(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】測定試薬用ラテックス粒子、感作ラテックス粒子及び免疫比濁法用測定試薬
(51)【国際特許分類】
G01N 33/548 20060101AFI20221019BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
G01N33/548 B
G01N33/543 581C
(21)【出願番号】P 2019520316
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2018020076
(87)【国際公開番号】W WO2018216784
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2017103093
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 理
(72)【発明者】
【氏名】脇屋 武司
(72)【発明者】
【氏名】北原 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】家治 真亜紗
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 祐也
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-136547(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133771(WO,A1)
【文献】特開2001-296299(JP,A)
【文献】特開昭63-273060(JP,A)
【文献】特開2013-210526(JP,A)
【文献】特開2012-201819(JP,A)
【文献】特開2012-177098(JP,A)
【文献】特開2015-065060(JP,A)
【文献】特開昭58-047258(JP,A)
【文献】特開昭63-039909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径の変動係数が10%以下、平均粒子径が250~1000nmの
免疫比濁法用測定試薬用ラテックス粒子であって、
上記ラテックス粒子は、屈折率1.60以上の化合物を20重量%以上
80重量%以下含み、
上記ラテックス粒子を超純水に分散させて得られた固形分濃度1重量%の分散液を胴内径10.8mmの円筒状の10mlメスシリンダーに入れて10日間静置したときの上澄み液の深さが5mm以内であり、
上記屈折率1.60以上の化合物が、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格、からなる群から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する化合物を含み、
中空形状の、
免疫比濁法用測定試薬用ラテックス粒子。
【請求項2】
上記屈折率1.60以上の化合物が、重合性化合物である、請求項1記載の
免疫比濁法用測定試薬用ラテックス粒子。
【請求項3】
上記屈折率1.60以上の化合物が、重合性化合物の重合体である、請求項1または2に記載の
免疫比濁法用測定試薬用ラテックス粒子。
【請求項4】
上記ラテックス粒子が、フェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格からなる群から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する多官能重合性化合物を10重量%以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の
免疫比濁法用測定試薬用ラテックス粒子。
【請求項5】
上記ラテックス粒子において、乾燥粉体の比重が1.17g/cm
3未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の
免疫比濁法用測定試薬用ラテックス粒子。
【請求項6】
上記ラテックス粒子において、吸光度が下記式(1)で示す値を、5%を越えて下回らない、請求項1から5のいずれか1項に記載の
免疫比濁法用測定試薬用ラテックス粒子。
式(1):吸光度=3.28×粒子径(μm)-0.28
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の測定試薬用ラテックス粒子に、被検物質と特異的に結合する物質を担持させた、
免疫比濁法用感作ラテックス粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の感作ラテックス粒子が緩衝液中に分散している、免疫比濁法用測定試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物質の濃度が希薄な測定試料を測定する場合であっても高感度な測定を可能にする測定試薬用ラテックス粒子に関する。また本発明は測定試薬用ラテックス粒子を用いた感作ラテックス粒子及び免疫比濁法用測定試薬にも関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査をはじめとする種々の分野において、測定試薬中の微量な被検物質を定量する方法として、抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法が広く使用されている。なかでもラテックス粒子を抗原又は抗体の担体として用いたラテックス免疫比濁法は、操作が簡便で、かつ、測定に要する時間が短い。そこで、測定方法としてラテックス免疫比濁法を採用する微量被検物質の種類が更に増加している。
【0003】
ラテックス免疫比濁法による測定試料中の抗原又は抗体等の被検物質の定量は、抗原又は抗体を担持したラテックス粒子(以下、「感作ラテックス粒子」ともいう。)の凝集により生ずる吸光度の変化を光学的に検出することにより行われる。この吸光度の変化は、感作ラテックス粒子の凝集によって形成される凝集塊に由来する見かけの粒子径の変化に基づくものである。
【0004】
従来、ラテックス免疫比濁法において担体として用いられるラテックス粒子には、抗原又は抗体の感作(固定化)が容易であり、比較的安価で、かつ重合反応も制御しやすいことから、ポリスチレンを主成分とするポリスチレン系ラテックス粒子が用いられてきた(特許文献1等)。しかし、ポリスチレン系ラテックス粒子をラテックス免疫比濁法における担体として用いた場合、測定試料中の被検物質の濃度が希薄であると、形成される凝集塊の数が少なくなり、また、凝集塊の見かけの粒子径もラテックス粒子数に対する被検物質の濃度が適当な範囲である場合に比べ小さくなることから、十分な感度が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2003-005031号
【文献】特開2008-215816号
【文献】特開2001-296299号
