(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】遠心分離装置
(51)【国際特許分類】
B04B 1/02 20060101AFI20221019BHJP
B04B 11/04 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B04B1/02
B04B11/04
(21)【出願番号】P 2019050994
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391041350
【氏名又は名称】株式会社松本機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 孝
(72)【発明者】
【氏名】阪口 健作
(72)【発明者】
【氏名】新田 純也
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-001663(JP,A)
【文献】特公昭45-19115(JP,B1)
【文献】特公昭39-018684(JP,B1)
【文献】特開2002-177821(JP,A)
【文献】特表2006-520261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部を有し、軸線方向の一端が底壁部で閉じられ、軸線方向の他端側に開口部が設けられたバスケットを回転させて、該バスケット内に供給した原液を遠心沈降作用により液分とケーキ分とに分離する固液分離処理を行う遠心分離装置であって、
一面及び他面をそれぞれ前記バスケットの底壁部側及び該底壁部と反対側に向けた状態で前記バスケットとともに回転するように設けられるとともに、前記一面が前記バスケット内で前記バスケットの底壁部に隙間を介して対向した状態になる位置に設定された後退位置と、前記バスケットの開口部又は該開口部の前方に設定された前進位置との間を前記バスケットの軸線方向に沿って変位し得るように設けられたケーキ押出板と、
前記ケーキ押出板が前記後退位置にあるときに前記バスケットの開口部を気密に閉じ、前記ケーキ押出板が前記前進位置に向けて変位していく過程で前記バスケットの開口部を開く蓋板と、
一部が前記ケーキ押出板を貫通した状態で前記ケーキ押出板に取り付けられて、前記ケーキ押出板の前記他面側から前記ケーキ押出板を貫通して前記ケーキ押出板の一面側に液を流す流路を内部に有する排液装置と、
前記ケーキ押出板の一面と前記バスケットの底壁部との間の隙間内に臨む位置で前記バスケットを貫通した排液孔と、
を具備し、
前記ケーキ押出板を前記後退位置に位置させて前記蓋板により前記バスケットの開口部を閉じた状態で前記バスケット内の圧力を外気圧よりも高い設定圧力以上の圧力とすることにより前記バスケット内に存在する上澄み液を前記排液装置内の流路と前記排液孔とを通して前記バスケットの外部に排出し、前記ケーキ押出板を前記後退位置から前進位置に向けて変位させて前記バスケット内のケーキを前記バスケットから押し出すことにより前記バスケット内のケーキを外部に排出するように構成された遠心分離装置。
【請求項2】
周壁部を有し、軸線方向の一端が底壁部で閉じられ、軸線方向の他端側に開口部が設けられたバスケットを回転させて、該バスケット内に供給した原液を遠心沈降作用により液分とケーキ分とに分離する固液分離処理を行う遠心分離装置であって、
一面及び他面をそれぞれ前記バスケットの底壁部側及び該底壁部と反対側に向けた状態で前記バスケットとともに回転するように設けられるとともに、前記一面が前記バスケット内で前記バスケットの底壁部に隙間を介して対向した状態になる位置に設定された後退位置と、前記バスケットの開口部の前方に設定された前進位置との間を前記バスケットの軸線方向に沿って変位し得るように設けられたケーキ押出板と、
前記ケーキ押出板が前記後退位置にあるときに前記バスケットの開口部を気密に閉じ、前記ケーキ押出板が前記前進位置に向けて変位していく過程で前記バスケットの開口部を開く蓋板と、
柔軟性を有する材料により筒状に形成されて前記バスケットの開口部に一端が固定されるとともに、他端が前記ケーキ押出板の外周部に固定されて、前記ケーキ押出板が前記後退位置にあるときに前記バスケットの周壁部の内周を覆った状態で配置され、前記ケーキ押出板が前記後退位置から前記前進位置に向けて変位する過程で反転させられる可撓スリーブと、
一部が前記ケーキ押出板を貫通した状態で前記ケーキ押出板に取り付けられて、前記ケーキ押出板の前記他面側から前記ケーキ押出板を貫通して前記ケーキ押出板の一面側に液を流す流路を内部に有する排液装置と、
前記ケーキ押出板の一面と前記バスケットの底壁部との間に形成された隙間内に臨む位置で前記バスケットを貫通した排液孔と、
を具備し、
前記ケーキ押出板を前記後退位置に位置させて前記蓋板により前記バスケットの開口部を閉じた状態で前記バスケット内の圧力を外気圧よりも高い設定圧力以上の圧力とすることにより前記バスケット内に存在する上澄み液を前記排液装置内の流路と前記排液孔とを通して前記バスケットの外部に排出し、前記ケーキ押出板を前記後退位置から前進位置に向けて変位させて前記ケーキ押出板により前記バスケット内のケーキを押し出しながら前記可撓スリーブを反転させることにより前記バスケット内のケーキを前記バスケットの外部に排出するように構成された遠心分離装置。
【請求項3】
前記排液装置は、前記バスケットの回転中心軸線から偏心した位置で該ケーキ押出板を前記バスケットの軸線方向に沿って貫通した部分を有して前記ケーキ押出板の他面側から前記ケーキ押出板を貫通して前記ケーキ押出板の一面側に液を流す流路を内部に有する押出板貫通部と、前記ケーキ押出板の他面側に配置された前記押出板貫通部の一端に後端部が接続されるとともに、先端部が前記バスケットの周壁部に向けられた状態で設けられて、先端が前記バスケットの周壁部側に開口し後端が前記押出板貫通部内の流路に連通した流路を内部に有する液分導入部とを備え、
前記ケーキ押出板の前記一面側に配置された前記押出板貫通部の他端側には該押出板貫通部内の流路を前記ケーキ押出板と前記バスケットの底壁部との間の隙間内に開口させる開口部が設けられ、
前記排液装置の前記液分導入部は、前記バスケットの回転に伴って生じる遠心力により前記バスケットの外径側に変位させられる可動部と、前記可動部を前記バスケットの内径側に付勢する付勢手段とを備え、
前記バスケット内の気圧が前記設定圧力以下のときに前記バスケット内の液が前記排液装置内の流路を通して前記隙間内に流出するのを阻止し、前記バスケット内の気圧が前記設定圧力を超えているときに前記バスケット内の液が前記排液装置内の流路を通して前記隙間内に流出するのを許容するチェックバルブが前記排液装置に設けられている請求項1又は2に記載の遠心分離装置。
【請求項4】
前記チェックバルブは、前記排液装置内の流路を前記ケーキ押出板と前記バスケットの底壁部との間の隙間内に開口させる開口部側に設けられている請求項3に記載の遠心分離装置。
【請求項5】
前記チェックバルブは、前記排液装置の液分導入部に設けられている請求項3に記載の遠心分離装置。
【請求項6】
前記バスケットの周壁部の各部のうち、後退位置にあるケーキ押出板よりもバスケットの開口部側に位置する部分は、液分を透過させることがないように構成され、前記固液分離処理は、前記バスケットの回転に伴って生じる遠心沈降作用により行われる請求項1ないし5の何れか一つに記載の遠心分離装置。
【請求項7】
前記バスケットの周壁部の各部のうち、後退位置にあるケーキ押出板よりもバスケットの開口部側に位置する部分に液を透過させる多数の透孔が形成され、
前記可撓スリーブは、液を透過させる機能を有するフィルタ材料により形成されている請求項2に記載の遠心分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心沈降作用により原液を液分とケーキ分(固形分)とに分離する固液分離処理を行う遠心分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固液分離処理を行う遠心分離装置としては、高速回転しているバスケット内に原液を供給して、バスケットの周壁部の内周に配置したフィルタとバスケットの周壁部に設けられた多数の透孔とを通して液分をバスケット外に排出することにより、原液を液分とケーキ分とに分離する、ろ過式の遠心分離装置が広く用いられている。
