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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】サイドメンバユニット
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
B62D25/20 D
B62D25/20 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018216580
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020082858
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】榊原 春彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 征弘
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-290154(JP,A)
【文献】特開2014-213762(JP,A)
【文献】特開2010-116004(JP,A)
【文献】特開平8-34368(JP,A)
【文献】特開2007-284003(JP,A)
【文献】特開2005-104335(JP,A)
【文献】特開2000-289645(JP,A)
【文献】再公表特許第2012/120967(JP,A1)
【文献】特開2018-39312(JP,A)
【文献】中国実用新案第207141192(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における車体下側に車両前後方向に延びて形成される第1サイドメンバと、
前記第1サイドメンバの後部に結合され前記車体下側に車両前後方向に延びて形成される第2サイドメンバと、を備えたサイドメンバユニットにおいて、
前記サイドメンバユニットは、前記第1サイドメンバの内側に前記第2サイドメンバが重なり合って結合される結合部を有し、
前記第2サイドメンバは、該第2サイドメンバの側面に前記第2サイドメンバの左右方向内側に向かって凹む凹部が形成され、
前記凹部は、車両前後方向で前記第2サイドメンバの前端から前記結合部より後方まで延びて形成されるサイドメンバユニット。
【請求項2】
前記凹部は、前記第2サイドメンバの前記側面の車両上下方向下側に、該第2サイドメンバの下端まで延びて形成され、前記第1サイドメンバ及び前記第2サイドメンバは少なくとも前記側面の車両上下方向上側で結合される、請求項1に記載のサイドメンバユニット。
【請求項3】
前記凹部は、車両前後方向で前記第2サイドメンバの前端から前記結合部まで車両前後方向に平行に延びる平行部と、前記結合部より車両前後方向後方に向かうにつれて車両左右方向外側に傾斜する傾斜部と、を有する、請求項1または2に記載のサイドメンバユニット。
【請求項4】
前記第1サイドメンバには、前記結合部の下面に車両上下方向下方に凹み車両前後方向に延びるビードが形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のサイドメンバユニット。
【請求項5】
前記ビードは、前記結合部より車両前後方向前方に延びて形成される、請求項4に記載のサイドメンバユニット。
【請求項6】
前記ビードは、車両左右方向に複数並んで形成されており、前記第1サイドメンバ及び前記第2サイドメンバは、少なくとも前記複数のビードに挟まれる位置で結合される、請求項4または5に記載のサイドメンバユニット。
【請求項7】
前記第2サイドメンバの内側には、車両前後方向で該第2サイドメンバの前記凹部より後方から前記結合部まで該第2サイドメンバの前記凹部及び下面に沿って延びる板状の補強部材が結合される、請求項2~6のいずれか一項に記載のサイドメンバユニット。
【請求項8】
前記補強部材は、少なくとも一点が前記結合部において前記第2サイドメンバを介して前記第1サイドメンバに結合される、請求項7に記載のサイドメンバユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサイドメンバユニットに係り、特にフロントサイドメンバとフロアサイドメンバとの接合性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両の車体の下部には、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバユニットが配設されている。