【文献】国際公開第2012-133771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
感度を上げる方法としては、大きく二つある。(1)一つ目は、ラテックス粒子の粒径を大きくすることである。粒径が大きいと、吸光係数が大きくなるため、希薄濃度でも、凝集の変化の差が検出しやすくなる。(2)二つ目は、ラテックス粒子の屈折率を上げ、結果として、吸光係数を上げることである。同じ粒径であれば、屈折率が高いラテックス粒子の方が、吸光係数が高いため、より希薄な環境でも検出感度を維持できるためである。
しかしながら、(1)については、ラテックス粒子の粒径が大きくなりすぎると、ラテックス粒子が測定中に沈降したり、保存中に保存便の底に沈むため、測定誤差を拡大したり、貯蔵安定性を著しく損なうという問題があった。
これを改善するため、特許文献2には、単孔中空構造を有するラテックス粒子を用いる方法が提案されているが、沈降問題は解決するも、単孔中空構造由来の吸光係数の低下が、検出の感度を下げるため、実質的な感度向上は達成できない。(2)については、例えば、特許文献3、4に、屈折率が高い材料で構成されたラテックス粒子を用いることで、感度を向上する方法が提案されている。しかしながら、屈折率の高い材料は一般的に比重が大きく、粒子の重量が重くなるため、粒径300nm未満でしか試薬として実用化できず、感度向上に限界があった。
【0007】
本発明は、被検物質の濃度が希薄な測定試料を測定する場合であっても高感度な測定を可能にする測定試薬用ラテックス粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、屈折率が1.6以上の化合物を含有したラテックス粒子の比重を下げることにより、粒子の沈降が抑制されることを知見した。この知見に基づき、従来試薬として実用化できなかった大粒径域の粒子を使用することで、吸光度を大きく向上させ、被検物質の濃度が希薄な測定試料を測定する場合であっても高感度な測定を可能にする測定試薬用ラテックス粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下の内容に関する。
[1]粒子径の変動係数が10%以下、平均粒子径が250~1000nmの測定試薬用ラテックス粒子であって、上記ラテックス粒子は、屈折率1.60以上の化合物を20重量%以上含み、上記ラテックス粒子を超純水に分散させて得られた固形分濃度1重量%の分散液を胴内径10.8mmの円筒状の10mlメスシリンダーに入れて10日間静置したときの上澄み液の深さが5mm以内となる、測定試薬用ラテックス粒子。
[2]上記屈折率1.60以上の化合物が、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格、カルバゾール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する化合物を含む、[1]記載の測定試薬用ラテックス粒子。
[3]上記屈折率1.60以上の化合物が、重合性化合物である、[2]記載の測定試薬用ラテックス粒子。
[4]上記屈折率1.60以上の化合物が、重合性化合物の重合体である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の測定試薬用ラテックス粒子。
[5]上記ラテックス粒子が、フェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格及びカルバゾール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する多官能重合性化合物を10重量%以上含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の測定試薬用ラテックス粒子。
[6]上記ラテックス粒子において、乾燥粉体の比重が1.17g/cm3未満である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の測定試薬用ラテックス粒子。
[7]上記ラテックス粒子において、吸光度が下記式(1)で示す値を、5%を越えて下回らない、[1]から[6]のいずれか1項に記載の測定試薬用ラテックス粒子。
式(1):吸光度=3.28×粒子径(μm)-0.28
[8][1]から[7]のいずれか1つに記載の測定試験用ラテックス粒子に、被検物質と特異的に結合する物質を担持させた、感作ラテックス粒子。
[9][8]に記載の感作ラテックス粒子が緩衝液中に分散している、免疫比濁法用測定試薬。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検物質の濃度が希薄な測定試料であっても高感度な測定を可能にする測定試薬用ラテックス粒子を提供することができる。本発明の測定試薬用ラテックス粒子は、従来のラテックス粒子に対して、比重を低下させることで沈降を抑制し、より大粒径の粒子の使用を可能にすることで、希薄濃度域における被検物質の測定感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
[測定試薬用ラテックス粒子]
本発明は、粒子径の変動係数(CV値)が10%以下、平均粒子径が250~1000nmの、屈折率1.60以上の化合物を20重量%以上含む測定試薬用ラテックス粒子であり、測定試薬用ラテックス粒子を純水に分散させて得られたラテックス粒子濃度1.0重量%の分散液を、胴内径10.8mmの円筒状の10mlメスシリンダーに入れて室温下に10日間静置したときの上澄み液の深さが5mm以内となる測定試薬用ラテックス粒子に関する。なお、「上澄み液の深さが5mm以内」とは、上澄み液の深さが0mm~5mmであることを意味し、測定試薬用ラテックス粒子の実用範囲の沈降度の下限値を記載したものである。また、「上澄み液」とは、濁度が元の値を100としたとき5%未満になった状態をいい、例えばピペットにて採取した上澄み液を、分光光度計(日立製U-3900)を用いて測定することで確認することが出来る。「超純水」とは、非抵抗値18.2MΩ・cm、TOC値5ppb以下の水をいう。「超純水」は、例えば、水道水直結型超純水装置 Milli-Q Integral MT 機器分析タイプ(メルク社製)によって得ることができる。
【0014】
[粒子]
[ポリマーラテックス]
本発明の試薬測定用ラテックス粒子の一態様としては、重合性化合物の重合体(以下、「重合体」とも記載する。)と、屈折率1.60以上の化合物(以下、「高屈折率化合物」とも記載する)と、を少なくとも含む、ラテックス粒子が挙げられる。
【0015】
[重合性化合物の重合体]
本発明の試薬測定用ラテックス粒子に含まれる重合体は、一種または二種以上の重合性化合物の重合体であり、上記重合性化合物を含む組成物に光照射や加熱等の重合処理を施すことにより得ることができる。
重合性化合物とは、1分子中に1つ以上の重合性官能基を含む化合物であり、重合性官能基を1分子中に1つ含む単官能重合性化合物であっても、重合性官能基を1分子中に2つ以上含む多官能重合性化合物であってもよい。また、重合性化合物は、モノマーであっても、オリゴマーやプレポリマー等の多量体であってもよい。
