IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セントラル硝子株式会社の特許一覧

特許7161092含フッ素単量体、含フッ素重合体およびそれを用いたパターン形成用組成物、およびそのパターン形成方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】含フッ素単量体、含フッ素重合体およびそれを用いたパターン形成用組成物、およびそのパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/26 20060101AFI20221019BHJP
   C08F 12/22 20060101ALI20221019BHJP
   C08F 8/18 20060101ALI20221019BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20221019BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20221019BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20221019BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
C08F20/26
C08F12/22
C08F8/18
C08L33/16
C08L25/18
C08K5/42
H05K3/10 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017255157
(22)【出願日】2017-12-29
(65)【公開番号】P2018127604
(43)【公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2017019394
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】兼子 譲
(72)【発明者】
【氏名】灘野 亮
(72)【発明者】
【氏名】須田 健資
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087602(JP,A)
【文献】特開2002-121176(JP,A)
【文献】米国特許第03249596(US,A)
【文献】特開2016-098189(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178279(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00- 20/70
C08F 12/00- 12/36
C08F 8/00- 8/50
C08L 33/00- 33/26
C08L 25/00- 25/18
C08K 3/00- 13/08
H05K 3/00- 3/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される繰り返し単位を含む、含フッ素重合体。
【化1】
(式(1)中、RfおよびRfは、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状または炭素数3の分岐状の含フッ素アルキル基であり、前記含フッ素アルキル基は、ジフルオロメチル基(CHF-)、トリフルオロメチル基(CF-)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基(CHFCF-)、1,1,1-トリフルオロエチル基(CFCH-)、1,1,1,2-テトラフルオロエチル基(CFCFH-)、または1,1,1,2,-テトラフルオロプロピル基(CFCFHCH-)であり、RfとRfは連結して環を形成していてもよい。
は、水素原子または炭素数1~10の有機基であり、前記有機基は、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基またはアシル基である。
Aは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
Lは、メチレン基であり、各メチレン基が含む任意の数の水素原子がメチル基に置換されていてもよい。
nは、0~1の整数である。
Pは、以下の式(2)~式(4)で表される、いずれかの基である。
RfとRfが連結して環を形成していない場合、Rf、Rf及びAのフッ素原子の合計数が6である。)
【化2】
(式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1~10の有機基であり、前記有機基は、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基またはアシル基である。Yは、単結合、オキシエチレン基(-O-CH-CH-)、またはオキシフェニレン基(-O-C-)である。)
【化3】
(式(3)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1~10の有機基であり、前記有機基は、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基またはアシル基である。Xは、単結合、メチレン基、炭素数2~10のアルキレン基、炭素数2~10アルケニレン基、炭素数6~10の2価のアリール基、または炭素数4~10の2価の脂環式炭化水素基である。)
【化4】
【請求項2】
式(1A)で表される繰り返し単位を含む、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【化5】
(式(1A)中、RfおよびRfは、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状または炭素数3の分岐状の含フッ素アルキル基であり、前記含フッ素アルキル基は、ジフルオロメチル基(CHF-)、トリフルオロメチル基(CF-)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基(CHFCF-)、1,1,1-トリフルオロエチル基(CFCH-)、1,1,1,2-テトラフルオロエチル基(CFCFH-)、または1,1,1,2,-テトラフルオロプロピル基(CFCFHCH-)であり、RfとRfは連結して環を形成していてもよい。
Yは、単結合、オキシエチレン基(-O-CH-CH-)、またはオキシフェニレン基(-O-C-)である。
は、水素原子、フッ素原子または炭素数1~10の有機基であり、前記有機基は、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基またはアシル基である。
は、水素原子または炭素数1~10の有機基であり、前記有機基は、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基またはアシル基である。
Aは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
Lは、メチレン基であり、各メチレン基が含む任意の数の水素原子がメチル基に置換されていてもよい。
nは、0~1の整数である。)
【請求項3】
前記式(1)または式(1A)で表される繰り返し単位が含むRfおよびRfが、トリフルオロメチル基であり、nは0~1の整数、Aが水素原子またはメチル基である請求項1または請求項2に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
前記式(1)または式(1A)で表される繰り返し単位が含む、RfおよびRfが連結してなる環が、式(5A)で表わされる含フッ素アルキル基である請求項1または請求項2に記載の含フッ素重合体。
【化6】
(式(5A)中、Aは、水素原子、フッ素原子、またはメチル基であり、Zは水素原子またはフッ素原子であり、nは3~6の整数である。nが6である場合、含フッ素アルキル基は少なくとも1個以上の水素原子を含む。)
【請求項5】
前記式(1)または式(1A)で表される繰り返し単位が含むRfおよびRfが連結してなる環が、式(5)で表される基である請求項4に記載の含フッ素重合体。
【化7】
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の含フッ素重合体、(A)酸発生剤および(B)溶剤を含む、パターン形成用組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン形成用組成物を基板上に塗布し膜を形成する製膜工程と、
波長150nm以上、500nm以下の光を、マスクを介して膜に照射露光し、マスクのパターンを膜に転写し、撥液部と親液部を有するパターン形成膜を得、
得られたパターン形成膜にインクを塗布しインクによるパターンを得るパターン形成工程を含む、
パターンの形成方法。
【請求項8】
請求項6に記載のパターン形成用組成物を基板上に塗布し膜を形成する製膜工程と、
波長150nm以上、500nm以下の光を描画装置により膜に走査露光して、パターンを膜に描画し、撥液部と親液部を有するパターン形成膜を得、
得られたパターン形成膜にインクを塗布しインクによるパターンを得るパターン形成工程を含む、
パターンの形成方法。
【請求項9】
式(6)で表される含フッ素単量体。
【化8】
(式(6)中、RfおよびRfは、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状または炭素数3の分岐状の含フッ素アルキル基であり、前記含フッ素アルキル基は、ジフルオロメチル基(CHF-)、トリフルオロメチル基(CF-)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基(CHFCF-)、1,1,1-トリフルオロエチル基(CFCH-)、1,1,1,2-テトラフルオロエチル基(CFCFH-)、または1,1,1,2,-テトラフルオロプロピル基(CFCFHCH-)であり、RfとRfは連結して環を形成していてもよい。
Yは、単結合、オキシエチレン基(-O-CH-CH-)、またはオキシフェニレン基(-O-C-)である。
は、水素原子、フッ素原子または炭素数1~10の有機基であり、前記有機基は、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基またはアシル基である。
は、水素原子または炭素数1~10の有機基であり、前記有機基は、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基またはアシル基である。
Aは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
Lは、メチレン基であり、各メチレン基が含む任意の数の水素原子がメチル基に置換されていてもよい。
nは、0~1の整数である。
RfとRfが連結して環を形成していない場合、Rf、Rf及びAのフッ素原子の合計数が6である。)
【請求項10】
前記式(6)で表される含フッ素単量体が含むRfおよびRfがトリフルオロメチル基であり、nは0~1の整数、Aが水素原子またはメチル基である請求項9に記載の含フッ素単量体。
【請求項11】
前記式(6)で表される含フッ素単量体が含むRfおよびRfが連結してなる環が、式(5A)で表わされる含フッ素アルキル基である請求項9に記載の含フッ素単量体。
【化9】
(式(5A)中、Aは、水素原子、フッ素原子、またはメチル基であり、Zは水素原子またはフッ素原子であり、nは3~6の整数である。nが6である場合、含フッ素アルキル基は少なくとも1個以上の水素原子を含む。)
【請求項12】
前記式(6)で表される含フッ素単量体が含むRfおよびRfが連結してなる環が、式(5)で表される基である請求項11に記載の含フッ素単量体。
【化10】
【請求項13】
式(7)で表される含フッ素化合物であって、
前記式(7)で表される含フッ素化合物が含むRfおよびRfが連結してなる環状の含フッ素アルキル基が、式(5A)で表わされる基である含フッ素化合物。
【化11】
(式(7)中、RfおよびRfは、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状または炭素数3の分岐状の含フッ素アルキル基であり、前記含フッ素アルキル基は、ジフルオロメチル基(CHF-)、トリフルオロメチル基(CF-)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基(CHFCF-)、1,1,1-トリフルオロエチル基(CFCH-)、1,1,1,2-テトラフルオロエチル基(CFCFH-)、または1,1,1,2,-テトラフルオロプロピル基(CFCFHCH-)であり、RfとRfは連結して環を形成している。
は、水素原子または炭素数1~10の有機基であり、前記有機基は、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基またはアシル基である。
Aは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
Lは、メチレン基であり、各メチレン基が含む任意の数の水素原子がメチル基に置換されていてもよい。
nは、0~1の整数である。)
【化12】
(式(5A)中、Aは、水素原子、フッ素原子、またはメチル基であり、Zは水素原子またはフッ素原子であり、nは3~6の整数である。nが6である場合、含フッ素アルキル基は少なくとも1個以上の水素原子を含む。)
【請求項14】
前記式(7)で表される含フッ素化合物が含むRfおよびRfが連結してなる環が、式(5)で表される基である、請求項13に記載の含フッ素化合物。
【化13】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素単量体、含フッ素重合体およびそれを用いたパターン形成用組成物およびそのパターン形成方法に関する。特に、電子機器製造において、インクにより電子回路等を形成する技術であるプリンテッドエレクトロニクスに用いることのできる含フッ素重合体およびその前駆体としての含フッ素単量体、およびそれを用いたパターン形成用組成物およびそのパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器製造において、インク等のパターン形成材料により電子回路等のパターンを形成する技術であるプリンテッドエレクトロニクスが注目されている。インクによるパターン形成には、スクリーン、グラビア、グラビアオフセットまたはインクジェット等の各種印刷法を用いることができる。
【0003】
レジストを用いた従来のフォトリソグラフィーと異なり、プリンテッドエレクトロニクスを用いると、基板上にインクを用いて直接、所望のパターンを形成することができる。プリンテッドエレクトロニクスはパターン形成が簡便であり、且つ工程が少なくて済むので、電子機器の低価格化および生産の効率化に寄与することが期待されている。また、プリンテッドエレクトロニクスは、フレキシブル基板へ配線等のパターンを形成することに優れ、特に、電子ペーパー、携帯電話および有機ELディスプレイ等への利用が図られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、銅を主成分とする電気的導通部位の形成において、基材として樹脂を利用できる温度で電気的導通部位の形成が可能であり、且つスクリーン印刷法によるパターン形成が可能な導電性インク組成物が開示されている。
【0005】
また、パターン形成材料として基板上に形成された樹脂前駆体からなる膜に対し、フォトマスクあるいはレチクルを介しパターンを光照射し、露光部で光重合させて樹脂とし形成された凹凸のある膜表面に、インクを塗布しパターンを得ることも可能である。
【0006】
例えば、特許文献2には、平滑な絶縁基板との密着性が良好であり、且つ、微細な導電性パターンを形成するための、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、紫外線を用いてパターン露光し、露光領域に、該基板表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させることを特徴とするグラフトポリマーパターン形成方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、プリンテッドエレクトロニクスを用い、基板上に所望のパターンを形成するにあたって、パターン形成膜と基板との間に所望の密着性が得られないという問題がある。本問題を解決する手段として、特許文献3には、表面に微細な凹凸を有する高分子基材と、前記高分子基材上にパターン状に形成された高撥液層および高親水層とを有することを特徴とするパターン形成体が開示されている。
【0008】
また、インクによるパターン形成において、インクの濡れ広がりまたは滲みが生じ、微細なパターンが得られないという問題がある。本問題を解決する手段として、特許文献4にはパターンと基板の間に光触媒含有層を設けインクの滲みを抑制することが開示されている。特許文献5および特許文献6には、パターン形成時の導電性インクの滲みを抑制したアクリル系共重合体からなるパターン形成材料が開示されている。
【0009】
プリンテッドエレクトロニクスの一形態には、予め基板上にパターン形成材料(パターン形成用組成物)からなる膜を製膜し、露光によりインクに対する親液部位と撥液部位を設けたパターン形成膜とし、その上にインクを塗布し、パターン形成膜の撥液部位ではインクがはじくことにより、基板上にインクによるパターンを得る方法がある(以下、パターン形成膜を用いるプリンテッドエレクトロニクスと呼ぶことがある)。例えば、パターン形成膜上に導電性インクを塗布し、親液部に残ったインクを焼成して、基板上に導電性パターンを形成することができる。
【0010】
露光においては、マスク等のパターンを光照射により転写し、露光のありなしにより、インク等の液体材料に対する親液部位および撥液部位を設けたパターン形成膜とすること、あるいは光描画装置により膜にパターンを描画露光し、パターン形成膜とすることも可能である。
【0011】
例えば、特許文献7には、高解像度で、断線のない微細なパターンが得るための、支持体表面に、光照射等のエネルギー付与により該支持体表面に直接結合してなる親/疎水性領域を形成し得る、導電性パターン形成材料が開示されている。
【0012】
また、特許文献8および特許文献9には、インクの濡れ広がり、滲みを抑えて高精細なパターンを形成するためのパターン形成用材料として、炭素数6以上のパーフルオロアルキル基を有する樹脂が開示されており、パーフルオロアルキル基が光照射された部分のみ解離し、光照射されなかった部分とともに、インクに対する親液部と撥液部のパターンが形成されることが記載されている。
【0013】
しかしながら、長鎖のパーフルオロアルキル基を含む化合物は、燃焼しにくく環境への蓄積が指摘され、例えばパーフルオロオクタン酸は米国環境保護庁より環境へのに蓄積が指摘されており使用の削減が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2011-241309号公報
【文献】特開2006-58797号公報
【文献】特開2004-98351号公報
【文献】特開2003-209340号公報
【文献】特開2012-232434号公報
【文献】特開2012-218318号公報
【文献】特開2003-114525号公報
【文献】国際公開WO2014/178279のパンフレット
【文献】特開2016-87602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記の通り、長鎖、特に炭素数6以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物は、環境への蓄積の観点から、使用を避けることが好ましい。
【0016】
