示し、かつ、着脱作業を容易にすることができる。
【0051】
さらに、円環部21は、内周面21c,21c’の周方向の複数箇所に軸方向に直線状に存在する凸部25,35を有するため、円環部21をその周方向に回動させた場合には、ダイヤルゲージ10の外枠リング16もそれに伴って回動させることが可能になる。これにより、外枠リング16と一緒に目盛板15aも周方向に回動させることが可能になるので、例えば、円環部21を回すことでダイヤルゲージ10の指針15dの任意の回動位置に対するゼロ位置合わせの操作を行うことができる。本第1実施形態では、ダイヤルゲージ10の外枠リング16の外周には、スプライン溝が全周に存在するので、スプライン溝の幅、深さおよび周方向位置(形成ピッチ)に適合するように、凸部25,35の形状および円環部21の周方向位置を決定することによって、外枠リング16のスプライン溝と円環部21の凸部25,35が互いに良好に噛み合わせることが可能になる。これにより、外枠リング16に対する円環部21の周方向の滑りが抑制されるため、容易に両者を一体に回動させることができる。
【0052】
また、上述した本第1実施形態では、円環部21の内周面21c,21c’の周方向の複数箇所に軸方向に直線状に存在するように凸部25,35を内周面21c,21c’に形成したが、例えば、円環部21の軸方向に破線状や点線状に存在するように凸部を内周面21c,21c’に形成してもよい。例えば、凸部25,35をその長手方向の複数箇所で分断したような形状に構成したり、平面視円形状の点状凸部を点字ブロックのように円環部21の軸方向に一列に配置して構成したりしてもよい。
【0053】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態のダイヤルゲージカバー20やその改変例1のダイヤルゲージカバー30では、それらの表示面部22は、油性マーカーペン等により着色されたり、色情報や文字情報を印刷した円弧状の帯状シールが貼着されたりして使用できるように、表面が平らな面で構成されていた(図1図5参照)。例えば、図3(B)や図5(B)に示す例では、ダイヤルゲージ10の目盛り15bの0(ゼロ)を中心とした所定範囲には「合格品であることを明示する緑色」(判定情報23a)、この判定情報23aの両側の所定範囲には「準合格品であることを明示する黄色」(判定情報23b)、そして残りの範囲には「不合格品であることを明示する赤色」(判定情報23c)がそれぞれ着色されている。
【0054】
このような着色は、例えば、作業現場では、取り扱いが比較的に簡単かつ容易でしかも安価な油性のマーカーペンやフェルトペン等が用いられることが多い。これらのペンは、広範囲を素早く着色する必要からダイヤルゲージ10の目盛り15bの間隔(1~2mm)に比べてペン先が太いものが選択され易い傾向がある。
【0055】
このため、ペン先が太いマーカペン等を用いて表示面部22に着色した場合、異なる色で着色した境界部分の位置精度が低下し易い。即ち、ペン先が太いマーカペン等では、図3(B)や図5(B)に表されているように、緑色(判定情報23a)と黄色(判定情報23b)の境界部分や、黄色(判定情報23b)と赤色(判定情報23c)の境界部分を、計測器の目盛り板の目盛りに合わせて正確に塗り分けることが難しい。
【0056】
また、マーカーペンやフェルトペン等は、典型的には着色用のインクが液状であることから、表示面部22が平らな面(平坦面)で構成されている場合には、着色予定の範囲を超えてインクが流れて当該範囲に隣接した部分も着色されてしまうこともある。このような着色時におけるインクのはみ出しは、異なる色の境目を曖昧にし得ることから境界部分の明確な塗り分けを難しくしている。
【0057】
そこで、寸法誤差の許容範囲等を複数箇所に明示し、かつ、着脱作業を容易にし得ることに加えて、計測器の目盛り板の目盛りに合わせて明確かつ正確に塗り分け得ることを目的とした、表示カバーの発明の一実施形態を本明細書の第2実施形態として説明する。
【0058】
本第2実施形態に係るダイヤルゲージカバー40の構成は、図6および図7に図示されている。図6(A)にはダイヤルゲージカバー40の正面図、図6(B)には同背面図、図6(C)には同右側面図または左側面図、図6(D)には図6(B)に示す6D線矢印方向から見たダイヤルゲージカバー40の断面図、がそれぞれ図示されている。また図7には、ダイヤルゲージカバー40をダイヤルゲージ10に装着した状態例を示す説明図として、ダイヤルゲージ10の正面方向から見た図(図7(A))、図7(A)に示す矢印7B方向から見た一部断面を含む図(図7(B))が図示されている。図7(B)において、実線円内には一点鎖線円内の拡大図が図示されている。
【0059】