このサイドメンバユニットは、フロントサイドメンバ、フロアサイドメンバ及びリアサイドメンバ等の複数の部品を備えて構成されており、これら複数の部品を溶接することで一体に形成されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-24863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献のようにフロントサイドメンバとフロアサイドメンバを結合した結合部は、溶接により結合されているため、車両の衝突等による衝撃によって破損する虞があり、更なる改善の余地があった。
ところで、上記した車両の衝突等による衝撃による破損に対して、各サイドメンバの合わせ面を隙間なく当接させて結合することで結合部の強度を高めることが考えられる。
【0005】
しかしながら、各サイドメンバの合わせ面を隙間なく当接させて結合してしまうと、生産工程における電着塗装時に塗料がサイドメンバの内部の細部まで行き届かない虞がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サイドメンバユニットの構成部品の一部である第1サイドメンバと第2サイドメンバとの結合部分に係る剛性及び防錆性を備えることができるサイドメンバユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のサイドメンバユニットは、車両における車体下側に車両前後方向に延びて形成される第1サイドメンバと、前記第1サイドメンバの後部に結合され前記車体下側に車両前後方向に延びて形成される第2サイドメンバと、を備えたサイドメンバユニットにおいて、前記サイドメンバユニットは、前記第1サイドメンバの内側に前記第2サイドメンバが重なり合って結合される結合部を有し、前記第2サイドメンバは、該第2サイドメンバの側面に前記第2サイドメンバの左右方向内側に向かって凹む凹部が形成され、前記凹部は、車両前後方向で前記第2サイドメンバの前端から前記結合部より後方まで延びて形成されることを特徴とする。
【0007】
これにより、サイドメンバユニットの第2サイドメンバには、第2サイドメンバの左右方向内側に向かって凹む凹部が形成され、凹部が車両前後方向で第2サイドメンバの前端から結合部より後方まで延びて形成されることで、サイドメンバユニットにおける結合部の剛性を高めることが可能とされる。
また第1サイドメンバと第2サイドメンバとの間に連通路が形成されるので、生産工程における電着塗装の塗料がサイドメンバユニットの内部の細部まで届き、防錆性を高めることが可能とされる。
【0008】
その他の態様として、前記凹部は、前記第2サイドメンバの前記側面の車両上下方向下側に、該第2サイドメンバの下端まで延びて形成され、前記第1サイドメンバ及び前記第2サイドメンバは少なくとも前記側面の車両上下方向上側で結合されるのが好ましい。
これにより、例えば車両が水たまりを走行することでサイドメンバユニットの内部に水が入るような場合であっても、第2サイドメンバの下側の下端まで形成された凹部の連通路によってサイドメンバユニットの内部の水の排水性を高めることも可能とされる。
【0009】
その他の態様として、車両前後方向で前記第2サイドメンバの前端から前記結合部まで車両前後方向に平行に延びる平行部と、前記結合部より車両前後方向後方に向かうにつれて車両左右方向外側に傾斜する傾斜部と、を有するのが好ましい。
これにより、例えば車両が前突することで結合部に衝撃が車両前後方向に加わる場合であっても、傾斜部が車両左右方向外側に傾斜するので、サイドメンバユニットにおける前後方向の衝撃を第2サイドメンバによって受けることができるので、応力集中が凹部に発生することを抑制することが可能とされる。
【0010】
その他の態様として、前記第1サイドメンバには、前記結合部の下面に車両上下方向下方に凹み車両前後方向に延びるビードが形成されるのが好ましい。
これにより、ビードが第1サイドメンバにおける結合部に対応する位置の下端に形成されることで、第2サイドメンバに干渉することなく第1サイドメンバにおける結合部に対応する位置の下端を補強することが可能とされる。