そこで、本発明は、プリンテッドエレクトロニクスに用いるパターン形成用組成物として、炭素数6以上のパーフルオロアルキル基を含まない含フッ素重合体を成分とする、インクに対する高い親液性と撥液性の差を示し、インクの濡れ広がりや滲みを抑えた精緻なパターンを得ることのできるパターン形成方法を提供することを目的とする。また、その前駆体としての含フッ素単量体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従来、低級パーフルオロアルキル基のみを含む含フッ素重合体を用いた、パターン形成用組成物から得られた膜が、高級パーフルオロアルキル基を含む含フッ素重合体を用いた膜と同様の高い撥液性を示すことはないと思われていた。
【0018】
本発明者らは、炭素数6以上の高級パーフルオロアルキル基を含まず、炭素数1~3の低級含フッ素アルキル基のみを含む新規な含フッ素単量体を合成し、得られた含フッ素単量体から重合した含フッ素重合体を成分とする組成物を基板上に製膜し、インクの溶媒に対する撥液性を検討したところ、炭素数1~3の直鎖状または炭素数3の分岐状の含フッ素アルキル基のみを含む含フッ素重合体を成分とするパターン形成材料からなる膜は、インクの溶媒として用いられる、水、ヘキサデカンおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMIA)に対し高い撥液性を示すことを見出した。
【0019】
これは、本発明の含フッ素重合体は、分子中の複数の含フッ素アルキル基が表面に配列する構造となり、含フッ素アルキル基同士が束縛され、膜とした際に表面自由エネルギーが下がり、高い撥液性を得られたものと推測される。
【0020】
かかる知見に基づき以下の発明1~16に至った。
【0021】
本発明は以下の発明1~16を含む。
[発明1]
式(1)で表される繰り返し単位を含む、含フッ素重合体。
【化1】
(式(1)中、Rf1およびRf2は、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状または炭素数3の分岐状の含フッ素アルキル基であり、Rf1とRf2は連結して環を形成していてもよい。
3は、水素原子または炭素数1~10の有機基である。
Aは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
Lは、メチレン基であり、各メチレン基が含む任意の数の水素原子がメチル基に置換されていてもよい。
nは、0~10の整数である。
Pは、以下の式(2)~式(4)で表される、いずれかの基である。
【化2】
(式(2)中、R1は、水素原子または炭素数1~10の有機基である。Yは、単結合または2価の基である。)
【化3】
(式(3)中、R1は、水素原子または炭素数1~10の有機基である。Xは、単結合または2価の基である。)
【化4】
【0022】
[発明2]
式(1A)で表される繰り返し単位を含む、発明1の含フッ素重合体。
【化5】
(式(1A)中、Rf1およびRf2は、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状または炭素数3の分岐状の含フッ素アルキル基であり、Rf1とRf2は連結して環を形成していてもよい。
Yは、単結合または2価の基である。
1は、水素原子、フッ素原子または炭素数1~10の有機基である。
3は、水素原子または炭素数1~10の有機基である。
Aは、水素原子、フッ素原子、またはメチル基である。
Lは、メチレン基であり、各メチレン基が含む任意の数の水素原子がメチル基に置換されていてもよい。
nは、0~10の整数である。)
【0023】
[発明3]
前記式(1)または式(1A)で表される繰り返し単位が含むRf1およびRf2が、トリフルオロメチル基であり、nは0~2の整数、Aが水素原子またはメチル基である発明1または発明2の含フッ素重合体。
【0024】
[発明4]
前記式(1)または式(1A)で表される繰り返し単位が含む、Rf1およびRf2が連結してなる環が、式(5A)で表わされる含フッ素アルキル基である発明1または発明2の含フッ素重合体。
【0025】
【化6】
【0026】
(式(5A)中、Aは、水素原子、フッ素原子、またはメチル基であり、Zは水素原子またはフッ素原子であり、nは3~6の整数である。nが6である場合、含フッ素アルキル基は少なくとも1個以上の水素原子を含む。)
【0027】
[発明5]
前記式(1)または式(1A)で表される繰り返し単位が含むRf1およびRf2が連結してなる環が、式(5)で表される基である発明4の含フッ素重合体。
【0028】
【化7】
【0029】
[発明6]
発明1~5の含フッ素重合体、(A)酸発生剤および(B)溶剤を含む、パターン形成用組成物。
【0030】
[発明7]
発明6のパターン形成用組成物を基板上に塗布し膜を形成する製膜工程と、
波長150nm以上、500nm以下の光を、マスクを介して膜に照射露光し、マスクのパターンを膜に転写し、撥液部と親液部を有するパターン形成膜を得、
得られたパターン形成膜にインクを塗布しインクによるパターンを得るパターン形成工程を含む、
パターンの形成方法。
【0031】
[発明8]
発明6のパターン形成用組成物を基板上に塗布し膜を形成する製膜工程と、
波長150nm以上、500nm以下の光を描画装置により膜に走査露光して、パターンを膜に描画し、撥液部と親液部を有するパターン形成膜を得、
得られたパターン形成膜にインクを塗布しインクによるパターンを得るパターン形成工程を含む、
パターンの形成方法。
【0032】
[発明9]
式(6)で表される含フッ素単量体。
【0033】
【化8】
【0034】
(式(6)中、Rf1およびRf2は、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状または炭素数3の分岐状の含フッ素アルキル基であり、Rf1とRf2は連結して環を形成していてもよい。
Yは、単結合または2価の基である。
1は、水素原子、フッ素原子または炭素数1~10の有機基である。
3は、水素原子または炭素数1~10の有機基である。
Aは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
Lは、メチレン基であり、各メチレン基が含む任意の数の水素原子がメチル基に置換されていてもよい。
nは、0~10の整数である。)
【0035】
[発明10]
前記式(6)で表される含フッ素単量体が含むRf1およびRf2がトリフルオロメチル基であり、nは0~2の整数、Aが水素原子またはメチル基である発明9の含フッ素単量体。
【0036】
[発明11]
前記式(6)で表される含フッ素単量体が含むRf1およびRf2が連結してなる環が、式(5A)で表わされる含フッ素アルキル基である発明9の含フッ素単量体。
【0037】
【化9】
【0038】
(式(5A)中、Aは、水素原子、フッ素原子、またはメチル基である。
Zは水素原子またはフッ素原子であり、nは3~6の整数である。nが6である場合、含フッ素アルキル基は少なくとも1個以上の水素原子を含む。)
【0039】
[発明12]
前記式(6)で表される含フッ素単量体が含むRf1およびRf2が連結してなる環が、式(5)で表される基である発明11の含フッ素単量体。
【0040】
【化10】
【0041】
[発明13]
式(7)で表される含フッ素化合物。
【0042】
【化11】
【0043】
(式(7)中、Rf1およびRf2は、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状または炭素数3の分岐状の含フッ素アルキル基であり、Rf1とRf2は連結して環を形成していてもよい。
3は、水素原子または炭素数1~10の有機基である。
Aは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
Lは、メチレン基であり、各メチレン基が含む任意の数の水素原子がメチル基に置換されていてもよい。
nは、0~10の整数である。)
【0044】
[発明14]
前記式(7)で表される含フッ素化合物が含むRf1およびRf2がトリフルオロメチル基であり、nは0~2の整数、Aが水素原子、フッ素原子またはメチル基である発明13の含フッ素化合物。
【0045】
[発明15]
前記式(7)で表される含フッ素化合物が含むRf1およびRf2が連結してなる環状の含フッ素アルキル基が、式(5A)で表わされる基である発明13の含フッ素重合体。
【0046】
【化12】
【0047】
(式中、Aは、水素原子、フッ素原子、またはメチル基であり、Zは水素原子またはフッ素原子であり、nは3~6の整数である。nが6である場合、含フッ素アルキル基は少なくとも1個以上の水素原子を含む。)
【0048】
[発明16]
前記式(7)で表される含フッ素化合物が含むRf1およびRf2が連結してなる環が、式(5)で表される基である、発明15の含フッ素化合物。
【0049】
【化13】
【発明の効果】
【0050】
本発明のパターン形成用組成物をプリンテッドエレクトロニクスに使用すると、炭素数6以上の長鎖パーフルオロルキル基を含む含フッ素重合体を成分とするパターン形成用組成物と同等に、得られたパターン形成膜の親液部位の親液性と撥液部位の撥液性が高まり、パターン形成膜上のインクの濡れ広がり且つ滲みを抑えて高精細なパターンを得ることができる。
【0051】
また、本発明によって、プリンテッドエレクトロニクスに用いるのに有効な炭素数1~3のパーフルオロアルキル基のみを含む含フッ素重合体、およびその前駆体としての含フッ素単量体、およびそれを用いたパターン形成方法が提供される。
【0052】
本発明の含フッ素重合体は、炭素数1~3の直鎖状、炭素数3の分岐状、または炭素数3~6の環状の含フッ素アルキル基のみを含むので、環境に蓄積する懸念がない。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0054】
本発明において、基板上に形成されたパターン形成膜がインク溶媒に対し撥液性を示す部位を撥液部、露光後の親液性を示す部位を親液部と呼ぶ。インクは、顔料もしくは染料が、インク溶媒に分散または溶解したものである。一般的に、パターン形成膜を用いるプリンテッドエレクトロニクスにおいて、インク溶媒には、水、テトラデカン、ヘキサデカンまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと呼ぶことがある)が用いられる。
【0055】
本発明者らは、パターン形成膜のインク溶媒に対する親液性と撥液性の評価を、水、ヘキサデカン、PGMEAに対する接触角を測定することで行った。
【0056】
露光後にパターン形成材料からなる膜の露光部位をインク溶媒に対し親液性とすることは、光照射することで、成分である含フッ素重合体中の含フッ素アルキル基を解離させることで達成できる。含フッ素アルキル基を解離除去するためには、フォトリソグラフィーに用いる化学増幅型レジストの原理を転用すればよい。フォトリソグラフィーにおいては、重合体、光酸発生剤および溶剤等を含むレジスト組成物を製膜したレジスト膜にパターン形状を記したマスクを介して光照射を行い、酸を発生させ、発生した酸により重合体との結合を開裂し、含フッ素アルキル基を除去する。通常、重合体より開裂される側の基は、酸不安定基、酸解離性基と呼ばれる。
【0057】
1.含フッ素重合体
1-1.式(1)で表される繰り返し単位
本発明の含フッ素重合体は、式(1)で表される繰り返し単位を含む含フッ素重合体で
ある。以下、含フッ素重合体(1)と呼ぶことがある。
【0058】
【化14】
【0059】
[Rf1、Rf2
式(1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(1)と呼ぶことがある)において、Rf1およびRf2は、炭素数1-3の直鎖状または炭素数3の分岐鎖状の含フッ素アルキル基である。
【0060】
含フッ素アルキル基としては、ジフルオロメチル基(CHF2-)、トリフルオロメチル基(CF3-)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基(CHF2CF2-)、1,1,1-トリフルオロフルオロエチル基(CF3CH2-)、1,1,1,2-テトラフルオロエチル基(CF3CFH-)、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロピル基(CHF2CF2CFH-)、1,1,1,2,-テトラフルオロプロピル基(CF3CFHCH2-)、ペンタフルオロエチル基(CF3CF2-)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロピル基(CF3CF2CH2-)、ヘプタフルオロプロピル基(CF3CF2CF2-)、またはヘキサフルオロイソプロピル基((CF32CH-)を例示することができる。
【0061】
好ましくは、トリフルオロメチル基(CF3-)、1,1,1,2-テトラフルオロエチル基(CF3CFH-)、ペンタフルオロエチル基(CF3CF2-)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロピル基(CF3CF2CH2-)、ヘプタフルオロプロピル基(CF3CF2CF2-)、またはヘキサフルオロイソプロピル基((CF32CH-)である。特に好ましくは、合成の容易さからトリフルオロメチル(CF3-)基であり、Rf1、Rf2がトリフルオロメチル基である場合、基同士の束縛の程度が大きくなって基が膜の表面に配列しやすいと推測される。
【0062】
また、Rf1とRf2は連結して環を形成していても構わない。
【0063】
前記式(1)で表される繰り返し単位が含む、Rf1およびRf2が連結してなる環状の含フッ素アルキル基として、式(5A)で表わされる基を挙げることができる。環状の含フッ素アルキル基とすることで体積が大きくなり、束縛の程度が大きくなって基が膜の表面に配列しやすいと推測される。
表面に
【0064】
【化15】
【0065】
(式(5A)中、Aは、水素原子、フッ素原子、またはメチル基であり、Zは水素原子またはフッ素原子であり、nは3~6の整数である。nが6である場合、含フッ素アルキル基は1個以上の水素原子を含む。)
【0066】
繰り返し単位(1)が含むRf1およびRf2が連結してなる環として、式(5)で表される基を例示することができる。
【0067】
【化16】
【0068】
式(5)で表される基は、Rf1とRf2が連結した炭素数5の脂環である。パーフルオロ基ではなく水素原子を含んでいるため分解可能であり、パーフルオロ基の場合に比べ、さらに環境への蓄積の懸念がない。
【0069】
[R3
繰り返し単位(1)において、R3は、水素原子または炭素数1-10の有機基を表す。本発明において有機基とは炭素原子を含む基のことを言う。有機基の種類としては、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基またはアシル基を挙げることができる。
【0070】
炭化水素基としては、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状もしくは環状の炭化水素基、または炭素数6~10のアリール基を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、フェニル基、ベンジル基、または4-メトキシベンジル基を例示することができる。
【0071】
アルコキシカルボニル基としては、tert-ブトキシカルボニル基、tert-アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、またはi-プロポキシカルボニル基を例示することができる。
【0072】
アセタール基としては、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基、テトラフィドロフラニル基またはテトラフィドロピラニル基を例示することができる。
【0073】
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、フィドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、またはイソニコチノイル基を例示することができる。また、これらの有機基が含む水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0074】
繰り返し単位(1)において、R3は嵩高い有機基であるほどに、酸による、含フッ素アルキル基の解離反応が遅くなる。繰り返し単位(1)を含む含フッ素重合体を含むパターン形成用組成物からなる膜を、露光することで、膜表面を撥液性から親液性へと変えるにあたって、含フッ素アルキル基の解離反応を速やかに進行させるためには、R3は、好ましくは、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0075】
[A]
繰り返し単位(1)において、Aは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
【0076】
[L]
繰り返し単位(1)において、Lは、メチレン基であり、各メチレン基が含む任意の数の水素原子がメチル基に置換されていてもよい。単量体の合成のし易さより、Aは好ましくはメチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレンであり、特に好ましくは、メチレンである。
【0077】
1-2.式(1)で表される繰り返し単位が含む基[P]
式(1)で表される繰り返し単位が含む基[P]は、以下の式(2)~(4)で表される、いずれかの基(2)~(4)である。
【0078】
【化17】
【0079】
[R1
基(2)および基(3)において、R1は、水素原子または炭素数1-10の有機基である。有機基の有する水素原子がフッ素原子と置換されていてもよい。重合のし易さから、R1は、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0080】
[基(2)]
以下に示すように、Pが基(2)で表される構造である繰り返し単位(1A)を含む含フッ素重合体(1A)は、式(6)で表される含フッ素単量体を重合させることで構造を得ることができる。
【0081】
【化18】
【0082】
(式(6)中のRf1、Rf2、R1、R3、A、Lおよびnは式(1)と同義である。)
【0083】
<Y>
基(2)において、Yは、単結合または2価の基である。
2価の基としては、炭素数2~10の2価の有機基であることが好ましく、メチレン基、炭素数2~10のアルキレン基、炭素数2~10アルケニレン基、炭素数6~10の2価のアリール基、または炭素数4 ~10の2価の脂環式炭化水素基を挙げることができる。アルキレン基またはアルケニレン基は、エーテル結合(-O-)、カルボニル基(-(C=O-)、カルボキシル基(-(C=O)O-、または-O(C=O)-を含んでいてもよく、組合せてYを形成してもよい。これらの2価の基が含む1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0084】
Yの含む有機基が長鎖となると撥液性が低下することより、好ましくは、単結合、オキシエチレン基(-O-CH2-CH2-)、またはオキシフェニレン基(-O-C64-)である。
【0085】
<式(6)で表される含フッ素単量体>
式(6)で表される含フッ素単量体は、アクリル酸エステル類またはメタクリル酸エステル類と、式(7)で表される含フッ素化合物を反応させてなる、含フッ素単量体を重合させることで得ることができる。
【0086】
【化19】
【0087】
(式(7)中のRf1、Rf2、R3およびAは、式(6)と同義である。)
【0088】
[基(3)]
Pが基(3)で表される構造である繰り返し単位(1)を含む含フッ素重合体(1)は、ポリビニルフェノールと式(7)で表される含フッ素化合物を反応させることで得ることができる。
【0089】
<X>