上記重合性化合物は、一種単独であってもよく、二種以上の任意の割合の組み合わせでもよい。また、二種以上の重合性化合物を用いる場合、二種以上の重合性化合物の組み合わせは、二種以上の単官能重合性化合物の組み合わせ、二種以上の多官能重合性化合物の組み合わせ、一種以上の単官能重合性化合物と一種以上の多官能重合性化合物との組み合わせ、のいずれであってもよい。
これらの重合体の分子量は、例えば80以上50,000以下であるが、特に限定されるものではない。尚、本発明及び本明細書において分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量をいうものとする。後述する、重量平均分子量は、下記測定により測定された値である。
GPC装置:GPCシステム(島津製作所社製)
カラム:K-804L(shodex社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
【0016】
[重合性官能基]
重合性官能基は、ラジカル重合性官能基、イオン重合性官能基、配位重合性官能基であってもよく、ラジカル重合性官能基が好ましい。重合反応の反応性の観点からは、エチレン性不飽和結合含有基、エポキシ基、オキセタン基、メチロール基等の重合性基を挙げることができ、エチレン性不飽和結合含有基がより好ましい。エチレン性不飽和結合含有基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基を挙げることができ、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基がより好ましい。なお、本発明及び本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」との記載は、アクリロイル基、とメタクリロイル基の少なくともいずれかの意味で用いるものとする。「(メタ)アクリロイルオキシ基」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル」等も同様である。多官能重合性化合部については、化合物に含まれる重合性基の数は1分子中に2つ以上である。
【0017】
上記エチレン性不飽和結合含有基を有する単官能重合性化合物の具体例としては、特に限定されず、例えば、ビニル化合物として、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のナフタレン系化合物;2-ビニルアントラセン、9-ビニルアントラセン等のアントラセニル化合物;3-ビニルフェナントレン、9-ビニルフェナントレン等のフェナントレン化合物;6-ビニルジナフトチオフェン、6-ビニルエーテルジナフトチオフェン等のジナフトチオフェン系化合物;9-ビニルカルバゾール等のカルバゾール化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;塩化ビニル、フッ化ビニル、等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリル化合物として、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族(メタ)アクリレート化合物;2-(1-ナフチル)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸フェナンチル、6-(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン、6-(メタ)アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン等の多環芳香族(メタ)アクリレート化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート化合物;α-オレフィン化合物として、ジイソブチレン、イソブチレン、リニアレン、エチレン、プロピレン等のオレフィン化合物;共役ジエン化合物として、イソプレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0018】
上記エチレン性不飽和結合含有基を有する多官能重合性化合物の具体例としては、特に限定されず、例えば、ビニル化合物として、ジビニルベンゼン、2,12-ジビニルジナフトチオフェン、3,11-ジビニルジナフトチオフェン、5,9-ジビニルジナフトチオフェン、2,12-ジビニルオキシメチルジナフトチオフェン、3,11-ジビニルオキシジナフトチオフェン、1,4-ジビニロキシブタン、ジビニルスルホン等のビニル系単量体;(メタ)アクリル化合物として、2,12-ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン、3,11-ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシメトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン;アリル化合物として、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、9,9’-ビス(4-アリルオキシフェニル)フルオレン;シリコーン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシランアルコキシド化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシエチルビニルシラン、エチルメチルジビニルシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性二重結合含有シランアルコキシド;デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン;片末端シリコーンオイル、両末端シリコーンオイル、側鎖型シリコーンオイル等の変性(反応性)シリコーンオイル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、屈折率を低下させないことから、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルフェナントレン、ビニルジナフトチオフェン、ビニルカルバゾール等の多環芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸ベンジル、ジ(メタ)アクリル酸フルオレン、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸フェナンチル等の芳香族又は多環芳香族骨格を有する、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0020】
