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特許7161084電子部品実装基板の封止方法および熱硬化性シート
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  • 特許-電子部品実装基板の封止方法および熱硬化性シート 図1
  • 特許-電子部品実装基板の封止方法および熱硬化性シート 図2
  • 特許-電子部品実装基板の封止方法および熱硬化性シート 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】電子部品実装基板の封止方法および熱硬化性シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20221018BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221018BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01L21/56 R
H01L23/30 R
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022542772
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2022003123
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2021014655
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】浅原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-062908(JP,A)
【文献】特開2014-229791(JP,A)
【文献】特開2014-229790(JP,A)
【文献】特開2015-115347(JP,A)
【文献】特開2014-204033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の電子部品が実装された基板であって、前記電子部品と前記基板との間に空間が設けられている電子部品実装基板を準備する工程と、
(b)前記電子部品と接するように、前記基板よりも平面視でのサイズが小さい熱硬化性シートを前記電子部品実装基板に載置する工程と、
(c)載置された前記熱硬化性シートを加熱成型し、前記電子部品と前記基板との間の空間に熱硬化性シートの溶融物を充填して硬化させる工程と、
を含み、
前記複数の電子部品を全て囲うとともに囲まれた面積が最小になる枠線上の任意の点Pと、前記基板の中心との距離をLpとするとき、
前記点Pと前記基板の中心とを通る直線と前記熱硬化性シートの外縁とが交わる点Qと、前記基板の中心との距離Lqが0.9Lp以上、1.1Lp以下である、電子部品実装基板の封止方法。
【請求項2】
前記点Qと前記基板の中心との距離が、1.05Lp以下である、請求項1に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項3】
前記基板の外形と前記熱硬化性シートの外形とが相似である、請求項1または2に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項4】
前記電子部品の高さが、5μm~800μmであり、
前記電子部品間の距離が、5μm~2000μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項5】
前記電子部品と前記基板との間の前記空間の高さが、5μm~100μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項6】
前記熱硬化性シートが、測定温度125℃、測定時間0~100秒におけるtanδ(損失正接)の極大値が3以上である樹脂組成物Aで構成されたA層を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項7】
更に、樹脂組成物Bで構成されたB層を有し、
式:40000≦α×E’≦250000[Pa/K]
を満たし、
αは、前記樹脂組成物Bを175℃で1時間加熱して硬化させた硬化物の80℃における熱膨張係数[ppm/K]であり、
E’は、前記硬化物の25℃における貯蔵弾性率[GPa]である、請求項6に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項8】
前記A層の厚みに対する前記B層の厚みの比:B/Aが、0.1~80である、請求項7に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項9】
前記熱硬化性シートは、フィラーを含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項10】
前記フィラーの最大粒子径が35μm以下である、請求項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項11】
前記熱硬化性シートにおける前記フィラーの含有量は30~85質量%である、請求項9または10に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項12】
前記熱硬化性シートの形状が円形である、請求項1~11のいずれか1項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項13】
請求項6に記載の電子部品実装基板の封止方法に用いるための熱硬化性シート。
【請求項14】
前記電子部品と前記基板との間の前記空間の高さが、5μm~40μmである、請求項1~12のいずれか1項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項15】
前記フィラーの平均粒径が10μm以下である、請求項9~11のいずれか1項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項16】
前記点Qと前記基板の中心との距離が、0.91Lp以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項17】
