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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】ハブボルト検査治具
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/02 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
G01B5/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018203740
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020020776
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2018135615
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003021
【氏名又は名称】東洋精器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】阿瀬 正浩
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-47503(JP,U)
【文献】特開昭61-2991(JP,A)
【文献】特許第2962221(JP,B2)
【文献】実開昭61-56505(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 - 5/30
G01B 3/00
G01B 3/11 - 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把手部を備えたゲージ本体によりハブボルトのネジ山の永久伸びの検査を行うハブボルト検査治具であって、
前記ゲージ本体は検査すべきハブボルトのネジ山の規格寸法と一致する波形が連続する凹凸波形部が形成され、
前記凹凸波形部の長さは40~70mmであるとともに前記検査すべきハブボルトのネジ軸部の全長近傍以上の寸法で形成され、
前記凹凸波形部を形成したゲージ本体の幅が、前記検査すべきハブボルトのネジ軸部直径の三分の一以上の厚みで形成され、前記ゲージ本体の幅方向に延びる波形山部の稜線が平らに形成されているハブ ボルト検査治具。
【請求項2】
把手部を備えたゲージ本体によりハブボルトのネジ山の永久伸びの検査を行うハブボルト検査治具であって、
前記ゲージ本体は検査すべきハブボルトのネジ山の規格寸法と一致する波形が連続する凹凸波形部が形成され、
前記凹凸波形部の長さは40~70mmであるとともに前記検査すべきハブボルトのネジ軸部の全長近傍以上の寸法で形成され、
前記凹凸波形部を形成したゲージ本体の幅が、前記検査すべきハブボルトのネジ軸部直径の三分の一以上の厚みで形成され、前記ゲージ本体の幅方向に延びる前記凹凸波形部の稜線並びに谷底線が、前記検査すべきハブボルトのネジ軸部の外周面に沿って凹面状に湾曲して形成されているハブボルト検査治具。
【請求項3】
把手部を備えたゲージ本体によりハブボルトのネジ山の永久伸びの検査を行うハブボルト検査治具であって、
前記ゲージ本体は検査すべきハブボルトのネジ山の規格寸法と一致する波形が連続する凹凸波形部が形成され、
前記凹凸波形部の長さは40~70mmであるとともに前記検査すべきハブボルトのネジ軸部の全長近傍以上の寸法で形成され、
前記凹凸波形部を形成したゲージ本体の幅が、前記検査すべきハブボルトのネジ軸部直径の三分の一以上の厚みで形成され、前記ゲージ本体の幅方向に延びる前記凹凸波形部の稜線並びに谷底線が凸面状に湾曲して形成されているハブ ボルト検査治具。
【請求項4】
前記ゲージ本体を櫛状に形成して下面に前記凹凸波形部を加工し、上方に前記把手部が形成されている請求項1~3のいずれかに記載のハブボルト検査治具。
【請求項5】
前記ゲージ本体が棒杆状で形成され、その長さ方向に沿って前記凹凸波形部が設けられ、前記ゲージ本体の一端部が前記把手部として形成されている請求項1~3のいずれかに記載のハブボルト検査治具。
【請求項6】
前記ゲージ本体が白色の樹脂材で形成される請求項1~のいずれかに記載のハブボルト検査治具
【請求項7】
