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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】貯水利用設備
(51)【国際特許分類】
   E01H 5/10 20060101AFI20221019BHJP
   E03B 11/14 20060101ALI20221019BHJP
   E01C 11/26 20060101ALI20221019BHJP
   F28D 21/00 20060101ALI20221019BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
E01H5/10 C
E03B11/14
E01H5/10 B
E01C11/26 B
F28D21/00 Z
F28D1/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018219335
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020084543
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】500575972
【氏名又は名称】株式会社リビエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 喜代美
(72)【発明者】
【氏名】今 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】今 祐治郎
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-054560(JP,A)
【文献】特開2007-024342(JP,A)
【文献】特開平08-184005(JP,A)
【文献】特開2000-179276(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194187(JP,U)
【文献】特開2015-025612(JP,A)
【文献】特開昭61-207754(JP,A)
【文献】特開平05-247908(JP,A)
【文献】特開2011-038376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 5/10
E03B 11/14
E01C 11/26
F28D 21/00
F28D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋め込まれる貯水槽と、前記貯水槽の外壁を貫通する伝熱管とを備え、前記貯水槽に貯溜する水を汲み上げて利用するようにした貯水利用設備において、
前記伝熱管は、一端側に前記貯水槽内に連通する槽内側通水部を有するとともに、前記貯水槽外に延設された他端側に、地中に対し密閉された地熱吸収管部を有し、
前記伝熱管内の水を強制的に攪拌させる攪拌装置を具備したことを特徴とする貯水利用設備。
【請求項2】
地中に埋め込まれる貯水槽と、前記貯水槽の外壁を貫通する伝熱管とを備え、前記貯水槽に貯溜する水を汲み上げて利用するようにした貯水利用設備において、
前記伝熱管は、一端側に前記貯水槽内に連通する槽内側通水部を有するとともに、前記貯水槽外に延設された他端側に、地中に対し密閉された地熱吸収管部を有し、
貯水槽外の水を貯水槽内へ導く還管が設けられ、前記還管の出口を、前記伝熱管内に配置したことを特徴とする貯水利用設備。
【請求項3】
地中に埋め込まれる貯水槽と、前記貯水槽の外壁を貫通する伝熱管とを備え、前記貯水槽に貯溜する水を汲み上げて利用するようにした貯水利用設備において、
前記伝熱管は、一端側に前記貯水槽内に連通する槽内側通水部を有するとともに、前記貯水槽外に延設された他端側に、地中に対し密閉された地熱吸収管部を有し、
前記貯水槽から汲み上げる水を太陽熱吸熱管に流通させ前記貯水槽へ戻す補助吸熱設備を備えたことを特徴とする貯水利用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水槽の水を地下水等の地熱により温度調整して、例えば融雪や冷凍空調設備等に利用できるようにした貯水利用設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、消雪を行う場合、道路や駐車場に降雪する雪を積もらせた後では、路面や路盤に冷温が蓄積されるため、その消雪のためのエネルギーが多くなってしまう。そこで、雪が積もる前に、ロードヒーティング装置により路面を昇温したり、路面に融雪のための散水が行われたりする。