【0003】
ろ過式の遠心分離装置では、回転しているバスケット内に原液を供給する給液工程と、バスケットの回転に伴って生じる遠心力により液分をバスケット外に排出させる脱液工程とを繰り返すことにより、バスケットの周壁部の内周にケーキ層を形成していくため、ケーキ層を通して脱液を行わせることが必須である。そのため、原液に含まれる結晶がそれほど微細ではなく、ケーキ層の構造が粗で、液をよく透過させる性質を有する場合には、一度の固液分離処理で多くの結晶を得ることができるが、原液に含まれる結晶が微細で、ケーキ層が緻密な構造を有する場合には、ケーキ層がある程度厚くなると、ケーキ層を通して脱液を行うことができなくなるため、一度の固液分離処理で得られるケーキの量が制限され、固液分離処理を効率良く行うことができない。
【0004】
原液に含まれる結晶が緻密であっても固液分離処理を行うことができる遠心分離装置として、周壁部に透過孔を有しないバスケットを用いて、遠心沈降作用により原液を液分とケーキ分とに分離するバスケット型の遠心分離装置が知られている。この種の遠心分離装置(遠心沈降分離装置とも呼ばれる。)においては、高速回転しているバスケット内に原液を供給して、液分よりも比重が大きいケーキ分を遠心力によりバスケットの周壁部側に沈降させてバスケットの周壁部の内側にケーキ層を形成し、このケーキ層の内側に上澄み液層を形成する。バスケットを所定時間の間高速回転させてケーキ層と上澄み液層との分離を十分に行わせた後、バスケット内に存在する上澄み液をバスケット外に排出し、次いでバスケット内に形成されたケーキ層を外部に排出する。
【0005】
従来の遠心沈降分離装置においては、例えば特許文献1に示されているように、バスケット内からの上澄み液の排出を、高速回転しているバスケットの開口部から上澄み液層内にスキミングパイプを挿入することにより行っていた。
【0006】
また特許文献2に示されているようなデカンタ型の遠心沈降分離装置も知られている。この分離装置は、高速回転させられる分離筒と、分離筒の内側に配置されて分離筒よりも遅い速度で回転させられるスクリューコンベアとを備えていて、高速回転している分離筒の内周に供給した原液を遠心沈降作用により固形分と液分とに分離し、液分を分離筒の後端部に形成された液体排出口から外部に排出するとともに、分離筒の内周に形成された固形分をスクリューコンベアにより分離筒の前端側に移動させて分離筒の先端の固形分排出口から外部に排出する。
【0007】
またバスケット型の遠心分離装置においては、ろ過式の構成をとる場合も、遠心沈降式の構成をとる場合も、バスケット内に形成されたケーキをいかに効率良くバスケット外に排出して回収するかということが問題になる。バスケット内に形成されたケーキを効率よく回収することを狙ったろ過式の遠心分離装置として、特許文献3に示されているように、バスケットの周壁部とケーキ層との間に介在するろ布を反転させることにより、バスケット内に形成されたケーキのほぼ全量をバスケット外に排出することを可能にした、ろ布反転式の遠心分離装置が知られている。この遠心分離装置では、バスケットの開口部を蓋で閉じた状態で固液分離処理を行うため、バスケット内にスキミングパイプを挿入することができず、バスケット内に形成された上澄み液をバスケット外に排出することができない。そのため、従来のろ布反転式の遠心分離装置を用いて遠心沈降作用を利用した固液分離処理を行うことはできず、微細な結晶を含む原液の固液分離処理を行う目的で、従来のろ布反転式の遠心分離装置を用いることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭57-117356号公報
【文献】特開昭60-25562号公報
【文献】特開平1-249146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近、微細な結晶粒子を含む原液の固液分離処理を行うことの必要性が高まりつつある。前述のように、微細な結晶を含む原液の固液分離処理を行う遠心分離装置として、遠心沈降分離装置が知られているが、従来のこの種の遠心分離装置では、バスケット内に形成された上澄み液を排出するために、高速回転しているバスケットの開口部から上澄み液層中にスキミングパイプを挿入した際に、上澄み液層で波うちが生じてバスケットに大きな衝撃が加わるため、バスケットの振動が大きくなって運転を継続することが困難になったり、分離したケーキ分が上澄み液中に溶け出して上澄み液が混濁するといった問題が生じていた。
【0010】
また従来の遠心沈降分離装置では、バスケット内から上澄み液を排出した後、バスケット内からケーキを回収する作業を、手作業を借りて行っていたため、ケーキの回収を効率よく行うことができなかった。
【0011】
前述のように、バスケット内からのケーキの回収を効率よく行うことができる、ろ過式の遠心分離装置として、ろ布反転式の遠心分離装置が知られているが、従来のこの種の遠心分離装置は、バスケット内に形成された上澄み液を排出するための手段を持たなかったため、遠心沈降作用を利用した固液分離処理を行う目的には使用することができなかった。
【0012】
特許文献2に示されているようなデカンタ型の遠心沈降分離装置によれば、液分とケーキ分との分離を連続に行うことができるが、この種の遠心分離装置では、液分とケーキ分とを十分に分離することができないため、液分を含まない微細な結晶からなるケーキを得る目的にこの種の遠心分離装置を用いることはできない。
【0013】
本発明の目的は、バスケットの振動が大きくなって運転を継続することが困難になったり、分離したケーキ分が上澄み液中に溶け出して上澄み液が混濁するといった問題を生じさせることなく遠心沈降作用を利用した固液分離処理を行うことができるだけでなく、バスケット内からの上澄み液の回収及びケーキの回収を容易に行うことができるようにして、遠心沈降作用を利用した固液分離処理を円滑にかつ効率よく行うことができるようにした遠心分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、周壁部を有し、軸線方向の一端が底壁部で閉じられ、軸線方向の他端側に開口部が設けられたバスケットを回転させて、該バスケット内に供給した原液を遠心沈降作用により液分とケーキ分とに分離する遠心分離装置を対象としたものである。
【0015】
本発明に係る遠心分離装置は、一面及び他面をそれぞれバスケットの底壁部側及び該底壁部と反対側に向けた状態でバスケットとともに回転するように設けられるとともに、前記一面がバスケット内でバスケットの底壁部に隙間を介して対向した状態になる位置に設定された後退位置とバスケットの開口部又は該開口部の前方に設定された前進位置との間をバスケットの軸線方向に沿って変位し得るように設けられたケーキ押出板と、ケーキ押出板が後退位置にあるときにバスケットの開口部を気密に閉じ、ケーキ押出板が前進位置に向けて変位していく過程でバスケットの開口部を開く蓋板と、一部がケーキ押出板を貫通した状態でケーキ押出板に取り付けられて、ケーキ押出板の他面側からケーキ押出板を貫通してケーキ押出板の一面側に液を流す流路を内部に有する排液装置と、ケーキ押出板の一面とバスケットの底壁部との間の隙間内に臨む位置でバスケットを貫通した排液孔とを備えていて、ケーキ押出板を後退位置に位置させて蓋板により前記バスケットの開口部を閉じた状態でバスケット内の気圧を外気圧よりも高い設定圧力以上の圧力とすることによりバスケット内に存在する上澄み液を排液装置内の流路と排液孔とを通してバスケットの外部に排出し、ケーキ押出板を後退位置から前進位置まで変位させてバスケット内のケーキをバスケットから押し出すことにより、バスケット内のケーキを外部に排出するように構成される。
【0016】