【0011】
その他の態様として、前記ビードは、前記結合部より車両前後方向前方に延びて形成されるのが好ましい。
これにより、第1サイドメンバの結合部、つまり、第1サイドメンバの内側の第2サイドメンバの前端部を跨いでビードが形成されるので、衝撃が加わる第1サイドメンバの箇所を補強することが可能とされる。
【0012】
さらに、サイドメンバユニットの内部に水が入るような場合であっても、第2サイドメンバの下側の前端まで形成された凹部の連通路によってサイドメンバユニットの内部の水の排水性を高めることも可能とされる。
その他の態様として、前記ビードは、車両左右方向に複数並んで形成されており、前記第1サイドメンバ及び前記第2サイドメンバは、少なくとも前記複数のビードに挟まれる位置で結合されるのが好ましい。
【0013】
これにより、複数のビードに挟まれる位置で第1サイドメンバと第2サイドメンバとを固定することで、第1サイドメンバの下端における車両前後方向を軸に捩るような方向についての剛性を高めることで第1サイドメンバの下端と第2サイドメンバの下端とが剥離するような力が固定点に加わることを抑制することが可能とされる。
その他の態様として、前記第2サイドメンバの内側には、車両前後方向で該第2サイドメンバの前記凹部より後方から前記結合部まで該第2サイドメンバの前記凹部及び下面に沿って延びる板状の補強部材が結合されるのが好ましい。
【0014】
これにより、結合部の剛性を良好に高めることが可能とされる。
その他の態様として、前記補強部材は、少なくとも一点が前記結合部において前記第2サイドメンバを介して前記第1サイドメンバに結合されるのが好ましい。
これにより、第1サイドメンバに加わる力が第2サイドメンバを介して補強部材に伝達するので、結合部の剛性をより良好に高めることが可能とされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のサイドメンバユニットによれば、サイドメンバユニットの第2サイドメンバには、第2サイドメンバの左右方向内側に向かって凹む凹部が形成されることで、サイドメンバユニットにおける結合部の剛性を高めることができ、また、凹部が第2サイドメンバの車両前後方向で視て結合部側の端部から該結合部より車両前後方向外側に向かって延びて形成されることにより、第1サイドメンバと第2サイドメンバとの間に連通路が形成されたので、生産工程における電着塗装がサイドメンバユニットの内部の細部まで届き、防錆性を高めることができる。
【0016】
これにより、第1サイドメンバと第2サイドメンバとの結合部分に係る剛性及び防錆性を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】車両前方斜め右下から視た車体の斜視図である。
図2】車両前方斜め右下から視たサイドメンバユニットの斜視図である。
図3】車両前方斜め右下から視たサイドメンバユニットの分解斜視図である。
図4図2中I-I断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、車両前方斜め右下から視た車体3の斜視図が示されている。
車両1の骨格を構成する車体3は、フロアパネル11、ダッシュパネル13及びサイドメンバユニット15を備える所謂モノコックボディである。フロアパネル11は、車両前後方向及び左右方向に延びるパネル部材であり、左右端部には左右一対のサイドシル21等の骨格部材が例えば溶接されている。このサイドシル21には、車両上下方向に延びる例えばセンタピラー23等の柱部材が溶接される。
【0019】
ダッシュパネル13は、フロアパネル11の車両前後方向前端に溶接されたパネル部材であり、フロアパネル11から車両上下方向上方に延びるように形成されることで図示しないエンジンルームの後面を形成している。このダッシュパネル13の左右両端には、左右端部にフロントピラー25等の骨格部材が例えば溶接されている。フロントピラー25は、図示しないものの、さらに上方に延びて柱部材を構成している。
【0020】
したがって、フロアパネル11の上側には、フロアパネル11やセンタピラー23及びフロントピラー25等の骨格部材が備えられることで、図示しない窓やドア等を配設することが可能である。このようにして、フロアパネル11の上側には、ダッシュパネル13や窓、ドア等を配設することでエンジンルームや車両1の外部と仕切るようにして車室が形成されている。