前記ゲージ本体が透明、または半透明の樹脂材で形成され、前記把持部には前記ゲージ本体に向けて光照射する光源装置が設けられている請求項1~のいずれかに記載のハブボルト検査治具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブボルトの検査治具に関する。特に本発明は、例えば、タイヤの交換やローテーション、パンク修理、ホイールバランス点検などでホイールを取り外したときに、ホイールを固定していたハブボルトのネジ山を検査してハブボルト交換の是非をチェックするための簡易検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボルトを被締結物に対して締め付けて応力(軸力)をかけていくと、降伏点までは応力に比例してボルトが伸び、応力を取り除くと元に戻る。この元に戻るまでの領域を弾性域といい、弾性域の範囲内での締め付けは「弾性域締め付け」と呼ばれている。締め付け応力が降伏点を超えてさらに締め付けていくと急激に伸び率が増大し、応力を取り除いても元に戻らなくなる「永久伸び」が発生する。
【0003】
通常、「弾性域締め付け」では、ボルトの疲労が少なく、反復して使用できるため、トルクレンチなどを用いて軸力が弾性域内に収まるように締め付けている。
【0004】
しかし、トルクレンチの誤設定や、通常レンチでの締め付けにより、あるいは、高い締結力を得るために、弾性域を超えた高い軸力で締め付ける場合がある。このとき、ボルトに「永久伸び」が生じて強度が著しく劣化し、剪断などが発生する危険性がある。したがって、例えば、点検などで自動車のホイールを取り外したときに、ホイールを取り付けていたハブボルトに永久伸びが発生していれば新品に交換する必要がある。しかし、ボルトに永久伸びが生じていたとしても、その伸び量は非常に小さなものであるため目視だけでは判別することができない。
【0005】
一般に、工場で製作された新品のボルトやナットのネジ山の精度を検査するために、雌ネジ検査用のネジプラグゲージ(特許文献1、2参照)や、雄ネジ検査用のネジリングゲージが知られている。ボルトのネジ山検査では、ネジリングゲージを用いてボルトをネジリングゲージに最後まで捻じ込むときの感触により製品の良否を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平02-009805号公報
【文献】特開平07-229702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハブボルトのように経年使用したボルトの永久伸びも、上記のネジリングゲージを用いて検査することが可能である。しかし、ネジリングゲージは超硬合金や合金工具鋼を用いた精密加工製品であって高価であるともに、検査時にボルトをネジリングゲージにセットする操作も面倒である。
例えば、乗用車のハブボルトはタイヤ1つにつき4~6本が使用されており、1台あたりのタイヤ本数が4本であることから、4×4~6×4本、すなわち、16~24本のハブボルトをセットすることが必要になる。
大型トラックであれば、タイヤ1つにつき8~10本が使用されており、1台あたりのタイヤ本数が4~8本である。よって8×4~10×8本、すなわち、32~80本のハブボルトをセットすることが必要になる。
【0008】
なお、金属薄板の一辺にネジ山を加工したネジピッチゲージも知られている。このネジピッチゲージは、ネジ山の精度を検査するものではなく、ネジの規格(種類)を確認するためのものである。日本国内で主に使用されるネジの種類としては、ミリ、ウィット、ユニファイの3規格のものがあり、使用者が手に取ったネジの種類が不明な場合に、各種規格のピッチゲージをネジ山に当ててそのネジ山のピッチに合ったピッチゲージを選び、これに表示されている規格表示を読み取ることによりネジの種類を判別するものである。したがって、微妙なボルトネジ山の伸びをこのピッチゲージで検査することはできない。
【0009】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、経年使用したハブボルトの伸びを簡単に判別することのできるハブボルト検査治具を、簡潔な構成かつ低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち、本発明のハブボルト検査治具は、把手部を備えたゲージ本体によりハブボルトのネジ山の永久伸びの検査を行うハブボルト検査治具であって、前記ゲージ本体は検査すべきハブボルトのネジ山の規格寸法と一致する波形が連続する凹凸波形部が形成され、前記凹凸波形部の長さは40~70mmであるとともに前記検査すべきハブボルトのネジ軸部の全長近傍以上の寸法で形成され、前記凹凸波形部を形成したゲージ本体の幅が、前記検査すべきハブボルトのネジ軸部直径の三分の一以上の厚みで形成され、前記ゲージ本体の幅方向に延びる波形山部の稜線が平らに形成されている構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゲージ本体をハブボルトのネジ軸部に対して平行に沿わせて凹凸波形部をネジ軸部のネジにかみ合わせ、そのかみ合いの状態をみることにより簡単にボルトの伸びを検査することができる。