上記のように構成すると、排液装置がバスケットと同じ速度で回転しながら上澄み液を外部に排出するため、バスケットに衝撃を与えたり、上澄み液を波立たせたりすることなく、バスケット内の上澄み液をバスケット外に排出することができる。また上澄み液の排出を終了した後、ケーキ押出板によりバスケット内のケーキを押し出すことによりケーキをバスケット外に排出することができるため、バスケット内からのケーキの回収を容易に行うことができる。
【0017】
ケーキ押出板とバスケットの底壁部との間に排出された液分のバスケット外への排出を容易にするため、前記排液孔は、バスケットの周壁部の底壁部寄りの部分を貫通させた状態で設けるのが好ましい。
【0018】
本発明の好ましい態様では、ケーキ押出板の前進位置がバスケットの開口部の前方に設定され、柔軟性を有する材料により筒状に形成されてバスケットの開口部に一端が固定されるとともに、ケーキ押出板の外周部に他端が固定されてケーキ押出板が後退位置にあるときにバスケットの周壁部の内周を覆った状態で配置され、ケーキ押出板が後退位置から前進位置に向けて変位する過程で反転させられる可撓スリーブが設けられる。
【0019】
上記可撓スリーブは、バスケット内のケーキを外部に排出する際にケーキの排出を容易にするために反転させられるという点で、従来のろ布反転式遠心分離装置で用いているろ布に類似しているが、上記可撓スリーブは、フィルタとしての機能を有している必要がない点で、従来のろ布反転式遠心分離装置で用いているろ布とは相違する。
【0020】
このように可撓スリーブを設けた場合には、バスケット内からケーキを回収する際に、ケーキ押出板をバスケットとともに回転させながら後退位置から前進位置まで変位させて、ケーキ押出板によりバスケット内のケーキを押し出すとともに、ケーキ押出板の前進に伴って可撓スリーブを反転させて、可撓スリーブに付着していたケーキを遠心力により脱落させることができるため、バスケット内のすべてのケーキをバスケットの外部に排出して、ケーキの回収率を高くすることができる。
【0021】
本発明の他の好ましい態様では、前記排液装置が、バスケットの回転中心軸線から偏心した位置で該ケーキ押出板をバスケットの軸線方向に沿って貫通した部分を有してケーキ押出板の他面側からケーキ押出板を貫通してケーキ押出板の一面側に液を流す流路を内部に有する押出板貫通部と、ケーキ押出板の他面側に配置された押出板貫通部の一端に後端部が接続されるとともに、先端部がバスケットの周壁部に向けられた状態で設けられて、先端がバスケットの周壁部側に開口し後端が押出板貫通部内の流路に連通した流路を内部に有する液分導入部とを備え、ケーキ押出板の前記一面側に配置された押出板貫通部の他端側には該押出板貫通部内の流路をケーキ押出板とバスケットの底壁部との間の隙間内に開口させる開口部が設けられている。
【0022】
この場合排液装置の液分導入部は、バスケットの回転に伴って生じる遠心力によりバスケットの外径側に変位させられる可動部と、この可動部をバスケットの内径側に付勢する付勢手段とを備えた構成とする。またバスケット内の気圧が前記設定圧力以下のときにバスケット内の液が排液装置内の流路を通して前記隙間内に流出するのを阻止し、バスケット内の気圧が設定圧力を超えているときにバスケット内の液が排液装置内の流路を通して前記隙間内に流出するのを許容するチェックバルブを排液装置に設けておく。
【0023】
上記のように排液装置を構成して、バスケット内に供給した原液を液分とケーキ分とに分離する固液分離処理を行った後、排液装置の可動部をバスケット内の上澄み液内に開口させた状態で、バスケット内に高圧ガスを供給してバスケット内の圧力を外気圧よりも高い設定圧力以上の圧力とすると、チェックバルブが開いて排液装置内の流路を通して液分が流れるのを許容した状態になるため、バスケット内に存在する上澄み液を排液装置内の流路を通してケーキ押出板とバスケットの底壁部との間の隙間内に排出することができ、この隙間内に排出された液分を排液孔を通してバスケットの外部に排出することができる。バスケットを加速することにより、最終的に排液装置の可動部をケーキ層に接する位置まで変位させることができるため、バスケット内の上澄み液の殆どすべてをバスケット外に排出することができる。
【0024】
本発明のその他の態様は、以下に示す本発明の実施形態についての説明により明らかにされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、バスケット内でバスケットの底壁部に隙間を介して対向した状態になる位置に設定された後退位置とバスケットの開口部又は該開口部の前方に設定された前進位置との間をバスケットの軸線方向に沿って変位し得るように設けられてバスケットと共に回転するケーキ押出板に排液装置を取り付けて、バスケット内を高圧状態にすることにより、バスケット内に形成された上澄み液をバスケットと共に回転する排液装置内の流路と、ケーキ押出板とバスケットの底壁部との間の隙間と、バスケットに設けられた排液孔とを通してバスケット外に排出するようにしたので、バスケットになんら衝撃を与えることなく、また上澄み液を波立たせることなく、上澄み液の排出を円滑に行わせることができる。またケーキ押出板によりバスケット内のケーキを押し出すことによりケーキをバスケット外に排出することができるため、ケーキの回収を容易に行うことができる。
【0026】
また本発明において、ケーキ押出板の前進位置をバスケットの開口部の前方に設定して、柔軟性を有する材料により筒状に形成された可撓スリーブの一端をバスケットの開口部に固定するとともに、該可撓スリーブの他端をケーキ押出板の外周部に固定しておくようにした場合には、ケーキ押出板を後退位置から前進位置まで変位させてケーキ押出板によりバスケット内のケーキを押し出しながら可撓スリーブを反転させることにより、バスケット内のすべてのケーキをバスケットの外部に排出することができるため、ケーキの回収率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態において、ケーキ押出板が後退位置に配置されている状態を示した縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態において、ケーキ押出板が前進位置まで変位した状態での要部の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1を参照すると、本実施形態において、ケーキ押出板が後退位置にある状態での装置の全体的な構成が示されており、
図2を参照すると、ケーキ押出板が前進位置にある状態での装置の要部の構成が示されている。
図1及び
図2において、1は周壁部101と該周壁部の軸線方向の一端を閉じる底壁部102と周壁部101の軸線方向の他端に形成された開口部103とを有する円筒状のバスケットである。バスケット1は、その周壁部の中心軸線を水平方向に向けた状態で配置されていて、後述する回転駆動機構により、周壁部101の中心軸線を中心にして回転するように駆動される。
【0029】
バスケット1内からのケーキの排出を容易にするため、バスケット1の周壁部101には、バスケットの底壁部102側から開口部103側に向かうに従って徐々に内径が大きくなっていく向きのテーパが付けられており、バスケット1の内径は、バスケットの底壁部102側から開口部103側に向かうに従って徐々に大きくなっている。
【0030】
図1及び
図2において、2は、バスケット1とともに回転しながらバスケット1の軸線方向に変位させられる円板状のケーキ押出板である。本実施形態では、ケーキ押出板2の両主面のうちの一方及び他方をそれぞれ該ケーキ押出板の一面2a及び他面2b(
図4参照)とする。
【0031】
ケーキ押出板2は、その一面2a及び他面2bをそれぞれバスケット1の底壁部102側及び該底壁部102と反対側に向けた状態で、かつ回転の中心軸線をバスケット1の回転中心軸線に一致させた状態でバスケット1とともに回転するように設けられていて、その一面2aがバスケット1内でバスケット1の底壁部102に隙間dを介して対向した状態になる位置に設定された後退位置(
図1及び
