(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】電子機器及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/3827 20150101AFI20221019BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20221019BHJP
H04M 1/72454 20210101ALI20221019BHJP
H04M 1/72463 20210101ALI20221019BHJP
【FI】
H04B1/3827 120
H04B1/04 E
H04M1/72454
H04M1/72463
(21)【出願番号】P 2021080407
(22)【出願日】2021-05-11
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518133201
【氏名又は名称】富士通クライアントコンピューティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 一治
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雄栄
(72)【発明者】
【氏名】新山 貴之
【審査官】浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-061155(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152363(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111277290(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/3827
H04B 1/04
H04M 1/72454
H04M 1/72463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置され、無線通信を確立するための電波を出力するアンテナと、
前記電波の出力レベルを制御する出力制御部と、
前記筐体への人体の近接を検知する近接センサと、
を備え、
前記筐体は、ユーザの手により操作される操作部が備えられた上面と、前記上面から所定の間隔を空けて形成された底面とを備え、
前記近接センサは、前記アンテナより前記筐体の
前記上面側に配置される第1電極と、前記アンテナより前記筐体の
前記底面側に配置され前記第1電極とは異なる大きさを有する第2電極とを備え、前記第1電極の静電容量の変化に基づいて前記上面への人体の近接を検知し、前記第2電極の静電容量の変化に基づいて前記底面への人体の近接を検知し、
前記出力制御部は、前記近接センサの検知結果に基づいて前記出力レベルを制御する、
電子機器。
【請求項2】
前記第2電極は、前記第1電極より大きい、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記出力制御部は、前記上面及び前記底面に人体が近接していない場合には、前記出力レベルを第1レベルとし、前記底面に人体が近接している場合には、前記出力レベルを前記第1レベルより小さい第2レベルとし、前記上面に人体が近接しており且つ前記底面に人体が近接していない場合には、前記出力レベルを前記第1レベルより低く且つ前記第2レベルより高い第3レベルとする、
請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記近接センサは、前記第1電極の静電容量の変化速度に基づいて前記上面への人体の近接を検知し、前記第2電極の静電容量の変化速度に基づいて前記底面への人体の近接を検知する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記近接センサは、前記第2電極の静電容量の変化に基づいて前記底面への金属の近接を更に検知し、前記金属の近接に関する検知結果に基づいて前記底面への人体の近接の有無を判定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
ユーザの手により操作される操作部が備えられた上面と、前記上面から所定の間隔を空けて形成された底面とを備える筐体を備える
コンピュータを、
前記筐体内に配置され無線通信を確立するための電波を出力するアンテナより前記筐体の
前記上面側に配置された第1電極の静電容量の変化に基づいて、前記上面への人体の近接を検知する第1検知部と、
前記アンテナより前記筐体の
前記底面側に配置され前記第1電極とは異なる大きさを有する第2電極の静電容量の変化に基づいて、前記底面への人体の近接を検知する第2検知部と、
前記第1検知部及び前記第2検知部の検知結果に基づいて、前記電波の出力レベルを制御する出力制御部と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機能を有するPC(Personal Computer)、タブレット端末等の電子機器において、電波の人体への影響を考慮して、人体に吸収される電波の平均エネルギー量を表す比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)の許容値が定められている。例えば、電子機器に人体が近接しているか否かを検知し、人体の近接が検知された場合には電波の出力レベルを低下させる技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比吸収率の許容値は、人体の部位毎に異なっている。例えば、四肢(手、足等)に対応する許容値は、四肢以外(頭、胴体等)に対応する許容値より高くなっている。従来技術においては、電子機器に近接している人体の部位を考慮せずに電波の出力レベルを制御するため、電波の出力レベルが過度に抑制され、通信機能が過度に低下する可能性がある。