また、ゲージ本体の凹凸波形部の長さが、40~70mmであるとともに検査すべきボルトのネジ軸部の全長近傍以上の寸法で形成されているので、一般的なハブボルトのネジ部の大半部分を一度のかみ合わせ操作で検査することができ、ハブボルトの一部分にだけ永久伸びが生じている場合でも確実に検知することができる。また、構成が簡単であって樹脂成形手段などにより製作できるので、低コストで提供することができる。
ここで、「ハブボルトのネジ軸部の全長近傍以上の寸法」について説明する。通常、ハブボルトはネジ部の最奥部までネジ山全体を使用することは予定されておらず、実際に使用されるネジ山の範囲より少し余裕を持たせて長めにネジ山が形成されている。したがって、必ずしも「ネジ軸部の全長以上の寸法」が必要ではなく、ネジ最奥部の余裕を持たせた長さ分を差し引いた「ネジ軸部の全長近傍以上の寸法」であって、実際に使用される可能性があるネジ軸部の最大範囲以上の長さがあればよい。具体的には余裕分として普通車で5mm程度、トラックで10mm程度短い長さ範囲を全長近傍とすることができる。
【0012】
また、前記凹凸波形部を形成したゲージ本体の幅が、前記検査すべきハブボルトのネジ軸部直径の三分の一以上の厚みで形成され、ゲージ本体の幅方向に延びる波形山部の稜線が平らに形成されているので、検査時に、ゲージ本体の長さ方向に沿ったセンターラインがボルトのネジ軸部の軸心に対してゲージ本体の幅寸法の範囲内で平行にずれても、ゲージ本体の凹凸波形部をボルトのネジ山にかみ合わせることができ、これにより測定領域に余裕ができて測定操作を容易に行うことができる。
なお、検査冶具の持ち運びやすさも考慮すると、ゲージ本体の幅が広すぎると、検査冶具の重量が増加するとともに、作業服のポケット等に収納しにくくなるので、幅の上限についてはボルト径と同程度以下とするのが望ましい。
【0013】
上記発明において、前記ゲージ本体の幅方向に延びる波形山部の稜線が平らに形成されているのに代えて、前記ゲージ本体の幅方向に延びる前記凹凸波形部の稜線並びに谷底線が、検査すべきハブボルトのネジ軸部の外周面に沿って凹面状に湾曲して形成されるようにしてもよい。
こうすることで、ハブボルトのネジ山に対してゲージ本体の凹凸波形部をよりぴったりとフィットさせることができるとともに、ハブボルトのネジ山に合わせた状態でゲージ本体をハブボルトの周方向に少し滑らせる操作をして検査することにより、両者のフィット状態をさらに精度よく判別することができる。
【0014】
上記発明において、前記ゲージ本体の幅方向に延びる波形山部の稜線が平らに形成されているのに代えて、前記ゲージ本体の幅方向に延びる前記凹凸波形部の稜線並びに谷底線を凸面状に湾曲して形成されるようにしてもよい。
これにより、凹凸波形部をハブボルトのネジ山にかみ合わせたときに、凸面状の頂点がハブボルトのネジ軸部周面に点接触で接触することになって、かみ合いの状態が側方から見てわかりやすいといった利点がある。
【0015】
本発明において、前記ゲージ本体を櫛状に形成して下面に前記凹凸波形部を加工し、上方に前記把手部を形成することも可能である。
こうすることで、上方の把手部を持ってゲージ本体の凹凸波形部をハブボルトのネジ山に平行にかみ合わせることにより、かみ合い部全域にわたって平行な姿勢で均等に押し付けることができ、検査をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るハブボルト検査治具の一実施例を示す斜視図。
図2ハブボルト検査治具と検査すべきハブボルトを示す側面図。
図3ハブボルト検査治具と検査すべきハブボルトとの対比を示す正面図。
図4】本発明に係るハブボルト検査治具を用いた検査態様の一例を示す説明図。
図5】ゲージ本体部分の別実施例を示す正面図。
図6】ゲージ本体部分のさらに別の実施例を示す正面図。
図7】本発明に係るハブボルト検査治具の他の実施例を示す斜視図。
図8】本発明にかかるハブボルト検査治具の別の実施例を示す一部断面図。
図9】本発明にかかるハブボルト検査治具の更に別の実施例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るハブボルト検査治具を、図1~4に基づいて詳細に説明する。
【0018】
