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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】ヘルメット、および高さ調節機構
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/08 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A42B3/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018118228
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019218663
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591200715
【氏名又は名称】加賀産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(72)【発明者】
【氏名】国分 博史
(72)【発明者】
【氏名】溝口 治
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145439(JP,A)
【文献】特開2016-145437(JP,A)
【文献】実開昭60-086531(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0004947(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の頭を覆う帽体と、
前記帽体の内部に取り付けられる内装体であり、当該ハンモック自身の外面の頂部と前記帽体の内面の頂部との間に高さ方向の第一の間隙を確保するハンモック、および長さを調整可能なヘッドバンドを少なくとも有する内装体と、
前記内装体の内部に取り付けられ、前記頭を覆うインナーと、
前記内装体または前記インナーのうち1以上に設けられ、前記インナーが前記頭を覆っている状態において、前記インナーの外面の頂部と前記ハンモックの内面の頂部との間に前記高さ方向の第二の間隙を調整可能に確保する高さ調節機構とを具備し、
前記高さ調節機構は、
前記ヘッドバンドに設けられ、前記インナーの外周部を前記高さ方向に巻き取る又は繰り出す巻き取り機構である、ヘルメット。
【請求項2】
着用者の頭を覆う帽体と、
前記帽体の内部に取り付けられる内装体であり、当該ハンモック自身の外面の頂部と前記帽体の内面の頂部との間に高さ方向の第一の間隙を確保するハンモック、および長さを調整可能なヘッドバンドを少なくとも有する内装体と、
前記内装体の内部に取り付けられ、前記頭を覆うインナーと、
前記内装体または前記インナーのうち1以上に設けられ、前記インナーが前記頭を覆っている状態において、前記インナーの外面の頂部と前記ハンモックの内面の頂部との間に前記高さ方向の第二の間隙を調整可能に確保する高さ調節機構とを具備し、
前記高さ調節機構は、
その一部が前記インナーの内面または外面に固定され、その他の一部が前記内装体または前記帽体に結び付け可能な、2以上の紐で構成された紐状の構造であるヘルメット。
【請求項3】
前記紐状の構造は、伸縮性を有する請求項記載のヘルメット。
【請求項4】
着用者の頭を覆う帽体と、
前記帽体の内部に取り付けられる内装体であり、当該ハンモック自身の外面の頂部と前記帽体の内面の頂部との間に高さ方向の第一の間隙を確保するハンモック、および長さを調整可能なヘッドバンドを少なくとも有する内装体と、
前記内装体の内部に取り付けられ、前記頭を覆うインナーと、
前記内装体または前記インナーのうち1以上に設けられ、前記インナーが前記頭を覆っている状態において、前記インナーの外面の頂部と前記ハンモックの内面の頂部との間に前記高さ方向の第二の間隙を調整可能に確保する高さ調節機構とを具備し、
前記高さ調節機構は、