基(2)において、Xは、単結合または2価の基である。
【0090】
2価の基としては、炭素数2~10の2価の有機基であることが好ましく、メチレン基、炭素数2~10のアルキレン基、炭素数2~10アルケニレン基、炭素数6~10の2価のアリール基、または炭素数4 ~10の2価の脂環式炭化水素基を挙げることができる。アルキレン基またはアルケニレン基は、エーテル結合(-O-)、カルボニル基(-(C=O-)、カルボキシル基(-(C=O)O-)、または-O(C=O)-を含んでいてもよい。これらの2価の基が含む1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0091】
[基(4)]
Pが基(4)で表される構造である繰り返し単位(1)を含む含フッ素重合体(1)は、フェノールノボラック樹脂と式(7)で表される含フッ素化合物を反応させることで得ることができる。
【0092】
1-3.他の繰り返し単位
本発明の含フッ素重合体(1)において、繰り返し単位(1)以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。繰り返し単位(1)以外の他の繰り返し単位は、含フッ素重合体(1)を成分とするパターン形成用組成物を膜とする際の含フッ素重合体(1)の溶剤溶解性、または膜とした後の膜の硬さ等を調整する目的で含フッ素重合体(1)の構造中に加えるものである。
【0093】
繰り返し単位(1)と他の繰り返し単位を含む含フッ素重合体(1)は、繰り返し単位(1)を与える含フッ素単量体(6)と他の繰り返し単位を与える単量体を共重合させることで得られる。
【0094】
他の繰り返し単位を与える単量体は重合性不飽和結合を有し、繰り返し単位(1)を与える含フッ素単量体(6)と共重合可能であればよい。他の繰り返し単位を与える単量体としては、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、へキサフルオロイソプロパノール基を有する単量体、スチレン類、含フッ素スチレン類、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン類、含フッ素ノルボルネン類、または、その他の重合性不飽和結合を有する単量体を挙げることができる。
【0095】
[アクリル酸エステル類]
アクリル酸エステル類としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートもしくは2-ヒドロキシプロピルアクリレート、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはテトラメチレングリコール基を有するアクリレート、または不飽和アミドとしてのアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドもしくはジアセトンアクリルアミド、またはtert-ブチルアクリレート、3-オキソシクロヘキシルアクリレート、アダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、エチルアダマンチルアクリレート、ヒドロキシアダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートもしくはトリシクロデカニルアクリレート、またはラクトン環もしくはノルボルネン環などの環構造を有するアクリレート、またはα位にシアノ基を有するこれらアクリル酸エステルを例示することができる。
【0096】
[含フッ素アクリル酸エステル類]
含フッ素アクリル酸エステル類としては、含フッ素有機基をアクリル部位のα位に有する、またはエステル部位に有する含フッ素アクリル酸エステルを挙げることができる。α位とエステル部位ともに含フッ素有機基を有していてもよく、α位にシアノ基を有しエステル部位含フッ素アルキル基を有していてもよい。
【0097】
含フッ素アクリル酸エステル類がα位に有する含フッ素有機基としては、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基またはノナフルオロ-n-ブチルを例示することができる。
【0098】
含フッ素アクリル酸エステル類のエステル部位における含フッ素有機基としては、パーフルオロもしくは水素原子を含む含フッ素アルキル基、または環状構造の水素原子をフッ素原子、トリフルオロメチル基、へキサフルオロイソプロパノール基で置換した含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環もしくは含フッ素シクロヘプタン環を含む基を、例示することができる。
【0099】
含フッ素アクリル酸エステル類として、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1-ジフィドロヘプタフルオロ-n-ブチルアクリレート、1,1,5-トリフィドロオクタフルオロ-n-ペンチルアクリレート、1,1,2,2-テトラフィドロトリデカフルオロ-n-オクチルアクリレート、1,1,2,2-テトラフィドロヘプタデカフルオロ-n-デシルアクリレート、6-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-2-イルアクリレート、6-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-2-イル 2-(トリフルオロメチル)アクリレート、1,4-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、または1,4-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル-2-トリフルオロメチルアクリレートを例示することができる。
【0100】
[メタクリル酸エステル類]
メタクリル酸エステル類としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはテトラメチレングリコール基を有するメタクリレート、または不飽和アミドとしてのメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミドもしくはジアセトンアクリルアミド、またはtert-ブチルメタクリレート、3-オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートもしくはトリシクロデカニルメタクリレート、またはラクトン環もしくはノルボルネン環などの環構造を有するメタクリレートを例示することができる。
【0101】
[含フッ素メタクリル酸エステル類]
含フッ素メタクリル酸エステル類としては、含フッ素有機基をエステル部位に有する含フッ素メタクリル酸エステル類を挙げることができる。
【0102】
この様な、含フッ素有機基としては、パーフルオロフルオロもしくは水素原子を含む含フッ素アルキル基、または環状構造の水素原子をフッ素原子、トリフルオロメチル基、へキサフルオロイソプロパノール基などで置換した含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環もしくは含フッ素シクロヘプタン環を例示することができる。
【0103】
含フッ素アクリル酸エステル類としては、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1-ジヒドロヘプタフルオロ-n-ブチルメタクリレート、1,1,5-トリヒドロオクタフルオロ-n-ペンチルメタクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロトリデカフルオロ-n-オクチルメタクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロヘプタデカフルオロ-n-デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-2-イルメタクリレート、または1、4-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレートを例示することができる。
【0104】
[へキサフルオロイソプロパノール基を有する単量体]
へキサフルオロイソプロパノール基を有する単量体としては、以下に示す単量体を例示することができる。
【0105】
【化20】
【0106】
(各式中、R9は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。また、へキサフルオロイソプロパノール基は、その一部又は全部が保護基で保護されていてもよい。)
【0107】
[スチレン類、含フッ素スチレン類]
スチレン類としては、スチレン、ヒドロキシスチレンを例示することができる。
【0108】
含フッ素スチレン類としては、スチレン、ペンタフルオロスチレン、トリフルオロメチルスチレン、ビストリフルオロメチルスチレン、フッ素原子もしくはトリフルオロメチル基で芳香環構造の水素原子を置換してなるスチレン、へキサフルオロイソプロパノール基もしくはその水酸基を保護基で保護したへキサフルオロイソプロパノール基で、芳香環構造の水素原子を置換してなるスチレン、α位にハロゲン原子、アルキル基もしくは含フッ素アルキル基が結合したこれらスチレン、またはパーフルオロビニル基含有のスチレンを例示することができる。
【0109】
[ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類]
ビニルエーテル類またはアリルエーテル類は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ヒドロキシエチル基もしくはヒドロキシブチル基を含有してもよく、アルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテルであってもよい。ヒドロキシエチル基もしくはヒドロキシブチル基を含有するビニルエーテルの場合は、アルコール部位がアセチル基、ブチロイル基、プロピノイル基によりエステル結合を形成してもよい。シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、芳香環、その環状構造内に水素原子やカルボニル結合を有する環状型ビニルエーテルまたは環状型アリルエーテルであってもよい。含フッ素ビニルエーテル、含フッ素アリルエーテルとしては、これらビニルエーテルもしくはアリルエーテルが有する水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテルもしくは含フッ素アリルエーテルを挙げることができる。
【0110】
[オレフィン類、含フッ素オレフィン類]
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテンまたはシクロヘキセンを例示することができる。含フッ素オレフィン類としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンもしくはヘキサフルオロイソブテン、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロシクロペンテン、オクタフルオロシクロペンテンまたはデカフルオロシクロヘキセンを例示することができる。
【0111】
[ノルボルネン類、含フッ素ノルボルネン類]
ノルボルネン類、含フッ素ノルボルネン類は重合性基を有していればよく、1個のノルボルネン骨格のみならず、複数のノルボルネン骨格を有していてもよい。
ノルボルネン類または含フッ素ノルボルネン類は、不飽和化合物とジエン化合物のとのDiels-Alder付加反応で生成する。
【0112】
このような不飽和化合物としては、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコール、アクリル酸、α-フルオロアクリル酸、α-トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸、上記アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル又は含フッ素メタクリル酸エステル、2-(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2-(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2-(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2-(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、または2-(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレンを例示することができる。ジエン化合物としては、シクロペンタジエン、またはシクロヘキサジエンを例示することができる。
【0113】
含フッ素ノルボルネン化合物として、3-(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプテン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-2-プロパノールを例示することができる。
【0114】
[その他の重合性不飽和結合を有する単量体]
その他の重合性不飽和結合を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸を例示することができる。
【0115】
他の単量体として、重合部位からの有機基の長さが長鎖となる場合、または、多くのヘ
テロ原子を含む場合は、他の繰り返し単位由来の有機基の影響が強くなり、末端のRf基による撥液性を及ぼす効果が軽減される、また重合体の溶解性が低くなる懸念がある。よって、他の単量体として、好ましくは、炭素数10未満のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルであり、特に好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、またはイソブチルメタクリレートである。
【0116】
1-4.含フッ素重合体(1)における各繰り返し単位の含有割合
含フッ素重合体(1)全量に対する、式(1)で表される繰り返し単位の含有割合は、20mol%以上、100mol%以下であり、より好ましくは20mol%以上、90mol%、である。含フッ素重合体(1)中の繰り返し単位(1)の含有が20mol%よりも少ないと、含フッ素重合体(1)からなる膜を露光してなる、パターン形成膜の露光部に撥液性が得られない。
【0117】
含フッ素重合体(1)全量に対する、他の重合性単量体に由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは0mol%以上、80mol%以下、より好ましくは10mol%以上、80mol%以下である。
【0118】
他の単量体に由来する繰り返し単位は、含フッ素重合体(1)の有機溶媒への溶解性、膜とした際の硬さ等を向上させるためのものである。必要なければなくてもよいが、10mol%より少ないと硬さが向上しなく、80mol%を超えると繰り返し単位(1)の含有量が少なくなり、含フッ素重合体(1)からなる膜を露光してなる、パターン形成膜の露光部に撥液性が得られるとういう効果を期待できない。
【0119】
1-5.含フッ素重合体(1)の分子量
本発明の含フッ素重合体(1)の数平均分子量は、好ましくは、1,000以上、100,000以下、より好ましくは3,000以上、50,000以下である。分子量分散は好ましくは1以上、4以下であり、より好ましくは1以上、2.5以下が好ましい。
【0120】
数平均分子量が1000より少ないと、含フッ素重合体(1)を成分として含むパターン形成用組成物からなる膜が柔らかくなるとともに、所望の厚さの膜を形成することが難しくなる。また、露光後のパターン形成膜において、撥液部位よ、親液部位からなる微細なパターンを形成することが困難であるとともに、パターンの耐久性が乏しくなる虞がある。数平均分子量が100,000より多いと、含フッ素重合体(1)が溶剤に溶け難くなり、製膜後、ひび割れが発生し、含フッ素重合体(1)成分として含むパターン形成用組成物からなる膜を塗膜として形成することが困難である。
【0121】
2.含フッ素重合体の合成
含フッ素重合体(1)の合成方法は、繰り返し単位を得るための含フッ素単量体を用い重合させる方法(A)、または含フッ素重合体(1)の主鎖構造を有する重合体に対し含フッ素化合物を結合させる方法(B)がある。
【0122】
以下、方法(A)および方法(B)について説明する。
【0123】
2-1.方法(A)
方法(A)は、含フッ素重合体(1)の前駆体である、含フッ素単量体を単独重合させる、またはさらに含フッ素重合体(1)の前駆体である単量体と、それ以外の他の単量体と共重合させることで、含フッ素重合体(1)を得る方法である。
【0124】
[含フッ素重合体(1)の合成]
本発明の含フッ素重合体(1)の合成は、一般的に使用される重合方法から選択することができる。ラジカル重合、イオン重合が好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合を選択することができる。重合反応に用いる反応器は特に限定されない。また、重合においては、重合溶媒を用いてもよい。以下、ラジカル重合について説明する。
【0125】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤またはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合または乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式または連続式のいずれかの操作で行うことができる。
【0126】
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物を挙げることができる。アゾ系化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化物系化合物としては、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ-t-ブチルパーオキシド、i-ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素または過硫酸アンモニウムを例示することができる。
【0127】
<重合溶媒>
重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、炭化水素系溶媒、またはアルコール系溶剤を挙げることができる。他に水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、または芳香族系の溶媒を用いてもよい。
【0128】
エステル系溶媒としては、酢酸エチルまたは酢酸n-ブチル、ケトン系溶媒としてのアセトンまたはメチルイソブチルケトン、炭化水素系溶媒としては、トルエンまたはシクロヘキサン、アルコール系溶媒としてのメタノール、イソプロピルアルコールまたはエチレングリコールモノメチルエーテルを例示することができる。
【0129】
これらの重合溶媒は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用してもよく。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。
【0130】
<重合条件>
重合温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源の種類により適宜選択すればい。重合温度が好ましくは20℃以上、200℃以下、より好ましくは30℃以上、140℃以下となるように、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源の種類を適宜選択することが好ましい。含フッ素重合体(1)の分子量は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源の選択、および重合条件を調整することにより制御可能である。