【0021】
図2を参照すると、車両前方斜め右下から視たサイドメンバユニット15の斜視図が示され、図3を参照すると、図2におけるサイドメンバユニット15の分解斜視図が示されている。また、図4を参照すると、図2中I-I断面の断面図が示されている。
サイドメンバユニット15は、フロアパネル11の下側の車両左右方向両側に配設され、車両前後方向に延びて形成される左右一対の骨格部材である。このサイドメンバユニット15には、フロントサイドメンバ(第1サイドメンバ)31及びフロアサイドメンバ(第2サイドメンバ)33を有している。以下、車両左右方向右側のサイドメンバユニット15について説明するが、左側のサイドメンバについても同様の構成であり、ここでの説明は省略する。
【0022】
フロントサイドメンバ31は、前端が車両前側に位置する図示しないフロントクロスメンバに取付けられ、後端がフロアサイドメンバ33の前端に接続される骨格部材である。このフロントサイドメンバ31は、断面で視てハット状に形成されている。詳しくは、フロントサイドメンバ31の下端を形成する下外壁部41、下外壁部41の右側端部から上方に向かって延びる右外壁部43、下外壁部41の左側端部から上方に向かって延びる左外壁部45並びに右外壁部43及び左外壁部45の上端に形成される溶接面47を備えて形成されている。
【0023】
フロアサイドメンバ33は、後端が車両後側に位置する図示しないリアサイドメンバに取付けられ、前端がフロントサイドメンバ31の後端から前方に第1距離離間した位置まで延びてフロントサイドメンバ31と重なるように結合する骨格部材である。以下、フロントサイドメンバ31とフロアサイドメンバ33とが重なりあう部分を結合部32という。このフロアサイドメンバ33は、フロントサイドメンバ31と同様に断面で視てハット状に形成されている。
【0024】
詳しくは、フロアサイドメンバ33の下端を形成する下内壁部51、下内壁部51の右側端部から上方に向かって延びる右内壁部(側面)53、下内壁部51の左側端部から上方に向かって延びる左内壁部(側面)55並びに右内壁部53及び左内壁部55の上端に形成される溶接面57を備えて形成されている。また、フロアサイドメンバ33は、下内壁部51が下外壁部41の上面に当接し、右内壁部53が右外壁部43の左面に当接し、左内壁部55が左外壁部45の右面に当接するよう位置している。
【0025】
ここで、フロントサイドメンバ31には、第1位置規定穴61及びビード63が形成されている。第1位置規定穴61は、下外壁部41に設けられた丸穴であり、フロアパネル11の下面にフロントサイドメンバ31の溶接面47を溶接する工程において、例えば治具を挿入することでフロアパネル11とフロントサイドメンバ31との相対的な位置関係を規定するための所謂ロケーション穴である。
【0026】
ビード63は、下外壁部41を下方に凹ませ、左右に2本並んで形成されている。このビード63は、下外壁部41の第1位置規定穴61より後方から下外壁部41の後端に向かって延びて開放している。すなわち、ビード63は、結合部32の前端より前方から後端にかけて形成されている。これにより、ビード63は、フロントサイドメンバ31の下外壁部41の剛性を高めることができる。特に、ビード63は、車両前後方向に延びて形成されるので、例えば車両前後方向を軸にして下外壁部41を捩るような方向についての剛性を高めることができる。
【0027】
また、フロアサイドメンバ33には、第2位置規定穴71及び内凹部(凹部)73が形成されている。第2位置規定穴71は、下内壁部51に設けられた丸穴であり、フロアパネル11の下面にフロアサイドメンバ33の溶接面57を溶接する工程において、例えば治具を挿入することでフロアパネル11とフロアサイドメンバ33との相対的な位置関係を規定するための所謂ロケーション穴である。
【0028】
内凹部73は、側面75及び上面77を備える凹部であり、フロアサイドメンバ33の右内壁部53及び左内壁部55の車両前後方向下側に、フロアサイドメンバ33の下端まで延びて形成されている。なお、内凹部73は、フロアサイドメンバ33の左内壁部55にも同様に形成されており、この左内壁部55に形成される内凹部73については説明を省略する。
【0029】