また、電気ヒータを用いたロードヒーティング装置では、道路や路盤の温度を上げて間接的に雪を溶かすようにしているため、樹幹状に配設される熱源媒体の温度が15°C以上必要であり、電気消費量が大きくなってしまう。
これに対し、水を積雪に直接散水して溶かす場合には、水温は3~4°C程度で充分である。但し、その水源に、地下水や、湖水・河川水・海水を、そのまま利用するには、法的制限等で実施が困難である。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載される発明では、地下に埋設された貯水槽に融雪水や雨水を貯溜し、この水を、地下水等の地熱により温度調整して利用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-38376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、二槽式の貯水槽を用いるため構造が複雑になる上、地熱を金属製の集熱材に熱伝導させるようにしており、その集熱効果及び伝熱効果に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
第1に、地中に埋め込まれる貯水槽と、前記貯水槽の外壁を貫通する伝熱管とを備え、前記貯水槽に貯溜する水を汲み上げて利用するようにした貯水利用設備において、前記伝熱管は、一端側に前記貯水槽内に連通する槽内側通水部を有するとともに、前記貯水槽外に延設された他端側に、地中に対し密閉された地熱吸収管部を有し、前記伝熱管内の水を強制的に攪拌させる攪拌装置を具備したことを特徴とする貯水利用設備とした。
第2に、地中に埋め込まれる貯水槽と、前記貯水槽の外壁を貫通する伝熱管とを備え、前記貯水槽に貯溜する水を汲み上げて利用するようにした貯水利用設備において、前記伝熱管は、一端側に前記貯水槽内に連通する槽内側通水部を有するとともに、前記貯水槽外に延設された他端側に、地中に対し密閉された地熱吸収管部を有し、貯水槽外の水を貯水槽内へ導く還管が設けられ、前記還管の出口を、前記伝熱管内に配置したことを特徴とする貯水利用設備とした。
第3に、地中に埋め込まれる貯水槽と、前記貯水槽の外壁を貫通する伝熱管とを備え、前記貯水槽に貯溜する水を汲み上げて利用するようにした貯水利用設備において、前記伝熱管は、一端側に前記貯水槽内に連通する槽内側通水部を有するとともに、前記貯水槽外に延設された他端側に、地中に対し密閉された地熱吸収管部を有し、前記貯水槽から汲み上げる水を太陽熱吸熱管に流通させ前記貯水槽へ戻す補助吸熱設備を備えたことを特徴とする貯水利用設備とした。

【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、簡素な構造でもって貯水槽内に貯溜した水を効率的に温度調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る貯水利用設備の第一の実施態様について、概略構造を示す縦断面図である。
図2】本発明に係る貯水利用設備の第二の実施態様について、概略構造を示す断面斜視である。
図3】本発明に係る貯水利用設備の第三の実施態様について、概略構造を示す縦断面図である。
図4図3の貯水利用設備を左方側から視た図であり、要部を縦断面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、地中に埋め込まれる貯水槽と、前記貯水槽の外壁を貫通する伝熱管とを備え、前記貯水槽に貯溜する水を汲み上げて利用するようにした貯水利用設備において、前記伝熱管は、一端側に前記貯水槽内に連通する槽内側通水部を有するとともに、前記貯水槽外に延設された他端側に、地中に対し密閉された地熱吸収管部を有する(図1参照)。
ここで、前記「外壁」には、前記貯水槽の側方側に位置する側壁部や、前記貯水槽の底側に位置する底壁部等を含む。
上記構成によれば、伝熱管内には、槽内側通水部を介して貯水槽内の水が流れ込む。この状態で、地熱吸収管部に地中の熱が伝達すると、その熱は管壁を介して地熱吸収管部の内部の水に伝達する。そして、水は、温度差に起因する対流現象等により、伝熱管内から貯水槽内にわたる範囲を流動する。よって、貯水槽内の水が、貯水槽外の地下水等による地熱によって温度調整される。
【0010】
第2の特徴として、地熱を効果的に吸収するために、前記伝熱管は、前記貯水槽の底壁部を貫通して鉛直状に設けられている(図1図3参照)。
【0011】
第3の特徴として、地熱吸収効率及び施工性を向上するために、前記地熱吸収管部の外周部には、らせん状にネジ部が設けられている(図2参照)。
