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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】清浄空気供給装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/48 20060101AFI20221019BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20221019BHJP
【FI】
E01C19/48 A
F24F3/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018188858
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020056261
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000228028
【氏名又は名称】株式会社トルネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100111785
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 英房
(72)【発明者】
【氏名】山本 直樹
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-203269(JP,A)
【文献】特開2002-267216(JP,A)
【文献】特開2014-012934(JP,A)
【文献】特開平08-183326(JP,A)
【文献】特開平10-175424(JP,A)
【文献】特開平07-310941(JP,A)
【文献】特開2010-286165(JP,A)
【文献】米国特許第05443325(US,A)
【文献】特開2001-239820(JP,A)
【文献】特開2014-139388(JP,A)
【文献】特表2001-526751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/48
F24F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1エア吹出ユニット(30)と第2エア吹出ユニット(40)とを備えた清浄空気供給装置(1)であって、
前記第1エア吹出ユニット(30)の第1エア吹出口(36)と前記第2エア吹出ユニット(40)の第2エア吹出口(46)は同一のエア吹出面(4a)に備えられ、
前記第2エア吹出口(46)は、前記エア吹出面(4a)において前記第1エア吹出口(36)の周囲を環状に取り囲むように配置され、
前記第1エア吹出ユニット(30)は、さらに、
送風ファン(31)と、
空気を清浄にするためのフィルターユニット(32)と、
気密の第1チャンバー(33)を有し、
前記第1チャンバー(33)は、前記第1のエア吹出口(36)に加え第1のエア吸込口(35)を有し、その内部に前記フィルターユニット(32)とこれに続く前記送風ファン(31)を備え、
前記第2エア吹出ユニット(40)は、さらに、
送風ファンと(41)、
気密の第2チャンバー(43)を有し、
前記第2チャンバー(43)は、前記第2のエアの吹出口(46)に加え第2のエア吸込口(45)を有し、その内部に前記送風ファン(41)を備え、
前記第1チャンバーの周りに前記第2チャンバーが配置され、
前記第1エア吹出ユニット(30)は、清浄化した空気流(8)を前記第1エア吹出口(36)から吹出し、
前記第2エア吹出ユニット(40)は、前記清浄化した空気流(8)を筒状に取り囲む空気流(7)を前記第2エア吹出口(46)から吹出して、
前記筒状の空気流(7)の内側に前記清浄空気流(8)が流れることにより、局所的な清浄空気空間を創出する清浄空気供給装置(1)。
【請求項2】
前記第2エア吹出口の吹出す空気流(7)の流速は、前記第1エア吹出口の吹出す空気流(8)の流速よりも速い請求項1記載の清浄空気供給装置。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の清浄空気供給装置(1)を備えた作業車(50)であって、前記清浄空気供給装置の吹出し面(4a)が、前記作業車の運転席の上部から運転席を向くように配置された作業車(50)。
【請求項4】
前記作業車の運転席は、外気環境にある請求項3に記載の作業車(50)。
【請求項5】
前記作業車は、アスファルト舗装用である請求項3または4に記載の作業車(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足元から熱気や粉塵が発生する環境下で作業を行う作業員の作業環境を改善する清浄空気供給装置に関する。