【0131】
また、重合後の含フッ素重合体(1)を含む溶液または分散液から、有機溶媒または水などの前記重合溶媒である除去する方法としては、公知の方法を使用することができ、具体的な方法として、再沈殿、濾過または減圧下での加熱蒸留を挙げることができる。
【0132】
2-2.方法(B)
方法(B)は、水酸基を有する重合体と以下の含フッ素化合物(7)を用い、水酸基と含フッ素化合物(7)が有する含フッ素ビニルエーテル基を反応させてアセタール結合とし、重合体に含フッ素化合物(7)を付加させて、含フッ素重合体(1)を得る方法、または、カルボキシル基を有する重合体と含フッ素化合物(7)を用い、カルボキシル基と含フッ素化合物(7)が有する含フッ素ビニルエーテル基を反応させてアセタール結合とし、重合体に含フッ素化合物(7)を付加させて、含フッ素重合体(1)を得る方法である。
【0133】
【化21】
【0134】
(式(7)中のRf1、Rf2、R3、A、Lは、式(1)で示したものと同義であり、前項「1.含フッ素重合体」の記載がそのまま適用できる。)
【0135】
水酸基を有する重合体またはカルボキシル基を有する重合体を有機溶媒中に溶解した後、重合体の有する水酸基またはカルボキシル基に対して当モルまたは過剰量の含フッ素単量体(7)を加え、0℃から室温(約20℃、以下同じ)に冷却した後、方法(A)と同様の溶媒に溶解させた酸触媒を滴下し、滴下終了後、室温下で1時間~24時間攪拌し、付加反応させ、反応終了後、有機溶剤を除去することにより、目的の含フッ素重合体(1)を得ることができる。
【0136】
<水酸基またはカルボキシル基を有する重合体>
水酸基を有する重合体またはカルボキシル基を有する重合体は、特許文献7に記載の重合体を用いることができる。また、水酸基を有する重合体は、市販品を用いてもよい。この様な市販品としては、ポリビニルフェノール(丸善石油化学株式会社製 商品名 マルカリンカーS-4)、またはフェノールノボラック樹脂(荒川化学工業株式会社製 製品名 P-200)を挙げることができる。水酸基を有する重合体またはカルボキシル基を有する重合体の数平均分子量は、好ましくは、1,000以上、30,000以下、より好ましくは5,000以上、20,000以下である。数平均分子量が1000より少ないと、水酸基を有する重合体またはカルボキシル基を有する重合体に含フッ素化合物(7)を付加させて含フッ素重合体(1)とした際に、含フッ素重合体(1)を成分として含むパターン形成用組成物からなる膜が柔らかくなるとともに、所望の厚さの膜を形成することが難しくなる。また、露光後のパターン形成膜において、撥液部位よ、親液部位からなる微細なパターンを形成することが困難であるとともに、パターンの耐久性が乏しくなる虞がある。数平均分子量が30,000より多いと、水酸基を有する重合体またはカルボキシル基を有する重合体に含フッ素化合物(7)を付加させて含フッ素重合体(1)とした際に、含フッ素重合体(1)が溶剤に溶け難くなり、製膜後、ひび割れが発生し、含フッ素重合体(1)成分として含むパターン形成用組成物からなる膜を塗膜として形成することが困難である。
【0137】
本発明の含フッ素重合体(1)の数平均分子量は、好ましくは、1,000以上、100,000以下、より好ましくは3,000以上、50,000以下である。分子量分散は好ましくは1以上、4以下であり、より好ましくは1以上、2.5以下が好ましい。
【0138】
数平均分子量が1000より少ないと、含フッ素重合体(1)を成分として含むパターン形成用組成物からなる膜が柔らかくなるとともに、所望の厚さの膜を形成することが難しくなる。また、露光後のパターン形成膜において、撥液部位よ、親液部位からなる微細なパターンを形成することが困難であるとともに、パターンの耐久性が乏しくなる虞がある。数平均分子量が100,000より多いと、含フッ素重合体(1)溶剤に溶け難くなり、製膜後、ひび割れが発生し、含フッ素重合体(1)成分として含むパターン形成用組成物からなる膜を塗膜として形成することが困難である。
【0139】
<酸触媒>
触媒は反応を進行させるものであれば特に限定されず、無機酸または有機酸のいずれでも使用でき、ルイス酸でもよい。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、またはホウ酸を例示することができる。有機酸としては、カルボン酸またはスルホン酸を挙げることができる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸を例示することができる。スルホン酸としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p- トルエンスルホン酸を例示すことができる。上記の酸類で塩を形成し得るものは、そのピリジニウム塩、アンモニウム塩等を使用することも可能である。また、触媒として陽イオン交換樹脂またはゼオライトを使用することも可能である。
【0140】
方法(B)において、入手のし易く触媒活性が高いことより、トリフルオロ酢酸またはギ酸を使用することが好ましい。
【0141】
3.パターン形成用組成物
本発明のパターン形成用組成物は、その成分として、含フッ素重合体(1)、(A)酸発生剤、(B)有機溶剤を含む。その他(C)クエンチャー、(D)増感剤、(E)重合性化合物を含むことが好ましく、必要に応じて界面活性剤、保存安定剤、接着助剤または耐熱性向上剤を含んでいてもよい。
【0142】
(A)酸発生剤は、パターン形成用組成物から形成した膜中に、露光時に光照射によって酸を発生する化合物である。(B)有機溶剤はパターン形成用組成物の他の成分を溶解または分散するための物質である。(C)クエンチャーは、露光時に、酸発生剤からの酸の拡散を防止し得られるパターンを高精細にするための物質である。(D)増感剤は露光感度を上げるための物質である。(E)重合性化合物は露光後に得られるパターン形成幕をより硬くするための物質である。以下、各々の成分について記載する。
【0143】
3-1.(A)酸発生剤
本発明のパターン形成用組成物の成分として用いる(A)酸発生剤としては、光照射によって酸を発生する化合物である光酸発生剤を使用できる。
【0144】
本発明のパターン形成用組成物に成分として用いる(A)酸発生剤は、光照射によって酸を発生する化合物であればよく、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、またはカルボン酸エステル化を等が挙げることができる。
【0145】
以下、各々の(A)酸発生剤を示す。
【0146】
[オキシムスルホネート化合物]
オキシムスルホネート化合物としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数4~12の脂環式炭化水素基もしくは炭素数6~20のアリール基を挙げることができる。これらの基が有する水素原子の一部または全部がハロゲン原子または置換基で置換されていてもよい。好ましくは、炭素数1~12の直鎖状または炭素数3~12分岐状のアルキル基である。置換基としては、炭素数1~10のアルコキシ基、7,7-ジメチル-2-オキソノルボルニル基等の橋かけ環式脂環基を含む脂環式基を挙げることができる。
【0147】
炭素数1~12のフルオロアルキル基としては、具体的に、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基またはヘプチルフルオロプロピル基を例示することができる。
【0148】
炭素数4~12の脂環式炭化水素が有してもよい置換基としては、炭素数1~5のアルキル基またはアルコキシ基を挙げることができる。
【0149】
炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基またはキシリル基を挙げることができる。炭素数6~20のアリール基が有してよい置換基としては、炭素数1~5のアルキル基もしくはアルコキシ基、またはハロゲン原子を挙げることができる。
【0150】
オキシムスルホネート化合物としては、具体的に、(5-プロピルスルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-オクチルスルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(カンファースルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-p-トルエンスルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、または(5-オクチルスルフォニルオキシイミノ)-(4-メトキシフェニル)アセトニトリルを例示することができる。
【0151】
[オニウム塩]
オニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、アルキルスルホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ジベンジルスルホニウム塩、置換ベンジルスルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩またはテトラヒドロチオフェニウム塩を挙げることができる。
【0152】
ジフェニルヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム-p-トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムブチルトリス(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム-p-トルエンスルホナート、またはビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホン酸を例示することができる。
【0153】
トリフェニルスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホン酸、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、またはトリフェニルスルホニウムブチルトリス(2、6-ジフルオロフェニル)ボレートを例示することができる。
【0154】
アルキルスルホニウム塩としては、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル-4-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル-4-(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル-4-(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、またはジメチル-3-クロロ-4-アセトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを例示することができる。
【0155】
ベンジルスルホニウム塩としては、ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル-4-メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル-2-メチル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル-3-クロロ-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、または4-メトキシベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートを例示することができる。
【0156】
ジベンジルスルホニウム塩としては、ジベンジル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-アセトキシフェニルジベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル-4-メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル-3-クロロ-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジベンジル-3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、またはベンジル-4-メトキシベンジル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートを例示することができる。
【0157】
置換ベンジルスルホニウム塩としては、p-クロロベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-ニトロベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-クロロベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p-ニトロベンジル-3-メチル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5-ジクロロベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、またはo-クロロベンジル-3-クロロ-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを例示することができる。
【0158】
ベンゾチアゾニウム塩としては、3-ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3-ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、3-ベンジルベンゾチアゾニウムテトラフルオロボレート、3-(p-メトキシベンジル)ベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3-ベンジル-2-メチルチオベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、または3-ベンジル-5-クロロベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネートを例示することができる。
【0159】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、4,7-ジ-n-ブトキシ-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウム-1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(ノルボルナン-2-イル)エタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウム-2-(5-t-ブトキシカルボニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、または1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウム-2-(6-t-ブトキシカルボニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネートを例示することができる。
【0160】
[スルホンイミド化合物]
スルホンイミド化合物としては、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(フェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ノナフルオロブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(フェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(エチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(プロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ペンチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ヘキシルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ヘプチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(オクチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、またはN-(ノニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミドを例示することができる。
【0161】
[ハロゲン含有化合物]
ハロゲン含有化合物としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物を挙げることができる。
【0162】
[ジアゾメタン化合物]
ジアゾメタン化合物としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、またはフェニルスルホニル(ベンゾイル)ジアゾメタンを例示することができる。
【0163】
[スルホン化合物]
スルホン化合物としては、β-ケトスルホン化合物、β-スルホニルスルホン化合物、ジアリールジスルホン化合物が例示することができる。
【0164】
[スルホン酸エステル化合物]
スルホン酸エステル化合物としては、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、またはイミノスルホネートを例示することができる。
【0165】
[カルボン酸エステル化合物]
カルボン酸エステル化合物としては、カルボン酸o-ニトロベンジルエステルを例示するすることができる」。
【0166】
[本発明のパターン形成用組成物が含む(A)酸発生剤]
これら(A)酸発生剤は、単独、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。パターン形成用組成物からなる膜の露光感度を向上させル効果が大きいことより、好ましくは、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホン酸エステル化合物であり、特に好ましくは、オキシムスルホネート化合物である。
【0167】
[パターン形成用組成物中の(A)酸発生剤の含有]
パターン形成用組成物中の(A)酸発生剤の含有は、本発明の含フッ素重合体(1)を基準とする質量%で表して、好ましくは0.1%以上、10%以下、より好ましくは1%以上、5%以下である。(A)酸発生剤の含有量を上述の範囲とすることで、パターン形成用組成物の高い露光感度が得られ、撥液部位と親液部位による、より高精細なパターン形成膜が得られる。
【0168】
3-2.(B)有機溶剤
本発明のパターン形成用組成物に成分として用いる(B)有機溶剤としては、パターン形成用組成物の各成分を溶解または分散することができればよく、アルコール類、エーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類またはエステル類等を挙げることができる。
以下、各々の(B)有機溶剤を示す。
【0169】
[アルコール類]
