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特許7161124詰まり検出システムを構成する装置及び方法
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  • 特許-詰まり検出システムを構成する装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】詰まり検出システムを構成する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/057 20060101AFI20221019BHJP
   E05F 15/41 20150101ALI20221019BHJP
【FI】
B60J7/057 Q
E05F15/41
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020539194
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2019050590
(87)【国際公開番号】W WO2019141589
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】102018101069.9
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ アッペル
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-094370(JP,A)
【文献】特表2002-525016(JP,A)
【文献】特開2007-239278(JP,A)
【文献】特開平08-158741(JP,A)
【文献】米国特許第06064165(US,A)
【文献】独国特許発明第102009035449(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/057
E05F 15/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において、スライディング・ルーフなどの少なくとも一つの開口を閉じる電動機を備える調整装置を有する詰まり検出システムを構成する装置であって、
前記電動機のパラメータ及び前記詰まり検出システムのパラメータを測定する手段と、
前記電動機及び前記詰まり検出システムの前記測定されたパラメータから個々の相関変数を計算する手段と、
前記計算された個々の相関変数を前記調整装置の電動機コントローラに記憶する手段であって、前記詰まり検出システムを構成するために使用される前記計算された個々の相関変数を記憶する手段と、
備え、
前記個々の相関変数が、前記電動機のパラメータ、例えば前記調整装置のパラメータを考慮して、電動機定数及び/又は電機子抵抗に基づいて計算され、
前記個々の相関変数は、締付け力から、前記電動機の少なくとも一つの測定された変数、特に速度、電圧、電流及び/又は力への伝達係数を有し、
前記伝達係数は、前記調整装置の調整される構成部に前記電動機から伝達される力の効率を含む、
装置。
【請求項2】
前記締付け力が少なくとも一つの締付け力測定によって決定されることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置を有する試験台。
【請求項4】
前記試験台が製造ライン終端の試験台である、請求項に記載の試験台。
【請求項5】
スライディング・ルーフなどの車両の少なくとも一つの開口を閉じる電動機を備える調整装置を有する詰まり検出システムを構成する方法であって、
前記電動機のパラメータ及び前記詰まり検出システムのパラメータを測定するステップと、
前記測定された前記電動機のパラメータ及び前記詰まり検出システムのパラメータから個々の相関変数を計算するステップと、
前記計算された個々の相関変数を前記調整装置の駆動コントローラに記憶するステップと、
前記詰まり検出システムを構成するために前記計算された個々の相関変数を使用するステップと、
を含み、
前記個々の相関変数が、前記電動機のパラメータ、例えば電動機定数及び/又は電機子抵抗に基づいて、前記調整装置のパラメータを考慮して計算され、
前記個々の相関変数は、締付け力から、前記電動機の少なくとも一つの測定された変数、特に速度、電圧、電流及び/又は力への伝達係数を有し、
前記伝達係数は、前記調整装置の調整される構成部に前記電動機から伝達される力の効率を含む、
方法。
【請求項6】
少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、請求項に記載の方法を少なくとも一つのプロセッサに実施させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項7】
請求項の方法に従って構成された詰まり検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライディング・ルーフなどの車両の少なくとも一つの開口を閉じるための電動機を備える調整装置を有する詰まり検出システムを構成する装置及び方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