側面75は、平行部75a及び傾斜部75bを有している。平行部75aは、フロントサイドメンバ31の後端に対応する位置より後側からフロアサイドメンバ33の前端に向かって右外壁部43から第2距離離間しつつ平行して延びるよう形成されている。傾斜部75bは、平行部75aの後端から後方に向かうにつれて右外壁部43に近づくように延びて形成されている。
【0030】
そして上面77は、平行部75a及び傾斜部75bの上端に位置し、内凹部73の上面を構成する面であり、下内壁部51から第3距離離間した位置に下内壁部51と平行して延びるよう形成されている。
すなわち、内凹部73は、結合部32の前端から後端に対応する位置を含むように前後方向に形成されている。これにより、結合部32の剛性を高めることができる。また、内凹部73は、右外壁部43と平行して延びる平行部75a及び下内壁部51と平行して延びる上面77を有しているので、フロアサイドメンバ33の右内壁部53及び下内壁部51における前端部の剛性を高めることができる。
【0031】
またさらに、内凹部73は、傾斜部75bが形成されているので、例えば車両1が前突することで結合部32に車両前後方向の衝撃が加わる場合であっても、傾斜部75bが車両左右方向外側に傾斜するので、サイドメンバユニット15における前後方向の衝撃をフロントサイドメンバ31によって受けるようにして、応力集中が内凹部73に発生することを抑制することができる。
【0032】
特に、ビード63及び内凹部73は、結合部32にて重なるように位置している。これにより、フロントサイドメンバ31及びフロアサイドメンバ33の結合部32の剛性をより高めることができる。
フロアサイドメンバ33には、補強部材80が取り付けられている。補強部材80は、上下方向に臨む下端壁81、下端壁81の右端から上方に延びる右端壁82及び下端壁81の左端から上方に延びる左端壁83を備えた平板部材である。また、補強部材80は、下端壁81に第3位置規定穴84が設けられている。またさらに、補強部材80は、下端壁81に下凸部85が、右端壁82に右凸部86が、左端壁83に左凸部87がそれぞれ形成されている。
【0033】
第3位置規定穴84は、下端壁81に設けられた丸穴であり、フロントサイドメンバ31と第3位置規定穴84との相対的な位置関係を規定するための所謂ロケーション穴である。
下凸部85は、下端壁81の前側端部及び後側端部それぞれに、上方から視て半円形状となるように第4距離下方に凹ませて形成されている。この下凸部85は、下端にフロアサイドメンバ33の下内壁部51の上面と面接触する接触面を有している。
【0034】
右凸部86は、右端壁82の車両前後方向中央と後側端部に、第4距離右方向(断面外側方向)に突出させて形成されている。この右凸部86は、右端にフロアサイドメンバ33の右内壁部53の左面と面接触する接触面を有している。左凸部87は、右凸部86と同様に、左端壁83の車両前後方向中央と後側端部に、第4距離左方向に突出させて形成され、左内壁部55の右面と面接触する接触面を有している。
【0035】
ところで、フロアサイドメンバ33の下内壁部51の下面との間には、上記したビード63が下外壁部41を下方に凹ませ、下外壁部41の後端に向かって延びて開放しているため、第1連通路63aが形成されている。また、上記した下外壁部41及び右外壁部43と内凹部73との間には、側面75における平行部75aが右外壁部43から第2距離離間し、上面77が下外壁部41から第3距離離間しているため、第2連通路73aが形成される。またさらに、補強部材80とフロアサイドメンバ33との間には、下凸部85、右凸部86及び左凸部87が第4距離凹ませて形成されているので、第3連通路80aが形成されている。
【0036】
すなわち、上記した第1連通路63aはビード63の前側端部がサイドメンバユニット15の内部に、後側端部が車両外部にそれぞれ開放し、第2連通路73aは内凹部73の前側端部がサイドメンバユニット15の内部に、後側が車両外部にそれぞれ開放し、第3連通路80aは下凸部85、右凸部86及び左凸部87それぞれの間がサイドメンバユニット15の内部に、第2位置規定穴71が車両外部にそれぞれ開放することで、フロントサイドメンバ31及びフロアサイドメンバ33の内側と外側とを排水可能に連通している。
【0037】