特に、アスファルト舗装の舗装車の運転員の作業環境を改善する清浄空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年健康増進法にとどまらず、雇用者・作業員に健康上の問題が生じない環境下で仕事・サービスに従事できるように職場環境を整えることが特に望まれるようになってきた。
従来、アスファルト舗装作業を行う場合、熱した半溶融状態のアスファルトを路面に敷き詰めていく作業が行われる。この作業は、フィニッシャーと呼ばれる舗装作業車に作業員が乗車して作業が進められる。作業員は、作業中、路面に対してあらかじめ定められた幅でアスファルトを敷き詰めているかどうかを運転席から下方の状況を確認しながら作業を行う必要がある。
【0003】
この場合、作業員は、熱したアスファルトの直上で作業を行うことになるが、粉塵が熱気ととともに上昇してくるため、作業員を粉塵から防護する必要がある。しかし、作業員を作業室内に収容すると床が確認作業の妨げとなる。また、床を透明なものとすると、アスファルトから発生する油汚れと熱のため、透明な状態を長期間保持することは困難である。このため、このような作業環境を改善する要請は従来から存在していた。
【0004】
一方、作業場などの室内に関する空気清浄装置は、工場に導入するような大規模なものや、有機溶媒などを作業員が吸わないようにさせるものについては、実用に供されているが、外気環境下で用いるものについては、設置の制約や、清浄空気を供給してもすぐに雲散霧消することもあり、粉塵防止のマスクなどが実用化されているが、効果的な技術の提案はないのが現状である。
【0005】
局所的に清浄空気空間を作る比較的近い技術文献として、車室内の空気清浄に関するものであるが、車両用空気清浄装置に関するものがある。車室内の一部で発生した空気の汚れを、車室内全体に拡散させることなく、局所空間だけを短時間で清浄空気にするものである。具体的には、車室の前席の乗員頭部付近に空気清浄器の吸込口を設けるとともに、前席と後席との間に車幅方向に横長状の吹出口を設け、車室内床部に向けてほぼ鉛直に吹き出させ、前席と後席間にエアカーテンを形成し、汚れの拡散が防止できると共に、空調装置と空気清浄器とにより前席乗員周りの空間を循環する空気流れが形成されて、局所空間に絞ると共に短時間で効率の良い空調と空気清浄を行うものである(特許文献1)。
しかしながら、これは閉鎖空間内の一部についてエアカーテンを用いて局所的に清浄空気空間を作るものであり、外気下では適用が困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、外気環境下であっても、作業員の作業環境を改善する清浄空気供給装置を提案する。また、舗装作業車に乗車してアスファルト舗装作業に従事する作業員を粉塵から防護する清浄空気供給装置を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-239820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的は、塵埃の発生する空間、特に外気下で下方から熱気とともに粉塵が発生する場合であっても、作業員のための清浄空気の供給された一定の空間を維持することができ、外気環境下での作業員の作業環境を改善する清浄空気供給装置を提供することである。
また、そのような清浄空気供給装置を備えた作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1エア吹出口が清浄空気流を吹出しながら、第2エア吹出口がその周囲に環状の遮断流を吹出すと、清浄空気流に対する熱気や風などの外気の外乱の影響を低減できる、という知見を得て、清浄空気が供給される局所的な空間を創出・維持するものである。
【0010】
(動作原理)
図2に、図1に示す清浄空気供給装置1の動作原理を示す。本動作原理は、環状に吹き出す空気流6とその中心部に吹き出す空気流9の動作を説明するものである。
図2(a)に示すように、中心部に開口のない吹出口20から環状に空気流6を吹出すと、空気流は一般に粘性を有するため、吹出した空気流6は周囲の空気を巻き込みながら進もうとするが、周囲から空気が供給されない中心部は、渦が生じる。このため、単に、環状の空気を吹出すと、まっすぐ直進せずに渦に引き込まれるように環の中心部方向に向かう流れが生ずる。
【0011】
図2(b)は、環状に空気吹きだす吹出口22の中心部に開口22aを設けたものを示している。このようにすると、環状の空気流6は図2(a)の状態に比べて、直進をする。その理由は、図2(c)に示すように、環状の空気流6が流れるとこれに周囲の空気を巻き込もうとするが、中心部の開口22aから周囲の空気5が吸い込まれることにより、開口22aを通過して中心部付近を流れる空気流9が発生するため、環状の空気流6が中心部方向に巻き込まれる力が減少するからである。