アルコール類としては、長鎖アルキルアルコール類、芳香族アルコール類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類;、プロピレングリコールモノアルキルエーテルを挙げることができる。
【0170】
長鎖アルキルアルコール類としては、1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-ドデカノール、1,6-ヘキサンジオール、または1,8-オクタンジオールを例示することができる。
【0171】
芳香族アルコール類としては、ベンジルアルコールを例示することができる。
【0172】
エチレングリコールモノアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、またはエチレングリコールモノブチルエーテルを例示することができる。
【0173】
プロピレングリコールモノアルキルエーテル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、またはプロピレングリコールモノブチルエーテルを例示することができる。
【0174】
ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類としては、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、またはジプロピレングリコールモノブチルエーテルを例示することができる。
【0175】
本発明のパターン形成用組成物を溶解し易く、製膜し易いことより、これらアルコール類の中でも、好ましくは、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、またはプロピレングリコールモノエチルエーテルである。
【0176】
[エーテル類]
エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ヘキシルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、または1,4-ジオキサンを例示することができる。
【0177】
[ジエチレングリコールアルキルエーテル類]
ジエチレングリコールアルキルエーテル類としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、またはジエチレングリコールエチルメチルエーテル等を例示することができる。
【0178】
[エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類]
エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類としては、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、またはエチレングリコールモノエチルエーテルアセテーを例示することができる。
【0179】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、またはプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートを例示することができる。
【0180】
[プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類]
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、またはプロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネートを例示することができる。
【0181】
[脂肪族炭化水素類]
脂肪族炭化水素類としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、シクロヘキサン、またはデカリンを例示することができる。
【0182】
[芳香族炭化水素類]
芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、i-プロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、またはジクロロベンゼンを例示することができる。
【0183】
[ケトン類]
ケトン類としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、または4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンを例示することができる。
【0184】
[エステル類]
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸ブチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3-ヒドロキシプロピオン酸メチル、3-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3-ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル、2-エトキシプロピオン酸メチル、または2-エトキシプロピオン酸エチルを例示することができる。
【0185】
[パターン形成用組成物中の(B)有機溶剤の含有率]
これら(B)有機溶剤は、単独、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0186】
パターン形成用組成物中の(B)有機溶剤の含有は、(C)有機溶剤以外のパターン形成用組成物100質量部に対して、好ましくは200質量部~1600質量部であり、より好ましくは400質量部~1000質量部である。(B)有機溶剤の使用を上述の範囲にすることで、パターン形成用組成物のガラス基板等に対する濡れ性を向上させ、さらに塗布ムラの発生を抑制し、均一な膜を得ることができる。
【0187】
3-3.(C)クエンチャー
本発明のパターン形成用組成物に成分として用いる(C)クエンチャーは、膜とした際の露光時に(A)酸発生剤からの酸の拡散を防止する酸拡散抑制材として機能するものであり、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を挙げることができる。光崩壊性塩基として、好ましくはオニウム塩化合物である。
【0188】
光崩壊性塩基は、露光部においては酸を発生する一方、未露光部ではアニオンによる高い酸捕捉機能が発揮されて、(A)酸発生剤からの酸を補足し、露光部から未露光部拡散する酸を失活させる。未露光部のみにおいて酸を失活させる。本発明のパターン形成用組成物を露光した後のパターン形成膜において撥液部位と親液部位の境界が明確となり、インク塗布後のパターンのコントラストが向上し、精緻なパターンが得られる。
(C)クエンチャーは、単独、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0189】
[パターン形成用組成物中の(C)クエンチャーの含有]
パターン形成用組成物中の(C)クエンチャーの含有は、含フッ素重合体(1)100質量部に対して、好ましくは0.001質量部~5質量部であり、より好ましくは0.005質量部~3質量部である。(C)クエンチャーの含有を上述の範囲とすることで、本発明のパターン形成用組成物を露光した後のパターン形成膜において撥液部位と親液部位の境界が明確となり、インク塗布後のパターンのコントラストが向上し、精緻なパターンが得られる。
【0190】
3-4.(D)増感剤
本発明のパターン形成用組成物に成分として用いる(D)増感剤は、パターン形成用組成物の露光感度をより向上させたい際に加えるものである。(D)増感剤は、光線または放射線を吸収して励起状態となる化合物であることが好ましい。(D)増感剤は励起状態となることで、(A)酸発生剤と接触した際、電子移動、エネルギー移動または発熱等を生じ、これにより、(A)酸発生剤は分解し酸を生成し易くなる。(D)増感剤は、350nm~450nmの領域に吸収波長を有すればよく、多核芳香族類、キサンテン類、キサントン類、シアニン類、メロシアニン類、ローダシアニン類、オキソノール類、チアジン類、アクリジン類、アクリドン類、アントラキノン類、スクアリウム類、スチリル類、ベーススチリル類、またはクマリン類を挙げることができる。
【0191】
以下、各々の(D)増感剤を示す。
【0192】
多核芳香族類としては、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン,3,7-ジメトキシアントラセン、または9,10-ジプロピルオキシアントラセンを例示することができる。
【0193】
キサンテン類としては、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガルを例示することができる。
キサントン類としては、キサントン、チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、またはイソプロピルチオキサントンを例示することができる。
【0194】
シアニン類としては、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニンを例示することができる。
【0195】
メロシアニン類としては、メロシアニン、カルボメロシアニンを例示することができる。
【0196】
チアジン類としては、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルーを例示することができる。
【0197】
アクリジンとしては、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビンを例示することができる。
【0198】
アクリドン類としては、アクリドン、10-ブチル-2-クロロアクリドンを例示することができる。
【0199】
アントラキノン類としては、アントラキノンを例示することができる。
スクアリウム類としては、スクアリウムを例示することができる。
ベーススチリル類としては、2-[2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル]ベンゾオキサゾールを例示することができる。
【0200】
クマリン類としては、7-ジエチルアミノ4-メチルクマリン、7-ヒドロキシ4-メチルクマリン、または2,3,6,7-テトラヒドロ-9-メチル-1H,5H,11H[l]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-ノンを例示することができる。
【0201】
これら(D)増感剤は、単独、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0202】
[本発明のパターン形成用組成物が含む(D)増感剤]
本発明のパターン形成用組成物として使用する(D)増感剤としては、露光感度向上の効果が大きいことより、好ましくは、多核芳香族類、アクリドン類、スチリル類、ベーススチリル類、クマリン類、またはキサントン類であり、特に好ましくはキサントン類である。キサントン類の中でもジエチルチオキサントンおよびイソプロピルチオキサントンが好ましい。
【0203】
[パターン形成用組成物中の(D)増感剤の含有率]
(D)増感剤の含有は、含フッ素重合体(1)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~8質量部であり、より好ましくは1質量部~4質量部である。(D)増感剤の含有を上述の範囲とすることで、パターン形成用組成物の露光感度を向上させ、本発明のパターン形成用組成物を露光した後のパターン形成膜において撥液部位と親液部位の境界が明確となり、インク塗布後のパターンのコントラストが向上し、精緻なパターンが得られる。
【0204】
3-5.(E)重合性化合物
本発明のパターン形成用組成物に成分として用いる(E)重合性化合物は、得られるパターン形成膜をより硬くするために、パターン形成用組成物に含有させるものである。(E)重合性化合物は、含フッ素重合体(1)以外の、エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような(E)重合性化合物としては、重合性が良好であり、パターン形成用組成物から得られるパターン形成膜がより硬くなることから、単官能または2官能以上の、アクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステルを挙げることができる。
【0205】
以下、各々の(E)重合性化合物を示す。
【0206】
[単官能のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル]
単官能アクリル酸エステルとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、(2-アクリロイルオキシエチル)(2-ヒドロキシプロピル)フタレート、または(2-メタクリロイルオキシエチル)(2-ヒドロキシプロピル)フタレートを例示することができる。
【0207】
単官能メタクリル酸エステルとしては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、またはω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレートを例示することができる。
【0208】
単官能のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルは市販品を入手することが可能であり、例えば、東亞合成株式会社から、商品名、アロニックス(登録商標)、品番M-101、M-111、M-114、およびM-5300、日本化薬株式会社から、商品名、KAYARAD、品番TC-110S、TC-120S、大阪有機化学工業株式会社から、商品名、ビスコート158、2311ビスコート等が市販されている。
【0209】
[2官能のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル]
2官能アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、または1,9-ノナンジオールジアクリレートを例示することができる。
【0210】
2官能メタクリル酸エステルとしては、プロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、または1,9-ノナンジオールジメタクリレートを例示することができる。
【0211】
2官能のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステは市販品を入手することが可能であり、例えば、東亞合成株式会社から、商品名、アロニックス(登録商標)、品番、M-210、M-240、M-6200、日本化薬株式会社から、商品名、KAYARAD、品番、HDDA、HX-220、R-604、大阪有機化学工業株式会社から、商品名、ビスコート、品番、260、312、335HP、共栄社化学株式会社から、商品名、ライトアクリレート1,9-NDA等が市販されている。
【0212】
[3官能以上のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル]
3官能以上のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2-アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、トリ(2-メタクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートの、または直鎖アルキレン基および脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基とを有し、かつ3個、4個または5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物を例示することができる。
【0213】
3官能以上のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルは市販品を入手することが可能であり、例えば、東亞合成株式会社から、商品名、アロニックス(登録商標)、品番、M-309、M-315、M-400、M-405、M-450、M-7100、M-8030、M-8060、TO-1450、日本化薬株式会社から、商品名、KAYARAD、品番、TMPTA、DPHA、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120、同DPEA-12、大阪有機化学工業株式会社から、商品名、ビスコート、品番、295、300、360、GPT、3PA、400、共栄社化学株式会社から、商品名、ライトアクリレート1,9-NDA等が市販されている。多官能ウレタンアクリレート系化合物は、第一工業製薬株式会社から、商品名、ニューフロンティア(登録商標)品便、R-1150、日本化薬株式会社ヵら、商品名、KAYARAD、品番、DPHA-40H等が市販されている。
【0214】
本発明のパターン形成用組成物として使用する(E)重合性化合物としては、得られるパターン形成膜をより硬くする効果が大きいことより、好ましくは、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートまたは多官能ウレタンアクリレート系化合物である。特に好ましくは、3官能以上のアク(メタ)リル酸エステルが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物である。
【0215】
本発明のパターン形成用組成物として使用する(E)重合性化合物としては、パターン形成用組成物から得られるパターン形成膜をより硬くする効果が大きいことより、好ましくは、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートまたは多官能ウレタンアクリレート系化合物である。特に好ましくは、3官能以上のアク(メタ)リル酸エステルが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物である。
【0216】
[パターン形成用組成物中の(E)重合性化合物の含有率]
これら(E)重合性化合物は、単独、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。(E)重合性化合物の含有は、含フッ素重合体(1)100質量部に対して、好ましくは1質量部~300質量部であり、さらに好ましくは、3質量部~200質量部であり、特に好ましくは5質量部~100質量部である。(E)重合性化合物の使用量を上述の範囲内とすることで、パターン形成用組成物から得られるパターン形成膜をより硬くすることができる。
【0217】
4.パターン形成方法
4‐1.パターン形成方法
本発明のパターン形成方法は、以下の2種類のパターン形成方法(A)、(B)が挙げられる。パターン形成方法(A)はマスクを用いる方法であり、パターン形成方法(B)は描画装置を用いる方法である。
【0218】
[パターン形成方法(A)]
本発明のパターン形成用組成物を基板上に塗布し得られた塗膜を加熱(プレベーク)する工程である製膜工程と、
次いで、製膜工程で得られた膜にマスクを介して波長150nm以上、500nm以下の光を照射し露光し、マスクを介して膜に照射露光し、マスクのパターンを膜に転写し、撥液部と親液部を有するパターン形成膜を得、
得られたパターン形成膜にインクを塗布するパターン形成工程を含む。
【0219】
[パターン形成方法(B)]
本発明のパターン形成用組成物を基板上に塗布し得られた塗膜を加熱(プレベーク)する工程である製膜工程と、