本発明に係るハブボルト検査治具Aは、一端に把手部3が形成された長尺棒杆状のゲージ本体1を備えている。ゲージ本体1は、断面略四角形の長尺材で形成され、その長さ方向に沿った一面に連続した波形を有するラック状の凹凸波形部2が設けられている。この凹凸波形部2は、検査すべきハブボルトBのネジ軸部4のJIS規格寸法と一致する波形で形成されており、凹凸波形部2の長さL1が、検査すべきハブボルトBのネジ軸部4の長さL2と同じかそれ以上の寸法で形成されている。さらに、凹凸波形部2を形成したゲージ本体1の幅D1が、検査すべきハブボルトBの直径D2の三分の一以上の厚みで形成され、ゲージ本体1の幅方向に延びる波形山部の稜線2aが平らに形成されている。
【0019】
本実施例のハブボルト検査治具Aでは、M22×P1.25で、ネジ軸部4の長さL2が70mmの自動車ホイール取り付け用のハブボルトを検査対象として、次のような寸法で作成した。
すなわち、図2並びに図3に示すように、ゲージ本体1の幅D1が8mm、凹凸波形部2の長さL1が70mmとし、凹凸波形部2の波形がM22×P1.25のハブボルトのネジ山のJIS規格寸法と同じ形状で形成した。
なお、一般的なハブボルトのネジ軸部の長さL2は乗用車用ハブボルトで40~60mm、トラック用ハブボルトで50~70mm程度である。
【0020】
ゲージ本体1は、デルリン樹脂などの合成樹脂材によって形成するのがコスト面で好ましい。特に、デルリン樹脂のような白色の樹脂材を用いた場合、金属色のハブボルトとの色の違いで、かみ合い状態が鮮明に把握できるようになる。ただし、鉄などの金属材によって形成することも可能である。
【0021】
さらに、本実施例では、ゲージ本体1の凹凸波形部2を形成した部分をカバーする着脱自在なケース5と、把手部3に弾性クリップ6とが設けられている。この弾性クリップ6を作業服のポケットや作業帽のツバ部に差し込むことにより、ハブボルト検査治具Aを常時携帯して使用することができる。
【0022】
上記のごとく構成されたハブボルト検査治具Aでは、図2に示すように、ゲージ本体1の凹凸波形部2を検査すべきハブボルトBのネジ軸部4のネジ山に対して平行に添わせて、両者をかみ合わせることにより検査を行う。このときに、ハブボルトBのネジ山に伸びがなく正常であれば両者はぴったりとフィットさせることができるが、ハブボルトBに永久伸びが生じていればフィットさせることができない。これによりハブボルト交換の是非が判断できる。
【0023】
また、ゲージ本体1の凹凸波形部2の長さL1が、検査すべきハブボルトBのネジ軸部4の長さL2、と同じかそれ以上の寸法で形成されているので、ハブボルトBのネジ軸部4の大半部分を一度のかみ合わせ操作で検査することができる。したがって、ハブボルトの一部分に伸びが生じている場合でも確実に検知することができる。
なお、検査すべきハブボルトBのネジ軸部4の長さがL2である場合、通常、ネジ山は最奥部までネジ山全体を使用することは予定されておらず、実際に使用されるネジ山の範囲よりも、少し余裕分の長さa(aは5~10mm程度)を最奥部に含めた状態で長めにネジ山が形成してある。したがって、この点を考慮すれば、凹凸波形部の長さL1はL2-a以上の寸法(すなわちネジ軸部の全長長さL2の近傍以上)であれば問題なく使用できることになる。
【0024】
さらに、凹凸波形部2を形成したゲージ本体1の幅D1が、検査すべきハブボルトBのネジ軸部4の直径D2の三分の一以上の厚みで形成され、かつ、ゲージ本体1の幅D1方向に延びる波形山部の稜線2aが平らに形成されているので、検査時には、図4に示すように、ゲージ本体1の長さ方向に沿ったセンターラインがハブボルトBのネジ軸部4の軸心に対してゲージ本体1の幅D1の範囲内で矢印方向に平行にずれても、ゲージ本体1の凹凸波形部2をハブボルトBのネジ山にかみ合わせることができる。これにより測定領域に余裕ができて測定操作を容易に行うことができる。
【0025】
なお、上記実施例では、ゲージ本体1の幅D1の方向に延びる波形山部の稜線2aを平らに形成した例を示したが、これに代えて、図5に示すように波形山部の稜線2a並びに谷部の谷底線2bを、検査すべきハブボルトBの外周面に合わせて凹面状に湾曲して形成してもよい。
こうすることで、ハブボルトBのネジ山に対してゲージ本体1の凹凸波形部2をよりぴったりとフィットさせることができるとともに、ハブボルトBのネジ山に合わせた状態でゲージ本体1をハブボルトBの周方向に少し滑らせる操作をして検査することにより、両者のフィット状態をさらに精度よく判別することができる。
【0026】