上記芳香族ビニル化合物及び多環芳香族ビニル化合物において、芳香族環の置換基としてはアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ハロゲン基(例えば、フッ素基、塩素基、臭素基、ヨウ素基)等が挙げられる。上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。また上記アルキル基として環状アルキル基を用いることもでき、例えば炭素原子数1~10の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0021】
[屈折率1.60以上の化合物]
本発明の試薬測定用ラテックス粒子は、高屈折率化合物(屈折率1.60以上の化合物)を含む。高屈折率化合物としては特に限定されないが、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格、ピレン骨格、カルバゾール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する化合物が好ましい。好ましい骨格の組み合わせとしては、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、ナフタレン骨格が挙げられる。
高屈折率化合物の具体例としては、フルオレン、ジナフトチオフェン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、カルバゾール等が挙げられる。中でも、フルオレン、ジナフトチオフェン、ナフタレンが好ましい。
【0022】
高屈折率化合物が重合性官能基を有する重合性化合物の場合、単独重合による重合体を形成してもよく、また、他の重合性化合物と共重合された重合体を形成してもよい。前記重合性化合物は具体例としては9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシメトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、6-ビニルジナフトチオフェン、6-ビニルエーテルジナフトチオフェン、2,12-ジビニルジナフトチオフェン、3,11-ジビニルジナフトチオフェン、5,9-ジビニルジナフトチオフェン、2,12-ジビニルオキシメチルジナフトチオフェン、3,11-ジビニルオキシジナフトチオフェン、2,12-ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン、3,11-ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン、1―ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン、ナフチルメタクリレート等の、ナフチル化合物;2-ビニルアントラセン、9-ビニルアントラセン等のアントラセニル化合物;ビニルフェナントレン;ビニルピレン、N-ビニルカルバゾールが挙げられる。中でも、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、ナフタレン骨格からなる群から選ばれる少なくとも一つの骨格を有する化合物が好ましい。
【0023】
[高屈折率化合物含有量]
高屈折率化合物は、試薬測定用ラテックス中に20重量%以上含まれることが好ましい。20重量%未満であると、後述する、試薬測定用ラテックスの中空化由来の吸光度の低下を補うことができず、感度が低下することがある。より好ましくは、30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。なお、上限に特に制限はないが、96重量%以下である。
【0024】
[多孔中空構造]
本発明の試薬測定用ラテックス粒子は、多孔中空構造を有している。多孔中空構造を有することで、多孔中空構造ではないラテックス粒子に対し、比重が軽い。
多孔とは、粒子断面を観察したときに、中空構造が2個以上あるものを言い、より好ましくは5個以上、更に好ましくは10個以上の中空構造を有する。なお、中空構造は独孔でも良く、連孔でも良い。多孔中空構造を有する粒子は、沈降を抑制することができ、試薬再現性を高められる上、単孔構造に比べ粒子の屈折率低下を抑制し、高感度な測定を可能にする。上記多孔中空構造の孔の直径は100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは10nm以下が好ましい。
孔の態様としては、ラテックス粒子の表面に形成された凹凸形状の他に、ラテックス粒子を形成するポリマー鎖間の空隙や、前者と後者を共に備える態様が挙げられる。
【0025】
試薬測定用ラテックス粒子の多孔中空構造の確認方法としては、SEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)を用いた観察方法が挙げられる。孔が小さく観察が困難な場合、例えば上記に記載の乾燥粉体の比重を測定することで多孔中空構造を確認することができる。また、連孔の場合、粒子の比表面積が大きくなることから、例えばカンタクローム・インスツルメンツ社製「NOVA4200e」等を用いたBET比表面積を測定することで多孔中空構造を確認することができる。この場合、BET比表面積は理論値6/ρD(ρ:密度、D:粒径)よりも大きくなる。好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、更に好ましくは5倍以上である。
【0026】
その他の多孔中空構造の確認方法としては、多孔中空構造に起因して表面積が大きいという試薬測定用ラテックス粒子の特徴を生かした方法が挙げられる。具体的には、まず、多孔中空構造を有するラテックス粒子を所定の金属系染料に含漬させた後、このラテックス粒子を焼成して得られる金属残重量を測定する。また上述のラテックス粒子と同様の平均粒子径等を有する、多孔構造ではないラテックス粒子についても同様に金属残重量を測定する。このようにして得られた各ラテックス粒子の金属残重量差から多孔中空構造の存在が確認できる。
また、試薬測定用ラテックス粒子の多孔中空構造部分を染色した後に、ラテックス粒子の断面観察を行う方法が挙げられる。具体的には、試薬測定用ラテックス粒子を所定の染料に含漬させ、多孔中空構造の孔部分を染色した後に、エポキシ樹脂に埋包し、クロスセクションポリッシャー(JEOL社製IB-19520CCP)で粒子断面を出した後、高感度YAG反射電子検出器を取り付けたFE-SEM(S-4800、株式会社日立ハイテクノロジー社製)により観察することができる。
【0027】
一般に、粒子径が小さいラテックス粒子が、溶媒の入った容器の底に沈降もしくは凝集した場合、ラテックス粒子同士が密に充填され合うため、いくら溶媒を撹拌してもラテックス粒子を再分散させることは難しい。しかし、ポリマー鎖間の空隙によりラテックス粒子に多孔中空構造が形成されている場合、ラテックス粒子が毛糸球状となることに起因して、ラテックス粒子同士が緩やかに充填され合う。そのため、多孔中空構造を有するラテックス粒子が溶媒の入った容器の底に沈降もしくは凝集した場合であっても、溶媒を撹拌することにより、ラテックス粒子を容易に再分散させることができる。