なお、ダイヤルゲージカバー40の平面図および底面図は図示されていないが、これらの図におけるダイヤルゲージカバー40の円環部41は、図6(C)に図示されているものを、平面図の場合には90度反時計回りに、また底面図の場合には時計回りにそれぞれ回転させた形状と同様に現れる。また、ダイヤルゲージカバー40の掛合爪45は、後述する図8(C)に図示されているダイヤルゲージカバー50の掛合爪55を90度反時計回り(平面図の場合)または時計回り(底面図の場合)に回転させた形状と同様に現れる。したがって、ダイヤルゲージカバー40の平面図および底面図は、これらを組み合わせた形状として把握することができる。
【0060】
なお、図6(A)~図6(D)および図8(C)に基づいてダイヤルゲージカバー40の外観形状は、意匠に係る物品「表示カバー」の全体意匠として把握することができる。また、図6(A)~図6(D)により、爪部45aを含む掛合爪45を除くダイヤルゲージカバー40の外観形状は、意匠に係る物品「表示カバー」の部分意匠として把握することができる。このような全体意匠および部分意匠の形状等においては、ダイヤルゲージカバー40の側面図は左右同様に現れ、また平面図および底面図についても同様に現れる。
【0061】
図6および図7に示すように、本第2実施形態のダイヤルゲージカバー40は、円環部41と掛合爪45により構成されており、第1実施形態のダイヤルゲージカバー20と同様に、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂により一体に成形されている。例えば、油性マーカーペン等による任意色(緑色、黄色、赤色等)の着色を可能にするため、例えば、成形後において白色になる合成樹脂が使用される。
【0062】
円環部41は、その内周面41cの内径Ddがダイヤルゲージ10の外枠リング16の外径よりも僅かに大径に設定された軸方向長さが短い円筒形状に形成されている(図6(D)参照)。円環部41の軸方向長さは、ダイヤルゲージ10の外枠リング16に装着可能な大きさ、つまり外枠リング16の軸方向長さとほぼ同じかまたはそれよりも短く、かつ装着状態において円環部41の一端部41aが表示部15の透明カバー15eの表面(端面)位置とほぼ同じ位置になる長さに設定されている(図7参照)。これにより、装着時における円環部41の一端部41aの端面(表示面)と透明カバー15eの端面とがほぼ面一になるので、第1実施形態のダイヤルゲージカバー20,30に比べて、ダイヤルゲージカバー40が装着されたダイヤルゲージ10を正面よりやや左側(右側、上側または下側)斜め方向から目盛板15aを見ても円環部41により視線が遮られ難い。そのため、目盛り15bの一部が視認できなくなるのを抑制することが可能になる。
【0063】
円環部41の周壁(筒壁)は、円環部41の軸方向に厚さが一定になるように設定されており、その厚さが例えば1.5mmに設定されている。この周壁の厚さは、第1実施形態のダイヤルゲージカバー20と同様に、ダイヤルゲージカバー40が装着されたダイヤルゲージ10をスタンド50で保持したり、スタンド50に保持されたダイヤルゲージ10にダイヤルゲージカバー40を装着したりする際に、ステム12を挟持するクランプ52に円環部41の外周面41dが接触しない値であり、隙間SPに入り得る値に設定されている(スタンド50、クランプ52や隙間SPについては図1を参照のこと)。
【0064】
円環部41の軸方向(厚さ方向)一端側であり表示面として機能する一端部41aは、その内径Daが先に説明した円筒形状の内径Ddよりも小さく設定されている。即ち、図6(D)に示すように、ダイヤルゲージカバー40は、軸方向断面においてL字形状を有するように一端部41aが形成されており、この一端部41aによりダイヤルゲージ10の外枠リング16の正面側の周縁部を覆い得るように構成されている(図7(B)参照)。この一端部41aの表面は、第1実施形態の表示面部22と同様に、油性マーカーペン等により着色されて、判定情報23a~23cを表示する。
【0065】
なお、一端部41aは、このように表示面として機能するが、第1実施形態の表示面部22のように、円環部41の内径方向に庇状に延びるものではない。そのため、第1実施形態の円環部21に比べて、円環部41の軸方向長さは小さく、つまり円環部41の厚さが薄くなるように構成されている。これにより、第1実施形態のダイヤルゲージカバー20,30に比べて、ダイヤルゲージカバー40が装着されたダイヤルゲージ10を正面よりやや左側(右側、上側または下側)斜め方向から目盛板15aを見ても、円環部41により視線が遮られ難い。そのため、目盛り15bの一部が視認できなくなるのを抑制することが可能になる。
【0066】