弾性を有する部材であり、その中央部が前記インナーの外面の頂部に固定され、当該中央部から放射状に延びる3以上の各端部が、前記内装体または前記帽体に対し、前記高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定される弾性部材であるヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用のヘルメット等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帽体の内部に、サイズ調整可能なヘッドバンドを有するヘルメットが存在した(例えば、特許文献1参照)。ユーザは、ヘルメットを被った状態で、頭部の周方向の大きさに応じてヘッドバンドのサイズ調整を行うことにより、ヘルメットの頭部に対する密着性を高めることができる。
【0003】
また、一般に、ヘルメットの帽体内には、ハンモックも設けられる。そして、帽体とハンモックとの間に一定の高さの空間が存在するが、衝撃吸収性能を保持するため、この空間の高さを調節してはならない。この空間の存在により、ヘルメットを被った頭部への外部からの衝撃は、帽体およびハンモックにおいて効果的に吸収され、頭部が保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-203015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、頭に対する帽体の高さ(例えば、頭頂部から帽体の内面の頂部までの高さ)は、ユーザによるヘルメットの被り心地を左右する。このことは、ユーザによって、頭部の高さ方向の大きさも異なる上、例えば、目深に被る、浅く被るといった、ヘルメットを被る深さの好みが違うこと等に起因する。
【0006】
しかし、帽体とハンモックとの間の空間の高さを変えることは、規格上できない又は安全上好ましくない。
【0007】
他方、ヘルメット装着時には、発汗や頭髪の乱れ、汚れ等の対策として、キャップ状のインナーが着用される場合がある。
【0008】
そこで、本願の発明者は、ハンモックの内部にインナーを取り付け、このインナーとハンモックとの間に、その高さを調整可能な空間を確保することにより、安全性を損なうことなく、ヘルメットの被り心地を向上させることを発案した。
【0009】
なお、従来、インナーを利用して、頭に対する帽体の高さを調整する仕組み又はそのような仕組みを有するヘルメットは、存在しなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本第一の発明のヘルメットは、着用者の頭を覆う帽体と、帽体の内部に取り付けられる内装体であり、当該ハンモック自身の外面の頂部と帽体の内面の頂部との間に高さ方向の第一の間隙を確保するハンモック、および長さを調整可能なヘッドバンドを少なくとも有する内装体と、内装体の内部に取り付けられ、頭を覆うインナーと、内装体またはインナーのうち1以上に設けられ、インナーが頭を覆っている状態において、インナーの外面の頂部とハンモックの内面の頂部との間に高さ方向の第二の間隙を調整可能に確保する高さ調節機構とを具備するヘルメットである。
【0011】
かかる構成により、インナーを利用して、頭に対する帽体の高さを調整する仕組みを備えたことで、安全性を損なうことなく、被り心地の向上を実現したヘルメットを提供できる。
【0012】
また、本第二の発明のヘルメットは、第一の発明に対して、高さ調節機構は、ヘッドバンドに設けられ、インナーの外周部を高さ方向に巻き取る又は繰り出す巻き取り機構である、ヘルメットである。
【0013】
かかる構成により、頭に対する帽体の高さを、単純な機構で微細かつ広範に調整できる。
【0014】
また、本第三の発明のヘルメットは、第一の発明に対して、高さ調節機構は、ヘッドバンドまたはハンモックとインナーの外周部とに形成され、ヘッドバンドまたはハンモックに対し、インナーの外周部を、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定する選択固定構造であるヘルメットである。
【0015】
かかる構成により、頭に対する帽体の高さを、簡単な構造で2段階以上に調整できる。
【0016】
また、本第四の発明のヘルメットは、第一の発明に対して、高さ調節機構は、ヘッドバンドの内面およびインナーの外面に形成され、内面および外面を互いに結束する機構であり、その結束位置を高さ方向に変更可能な結束機構であるヘルメットである。
【0017】
かかる構成により、頭に対する帽体の高さを、簡単な機構で調整できる。
【0018】