次いで、波長150nm以上、500nm以下の光を描画装置により膜に走査露光して、パターンを膜に描画し、撥液部と親液部を有するパターン形成膜を得、
得られたパターン形成膜にインクを塗布するパターン形成工程を含む。
【0220】
以下に、本発明のパターンの形成方法の製膜工程およびパターン形成工程について示す。
【0221】
4-2.製膜工程
製膜工程は、上述の本発明のパターン形成用組成物を基板に塗布し、得られた塗膜を加熱(プレベーク)する工程である。
【0222】
[基板]
第1工程で用いる基板としては、従来、電子回路に用いられてきた、樹脂製基板、ガラス基板、石英、シリコン等の半導体基板がをあげることができる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、またはポリイミドを例示することができる。
【0223】
基板にパターン形成用組成物を塗布する前に、必要に応じて基板表面を洗浄、粗面化、微少な凹凸面の付与等の前処理を施しておいていてもよい。
【0224】
[塗布方法]
パターン形成組成物の基板への塗布方法としては、特に限定されず、はけまたはブラシを用いた塗布、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ディスペンス法を挙げることができる。本発明のパターンの形成方法において、好ましくはスピンコート法が好ましい。
【0225】
[膜厚]
上記工程で形成される塗膜の厚みは、所望の用途に応じ適宜調整すればよい。本発明のパターン形成方法において、好ましくは0.1μm~20μmである。
【0226】
[プレベーク]
用いるパターン形成用組成物の組成等によっても異なるが、本発明のパターン形成方法におけるプレベークの条件は、好ましくは加熱温度60℃~120℃、加熱時間1分間~10分間である。
【0227】
4-3.パターン形成工程
パターン形成工程は、製膜工程で得られた膜にマスクを介して波長150nm以上、500nm以下の光を照射し露光し、マスクのパターンを膜に転写し、撥液部と親液部を有するパターン形成膜を得、
または、波長150nm以上、500nm以下の光描画装置により膜に走査露光して、パターンを膜に描画し、撥液部と親液部を有するパターン形成膜を得、
得られたパターン形成膜にインクを塗布しインクによるパターンを得る工程である。
【0228】
[露光]
露光は、所望のパターンと同様のパターンの露光部が形成されるように、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光する、または直描式露光装置を用いて所定のパターンを走査することで行う。
【0229】
露光には、可視光線、紫外線、X線または荷電粒子の流れである放射線を使用する。好ましくは、波長150nm以上、500nm以下の紫外線であり、特に好ましくは紫外線発光ダイオードによる365nmの紫外線である。
【0230】
露光により、膜中の(A)酸発生剤より発生する酸の効果により、含フッ素重合体(1)が有する酸解離性基を脱離し揮発する。その結果、露光部の膜厚が未露光部の膜厚に比べ薄くなり、凹状のパターンが形成される。その際、酸解離性基は含フッ素置換基を有するため、未露光部は撥液性を示し、露光部は親液性となる。したがって、基板上に形成された膜は、撥液性の未露光部と、凹状のパターンである親液性の露光部とを有するパターン形成膜となる。
【0231】
[加熱]
露光後のパターン形成膜は加熱することが好ましい。露光後のパターン形成膜を加熱することで、露光部において含フッ素重合体(1)から解離した酸解離性基による成分をさらに揮発させることができ、露光された凹部と、未露光の凸部からなる、より精緻なパターンが得られる。
【0232】
パターン形成膜を加熱する方法としては、例えば、該膜形成基板を、ホットプレート、バッチ式オーブンまたはコンベア式オーブンを用いて加熱する方法、あるいはドライヤー等を用いて熱風乾燥する方法、真空ベークする方法を挙げることができる。
【0233】
加熱の条件は、組成物の組成や、得られた塗膜の厚み等によっても異なるが、好ましくは、60℃以上、150℃以下で、3分以上、30分以下である。
【0234】
[パターンの形成]
パターンの形成は、得られたパターン形成膜にインクを塗布しインクによるパターンを得ることでなされる。
【0235】
パターン形成膜の露光前後の親撥部と撥液部の、インク溶媒である水およびヘキサデカンに対する接触角の差は、好ましくは30°以上であり、より好ましくは50°以上である。接触角差が上述の範囲にあることにより、凸状の撥液性部位にインクを塗布した場合であっても、インクをはじき、親液部である凹部にインクが移動しやすくなり、露光された凹部と、未露光の凸部からなる、より精緻なパターンが得られる。
【0236】
[導電性パターンの形成]
本発明のパターン形成方法において、インクとして導電性インク用いることで、基板上に導電性パターンを形成することができる。
【0237】
4-4.電子回路および電子デバイスへの応用]
本発明のパターン形成方法において基板上に導電性パターンからなる電機回路を形成し、電子デバイスを製造することができる。
【0238】
電子回路は、基板上に形成された導電性パターンによる配線である。電子デバイスは、電子回路を有する機器であり、液晶ディスプレイ、携帯電話等の携帯情報機器、デジタルカメラ、有機ディスプレイ、有機EL照明、各種センサーまたはウェアラブルデバイスを挙げることができる。
【0239】
5.含フッ素単量体
5-1.含フッ素単量体(6)
本発明の式(6)で表される含フッ素単量体を以下に示す。以下、含フッ素単量体(6)と呼ぶことがある。
【0240】
【化22】
【0241】
(式(6)中のRf1、Rf2、R1、R3、A、L、Yおよびnは、式(1)で示したものと同義であり、前項「1.含フッ素重合体」の記載がそのまま適用される。)
【0242】
含フッ素単量体(6)は、以下に示す様に、含フッ素重合体(1)の繰り返し単位(1)において、Pが基(2)であり且つR1がメチル基である場合の単量体である。
【0243】
【化23】
【0244】
【化24】
【0245】
(式(2)中、R1は、水素原子、フッ素原子または炭素数1~10の有機基である。Yは、単結合または2価の基である。)
【0246】
5-2.含フッ素単量体の合成
[含フッ素単量体(6)の合成]
含フッ素単量体(6)は、以下の式に示す様に、溶媒下または無溶媒下において、ビニルエーテル基を有する化合物(8)と含フッ素アルコール(9)の付加反応によるアセタール化、または水酸基を有する化合物(10)と含フッ素化合物(7)の付加反応によるアセタール化で合成可能である。
【0247】
【化25】
【0248】
(式(6)~式(10)中のRf1、Rf2、R1、R3、A、L、Yおよびnは、式(1)で示したものと同義である。)
【0249】
上記反応は無触媒でも進行するが、反応を促進させるためには、溶媒中で酸触媒を用いることが好ましい。より安価に製造するためには、無溶媒で行ってもよい。
【0250】
ビニルエーテル基を有する化合物(8)としては、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、またはメタクリル酸2-ビニルオキシエチルを例示することができる。含フッ素アルコール(9)としては、ヘキサフルオロイソプロパノールまたはヘキサフルオロ-tert-ブタノールを例示することができる。
【0251】
水酸基を有する化合物(10)としては、メタクリル酸、アクリル酸、2-トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、またはメタクリル酸-4-ヒドロキシフェニルを例示することができる。
【0252】
[酸触媒]
上記酸触媒は特に限定されず、無機酸及び有機酸のいずれも使用することができる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸 またはゼオライトを例示することができる。
【0253】
有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、陽イオン交換樹脂、ルイス酸を挙げることができる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸またはトリフルオロ酢酸、スルホン酸としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp-トルエンスルホン、ルイス酸としては、塩化アルミニウム、または塩化すずを例示することができる。
【0254】
上記の酸類で塩を形成し得るものは、そのピリジニウム塩、アンモニウム塩等を使用することも可能である。
【0255】
これらの中でも、含フッ素単量体(6)の高い収率が得られることから、特に好ましくは、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸または硫酸である。
【0256】
[溶媒]
溶媒としては、前記アセタール化反応に不活性な溶媒であればよい。溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素またはエーテル類を挙げることができる。
【0257】
脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン、 シクロヘキサン、環状の脂肪族炭化水素であるメチルシクロヘキサン、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエンまたはキシレン、 ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、 エーテル類としては、テトラヒドロフランまたはエチレングリコールジメチルエーテルを例示することができる。
【0258】
6.含フッ素化合物
6-1.含フッ素化合物(7)
本発明の式(7)で表される含フッ化合物は、含フッ素単量体(6)の前駆体としての化合物である。以下、式(7)で表される含フッ素化合物を、含フッ素化合物(7)と呼ぶことがある。
【0259】
【化26】
【0260】
(式(7)中のRf1、Rf2、R3、A、Lは、式(1)で示したものと同義であり、前項「1.含フッ素重合体」の記載がそのまま適用できる。)
【0261】
6-2.含フッ素化合物(7)の合成
含フッ素化合物(7)は、ビニルエーテル骨格を有する含フッ素化合物である。
フッ素を含まないビニルエーテルは、カルボン酸ビニルエステルとアルコールを遷移金属触媒の存在下、以下の反応で得られることが知られている。特開2003-073321、非特許文献 J.AM.CHEM.SOC(Vol124,2002,p1591に記載のように、遷移金属触媒としては、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウムなどが用いられる。
【0262】
【化27】
【0263】
(式中、Ra~Reはフッ素原子を有しない有機基である。)
【0264】
[含フッ素化合物(7)の合成]
発明者らが鋭意検討を重ねた結果、金属触媒を選択し、溶媒中、塩基性条件下で行うことより、含フッ素化合物(7)が下記に示す式で収率高く合成可能であることを見出し、本発明の含フッ素化合物(7)を合成するに至った。
【0265】
本反応は、以下に示す様に、カルボン酸ビニルと含フッ素アルコールとのビニル基交換反応であり、金属触媒にカルボン酸ビニルのビニル基がカルボン酸の脱離を伴いながらアセチレンとして配位した後、含フッ素アルコールが金属触媒に配位したアセチレンと反応し、含フッ素化合物(7)が生成する反応である。しかしながら、脱離したカルボン酸と金属触媒に配位したアセチレンと反応で原料のカルボン酸ビニルに戻る可能性が推測される。発明者らは、使用する塩基の量を調整することで、生成するカルボン酸を中和除去することで、含フッ素化合物(7)が収率よく得られることを見出したものである。
【0266】
【化28】
【0267】
(式(7)中のRf1、Rf2、R3、A、Lは、式(1)で示したものと同義であり、前項「1.含フッ素重合体」の記載がそのまま適用できる。)
【0268】
<金属触媒>
金属触媒としては、好ましくはイリジウム化合物などの周期表VIII族元素化合物であり、特に好ましくはイリジウムである。金属触媒の量は、カルボン酸ビニルエステルと含フッ素アルコールを合わせた量に対し、好ましくは1質量%以上、20質量%以下であり、特に好ましくは、1質量%以上、5質量%以下である。
【0269】
<塩基>
塩基としては、無機塩基または有機塩基のいずれも使用できる。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムまたは炭酸水素リチウムを例示することができる。好ましくは、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムである。塩基の量は、カルボン酸ビニルエステルと含フッ素アルコールを合わせた量に対し、好ましくは1.5モル以上、10モル以下であり、特に好ましくは、1.5モル以上、3モル以下である。
【0270】
<溶媒>
溶媒としては、本アセタール化反応に不活性であればよく、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素、環状の脂肪族炭化水素; 芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類を挙げることができる。直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素としてヘキサンまたはヘプタン、環状の脂肪族炭化水素として、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサン、芳香族炭化水素として、ベンゼン、トルエンまたはキシレン、ハロゲン化炭化水素として、塩化メチレン、 エーテル類として、テトラヒドロフラン、またはエチレングリコールジメチルエーテルを挙げることができる。脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、シクロヘキサン、トルエンなどが好ましいが、含フッ素化合物(7)の沸点により分離しやすい溶媒を選択する。
【0271】
7.含フッ素環状化合物
7-1.含フッ素環状化合物(5B)
含フッ素環状化合物(5B)は、本発明の含フッ素重合体(1)、含フッ素単量体(6)、含フッ素化合物(7)に、Rf1とRf2を連結させた式(5)で表される基を導入するための化合物である。
【0272】
【化29】
含フッ素環状化合物(5B)
【0273】
(式(5B)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、またはメチル基である)
【0274】
【化30】
式(5)で表される基
【0275】
前記、含フッ素重合体(1)、含フッ素単量体(6)、含フッ素化合物(7)が含む、Rf1およびRf2が連結してなる環が、式(5)で表される基となる。
【0276】
7-2.含フッ素環状化合物(5B)の合成
含フッ素環状化合物(5B)は、以下の反応に示す様に、ラジカル開始剤として過酸化物を用い。オクタフルオロシクロペンテンとアルコールを反応させることで得られる。アルコールとしては、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールを例示することができる。
【0277】
過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド、アセチルパーオキシド、tert-ブチルハイドロパーオキシドなどを例示することができる。好ましくはベンゾイルパーオキシドである。
【0278】
【化31】
【0279】
(式(5B)中、Rは水素原子、またはメチル基である。)
また、Rがともにメチル基である含フッ素環状化合物(5B)は、特開2003-300939号公報に記載されている。
【0280】
Rがともにメチル基である含フッ素環状化合物(5B)は、オクタフルオロシクロペンテンにイソプロパノールを付加させることにより製造される、無色透明の環状アルコールである。
【0281】
7-3.含フッ素化合物(7A)への導入
6-2項に示した反応と同様に、以下の反応に従い、式(5)で表される基を導入した含フッ素化合物(7A)が得られる。
【0282】
本反応は、6-2項と同様にカルボン酸ビニルと、含フッ素アルコールとのビニル基交換であり、使用する塩基の量を調整することで、生成するカルボン酸を中和除去することで、含フッ素化合物(7A)が収率よく得られる。
【0283】
【化32】
【実施例
【0284】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0285】
1.含フッ素単量体の合成
含フッ素重合体(1)を得るための前駆体としての、前述の式(6)で表される含フッ素単量体に属する、含フッ素単量体-1~159を合成した。
【0286】
1-1.含フッ素単量体-1の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコに、メタクリル酸ビニル(東京化成株式会社製、以下同じ)、33.6g(0.3mol)、ヘキサフルオロイソプロパノール(セントラル硝子株式会社製、以下同じ)、52.9g(0.315mol)を入れた後、硫酸、0.74g(7.5mmol)を徐々に加え、反応温度40 ℃ で6 時間攪拌し、以下の式に示す反応を行った。
【0287】
【化33】
【0288】
反応液を室温に冷却した後、濃度6質量%の重曹水、50mlを加え、攪拌した。次いで、反応液を分液ロートに移し、静置して分離し有機層を採取した。採取した有機層を減圧蒸留し、含フッ素単量体-1、39gを収率47%で得た。
【0289】
得られた含フッ素単量体-1の沸点は、圧力4.0kPaで62℃であった。
【0290】
核磁気共鳴分析の結果を以下に示す。
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:TMS);δ(ppm)1.53(3H,d),1.94(3H,s),4.80(1H,m)5.65(1H,q)6.10
(1H,q)6.20(1H,s)
19F-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:C6D6);δ(ppm)-74
.5 (6F,s)
【0291】
1-2.含フッ素単量体-2の合成
前述の含フッ素単量体-1の合成において使用したヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメタノールを用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成の際と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-2を合成した。
【0292】
【化34】
【0293】
[1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメタノールの合成]
窒素雰囲気下、100mlのステンレス鋼製耐圧容器に室温でメタノール10.5ml(0.25mol)、ベンゾイルパーオキシド(BPO)0.37g(0.0015mol)、オクタフルオロシクロペンテン(セントラル硝子株式会社製、以下同じ)10.4g(0.04mol)を加え容器を密封し、120℃まで加熱した後に24時間攪拌し、以下の反応を行った。容器を冷却後、内容物を常圧蒸留し、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメタノール、9.6gを収率80%で得た。
【0294】
【化35】
【0295】
核磁気共鳴分析の結果、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメタノールにおいてモル比で表わして、フッ素原子が1位のsyn-異性体、フッ素原子が5位のanti-異性体=1.2:1で得られた。