前記点Qと前記基板の中心との距離が、0.93Lp以上である、請求項16に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【請求項18】
前記工程(c)において、大気圧よりも低い圧力雰囲気下で、載置された前記熱硬化性シートを加熱して前記電子部品と前記基板との間の空間に前記熱硬化性シートの溶融物を充填しながら加圧して硬化させる、請求項1~17のいずれか1項に記載の電子部品実装基板の封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装基板の封止方法および熱硬化性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ接続方式で接続された電子部品の封止は、電子部品と基板との隙間に流動性を有する液状の封止材でアンダーフィルを施した後、別の液状封止材または封止フィルムでオーバーモールドする方法が一般的である(特許文献1~3参照)。
【0003】
一方、工程数を低減するために、アンダーフィルとオーバーモールドを同時に行うことができるモールドアンダーフィル材料が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-131016号公報
【文献】特開2014-229769号公報
【文献】特開2015-178635号公報
【文献】特開2015-71670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アンダーフィルとオーバーモールドを同時に行う場合、複数の電子部品と基板との間の空間に封止材の未浸入部(ボイド)が生じることがあり、安定して十分なアンダーフィルを施すことは難しい。
【0006】
本発明の目的の一つは、複数の電子部品が実装され、電子部品と基板との間に空間が設けられている電子部品実装基板を封止する際に、電子部品と基板との間の空間における封止材の未浸入部(ボイド)を抑制し、安定して十分なアンダーフィルを施すことができる封止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、(a)複数の電子部品が実装された基板であって、前記電子部品と前記基板との間に空間が設けられている電子部品実装基板を準備する工程と、(b)前記電子部品と接するように熱硬化性シートを前記電子部品実装基板に載置する工程と、(c)載置された前記熱硬化性シートを加熱成型し、前記電子部品と前記基板との間の空間に熱硬化性シートの溶融物を充填して硬化させる工程と、を含み、前記複数の電子部品を全て囲うとともに囲まれた面積が最小になる枠線上の任意の点Pと、前記基板の中心との距離をLpとするとき、前記点Pと前記基板の中心とを通る直線と前記熱硬化性シートの外縁とが交わる点Qと、前記基板の中心との距離Lqが0.9Lp以上である、電子部品実装基板の封止方法に関する。
【0008】
また、本発明の別の側面は、上記電子部品実装基板の封止方法に用いるための熱硬化性シートであって、測定温度125℃、測定時間0~100秒におけるtanδ(損失正接)の極大値が3以上である樹脂組成物で構成された層を有する熱硬化性シートに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記側面によれば、複数の電子部品が実装され、電子部品と基板との間に空間が設けられている電子部品実装基板を封止する際に、電子部品と基板との間の空間における封止材の未侵入部(ボイド)が形成されにくくなり、安定して十分なアンダーフィルを施すことができるようになる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電子部品実装基板の一例を示す概念図である。
図2】基板の中心C、複数の電子部品を全て囲うとともに囲まれた面積が最小になる枠線F、枠線上の任意の点P、熱硬化性シートの外縁S、点Pと中心Cとを通る直線Lcpと外縁Sとの交点Qの一例を示す図である。
図3】電子部品実装基板の封止方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る電子部品実装基板の封止方法は、(a)複数の電子部品が実装された基板であって、電子部品と基板との間に空間が設けられている電子部品実装基板を準備する工程と、(b)電子部品と接するように熱硬化性シートを電子部品実装基板に載置する工程と、(c)載置された熱硬化性シートを加熱成型し、電子部品と基板との間の空間に熱硬化性シートの溶融物を充填して硬化させる工程とを含む。
【0012】
本実施形態に係る封止方法によれば、基板と、基板に搭載された電子部品と、電子部品を封止する樹脂組成物の硬化物とを具備する電子部品実装基板(以下、「封止体」とも称する。)が得られる。よって、本実施形態に係る封止方法は、熱硬化性シートの溶融物の硬化物で封止された電子部品実装基板(封止体)の製造方法でもある。電子部品実装基板は、基板の片面だけを硬化物で封止した片面封止体であってもよく、両面を硬化物で封止した両面封止体であってもよい。
【0013】
なお、硬化物は、半硬化物(Bステージ)であってもよい。半硬化物(Bステージ)とは、室温では固体を呈するが、所定温度以上に加熱された状態では、暫くの間、流動性を持ち、その後、硬化反応が進行するにしたがって流動性を失う樹脂組成物をいう。以下、硬化物という場合は、それが半硬化物である場合を包含する。
【0014】
工程(a)で準備される電子部品実装基板において、複数の電子部品は、例えば、フリップチップ接続方式で基板(具体的には基板に設けられた電極)に接続されている。フリップチップ接続方式では、電子部品が、アレイ状に並んだ突起状の端子(「バンプ」とも称される。)によって基板に実装される。バンプは、電子部品の基板との対向面に複数設けられている。バンプは、電子部品の一部を構成する。電子部品と基板との間の空間は、概ね複数のバンプ間の空隙で占められる。
【0015】
工程(b)で用いられる熱硬化性シートは、封止材であり、シート状に成形されたモールドアンダーフィル材料である。熱硬化性シートは、加熱により溶融し、その後、硬化する性質を有する。熱硬化性シートは、例えば、熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称する。)で構成され、樹脂組成物は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含む。