また、本第五の発明のヘルメットは、第一の発明に対して、高さ調節機構は、その一部がインナーの内面または外面に固定され、その他の一部が内装体または帽体に結び付け可能な、2以上の紐で構成された紐状の構造であるヘルメットである。
【0019】
かかる構成により、頭に対する帽体の高さを、単純な構造で調整できる。
【0020】
また、本第六の発明のヘルメットは、第五の発明に対して、紐状の構造は、伸縮性を有するヘルメットである。
【0021】
かかる構成により、紐状の構造が伸縮することで、被り心地が一層向上する。
【0022】
また、本第七の発明のヘルメットは、第一の発明に対して、高さ調節機構は、弾性を有する部材であり、その中央部がインナーの外面の頂部に固定され、中央部から放射状に延びる3以上の各端部が、内装体または帽体に対し、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定される弾性部材であるヘルメットである。
【0023】
かかる構成により、頭に対する帽体の高さを、単純な弾性部材で2段階以上に調整できる。
【0024】
また、本第八の発明の高さ調節機構は、着用者の頭を覆う帽体と、帽体の内部に取り付けられる内装体であり、当該ハンモック自身の外面の頂部と帽体の内面の頂部との間に高さ方向の第一の間隙を確保するハンモック、および長さを調整可能なヘッドバンドを少なくとも有する内装体と、内装体の内部に取り付けられ、頭を覆うインナーとを具備するヘルメットにおいて、内装体またはインナーのうち1以上に設けられ、インナーが頭を覆っている状態において、インナーの外面の頂部とハンモックの内面の頂部との間に高さ方向の第二の間隙を調整可能に確保する高さ調節機構である。
【0025】
かかる構成により、インナーを利用して、頭に対する帽体の高さを調整する仕組みを提供できる。その結果、例えば、安全性を損なうことなく、被り心地の向上を実現したヘルメットを提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、インナーを利用して、頭に対する帽体の高さを調整する仕組みを備えたことで、安全性を損なうことなく、被り心地の向上を実現したヘルメットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態におけるヘルメットの構成図
図2】同高さ調整機構の第一の態様である巻き取り機構の概略図
図3】同高さ調整機構の第二の態様である選択固定構造の概略図
図4】同高さ調整機構の第三の態様である結束機構の概略図
図5】同高さ調整機構の第四の態様である交差紐構造の概略図
図6】同高さ調整機構の第五の態様である伸縮材の概略図
図7】同高さ調整機構の第六の態様である弾性部材の概略図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、ヘルメット等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0029】
本実施形態において、ヘルメットの内装体にインナーを取り付け、その取り付けられたインナーの外面から、内装体を構成するハンモックの内面までの高さを調節する、高さ調節機構を有するヘルメットについて説明する。
【0030】
図1は、本実施の形態におけるヘルメット1の構成図である。ヘルメット1は、着用者の頭を覆う硬性の帽体11と、帽体11の内部に取り付けられる内装体12と、内装体12の内部に取り付けられ、頭を覆う軟性のインナー13と、内装体12またはインナー13のうち1以上に設けられる高さ調節機構14とを備える。
【0031】
帽体11は、通常、硬性の素材で形成される。硬性の素材とは、固さが第一閾値以上又は第一閾値より大きい素材である。硬性の素材は、例えば、FRPやABS等の樹脂であるが、金属でもよく、その種類は問わない。
【0032】
内装体12は、ハンモック121、およびヘッドバンド122を有する。ハンモック121は、例えば、それぞれの一方端が一の点で結合された3以上の吊りバンドで構成される。または、ハンモック121は、3以上の吊りバンドと、当該3以上の各吊りバンドの一方の端部同士を結合する環ひもとで構成されてもよい。なお、環ひもと3以上の吊りバンドとは、一体成型されていてもよく、環ひもは、3以上の各吊りバンドの一部と考えてもよい。
【0033】