したがって、例えば車両1が水たまりを走行することで図示しない車輪が巻き上げた水が第1位置規定穴61や第2位置規定穴71からサイドメンバユニット15の内部に侵入するような場合であっても、第1連通路63a、第2連通路73a及び第3連通路80aは、サイドメンバユニット15の内部から水を排出することができる。これにより、サイドメンバユニット15の内部に長時間水が溜まることや湿度が高くなることでフロアパネル11やサイドメンバユニット15が錆びることを抑制することができる。
【0038】
図2及び図4によると、フロントサイドメンバ31、フロアサイドメンバ33及び補強部材80は、第1溶接点wp1~第10溶接部wp10を含むように適宜スポット溶接することで固定されている。詳しくは、補強部材80は、右端壁82の前端及び右凸部86と右内壁部53、左端壁83の前端及び左凸部87と左内壁部55並びに車両前後方向後側の下凸部85と下内壁部51がそれぞれ溶接されている(図2中のwp1~wp4)。
【0039】
またフロントサイドメンバ31は、下外壁部41の後端と下内壁部51と車両前後方向前側の下凸部85、右外壁部43と右内壁部53、左外壁部45と左内壁部55がそれぞれ溶接されている(図2及び図4中のwp5~wp10)また、図2中の第5溶接点wp5、第6溶接点wp6及び第7溶接点wp7は、車両左右方向に並ぶビード63の間に挟まれる位置である。
【0040】
これにより、フロントサイドメンバ31、フロアサイドメンバ33及び補強部材80は、第1連通路63a、第2連通路73a及び第3連通路80aを塞ぐことなく溶接して取付けることができる。また、フロントサイドメンバ31、フロアサイドメンバ33及び補強部材80は、車両左右方向に並ぶビード63の間に挟まれる位置に第5溶接点wp5、第6溶接点wp6及び第7溶接点wp7を設けることで、下外壁部41のうち、ビード63によって剛性が高められ下外壁部41の撓みが生じにくい位置に各溶接点を設け、各溶接点に応力集中が発生することを抑制することができる。
【0041】
ここで、生産工程においては、このようにフロントサイドメンバ31、フロアサイドメンバ33及び補強部材80を溶接したあと、フロアパネル11等に溶接面47、57を溶接して取付けることで車体3にサイドメンバユニット15を取付ける。
その後、生産工程においては、車体3にサイドメンバユニット15やその他の車体3を構成する骨格部材等の部材を取り付けた後、塗料が貯留された塗料槽に車体3を投入して車体3内部にまで防錆塗料を充分に付着させて通電させる所謂電着塗装を行う。このとき、第1連通路63a、第2連通路73a及び第3連通路80aが設けられていることで、サイドメンバユニット15内部の細部にまで塗料を浸透させることができる。
【0042】
以上説明したように、本発明に係るサイドメンバユニットでは、車両1における車体3下側に車両前後方向に延びて形成されるフロントサイドメンバ31と、フロントサイドメンバ31の後部に結合され車体3下側に車両前後方向に延びて形成されるフロアサイドメンバ33とを備えたサイドメンバユニット15において、サイドメンバユニット15は、フロントサイドメンバ31の内側にフロアサイドメンバ33が重なり合って結合される結合部32を有し、フロアサイドメンバ33は、フロアサイドメンバ33の右内壁部53及び左内壁部55にフロアサイドメンバ33の左右方向内側に向かって凹む内凹部73が形成され、内凹部73は、車両前後方向でフロアサイドメンバ33の前端から結合部32より後方まで延びて形成されることを特徴とする。
【0043】
従って、サイドメンバユニット15のフロアサイドメンバ33には、フロアサイドメンバ33の左右方向内側に向かって凹む内凹部73が形成され、内凹部73が車両前後方向でフロアサイドメンバ33の前端から結合部32より後方まで延びて形成されることで、サイドメンバユニット15における結合部32の剛性を高めることができる。
またフロントサイドメンバ31とフロアサイドメンバ33との間に第2連通路73aが形成されるので、生産工程における電着塗装の塗料がサイドメンバユニット15の内部の細部まで届き、防錆性を高めることができる。
【0044】
そして、内凹部73は、フロアサイドメンバ33の右内壁部53及び左内壁部55の車両上下方向下側に、フロアサイドメンバ33の下内壁部51まで延びて形成され、フロントサイドメンバ31及びフロアサイドメンバ33は少なくとも右内壁部53及び左内壁部55の車両上下方向上側で結合される。