また、一端部41aには、円環部41の中心から円環部41の全周に向けて放射状に拡散するように拡がる(または円環部41の全周から円環部41の中心に向けて点状に集中するように集まる)複数の線上に位置する複数の線条溝42が形成されている。線条溝42は、直線状に連続する凹部(線条凹部)である。本第2実施形態では、ダイヤルゲージ10の目盛板15aに表示されているすべての目盛り15bと、一端部41aに形成される複数の線条溝42との両者が位置するように、目盛り15bの数に一致する100本の線上に複数の線条溝42の各位置が設定されている。
【0067】
つまり、0~99の各目盛り15bの目盛り線を外側に延長した線上に位置するように複数の線条溝42が目盛り15bと同じ間隔で円環部41の周方向に並んで一端部41aに形成されている。本第2実施形態では、このような複数の線条溝42を円環部41の外周面41dまで延長するように設けている。即ち、外周面41dの全周にも、ダイヤルゲージ10のそれぞれの目盛り15bに対応する位置にも複数の線条溝43が形成されている。なお、線条溝42,43に代えて、直線状に連続する凸部(線条凸部)として、例えば、線条畝や線条筋を一端部41aや外周面41dに設けてもよい。また、線条溝43は、形成されていなくてもよい。
【0068】
一方、円環部41の軸方向(厚さ方向)他端側である他端部41bには、円環部41の軸方向に突出する薄板形状の2枚の掛合爪45が周方向に180度間隔で位置し対峙するように形成されている。つまり、円環部41は、その直径線上に一対の掛合爪45を備えている。これらの掛合爪45は、それぞれ円環部41の内径側に向けて互いに対向するように爪部45aを備えている。これらの爪部45aは、例えば、装着時において外枠リング16の角部に引っ掛かることが可能な位置および高さに設定されている。そのため、外枠リング16に装着された状態においては、円環部41がその軸方向(外枠リング16の厚さ方向)に移動したりガタついたりしないように構成されている。
【0069】
本第2実施形態では、これらの爪部45aは、例えば、他端部41bから離れるに従ってその高さが徐々に大きくなる傾斜面状に構成されていることから、これらの爪部45aの対向間隔Deは、内周面41cの内径Ddよりも小さい(図6(D)参照)。そのため、ダイヤルゲージ10にダイヤルゲージカバー40を装着する際には、作業者は手や工具等を使用してこれらの掛合爪45を外径方向に拡げて外枠リング16に爪部45aを掛合させる必要があるものの、ダイヤルゲージカバー40を取り外す際には、ダイヤルゲージカバー40を反対側に引っ張ることで外枠リング16が爪部45aの傾斜面を登るようにして2枚の掛合爪45の対向間隔を押し広げる。これにより、作業者は、工具を用いることなく容易にダイヤルゲージカバー40をダイヤルゲージ10から外すことができる。
【0070】
なお、このような掛合爪45の爪部45aとは、逆に他端部41bに近づくに従ってその高さが徐々に大きくなる傾斜面状に爪部を構成してもよい。この場合には、ダイヤルゲージ10にダイヤルゲージカバー40を装着する際には、外枠リング16が当該爪部の傾斜面を登るようにして2枚の掛合爪45の対向間隔を押し広げるため、工具を用いることなく容易にダイヤルゲージカバー40をダイヤルゲージ10に取り付けることができるが、ダイヤルゲージカバー40を取り外す際には、工具等を使用してこれらの掛合爪45を外径方向に拡げながら、外枠リング16と当該爪部の掛合を解く必要がある。
【0071】
このようにダイヤルゲージカバー40を構成することにより、円環部41の一端部41aには、ダイヤルゲージ10の目盛り15bに対応する位置に線条溝42,43が形成されている。そのため、例えば、ダイヤルゲージ10の指針15dが指し示す目盛り15bに対する良否等の判定情報23a~23cをこれらに対応した緑色、黄色や赤色等の油性マーカペンやフェルトペン等による着色により塗り分けて目視可能に明示する場合、これらのペンの着色用インクがペン先から流れ出たとしてもこのようなインクの流れは線条溝42,43により妨げられて隣合う線条溝42,43に挟まれた範囲にインクが留まる。したがって、着色時におけるインクのはみ出しを抑制することが可能になる。
【0072】
また、一端部41aや外周面41dに設けた線条溝42,43に代えて、一端部41aや外周面41dに線条畝や線条筋を形成した場合には、油性マーカペンやフェルトペン等からペン先から出たインクの流れを妨げること加えて、ペン先の動きを阻害することも可能になる。そのため、例えば、作業者が誤ってペン先を予定外の範囲に動かした場合にもそのようなペンの動きを止められ得る。したがって、このような場合にも、着色時におけるインクのはみ出しを抑制することが可能になる。
【0073】