図4に示す位置)と、バスケット1の開口部103の前方に設定された前進位置(
図2に示す位置)との間をバスケット1の軸線方向に沿って直線変位し得るように設けられている。ケーキ押出板2の外径は、後退位置にあるケーキ押出板2の外周に対向するバスケットの周壁部101の内径よりも僅かに小さく設定されている。ケーキ押出板2は、後述するリニア駆動機構により、後退位置と前進位置との間で直線往復変位するように駆動される。
【0032】
バスケット1内の空間のうち、ケーキ押出板2が後退位置にあるときにケーキ押出板2とバスケット1の底壁部102との間の隙間dを構成する部分により、バスケット1内に形成された上澄み液を排出する排液室A1が構成される。またケーキ押出板2が後退位置にあるときに,バスケット1内の空間のうち、ケーキ押出板2よりも開口部103側に位置する部分に形成される空間により固液分離処理室A2が構成されており、この処理室A2内で固液分離処理が行われる。
【0033】
3は、ケーキ押出板2が後退位置にあるときにバスケット1の開口部103を閉じ、ケーキ押出板2が前進位置に向けて変位していく過程でバスケット1の開口部103を開く円板状の蓋板である。本実施形態では、バスケット1内に形成された上澄み液を排出する際に、バスケット1内の気圧を外気圧よりも高い圧力とするため、蓋板3はバスケット1の開口部を気密に閉じることができるように構成される。
【0034】
図示の蓋板3は、バスケット1の軸線方向に延びるように設けられてバスケット1の周方向に等角度間隔をあけて配置された複数の連結棒4によりケーキ押出板2に連結されていて、ケーキ押出板2が後退位置にあるときにバスケット1の開口部103を気密に閉じた状態になる閉位置(
図1に示された位置)に配置され、ケーキ押出位置2が前進位置に達したときにバスケット1の開口部の前方に設定された退避位置(
図2に示された位置)に配置される。
【0035】
蓋板3の外周寄りの部分にはパッキンなどのシール手段が取り付けられていて、蓋板3が閉位置にあるときに該シール手段が蓋板3とバスケット1の開口部103との間に介在して、バスケットの開口部103と蓋板3との突き合わせ部の気密を保持するようになっている。蓋板3は、後述するリニア駆動機構によりケーキ押出板2が駆動された際に、該ケーキ押出板2ととともに直線変位させられる。
【0036】
本発明に係る遠心分離装置においては、固液分離処理を行う際にバスケット1内に原液を供給する原液供給手段と、バスケット1内から上澄み液を排出する際に外気圧(通常は大気圧)よりも高い圧力の高圧ガスをバスケット1内に供給する高圧ガス供給手段とを備える必要がある。これらの手段を構成するため、蓋板3の中央部にフィードパイプ導入部5が形成され、この導入部を通してフィードパイプ6がバスケット1内に導入される。フィードパイプ6は、少なくとも原液供給源と高圧ガス供給源とに選択的に接続されるようになっており、フィードパイプ6と原液供給源とにより、バスケット1内に原液を供給する原液供給手段が構成される。またフィードパイプ6と高圧ガス供給源とにより、バスケット1内に高圧ガスを供給する高圧ガス供給手段が構成される。フィードパイプ6とフィードパイプ導入部5との間にはフィードパイプ6の貫通部の気密及び液密を保持するためのシール部材が設けられる。本実施形態では、フィードパイプ6が蓋板3を貫通する部分の気密及び液密の保持を容易にするため、フィードパイプ6がバスケット1とともに回転するように設けられている。
【0037】
図3を参照すると、蓋板3の中央部に設けられたフィードパイプ導入部5と、この導入部を通してバスケと内に導入されるフィードパイプ6の先端寄りの部分とが図示されている。フィードパイプ導入部5は、蓋板3の中央部を貫通して設けられた貫通孔501と、貫通孔501を貫通した管状部502aと管状部502aの一端に形成されたフランジ部502bとを有するパイプ受け部材502と、パイプ受け部材502の管状部502aの内側に保持されたシール部材503と、パイプ受け部材502のフランジ部502bに当接された座金505と、座金505とフランジ部502bとを共締めして蓋板3に締結するボルト506とからなっていて、フィードパイプ6がシール部材503を貫通した状態でバスケット内に導入されている。
【0038】
シール部材503は、フィードパイプ6と蓋板3との間に相対的な直線運動が生じるのを許容しつつ、フィードパイプ6の貫通部の気密及び液密を保持するための部材で、このシール部材としては、例えば、汎用のエアシリンダにおいてシリンダとピストンとの間の摺動部をシールするために用いられるピストンパッキンや、ピストンロッドとシリンダとの間の摺動部をシールするために用いられるロッドパッキングと同様のものを用いることができる。フィードパイプ6とシール部材503とは緊密に嵌合しているため、バスケット1及びケーキ押出板2とともに蓋板3が回転すると、その回転に従動してフィードパイプ6も回転する。
【0039】
図1、
図2及び
図4に示されているように、バスケット1の周壁部101の底壁部102寄りの部分には、複数の排液孔hが、バスケット1の周方向に間隔をあけた状態で設けられている。排液孔hは、バスケットの周壁部101の、ケーキ押出板2と底壁部102との間の隙間d(排液室A1)に臨む部分を貫通した状態で設けられていて、固液分離処理室A2から、後述する排液装置を通して排液室A1内に排出された上澄み液をバスケット外に排出するために用いられる。
【0040】
バスケット1の周壁部の各部のうち、後退位置にあるケーキ押出板2とバスケットの開口部103との間に形成されるバスケット内の空間(固液分離処理室A2)に臨む部分には、液分を通過させ得る孔が一切設けられておらず、ケーキ押出板2を後退位置に位置させた状態でバスケット1内の固液分離処理室A2内に原液を供給して固液分離処理を行う際に、バスケットの周壁部を通してろ過(排液)が行われることはないようになっている。
【0041】
フィードパイプ6は、バスケット1の開口部の前方にケーキ回収室を構成する部材にロータリジョイントを介して支持される。バスケット1の開口部の前方にケーキ回収室を構成する部材及びフィードパイプ6の支持構造については後述する。
【0042】
本実施形態では、バスケット1内の固液分離処理室A2内に層をなして形成されたケーキの排出を容易にするために、布などの柔軟性を有する材料により筒状に形成された可撓スリーブ7が設けられている。可撓スリーブ7の一端は、バスケット1の開口部103の内周部に沿わせた状態で配置されてバスケットの開口部103に適宜の手段により固定され、可撓スリーブ7の他端は、ケーキ押出板2の外周に沿わせた状態で配置されて、ケーキ押出板の外周部に適宜の手段により固定されている。可撓スリーブ7は、ケーキ押出板2が後退位置にあるときにバスケット1の周壁部101の内周を覆った状態で配置され、ケーキ押出板2が後退位置から前進位置に向けて移動する過程で反転させられる。可撓スリーブ7は、
図2に示すように、ケーキ押出板2が前進位置に達したときに完全に反転されて、ケーキ押出板2とバスケット1の開口部との間に張り渡された状態になる。
【0043】
本実施形態では、バスケット1の周壁部101の内周に添わせた状態で筒状の内張シート8(
図4参照)が配置され、ケーキ押出板2が後退位置にあるときに、可撓スリーブ7が、シート8を介してバスケットの周壁部101の内周を覆うようになっている。なおシート8は省略することもできる。
【0044】
本実施形態では、バスケット1の周壁部101の固液分離処理室A2を構成する部分に液分を透過させる透孔が設けられていないため、固液分離処理は、ろ過作用ではなく、もっぱら遠心沈降作用により行われる。遠心沈降作用による固液分離処理では、原液に含まれる成分のうち、比重が大きいケーキ分を遠心力によりバスケットの周壁部101により近い領域に沈降堆積させてバスケットの周壁部の内周にケーキ層C(
図4参照)を形成し、このケーキ層Cの内側に比重が小さい液分の層を上澄み液層W(
図4参照)として形成する。
【0045】