【0012】
図2(d)は、本例の場合を示したもので、環状の空気流6を吹出すことに加えて、別途、環状の空気流6の内側に清浄空気を吹出す空気吹出しユニット21を設け、積極的に清浄空気流8を吹出口23から吹出すようにしたものである。
そうすると、環状に吹き出す空気流6の中心部に清浄空気流8が流れるため、環状に吹きだす空気流6の中心部への空気の巻き込みを防止でき、清浄空気流8の周りを筒状に覆って流れる空気流6がより長い距離まで形成される。理論的には、巻き込み分を補填するだけの清浄空気8を供給すればよい。清浄空気流8の側から見ると、環状空気流6が清浄空気流の周囲を包むように流れるので、横風や拡散する空気などの外乱があっても環状空気流6がこれを遮断するように働くため、清浄空気流8が安定して流れ、その結果、吹出口23から一定の範囲において清浄空気が拡散しにくい空間を創出し、維持することができる。
【0013】
(請求項1)
本発明は、上記課題を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなる。すなわち、
第1エア吹出ユニットと第2エア吹出ユニットとを備えた清浄空気供給装置であって、第1エア吹出ユニットの第1エア吹出口と第2エア吹出ユニットの第2エア吹出口は同一のエア吹出面に備えられ、第2エア吹出口は、エア吹出面において第1エア吹出口の周囲を環状に取り囲むように配置され、
第1エア吹出ユニットは、清浄化した空気流を前記第1エア吹出口から吹出し、第2エア吹出ユニットは、清浄化した空気流を筒状に取り囲む空気流を前記第2エア吹出口から吹出して、
筒状の空気流の内側に清浄空気流が流れることにより、局所的な清浄空気空間を創出することを特徴とする。
【0014】
これにより、第1エア吹出口が清浄空気流を吹出しながら、第2エア吹出口がその周囲を環状の遮断流を吹出すため、清浄空気が熱気や風などの外気の外乱の影響を低減し、外気下で、塵埃の発生する空間、特に下方から熱気とともに発生する場合であっても作業員のための清浄空気が供給される一定の空間を維持することができ、外気環境下での作業員の作業環境を改善できる。
【0015】
(請求項2)
また、第2エア吹出口の吹出す空気流の流速は、第2エア吹出ユニットの吹出す空気流の流速よりも速くすることが、好ましい。
【0016】
これにより、周囲遮断流の流速が速いため、外乱排除のエアカーテン効果をさらに高くすることができる。
【0017】
(請求項3)
第1エア吹出ユニットは、さらに、送風ファンと、空気を清浄にするためのフィルターユニットと、気密の第1チャンバーを有し、第1チャンバーは、第1のエア吹出口に加え第1のエア吸込口を有し、その内部に前記フィルターユニットとこれに続く前記送風ファンを備え、第2エア吹出ユニットは、さらに、送風ファンと、気密の第2チャンバーを有し、第2チャンバーは、第2のエア吹出口に加え第2のエア吸込口を有し、その内部に送風ファンを備え、
第1チャンバーの周りに第2チャンバーが配置されている、ことが好ましい。
【0018】
これにより、第1チャンバーが第2チャンバーの周囲にあるため、構成を簡素にするとともに全体を薄くすることができる。特に、下方に向けて空気流を吹出すと、天井や屋根などの設置場所の制約があるため、薄く、かつ、重量をできるだけ軽くする要請に応えることができる。
【0019】
(請求項4)
本発明は、前記記載の清浄空気供給装置を備えた作業車であって、清浄空気供給装置の吹出し面が、作業車の運転席の上部から運転席を向くように配置されていることが特徴である。
【0020】
これにより、作業員の頭部に向けて下向きの清浄空気流が供給できるため、作業員の作業環境を改善できる作業車を提供することができる。
【0021】
(請求項5)
また、前記作業車の運転席は、外気環境にあることが好ましい。
【0022】
これにより、環境にさらされた作業員に、作業中清浄空気を供給することができる。
【0023】
(請求項6)
また、前記作業車は、アスファルト舗装用であることが好ましい。
【0024】
これにより、外気下で熱気と粉塵を受ける可能性の高い作業車の作業員に、作業中清浄空気を供給することができる
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のような構成により、
塵埃の発生する空間、特に外気下で下方から熱気とともに粉塵が発生する場合であっても、作業員のための清浄空気の供給された一定の空間を維持することができ、外気下での作業員の作業環境を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の清浄空気供給装置の実施形態(実施例1)を示す模式図である。(a)は、模式正面図、(b)は、(a)のb-b視模式断面図である。(c)は模式底面図である。