[第2実施形態の改変例]
次に、ダイヤルゲージ10の目盛板15aの目盛り15bの一部を覆い隠す目隠し板54を円環部51の内径側に備えたダイヤルゲージカバー50の構成例(改変例2)について図8および図9を参照しながら説明する。図8(A)にはダイヤルゲージカバー50の正面図、図8(B)には同背面図、図8(C)には同右側面図または左側面図、図8(D)には図8(B)に示す8D線矢印方向から見たダイヤルゲージカバー50の断面図、がそれぞれ図示されている。また図9には、ダイヤルゲージカバー50をダイヤルゲージ10に装着した状態例を示す説明図として、ダイヤルゲージ10の正面方向から見た図(図9(A))、図9(A)に示す矢印9B方向から見た一部断面を含む図(図9(B))が図示されている。
【0074】
図8および図9に示すように、改変例2のダイヤルゲージカバー50は、円環部51の内側に目隠し板54を有する点と、目隠し板54の形成範囲には円環部51に線条溝52,53が形成されていない点と、一対の掛合爪55を形成する位置が異なる点とが、前述したダイヤルゲージカバー40と主に異なる。そのため、これらの点以外については、円環部51、線条溝52,53、掛合爪55は、ダイヤルゲージカバー40の円環部41、線条溝42,43、掛合爪45と同様の形状や材質で構成されているので、これらの説明を省略する。なお、図示されていないが、円環部51の内径Da、内周面51cの内径Ddや掛合爪55の爪部55aの対向間隔Deは、ダイヤルゲージカバー40の内径Da,Ddや対向間隔Deと同様に設定されている。
【0075】
円環部51は、その内径側に扇形状を有する目隠し板54を備えている。目隠し板54は、例えば、板厚が約1mmに設定されており、この改変例2では、一端部51aに連続して形成、つまり円環部51と一体に形成されている。目隠し板54の形状(扇形状)は、当該ダイヤルゲージカバー50が装着されるダイヤルゲージ10の目盛板15aにおいて、覆い隠すべき目盛り15bの範囲に基づいて定められる。目隠し板54により隠される対象は、例えば、ダイヤルゲージ10の指針15dが指し示す目盛り15bの想定範囲を超える、不要な目盛りの部分やそれに付されている数字である。
【0076】
例えば、この改変例2では、0~100までの目盛り15bのうち、指針15dが指し示す目盛り15bの想定範囲を超えるものとして、30~70までの範囲が不要な目盛りである場合には、目隠し板54は、「30~70」の範囲の目盛りとそれらの目盛りに付されている数字「30」,「40」,「50」,「60」および「70」とを隠し得る角度θaに設定された扇形状に形成される。
【0077】
なお、目隠し板54の扇形状は、その中心付近が円弧状に切り欠かれている。この改変例2では、ダイヤルゲージ10の目盛板15aに表示される目盛り15bやその数字の表示領域を示す円15gよりも僅かに小径の直径Dfを有する円の一部として円弧状に切り欠いてこのような扇形状を形成している。また、この改変例2は、このような目隠し板54が形成される範囲においては、一端部51aや外周面51dに線条溝52,53が形成されていないが、このような範囲に線条溝52,53を形成してもよい。
【0078】
また、ダイヤルゲージカバー50では、円環部51の他端部51bに設けられる一対の掛合爪55の形成位置を、ダイヤルゲージカバー40の掛合爪45に対して円環部51の周方向に90度移動させている。前述したように、ダイヤルゲージカバー50をダイヤルゲージ10に装着する際には、掛合爪55を外径方向に拡げるように変形させる必要があるが、内径方向に目隠し板54が形成されている円環部51の範囲においては、円環部51の機械的な強度が増加するため、掛合爪55を外径方向に変形させることが難しくなる。そのため、改変例2のダイヤルゲージカバー50では、目隠し板54の形成範囲を避けた位置に掛合爪55を形成している。
【0079】
このようにダイヤルゲージカバー50を構成することにより、円環部51に形成される目隠し板54が、ダイヤルゲージ10の指針15dが指し示す目盛り15bの想定範囲を超える目盛りの部分を覆い隠すことが可能になる。これにより、作業者は、このような想定範囲外の目盛りの部分については視覚的に気にする必要がなくなる。したがって、想定範囲内の目盛り15bを指し示す指針15dやその目盛り15bに注意力を働かせることができ、作業効率を向上させることが可能になる。
【0080】