バスケット1内への原液の供給を開始した際に、後退位置にあるケーキ押出板2の外周部とバスケットの周壁部101の内周部との間の隙間を通して固液分離処理室A2から排液室A1側に原液が浸透するのを防ぐため、ケーキ押出板2が後退位置にあるときに、該ケーキ押出板2の外周面とバスケットの周壁部101の内周面との間に液の移動を許容する隙間が形成されないようにするための措置を講じておくことが好ましい。ケーキ押出板2の外周部にパッキンを取り付けておいてもよいが、本実施形態では、ケーキ押出板2が後退位置にあるときに可撓スリーブ7のケーキ押出板2側の端部をケーキ押出板2の外周部とバスケット1の周壁部101の内周部との間に介在させて、後退位置にあるケーキ押出板2とバスケットの周壁部101との間の隙間を塞ぐことにより、固液分離処理の開始時に固液分離処理室A2側から排液室A1側に液分が移動するのを防いでいる。
【0046】
なお後退位置にあるケーキ押出板の外周部とバスケットの周壁部101の内周部との間に多少の隙間があっても、固液分離処理が進んでバスケット1の周壁部の内側にケーキ層が形成されていくと、該ケーキ層により、ケーキ押出板2の外周部とバスケット1の周壁部101の内周部との間の隙間が塞がれるため、固液分離処理室A2から排液室A1側への液分の移動は阻止される。従って,本発明において、ケーキ押出板2の外周部とバスケット1の周壁部101の内周部との間の隙間を塞ぐ手段を講じることは必須ではない。
【0047】
バスケット1内に形成されたケーキ層を外部に排出(回収)する際には、ケーキ押出板2を前進位置に向けて変位させて、固液分離処理室A2内に形成されているケーキ層Cをケーキ押出板2により押してバスケット1の開口部103から押し出し、バスケットの開口部の前方に用意したケーキ回収室内に落下させる。またケーキ押出板2をバスケット1の開口部を通して前進位置まで変位させる過程で、可撓スリーブ7を反転させて、可撓スリーブ7に付着しているケーキをケーキ回収室内に落下させる。可撓スリーブ7は、ケーキ押出板2が前進位置に達したところで
図2に示したように完全に反転された状態になる。可撓スリーブ7は、バスケットと共に回転しているため、
図2に示したように可撓スリーブ7を完全に反転させた状態で一定時間バスケットを回転させることにより、可撓スリーブ7に付着していたケーキ分を遠心力により可撓スリーブ7から脱落させてほぼ完全に回収することができる。
【0048】
上記のようにしてバスケット内に生成されたケーキを回収した後、ケーキ押出板2を後退位置に向けて変位させる。ケーキ押出板2を後退位置に向けて変位させると、可撓スリーブ7は、ケーキ押出板2の変位に伴って非反転状態に戻されていき、ケーキ押出板2が後退位置に達したところでバスケットの周壁部の内周を覆った状態に戻される。
【0049】
固液分離処理室A2内にケーキ層Cと上澄み液層Wとが形成された後、ケーキ層をバスケットから排出して回収する前に、蓋板3により密閉されたバスケット内に存在する上澄み液をバスケットの外部に排出する必要がある。本実施形態においては、密閉されたバスケット内からの上澄み液の排出を可能にするため、ケーキ押出板2に、複数の排液装置9が、ケーキ押出板2の中心部よりも外周寄りの領域に位置させて取り付けられている。バスケットの重量バランスを乱さないようにするため、複数の排液装置9は、バスケット1の周壁部101の周方向に等角度間隔をあけて並べた状態で取り付けるのが好ましい。ケーキ押出板2に排液装置9を取り付けることにより、バスケットの重量バランスが崩れる場合には、バスケットにバランスウェイトを取り付ける等の方法により、バスケットの重量バランスをとるのが好ましい。
【0050】
本実施形態で用いる排液装置9は、一部がケーキ押出板2を貫通した状態でケーキ押出板2に固定されて、ケーキ押出板2の他面2b側から(固液分離処理室A2側から)一面2a側(排液室A1側)に液を流す流路をその内部に形成する。
【0051】
図4に示されているように、本実施形態で用いる排液装置9は、バスケット1の回転中心軸線から偏心した位置でケーキ押出板2をバスケット1の軸線方向に沿って貫通した部分を有して、ケーキ押出板2の他面2b側からケーキ押出板2を貫通してケーキ押出板2の一面2a側に液を流す流路を内部に有する押出板貫通部9Aと、ケーキ押出板2の他面側に配置された押出板貫通部9Aの一端に後端部が接続されるとともに、先端部がバスケットの周壁部101に向けられた状態で設けられた液分導入部9Bとを備えている。液分導入部9Bの内部には、先端がバスケットの周壁部101側に開口し、後端が押出板貫通部9A内の流路に連通した流路が形成されている。
【0052】
図示の押出板貫通部9Aは、ケーキ押出板2をバスケット1の軸線方向に沿って貫通した直管部分901と、隙間d内をバスケットの径方向に伸びるように設けられて後端部が直管部分901の隙間d内に導出された端部に接続された径方向管路部902とを有するL字形の管からなっていて、その径方向管路部902の先端部に、後述するチェックバルブの弁座を構成する拡大径部902aが形成されている。この拡大径部902aの先端の開口部が、押出板貫通部9A内の流路をケーキ押出板2とバスケットの底壁部102との間の隙間d内に開口させる開口部となっている。
【0053】
本実施形態で用いている排液装置9の液分導入部9Bは、バスケット1の径方向に沿って延びるように設けられた基管部903と、該基管部903にスライド自在に支持されてバスケット1の回転に伴って生じる遠心力によりバスケット1の外径側(
図4において上側)に変位させられる可動部904と、可動部904をバスケット1の内径側(
図4において下側)に付勢する付勢手段とを備えている。
【0054】
図示の例では、基管部903の軸線方向に並べた状態で基管部903の外周にスライド自在に嵌合されて互いにネジ結合された2つの管状部材905及び906により可動部904が構成されている。2つの管状部材905及び906のうち、バスケットの中心部側に配置された管状部材905および周壁部101側に配置された管状部材906をそれぞれ第1の管状部材および第2の管状部材とする。
【0055】
可動部904の内周面と基管部903の外周面との間には隙間が形成されていて、この隙間内に、基幹部903の外周に嵌合された圧縮バネ907が配置され、バスケット1の周壁部101側に向いた圧縮バネ907の一端907aが基管部903の外周に溶接等の適宜の手段により固定されている。またバスケット1の周壁部101と反対側に向いた圧縮バネ907の他端907bは、第2の管状部906と反対側に位置する第1の管状部材905の後端部から内径側に突出したバネ受け部905aにより受け止められ、バネ907により、可動部904がバスケットの周壁部101の内径側に付勢されている。本実施形態では、バネ907により、可動部904をバスケットの内径側(バスケットの中心部に向かう側)に付勢する付勢手段が構成されている。
【0056】
押出板貫通部9Aの径方向管路部902の先端に形成された拡大径部902aには、バスケット1内の気圧が設定圧力以下のときに排液装置9内の流路を閉鎖してバスケット1内に形成された上澄み液が排液装置9内の流路を通して隙間d内に流出するのを阻止し、バスケット1内の気圧が前記設定圧力を超えているときに排液装置9内の流路を開いてバスケット1内の上澄み液が排液装置9内の流路を通して隙間d内に流出するのを許容するチェックバルブ910が取り付けられている。
【0057】
図示のチェックバルブ910は、排液装置9の押出板貫通部9Aの径方向管路部902の先端の拡大径部902aの外周に嵌合されて、一端が拡大径部902aに溶接された円筒状のバルブハウジング911と、バルブハウジング911内にスライド自在に嵌合された状態で収納されて径方向管部902の先端に形成された拡大径部902aの先端面(弁座)に当接した弁体912と、バルブハウジング911内に挿入されて一端が弁体912により受け止められたコイルスプリング913と、外周に雄ネジ部を有して、該雄ネジ部がバルブハウジング911の他端寄りの部分の内周に形成された雌ネジ部に螺合された管状のバネ押え部材914とからなっており、バネ押え部材914と弁体912との間に圧縮された状態で配置されたコイルスプリング913により、弁体912が拡大径部902a側に付勢されている。