【0005】
そこで、本開示の課題の一つは、通信機能を過度に低下させることなく、電波による人体への影響を抑止可能な電子機器及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る電子機器は、筐体内に配置され、無線通信を確立するための電波を出力するアンテナと、前記電波の出力レベルを制御する出力制御部と、前記筐体への人体の近接を検知する近接センサと、を備え、前記近接センサは、前記アンテナより前記筐体の上面側に配置される第1電極と、前記アンテナより前記筐体の底面側に配置され前記第1電極とは異なる大きさを有する第2電極とを備え、前記第1電極の静電容量の変化に基づいて前記上面への人体の近接を検知し、前記第2電極の静電容量の変化に基づいて前記底面への人体の近接を検知し、前記出力制御部は、前記近接センサの検知結果に基づいて前記出力レベルを制御する。
【0007】
本開示の第2態様に係るプログラムは、コンピュータを、筐体内に配置され無線通信を確立するための電波を出力するアンテナより前記筐体の上面側に配置された第1電極の静電容量の変化に基づいて、前記上面への人体の近接を検知する第1検知部と、前記アンテナより前記筐体の底面側に配置され前記第1電極とは異なる大きさを有する第2電極の静電容量の変化に基づいて、前記底面への人体の近接を検知する第2検知部と、前記第1検知部及び前記第2検知部の検知結果に基づいて、前記電波の出力レベルを制御する出力制御部と、として機能させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電子機器及びプログラムによれば、通信機能を過度に低下させることなく、電波による人体への影響を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るPCのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るアンテナ、第1プローブ、及び第2プローブの構造の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る第1プローブの静電容量の変化の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る第2プローブの静電容量の変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るPCの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る近接センサの検知結果と出力レベルとの関係を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態においてPCがユーザの膝上で使用されている状態の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態においてPCが机上で使用されている状態の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るPCにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び効果は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係るPC1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。PC1は、無線WAN(Wide Area Network)等の無線通信機能を有する電子機器の一例であり、ここではノート型PCであるものとする。
【0012】
PC1は、筐体11、制御部12、アンテナ13、無線通信部14、及び近接センサ15を有する。
【0013】
筐体11は、PC1の外郭を構成する部材であり、制御部12、アンテナ13、無線通信部14、及び近接センサ15を内蔵する。
【0014】
制御部12は、PC1の制御を司るユニットであり、例えばマザーボード等の形態で実現される。制御部12は、CPU(Central Processing Unit)21及びMPU(Micro Processing Unit)22を有する。CPU21は、OS(Operating System)、アプリケーションソフトウェア等のプログラムに従って、PC1を統合的に制御したり、特定の機能を実現したりするための各種演算処理及び制御処理を行う。MPU22は、CPU21と連携し、無線通信を確立するための電波の出力を制御するための演算処理等を行う。MPU22は、例えば、組み込みソフトウェア等のプログラムに従って動作するマイクロコントローラ等である。制御部12は、上記の他、キーボード、タッチパッド、ディスプレイ、スピーカ、マイク、外部機器等と接続し、これらとの間で信号の送受を実現するための各種処理を行う。
【0015】
アンテナ13は、無線通信を確立するための電波の送受信する部材であり、例えば、金属板等を利用して構成される。
【0016】