3以上の各吊りバンドの他方の端部は、例えば、ヘッドバンド122の外面と、帽体11の内面の外周近傍とに連結され、それによって、ハンモック121およびヘッドバンド122を有する内装体12が、帽体11の内部に取り付けられる。
【0034】
なお、内装体12は、例えば、ライナーやその他の部材をさらに有してもよい。ライナーは、帽体11の内面に取り付けられる殻状の衝撃吸収部材である。ライナーは、例えば、発泡スチロールで形成されるが、その材質は問わない。または、ライナーは、帽体11の一部と考えてもよい。
【0035】
ハンモック121は、その外面の頂部P1と帽体11の内面の頂部P2との間に、高さ方向の第一の間隙d1を確保する。なお、頂部とは、通常、頂点であるが、頂点およびその近傍を含む範囲でもよい。また、第一の間隙d1は、調整不可能である。
【0036】
第一の間隙d1は、予め決められた閾値以上または閾値より大きい値である。閾値は、例えば、5mmである。ただし、閾値は、例えば、頭部への衝撃を緩和し得る値であれば、これに限らない。また、閾値は、例えば、帽体11を構成する素材の耐衝撃性や、ライナーの有無等に応じて変更され得る。これにより、外部からの衝撃に対する安全性が高いヘルメット1を提供できる。
【0037】
ヘッドバンド122は、長さを調整可能である。ヘッドバンド122は、例えば、長さ方向に配列された2以上の孔と、当該2以上の孔から選択された一の孔と契合される留め具とで構成された長さ調節機構を有しており、その長さを、頭の周長に応じて調整可能である。なお、この種の長さ調節機構は公知であり、説明を省略する。これにより、頭に対する密着性が高いヘルメット1を提供できる。なお、頭に対する高い密着性は、例えば、前述した安全性、および後述する快適な被り心地に寄与し得る。
【0038】
インナー13は、軟性の素材で形成される。軟性の素材とは、固さが第二閾値以下又は第二閾値より小さい素材である。なお、第二閾値は、通常、上記第一閾値よりも小さいが、第一閾値と同じでもよい。軟性の素材は、例えば、化繊、木綿等であるが、その種類は問わない。インナー13は、例えば、化繊や綿等の生地を縫製することにより、キャップ状に形成される。なお、インナー13は、例えば、市販のインナーキャップを加工したものでもよい。
【0039】
インナー13は、例えば、ヘッドバンド122に取り付けられるが、ハンモック121に取り付けられてもよいし、内装体12のどの部材に取り付けられても構わない。
【0040】
また、インナー13は、内装体12に対し、着脱可能に設けられることは好適であるが、着脱不可能に設けられていてもよい。これにより、発汗による不快感や頭髪の乱れ等を抑制可能なヘルメット1を提供できる。
【0041】
高さ調節機構14は、内装体12またはインナー13のうち1以上に設けられ、インナー13が頭を覆っている状態において、インナー13の外面の頂部P3と、ハンモック121の面の頂部の間に、高さ方向の第二の間隙d2を調整可能に確保する。
【0042】
なお、調整可能に確保することは、例えば、高さ調節機構14が第二の間隙d2を確保し、かつ、確保された第二の間隙d2が、高さ調節機構14を介して、着用者等により調節され得ることである。
【0043】
また、間隙d2が調節されることは、インナー13の外面の頂部P3から、ハンモック121の面の頂部までの高さ(つまり、頂部P3に対する、ハンモック121の内面の頂部の相対的な高さ)が調節されることである。または、かかる相対的な高さは、例えば、インナー13の外面の頂部P3とハンモック121の内面の頂部の間に存在する空間の高さ又は厚みと言い換えてもよい。
【0044】
着用者は、高さ調節機構14を介して間隙d2を調節することにより、頭に対する帽体11の高さ(例えば、頭頂部から帽体11の内面の頂部P2までの高さ)を、例えば、頭の高さ方向のサイズや、被る深さの好み等に応じて変えることができる。これにより、快適な被り心地を実現したヘルメット1を提供できる。
【0045】
第二の間隙d2は、ハンモック121内の空間の高さ(例えば、X[mm])を上限値とする範囲(例えば、“0~X”)で、調整可能である。なお、ハンモック121内の空間の高さとは、当該空間の底面から当該空間の頂点までの高さである。
【0046】