自動車両において電動機によって駆動される構成部を調整する場合、具体的には、電動のウィンドウ・リフタ又はスライディング・ルー用の装置を調整する場合、電動機によって生成される過剰な力を制限するための詰まり保護システムを設ける必要がある。調整対象となる構成部の開く動き又は閉じる動きを、例えば特定の方向、即ち開く方向又は閉じる方向に駆動部を一度駆動するだけで開始する場合、車両の搭乗者の快適性が増すため、これはとりわけ必要である。したがって開くプロセス又は閉じるプロセスは、駆動部から手が離された後でも継続する。このような機能性の場合、搭乗者は、自動車両において調整対象となる構成部の更なる動きを監視する必要はない。しかしながら身体の一部又は物体が可動構成部と固定部品の間で挟まれる危険がある。また、例えば別の人が意図的に、又は何気なく駆動部を駆動して、開くプロセス又は閉じるプロセスを生じさせ、そのために物体又は身体の一部が挟まれることも同じくあり得る。
【0003】
そのために、とりわけ電動調整スライディング・ルーフ及び電動調整ウィンドウ・リフタは、挟まった物体又は身体の一部を検出し、構成部の動きを停止させて挟まった物体又は身体の一部を解放する、いわゆる詰まり防止機能を有する必要がある。そのために、構成部の動きが停止され、電動機の回転の方向が反転される。
【0004】
例えばDE 10 2009 035 449 B3は、電動機を有するウィンドウ・リフタ調整ユニット又はスライディング・ルーフ調整ユニットの時間制御詰まり検出のための方法を開示しており、その方法では、現在の調整力に関連する値が規定された基準値を超過することが監視される。この目的のために、電動機が動作している間、電動機の瞬間角速度の時間間隔が連続的に決定され、時間間隔毎に、基準値の最低許容角速度に基づいて関連する最大時間間隔が計算され、この最大時間間隔に到達するか、又は瞬間角速度の各間隔の方がそれより長くなると詰まりが検出される。
【0005】
従来技術で知られている手法は、測定された電動機変数又は電動機パラメータの評価に本質的に基づいており、記録される締付け力と、それによって生じる電流又は電動機速度の変化などの測定される電動機変数又は電動機パラメータの変化との間の既知の既定関係が仮定されている。従来技術では、これらの相関は、製造されるすべての自動車両に対して一定であると仮定されている。
【0006】
従来技術は、調整装置の電動機によって加えられる力と、それによって生じる、測定される電動機変数又は電動機パラメータとの間の関係である、電動機特性曲線又は調整装置の効率、等々などの測定される電動機変数又は電動機パラメータが、見本からのバラツキのために変化するという欠点がある。また、これらの変化は、締付け力に関する見本からのバラツキ、及び詰まりの誤検出(「電動機の誤反転」)に対するロバスト性について見本からのバラツキをもたらす。
【0007】
したがって本発明の目的は、従来技術で知られている欠点を除去する、又は、は少なくとも最小化する装置及び方法を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1による装置によって達成される。電動機を備える調整装置を有する詰まり検出システムを構成する装置は、スライディング・ルーフなどの車両の少なくとも一つの開口を閉じるために提供される。その装置は、電動機のパラメータ及び詰まり検出システムのパラメータを測定する手段を備える。また、その装置は、電動機及び詰まり検出システムの測定されたパラメータから個々の相関変数を計算する手段も有する。また、その装置は、計算された個々の相関変数を調整装置の電動機コントローラに記憶する手段も備え、計算された個々の相関変数を使用して詰まり検出システムが構成される。
【0009】
本発明の文脈では、「詰まり」という用語は、限定する趣旨ではないが、とりわけ、調整装置の固定部品と可動部品の間の、物又は人の腕などの肢の物体による望ましくない詰まりを意味している。
【0010】
詳細には、本発明による装置は、電動機及び詰まり検出システムの測定されたパラメータから計算された実際の個々の相関変数を使用して締付け力及び反転距離を決定することができるという利点を有する。これは、より高い精度の詰まり保護を実現し、ひいては締付け力のバラツキが低減される。さらに、既に他の場所で必要とされた試験から個々の相関変数を抽出することにより、大いにコスト中立的であるという利点がある。
【0011】
他の実施形態では、個々の相関変数は、電動機のパラメータ、例えば調整装置のパラメータを考慮して電動機定数及び/又は電機子抵抗に基づいて計算される。
【0012】
これの一つの利点は、電動機だけでなく、調整装置との電動機の相互作用をも考慮することができることである。これにより詰まり保護の精度が更に高くなり、また、締付け力の分散が更に低減される。
【0013】
他の実施形態では、個々の相関変数は、締付け力から、電動機の少なくとも一つの測定された変数、特に速度、電圧、電流及び/又は力への伝達係数を有する。これの利点は、電動機のパラメータが考慮されるだけでなく、電動機によって調整装置の構成部に加えられる力の効率を調整することができることである。これにより詰まり保護の精度が更に高くなり、延いては締付け力の分散が更に低減される。列挙した電動機の測定された変数を使用するだけでなく、電動機測定によって測定及び/又は計算することができる他の測定された変数をも同じく使用することができることは言うまでもない。
【0014】
一実施形態は、少なくとも一つの締付け力測定によって決定される締付け力を提供する。このように、従来技術及び完全に開発された測定形態が、締付け力のために使用される。
【0015】
上記目的は、本発明によれば、上記実施形態のうちの一つに係る装置を有する試験台によって同じく解決される。装置の利点は、本発明に係る試験台によって達成される。このような試験台を使用して、詳細には締付け力のバラツキを低減することができ、また、より高い精度の詰まり保護を達成することができる。
【0016】