無線通信部14は、アンテナ13により送受信される電波の増幅、アナログ/デジタル変換等を行うユニットである。また、無線通信部14は、送信信号及び受信信号を所定の規格に適合するように処理する。無線通信部14は、例えば、送信信号及び受信信号をLTEや5G等の規格に適合するように処理する。
【0017】
近接センサ15は、人体の近接を検知可能なセンサである。本実施形態に係る近接センサ15は、静電容量型近接センサであり、第1プローブ31(第1電極)、第2プローブ32(第2電極)、及び処理部33を有する。第1プローブ31及び第2プローブ32は、例えば金属板等を利用して構成される。処理部33は、第1プローブ31及び第2プローブ32と接続し、第1プローブ31及び第2プローブ32の静電容量の変化に基づく検知信号を生成する。検知信号には、人体の近接を示す情報、金属の近接を示す情報等が含まれ得る。静電容量の変化の特徴に基づいて、近接した物体が人体であるか、金属等の他の物体であるかを判別できる。
【0018】
本実施形態においては、第1プローブ31は、アンテナ13より筐体11の上面側に配置され、第2プローブ32は、アンテナ13より筐体11の底面側に配置されている。また、第2プローブ32は、第1プローブ31とは異なる大きさを有している。大きさとは、例えば面積、容積等であり得る。このような第1プローブ31及び第2プローブ32の静電容量の変化に基づいて、筐体11の上面への人体(例えばキーボード51やタッチパッド52を操作しているユーザの手等)の近接と、筐体11の底面への人体(例えばユーザの腿や腹部の付近)の近接とを検知できる。また、第2プローブ32の静電容量の変化に基づいて、底面11Bへの金属の近接を検知できる。なお、近接センサ15(第1プローブ31及び第2プローブ32)は、アンテナ13と一体的に構成されていることが好ましい。これにより、電波の発信源であるアンテナ13への人体の近接を確実に検知できる。
【0019】
図2は、実施形態に係るアンテナ13、第1プローブ31、及び第2プローブ32の構造の一例を示す図である。
図2において、破線枠内の断面図は、アンテナ13と近接センサ15とが配置される部分の構造を例示している。
【0020】
図2に示すように、第1プローブ31は、アンテナ13より筐体11の上面11A側の部分(本例では上面11Aの内壁面)に配置され、第2プローブ32は、アンテナ13より筐体11の底面11B側の部分(本例では底面11Bの内壁面)に配置されている。また、第2プローブ32は、第1プローブ31より大きい。
【0021】
第1プローブ31の静電容量は、上面11Aへの物体の近接に応じて変化し、第2プローブ32の静電容量は、底面11Bへの物体の近接に応じて変化する。例えば、第1プローブ31の静電容量は、上面11Aにユーザの手等が近接した場合に増加し、第2プローブ32の静電容量は、底面11Bにユーザの腿や腹部等が近接した場合に増加する。このとき、第1プローブ31と第2プローブ32とは大きさが異なっていることから、第1プローブ31の静電容量の変化の特徴と第2プローブ32の静電容量の変化の特徴とは異なる。本実施形態においては、第2プローブ32が第1プローブ31より大きいため、底面11Bに人体が近接した場合における静電容量の変化速度(単位時間当たりの静電容量の変化量)は、上面11Aに人体が近接した場合における静電容量の変化速度より大きくなる。
【0022】
図3は、実施形態に係る第1プローブ31の静電容量の変化の一例を示す図である。
図4は、実施形態に係る第2プローブ32の静電容量の変化の一例を示す図である。
【0023】
図3には、第1プローブ31に一定の電流を流し、時刻t1において人体が上面11Aに近接した場合における静電容量の経時的変化が例示されている。この場合、時刻t1以降における静電容量の変化速度(実線の傾き)は、時刻t1以前における静電容量の変化速度より大きくなる。破線は、上面11Aへの物体の近接がなかった場合における静電容量の変化を示している。
【0024】
図4には、第2プローブ32に一定の電流を流し、時刻t1において人体が底面11Bに近接した場合における静電容量の経時的変化が例示されている。この場合、時刻t1以降における静電容量の変化速度は、
図3に示す場合と同様に、時刻t1以前における静電容量の変化速度より大きくなる。破線は、底面11Bへの物体の近接がなかった場合における静電容量の変化を示している。このとき、
図3及び
図4に示すように、第2プローブ32の静電容量の変化速度は、第1プローブ31の静電容量の変化速度より大きくなる。第2プローブ32が第1プローブ31より大きいためである。このような静電容量の変化の特徴に基づいて、人体が筐体の上面11Aと底面11Bとのどちらに近接しているのかを特定できる。
【0025】
図5は、実施形態に係るPC1の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係るPC1は、近接センサ15の検知結果(検知信号)に基づいて、アンテナ13から出力される電波の出力レベルを制御する出力制御部101を有する。出力制御部101は、例えば、制御部12(CPU21及びMPU22)、無線通信部14を制御するプログラム等の協働により構成される。
【0026】