【0058】
図示のチェックバルブ910は以下のように動作する。バスケット1内の気圧が設定圧力以下のときには、コイルスプリング913の付勢力により弁体912が拡大径部902aの先端面(弁座)に当接した状態に保持されるため、チェックバルブ910は、排液装置9内の流路を閉じた状態を保持している。この状態では、バスケット内の上澄み液が排液装置9内の流路を通してケーキ押出板2とバスケットの底壁部102との間の隙間d内に排出されることはない。
【0059】
バスケット1内の気圧が設定圧力を超え、排液装置9内の流路内の液体を通して弁体912に所定の力が加わると、弁体912がコイルスプリング913の付勢力に抗して拡大径部902aの先端面から離れる方向に変位するため、チェックバルブ910は、排液装置9内の流路を開いた状態になり、バスケット内の上澄み液が排液装置9内の流路を通して隙間d内に排出されるのを許容した状態になる。チェックバルブ910が開くときのバスケット内の圧力は、バネ押え部材914を回転させて、コイルスプリング913の付勢力を調整することにより適宜に調整することができる。
【0060】
図示の排液装置9において、可動部904は、バネ907によりバスケット1の内径側に付勢され、バスケット1が停止しているときには
図4に示された初期位置に配置されている。可動部904の初期位置は、その先端の開口端904tが、バスケットの周壁部101の内側に形成されるケーキ層Cの内周面の固液分離処理終了時における規定位置(
図4参照)よりも更に内径側の位置に設定されている。
【0061】
バスケット1の回転速度が設定速度よりも低いときには、バスケット1の回転により可動部904に作用する遠心力よりもバネ907の付勢力の方が強いため、可動部904は初期位置に保持されている。バスケット1の回転速度が設定速度を超え、可動部904を付勢する遠心力がバネ907による付勢力を超えると、可動部904がバスケット1の周壁部側への変位を開始する。従って、固液分離処理が終了した後、バスケット1の回転速度を上昇させていくことにより、可動部904をバスケット内の上澄み液層W内に浸漬した状態でケーキ層Cに向けて変位させることができる。可動部904は、最終的にはバスケット内に形成されているケーキ層Cの内周面に接して(軟着陸して)停止する。
【0062】
バスケット1内で固液分離処理が行われて固液分離処理室A2内にケーキ層Cと上澄み液層Wとが形成されたときに、バスケット1を加速して排液装置9の可動部904を上澄み液層W内に進入させると共に、フィードパイプ6からバスケット1内に高圧ガスを供給して、バスケット1内の気圧を外気圧よりも高い設定圧力以上にする。バスケット1内の気圧を設定圧力以上にすると、チェックバルブ910が開いて排液装置9内の流路を開くため、バスケット1内に存在する上澄み液をケーキ押出板2とバスケットの底壁部102との間に形成された排液室A1内に排出することができ、排液室A1内に排出された上澄み液はバスケット1の回転により生じる遠心力によりバスケット1の周壁部側に飛ばされて、排液孔hからバスケット外に排出される。排液装置9の可動部904は最終的にケーキ層Cに接する位置に達するため、バスケット内に存在していた上澄み液の殆どすべてをバスケット外に排出して回収することができる。
【0063】
可動部904の初期位置は、固液分離処理の終了時に可動部904の開口端904tを、バスケット内に形成される上澄み液層Wの内周面よりも内径側に位置させておくように設定してもよく、
図4に示したように、固液分離処理の終了時に可動部904の開口端904tを、バスケット内に形成されている上澄み液層Wの内周面よりも外径側に位置させるように(可動部904の開口端904tが上澄み液層中に浸漬された状態になるように)設定してもよい。
【0064】
バスケット1と、ケーキ押出板2及び蓋板3とを駆動するため、駆動装置10(
図1参照)が設けられている。駆動装置10は、回転自在に設けられて一端がバスケット1の底壁部102に結合された主軸11を回転駆動してバスケット1を回転させる回転駆動機構と、主軸11の内側にスラスト自在に設けられて先端がケーキ押出板2に連結されたスラスト軸12を駆動してケーキ押出板2及びバスケット蓋3をバスケット1の軸線方向に直線往復駆動するリニア駆動機構とを備えている。
【0065】
駆動装置10を収容するため、ハウジング13が設けられている。駆動装置10を収容したハウジング13は、設置面S上に配置されたベースBと、水平な板面を有し、ベースBの上に固定された板状のベースフレーム14と、ベースフレーム14と板面が直交するように配置されてベースフレーム14に下端が溶接等により固定された主フレーム15とを有している。
【0066】
主フレーム15は、ベースフレーム14の前端から垂直上方に起立した前側壁部15Aと、ベースフレーム14の幅方向(
図1の紙面と直交する方向)の両端から垂直上方に起立した一対の側壁部15B,15Bとにより、横断面がコの字形を呈するように構成されている。フレーム15に駆動装置10の主要部を覆うカバー16が固定されており、主フレーム15とカバー16とにより、駆動装置10の主要部を収容するハウジング13が構成されている。主フレーム15の側壁部15B,15Bには、駆動装置10の保守点検等を行う際に用いる開口部や、該開口部を開閉する扉等が適宜設けられる。
【0067】
主フレーム15の前側壁部15Aの前方にはバスケット1を収容する円筒状のケーシング20がその軸線を水平方向に向けた状態で配置され、該ケーシング20の一端に設けられたフランジ20aが主フレーム15の前側壁部15Aに固定されている。ケーシング20とバスケット1の周壁部101との間の空間により液分回収室21が構成されている。ケーシング20の下部には排液管22が接続され、液分回収室21内に回収された液分が排液管22を通して外部に回収されるようになっている。
【0068】
バスケット1を収容したケーシング20の他端に前面カバー23が取り付けられている。前面カバー23の下部には、ケーキ排出用シュート23Aが設けられ、バスケット内から回収されたケーキがケーキ排出用シュート23Aを通して下方に排出されるようになっている。前カバー23の内側の空間によりケーキ回収室24が構成されている。
【0069】
フィードパイプ6は、その先端がバスケット1の開口端寄りの部分の内側に達する長さを有していて、
図1に示すように蓋板3が閉位置にあってバスケット1の開口部を閉じているときに、フィードパイプ6の先端が蓋板3を貫通してバスケット1内に開口した状態になるように、フィードパイプ6の先端位置が設定されている。
【0070】
フィードパイプ6は、その後端部(バスケット1内に導入される端部とは反対側の端部)が前カバー23の前端部の側壁23aを貫通した状態で設けられて、軸受25を介して側壁23aに回転自在に支持されている。前カバー23の前端部の側壁23aの外側には、回転する管と固定配管との間を連結するロータリジョイント26が支持部材27を介して支持されている。軸受25により前カバー23に回転自在に支持されたフィードパイプ6の後端部は支持部材27の内側に配置された継手28を介してロータリジョイント26の回転側ジョイントに連結されている。ロータリジョイント26の固定側ジョイントには原液の供給源と洗浄液の供給源と高圧ガスの供給源とに選択的に接続される固定配管29が接続され、配管29とロータリジョイント26とフィードパイプ6とを通して、バスケット1内に原液、洗浄液及び高圧ガスの何れかが供給されるようになっている。
【0071】
本実施形態では、フィードパイプ6とロータリジョイント26と配管29と図示しない原液供給源とによりバスケット1内に原液を供給する原液供給手段が構成され、フィードパイプ6とロータリジョイント26と配管29と図示しない高圧ガス供給源とによりバスケット1内に高圧ガスを供給する高圧ガス供給手段が構成されている。
【0072】