【0012】
第4の特徴は、地上水を効果的に集水するために、地表の水を流し込む第一の集水槽と、第一の集水槽と仕切られて並設された第二の集水槽と、第一の集水槽内の上層水を第二の集水槽内へ導く通水路とを備え、第二の集水槽内の水を前記貯水槽内へ導くようにした(図2及び図3参照)。
【0013】
第5の特徴は、貯溜水の温度をムラなく均一にするために、前記伝熱管内の水を強制的に攪拌させる攪拌装置を具備した(図1参照)。
【0014】
第6の特徴は、伝熱管内の対流を促進するために、貯水槽外の水を貯水槽内へ導く還管が設けられ、前記還管の出口を、前記伝熱管内に配置した(図3及び図4参照)。
【0015】
第7の特徴は、補助的に貯溜水に熱を伝達するために、前記貯水槽から汲み上げる水を太陽熱吸熱管に流通させ前記貯水槽へ戻す補助吸熱設備を備えた(図3及び図4参照)。
【0016】
<第一の実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
この貯水利用設備1は、貯水槽10と、貯水槽10の底壁部11及び側壁部12を貫通する複数の第一の伝熱管20及び第二の伝熱管30とを備え、帯水層A1,A2を有する地中に埋め込まれて、貯水槽10内に貯溜する水を汲み上げ、融雪や冷凍空調等に利用される。
【0017】
貯水槽10は、上方を開口した直方体箱状の槽本体10aと、この槽本体10aの開口を塞ぐ蓋部10bとを有する。
【0018】
槽本体10aは、平面視矩形状の底壁部11と、この底壁部11の四隅側から上方へ立ち上がった側壁部12とから一体に構成され、底壁部11に複数の第一の伝熱管20を貫通し、側壁部12には第二の伝熱管30を貫通している。
そして、この槽本体10aは、図1に例示するように、伏流水が浸透した比較的浅い帯水層A1に側壁部12及び第二の伝熱管30を接触させ、地下水が浸透した比較的深い帯水層A2に第一の伝熱管20を接触させて、地中に埋め込まれる。
【0019】
貯水槽10には、例えば蓋部10bを貫通するようにして、雨水及び融雪水等を補給する補水管10cや、図示しないポンプにより汲み上げた水を利用機器へ移送する往管10d、利用機器側で熱交換した水を槽本体10a内へ戻す還管10e、槽本体10a内でオーバーフローした水を外部へ排水する排水管(図示せず)等が、蓋部10b又は側壁部12を貫通するようにして配設される。
【0020】
第一の伝熱管20は、一端側に槽本体10a内に連通する槽内側通水部21を有するとともに、槽本体10a外に延設された他端側に地熱吸収管部22を有する。この第一の伝熱管20は、図示例によれば貯水槽10の底壁部11を貫通する鉛直状に設けられ、水平方向へ間隔を置いて複数配設される。
各第一の伝熱管20は、上端側で開口した槽内側通水部21を槽本体10a内の水中に配置し、下端側の地熱吸収管部22を帯水層A2内に配置している。
この第一の伝熱管20は、熱伝導率の比較的高い金属材料によって形成される。
【0021】
地熱吸収管部22は、底壁部11よりも下方へ延設され、地中に対し密閉されるように、厚み方向の貫通部(孔やスリット等)のない有底筒状に形成される。この地熱吸収管部22の外周面は、帯水層A2の地下水に接する。
【0022】
また、本実施の形態の好ましい一例によれば、第一の伝熱管20内には、該伝熱管内の水を強制的に流動させる攪拌装置23が設けられる。
すなわち、第一の伝熱管20内の水は、上下の温度差等により自然対流するが、この対流を促進するようにて、攪拌装置23が設けられる。
【0023】
攪拌装置23の好ましい一例としては、気泡ポンプを用いればよい。この気泡ポンプは、図示しないエアーポンプ及び配管等により供給されるエアーを、地熱吸収管部22内の底部側で噴出し、地熱吸収管部22内の水中に多数の気泡を発生されせる。したがって、地熱吸収管部22内の底側の水は、気泡の浮力によって上方へ移送され、地熱吸収管部22と槽本体10aにわたって水の対流が発生する。この対流によって、地熱吸収管部22及び槽本体10a内の水が攪拌される。
【0024】
攪拌装置23の他例としては、一方側から吸い込んだ水を他方側へ吐出する軸流式の水中ポンプや、貯水槽10内又は貯水槽10外の水を地熱吸収管部22内へ勢いよく噴出するようにした装置、水中で羽を回転させるようにした装置等、適宜構造のものを用いることが可能である。
【0025】
また、第二の伝熱管30は、貯水槽10全体を略水平方向へ貫通する連続管状に形成され、その一端側と他端側にそれぞれ地中側通水部31を有するとともに、これら一端側と他端側の地中側通水部31の間を槽内側放熱管部32にしている。