【0016】
熱硬化性シートは、熱硬化性樹脂組成物の半硬化物(Bステージ)であってもよい。以下、熱硬化性樹脂組成物もしくは熱硬化性シートの硬化物も、未硬化物と区別せずに封止材と称する。
【0017】
工程(c)において、熱硬化性シートの加熱成型は、金型を用いて行われる。金型は、複数の電子部品を覆うように電子部品実装基板に載置された熱硬化性シートを基板に対して押圧する。金型は任意のタイミングで加熱される。加熱により熱硬化性シートが溶融し、溶融物が電子部品表面を覆いながら電子部品と基板との間の空間に充填されるとともに、各電子部品間に充填され、その後、硬化する。すなわち、アンダーフィル封止と、電子部品全体の封止を行うオーバーモールド封止とが一括で行われる。ここでは、オーバーモールド封止とは、少なくとも電子部品の表面を封止材で封止することを意味する。なお、金型の押圧面は、剥離フィルムで覆われていてもよい。
【0018】
一般的なオーバーモールド封止では、液状の封止材を用いる場合、封止材が電子部品を搭載した基板の中央部にポッティングされ、金型で押圧され、基板に押し付けられる。また、熱硬化性シートもしくはシート状の封止材を用いる場合、液状の封止材を用いる場合に準じて、基板よりもサイズの小さい熱硬化性シートを基板の中心寄りに載置することが一般的である。これは、封止材が金型で押圧され、基板に押し付けられる際に、溶融した封止材が流動し、基板に濡れ広がることを許容するためである。しかし、基板上には複数の電子部品が実装されているため、溶融した封止材の流動が制限されやすく、基板上に十分に濡れ広がらず、電子部品と基板との間の空間が溶融した封止材で十分に埋められないことがある。
【0019】
これに対し、本実施形態においては、熱硬化性シートの平面視でのサイズと形状とが、複数の電子部品を全て囲うとともに囲まれた面積が最小になる枠線(以下、「枠線F」とも称する。)に応じて設計され、基板上に載置される。具体的には、枠線F上の任意の点Pと、基板の中心(以下、「中心C」とも称する。)との距離をLpとする。また、点Pと中心Cとを通る直線(以下、「直線Lcp」とも称する。)と熱硬化性シートの外縁(以下、「外縁S」とも称する。)との交点を点Qとする。このとき、点Qと中心Cとの距離(以下、「Lq」とも称する。)が0.9Lp以上に制限される。距離Lqは、0.91Lp以上であってもよく、0.93Lp以上であってもよく、0.96Lp以上であってもよい。なお、枠線Fの軌跡の長さの70%以上、更には90%以上において、LpとLqが上記関係を満たしてもよく、98%~100%においてLpとLqが上記関係を満たすことが望ましい。
【0020】
熱硬化性シートの公差、基板の公差、更には金型の交差を考慮して、Lqを1.0Lp以上としてもよい。また、上面視で基板が熱硬化性シートで完全に覆われるようにしてもよい。
【0021】
熱硬化性シートが円形である場合、そのような熱硬化性シートの半径Rは、距離Lqに相当する。このときは、距離Lq(半径R)と距離Lpの最大値MLpとが、Lq≧0.9MLpなどの上記関係を満たせばよい。なお、Lpの最大値であるMLpは、点Pが基板上の全ての電子部品の部位のうち、基板の中心から最も離れた点に位置するときの距離Lpである。
【0022】
すなわち、本実施形態では、上面視で、熱硬化性シートが複数の電子部品を完全に覆うか、大半を覆うように基板に載置される。枠線Fよりも熱硬化性シートの外縁Sが内側(中心C寄り)にある場合でも、点Pと点Qとの距離は僅かである。この場合、金型から熱硬化性シートに付与される圧力エネルギーのより多くが、電子部品と基板との間の空間に熱硬化性シートの溶融物を充填するために利用される。よって、電子部品と基板との間の空間に溶融物が充填されやすく(封止材の未浸入部が形成されにくく)、安定して十分なアンダーフィルを施すことができる。このような効果は、例えば、パネルレベルパッケージ(PLP)、ウエハレベルパッケージ(WLP)のようなパッケージ技術で、大面積の基板に搭載された複数の電子部品を一括に封止する場合に顕著になる。
【0023】
工程(c)において、金型の押圧面から熱硬化性シート(もしくはその溶融物)に付与される圧力は、例えば、0.5MPa以上、15MPa以下であってもよく、2MPa以上、12MPa以下であってもよい。これにより、狭い空間への溶融物の浸入を促進することができる。
【0024】
点Qと中心Cとの距離Lqの上限は、安定して十分なアンダーフィルを施す観点からは特に制限されない。ただし、熱硬化性シートの製造コストおよびハンドリングの良さを考慮すると、Lqは、例えば1.45Lp以下であってもよく、1.2Lp以下であってもよく、1.1Lp以下でもよく、1.05Lp以下でもよい。
【0025】
熱硬化性シートの加熱成型は、減圧雰囲気で行ってもよい。この場合、より良好なアンダーフィル部分を形成し得る。減圧雰囲気とは、大気圧よりも低い圧力雰囲気であればよいが、例えば、10000Pa(パスカル)以下、つまり100ヘクトパスカル(hPa)以下の圧力雰囲気が好ましく、5000Pa(パスカル)以下でもよく、500Pa(5hPa)未満が望ましく、200Pa(2hPa)未満がより望ましい。
【0026】
工程(c)を経て得られた封止体において、硬化物は、基板と電子部品との間の空間を埋めるアンダーフィル部分と、電子部品の基板と対向しない面を封止するオーバーモールド部分とを構成している。アンダーフィル部分とオーバーモールド部分の構造は連続している。
【0027】
ここで、「アンダーフィル部分とオーバーモールド部分の構造が連続している」とは、アンダーフィル部分とオーバーモールド部分とが同一の封止材により同時に形成されることと同義である。すなわち、アンダーフィル部分とオーバーモールド部分を構成する硬化物の組成は同じである。また、アンダーフィル部分とオーバーモールド部分との境界は顕微鏡観察などでも観測されず、アンダーフィル部分とオーバーモールド部分のモルホロジー(組織の状態)に実質的な違いはない。
【0028】
基板の種類は、特に限定されず、例えばウエハ、パネル、ガラス基板、樹脂基板、プリント配線基板等が包含される。ウエハとしては、シリコンウエハ、サファイアウエハ、化合物半導体ウエハなどが挙げられる。パネルとしては、液晶パネル、有機(もしくは無機)LEDパネルなどに用いられる板状部材が挙げられる。樹脂基板としては、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板、フッ素樹脂基板などが挙げる。基板自体が、電子部品の集合体であってもよい。電子部品の集合体は、例えば、複数に個片化される前の半導体チップの集合体が挙げられる。