また、このような目隠し板54の表面54a(ダイヤルゲージ10に装着された状態において作業者が視認できる面)には、文字、記号または図形の情報等、例えば、当該ダイヤルゲージカバー50を用いて良否判定が行われる被測定物の情報(例えば、型式番号や記号)、ダイヤルゲージカバー50自体の情報(例えば、カバー管理番号)やそれが装着されるダイヤルゲージ10の情報(例えば、ゲージ型式番号や管理番号)等を表示することが可能になる。また、これら番号や記号等を表す英数字や番号等をコード化した二次元バーコード等を表示してもよい。また、目隠し板54の裏面54bは、ダイヤルゲージカバー50をダイヤルゲージ10に装着すると、表示部15に隠れてしまうことから、装着前にだけ目視確認すれば足りる情報を表示することで、ダイヤルゲージカバー50の使用時に確認する情報の表示スペースを確保することが可能になる。
【0081】
続いて、円環部61の他端部61bに、当該他端部61bから離れかつ軸方向に延びて文字、記号または図形の情報を表示可能な表示面部64を備えたダイヤルゲージカバー60の構成例(改変例3)について図10を参照しながら説明する。図10(A)にはダイヤルゲージカバー60の正面図、図10(B)には同背面図、図10(C)には同右側面図または左側面図、図10(D)には図10(B)に示す10D線矢印方向から見たダイヤルゲージカバー60の断面図、がそれぞれ図示されている。
【0082】
図10に示すように、改変例3のダイヤルゲージカバー60は、円環部61の他端部61bに表示面部64を有する点が前述したダイヤルゲージカバー40と主に異なる。そのため、これらの点以外については、円環部61、線条溝62,63、掛合爪65は、ダイヤルゲージカバー40の円環部41、線条溝42,43、掛合爪45と同様の形状や材質で構成されているので、これらの説明を省略する。なお、図示されていないが、円環部61の内径Da、内周面61cの内径Ddや掛合爪65の爪部65aの対向間隔Deは、ダイヤルゲージカバー40の内径Da,Ddや対向間隔Deと同様に設定されている。
【0083】
円環部61は、一端部61aに対して軸方向反対側に位置する他端部61bに、他端部61bから離れかつ円環部61の一部として中心角θbの円弧状に凹凸を有する曲面板形状をなして軸方向に延びる表示面部64を備えている。表示面部64は、例えば、板厚が約1mmに設定されており、この改変例3では、他端部61bに連続して形成、つまり円環部61と一体に曲面板形状を有するように形成されている。表示面部64は、凸状の表面64aと凹状の裏面64bを有しており、これらの両面64a,64bには、文字、記号または図形の情報を表示可能な表示面として機能する。
【0084】
例えば、この改変例3では、当該ダイヤルゲージカバー60を用いて良否判定が行われる被測定物の情報(例えば、型式番号や記号)、ダイヤルゲージカバー60自体の情報(例えば、カバー管理番号)やそれが装着されるダイヤルゲージ10の情報(例えば、ゲージ型式番号や管理番号)等が表示される。これらの表示は、例えば、これら番号や記号等を表す英数字や番号等をコード化した二次元バーコード等である。
【0085】
なお、表示面部64を形成する曲面板形状の円弧の中心角θbは、例えば、表示面として必要な面積を確保し得る大きさ、かつ、掛合爪65の形成位置を妨げない範囲(例えば、170度以下)で設定される。また、表示面部64を形成する曲面板形状の軸方向長さWは、例えば、当該ダイヤルゲージカバー60が装着されるダイヤルゲージ10やダイヤルゲージ10を保持するスタンド50に接触しない範囲で設定される。
【0086】
また、表示面部64は、ダイヤルゲージカバー60をダイヤルゲージ10に装着した場合には、その裏面64bが外枠リング16や本体ケース11等に隠れてしまうことから、ダイヤルゲージカバー60の使用時、つまり装着後においても、目視確認する必要のある情報は、表面64aに表示する必要がある。装着前にだけ目視確認すれば足りる情報は、裏面64bに表示することで、ダイヤルゲージカバー60の使用時に確認する情報の表示スペースを確保することが可能になる。
【0087】
さらに、このような表示面部64は円環部61の他端部61bに設けられることから、同様に他端部61bに設けられる一対の掛合爪65の形成位置は、表示面部64が形成されない位置に限られる。また、前述した改変例2のダイヤルゲージカバー50と異なり、表示面部64が形成される範囲の円環部61の一端部61aや外周面61dには、線条溝62,63が形成されている。
【0088】
このようにダイヤルゲージカバー60を構成することにより、円環部61に形成される表示面部64には、当該ダイヤルゲージカバー60に関する情報や当該ダイヤルゲージカバー60が装着されるダイヤルゲージ10の情報等として、文字、記号または図形の情報を表示面に表示することが可能になる。したがって、作業者は、このような情報を目視することにより当該ダイヤルゲージカバー60やそれが装着されるダイヤルゲージ10に関する情報を確認することが可能になる。
【0089】