バスケット1とケーキ押出板2と蓋板3とを駆動する駆動装置10は、バスケット1をその中心軸線を回転中心として回転させる回転駆動機構と、ケーキ押出板2及び蓋板3をバスケット1とともに回転させながら、バスケット1の軸線方向に駆動するリニア駆動機構とを備えている。
【0073】
回転駆動機構は、バスケット1の底壁部102に結合された中空の主軸11と、主軸11を回転駆動する機構とにより構成される。またリニア駆動機構は、主軸11の中空部内にスラスト自在に設けられたスラスト軸12と、このスラスト軸を直線変位させる機構とにより構成される。
【0074】
図示の例では、ベースフレーム14に支柱31,32を介して軸受装置33が支持され、この軸受装置33の軸線方向の一端が主フレーム15の前側壁部15Aに結合されている。軸受け装置33には軸受け34及び35が設けられており、これらの軸受けにより、中空の主軸11がその中心軸線を横方向(水平方向)に向けた状態で、かつその中心軸線をバスケット1の中心軸線に一致させた状態で回転自在に支持されている。
【0075】
主軸11の軸線方向の一端は主フレーム15の前側壁部15Aに設けられた孔を通して、前側壁部15Aの前方に配置されたバスケット1の底壁部102に結合され、主軸11の軸線方向の他端は軸受け装置33の軸線方向の他端から外部に導出されている。主軸11の軸線方向の一端及び他端をそれぞれ主軸11の前端及び後端とする。
【0076】
ベースフレーム14には主軸駆動用モータ40が支持され、軸受け装置33の他端から導出された主軸11の後端部に取り付けられた歯付きプーリ41と、主軸駆動用モータ40の回転軸に取り付けられた歯付きプーリ42とにタイミングベルト43が巻き掛けされている。主軸11と、モータ40と、歯付きプーリ41及び42と、タイミングベルト43とにより、バスケット1をその中心軸線を回転中心として回転駆動する回転駆動機構が構成されている。
【0077】
スラスト軸12は、バスケット1と中心軸線を共有した状態で、かつ主軸11内を軸線方向に貫通した状態で設けられて、その先端がケーキ押出板2に結合されている。スラスト軸12と主軸11との間に許容される相対変位を両軸の軸線方向に沿った変位のみに限定するために、主軸11の一部に該主軸の軸線方向に伸びるスロット11a形成され、スラスト軸12に固定されたキー45がスロット11aにスライド自在に嵌合されている。主軸11の前端側及び後端側にそれぞれ配置されたスラスト軸12の一端及び他端をそれぞれスラスト軸12の前端及び後端とする。スラスト軸12の前端は、主軸11の前端から前方に(バスケット側に)突出して、バスケット1の底壁部102に形成された孔を通してバスケット1内に導入されている。
【0078】
スラスト軸12の軸心部には、バスケットと反対側に開口し、バスケット側の端部が閉鎖された第1の孔12aと、バスケット1側に開口し、バスケット1と反対側の端部が閉鎖された第2の孔12bとが形成され、スラスト軸12の後端部寄りの部分の内周に固定されたナット50に螺合されたねじ棒51が第1の孔12aに挿入されている。第2の孔12bは、スラスト軸12がバスケット1側に前進していく過程で
図2に示すようにフィードパイプ6を受け入れるために設けられたものである。
【0079】
ネジ棒51は、その後端部側にネジが設けられていない軸部51aを有し、この軸部51aは、ベースフレーム14に支柱52を介して支持されたフレーム53に固定された筒状部材54を貫通して外部に導出されている。ネジ棒51の軸部51aにはスプラインを形成する歯部が形成され、歯付きプーリ55の内周に形成された歯部がネジ棒51の軸部51aに形成された歯部に噛み合わされることにより、ネジ棒51と歯付きプーリ55とがスプライン結合されている。
【0080】
フレーム53にはスラスト軸駆動用モータ56が固定され、このモー56の出力軸に歯付きプーリ57が取り付けられている。歯付きプーリ57と、ネジ棒51にスプライン結合された歯付きプーリ55とにタイミングベルト58が巻き掛けされ、モータ56の回転がベルト58を介してネジ棒51に伝達されるようになっている。
【0081】
歯付きプーリ55を貫通してバスケット1と反対側に導出されたネジ棒51の端部にボルト59によりフランジ板60が固定され、フランジ板60と歯付きプーリ55との間に、ネジ棒51の軸線方向に並べた状態でネジ棒51に嵌合された多数の皿バネ61が配置されている。皿バネ61はネジ棒51の軸線方向に圧縮された状態で設けられていて、皿バネ61によりネジ棒51とスラスト軸12とがバスケット1の開口方向と反対方向に(
図1において右方向に)付勢されている。皿バネ61は、バスケット蓋3が閉位置に配置された際に、スラスト軸12とケーキ押出板2連結棒4とを介して蓋板3をバスケット1側に付勢して、蓋板3を閉位置に確実に保持する作用をする。
【0082】
図示の例では、ナット50と、ネジ棒51と、モータ56と、プーリ57及び55と、ベルト58とにより、スラスト軸12を主軸11に対して前進及び後退させるように駆動するスラスト軸駆動機構が構成され、この駆動機構とスラスト軸12とにより、ケーキ押出板2及び蓋板3をバスケット1とともに回転させながら、バスケット1の軸線方向に駆動するリニア駆動機構が構成されている。
【0083】
図示の駆動装置10において、モータ40及び56のうち、モータ40のみを駆動したとすると、モータ40の回転により、主軸11が回転させられ、主軸11にキー45を介して結合されたスラスト軸12が主軸11とともに回転させられる。スラスト軸12が回転することにより、該スラスト軸とともにナット50も回転し、該ナット50に螺合されているネジ棒51も回転させられる。ネジ棒51の回転は、プーリ55とベルト58とを通してプーリ57に伝達されるため、モータ56の回転軸が回転させられる。この状態では、モータ56がモータ40の負荷となっており、モータ56の回転軸がモータ40により回転させられる。このように、モータ56がモータ40により回転させられる状態では、ネジ棒51がナット50及びスラスト軸12と一緒に回転し、ネジ棒51とナッ50との間には相対的な回転が生じないため、スラスト軸12は主軸11に対してスラスト運動を行わない。
【0084】
これに対し、モータ40を停止させた状態で、モータ56を駆動すると、ネジ棒51がナット50に対して相対的に回転するため、モータ56の回転方向に応じてナット50が前進または後退し、ナット50に対して固定されているスラスト軸12がナット50の前進及び後退に伴って前進または後退する。
【0085】
モータ40及び56が同時に駆動されたときには、主軸11の回転速度とネジ棒51の回転速度との差に応じて、ネジ棒51がナット50に対して相対的に回転し、ネジ棒51のナット50に対する回転方向に応じて、スラスト軸12が前進または後退する。このときスラスト軸12の変位速度は、ネジ棒51の回転速度と主軸11の回転速度との差に比例する。従って、ネジ棒51の回転速度を主軸11の回転速度よりも高くしたり、低くしたりすることにより、スラスト軸12を前進又は後退させることができる。
【0086】
次に本実施形態の遠心分離装置を用いて原液(スラリー)を液分とケーキ分とに分離する固液分離処理を行う際の遠心分離装置の動作を説明する。固液分離処理を行う際には、先ず給液工程を行う。この給液工程では、
図1に示すようにケーキ押出板2を後退位置に位置させ、蓋板3を閉位置に位置させてバスケット1の開口部を密閉した状態で、バスケット1を給液時に適した速度で回転させ、図示しない原液供給源から配管29とロータリジョイント26とフィードパイプ6とを通して、設定された給液時間の間、回転しているバスケット1内の固液分離処理室A2内に原液を供給する。給液時間は、バスケット内における原液の内周位置(液面の位置)が規定の位置に達するまでに要する時間である。この給液時間は予め実験的に求めておく。バスケット内における原液の規定位置は、例えば、排液装置9の可動部904の先端部の位置よりも僅かにバスケットの内径側に寄った位置に設定しておく。
【0087】