【0029】
電子部品は、能動素子でもよく、受動素子でもよい。電子部品は、半導体素子であってもよく、それ以外でもよい。電子部品は、BGA(Ball grid array)、CSP(Chip size package)のような半導体パッケージであってもよい。電子部品の具体例としては、RFIC(Radio frequency identifier)、チップ多層LCフィルタ、誘電体フィルタ、積層セラミックコンデンサ(MLCC)などが挙げられる。
【0030】
基板の外形と熱硬化性シートの外形とは概ね対応していることが望ましい。基板の外形と熱硬化性シートの外形とは相似であってもよい。例えば、基板の外形が円形である場合には、熱硬化性シートの外形も円形でよい。基板の外形が矩形である場合には、熱硬化性シートの外形も矩形でよい。基板が、オリフラウエハのように概ね円形の外形を有する場合、熱硬化性シートの外形は円形でもよい。また、熱硬化性シートの外縁Sの軌跡の長さの70%以上が基板の外形と相似の関係を満たしてもよい。
【0031】
電子部品のサイズは、特に限定されないが、電子部品の基板と対向する面の面積は、電子部品1つ当たり、例えば1mm以上であってもよく、3mm以上であってもよい。また、電子部品の基板と対向する面の面積は、電子部品1つ当たり、例えば1600mm以下であってもよく、2500mm以下であってもよい。電子部品のサイズは、基板上の任意の複数の電子部品(例えば10個)で測定し、平均値を求めればよい。
【0032】
電子部品の高さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上、800μm以下でもよく、10μm以上、600μm以下でもよい。電子部品の高さとは、例えば、バンプと基板との接触位置から電子部品の最大高さまでの距離である。すなわち、本実施形態は、高さが5μm程度の微小な電子部品を複数実装する基板に対しても、良好なアンダーフィル封止とオーバーモールド封止とを一括で行うことができる。
【0033】
電子部品間の距離は、特に限定されないが、例えば、5μm以上、2000μm以下でもよく、10μm以上、1000μm以下でもよい。電子部品間の距離とは、隣接する電子部品同士の最も近接する外縁間の距離(すなわち、隙間の間隔)である。すなわち、本実施形態は、隙間の間隔が5μm程度の高密度実装された基板に対しても、良好なアンダーフィル封止とオーバーモールド封止とを一括で行うことができる。電子部品間の距離は、基板上の任意の複数対の電子部品(例えば10対)で測定し、平均値を求めればよい。
【0034】
電子部品と基板との間の空間の高さは、例えば、2μm以上でもよく、5μm~100μmでもよく、10μm以上、80μm以下でもよい。すなわち、本実施形態は、バンプが小さく、空間の高さが2~5μm程度の基板にも、良好なアンダーフィル封止とオーバーモールド封止とを一括で行うことができる。電子部品と基板との間の空間の高さは、例えば40μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。なお、電子部品と基板との間の空間の高さとは、電子部品の基板と対向する面と基板との最小距離をいう。最小距離は、基板上の任意の複数の電子部品(例えば10個)で測定し、平均値を求めればよい。
【0035】
熱硬化性樹脂の硬化物で封止された電子部品実装基板(封止体)において、硬化物の最大厚みTは、例えば、1.2mm以下でもよく、1.0mm以下でもよく、0.8mm以下でもよく、0.4mm以下(すなわち400μm以下)であってもよい。本実施形態によれば、例えばPLP、WLPといったパッケージ用途において、上記のように薄い封止体を形成する場合でも、良好なアンダーフィル封止とオーバーモールド封止とを一括で行う場合にも有効である。
【0036】
封止体において、硬化性樹脂組成物の硬化物の最大厚みTとは、基板の表面からの硬化物の基板とは反対側の表面までの最大距離である。最大厚みTは、基板上の複数箇所(例えば10箇所)で測定し、平均値を求めればよい。
【0037】
<熱硬化性シート>
電子部品実装基板の封止方法に用いる熱硬化性シートは、単層構造でもよく、複層構造でもよい。複層構造とは、組成の異なる層が2層以上積層された構造である。
【0038】
熱硬化性シートを構成する熱硬化性樹脂組成物には、固形成分が含まれてもよい。固形成分は、無機材料および有機材料のいずれであってもよい。樹脂組成物中に分散した固形成分は、粒子状、板状および繊維状などのいずれであってもよい。通常、熱硬化性樹脂組成物には、無機粉体がフィラーとして含まれている。
【0039】
熱硬化性樹脂組成物は、例えば、熱硬化性樹脂(主材樹脂)、フィラー、硬化剤および/または硬化促進剤などを含む。
【0040】
主材樹脂は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタンなどを含むことができる。これらのうちでは、特にエポキシ樹脂が耐熱性やコストの点で優れている。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリエーテル型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などが好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂が、溶融物の粘度が低く、耐湿性に優れる点でさらに好ましい。
【0042】