図2図1に示す清浄空気供給装置の動作原理を示す(a)~(d)の説明図である。
図3図1に示す清浄空気供給装置の動作図である。(a)は、動作を開始した状態である。(b)は、清浄空気と周辺空気流の合成状態である。
図4図1に示す清浄空気供給装置を備えた作業車の側面図である。
図5図3の清浄空気供給装置の取り付け図である。(a)は模式平面図、(b)は、模式正面図である。
図6図3の清浄空気供給装置の性能の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、本明細書では、図1(b)に示すように、吸込口35、45がある側を、正面側または上側といい、吹出口36、46のある側を底面側または下側という。
【実施例1】
【0028】
図1に示す本例の概略は、以下のようなものである。第1エア吹出ユニット30の第1エア吹出口36と第2エア吹出ユニット40の第2エア吹出口46は同一のエア吹出面4aに備えられ、第2エア吹出口46は、エア吹出面4aにおいて前記第1エア吹出口36の周囲を環状に取り囲むように配置されている。第1エア吹出ユニット30は、清浄化した空気流8を第1エア吹出口36から吹出し、第2エア吹出ユニット40は、清浄化した空気流8を筒状に取り囲む空気流7を前記第2エア吹出口46から吹出す。
このように第1エア吹出口36から清浄空気流を吹出しながら、その周囲を取り囲む環状の第2エア吹出口46が筒状の遮断流を吹出すため、遮断流がより長い距離まで届くようになる一方、清浄空気流8が熱気や風などの外気の外乱の影響を低減し、外気下であっても清浄空気が供給される一定の局所空間を創出し維持することができる。このため、塵埃の発生する空間、特に外気環境下で下方から熱気とともに発生する場合にも、作業員のための作業環境を改善できる。以下、本例の清浄空気供給装置1について、説明する。
【0029】
図1は、本発明の清浄空気供給装置1の実施形態(実施例1)を示す模式図である。本例の清浄空気供給装置1は、第1エア吹出ユニット30と第2エア吹出ユニット40を備えている。
図1(a)は、本例の清浄空気供給装置1の第1エア吹出ユニット30のフィルターユニット32と吸込口カバー3を取り去り、ファン31、41の配置を示す模式正面図である。同図に示すように、第1エア吹出ユニット30は、その周囲に第2エア吹出ユニット40を配置してなる。第1エア吹出ユニット30は、4つのファンを内蔵31している。また、第2エア吹出ユニット40は、8つのファンを内蔵している。
【0030】
図1(b)は、図1(a)のb-b断面を示すものである。第1エア吹出ユニット30は、直方体形状の第1チャンバー33を有する。第2エア吹出ユニット40は、第1エア吹出ユニット30の周囲を囲うように、ほぼ八角柱形状の第2チャンバー43を有している。第1チャンバー33は第2チャンバー43よりも正面側に突出している。なお、突出することは必須ではないが、第1エア吹出ユニット30は、前述のようにフィルターユニット32を備えているため第2エア吹出ユニット40に比較して上下方向に厚くなる傾向がある。この場合でも、できる限り突出を抑えて薄い構造とすることが、設置スペースの制約が厳しい天井や屋根に設置して重力方向に向けた下降空気流(ダウンストリーム)を創出するために望ましい。
第1エア吹出ユニット30の第1エア吹出口36と前記第2エア吹出ユニット40の第2エア吹出口46は同一面であるエア吹出面4aに備えられており、第2エア吹出口46は、前記エア吹出面4aにおいて前記第1エア吹出口36の周囲を環状に取り囲むように配置されている。
業車を提供することができる。
【0031】
図1(c)は、本例の清浄空気供給装置1の模式底面図を示すものである。本例の底面は、第1エア吹出ユニット30と第2エア吹出ユニット40の共通の吹出口カバー4が同一面4aに設けられ、その中央部に第1エア吹出ユニット30の吹出口36が、周辺部に第2ア吹出ユニット40の吹出口46が、それぞれ設けられている。各吹出口36、46は、それぞれパンチ孔が開けられており、それぞれ第1チャンバー33と第2チャンバー43の空気流6、8が吹出される。
なお、パンチ孔を設ける代わりに、同様な開口率のハニカムグリルとしてもよく、そうすると、さらに空気流の整流効果を高めることができる。
【0032】
(第1エア吹出ユニット)
第1エア吹出ユニット30は、図1(a)に示すように4つの送風ファン31を気密の第1チャンバー33内に内蔵している。加えて、図1(b)に示すように、第1チャンバー33は、正面側に矩形に開けられた吸込口35を有するとともに、後述のようにプレフィルター32aと電気集塵機32bからなるフィルターユニット32を吸込口35に続いて備え、さらに、送風ファン31を4つ備えて、空気の吹出口36を有する。
第1チャンバー33は送風ファン31の入側と出側で2つに分割されており、吸込口35から吸い込まれた外気は、フィルターユニット32を通過した後に、送風ファン31を通って、吹出口36から吹出される。