【0028】
[架橋材]
本発明の試薬測定用ラテックス粒子は、多孔構造を維持しやすくなるため、架橋材を含むことが好ましい。上記架橋材としては多官能重合性化合物が好ましい。
上記多官能重合性化合物は特に限定されず、上述のものが使用可能であるが、屈折率を低下させないことから、芳香族骨格若しくは多環芳香族骨格を有するものが好ましい。中でもフェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格、ピレン骨格、カルバゾール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1つの骨格を有するものがより好ましい。
上記多官能重合性化合物としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシメトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、2,12-ジビニルジナフトチオフェン、3,11-ジビニルジナフトチオフェン、5,9-ジビニルジナフトチオフェン、2,12-ジビニルオキシメチルジナフトチオフェン、3,11-ジビニルオキシジナフトチオフェン、2,12-ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン、3,11-ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン等が挙げられる。
上記ラテックス粒子は多官能重合性化合物による単独重合体もしくは他の重合性単量体との共重合体を含有することが好ましい。上記他の重合性単量体との共重合体の場合、多孔構造をより維持しやすくする観点から、多官能重合性化合物は5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。
【0029】
[製造方法]
本発明の試薬測定用ラテックス粒子の製造方法は特に限定されず、乳化重合法、ミニエマルション重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンション重合法、ソープフリー重合法、シード法、液中乾燥法、転相乳化法、および、これらの組み合わせが用いられる。
より具体的に、高屈折率化合物を20重量%以上含有させる好ましい方法としては、
(1)重合性化合物、高屈折率化合物、重合開始剤と、重合性化合物、高屈折率化合物の双方が溶解可能な疎水性溶媒を混合し重合性化合物溶液を調整する工程;前記重合性化合物溶液を、界面活性剤や分散安定剤が溶解した水溶液に添加後、乳化、転送乳化、懸濁等により液滴を形成する工程;加熱等により、重合性化合物を重合する工程;疎水性溶媒を留去する工程;フィルトレーション、分級等で、粒径を揃える工程を含む方法[乳化、懸濁重合法]、
(2)重合体と高屈折率化合物とを双方溶解可能な疎水性溶媒に溶解させ、疎水性溶液を調製する工程;前記疎水性溶液を界面活性剤や分散安定剤が溶解した水溶液中にて、液滴を形成する工程;疎水性溶媒を留去する工程;フィルトレーション、分級等で粒径を揃える工程を含む方法[液中乾燥法]、
(3)界面活性剤及び/又は分散安定剤が溶解した水に、テンプレートとなる単官能重合性単量体の重合体からなる粒子(以下、「シード粒子」とも記載する)を分散させる工程;シード粒子と高屈折率化合物の双方を可溶化可能な疎水性溶媒に高屈折率化合物を溶解させた疎水性溶液を添加する工程;前記粒子内に、疎水性溶媒と共に高屈折率化合物を吸収させる工程;疎水性溶媒を留去する工程を含む方法[シード膨潤法]および
(4)界面活性剤及び/又は分散安定剤が溶解した水に、シード粒子を分散させる工程;シード粒子と高屈折率化合物の双方が溶解可能な疎水性溶媒に高屈折率化合物、重合性化合物、重合開始剤を溶解させた疎水性溶液を添加する工程;シード粒子内に、疎水性溶媒と共に高屈折率化合物、重合性化合物、重合開始剤を吸収させる工程;加熱等により、重合性化合物を重合する工程:疎水性溶媒を留去する工程を含む方法[シード膨潤重合法]が例示される。
【0030】
シード粒子に、粒径の揃った粒子を用いることで、得られる試薬測定用ラテックス粒子の粒径が揃えられること、高屈折率化合物の含有量が均一にできることから、(3)、(4)の方法が好適に用いられる。更に、多孔構造が容易に形成しやすいことから、(4)の方法がさらに好適にもちいられる。
【0031】
[疎水性溶媒]
前記(1)(2)(3)(4)の製法で用いられる、疎水性溶媒としては、シード粒子または重合性化合物と高屈折率化合物の溶解可能な疎水性溶媒であれば、特に限定されないが、溶解性パラメータ(SP値)が10以下であり、後に疎水性溶媒を留去するために、沸点が水より低いことが好ましい。
具体的には、酢酸エチル(SP値:9.1、沸点:77.1℃)、ベンゼン(SP値:9.2、沸点:80.1℃)、ジイソプロピルエーテル(SP値:6.9、沸点:69℃)、クロロホルム(SP値:9.1、沸点:61.2℃)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。なかでも、酢酸エチルが好ましい。
SP値とは、沖津俊直、「接着」、高分子刊行会、40巻8号(1996)p342-350に記載された、沖津による各種原子団のΔF、Δv値を用い、下記式(A)により算出した溶解性パラメーターδを意味する。また、混合物、共重合体の場合は、下記式(B)により算出した溶解性パラメーターδmixを意味する。
δ=ΣΔF/ΣΔv (A)
δmix=φ1δ1+φ2δ2+・・・φnδn (B)
式中、ΔF、Δvは、それぞれ、沖津による各種原子団のΔF、モル容積Δvを表す。φは、容積分率又はモル分率を表し、φ1+φ2+・・・φn=1である。
上記疎水性溶媒としては特に限定されず、上述の他にも、例えば、ドデカン、デカン、イソドデカン、ノナン、n-ヘキシルエーテル、オクタン、イソオクタン、シクロオクタン、ジフェニルエーテル、ヘキサン、プロピルベンゼン、oージクロロベンゼン、エチルベンゼン、p-キシレン、トルエン、ジエチルエーテル、酢酸ブチル、四塩化炭素、塩化メチレン、シクロヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。上記疎水性溶媒は粒子を膨潤させ、嵩増し剤の役割をする。重合には関与せず、重合後に液中乾燥法等で除去しても良い。この場合は、沸点が100℃以下のシクロヘキサン等が好ましい。また、除去せずそのまま粒子内に留める場合、水への溶解が低く、比重が軽いデカンやヘプタン等が好ましい。
【0032】
[シード粒子]
前記シード粒子を構成する重合体としては単官能重合性化合物の重合体であれば特に限定されず、単可能重合性化合物としては、前述の化合物が使用可能である。ラテックス粒子の屈折率を可能な限り維持する観点から,前記単官能重合性化合物としては、スチレン、1-ビニルナフタレン、(メタ)アクリル酸ベンジルの1種または2種以上からなる重合体であることが好ましい。