本実施形態に係る出力制御部101は、上面11A及び底面11Bのいずれにも人体が近接していない場合には、電波の出力レベルを第1レベル(例えば最大値)とする。また、出力制御部101は、底面11Bに人体が近接している場合には、電波の出力レベルを第1レベルより小さい第2レベル(例えば最小値)とする。また、出力制御部101は、上面11Aに人体が近接しており且つ底面11Bに人体が近接していない場合には、電波の出力レベルを第1レベルより低く且つ第2レベルより高い第3レベル(例えば中間値)とする。このような第3レベルでの出力を行うことにより、出力レベルの過度の低下、すなわち通信機能の過度の低下を抑制できる。
【0027】
図6は、実施形態に係る近接センサ15の検知結果と出力レベルとの関係を示す図である。
図6中、「近接状態」は、筐体11の上面11A及び底面11Bのそれぞれに何が近接しているかを示している。「第1プローブの静電容量傾き変化」は、第1プローブ31の静電容量の経時的変化を示す線(
図3における実線)の傾きの変化、すなわち第1プローブ31の静電容量の変化速度の変化の有無を示している。「第2プローブの静電容量傾き変化」は、第2プローブ32の静電容量の経時的変化を示す線(
図4における実線)の傾きの変化、すなわち第2プローブ32の静電容量の変化速度の変化の有無を示している。「変化度合い」は、静電容量の経時的変化を示す線の傾き(変化速度)の変化の度合いを示している。「金属検知」は、金属(導電体)の近接の有無を示している。「出力レベル」は、アンテナ13から出力される電波の出力の大きさを示しており、「大」は第1レベル、「小」は第2レベル、「中」は第3レベルに対応する。
【0028】
第1プローブ31の静電容量傾き変化が「無」であり、第2プローブ32の静電容量傾き変化が「無」であり、金属検知が「無」である場合、上面11A及び底面11Bのいずれにも物体が近接していないと推定できる。この場合、電波の人体への影響を考慮する必要がないため、電波の出力レベルは「大」(例えば最大値:第1レベル)となる。
【0029】
第1プローブ31の静電容量傾き変化が「無」であり、第2プローブ32の静電容量傾き変化が「有」であり、変化度合いが「急」であり、金属検知が「有」である場合、上面11Aに人体は近接しておらず、底面11Bに金属製の机等が近接していると推定できる。この場合、電波の人体への影響を考慮する必要がないため、電波の出力レベルは「大」となる。
【0030】
第1プローブ31の静電容量傾き変化が「無」であり、第2プローブ32の静電容量傾き変化が「有」であり、変化度合いが「急」であり、金属検知が「無」である場合、上面11Aに人体は近接しておらず、底面11Bにユーザの腿付近等が近接していると推定できる。この場合、アンテナ13がユーザの四肢以外の部位(例えば腹部等)に近接している可能性があるため、電波の出力レベルは「小」(例えば最小値:第2レベル)となる。当該出力レベル「小」は、四肢以外の部位(頭、胴体等)に対して規定された比吸収率の許容値(例えば2.0W/kg(10gあたり))以下の値となる。
【0031】
第1プローブ31の静電容量傾き変化が「有」であり、第2プローブ32の静電容量傾き変化が「有」であり、変化度合いが「急」であり、金属検知が「無」である場合、上面11Aにユーザの手等が近接しており、底面11Bにユーザの腿付近等が近接していると推定できる。これは、例えば、PC1がユーザの膝上で使用されている状態等に相当する。この場合、アンテナ13がユーザの四肢以外の部位(例えば腹部等)に近接している可能性があるため、電波の出力レベルは「小」となる。
【0032】
第1プローブ31の静電容量傾き変化が「有」であり、第2プローブ32の静電容量傾き変化が「無」であり、変化度合いが「緩」であり、金属検知が「無」である場合、上面11Aにユーザの手等が近接しており、底面11Bに人体は近接していないと推定できる。この場合、アンテナ13に近接している人体の部位は手等であり、腹部等の四肢以外の部位ではないと推定できるため、電波の出力レベルは「中」(最大値と最小値との間の中間値:第3レベル)となる。当該出力レベル「中」は、四肢に対して規定された比吸収率の許容値(例えば4.0W/kg(10gあたり))以下であり、且つ四肢以外の部位に対して規定された比吸収率の許容値(例えば2.0W/kg(10gあたり))より大きい値となる。
【0033】
第1プローブ31の静電容量傾き変化が「有」であり、第2プローブ32の静電容量傾き変化が「有」であり、変化度合いが「急」であり、金属検知が「有」である場合、上面11Aにユーザの手等が近接しており、底面11Bに机等が近接していると推定できる。これは、例えば、PC1が机上で使用されている状態等に相当する。この場合、アンテナ13に近接している人体の部位は手等であり、腹部等の四肢以外の部位ではないと推定できるため、電波の出力レベルは「中」となる。
【0034】
図7は、実施形態においてPC1がユーザの膝上で使用されている状態の一例を示す図である。このような場合、ユーザの手61や腿62等の四肢だけでなく、腹部63等も筐体11(アンテナ13)に近接する可能性があるため、電波の出力レベルは四肢以外の部位への影響を考慮した最小値(第2レベル)となる。
【0035】
図8は、実施形態においてPC1が机71上で使用されている状態の一例を示す図である。このような場合、筐体11(アンテナ13)に近接するユーザの身体の部位は、手61等の四肢に限定されると推定されるため、電波の出力レベルは四肢への影響を考慮した中間値(第3レベル)となる。これにより、人体の近接が検知された場合に電波の出力レベルを全て最小値とする場合に比べ、通信機能の過度の低下を抑制できる。
【0036】