以上説明したように、本第2実施形態のダイヤルゲージカバー40,50,60では、円環部41,51,61は、ダイヤルゲージ10の外枠リング16よりも内径Ddが僅かに大径であり外枠リング16の外周に装着可能な円環形状である。そして、外枠リング16に装着された状態の透明カバー15eの側に位置する円環部41,51,61の軸方向一端側に表示面としての一端部41a,51a,61aを有する。この一端部41a,51a,61aには、複数の線条溝42,52,62または線条畝もしくは線状筋が形成(配置)されており、これら複数の線条溝42等は、円環部41,51,61が装着されるダイヤルゲージ10の目盛り15bと同じ間隔で円環部41,51,61の周方向に並ぶ。複数の線条溝42等は円環部41等の表示面の全周ではなく周の一部だけでもよい。
【0090】
これにより、一端部41a,51a,61aには、ダイヤルゲージ10の目盛り15bに対応する位置に線条溝42等が存在するので、それらが着色用の液状インク等の液体の流れを妨げる。そのため、例えば、ダイヤルゲージ10の指針15dが指し示す目盛り15bに対する良否等の判定情報23a~23cをマーカーペンやフェルトペン等で着色する場合等においては、その着色用のインクが線条溝42等に挟まれた範囲に留まり易くなる。したがって、着色時におけるインクのはみ出しを抑制することが可能になるので、ダイヤルゲージ10の目盛り15bに合わせて明確かつ正確に塗り分けることができる。
【0091】
また、円環部41,51,61の軸方向一端側に対して反対側に位置する円環部41,51,61の他端部41b,51b,61bに、ダイヤルゲージ10の外枠リング16に掛合可能な複数の掛合爪45,55,65を備える。これにより、外枠リング16に円環部41,51,61を装着する際には、これらの掛合爪45,55,65が外枠リング16の外周の角部の段差部に掛合させることができ、当該ダイヤルゲージカバー40,50,60を容易に装着することが可能になる。またこのように外枠リング16の周囲に装着されている当該ダイヤルゲージカバー40,50,60は、例えば、作業者が手等で掛合しない方向に掛合爪45,55,65に力を加えることによって外枠リング16と掛合爪45,55,65の掛合を解くことができ、外枠リング16から当該ダイヤルゲージカバー40,50,60を容易に取り外すことが可能になる。
【0092】
なお、上述した本第2実施形態では、ダイヤルゲージカバー40,50,60を構成する円環部41,51,61の一端部41a,51a,61aに線条溝42,52,62または線条畝もしくは線状筋を形成(配置)したが、第1実施形態のダイヤルゲージカバー20を構成する円環部21の表示面部22やダイヤルゲージカバー30を構成する円環部21の拡張部31に、複数の線条凹部または線条凸部として、複数の線条溝42または線条畝もしくは線状筋を形成(配置)してもよい。これにより、上述したダイヤルゲージカバー40,50,60と同様に、複数の線条溝42等が着色用の液状インク等の液体の流れを妨げるため、例えば、ダイヤルゲージ10の指針15dが指し示す目盛り15bに対する良否等の判定情報23a~23cをマーカーペンやフェルトペン等で着色する場合等においては、その着色用のインクが線条溝42等に挟まれた範囲に留まり易くなる。したがって、着色時におけるインクのはみ出しを抑制することが可能になるので、ダイヤルゲージ10の目盛り15bに合わせて明確かつ正確に塗り分けることができる。
【0093】
なお、第2実施形態に係るダイヤルゲージカバー40、改変例2に係るダイヤルゲージカバー50および改変例3に係るダイヤルゲージカバー60の構成をそれぞれ技術的思想の創作として捉えると、次のように表現することが可能になる。
【0094】
[1]目盛りが表示される目盛板と、回動軸を中心に前記目盛板上で回動して前記目盛りを指し示す指針と、前記目盛板よりも大径で厚みのある円盤形状を有し少なくとも前記目盛りと前記指針とを外部から目視可能な透明部を備え前記目盛板および前記指針を覆いかつ前記目盛板と一緒に周方向に回動可能な前面カバーと、を備えた計測器に対して装着可能な表示カバーであって、
前記計測器の前面カバーよりも内径が僅かに大径であり前記前面カバーの外周に装着可能な円環形状であって前記前面カバーに装着された状態の前記透明カバーの側に位置する軸方向一端側の端面に表示面を有する円環部を備えており、
前記表示面には、前記目盛り板の目盛りと同じ間隔で前記円環部の周方向に並ぶ複数の線条凹部または線条凸部が配置されている、ことを特徴とする表示カバー。
[2]前記軸方向一端側に対して前記円環部の軸方向反対側に位置する前記円環部の軸方向他端側に、前記前面カバーに掛合可能な複数の掛合爪を備える、ことを特徴とする上記[1]に記載の表示カバー。