この第二の伝熱管30は、図示例によれば、上下方向に間隔を置いて複数設けられ、必要に応じて、水平方向(図1の奥行方向)にも複数設けられる。
この第二の伝熱管30は、熱伝導率の比較的高い金属材料によって形成される。
【0026】
各地中側通水部31は、貯水槽10の側壁部12から突出して、地中の帯水層A1内に延設される。この地中側通水部31の端部および/または周壁部には、帯水層A1の地下水(伏流水)を通過可能な開口が設けられ、この開口には、礫(小石)等の侵入を阻みながら地下水を流通するように、例えば、スリットや小孔、繊維状物等からなるストレーナ(図示せず)が設けられる。
【0027】
槽内側放熱管部32は、槽本体10aの側壁部12,12間にわたる略水平状に延設され、周壁を貫通部のない筒状に形成している。この槽内側放熱管部32の外周面は、貯水槽10内の貯溜水に接する。
【0028】
次に、上記構成の貯水利用設備1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
貯水槽10内には、補水管10cによって、例えば雨水や融雪水等の外部の水が供給される。この水は、複数の第二の伝熱管30及び第一の伝熱管20を水没させるように、貯水槽10内に貯溜される。そして、この貯溜水は、往管10d及び還管10e等によって利用側設備を循環する。また、貯水槽10内でオーバーフローした水は、図示しない排水管により外部へ排出される。
【0029】
第一の伝熱管20は、地熱吸収管部22の外面を帯水層A2に接触させて、帯水層A2の地下水熱を吸収する。そして、この熱は、第一の伝熱管20内の水に伝達する。第一の伝熱管20内の水には、上下の温度差および攪拌装置23等の作用によって対流が生じ、この対流により、槽本体10a内から第一の伝熱管20内への水の流れ、および第一の伝熱管20内から槽本体10a内への水の流れが形成される。
【0030】
一方、第二の伝熱管30は、槽内側放熱管部32を貯水槽10内の水に接触させるとともに、両側の地中側通水部31をそれぞれ帯水層A1に接触させる。
地中側通水部31には、図示しないストレーナを介して地下水が侵入し、この水は槽内側放熱管部32内へ達する。そして、この水の熱は、槽内側放熱管部32の管壁を介して貯水槽10内の貯溜水に伝達される。
【0031】
よって、貯水槽10内の貯溜水と帯水層A1,A2の地下水の間の熱交換と、貯溜水の対流及び攪拌により、貯水槽10内の水をムラなく略均一な温度に調整することができる。そして、貯水槽10内の安定した温度の貯溜水を、地上の利用側設備に供給することができる。
しかも、貯水槽10内の貯溜水は、地下水に対し密閉されているため、この貯溜水に、地下水成分(例えば、鉄やマンガン等)が混入するのを防ぐことができ、ひいては、地下水成分によって各機器に目詰まりや故障を生じるのを防ぐことができる。
【0032】
<第二の実施態様>
次に、本発明に係る他の実施態様について説明する。なお、以下に説明する実施態様において、上記貯水利用設備1と略同様に作用する部分は、同一の符号を付けて重複する詳細説明を省略する。
【0033】
図2に示す貯水利用設備2は、上記貯水利用設備1に対し、第一の伝熱管20を第一の伝熱管40に置換し、第二の伝熱管30を省き、地上に利用側設備50を構成したものである。
【0034】
第一の伝熱管40は、熱伝導率の比較的高い金属材料によって鉛直方向へわたる長尺管状に形成され、水平方向に間隔を置いて複数設けられる。
各第一の伝熱管40は、底壁部11に貫通しており、底壁部11よりも上側に槽本体10a内に連通する槽内側通水部41を有するとともに、同底壁部11よりも下側に地熱吸収管部42を有する。
【0035】
第一の伝熱管40における底壁部11よりも上側の部分は、地表に至るまで筒状に延設され、その上端の開口部が、着脱可能な円盤状の蓋部材43により閉鎖されている。
槽内側通水部41は、貯水槽10内で水没する高さ位置にあり、第一の伝熱管40周壁を貫通するスリット状に形成される。この槽内側通水部41の他例としては、多数の孔や、その他の形状の貫通部とすることが可能である。
【0036】
地熱吸収管部42は、地中に対し密閉されるように、壁部に厚み方向の貫通部のない略有底筒状に形成され、少なくともその一部分を帯水層A2内に配置している。
この地熱吸収管部42の外周部には、らせん雄ネジ状にネジ部42aが設けられている。このネジ部42aは、第一の伝熱管40の下端側を、貯水槽10の底壁部11に挿通して地中にドリル状に回転させながら埋設するのに用いられる。さらに、このネジ部42aは、地熱吸収管部42の外表面の面積を広く確保して、熱伝達効率を向上する。
【0037】