図9は、実施形態に係るPC1における処理の一例を示すフローチャートである。出力制御部101は、近接センサ15からの検出信号に基づいて静電容量の変化速度(静電容量の経時的変化を示す線の傾き)に変化があるか否かを判定する(S101)。静電容量の変化速度に変化がない場合(S101:No)、出力制御部101は、アンテナ13への人体の近接はないと判定し、電波の出力レベルを最大値とする(S102)。その後、出力制御部101は、当該出力レベル(最大値)を1秒間維持し(S103)、ステップS101を再度実行する。
【0037】
静電容量の変化速度に変化がある場合(S101:Yes)、出力制御部101は、変化速度の変化度合いの緩急を判定する(S104)。変化速度の変化度合いが急である場合(S104:急)、すなわち例えば
図4に示すような静電容量の経時的変化を示す線の傾きの変化が検出された場合、出力制御部101は、筐体11の底面11Bに人体が近接していると判定し、電波の出力レベルを最小値とする(S105)。その後、出力制御部101は、当該出力レベル(最小値)を1秒間維持し(S103)、ステップS101を再度実行する。
【0038】
変化度合いが緩である場合(S104:緩)、すなわち例えば
図3に示すような静電容量の経時的変化を示す線の傾きの変化が検出された場合、出力制御部101は、筐体11の上面11Aにのみ人体が近接している(底面11Bには人体が近接していない)と判定し、電波の出力レベルを中間値とする(S106)。その後、出力制御部101は、当該出力レベル(中間値)を1秒間維持し(S103)、ステップS101を再度実行する。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、大きさの異なる2つのプローブ31,32を利用して筐体11の上面11A及び底面11Bのそれぞれに対する人体の近接が検知され、その検知結果に基づいて電波の出力レベルが制御される。これにより、近接している人体が四肢のみであるか否かを推定でき、その推定結果に応じて出力レベルを制御できる。これにより、通信機能を過度に低下させることなく、電波による人体への影響を十分に抑止できる。
【0040】
また、上述の実施形態においては、第2プローブ32(第2電極)は、第1プローブ31(第1電極)より大きい。これにより、静電容量の変化速度の変化の度合いが緩やかであるか否か(例えば
図3及び
図4に示すような比較において)に基づいて、上面11Aのみへの人体の近接を検知できる。
【0041】
また、上述の実施形態においては、出力制御部101は、上面11A及び底面11Bに人体が近接していない場合には、出力レベルを第1レベルとし、底面11Bに人体が近接している場合には、出力レベルを第1レベルより小さい第2レベルとし、上面11Aに人体が近接しており且つ底面11Bに人体が近接していない場合には、出力レベルを第1レベルより低く且つ第2レベルより高い第3レベルとする。これにより、近接している部位が四肢であると推定できるとき(上面11Aに人体が近接しており且つ底面11Bに人体が近接していないとき)には、電波の出力レベルを四肢に対応する許容値(第3レベル)まで上げることができる。
【0042】
また、上述の実施形態においては、近接センサ15は、第1プローブ31の静電容量の変化速度に基づいて上面11Aへの人体の近接を検知し、第2プローブ32の静電容量の変化速度に基づいて底面11Bへの人体の近接を検知する。これにより、上面11A及び底面11Bのそれぞれに対する人体の近接を正確に検知できる。
【0043】
また、上述の実施形態においては、近接センサ15は、第2プローブ32の静電容量の変化に基づいて底面11Bへの金属の近接を更に検知し、金属の近接に関する検知結果に基づいて底面11Bへの人体の近接の有無を判定する。これにより、底面11Bに近接している物体が人体であるか否かを正確に検知できる。
【0044】
上記機能を実現するプログラムは、例えばCPU21やMPU22に搭載された記憶素子に予め記憶された状態で提供され得るが、これに限定されるものではない。当該プログラムは、例えば、CD-ROM等の適宜な記憶媒体に記憶された状態で提供されてもよいし、インターネット等のコンピュータネットワークを介して提供されてもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…PC(電子機器)、11…筐体、11A…上面、11B…底面、12…制御部、13…アンテナ、14…無線通信部、15…近接センサ、21…CPU、22…MPU、31…第1プローブ(第1電極)、32…第2プローブ(第2電極)、33…処理部、51…キーボード、52…タッチパッド、61…手、62…腿、63…腹部、71…机、101…出力制御部
【要約】 (修正有)
【課題】通信機能を過度に低下させることなく、電波による人体への影響を抑止する電子機器及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子機器(PC1)は、筐体内に配置され、無線通信を確立するための電波を出力するアンテナ13と、電波の出力レベルを制御する出力制御部12と、筐体への人体の近接を検知する近接センサ15と、を備える。近接センサ15は、アンテナ13より筐体の上面側に配置される第1電極(第1プローブ31)と、アンテナ13より筐体の底面側に配置され第1電極とは異なる大きさを有する第2電極(第2プローブ32)とを備え、第1電極の静電容量の変化に基づいて上面への人体の近接を検知し、第2電極の静電容量の変化に基づいて底面への人体の近接を検知する。出力制御部12は、近接センサの検知結果に基づいて出力レベルを制御する。
【選択図】
図1