シード粒子の製造方法としては、乳化重合、ミニエマルション重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合、ソープフリー重合、分散重合等、公知の方法が使用可能である。中でも、粒径制御性に優れる、ソープフリー重合が好適に用いられる。
ソープフリー重合に用いられる、重合性開始剤としては、水溶性の過硫酸化物、過酸化物、アゾ化合物が用いられる。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、キュメンヒドロパ-オキサイド、t-ブチルヒドロパ-オキサイドが例示される。
なお、シード粒子の分子量は、上述の「重合性化合物の重合体」の欄で記載されたと同様に、例えば80以上50,000以下であることが好ましい。
【0033】
シード粒子の粒径としては、目的とする測定試薬ラテックス粒子の粒径の10%~93%が好ましい。93%より大きくなると、必要量の高屈折率化合物や多官能重合性化合物を含有させることができず、10%より小さくなると、所定量の高屈折率化合物や多官能重合性化合物を吸収できず、狙いの粒径が得られなかったりする。
【0034】
上記シード粒子を調製する方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、乳化剤(界面活性剤)を使用しないソープフリー乳化重合法が好ましい。この乳化重合法に用いられる重合開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられるが、好ましくは過硫酸カリウムが良い。本発明では、反応容器にイオン交換水、例えば、モノマー、重合開始剤を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した後、65℃~80℃で12~42時間反応を行うことにより製造することができる。得られた粒子は低いCV値、優れた分散安定性を有する。
【0035】
[シード重合の開始剤]
前記(1)及び(4)の製造方法に用いられる重合開始剤としては、前記疎水性溶媒に溶解可能な非水溶性の開始剤であれば特に限定されない。具体的には、過酸化ベンゾイル、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-tert-ブチルパ-オキシヘキサハイドロテレフタレ-ト、tert-ブチルパ-オキシピバレ-ト、1,1,3,3-テトラメチルブチルパ-オキシ2-エチルヘキサノエイト、tert-ブチルパ-オキシイソプロピルカ-ボネ-ト、ジ-2-エチルヘキシルパ-オキシジカ-ボネ-ト、ジ-α-クミルパ-オキサイド、tert-ブチルパ-オキシベンゾエート、tert-ブチル-α-クミルパ-オキサイド、ジ-tert-ブチルパ-オキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパ-オキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパ-オキシ)ヘキシン-3、4,4-ジ-tert-ブチルパ-オキシ吉草酸n-ブチルエステル、1,1-ビス(tert-ブチルパ-オキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルパ-オキシネオデカノエ-ト、t-ブチルパーオキシジエチルアセテート、ビス(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パ-オキサイド、tert-ブチルパ-オキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエ-ト、tert-ブチルパ-オキシ2-エチルヘキシルカ-ボネ-ト、tert-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、2,2-ジ-tert-ブチルパ-オキシブタン、ビス(tert-ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パ-オキシジカ-ボネ-ト、過酸化ジベンゾイル、ラウロイルパ-オキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(イソ酪酸メチル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル等のアゾ系化合物が挙げられるが、好ましくは過酸化ベンゾイルが良い。
【0036】
[測定試薬用ラテックス粒子の平均粒子径等]
本発明の測定試薬用ラテックス粒子の平均粒子径は、ラテックス免疫比濁法の具体的な方法や用いる測定機器の仕様等によって適宜選択すればよいが、好ましい下限は0.25μm(250nm)、好ましい上限は1μm(1000nm)である。
平均粒子径が0.25μm以下であると、凝集による光学的変化量が小さすぎて測定に必要な感度が得られないことがある。平均粒子径が1μmを超えると、測定試薬中の被検物質が高濃度であるときに感作ラテックス粒子の凝集による光学的変化量が光学的測定機器の測定可能領域を超えてしまい、被検物質の量に応じた光学的変化量が得られないことがある。なお、「粒子径」は、ベックマンコールター社製粒度分布測定装置「LS 13 320」を用いて測定した体積統計値の平均粒子径の値である。より好ましい下限は0.3μm(300nm)、より好ましい上限は0.8μm(800nm)である。よりさらに好ましい下限は0.35μm(350nm)、よりさらに好ましい上限は0.6μm(600nm)である。
【0037】
本発明の測定試薬用ラテックス粒子の粒子径の変動係数(CV値)は特に限定はされず、ラテックス免疫比濁法の具体的な方法や用いる測定機器の仕様等によって適宜選択すればよいが、好ましくは10%以下である。CV値が10%を超えると、感作ラテックス粒子の調製時の製造再現性が低下し、測定試薬の性能(測定再現性)が低下することがある。なお、上記粒子径の変動係数は、透過電子顕微鏡(TEM)画像より得られた500個の粒子について、下記(1)により算出される。
式(1):粒子径の変動係数(CV値)=粒子径の標準偏差/平均粒子径
【0038】
ラテックス粒子において、乾燥粉体の比重が1.17g/cm3未満であることが好ましい。下限について得に制限はないが、1.01g/cm3程度である。比重は1.05~1.15g/cm3がより好ましい。なお、「比重」とは、真比重計(例えば、島津製作所製アキュピックII1340)を用いて測定した値をいう。
【0039】
ラテックス粒子において、吸光度が下記式(1)で示す値を、5%を越えて下回らないことが好ましい。
式(1):吸光度=3.28×粒子径(μm)-0.28
なお、「5%を越えて下回らない」とは、
図1に示すとおり、粒子径を横軸、吸光度を縦軸に取り、式(1)を実線L1、L1より5%の下方境界線を鎖線L2で表した場合に、L2以下の斜線領域Xが除かれることを意味する。
【0040】
[感作ラテックス粒子/免疫比濁法用測定試薬]