ただし、第二の間隙d2の調整可能範囲の下限値は、0より大きな値であってもよい。下限値は、例えば、ハンモック121内の空間の高さと、頭を覆っている状態でのインナー13の高さの最大値(例えば、Y[mm]:ただし、Y<X)との差分(例えば、“X-Y”)である。なお、頭を覆っている状態でのインナー13の高さの最大値とは、着用者がヘルメット1を最も目深に被った場合のインナー13の高さであり、例えば、インナー13の生地のサイズおよび伸縮性で決まる定数であると考えてもよい。つまり、第二の間隙d2の調整可能範囲は、“(X-Y)~X”でもよい。例えば、Xが100mm、Yが95mmの場合、d2は、5mm~100mmの範囲で調整可能である。
【0047】
高さ調節機構14は、第二の間隙d2を、上記の調整可能範囲の中の、予め決められた範囲(例えば、調整可能範囲“0~100mm”の中の“0~10mm”や“0~15mm”、または、調整可能範囲“5~100mm”の中の“5mm~25mm”等)で調整してもよい。ただし、高さ調節機構14による第二の間隙d2の調整範囲は、上記調整可能範囲の中であれば、どのような範囲でもよい。
【0048】
高さ調節機構14は、例えば、ヘッドバンド122に設けられるが、ハンモック121に設けられてもよいし、ヘッドバンド122およびハンモック121に設けられてもよいし、内装体12のその他の部材に設けられても構わない。
【0049】
または、高さ調節機構14は、その一部が内装体12(例えば、ヘッドバンド122またはハンモック121のうち1以上)に設けられ、他の一部がインナー13に設けられてもよい。
【0050】
なお、ヘルメット1は、例えば、あご紐等、上記以外の部材も有していてもよいことは言うまでもない。
【0051】
以上のように構成されたヘルメット1において、高さ調節機構14は、より特定的には、例えば、以下に説明する第一~第六のいずれかの態様を有する。
【0052】
第一の態様とは、インナー13の外周を高さ方向に巻き取る又は繰り出す巻き取り式である。
【0053】
第二の態様とは、インナー13の外周部を、内装体12に対し、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定する態様である。
【0054】
第三の態様とは、インナー13の外面とヘッドバンド122の内面を互いに結束し、その結束位置を変更し得る態様である。
【0055】
第四の態様とは、その一部がインナー13の内面または外面に固定された3以上の紐の各端部を、内装体12または帽体11(例えば、ヘッドバンド122)に結び付ける態様である。
【0056】
第五の態様とは、伸縮材が縫い込まれたインナー13を用いる態様である。
【0057】
第六の態様とは、インナー13の外面に、放射状に延びる3以上の脚部を有する弾性部材を設け、それら3以上の各脚部の先端を、内装体12または帽体11(例えば、ハンモック121を構成する3以上の各吊りバンド)に、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定する態様である。
【0058】
(第一の態様)
【0059】
本態様の高さ調節機構14は、ヘッドバンド122に設けられ、インナー13の外周部を高さ方向に巻き取る又は繰り出す、巻き取り機構である。巻き取り機構の一例を、図2に示す。
【0060】
図2は、巻き取り機構の概略図である。この例では、インナー13の外周に3以上の切り欠きが形成されており、巻き取り機構は、インナー13の外周の、当該3以上の切り欠き以外の部分に固着されるC字型の軸と、この軸の、インナー13の外周が固着されていない3以上の各部分が嵌め込まれる、ヘッドバンド122の外周に設けられた3以上の軸受けとで構成される。
【0061】
軸の少なくとも一方の端部にダイヤルが設けられており、着用者がダイヤルを指でつまんで回転させると、インナー13の外周部の生地が軸に巻き取られ又は軸から繰り出され、第二の間隙d2(図1参照)が拡大または縮小する。
【0062】
具体的には、インナー13の生地が軸に巻き取られると、インナー13の外面の頂部P3(図1参照)が下方に変位し、ハンモック121の内面の頂部P1との間の第二の間隙d2は拡大する。また、生地が軸から繰り出されると、頂部P3は上方に変位し、第二の間隙d2は縮小する。
【0063】
なお、軸は、例えば、プラスチック等の樹脂で形成されるが、金属で形成されてもよく、その素材は問わない。軸受け、およびダイヤルも同様である。
【0064】