試験台の別の実施形態は、製造ライン終端の試験台(EOL試験台)である。これの利点は、技術的に完全に開発されているのは従来技術の試験台であり、大した努力なしに実現することができることである。
【0017】
本発明の文脈では、「EOL試験台」という用語は、限定する趣旨ではないが、とりわけ、新たに組み立てられた自動車両又はその部品の機能性が試験される、製造工程の最終段における試験台として理解されたい。
【0018】
更に、上記目的は、本発明によれば、スライディング・ルーフなどの車両の少なくとも一つの開口を閉じる電動機を備える調整装置を有する詰まり検出システムを構成するための方法によって解決され、方法は、
電動機のパラメータ及び詰まり検出システムのパラメータを測定するステップと、
電動機の測定されたパラメータ及び詰まり検出システムのパラメータから個々の相関変数を計算するステップと、
計算された個々の相関変数を調整装置の駆動コントローラに記憶するステップと、
計算された個々の相関変数を使用するステップであって、それにより詰まり検出システムを構成する、ステップと、
を含む。
【0019】
装置の利点は、本発明による方法によって達成される。詳細には、実際の相関変数を考慮することにより、締付け力及び反転距離をより厳密に限定することができる。また、本発明による方法は、より高い精度の詰まり保護を実現し、ひいては締付け力のバラツキが低減される。さらに、既に他の場所で必要とされた試験から個々の相関変数を抽出することにより、大いにコスト中立的であるという利点がある。
【0020】
一実施形態によれば、個々の相関変数は、電動機のパラメータ、例えば電動機定数及び/又は電機子抵抗に基づいて、調整装置のパラメータを考慮して計算される。これの利点は、電動機だけでなく、電動機と調整装置との相互作用をも考慮することができることである。これにより、詰まり保護の精度が更に高くなり、また、締付け力の分散が更に低減される。
【0021】
また、一実施形態によれば、個々の相関変数は、締付け力から、電動機に関する少なくとも一つの測定された変数、特に速度、電圧、電流及び/又は力への伝達係数を有する。これにより詰まり保護の精度が更に高くなり、延いては締付け力の分散が更に低減される。
【0022】
更に、上記目的は、本発明によれば、命令であって、少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、上記実施形態のうちの一つによる方法を少なくとも一つのプロセッサに実施させる命令を受け取るコンピュータ可読記憶媒体によって解決される。
【0023】
本発明によるコンピュータ可読記憶媒体は、本発明による方法の情報技術的処理を改善する。詰まり検出システムを構成する装置は、車両(乗用車又はトラック、船及び/又は航空機など)、詳細には車両車体のスライディング・ルーフ、(サイド)ウィンドウ及び/又は別の閉塞可能な開口に使用されることが好ましい。
【0024】
同様に、本発明によれば、上記目的は、上記実施形態の方法に従って構成される詰まり検出システムによって解決される。このようにして方法の利点及びとりわけ装置の利点が達成される。
【0025】
以下、本発明について、図によってより詳細に説明されている例示的実施形態を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る詰まり検出システムを構成する方法のフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明では、比較のために、同じ効果を有する部品に対して同じ参照番号が用いられている。
【0028】
詳細には、調整装置のカバーに対する力と、電動機の測定された変数又は電動機のパラメータとの間の関係を定義している個々のパラメータ又は個々の相関変数は、例えば調整装置又は調整装置の電動機を組み立てた後の最終試験の間に、自動車両の見本毎に決定され、且つ、電動機コントローラに記憶されることに留意されたい。詳細には、電動機定数及び電機子抵抗などの電動機パラメータは、特性曲線測定から決定される。適切なパラメータは、EOL試験台上でのルーフ・システム又は調整装置における測定から同様に測定される。締付け力から電動機上への力の伝達係数は、例えばEOL試験台上での締付け力測定から決定することができる。
【0029】
このようにして、電動機及び詰まり検出システムの実際のパラメータを考慮して、使用されるアルゴリズムにおいて締付け力及び反転距離を絞り込むことができる。これにより、より高い精度の詰まり防止が実現され、ひいては締付け力のバラツキが低減される。また、既に他の場所で必要とされた試験から個々の相関変数が抽出されるため、大いにコスト中立的である。
【0030】
図1は、スライディング・ルーフ及び/又はウィンドウ、とりわけサイド・ウィンドウなどの車両の少なくとも一つの開口を閉じる電動機を備える調整装置を有する詰まり検出システムを構成する、本発明に係る方法の実施形態を例として示す。このように、第1のステップ1で、締付け力及びそれに対する電動機の反応が測定される。第2のステップ2で、測定された締付け力及びそれに対する測定された電動機の反応が読み出される。第3のステップ3で、個々の相関変数が計算されて、記憶される。これらの計算された個々の相関変数は、例えば調整装置の電動機コントローラに記憶することができる。ステップ3に引き続く、計算された個々の相関変数を使用して詰まり検出を構成するステップは示されていない。その代わりに、図1の実施形態には、オプションの第4のステップが示されており、第4のステップでは詰まり挙動が変更される。このようにして、個々の相関変数に応じて所望する設定力を設定することができる。
図1