フェノール樹脂としては、特に限定されないが、フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノールノボラック樹脂は、フェノール類またはナフトール類(例えば、フェノール、クレゾール、ナフトール、アルキルフェノール、ビスフェノール、テルペンフェノール、ナフトール等)と、ホルムアルデヒドとを、縮合重合させたものである。より具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、アラルキルフェノールノボラック樹脂、ビフェニルフェノールノボラック樹脂、テルペンフェノールノボラック樹脂、α-ナフトールノボラック樹脂、β-ナフトールノボラック樹脂等が挙げられる。これらのうち耐水性の観点からは、ナフトールノボラック樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、上記のフェノール樹脂の他に、酸無水物、アミン化合物などを用いることができる。酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、アルキルヘキサヒドロ無水フタル酸、アルキルテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、テトラエチルジアミノジフェニルメタン、ジエチルジメチルジアミノジフェニルメタン、ジメチルジアミノトルエン、ジアミノジブチルトルエン、ジアミノジプロピルトルエン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジトリルスルホン、ジエチルジアミノトルエン、ビス(4-アミノー3-エチルフェニル)メタン、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート等を用いることができる。
【0045】
硬化促進剤としては、特に限定されないが、イミダゾール系促進剤、リン系硬化促進剤、ホスホニウム塩系硬化促進剤、双環式アミジン類とその誘導体、有機金属錯体、ポリアミンの尿素化物等が挙げられる。硬化促進剤は、潜在性を有することが好ましく、潜在性硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系促進剤、リン系促進剤等が挙げられる。潜在性硬化促進剤の中でも、カプセル化されたイミダゾール変性物(マイクロカプセル型硬化促進剤)が特に好ましい。
【0046】
熱硬化性樹脂組成物には、さらに添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、カーボンブラック、消泡剤、レベリング剤、顔料、応力緩和剤、プレゲル化剤、イオン捕捉剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、シランカップリング剤には様々な種類があり、その種類によって樹脂組成物の特性(例えば室温での粘度)に変化が生じ得る。そのため、適宜、望ましいものが選択される。シランカップリング剤は、加水分解性基(アルコキシ基、水酸基など)を有し、更に、アルキル基、脂肪族または芳香族アミノ基(フェニルアミノ基など)、アクリル基、メタクリル基などを有してもよい。
【0047】
フィラーとしては、シリカ(例えば、溶融シリカ、結晶シリカ)、石英ガラス粉末、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどを用いることができる。これらのうちでは、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。
【0048】
熱硬化性樹脂組成物中のフィラーの含有量は、特に制限されないが、例えば、35質量%以上であり、50質量%以上でもよく、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよい。熱硬化性樹脂組成物中の固形成分の含有量の上限は、特に制限されないが、例えば、90質量%以下であり、85質量%以下であってもよい。
【0049】
フィラーの平均粒子径は、電子部品と基板との間の空間の厚みに応じて、当該厚みよりも小さい範囲で適宜決定すればよいが、例えば、0.5μm以上であり、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよい。フィラーの平均粒子径は、例えば、10μm以下であってもよく、5μm以下でもよい。フィラーの平均粒子径は、体積粒度分布の累積体積50%におけるメディアン径(D50)である。
【0050】
フィラーの最大粒子径は、電子部品間の距離(隣接する電子部品同士の最も近接する外縁間の距離)および電子部品と基板との間の空間の高さよりも小さいことが望ましく、上記距離および高さに応じて適宜選択すればよい。フィラーの最大粒子径(Dmax)は、例えば35μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。
【0051】
フィラーの平均粒子径(D50)および最大粒子径(Dmax)は、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0052】
熱硬化性シートの厚さは、特に限定されないが、例えば、100μm以上であり、200μm以上でもよく、400μm以上でもよい。熱硬化性シートの厚さは、例えば、1000μm以下であり、800μm以下でもよい。
【0053】
熱硬化性シートは、例えば、測定温度125℃、測定時間0~100秒におけるtanδ(損失正接)の極大値が3以上の樹脂組成物で構成された単層構造であってもよく、そのような極大値が3以上である樹脂組成物で構成された層を有する複層構造でもよい。上記のような3以上のtanδ(損失正接)の極大値を有する樹脂組成物(以下、「樹脂組成物A」とも称する。)は、電子部品と基板との間の空間がより狭い場合でも、モールドアンダーフィルを行う際に優れた浸入性を発揮する。熱硬化性シートは、上記のようなtanδ(損失正接)の極大値が5以上でもよく、7以上でもよい。
【0054】
tanδ(損失正接)は、概ね、樹脂組成物Aにおける弾性の性質と粘性の性質との割合と関連している。電極間の距離がより狭い半導体チップなどの電子部品に対してアンダーフィルを行う場合、粘度が小さいだけでは最深部への浸入性が不十分になりやすい。最深部への浸入性をより満足させるには、浸入している材料を後方から押し出す力である弾性力も必要となる。上記tanδ(損失正接)の極大値を有する樹脂組成物AからなるA層を含有する熱硬化性シートは、電極間の距離がより狭い電子部品に対してモールドアンダーフィルを行う際に、優れた浸入性を発揮する。
【0055】
熱硬化性シートは、更に、樹脂組成物Bで構成されたB層を有してもよい。B層は、式:40000≦α×E’≦250000[Pa/K]を満たしてもよい。ただし、αは、樹脂組成物Bを175℃で1時間加熱して硬化させた硬化物の80℃以下(例えば50℃~70℃)における熱膨張係数[ppm/K]である。E’は、そのような硬化物の25℃における貯蔵弾性率[GPa]である。