1 H-NMR(CDCl3 ,TMS基準)
syn-異性体:δ:5.22(1H,m),4.21-4.05(1H,m),2.31(6H,br-s)
anti-異性体:δ:5.10(1H,m),4.21-4.05(1H,m),2.31(6H,br-s)
【0296】
1-3.含フッ素単量体-3の合成
前述の含フッ素単量体-1の合成において使用したヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロジメチルシクロペンタンメタノールを用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-3を合成した。
【0297】
【化36】
【0298】
[1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロジメチルシクロペンタンメタノールの合成]
窒素雰囲気下、200mlのステンレス鋼製耐圧容器に室温でイソプロパノール77.28g(1.3mol)、ベンゾイルパーオキシド(BPO)16.9g(0.070mol)、オクタフルオロシクロペンテン、50.86g(0.23mol)を加え容器を密封し、120℃まで加熱した後に24時間攪拌し以下の反応を行った。反応器を冷却後、内容物を常圧蒸留し、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロジメチルシクロペンタンメタノール、51.8gを収率80%で得た。
【0299】
【化37】
【0300】
核磁気共鳴分析の結果、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロジメチルシクロペンタンメタノールにおいてモル比で表わして、フッ素原子が1位のsyn-異性体、フッ素原子が5位のanti-異性体=1.3:1で得られた。
1 H-NMR(CDCl3 ,TMS基準)
syn-異性体:δ:5.17(1H,m),2.17(1H,s),1.52(6H,s)
anti-異性体:δ:5.48(1H,m),1.94(1H,d,J=3.2Hz),1.55(6H,s)
【0301】
1-4.含フッ素単量体-4の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコに、メタクリル酸2-ビニルオキシエチル(東京化成株式会社製)、31g(0.2mol)、ヘキサフルオロイソプロパノール、90g(0.54mol)を入れた後、50℃で30時間攪拌し、以下に示す反応を行った。
【0302】
【化38】
【0303】
得られた反応液の減圧蒸留を行い、含フッ素単量体-4、57gを収率90%で得た。得られた含フッ素単量体-4の沸点は、圧力1.1kPaで94℃であった。
【0304】
核磁気共鳴分析の結果を以下に示す。
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:TMS);δ(ppm)1.43(3H,d),1.94(3H,s),3.80(2H,m)、4.29(2H,t),4.48(1H,m)、5.08(1H,q)、5.59(1H,m)、6.11(1H,s)
19F-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:C6D6);δ(ppm)-73.9 (6F,s)
【0305】
1-5.含フッ素単量体-5の合成
前述の単量体-4の合成において使用したヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメタノールを用いた以外は、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-1の合成の際と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-5を合成した。
【0306】
【化39】
【0307】
1-6.含フッ素単量体-6の合成
前述の含フッ素単量体-4の合成において使用したヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロジメチルシクロペンタンメタノールを用いた以外は、含フッ素単量体-4の合成の際と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-6を合成した。
【0308】
【化40】
【0309】
1-7 含フッ素単量体-7の合成
[ビニルエーテル-1の合成]
先ず、前述の式(6)で表される含フッ素単量体の原料である、式(7)で表される含フッ素化合物に属する、ヘキサフルオロイソプロピルビニルエーテル(以下、ビニルエーテル-1と呼ぶことがある)を合成した。
【0310】
攪拌機付き300mlガラス製フラスコに、ジ-μ-クロロビス(1,5-シクロオクタジエン)イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(東京化成株式会社製)、267mg(1mmol)と、炭酸ナトリウム、 19.2g(0.18mol)を入れた後、トルエン、100mlを加え、次いで、ヘキサフルオロイソプロパノール、17g(0.1mol)と酢酸ビニル、9g(0.1mol)を加え、アルゴン雰囲気下、100℃で5時間攪拌し、以下の式に示す反応を行った。
【0311】
【化41】
【0312】
反応液を室温に冷却した後、析出している塩を濾過し、濾液をエバポレーターにより減圧濃縮し、残渣を蒸留することにより,ビニルエーテル-1、12gを収率63%で得た。
【0313】
核磁気共鳴分析の結果を以下に示す。
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:TMS);δ(ppm)4.35(1H,dd),4.40(1H,m)、4.65(1H,dd)、6.15(1H,dd)19F-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:C6D6);δ(ppm)-74.2 (6F,s)
【0314】
[含フッ素単量体-7の合成]
攪拌機付き300mlガラス製フラスコに、ヒドロキシフェニルメタクリレート、17.8g(0.1mol)、ビニルエーテル-1、19.4g(0.1mol)、テトラヒドロフラン(THF)50mlを入れた後、硫酸、0.25g(2.5mmol)を徐々に加え、反応温度、50℃で6時間攪拌し、以下に示す反応を行った。
【0315】
【化42】
【0316】
反応液を室温まで冷却した後、重濃度6質量%の重曹水、50mlを加え、攪拌した。反応液を分液ロートに移し、静置して分離し有機層を採取した。採取した有機層を減圧蒸留し、含フッ素単量体-7、20gを収率55%で得た。
【0317】
1-8.含フッ素単量体-8の合成
[ビニルエーテル-2の合成]
先ず、前述の式(6)で表される含フッ素単量体に属する含フッ素重合体の原料である、式(7)で表される含フッ素化合物に属する、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメチルビニルエーテル(以下、ビニルエーテル-2と呼ぶことがある)を合成した。
【0318】
ビニルエーテル-1の合成において、ヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメタノールを用いた以外は、ビニルエーテル―1の合成の際と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、ビニルエーテル-2を合成した。
【0319】
【化43】
【0320】
[含フッ素単量体-8の合成]
前述の含フッ素単量体-7の合成において使用したヘキサフルオロイソプロピルビニルエーテルの替わりにビニルエーテル-2を用いた以外は、含フッ素単量体-7の合成と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-8を合成した。
【0321】
【化44】
【0322】
1-9.含フッ素単量体-9の合成
[ビニルエーテル-3の合成]
先ず、前述の式(6)で表される含フッ素単量体に属する含フッ素重合体の原料である、式(7)で表される含フッ素化合物に属する、ビニルエーテル-3を合成した。
【0323】
ビニルエーテル-1の合成において、ヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロジメチルシクロペンタンメタノールを用いた以外は、ビニルエーテル-1の合成の際と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、ビニルエーテル-3を合成した。
【0324】
【化45】
【0325】
[含フッ素単量体-9の合成]
前述の含フッ素単量体-7の合成において使用したヘキサフルオロイソプロピルビニルエーテルの替わりにビニルエーテル3を用いた以外は、含フッ素単量体-7の合成と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-9を合成した。
【0326】
【化46】
【0327】
1-10.含フッ素単量体-10の合成
[含フッ素単量体-10の合成]
前述の含フッ素単量体-1の合成において使用したヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに、ヘキサフルオロ-tert-ブタノール(セントラル硝子株式会社製)を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成の際と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-10を合成した。
【0328】
【化47】
【0329】
核磁気共鳴分析の結果を以下に示す。
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:TMS);δ(ppm)1.53(3H,d),1.94(3H,s), 2.01(3H,s), 5.65(1H,q), 6.10(1H,q)6.20(1H,d)
19F-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:C6D6);δ(ppm)-75
.5 (6F,s)
【0330】
1-11.含フッ素単量体-11の合成
[フルオロアクリル酸の合成]
非特許文献:Organic & Biomolecular Chemistry,13(3),717-728;2015記載の方法に従い、フルオロアクリル酸メチル(セントラル硝子株式会社製)の加水分解を行い、フルオロアクリル酸を得た。
【0331】
[含フッ素単量体-11の合成]
【0332】
【化48】
【0333】
攪拌機付き200mlガラス製フラスコに、フルオロアクリル酸9.0g(0.1mol)、ビニルエーテル-1、19.4g(0.1mol)、フェノチアジン0.001g、テトラヒドロフラン(THF)50mlを入れた後、硫酸、0.25g(2.5mmol)を徐々に加え、反応温度、50℃で6時間攪拌し、以下に示す反応を行った。反応液を室温まで冷却した後、重濃度6質量%の重曹水、50mlを加え、攪拌した。反応液を分液ロートに移し、静置して分離し有機層を採取した。採取した有機層を減圧蒸留し、含フッ素単量体-11、14.2gを収率50%で得た。得られた含フッ素単量体-11の沸点は、圧力5.0kPaで70℃であった。
【0334】
核磁気共鳴分析の結果を以下に示す。
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:TMS);δ(ppm)1.53(3H,d),1.94(3H,s),4.80(1H,m),5.34(1H,q)5.67
(1H,q)5.79(1H,s)
19F-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:C6D6);δ(ppm)-115
.8(1F,s), -74.5 (6F,s)
【0335】
1-12.含フッ素単量体-12の合成
[含フッ素単量体-12の合成]
前述の含フッ素単量体-11の合成において使用したヘキサフルオロイソプロピルビニルエーテルの替わりにビニルエーテル-2を用いた以外は、含フッ素単量体-11の合成と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-12を合成した。
【0336】
【化49】
【0337】
1-13.含フッ素単量体-13の合成
[含フッ素単量体-13の合成]
前述の含フッ素単量体-11の合成において使用したヘキサフルオロイソプロピルビニルエーテルの替わりにビニルエーテル-3を用いた以外は、含フッ素単量体-11の合成と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-13を合成した。
【0338】
【化50】
【0339】
1-14.含フッ素単量体-14の合成
[ビニルエーテル-4の合成]
先ず、前述の式(6)で表される含フッ素単量体に属する含フッ素重合体の原料である、式(7)で表される含フッ素化合物に属する、ビニルエーテル-4を合成した。
【0340】
ビニルエーテル-1の合成において、ヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに ヘキサフルオロt-ブタノールを用いた以外は、ビニルエーテル-1の合成の際と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、ビニルエーテル-4を合成した。
【0341】
【化51】
【0342】
[含フッ素単量体-14の合成]
前述の含フッ素単量体-11の合成において使用したヘキサフルオロイソプロピルビニルエーテルの替わりにビニルエーテル-4を用いた以外は、含フッ素単量体-11の合成と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、含フッ素単量体-14を合成した。
【0343】
【化52】
【0344】
2.比較単量体の合成
本発明の含フッ素単量体-1~14と比較するために、式(6)で表される含フッ素単量体に属さない比較単量体1-3を合成した。
【0345】
2-1.比較単量体-1の合成
前述の含フッ素単量体-1の合成において使用したヘキサフルオロイソプロパノールの替わりにトリフルオロエタノールを用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、比較単量体-1を合成した。
【0346】
【化53】
【0347】
2-2.比較単量体-2の合成
前述の含フッ素単量体-1の合成において使用したヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに2,2,2,3,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノールを用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、比較単量体-2を合成した。
【0348】
【化54】
【0349】
2-3.比較単量体-3の合成
前述の含フッ素単量体-1の合成において使用したヘキサフルオロイソプロパノールの替わりに3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-ビニルオキシオクタノールを用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で、以下の式に示す反応を行い、比較単量体-3を合成した。
【0350】
【化55】
【0351】
3.重合体の合成
含フッ素単量体1~159、比較単量体1~3、および比較単量体4としてのメタクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル(セントラル硝子株式会社製、商品名、HFIP-M)を用いて、含フッ素重合体-1~15および比較重合体1~4を合成した。含フッ素重合体1~14は、含フッ素重合体(1)に属する。比較単量体1~4は、本発明の含フッ素重合体1~14と比較するためのものであり、含フッ素重合体(1)に属さない。
【0352】
[重合体の分析]
<NMR>
重合体における繰り返し組成の組成は、NMRによる1H-NMRおよび19F-NMRの測定値により決定した。
<分子量>
重合体の数平均分子量Mnと分子量分散(数平均分子量Mnと質量平均分子量Mwの比=Mw/Mn)は、高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー株式会社製、形式HLC-8320GPC)を使用し、東ソー株式会社製ALPHA-MカラムとALPHA-2500カラムを1本ずつ直列に繋ぎ、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定した。検出器には、屈折率差測定検出器を用いた。
【0353】
3-1 含フッ素重合体-1の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ中に、室温で、含フッ素単量体-1、28.0g(0.1mol)、メタクリル酸ブチル(MA-BU)、14.2g(0.1mol)、溶媒として2-ブタノン、80gを加え、濃度33質量%のブタノン溶液とした。重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(以下、AIBNと呼ぶことがある、和光純薬株式会社製)、0.8(0.005mol)g加え、撹拌しながら脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、温度80℃に昇温した後6時間反応させた。反応終了後の内容物を、n-ヘプタン500gに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度60℃下にて減圧乾燥を行い、含フッ素単量体-1およびMA-Buに基づく繰り返し単位を含む含フッ素重合体-1を、白色固体として36gを収率85%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-1中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-1による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=47:53であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=22,200、Mw/Mn=2.2であった。
【0354】
【化56】
【0355】
3-2.含フッ素重合体-2の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-2を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-2を合成し、含フッ素重合体-2を収率80%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-2中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-2による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=45:55であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=22,700、Mw/Mn=2.1であった。
【0356】
【化57】
【0357】