本発明の測定試薬用ラテックス粒子を担体として、被検物質と特異的に結合する物質を担持させて、感作ラテックス粒子を製造することができる。本発明の測定試薬用ラテックス粒子に、被検物質と特異的に結合する物質を担持させた感作ラテックス粒子もまた、本発明の1つである。感作ラテックス粒子は緩衝液中に分散していることが好ましい。
【0041】
上記被検物質と特異的に結合する物質としては、免疫血清学的測定試薬(免疫学的凝集反応及び凝集阻止反応において使用されるもの)、生化学測定法として通常使用される生理活性物質であれば特に限定されない。なかでも、抗原抗体反応に利用できる物質が好適である。
【0042】
本発明における抗原抗体反応に利用できる物質としては、例えば、たんぱく質、核酸、核たんぱく質、エストロゲン等のホルモン、脂質等の抗原又は抗体が挙げられる。上記抗原としては、例えば、各種抗原、レセプター、酵素等が挙げられる。より具体的には、例えば、β2マイクログロブリン、C-反応性タンパク(CRP)、ヒトフィブリノーゲン、フェリチン、リウマチ因子(RA)、α-フェトプロテイン(AFP)、マイコ プラズマ抗原、HBs抗原等が挙げられる。 上記抗体としては、例えば、各種の毒素や病原菌等に対する抗体が挙げられる。より具体的には、例えば、抗ストレプトリジンO抗体、抗エストロゲン抗体、β2マイクログロブリン抗体、梅毒トレポネーマ抗体、梅毒脂質抗原に対する抗体、抗HBs抗体、抗HBc抗体、抗Hbe抗体、抗PSA抗体、抗CRP抗体等が挙げられる。
【0043】
なお、感作ラテックス粒子を作製するため測定試薬用ラテックス粒子に担持させる抗体としては、免疫グロブリン分子自体の他、例えば、F(ab’)2のような断片であってもよい。また、上記抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のどちらを用いてもかまわない。上記抗体の取得方法も通常使用される方法を用いることができる。本明細書において「抗原抗体反応」、「抗原」、「抗体」の語を用いる場合、通常の意味に加え、特異的な結合反応により感作ラテックス粒子を凝集させることができる上記の概念・形態のいずれをも含む場合があり、限定的に解釈してはならない。
【0044】
本発明の測定試薬用ラテックス粒子に被検物質と特異的に結合する物質を担持させて、感作ラテックス粒子を製造する方法としては特に限定されず、従来公知の物理的及び/又は 化学的結合により担持させる方法を用いることができる。本発明の感作ラテックス粒子における被検物質と特異的に結合する物質の担持量は、用いられる被検物質と特異的に結合する物質の種類により異なり、実験的に最適な量を適宜設定することができる。
なお、本明細書において「担持」、「感作」、「固定化」の語は、通常の意味を有し、同義に使用している。
【0045】
このような方法により得られた本発明の感作ラテックス粒子は、必要に応じてウシ血清アルブミン等で被覆(ブロッキング)処理を施し、適当な緩衝液に分散して感作ラテックス粒子分散液として用いる。感作ラテックス粒子分散液は、免疫比濁法用測定試薬として用いることができる。本発明の感作ラテックス粒子が緩衝液中に分散している免疫比濁法用測定試薬もまた、本発明の1つである。本発明の免疫比濁法用測定試薬は、測定に用いる希釈液(緩衝液)や標準物質等を組み合わせて、測定試薬キットとして用いることができる。
【0046】
上記希釈液は、測定試料等を希釈するのに用いられる。上記希釈液としては、H5.0~9.0の緩衝液であればどのようなものでも用いることができる。具体的には、例えば、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グッド緩衝液等が挙げられる。
【0047】
本発明の免疫比濁法用測定試薬や希釈液は、測定感度の向上や抗原抗体反応の促進のために、種々の増感剤を含有してもよい。上記増感剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキル化多糖類や、プルラン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0048】
本発明の免疫比濁法用測定試薬や希釈液は、測定試料中に存在する被検物質以外の物質により起こる非特異的凝集反応を抑制するためや、測定試薬の安定性を高めるために、アルブミン(牛血清アルブミン、卵性アルブミン)、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質やその分解物、アミノ酸又は界面活性剤等を含有してもよい。
【0049】
本発明の免疫比濁法用測定試薬を用いれば、測定試料中の被検物質と感作ラテックス粒子に担持された被検物質に特異的に結合する物質との反応により生じる感作ラテックス粒子の凝集の度合いを光学的に測定することにより、測定試料中の被検物質の量を測定することができる。上記光学的測定には、散乱光強度、透過光強度、吸光度等を検出できる光学機器、又は、これらの検出方法を複数備えた光学機器等を用いることができる。代表的には、臨床検査で広く使用されている生化学自動分析機であればいずれも使用することができる。
【0050】
上記凝集の度合いを光学的に測定する方法としては従来公知の方法が用いられ、例えば、凝集の形成を濁度の増加としてとらえる比濁法、凝集の形成を粒度分布又は平均粒子径の変化としてとらえる方法、凝集の形成による前方散乱光の変化を積分球を用いて測定し透過光強度との比を比較する積分球濁度法等が挙げられる。また、測定法としては、例えば、異なる時点で少なくとも2つの測定値を得て、これらの時点間における測定値の増加分(増加速度)に基づき凝集の程度を求める速度試験(レートアッセイ)や、ある時点(通常は反応の終点と考えられる時点)で1つの測定値を得て、この測定値に基づき凝集の程度を求める終点試験(エンドポイントアッセイ)等が挙げられる。なかでも、測定の簡便性、迅速性の点から比濁法による終点試験が好適である。本明細書において「免疫比濁」、「免疫比濁法」の語を用いる場合、上記の概念・形態のいずれも含むものとし、限定的に解釈してはならない。
【0051】
[その他の実施形態]
上述の発明を実施するための形態の欄において、試薬測定用ラテックス粒子の一態様として、重合性化合物の重合体と、屈折率1.60以上の化合物と、を少なくとも含む、ラテックス粒子を中心に説明した。しかし、本発明はこれらの態様に限定されることはなく、例えば、上述の重合体が、上述の高屈折率化合物と同様の組成である場合があり得る。具体的には、本発明には、シード膨潤法またはシード膨潤重合法において、シード粒子(重合性化合物の重合体)と、シード粒子内に包含される膨潤モノマー(屈折率1.60以上の化合物)とが、同様の組成である場合が包含される。
【実施例】
【0052】
以下、実施例、比較例により本発明の詳細について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