[3]前記円環部が前記前面カバーに装着された状態において、前記円環部の内径方向に、前記目盛板の目盛りの一部を覆い隠す目隠し部を備える、ことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の表示カバー。
[4]前記軸方向一端側に対して前記円環部の軸方向反対側に位置する前記円環部の軸方向他端側に、当該軸方向他端側から離れかつ前記軸方向に延びて文字、記号または図形の情報を表示可能な表示面を備える、ことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の表示カバー。
【0095】
上記[1]の構成によると、円環部は、計測器の前面カバーよりも内径が僅かに大径であり前面カバーの外周に装着可能な円環形状である。そして、前面カバーに装着された状態の透明カバーの側に位置する軸方向一端側の端面に表示面を有する。この表示面には、複数の線条凹部または線条凸部が配置されており、これら線条凹部または線条凸部は、円環部が装着される計測器の目盛り板の目盛りと同じ間隔で円環部の周方向に並ぶ。これにより、表示面には、計測器の目盛りに対応する位置に線条凹部や線条凸部が存在するので、それらが着色用の液状インク等の液体の流れを妨げる。そのため、例えば、計測器の指針が指し示す目盛りに対する良否等の判定情報をマーカーペンやフェルトペン等で着色する場合等においては、その着色用のインクが線条凹部や線条凸部に挟まれた範囲に留まり易くなる。したがって、着色時におけるインクのはみ出しを抑制することが可能になるので、計測器の目盛り板の目盛りに合わせて明確かつ正確に塗り分けることができる。
【0096】
上記[2]の構成によると、円環部の軸方向一端側に対して円環部の軸方向反対側に位置する円環部の軸方向他端側に、前面カバーに掛合可能な複数の掛合爪を備える。これら複数の掛合爪は、例えば、前面カバーに対して内径方向に向けて引っ掛かるものや、前面カバーに対して径方向外側に向けて引っ掛かるものがある。これにより、計測器の前面カバーに円環部を装着する際には、これらの掛合爪が前面カバーの外周の角部の段差部に掛合させることができ、当該表示カバーを容易に装着することが可能になる。またこのように前面カバーの周囲に装着されている当該表示カバーは、例えば、作業者が手等で掛合しない方向に掛合爪に力を加えることによって前面カバーと掛合爪の掛合を解くことができ、前面カバーから当該表示カバーを容易に取り外すことが可能になる。
【0097】
上記[3]の構成によると、目盛板の目盛りの一部を覆い隠す目隠し部を円環部の内径方向(内径側)に備える。これにより、例えば、計測器の指針が指し示す目盛りの想定範囲を超える目盛り部分(想定範囲外の目盛り部分)を、目隠し部により覆い隠すことが可能になる。したがって、作業者は、このような想定範囲外の目盛り部分については視覚的に気にする必要がなくなるので、想定範囲内の目盛りを指し示す指針やその目盛りに注意力を働かせることができ、作業効率を向上させることが可能になる。また、このような目隠し部の表側(計測器に装着された状態において作業者が視認できる面)には、文字、記号または図形の情報を表示することも可能になる。
【0098】
上記[4]の構成によると、円環部の軸方向一端側に対して円環部の軸方向反対側に位置する円環部の軸方向他端側に、当該軸方向他端側から離れかつ軸方向に延びて文字、記号または図形の情報を表示可能な表示面を備える。これにより、当該表示カバーに関する情報や当該表示カバーが装着される計測器の情報等として、文字、記号または図形の情報を表示面に表示することが可能になる。したがって、作業者は、このような情報を目視することにより当該表示カバーやそれが装着される計測器に関する情報を確認することが可能になる。
【0099】
なお、上述した第2実施形態では、ダイヤルゲージカバー40,50,60を構成する円環部41,51,61の他端部41b,51b,61bに掛合爪45,55,65を備えたが、これらの掛合爪45等に代えて、例えば、第1実施形態のダイヤルゲージカバー30の円環部21が有するような複数の凸部35(他端部21bから一端部21aに向かうほど高さが大きくなる楔状の凸部)を、円環部41,51,61の内周面41c,51c,61cの周方向に備えるように構成してもよい。また、第1実施形態のダイヤルゲージカバー20を構成する円環部21のように、円環部41,51,61の周壁が一端部41a,51a,61aから他端部41b,51b,61bに向かって板厚が薄くなるように形成するとともに複数の凸部25(高さがその長手方向の位置に関わらず一定の凸部)を、円環部41,51,61の内周面41c,51c,61cの周方向に備えるように構成してもよい。これらの凸部は、円環部の内周面の周方向の複数箇所に軸方向に直線状に存在する凸部である。