【0056】
電子部品は、樹脂組成物の硬化時に形状変化を起こすことがある。一方、上記式を満たす樹脂組成物BからなるB層を備える熱硬化性シートは、電子部品の形状変化に追従しやすく、優れた浸入性を発揮しつつ、反りを高度に抑制する。具体的には、熱膨張係数は、温度の上昇にあわせてシートの長さが変化する割合を示しており、貯蔵弾性率は、シートの剛性を表している。上記式を満たす場合、例えば、熱膨張係数αが大きい場合は、貯蔵弾性率E’が小さくなり、シートの剛性を小さくできる。その分、電子部品の形状変化に対して、シートが追従しやすくなり、電子部品の熱による応力を緩和する程度が大きくなる。
【0057】
A層の厚みに対するB層の厚みの比:B/Aは、例えば0.1~80であり、好ましくは0.3~20である。この場合、電極間の距離がより狭い電子部品に対してより優れた封止性を発揮することができる。また、封止した電子部品の反りをより高度に抑制することができる。
【0058】
複層構造においては、tanδ(損失正接)の極大値が3以上である樹脂組成物Aで構成された層が、最外層に配置されることが望ましい。そのA層は、電子部品および基板と直接接するように載置される。この場合、当該A層の厚さは、例えば、10μm以上であり、20μm以上でもよく、40μm以上でもよい。当該A層の厚さは、例えば、500μm以下であり、400μm以下でもよく、300μm以下でもよい。また、B層の厚さは、50μm以上でもよく、100μm以上でもよく、200μm以上でもよい。当該B層の厚さは、800μm以下でもよく、700μm以下でもよく、600μm以下でもよい。B層の厚さを上記範囲とすることで、電子部品の反りを抑制しやすくなる。
【0059】
熱硬化性樹脂組成物のtanδの極大値は、フィラーの含有量、熱硬化性樹脂、硬化剤の種類などにより制御することができる。例えば、フィラーの含有量を増やせば、極大値が小さくなり、フィラーの含有量を減らすことで、極大値を大きくすることができる。また、加熱時に低粘度となる結晶性エポキシ樹脂や液状エポキシ樹脂等を熱硬化性樹脂として用いること、低分子量のフェノール樹脂、結晶性酸無水物、液状フェノール樹脂等の低粘度の硬化剤を用いることにより、tanδの極大値を3以上とすることができる。
【0060】
熱硬化性樹脂組成物のtanδの極大値は、直径25mmΦの試験片について、粘弾性計測定装置(例えば、TAInstruments社製、ARES-LS2)を用いて、測定温度125℃、測定時間0~100秒、周波数1Hzの条件で測定された値であってよい。試験片は、未硬化もしくは半硬化物(Bステージ)の熱硬化性シートから切り出して用いる。
【0061】
熱硬化性シートの硬化物の全体としての貯蔵弾性率は、例えば、3GPa以上であり、5GPa以上でもよく、例えば、40GPa以下であり、30GPa以下でもよい。
【0062】
熱硬化性シートの硬化物の貯蔵弾性率の測定は、以下の手順で行われる。まず、熱硬化性シート(熱硬化性樹脂組成物)の硬化物から、長さ50mm×幅10mm×厚さ2mmの測定試料を用意する。硬化物としては、熱硬化性シートを175℃で1時間加熱して硬化させた硬化物を用いる。次に、測定試料を曲げ測定用治具にセットし、粘弾性測定装置(DMA6100、日立ハイテクサイエンス(株)製)を用いて、-50~300℃の温度域での曲げ貯蔵弾性率を、周波数1Hz、昇温速度2.5℃/minの条件下で測定する。測定結果から25℃での貯蔵弾性率を読み取る。
【0063】
熱硬化性樹脂組成物の熱膨張率の測定は、樹脂組成物を175℃で1時間熱して硬化させた硬化物から、長さ20mm×幅5mm×厚さ5μmの測定試料を用意する。測定試料を熱機械分析装置(TMA7100)の圧縮測定用治具にセットした後、-50~300℃の温度域で、荷重5g、昇温速度2.5℃/minの条件下で測定する。例えば、50℃~70℃での膨張率から熱膨張係数α[ppm/K]を算出する。
【0064】
熱硬化性シートは、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂としては、非反応性シリコーンオイルや反応性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、ブロックイソシアネート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂、ポリアミド、塩化ビニル、セルロース、熱可塑性エポキシ樹脂、熱可塑性フェノール樹脂などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂が望ましい。
【0065】
熱硬化性シートに含まれる熱可塑性樹脂の量は、例えば、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂などの主材樹脂)100質量部あたり、5質量部以上、65質量部以下が好ましく、10質量部以上、50質量部以下がより好ましい。
【0066】
<複層構造を有する熱硬化性シートの製造方法>
複層構造を有する熱硬化性シートは、例えば、カレンダー製膜法、キャスティング成膜法、インフレーション押出法、Tダイ押出法、ドライラミネート法などで各層を個別で成膜しておき、その後、貼り合わせるか、共押出し法などを用いて製造し得る。基材上に熱硬化性シートを形成し、使用時に基材を剥離してもよい。基材としては、特に限定されないが、プラスチックフィルム、紙、不織布、金属などが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系フィルム、ハロゲン化ビニル重合体系フィルム、アクリル樹脂系フィルム、ゴム系フィルム、セルロース系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、シクロオレフィンポリマー系フィルムが挙げられる。また、シリコーンなどで離型処理した基材を用いることもできる。基材の厚さは特に限定されないが、好ましくは500μm以下である。
【0067】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る封止方法について更に具体的に説明する。
【0068】
工程(a)