なお、本例では、3以上の軸受けは、ヘッドバンド122の外周に設けられているが、ヘッドバンド122の内周に設けられてもよい。
【0065】
(第二の態様)
【0066】
本態様の高さ調節機構14は、ヘッドバンド122またはハンモック121と、インナー13の外周部とに形成され、ヘッドバンド122またはハンモック121に対し、インナー13の外周部を、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定する、選択固定構造である。選択固定構造の一例を図3に示す。
【0067】
図3は、選択固定構造の概略図である。この例では、インナー13の外周部に、高さ方向に配列された2以上(例えば、5つ)の孔であり、第二の間隙d2を調整するための2以上の孔(以下、調整孔)が形成される。2以上の調整孔は、例えば、5mm間隔で配列される。図3の例のように、5つの調整孔が5mm間隔で配列された場合、第二の間隙d2の調整可能範囲は、例えば、“0~20mm”や“5mm~25mm”等となる。つまり、第二の間隙d2は、最大20mmの幅で増減が可能である。
【0068】
ただし、調整孔の数は、例えば、3や6等でもよく、2以上であれば何個でも構わない。また、2以上の調整孔の間隔は、例えば、3mmや1cm等でもよく、その大小は問わない。
【0069】
また、ヘッドバンド122またはハンモック121の一方(本例では、ハンモック121)に、インナー13の上記2以上の調整孔のうち一の調整孔を貫通し得る突起が形成される。さらに、ヘッドバンド122またはハンモック121の他方(本例では、ヘッドバンド122)に、インナー13の上記一の調整孔を貫通している上記突起と契合する孔であり、インナー13をヘッドバンド122またはハンモック121の一方と共に、ヘッドバンド122またはハンモック121の他方に固定するための孔(以下、固定孔)が形成される。
【0070】
なお、本例では、突起は、ハンモック121の3以上の各吊りバンドの、ヘッドバンド122側の端部側から分岐して伸びる枝部の先端に形成されている。また、インナー13には、かかる枝部が貫通し得る孔(以下、貫通孔)がさらに形成されている。枝部の先端は、インナー13の外部から貫通孔を貫通して、インナー13の内部に入る。そして、インナー13の内部に入った枝部の先端の突起が、インナー13の上記2以上の調整孔のうち一の調整孔を貫通して、ハンモック121の内面の上記固定孔と契合する。これによって、インナー13は、ヘッドバンド122と共に、ハンモック121の内面に固定される。
【0071】
ただし、上記のような枝部および貫通孔は無くてもよい。あるいは、ヘッドバンド122またはハンモック121の一方に2以上の調整孔が形成され、ヘッドバンド122またはハンモック121の他方に固定孔が形成され、そして、インナー13の外周部に突起が形成されてもよい。
【0072】
いずれの場合も、インナー13を、ヘッドバンド122またはハンモック121の一方と共に、ヘッドバンド122またはハンモック121の他方に、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定することが可能である。
【0073】
(第三の態様)
【0074】
本態様の高さ調節機構14は、ヘッドバンド122の内面およびインナー13の外面に形成され、内面および外面を互いに結束する機構であり、その結束位置を高さ方向に変更可能な結束機構である。結束機構の一例を図4に示す。
【0075】
図4は、結束機構の概略図である。この例では、インナー13の外周部に、高さ方向のレールが設けられ、ヘッドバンド122には、かかるレールと移動可能に係合するガイドが設けられる。レールには、2以上の凸部が形成され、ガイドには、当該2以上の凸部のいずれか1つと契合し得る凹部が形成されている。インナー13は、かかるレールおよびガイドを介して、当該レールが有する2以上の凸部のいずれか1つに対応する位置で、ヘッドバンド122と結束される。
【0076】
ユーザがレールを下または上に移動させると、ヘッドバンド122に対するインナー13の結束位置が下方または上方に変位し、それによって、第二の間隙d2は、増加または減少する結果となる。
(第四の態様)
【0077】