このため、第1エア吹出ユニット30から吹出される空気流は、フィルターユニット32により、塵埃が取り除かれ、清浄空気流8となる。本明細書で清浄空気とは、この第1エア吹出ユニットから吹出される空気流8のことをいう。
【0033】
(第2エア吹出ユニット)
第2エア吹出ユニット40は、図1(a)(b)に示すように8つの送風ファン41を気密の第2チャンバー43内に内蔵している。第2チャンバー43は、水平断面がほぼ正方形の第1チャンバー33の周囲に沿って8つの吸込口45を有し、これに続いて送風ファン41をそれぞれ備えて、底面側に空気の吹出口36を有する。吸込口35から吸い込まれた外気は、送風ファン31を通って、吹出口36から吹出される。
【0034】
(フィルターユニット)
図1(b)に示すように、第1チャンバー33の正面側に設けられた吸込口35から送風ファン31により吸込された空気は、フィルターユニット32のプレフィルター32aおよび電気集塵器32bを通って順次空気中の粒子が取り除かれる。清浄になった空気は、送風ファン31により第1チャンバー33の底面側に設けられた吹出口36から吹出される。
【0035】
(プレフィルター)
プレフィルター32aは、吸込口35のすぐ内側にあって吸込口35から吸込んだ空気(外気)が通過する。次段の電気集塵器32bの前段階として、吸込口35から吸込んだ空気に浮遊する粗い粒子を除去するもので、不織布またはメッシュ状の金網で構成される。主として、目視可能な塵埃をターゲットにしており、粒子径が10~20μm以上のものを除去することができる。
【0036】
(電気集塵器)
プレフィルター32aにより浮遊する粗い粒子を除去した空気は、次段の電気集塵器32bにより、さらに細かい粒子を除去する。主として、粒子径が0.3μm以上のものをターゲットとしている。
電気集塵器32bは、イオン化部と集塵部を備えたいわゆる2段荷電型電気集塵器と呼ばれる公知のものを用いることができる。この電気集塵器は、コロナ放電などにより空気中の浮遊粒子を帯電させるためのイオン化線およびイオン化電極を有するイオン化部と、帯電した浮遊粒子をクーロン力により捕集するための集塵電極板と集塵対電極板を交互に配置しこれらをスペーサで等間隔に備えた集塵部と、イオン化部および集塵部に電力を供給する電源とを備えてなる。このような電気集塵器32bは、イオン化線とイオン化電極との間、並びに集塵電極板と集塵対電極板との間を空気が通過するので、圧力損失が少なく、空気中の微粒子を効率よく除去できる。
【0037】
(送風ファン)
送風ファン31は、図1(b)に示すように、第1チャンバー33のフィルターユニット32の下部に設けられている。送風ファン31は、本例の清浄空気供給装置1の外部の空気(外気)を吸込口35から吸込み、第1チャンバー31内のフィルターユニット32で清浄にした空気を吹出口36から吹出すための送風機である。送風ファン31は、風量にもよるが、たとえば、定格回転速度3100rpm、140mm角のDCモータを用いることができる。
【0038】
送風ファン41は、図1(b)に示すように、第2チャンバー43の正面側に設けられた吸込口45の下部に設けられている。なお、図1(a)では、送風ファン41のガード45aを外して示している。送風ファン41は、外気を吸込口45から吸込み、第2チャンバー41の吹出口46から吹出すための送風機である。送風ファン41は、風量にもよるが、送風ファン31と同様に、たとえば、定格回転速度3100rpm、140mm角のDCモータを用いることができる。
【0039】
(清浄空気供給装置1の作用)
送風ファン31、41を作動させると、各吸込口35、45付近は負圧が生じ、第1チャンバー31と第2チャンバー41に外気が吸い込まれる。続いて、送風ファン31により、清浄空気は吹出口36から吹出され、同時に、送風ファン41により空気が吹出口36を囲む環状の吹出口46から吹出される。このため、環状の空気流6の中心部に清浄空気流8が流れるため、環状空気流6の中心部の空気の巻き込みを防止できる。また、環状空気流6が清浄空気流8の周囲を包むように流れるため、清浄空気の吹出方向に横風や拡散する空気などの外乱があっても、これに対抗して清浄空気流8が安定して流れ、その結果、エア吹出し面4aから一定の範囲において清浄空気が拡散しにくい空間を創出し、維持することができる。
【実施例2】
【0040】
図3から図5に、本発明の他の実施形態である清浄空気供給装置1を備えた作業車50を示す。
図4に示すように、この作業車50は、道路のアスファルト舗装に用いられ、作業員51が運転を行う。フィニッシャーと呼ばれる場合がある。アスファルト舗装は、熱せられたアスファルト混合物を舗装前の路面(路床または路盤)52の上に作業車50を移動させながら表面が滑らかになるようにして固めながら敷いていくものである。このため、移動用の車輪53を有している。