まず、複数の電子部品が実装された基板を準備する。電子部品と基板との間には空間が設けられている。図1は、電子部品実装基板10の一例を示す概念図である。電子部品実装基板10が具備する基板11は、円形の外形を有するノッチウエハである。基板11の表面には、電子部品12として複数の矩形の半導体チップが実装されている。なお、図1は概念図であり、必ずしも実際の電子部品のサイズを反映していない。
【0069】
工程(b)
次に、電子部品12と接するように熱硬化性シート20を基板11上に載置する。ここで、複数の電子部品12を全て囲うとともに囲まれた面積が最小になる枠線F上の任意の点を、点Pとする。点Pと基板の中心Cとの距離をLpとする。点Pと基板の中心Cとを通る直線Lcpと熱硬化性シートの外縁Sとが交わる点を、点Qとする。このとき、点Qと基板11の中心Cとの距離Lqは0.9Lp以上を満たす。
【0070】
図2は、基板11の中心C、複数の電子部品12を全て囲うとともに囲まれた面積が最小になる枠線F、枠線F上の任意の点P、熱硬化性シート20の外縁S、点Pと中心Cとを通る直線Lcpと外縁Sとの交点Qの一例を示す図である。枠線Fはより太い実線で示す。熱硬化性シート20の外縁Sは破線で示す。ここでは、Lq>Lpの場合を示すが、Lq≦Lpとなる場合もある。また、ここでは、上面視で基板11よりも熱硬化性シート20のサイズが大きいが、熱硬化性シート20のサイズが基板11のサイズ以下であってもよい。
【0071】
工程(c)
次に、電子部品実装基板10に載置した熱硬化性シート20を加熱成型し、電子部品12と基板11との間の空間に熱硬化性シート20の溶融物を充填し、溶融物を硬化させる。図3は、電子部品実装基板10の封止方法の工程図である。
【0072】
具体的には、図3(a)に示すように、電子部品実装基板10が圧縮成形機50にセットされる。圧縮成形機50は、上金型51と、下金型52と、上金型51の周縁にバネなどの弾性部材を介して固定された金型の一部を兼ねるフランジ部53とを有する。上金型51は、熱硬化性シート20を押圧する平坦な押圧面を有する。なお、上金型51の押圧面、下金型52の基板載置面、フランジ部53などは、剥離フィルムで覆われていてもよい。
【0073】
複数の電子部品12は、それぞれバンプ121を介して基板11の表面に接続されている。電子部品12の基板11と対向する面と基板11との間には空間10Sが設けられている。空間10Sの大半は、バンプ同士の空隙で占められている。
【0074】
加熱成形の工程では、図3(b)に示されるように、電子部品実装基板10に載置された熱硬化性シート20を金型の押圧面で覆って、熱硬化性シート20を加熱しながら圧縮する。このとき、熱硬化性シート20の溶融物の一部が空間10Sに浸入するとともに溶融物の硬化反応が進行する。
【0075】
下金型52および上金型51の少なくとも一方は、熱硬化性シート20の溶融物の硬化反応が進行する温度まで加熱されている。溶融物の硬化反応が進行し、アンダーフィル部分221とオーバーモールド部分222とが同時に形成される。その結果、電子部品実装基板10が硬化物22で封止された封止体100が得られる。
【0076】
工程(c)の少なくとも一部は、大気圧下で行ってもよく、既に述べたような減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱成形を行う場合、圧縮成形機50が設置されている空間から空気を吸引すればよい。
【0077】
加熱温度は、例えば、80~200℃であり、100~180℃であってもよい。加熱時間は、例えば、30秒~30分であり、2分~20分であってもよい。
【0078】
圧縮成形機50から搬出された封止体100に対し、さらに、ポストモールドキュア(後硬化)を行ってもよい。ポストモールドキュアは、例えば、100~180℃で、30分~3時間程度行えばよい。
【0079】
[実施例]
以下に実施例および比較例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
《実施例1~10および比較例1、2》
<熱硬化性シートの作製>
(1)表1に示す配合で熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)、硬化剤、フィラー(溶融シリカ:平均粒子径(D50)2.8μm、最大粒子径(Dmax)10μm)、カーボンブラック(平均粒子径24nm)、シランカップリング剤A(KBM503:信越シリコーン製)、イオン捕捉剤(無機イオン交換剤)、硬化促進剤等を混合し、ロール混練機により混練し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。表中の数値は全て質量部である。
【0081】
(2)次に、得られた熱硬化性樹脂組成物を、100℃の条件下、Tダイ押出法により離型処理フィルム上に塗工してシート状に形成し、厚さ500μmの熱硬化性シート(封止材)を作製した。上記離型処理フィルムとしては、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0082】
[評価]
<tanδ(損失正接)の極大値の測定>
上記で得られた熱硬化性シートについてtanδを測定した。測定は直径25mmΦの試験片として、粘弾性計測定装置(TAInstruments社製、ARES-LS2)を用いて、測定温度125℃、測定時間0~100秒、周波数1Hzの条件で行った。その結果、いずれの熱硬化性シートにおいても、tanδ(損失正接)の極大値が3以上であった。
【0083】
<モールドアンダーフィル試験>
(基板が円形の場合(実施例1、3、5、7、9、比較例1))
直径300mmΦの外形が円形のガラス基板上に、5つの評価用電子部品(TEG)を実装し、評価用の電子部品実装基板のサンプルを作製した。電子部品は、基板の中心Cと、中心Cに対して角度的に等価な4箇所(0°、90°、180°および270°)の位置に、各電子部品上の点Pと基板の中心Cとの距離の最大値がLp=140mmとなるように配置した。
【0084】
(基板が四角形の場合(実施例2、4、6、8、10、比較例2))
縦240mm×横74mmの外形が長方形のガラス基板上に、5つの評価用電子部品(TEG)を実装し、評価用の電子部品実装基板のサンプルを作製した。電子部品は、基板の中心Cと、四隅の等価な4箇所の位置に、各電子部品上の点Pと基板の中心Cとの距離の最大値がLp=110mmとなるように配置した。
【0085】