本態様の高さ調節機構14は、その一部(例えば、中央部。または、一方の端部)がインナー13の内面または外面に固定され、その他の一部(例えば、両方の端部。または、他方の端部)が内装体12または帽体11(例えば、ヘッドバンド122)に結び付け可能な、2以上の紐で構成された紐状の構造である。
【0078】
紐状の構造は、例えば、互いに交差する2以上の紐で構成される交差紐構造である。2以上の各紐は、その中央部がインナー13の内面または外面に固定(例えば、縫い付け、接着等)され、その両端部が内装体12または帽体11に結び付け可能である。
【0079】
または、紐状の構造は、それぞれの一方の端部が一点で結合され、当該一点から放射状に延びる3以上の紐で構成された放射紐構造でもよい。3以上の各紐の一方の端部同士を結合した結合部が、インナー13の内面または外面、もしくはそれら内面および外面の間に固定され、各紐の他方の端部は、内装体12または帽体11に結び付け可能である。
【0080】
紐状の構造の一例である交差紐構造を図5に示す。図5は、交差紐構造の概略図である。この例の交差紐構造は、2本の紐で構成され、各紐の中央部は、インナー13に移動可能に縫い込まれている。ヘッドバンド122には、3以上の突起が設けられ、インナー13の外周部には、当該3以上の突起と契合し得る3以上の孔が形成されており、3以上の突起が3以上の孔と契合することで、インナー13は、ヘッドバンド122と結合される。
【0081】
ヘッドバンド122には、交差紐構造を構成する2本の紐の、計4つの端部が貫通し得る4つの孔が形成されている。各端部には、端留めが設けられており、4つの端部は、ヘッドバンド122の内面側から、かかる4つの孔を貫通して、ヘッドバンド122の外面側に突出する。端留めは、こうしてヘッドバンド122の外面側に突出した端部の内面側への逆戻りを防止する。
【0082】
着用者が4つの端部を同時に引くと、インナー13の外面の頂部P3が下方に変位し、第二の間隙d2が拡大する。着用者が帽体11の外周の対向する2つの位置を両手で把持して下方に引き下げると、4つの端部は引き戻され、ハンモック121の内面の頂部P1が下方に変位する結果、第二の間隙d2は縮小する。なお、図5の構造は例示であり、交差紐構造を構成する紐の数は、適宜変更される。例えば、紐の数が3であれば、端部の数は6となり、通常、孔の数も6となる。また、紐の数がNであれば、端部の数は2Nとなり、通常、孔の数も2Nとなる。ただし、孔の数は、端部の数と同じとは限らず、端部の数より多くてもよい。
【0083】
なお、紐状の構造は、伸縮性を有することは好適である。それによって、より快適な着用感が得られる。
【0084】
(第五の態様)
【0085】
または、例えば、図6に示すように、シリコンゴム等の伸縮性を有する素材(以下、伸縮材)を放射状に縫い込んだ生地で、インナー13を縫製してもよい。この種のインナー13は、着用者の頭のサイズや形状に応じて伸縮する。かかるインナー13の外周部が、例えば、上記第四の態様と同様に、ヘッドバンド122に取り付けられる。着用者は、例えば、帽体11の外周の対向する2つの位置を両手で把持して、下方に引き下げる又は上方に押し上げることにより、第二の間隙d2が拡大または縮小し、快適な着用感が得られる。つまり、本態様の高さ調節機構14は、インナー13に縫い込まれた放射状の伸縮材である。
【0086】
(第六の態様)
【0087】
本態様の高さ調節機構14は、弾性を有する部材(以下、弾性部材)であり、その中央部から放射状に延びる3以上の脚部を有する弾性部材である。この弾性部材の中央部は、インナー13の外面の頂部P3に固定され、当該中央部から放射状に延びる3以上の各脚部の先端が、内装体12または帽体11に対し、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定される。かかる弾性部材の一例を図7に示す。
【0088】
図7は、弾性部材の概略図である。この弾性部材の3以上の各脚部の先端は、ハンモック121の3以上の各吊りバンドに対して、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定される。
【0089】
詳しくは、3以上の各吊りバンドには、高さ方向に配列された2以上(例えば、3つ)の調整孔が形成されている。各調整孔は、弾性部材の各脚部の先端と契合し得るサイズおよび形状を有する。なお、かかる弾性部材は、例えば、ポリプロピレン等の弾性に富んだ板材の打ち抜きによって形成される。ただし、弾性部材の製造方法は問わない。