利用側設備50は、貯水槽10から汲み上げた水を降雪や積雪に散水して、雪を溶かす融雪設備を構成している。
この利用側設備50は、貯水槽10の貯水を汲み上げるポンプ51a及び往管51bと、往管51bから分岐された配管の下流側に接続された複数の散水装置52aと、雪の降雪状態を感知する降雪センサー52bと、降雪センサー52bの感知信号に応じてポンプ51aを制御する制御盤52cと、地表の水を流し込む第一の集水槽53aと、第一の集水槽53aと仕切られて設けられた第二の集水槽53bと、第一の集水槽53a内の上層水を第二の集水槽53b内へ導く通水路53cと、第二の集水槽53b内の水を貯水槽10内へ導く還管54と、貯水槽10内でオーバーフローする水を排水する排水管55a及び排水槽55bとを具備する。
【0038】
ポンプ51aは、貯水槽10内に水没するようにした水中ポンプである。
往管51bは、ポンプ51aの吐出口から上方へ延設され、貯水槽10外側の地表近傍で多方向へ分岐される。これら分岐された配管には、それぞれ散水装置52aが接続される。
【0039】
散水装置52aには、例えば周知のスプリンクラーを用いることができる。
降雪センサー52bは、赤外線により降雪を検知して、その検知信号を出力するように構成される。この降雪センサーの他例として水分検知式のものや、その他の方式のものを用いることも可能である。
制御盤52cは、降雪センサー52bの検知信号に応じて、ポンプ51aをON/OFF制御する。すなわち、降雪センサー52bによって降雪が感知されると、制御盤52cがポンプ51aを駆動し、ポンプ51aによって汲み上げられた水が複数の散水装置52aから吐出する。
【0040】
第一の集水槽53aは、傾斜面によって流れる水の下流側に位置するように配置され、図示例によれば、道路面の幅方向の両側にそれぞれ溝状に設けられる。
第二の集水槽53bは、第一の集水槽53aに並設された溝である(図2参照)。
【0041】
これら第一の集水槽53aと第二の集水槽53bの間には、第一の集水槽53a側の上層水を第二の集水槽53bに流すように通水路53cが設けられる。
そして、第二の集水槽53bには、還管54の吸込口が接続される。この還管54は、第二の集水槽53bから第一の伝熱管40へ向かって下り傾斜状に設けられる。還管54の下流側部分は、第一の伝熱管40内に挿通され、その下端側の出口54aを地熱吸収管部42内に配置している。
【0042】
排水管55aは、その吸入口を貯水槽10内に配置するとともに、貯水槽10の側壁部12を貫通して貯水槽10外へ下り傾斜状に延設され、その下流側の吐出口が排水槽55b内に位置する。排水槽55bは、図示例によれば溝状に形成され、貯溜する排水を図示しない排水設備へ流す。
【0043】
次に、上記構成の貯水利用設備2について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
降雪が降雪センサー52bによって感知されると、制御盤52cからの指令によりポンプ51aが駆動し、貯水槽10内の水が汲み上げられて往管51bを流れる。そして、この水は、往管51bから分岐された配管の下流側で、それぞれ、散水装置52aによって路面等に散水され、雪を溶かす。
【0044】
前記散水による残水や、融雪水等は、路面の傾斜を流れて第一の集水槽53aへ侵入する。第一の集水槽53a内では、泥や異物等が底部に溜まり、その上層の水が、通水路53cによって隣接する第二の集水槽53bへ流される。
そして、第二の集水槽53bの水は、還管54によって第一の伝熱管40内へ導かれ、第一の伝熱管40下端側の地熱吸収管部42内にて、出口54aから噴出する。
【0045】
したがって、還管54の出口54aからの噴出水に押されるようにして、第一の伝熱管40内の水が移動し、第一の伝熱管40及び貯水槽10内の貯水が攪拌される。
【0046】
一方、地熱吸収管部42の外面及びネジ部42aには、帯水層A2の熱が伝達し、この熱は、さらに地熱吸収管部42内の水へ伝達する
また、帯水層A1の熱は、貯水槽10の側壁部12を介して、貯水槽10内の貯溜水に伝達する。
【0047】
よって、貯水槽10内の貯溜水と帯水層A1,A2の地下水との間での熱交換や、第一の伝熱管40及び貯水槽10内の水の対流及び攪拌により、貯溜水をムラなく略均一な温度に調整することができる。
そして、安定した温度(例えば、3~4°C程度)の貯溜水を、地上の利用側設備50を介して路面に散布し、路面の積雪や降雪を効果的に融かすことができる。
【0048】
<第三の実施態様>