3-3.含フッ素重合体-3の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-3を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-3を合成し、含フッ素重合体-3を収率71%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-3中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-3による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=47:53であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=23,700、Mw/Mn=2.9であった。
【0358】
【化58】
【0359】
3-4.含フッ素重合体-4の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-4を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-4を合成し、含フッ素重合体-4を収率80%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-4中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-4による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=50:50であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=23,100、Mw/Mn=2.2であった。
【0360】
【化59】
【0361】
3-5.含フッ素重合体-5の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-5を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-5を合成し、含フッ素重合体-5を収率78%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-5中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-5による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=48:52であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=22,700、Mw/Mn=2.3であった。
【0362】
【化60】
【0363】
3-6.含フッ素重合体-6の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-6を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-6を合成し、含フッ素重合体-6を収率69%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-6中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-6による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=45:55であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=21,200、Mw/Mn=1.9であった。
【0364】
【化61】
【0365】
3-7.含フッ素重合体-7の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-7を用いた以外は、含フッ素単量体-7の合成と同様の手順で含フッ素重合体-7を合成し、含フッ素重合体-7を収率83%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-7中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-7による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=51:49であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=20,100、Mw/Mn=2.5であった。
【0366】
【化62】
【0367】
3-8.含フッ素重合体-8の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-8を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-8を合成し、含フッ素重合体-8を収率76%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-8中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-8による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=48:52であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=21,100、Mw/Mn=2.4であった。
【0368】
【化63】
【0369】
3-9.含フッ素重合体-9の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-9を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-9を合成し、含フッ素重合体-9を収率72%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-9中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-9による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=46:54であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=23,700、Mw/Mn=2.9であった。
【0370】
【化64】
【0371】
3-10.含フッ素重合体-10の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ中に、ポリビニルフェノール(丸善石油化学株式会社製、商品名、マルカリンカーS-4P)、10gを加え、テトラヒドロフラン100gで溶解し、ヘキサフルオロイソプロピルビニルエーテル(ビニルエーテル1)19.4g(0.1mol)を加え、攪拌した後にトリフルオロ酢酸、0.5gを加え、窒素雰囲気下、50℃で24時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、ピリジン0.5gを加え反応を終了させた。得られた反応液を、貧溶媒であるメタノール、600gに滴下し沈殿を析出させ、この沈殿を濾別し、温度60℃下にて減圧乾燥を行い、白色固形状の共重合体として含フッ素重合体-10を得た。
<NMR測定結果>
得られた含フッ素重合体-10について、1H-NMR分析を行い、アセタール化が進行していることを確認した。アセタール基(C-H)の化学シフトは、5.52ppmであった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=24,000、Mw/Mn=2.6であった。
【0372】
【化65】
【0373】
3-11.含フッ素重合体-11の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-10を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-11を合成し、含フッ素重合体-11を収率88%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-11中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-10による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=48:52であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=21,500、Mw/Mn=1.9であった。
【0374】
【化66】
【0375】
3-12.含フッ素重合体-12の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-11を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-12を合成し、含フッ素重合体-12を収率87%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-12中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-11による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=52:48であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=23,500、Mw/Mn=2.2であった。
【0376】
【化67】
【0377】
3-13.含フッ素重合体-13の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-12を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-13を合成し、含フッ素重合体-13を収率83%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-13中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-12による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=53:47であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=22,800、Mw/Mn=2.1であった。
【0378】
【化68】
【0379】
3-14.含フッ素重合体-14の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-13を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-14を合成し、含フッ素重合体-14を収率78%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-14中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-13による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=51:49であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=21,800、Mw/Mn=2.2であった。
【0380】
【化69】
【0381】
3-15.含フッ素重合体-15の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに、含フッ素単量体-14を用いた以外は、含フッ素単量体-1の合成と同様の手順で含フッ素重合体-15を合成し、含フッ素重合体-15を収率88%で得た。
<NMR測定結果>
含フッ素重合体-15中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、含フッ素単量体-15による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=54:46であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=20,100、Mw/Mn=2.0であった。
【0382】
【化70】
【0383】
4.比較重合体の合成
本発明の含フッ素重合体-1~159と比較するために、含フッ素重合体(1)に属さない比較重合体-1~3を合成した。
【0384】
4-1.比較重合体-1の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに比較単量体-1を用いた以外は、含フッ素重合体-1の合成と同様の手順で、比較重合体-1を合成した。
<NMR測定結果>
比較重合体-1中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、比較単量体-1による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=49:51であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=22,200、Mw/Mn=2.2であった。
【0385】
【化71】
【0386】
4-2.比較重合体-2の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-2の替わりに比較単量体-2を用いた以外は、含フッ素重合体-1の合成と同様の手順で、比較重合体-2を合成した。
<NMR測定結果>
比較重合体-2中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、比較単量体-1による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=47:53であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=22,900、Mw/Mn=2.1であった。
【0387】
【化72】
【0388】
4-3.比較重合体-3の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに比較単量体-3を用いた以外は、含フッ素重合体-1の合成と同様の手順で、比較重合体-3を合成した。
<NMR測定結果>
比較重合体-3中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、比較単量体-3による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=52:48であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=24,200、Mw/Mn=2.5であった。
【0389】
【化73】
【0390】
4-4.比較重合体-4の合成
前述の含フッ素重合体-1の合成において使用した含フッ素単量体-1の替わりに比較単量体-4を用いた以外は、含フッ素重合体-1の合成と同様の手順で、比較重合体-4を合成した。
<NMR測定結果>
比較重合体-4中の、各繰り返し単位の組成比をNMRにより測定した。測定結果は、mol%で表わして、比較単量体-4による繰り返し単位:MA-BUによる繰り返し単位=46:54であった。
<GPC測定結果>
GPC測定結果はMw=23,900、Mw/Mn=2.1であった。
【0391】
【化74】
【0392】
5.含フッ素重合体-1~15、比較重合体-1~4の組成および分子量
表1に、含フッ素重合体-1~15、比較重合体-1~4の組成および分子量を示す。
【0393】
【表1】
【0394】
6.パターン形成用組成物
6-1.パターン形成用組成物の調製]
含フッ素重合体-1~15および比較重合体-1~4を用いて、本発明のパターン形成用組成物1~15、その比較のための比較組成物1~4を調製した。
【0395】
含フッ素重合体-1~15および比較重合体-1~4に対し、(A)酸発生剤としてのN-ヒドロキシナフタルイミド-トリフルオロメタンスルホン酸エステル、(D)増感剤としての2-イソプロピルチオキサントン、(C)クエンチャーとしての2-フェニルベンゾイミダゾールに、(B)有機溶剤としてジエチレングリコールメチルエチルエーテルを加え、パターン形成用組成物-1~15、比較組成物-1~4を調製した。
【0396】
パターン形成用組成物-1~15、比較組成物-1~4の各組成比は、質量部で表して、重合体:(A)酸発生剤:(D)増感剤:(C)クエンチャー:(B)有機溶剤が100:2:1:0.05:300のとなるように配合した。
【0397】
6-2.パターン形成用組成物の製膜、露光前後での接触角の測定
[パターン形成用組成物の製膜]
ガラス基板上に、パターン形成用組成物-1~15、比較組成物1~4をスピンナーにより塗布し、100℃に加熱したホットプレート上で2分間乾燥させ、膜厚0.5μmの膜を形成した。塗膜に、高圧水銀ランプを用いて光照射を行い、その後、ホットプレートを用い、加熱温度100℃で5分間乾燥した。
【0398】
乾燥した膜の露光前後の水、ヘキサデカンまたはPGMEAによる接触角測定、露光前後の膜厚測定を行った。
[接触角の測定]
ガラス基板上の膜に対して、水滴、ヘキサデカンまたはPGMEAの液滴を垂らし、接触角計(協和界面科学株式会社製)を用い、露光前後の接触角を測定した。
[膜厚]
露光前後の膜厚を接触式膜厚計で測定し、膜厚減少率(%)を算出した。
結果を表2に示す。パターン形成用組成物-1~15に実施例1~15が、比較組成物-1~4に比較例1~4が対応する。
【0399】
【表2】
【0400】
[露光前後の膜厚の差および膜厚減少率]
実施例1、4、7、10、12の、複数のヘキサフルオロイソプロピル基を有する含フッ素重合体-1、4、7、10、12を含むパターン形成用組成物からなる膜は、比較例1~4のパターン形成用組成物に対し、露光前後の膜厚の差が大きく、膜厚減少率に優れていた。このことは、ヘキサフルオロイソプロピル基を有する含フッ素置換基が低分子量なので、露光に脱離し気化しやすいことよると推側された。
【0401】
実施例2、3、5、6、8、9、13、14の、環状の含フッ素有機基を有する含フッ素重合体-2、3、5、6、8、9、13、14を含むパターン形成用組成物からなる膜は、撥液部位と親液部位からなるパターンを形成するのに、十分な露光前後の膜厚の差および膜厚減少率だった。
[接触角]
比較例1は、本発明に属さない、末端がトリフルオロメチル基1個の比較集合体-1を含むパターン形成用組成物であり、比較例2は、フッ素原子数7個のパーフルオロプロピル基を持つ比較重合体-2を含むパターン形成用組成物である。
【0402】
比較例1のパターン形成用組成物の膜とした際の接触角は、水において露光前74度、露光後61度であり、ヘキサデカンにおいて露光前12度、露光後6度、PGMEAにおいて露光前5度、露光後6度である。比較例2のパターン形成用組成物の膜とした際の接触角は、水において露光前89度、露光後63度であり、ヘキサデカンにおいて露光前35度、露光後6度、PGMEAにおいて露光前20度、露光後6度である。比較例1、2は、露光前後の撥液性の差において、実施例1~15と比べて劣る。
【0403】
比較例3のパターン形成用組成物は、末尾にフッ素原子数13個のパーフルオロへキシル基を有する比較重合体-3を含むパターン形成用組成物である。実施例1~1510のパターン形成用組成物に対し、比較例3のパターン形成用組成物は、膜とした際の露光後の接触角の変化において、同等の性能を示す結果であった。
【0404】
しかしながら、実施例1~15に用いたパターン形成用組成物が含む含フッ素重合体1~15が有する含フッ素有機基は、環境負荷が少ない低級含フッ素アルキル基である。有する基が低級含フッ素アルキル基であるにもかかわらず、実施例1~15のパターン形成用組成物は、比較例3のパターン形成用組成物に対し、膜とした際の露光後の接触角において、同等の性能を示した。
【0405】
比較例4のパターン形成用組成物は、酸解離性のないヘキサフルオロイソプロピル基を有する比較重合体-4を含むパターン形成用組成物である。