【0090】
上記のような弾性部材の中央部を、インナー13の外面の頂部に固定する一方、固定されている弾性部材の3以上の各脚部の先端を、ハンモック121の3以上の各吊りバンドに形成されている2以上の調整孔から選択される一の調整孔と契合させる。これによって、インナー13は、ハンモック121に対し、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定される。
【0091】
従って、各脚部の先端を、各吊りバンドの2以上の調整孔のどの調整孔と契合させるかで、第二の間隙d2が変化し、快適な着用感が得られる。
【0092】
以上、本実施の形態によれば、ヘルメット1は、着用者の頭を覆う硬性の帽体11と、帽体11の内部に取り付けられる内装体12と、内装体12の内部に取り付けられ、頭を覆う軟性のインナー13と、内装体12またはインナー13のうち1以上に設けられる高さ調節機構14とを具備する。内装体12は、ハンモック121、およびヘッドバンド122を少なくとも有する。ハンモック121は、当該ハンモック121自身の外面の頂部と、帽体11の内面の頂部との間に、高さ方向の第一の間隙を確保する。ヘッドバンド122は、長さを調整可能である。高さ調節機構14は、インナー13が頭を覆っている状態において、インナー13の外面の頂部とハンモック121の内面の頂部との間に高さ方向の第二の間隙を調整可能に確保する。
【0093】
こうして、インナー13を利用して、頭に対する帽体11の高さを調整する仕組みを備えたことで、安全性を損なうことなく、被り心地の向上を実現したヘルメット1を提供できる。
【0094】
また、上記ヘルメット1において、高さ調節機構14は、ヘッドバンド122に設けられ、インナー13の外周部を高さ方向に巻き取る又は繰り出す巻き取り機構であることにより、頭に対する帽体11の高さを、単純な機構で微細かつ広範に調整できる。
【0095】
また、上記ヘルメット1において、高さ調節機構14は、ヘッドバンド122またはハンモック121とインナー13の外周部とに形成され、ヘッドバンド122またはハンモック121に対し、インナー13の外周部を、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定する選択固定構造であることにより、頭に対する帽体11の高さを、簡単な構造で2段階以上に調整できる。
【0096】
また、上記ヘルメット1において、高さ調節機構14は、ヘッドバンド122の内面およびインナー13の外面に形成され、内面および外面を互いに結束する機構であり、その結束位置を高さ方向に変更可能な結束機構であることにより、頭に対する帽体11の高さを、簡単な機構で調整できる。
【0097】
また、上記ヘルメット1において、高さ調節機構14は、その一部がインナー13の内面または外面に固定され、その他の一部が内装体12または帽体11に結び付け可能な、2以上の紐で構成された紐状の構造であることにより、頭に対する帽体11の高さを、単純な構造で調整できる。
【0098】
また、上記ヘルメット1において、紐状の構造が伸縮性を有することで、被り心地が一層向上する。
【0099】
また、上記ヘルメット1において、高さ調節機構14は、弾性を有する部材であり、その中央部がインナー13の外面の頂部に固定され、中央部から放射状に延びる3以上の各端部が、内装体12または帽体11に対し、高さ方向に異なる2以上の位置から選択される一の位置で固定される弾性部材であることにより、頭に対する帽体11の高さを、単純な弾性部材で2段階以上に調整できる。
【0100】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本発明にかかるヘルメットは、インナーを利用して、頭に対する帽体の高さを調整する仕組みを備えたことで、安全性を損なうことなく、被り心地の向上を実現でき、ヘルメット等として有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 ヘルメット
11 帽体
12 内装体
13 インナー
14 高さ調節機構
121 ハンモック
122 ヘッドバンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7