また、本発明では、ゲージ本体1の幅D1の方向に延びる波形山部の稜線2a並びに谷部の谷底線2bを、図6に示すように凸面状に湾曲して形成してもよい。
こうすることで、凹凸波形部2をハブボルトBのネジ山にかみ合わせたときに、稜線2a並びに谷底線2bの凸面状の頂点がハブボルトBのネジ軸部4周面に点接触で接触することになって、かみ合いの状態を側面から見やすくなるといった利点がある。この場合は、ゲージ本体1の断面形状を略四角形に代えて、断面が円形(すなわち円柱棒杆状のゲージ本体)としてもよい。
【0027】
また、上記実施例では、ゲージ本体1を長尺の棒杆状で形成したが、これに代えて、図7に示すようにゲージ本体1’を和櫛状に形成して下面に凹凸波形部2を加工し、上方中央部分を把手部3’として形成することも可能である。
こうすることで、中央の把手部3’を持ってゲージ本体1’の凹凸波形部2をハブボルトBのネジ山にかみ合わせることにより、かみ合い部全域にわたって平行な姿勢で均等に押し付けることができ、検査をより確実に行うことができる。
【0028】
図8は本発明にかかる検査治具の別の実施例を示すものである。この実施例では、図1で示した検査治具に照明機能を付与したものであって、ゲージ本体1がアクリル等の光透過性に優れた透明な合成樹脂材あるいは半透明な合成樹脂材で形成されている。把手部3の内部には内側空間が形成され、ケージ本体1に向かって光を照射する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)7、並びに電源となる乾電池8が配置されており、電源をON/OFF操作するスイッチ9が把手部3の外部に露出して形成され、これらによる光源装置が設けられている。なお、把手部3に嵌まり込んだゲージ本体1の端面は発光ダイオード7の光をできるだけ多く取り込めるように凹面状に窪んで形成するのがよい。
このような構成により、ネジ部2が発光ダイオード7によって明るく照らされるので、薄暗い現場であってもハブボルトのネジ山に対するかみ合いを明確に確認することができる。
なお、ゲージ本体の1のネジ部2の反対側の面(図8の上面側)に、反射面をネジ部2に向けた反射膜を貼り付けて形成するのが好ましい。これによりネジ部への光量を多く確保することができる。また、ゲージ本体1のネジ部2の表面に微細な傷がつくように研磨して発光光が乱反射するようにして照らすこともできる。この場合はゲージ本体の断面を円筒状にしても全周を明るく照らすことができる。
【0029】
図9図7で示した和櫛状ゲージ本体1’に上記同様の照明機能を付与させた実施例を示すものであって、透明な合成樹脂材で形成されたゲージ本体1’の把手部3’の内部に、光を照射する発光ダイオード7及び電源となる乾電池8が配置されており、電源をON/OFF操作するスイッチ9が把手部3’の外部に露出して形成されている。これにより、図8の実施例と同様の効果を期待することができる。
なお、この場合もゲージ本体の1’のネジ部2の反対側の面(図9の上面側)に、反射面をネジ部2に向けた反射膜を貼り付けて形成するのが好ましい。
【0030】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではない。例えば、図1の実施例において、ゲージ本体1の凹凸波形部2を設けた面とは反対側の面に別の規格の凹凸波形部を設けて形成することも可能である。
また、上記実施例では、ゲージ本体1の凹凸波形部2を形成した部分をカバーする着脱自在なケース5を設けるようにしたが、これを省略することもできる。
また、図8図9の照明機能を付与した実施例では、光源に発光ダイオードを用いているが、これに代えて、搭載することが可能である小型の光源装置であれば特に限定されない。
その他本発明では、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のハブボルト検査治具は、タイヤの交換やローテーション、パンク修理、ホイールバランス点検などでホイールを取り外したとき、ホイールを固定していたハブボルトのネジ山を検査してハブボルト交換の是非をチェックするための簡易検査治具として利用される。
【符号の説明】
【0032】
ハブボルト検査治具
B 検査すべきハブボルト
D1 ゲージ本体の幅
D2 ネジ軸部の直径
L1 凹凸波形部の長さ
L2 ネジ軸部の長さ
1、1’ ゲージ本体
2 凹凸波形部
2a 波形山部の稜線
2b 波形谷部の谷底線
3、3’ 把手部
4 ネジ軸部
5 ケース
6 弾性クリップ
7 発光ダイオード
8 電源
9 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9