TEGは、電子部品と基板との間の空間の高さに相当するバンプの高さが30μm、サイズ25mm×25mm×300μm(バンプを含む電子部品の高さは330μm)、バンプサイズは20μm、バンプの中心間のピッチは40μmである。
【0086】
Lqが表1に示す数値である基板と相似形(円形または長方形)の熱硬化性シートを、電子部品と接するように、基板の中心と熱硬化性シートの中心の位置を合わせて、サンプル上に載置し、下記条件で、熱硬化性シートを加熱成型した。
【0087】
成型圧力:5MPa
成型温度:125℃
成型時間:10分間
最低真空度:200Pa
ポストモールドキュア(後硬化):175℃/1時間
【0088】
基板と電子部品との間の空間を埋めるアンダーフィル部分の状態(浸入性)を目視で評価した。ガラス基板の裏面から直接観察し、封止材の硬化物の未浸入部(ボイド)の大きさにより、下記の基準で評価した。ボイドの大きさは5つの評価用電子部品(TEG)の中で最大のサイズを確認した。結果を表1に示す。
【0089】
◎:ボイドの大きさが500μm以下である。
〇:ボイドの大きさが500μmより大きく、1000μm以下である。
×:ボイドの大きさが1000μmより大きい。
【0090】
【表1】
【0091】
《実施例11~37》
<熱硬化性シートの作製>
表2~3に示す配合で熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)、硬化剤、フィラー、熱可塑性樹脂、カーボンブラック(平均粒子径24nm)、シランカップリング剤A(KBM503:信越シリコーン製)またはB(KBM573:信越シリコーン製)、イオン捕捉剤(無機イオン交換剤)、硬化促進剤等を混合し、ロール混練機により混練し、熱硬化性樹脂組成物を調製し、シート状に形成し、厚さ500μmの熱硬化性シート(封止材)を作製した。表中の数値は全て質量部である。
【0092】
実施例1と同様の円形の基板上に電子部品を載置した評価用の電子部品実装基板のサンプルを準備した。Lqが1.0Lpである円形の熱硬化性シートを、電子部品と接するように、基板の中心と熱硬化性シートの中心の位置を合わせて、サンプル上に載置し、上記実施例と同様に熱硬化性シートを加熱成型し、同様に評価した。結果を表2~3に示す。なお、いずれの熱硬化性シートにおいても、tanδ(損失正接)の極大値が3以上であった。
【0093】
《実施例38~45》
<熱硬化性シートの作製>
(A層)
実施例1と同様に調製した熱硬化性樹脂組成物を、100℃の条件下、Tダイ押出法により上記と同様の離型処理フィルム上に塗工してシート状に形成し、厚さ150μmの熱硬化性シート(封止材)を作製した。
【0094】
(B層)
表4に示す配合で熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)、硬化剤、熱可塑性樹脂、フィラー(溶融シリカ:平均粒子径(D50)4μm、最大粒子径(Dmax)20μm)、カーボンブラック(平均粒子径24nm)、シランカップリング剤A(KBM503:信越シリコーン製)、イオン捕捉剤(無機イオン交換剤)、硬化促進剤等を混合し、ロール混練機により混練し、熱硬化性樹脂組成物Bを調製した。表中の数値は全て質量部である。
【0095】
次に、得られた熱硬化性樹脂組成物を、100℃の条件下、Tダイ押出法により上記と同様の離型処理フィルム上に塗工してシート状に形成し、厚さ350μmの熱硬化性シート(B層、封止材)を作製した。
【0096】
上記で作製したA層とB層とを、お互いが接するように積層し、ラミネーターにより温度60℃で貼り合せ、2層構造の熱硬化性シートを作製した。実施例38~45において、A層は共通である。
【0097】
実施例1と同様の円形の基板上に電子部品を載置した評価用の電子部品実装基板のサンプルを準備した。Lqが1.0Lpである円形の熱硬化性シートを、電子部品と接するように、基板の中心と熱硬化性シートの中心の位置を合わせて、A層がサンプルに接するようにサンプル上に載置し、上記実施例と同様に熱硬化性シートを加熱成型し、同様に評価した。結果を表4に示す。なお、いずれの熱硬化性シートにおいても、A層のtanδ(損失正接)の極大値が3以上であった。また、B層のα×E’値は40000≦α×E’≦250000[Pa/K]を満たした。
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
なお、貯蔵弾性率、線膨張係数などを測定するための硬化物を形成するための硬化条件は、上記条件に限らず、例えば、150℃で1.5時間、150℃で3時間、175℃で1.5時間などに設定してもよいし、これらに限られない。
【0102】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る封止方法によれば、複数の電子部品が実装され、電子部品と基板との間に空間が設けられている電子部品実装基板を封止する際に、電子部品と基板との間の空間における封止材の未侵入部(ボイド)が形成されにくくなり、安定して十分なアンダーフィルを施すことができるようになる。本発明は、例えば、IOT、自動運転などに利用される集積回路、大規模集積回路の封止に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
10:電子部品実装基板
10S:空間
11:基板
12:電子部品
121:バンプ
20:熱硬化性シート
22:硬化物
221:アンダーフィル部分
222:オーバーモールド部分
50:圧縮成形機
51:上金型
52:下金型
53:フランジ部
F:枠線
C:基板の中心
P点:枠線上の任意の点
Lp:点Pと中心Cとの距離
Lcp:点Pと中心Cとを通る直線
S:熱硬化性シートの外縁
Q:Lcpと外縁Sとの交点
Lq:点Qと中心Cとの距離
【要約】
複数の電子部品が実装された基板であって、電子部品と基板との間に空間が設けられている電子部品実装基板を準備する工程と、電子部品と接するように熱硬化性シートを電子部品実装基板に載置する工程と、載置された熱硬化性シートを加熱成型し、電子部品と基板との間の空間に熱硬化性シートの溶融物を充填して硬化させる工程とを含み、複数の電子部品を全て囲うとともに囲まれた面積が最小になる枠線上の任意の点Pと、基板の中心との距離をLpとするとき、点Pと基板の中心とを通る直線と熱硬化性シートの外縁とが交わる点Qと、基板の中心との距離Lqが0.9Lp以上である、電子部品実装基板の封止方法。
図1
図2
図3