熱せられて流動性を有するアスファルトをトラック等で現場に運び、作業車50の前部のホッパーに投入し、車体下部のコンベアで作業車50の後部に搬送し、作業員51に近い後部車輪53の後方で、必要な幅に拡げながら敷き固める。作業員51は、車体上部からその様子を観察しながら、必要な作業を行う。このため、車体下部で拡げられるアスファルトから発生する粉塵と熱気を、作業を行う位置で受ける可能性が高い。
【0041】
本例では、清浄空気供給装置1を、図4に示すように作業員の頭上の屋根54の下部に配置している。
図5に屋根54のフレーム54aに取り付けた清浄空気供給装置1を示す。図5(a)は、屋根54の下面から見た清浄空気供給装置1の模式図を示す。吹出口カバー4は外した状態である。ファン31、41の位置を点線で示してある。清浄空気供給装置1は接続用の取付金具55を介し、吊り下げられている。屋根54との隙間は、十分な空気を吸い込むために50mm以上開けることが望ましく、100mm以上開けることがさらに望ましい。
図5(b)に、正面から見た、清浄空気供給装置1を備えた作業車50を示す。清浄空気供給装置1は、作業員の頭上に位置し、好ましくは第1エア吹き出しユニット30の吹出口36の真下に作業員50の頭の位置が来るように配置する。吹出面4aと作業員の頭の位置の高さの差は、1m以下が好ましく、50cm以下がさらに好ましい。
【0042】
(清浄空気供給装置)
清浄空気供給装置1は、実施例1と同じものである。
吹出口36、46から吹出される空気流の風速は、外気の条件にもよるが、第1エア吹出ユニット30が2~3m/s、第2エア吹出ユニット40が4~6m/sであることが望ましい。
【0043】
図3に本例の、動作を示す。
図3(a)に示すように、作業員51の頭上に備えられた清浄空気供給装置1は、電源が入ると、送風ファン31、41が回転し、空気流7,8の吹出しを開始する。また、第1エア吹出ユニット30では、電気集塵器32bが作動し、プレフィルター32aと合わせて集塵を行う。このため、第1エア吹出ユニット30からは清浄空気流8が、第2エア吹出ユニット40からは環状に吹き出す空気流7が発生する。
図3(b)に示すように、清浄空気流8は作業員51の頭に向けて流れる。この時、環状に吹きだす空気流7は、清浄空気流8の周囲を筒状に流れる。このため、作業車50の下部から粉塵が対流により上昇してくる場合であっても、作業員51の鼻と口を含む頭部は清浄空気内にとどまることができ、作業員51の空気環境は、改善される。
【0044】
以下に、本発明の有利な実験データを示して説明する。
本例の清浄空気供給装置1について、装置の作動と停止の場合を比較して、運転席での粉塵濃度の測定を行った。
【0045】
〈試験例1〉
実際に、清浄空気供給装置1を作業車の運転席頭上に取り付けて、粉塵濃度の差異を測定した。本例の装置を作動させた場合(装置オン)と停止させた場合(装置オフ)を交互に12回繰り返し、各状態での平均粉塵濃度を測定した。
この結果を図6に示す。本例の装置を作動させた場合(装置オン)の平均粉塵濃度は4.25mg/mであったのに対し、停止させた場合(装置オフ)の平均粉塵濃度は7.30mg/mであった。図6で示すように、装置オフの場合に比べ、装置オンの場合の平均粉塵濃度はその65%に減少することが確認され、本例を作動させた場合の有利な効果が確認できた。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について、実施例をあげて説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の清浄空気供給装置は、外気等の開放空間における作業環境の改善の分野に利用できる。また、室内において利用することを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 清浄空気供給装置
3 吸込口カバー
4 吹出口カバー
4a エア吹出面
5 周囲の空気
6 環状の空気流
7 環状空気流、遮断流
8 清浄空気流
9 中心部を流れる空気流
20 開口のない吹出口
21 空気吹出しユニット
22 開口のある吹出口
23 開口のある吹出し口(本例)
30 第1エア吹出ユニット
31 送風ファン
32 フィルターユニット
32a プレフィルター
32b 電気集塵器
33 第1チャンバー
35 吸込口
36 吹出口
40 第2エア吹出ユニット
41 送風ファン
43 第2チャンバー
45 吸込口
45a ガード
46 吹出口
50 作業車
51 作業員
52 路面
53 車輪
54 屋根
54a 屋根のフレーム
55 取付金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6