従って、例えば車両1が水たまりを走行することでサイドメンバユニット15の内部に水が入るような場合であっても、フロアサイドメンバ33の下側の下内壁部51まで形成された内凹部73の連通路によってサイドメンバユニット15の内部の水の排水性を高めることもできる。
【0045】
そして、車両前後方向でフロアサイドメンバ33の前端から結合部32まで車両前後方向に平行に延びる平行部75aと、結合部32より車両前後方向後方に向かうにつれて車両左右方向外側に傾斜する傾斜部75bと、を有する。
従って、例えば車両1が前突することで結合部32に衝撃が車両前後方向に加わる場合であっても、傾斜部75bが車両左右方向外側に傾斜するので、サイドメンバユニット15における前後方向の衝撃をフロアサイドメンバ33によって受けることができるので、応力集中が内凹部73に発生することを抑制することができる。
【0046】
そして、フロントサイドメンバ31には、結合部32の下面に車両上下方向下方に凹み車両前後方向に延びるビード63が形成される。
従って、ビード63がフロントサイドメンバ31における結合部32に対応する位置の下内壁部51に形成されることで、フロアサイドメンバ33に干渉することなくフロントサイドメンバ31における結合部32に対応する位置の下内壁部51を補強することができる。
【0047】
また、ビード63は、結合部32より車両前後方向前方に延びて形成されることで、フロントサイドメンバ31の内側のフロアサイドメンバ33の前端部を跨いでビード63が形成されるので、衝撃が加わるフロントサイドメンバ31の箇所を補強することができる。
さらに、サイドメンバユニット15の内部に水が入るような場合であっても、フロアサイドメンバ33の下内壁部51の前端まで形成されたビード63の第1連通路63aによってサイドメンバユニット15の内部の水の排水性をより高めることもできる。
【0048】
そして、ビード63は、車両左右方向に2つ並んで形成されており、フロントサイドメンバ31及びフロアサイドメンバ33は、ビード63に挟まれる位置で結合されることで、フロントサイドメンバ31の下外壁部41における車両前後方向を軸に捩るような方向についての剛性を高め、フロントサイドメンバ31の下外壁部41とフロアサイドメンバ33の下内壁部51とが剥離するような力が溶接点wp5~7に加わることを抑制することができる。
【0049】
そして、フロアサイドメンバ33の内側には、車両前後方向でフロアサイドメンバ33の内凹部73より後方から結合部32までフロアサイドメンバ33の内凹部73及び下面に沿って延びる板状の補強部材80が結合されることで、結合部32の剛性を良好に高めることができる。
また、この補強部材80は、少なくとも一点が結合部32においてフロアサイドメンバ33を介してフロントサイドメンバ31に結合されることで、フロントサイドメンバ31に加わる力がフロアサイドメンバ33を介して補強部材80に伝達するので、結合部32の剛性をより良好に高めることができる。
【0050】
以上で本発明に係るサイドメンバユニットの説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、フロントサイドメンバ31とフロアサイドメンバ33との結合について説明したが、フロアサイドメンバ33と図示しないリアサイドメンバとの結合に適用してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、右内壁部53及び左内壁部55に内凹部73を下内壁部51まで延ばすように形成したが、ビード状の凹部を右内壁部53または左内壁部55に形成するようにしてもよく、下内壁部51まで延ばすように形成しなくてもよい。
また、本実施形態では、溶接点wp1~wp10について説明したが、その位置は適宜変更してもよく、スポット溶接でなくてもよく、ボルト締結等の固定であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
3 車体
15 サイドメンバユニット
31 フロントサイドメンバ(第1サイドメンバ)
32 結合部
33 フロアサイドメンバ(第2サイドメンバ)
53 右内壁部(側面)
55 左内壁部(側面)
63 ビード
73 内凹部(凹部)
75 側面
77 上面
80 補強部材
図1
図2
図3
図4