給液時間が経過した時にバスケット内への原液の供給を停止し、バスケットを固液分離処理時の速度まで加速して固液分離処理工程を行う。この工程では、バスケットの回転によって生じる遠心力により比重が大きいケーキ分がバスケットの周壁部側に沈降していくため、バスケットの周壁部寄りの領域にケーキ層Cが形成されていき、ケーキ層Cの内側に上澄み液層Wが形成されていく。固液分離処理工程を設定時間の間行った後、バスケット内に存在する上澄み液をバスケット外に排出する排液工程を行う。
【0088】
この排液工程では、フィードパイプ6を通してバスケット1の固液分離処理室A2内に高圧ガスを供給し、固液分離処理室A2内の気圧を設定圧力(例えば5kg/cm2 )以上にする。固液分離処理工程終了時には、バスケットの周壁部の固液分離処理室A2に臨む部分の内周に緻密なケーキ層Cが形成されているため、ケーキ押出板2の外周部とバスケットの周壁部101の内周部との間の隙間を通して排液室A1側にガスが漏れることはない。従って、ケーキ押出板2の外周部とバスケットの周壁部101の内周部との間の隙間を塞ぐ措置を特に講じておかなくても、固液分離処理室内の加圧は支障なく行わせることができる。
【0089】
固液分離処理室内を加圧することにより、排液装置9に設けられているチェックバルブ908を開き、これにより排液装置9内の流路を通して液分が流れるのを許容して、バスケット内に存在する上澄み液を排液装置9を通して排液室A1内に排出する。排液室A1内に排出された液分はバスケットの回転に伴って生じる遠心力によりバスケットの周壁部側に飛ばされ、排液孔hからバスケット外に排出される。排液工程では、バスケットの回転速度を更に上昇させて排液装置9の可動部904を遠心力によりバスケットの周壁部側に変位させていく。可動部904は最終的にその先端がケーキ層Cに接した状態になるまで変位するため、バスケット内に存在する上澄み液の殆どすべてを排液装置9と排液室A1と排液孔hとを通してバスケットの外部に排出することができる。
【0090】
排液工程を設定時間の間行った後、バスケットの回転速度を給液時の回転速度まで低下させて、フィードパイプ6を通してバスケット内の固液分離処理室A2内に原液を供給し、再度固液分離処理工程を所定の時間の間行った後、排液工程を所定時間の間行ってバスケット内の上澄み液をバスケット外に排出する。給液工程と、固液分離処理工程と、排液工程とを所定回数繰り返して、バスケット内に所定の厚みのケーキ層Cが形成されたところで給液工程ないし排液工程からなる一連の工程を終了する。給液工程、固液分離処理工程及び排液工程をそれぞれ行う時間と、これらの工程を繰り返す回数との最適値とは、処理する原液毎に、予め実験により求めておく。排液工程が終了した後、必要に応じて、フィードパイプ6を通してバスケット内に洗浄液を供給して、バスケット内を洗浄する洗浄工程と、洗浄液を排液装置9を通してバスケット外に排出する排液工程とを行った後、バスケット1内からケーキを排出するケーキ排出工程を行う。
【0091】
ケーキ排出工程では、バスケット1をケーキ押出板2及び蓋板3とともに所定の回転速度で回転させながらケーキ押出板2を前進位置に向けて変位させ、ケーキ押出板2によりケーキをバスケットの開口部からケーキ回収室内に押し出すと共に、可撓スリーブ7の反転により可撓スリーブ7に付着していたケーキをケーキ回収室24内に落下させる。
【0092】
上記の実施形態では、バスケットの周壁部の液分を透過させる透孔を設けずに、専ら遠心沈降作用により液分とケーキ分との分離を行わせている。遠心分離装置としては、バスケットの周壁部に多数の透孔を設けるとともに、バスケットの周壁部の内周にろ布(フィルタ)を配置して、バスケットの回転に伴って生じる遠心力により原液を液分とケーキ分とに分離するろ過式の遠心分離機が多く用いられているが、ろ過式の遠心分離機では、ケーキの結晶又は粒子が微小である場合に、バスケットの内周にある程度の厚みのケーキ層が形成されたところで液分がケーキ層を通してバスケットの周壁部の透孔に到達することができなくなるため、固液分離処理を十分に行うことができない。これに対し、遠心沈降作用により固液分離処理を行うようにすれば、ケーキ層を通して脱液を行う必要がないため、ケーキの結晶又は粒子が微小である場合でも固液分離処理を支障なく行うことができる。
【0093】
上記の実施形態では、バスケットの周壁部に透孔を設けずに専ら遠心沈降作用により固液分離処理を行わせているが、バスケットの周壁部の固液分離処理室A2に臨む部分に多数の透孔を設けて、ろ過式の遠心分離装置としても使用できるようにしても良い。このように構成した場合には、原液に含まれる結晶の粒子が微小でない場合にろ過式の遠心分離機として動作させ、ケーキの粒子が微小である場合に遠心沈降式の遠心分離機として動作させるようにすることができ、1台の遠心分離装置で遠心沈降作用を利用した固液分離処理と、ろ過作用を利用した固液分離処理との双方を行うことができる。この場合、可撓スリーブ7としては、ろ布のようなろ過機能を有するものを使用する。
【0094】
また周壁部に多数の透孔を有するバスケットを用いる場合でも、バスケット1の周壁部の固液分離処理室A2を構成する部分の内周に液を透過させない材料からなるシートを配置して、このシートによりバスケットの周壁部の透孔を塞ぐことにより、遠心沈降作用のみによる固液分離処理を行わせることができる。
【0095】
上記の実施形態では、バスケットの開口部の内周部とケーキ押出板の外周部との間に可撓スリーブ7を設けたが、可撓スリーブ7を設けずに、ケーキ押出板2の働きのみによりケーキをバスケット外に排出するようにしてもよい。可撓スリーブを設けない場合、ケーキ押出板2の前進位置はバスケットの開口部付近に設定することもでき、バスケットの開口部の前方に設定することもできる。
【0096】
上記の実施形態では、蓋板3のフィードパイプ導入部の気密保持を容易にして、バスケット内から上澄み液を排出する際にバスケット内の圧力を外気圧よりも高い状態に保持することを容易にするために、フィードパイプ6をバスケット1と共に回転させるように構成したが、本発明はこのように構成する場合に限定されるものではなく、フィードパイプ6と蓋板3との間に相対的な回転を生じさせても、バスケット内の気密を保持することが可能なシール手段を蓋板3のフィードパイプ導入部に採用できる場合には、フィードパイプ6を前面カバー23に固定して、バスケットの蓋板3をフィードパイプ6に対して相対的に回転させるように構成してもよい。この場合上記の実施形態で用いたロータリジョイント26は不要になる。
【0097】
上記の実施形態では、排液装置9の押出板貫通部9Aにバスケットの径方向に伸びる径方向管路部902を設けているが、径方向管路部902を設けずに、押出板貫通部9A内の流路の隙間d側の端部をバスケット1の底壁部102側に開口させるようにしてもよい。
【0098】
上記の実施形態では、バスケットの固液分離処理室内の圧力が設定圧力を超えた場合に、排液装置9内の流路を開くチェックバルブを排液装置9の隙間d側の端部に設けているが、チェックバルブは、排液装置9の液分導入部9B側に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 バスケット
101 バスケットの周壁部
102 バスケットの底壁部
103 バスケットの開口部
2 ケーキ押出板
2a ケーキ押出板の一面
2b ケーキ押出板の他面
d ケーキ押出板とバスケットの底壁部との間の隙間
h 排液孔
A1 排液室
A2 固液分離処理室
3 蓋板
4 連結棒
6 フィードパイプ
7 可撓スリーブ
9 排液装置
9A 排液装置の押出板貫通部
9B 排液装置の液分導入部
904 可動部
907 可動部を付勢するバネ
10 バスケット及びケーキ押出板を駆動する駆動装置
11 主軸
11a 主軸に設けられたスロット
12 スラスト軸
13 駆動装置を収容したハウジング
20 バスケットを収容する円筒状ケーシング
21 液分回収室
22 排液管
23 ケーキ回収室を構成する前カバー
24 ケーキ回収室
40 主軸を駆動するモータ
41 プーリ
42 プーリ
43 ベルト
45 スラスト軸に取り付けられたキー
50 ナット
51 ネジ棒
55 プーリ
56 ネジ棒を駆動するモータ
57 プーリ
58 ベルト