図3及び図4に示す貯水利用設備3は、底壁部11に第一の伝熱管20’を有する貯水槽10’と、この貯水槽10’から汲み上げられる水を、太陽熱吸収管61に流通させて貯水槽10’へ戻す補助吸熱設備60(太陽熱吸熱設備)とを備える。
【0049】
貯水槽10’は、上記貯水槽10の槽本体10aを槽本体10a’に置換したものである。
槽本体10a’は、下部側が地中に埋め込まれ、上部側が地上に露出した建屋状に構成される。この槽本体10a’の上端部は、傾斜状に形成され、補助吸熱設備60が装着される。
【0050】
槽本体10a’内には、ポンプ51aが設けられ、このポンプ51aの吐出口には、往管51bが接続される。往管51bの下流側は、槽本体10a’外に延設され、複数に分岐されるとともにその分岐された配管の下流側にそれぞれ散水装置52aが接続される。
ポンプ51a及び散水装置52aは、上記貯水利用設備2と略同様に外部の降雪センサー及び制御盤等(図示せず)により制御され、降雪状態に応じて散水を行う。
【0051】
また、槽本体10a’には、貯溜水の水面よりも下側に吐出口56cを配置するようにして還管56aが挿通されている。この還管56の上流側は、第二の集水槽53b内の水を汲み上げるように構成される。
すなわち、槽本体10a’の外部には、上記貯水利用設備2と略同様にして、第一の集水槽53a、第二の集水槽53bおよび通水路53cが設けられる。そして、第二の集水槽53b内にはポンプ56bが設けられ、このポンプ56bの吐出口が還管56aの入口に接続されている。
【0052】
第一の伝熱管20’は、上記第一の伝熱管20(図1参照)から気泡ポンプとしての攪拌装置23を省いたものであり、貯水槽10’の底壁部11に、間隔を置いて複数設けられる。
【0053】
また、補助吸熱設備60は、槽本体10a’の上端部に傾斜屋根状に設けられる。この補助吸熱設備60は、蛇行状の太陽熱吸収管61を、太陽光に晒すように蛇行状に配設している。
【0054】
太陽熱吸収管61の吸入部には、貯水槽10’内のポンプ63により汲み上げられた水を導入するように往管62が接続される(図4参照)。ポンプ63は、貯水槽10’内の貯溜水の温度に応じて適宜に制御される。
すなわち、貯溜水の温度が、予め設定された閾値よりも低い場合には、ポンプ63がONにされ、補助吸熱設備60による温水が貯水槽10’内へ供給される。また、貯溜水の温度が、前記閾値以上の場合は、ポンプ63がOFFにされて、温水の供給が停止する。
【0055】
また、太陽熱吸収管61の吐出口には、還管54(図3参照)が接続される。この還管54は、上記貯水利用設備2(図2参照)と略同様に第一の伝熱管20’内へ導かれ、その出口54aを地熱吸収管部22内に配置している。
【0056】
なお、図3中、符号53dは、第二の集水槽53b内でオーバーフローする水を外部へ排水する排水管、符号57は、貯水槽10’内でオーバーフローする水を外部へ排水する排水管である。
【0057】
よって、上記構成の貯水利用設備3によれば、上記貯水利用設備1,2と略同様にして、貯水槽10’内の貯溜水と、帯水層A1の地下水との熱交換を行い、これによって貯水槽10’内の貯溜水を好適な温度に維持することができる。
しかも、外気温が低すぎて、貯水槽10’内の水温が上昇し難い場合等には、ポンプ51aを運転し、補助吸熱設備60を介して太陽熱により暖められた水を、貯水槽10’内へ供給することができる。
また、貯水槽10’内の水は、補助吸熱設備60から第一の伝熱管20’内へわたる還管54の噴出流や、第二の集水槽53bから槽本体10a’内へわたる還管56aの噴出流等により攪拌され、ムラの少ない略均一な水温に保持される。
【0058】
なお、上記実施の形態によれば、貯水利用設備1,2,3を融雪設備としたが、本発明に係る貯水利用設備は、貯水槽の水を汲み上げて利用する他の設備や装置とすることが可能であり、例えば、貯水槽の水を汲み上げて冷凍空調設備(エアコンや、チラー、コールドチェーン機器等を含む)の冷却水として利用することも可能である。
【0059】
本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
1,2,3:貯水利用設備
10:貯水槽
10a:槽本体
10d,51b,62:往管
10e,54,56a:還管
11:底壁部
12:側壁部
20,40:第一の伝熱管
21,41:槽内側通水部
22,42:地熱吸収管部
23:攪拌装置
30:第二の伝熱管
31:地中側通水部
32:槽内側放熱管部
42a:ネジ部
50:利用側設備
52a:散水装置
53a:第一の集水槽
53b:第二の集水槽
53c:通水路
60:補助吸熱設備(太陽熱吸収設備)
61:太陽熱吸収管
A1:帯水層
A2:帯水層
図1
図2
図3
図4