【0100】
これにより、第1実施形態のダイヤルゲージカバー20,30のように、円環部41,51,61は、ダイヤルゲージ10の外枠リング16に装着する際には、外枠リング16の外周と円環部41,51,61の内周面41c,51c,61cとの間に介在する凸部が両者間に嵌入するため、円環部41を外枠リング16に嵌合させることができ、ダイヤルゲージカバー40,50,60を容易に装着することが可能になる。またこのように外枠リング16の周囲に円環部41,51,61が嵌合することで装着されているダイヤルゲージカバー40,50,60は、例えば、作業者が両手の親指以外の人差し指等を円環部41,51,61に掛けて親指で透明カバー15eを押しながら円環部41,51,61を手前に引くように力を加えることにより、外枠リング16と円環部41,51,61の嵌合を解くことができるので、外枠リング16からダイヤルゲージカバー40,50,60を容易に取り外すことが可能になる。したがって、寸法誤差の許容範囲等を複数箇所に明示し、かつ、着脱作業を容易にすることができる。
【0101】
なお、上述した本第1実施形態や本第2実施形態では、ダイヤルゲージカバー20,30,40,50,60を装着する計測器として、スピンドル式のダイヤルゲージ10を例示して説明したが、目盛りが表示される目盛板と、回動軸を中心に目盛板上で回動して目盛りを指し示す指針と、これらを覆う前面カバーと、を備えた目盛りを指針で指すタイプの計測器であれば、例えば、てこ式のダイヤルゲージにもダイヤルゲージカバー20,30,40,50,60を装着して適用することが可能であり、上述と同様に技術的な作用および効果を得ることができる。また、ダイヤルゲージ以外の計測器にも装着して適用することができる。
【0102】
また、上述した本第1実施形態や本第2実施形態では、円環部21,41,51,61の内周面21c,21c’,41c,51c,61cの周方向の複数箇所に軸方向に直線状に存在するように凸部25,35を内周面21c,21c’,41c,51c,61cに形成したが、例えば、円環部21,41,51,61の軸方向に破線状や点線状に存在するように凸部を内周面21c,21c’,41c,51c,61cに形成してもよい。例えば、凸部25,35をその長手方向の複数箇所で分断したような形状に構成したり、平面視円形状の点状凸部を点字ブロックのように円環部21,41,51,61の軸方向に一列に配置して構成したりしてもよい。
【0103】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲等に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
【符号の説明】
【0104】
10…ダイヤルゲージ(計測器)
15…表示部
15a…目盛板
15b…目盛り
15c…回動軸
15d…指針
15e…透明カバー(透明部、前面カバー)
15f…外周縁(透明カバーの外周縁部)
16…外枠リング(前面カバー)
17…外枠クランプ
20,30,40,50,60…ダイヤルゲージカバー(表示カバー)
21,41,51,61…円環部
21a…一端部(軸方向一端側)
21c,21c’…内周面
22…表示面部
22a…先端部
23a~23c…判定情報
25…凸部
31…拡張部
32…切欠部
35…凸部
35a…一端部
35b…他端部
41a,51a,61a…一端部(軸方向一端側、表示面)
41b,51b,61b…他端部(軸方向他端側)
42,43,52,53,62,63…線条溝(線条凹部)
45,55,65…掛合爪
54…目隠し板(目隠し部)
64…表示面部
【要約】
【課題】寸法誤差の許容範囲等を複数箇所に明示し、かつ、着脱作業を容易にし得る表示カバーを提供する。
【解決手段】ダイヤルゲージカバー20では、円環部21は、ダイヤルゲージ10の外枠リング16よりも内径が僅かに大径の円環形状で内周面の周方向の複数箇所に軸方向に直線状に存在する凸部を有し外枠リング16の外周に装着される。表示面部22は、先端部22aが円環部21の一端部から内径方向および周方向に庇状に延びるとともに外枠リング16に装着された状態においては透明カバー15eの外周縁15fを覆い目盛り15bの近傍まで到達する。これにより、表示面部22の先端部22aは、目盛板15aの周囲において目盛り15bの近くまで達するため、このような先端部22aを含めて表示面部22に、例えば、ダイヤルゲージ10の指針15dが指し示す目盛り15bに対する良否等の判定情報を色や文字等で複数箇所に表示することが可能になる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10