本発明の測定試薬用ラテックス粒子について、まずは、シード粒子をソープフリー乳化重合法により作製した。反応容器にイオン交換水1200mL、モノマーとして、1-ビニルナフタレン120mL、を加え攪拌し、その後、反応容器内を窒素置換した。反応容器内の温度が70℃に達した後、3%(w/v)過硫酸カリウム水溶液13mLを滴下した。3%(w/v)過硫酸カリウム水溶液の滴下から24時間後、反応を停止し、濾過してポリ1-ビニルナフタレン系シード粒子懸濁液を得た。
【0054】
上記ソープフリー乳化重合法により得られたシード粒子を使用して、本発明の測定試薬用ラテックス粒子を、シード膨潤重合を用いて作製した。1-ビニルナフタレン8.0g、過酸化ベンゾイル0.08gを酢酸エチル10gに溶解させ、常温で6時間攪拌し、溶液を得た。
上記シード粒子懸濁液20gに上記溶液を混合し、常温で24時間攪拌することでシード粒子に上記溶液を内包させた。その後、70℃で10時間加熱攪拌を行い、1-ビニルナフタレンの重合を行なった後、90℃で10時間加熱攪拌を行い、酢酸エチルを液中乾燥させることで、1-ビニルナフタレンの複合粒子を得た。得られたラテックス粒子は、平均粒子径が0.398μm、粒子径のCV値が5.3%であった。
【0055】
なお、ラテックス粒子の粒子径はベックマンコールター社製粒度分布測定装置「LS 13 320」を用いて測定した体積統計値の平均粒子径の値、CV値は、ラテックス粒子を常法に従ってコロジオン膜上に載せ、透過型電子顕微鏡により粒子画像を撮影し、画像上で観察された500個以上の粒子を計測する方法により求めた。
【0056】
[実施例2]
実施例1と同様にシード粒子を得た。1-ビニルナフタレン8.0g、ジビニルベンゼン1.0g、過酸化ベンゾイル0.09gを酢酸エチル10gに溶解させ、常温で6時間攪拌し、溶液とした後、上記種粒子懸濁液10gと混合し、実施例1と同様にシード膨潤重合にてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子は、平均粒子径が0.411μm、粒子径のCV値が4.5%であった。
【0057】
[実施例3]
実施例1と同様にシード粒子を得た。6―ビニルジナフトチオフェン2.0g、ジビニルベンゼン3.0g、過酸化ベンゾイル0.05gを酢酸エチル10gに溶解させ、常温で6時間攪拌し、溶液とした後、上記種粒子懸濁液50gと混合し、実施例1と同様にシード膨潤重合にてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子は、平均粒子径が0.420μm、粒子径のCV値が6.0%であった。
【0058】
[実施例4]
モノマーとしてスチレンを用いたこと以外は実施例1と同様にシード粒子を得た。9,9-ビス(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル社製 EA-0200)5.0g、過酸化ベンゾイル0.05gを酢酸エチル10gに溶解させ、常温で6時間攪拌し、溶液とした後、上記種粒子懸濁液50gと混合し、実施例1と同様にシード膨潤重合にてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子は、平均粒子径が0.436μm、粒子径のCV値が6.1%であった。
【0059】
[実施例5]
実施例1と同様にシード粒子を得た。6―ビニルジナフトチオフェン9.0g、過酸化ベンゾイル0.09gを酢酸エチル10gに溶解させ、常温で6時間攪拌し、溶液とした後、上記種粒子懸濁液10gと混合し、実施例1と同様にシード膨潤重合にてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子は、平均粒子径が0.463μm、粒子径のCV値が7.2%であった。
【0060】
[実施例6]
粒径調整を行った以外は、実施例2と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子は、平均粒子径が0.301μm、粒子径のCV値が3.6%であった。
【0061】
[実施例7]
粒径調整を行った以外は、実施例2と同様にしてラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子は、平均粒子径が0.600μm、粒子径のCV値が4.3%であった。
【0062】
[比較例1]
ソープフリー乳化重合を用いて作製した。反応容器にイオン交換水1200mL、モノマーとして、1-ビニルナフタレン120mL、を加え攪拌し、その後、反応容器内を窒素置換した。反応容器内の温度が70℃に達した後、3%(w/v)過硫酸カリウム水溶液13mLを滴下した。3%(w/v)過硫酸カリウム水溶液の滴下から24時間後、反応を停止し、濾過してポリ1-ビニルナフタレン系ラテックス粒子懸濁液を得た。得られたラテックス粒子は、平均粒子径が0.404μm、粒子径のCV値が4.9%であった。
本比較例は特許文献3、4に記載のラテックス粒子に相当する。
【0063】
[比較例2]
モノマーとしてメチルメタクリレートを用いたこと以外は実施例1と同様に種粒子を得た。得られたラテックス粒子は、平均粒子径が0.410μm、粒子径のCV値が3.9%であった。
本比較例は特許文献2に記載のラテックス粒子に相当する。
【0064】
[評価1]測定試薬用ラテックス粒子の比重測定
実施例1~4及び比較例1~2で得られた各測定試薬用ラテックス粒子を100℃3時間加熱乾燥した後、乳鉢で粉砕した乾燥粉体について、真比重計(島津製作所製アキュピックII1340)を用いて比重を測定し、比較評価を行った。結果を表1に示した。
【0065】
[評価2]測定試薬用ラテックス粒子の吸光度測定
実施例1~4及び比較例1~2で得られた各測定試薬用ラテックス粒子を濃度0.01重量%に調製し、分光光度計(日立製U-3900)を用いて波長580nmの吸光度を測定した。ポリスチレン粒子の波長580nmの吸光度については、一般的に下記式(2)で算出できることが判っている(特許文献1がこれに相当する)。
式(2):吸光度=2.72×粒子径(μm)-0.22
また、高屈折率材料の1-ビニルナフタレンとスチレンの組成比が20:80の場合、下記式(1)の直線に一致することが分かっている(特許文献3、4がこれに相当する)。
式(1):吸光度=3.28×粒子径(μm)-0.28
本発明では高感度(高吸光度)な粒子を得ることを目的としている為、式(2)を基準として、+20%以上高い場合は○○、+20~-5%を○、-5%以下を×として評価を行った。結果を表1、表2に示した。
【0066】
[評価3]測定試薬用ラテックス粒子の沈降度測定
実施例1~4及び比較例1~2で得られた各測定試薬用ラテックス粒子を超純水(水質:非抵抗値18.2MΩ・cm、TOC値5ppb以下)に分散して得られたラテックス粒子濃度1.0重量%の分散液を、円筒状の10mlメスシリンダー(柴田科学社製、商品名「有栓メスシリンダー カスタムA共通すり合わせガラス平栓付 026580-10A」/高さ190mm、胴外径13.1mm、胴内径10.8mm、材質ガラス)に入れて室温下で10日間静置した後、上澄み液の深さ(沈降度)を測定し、比較評価を行った。
評価(×:6以上 △:5 ○:3~4 ○○:2 ○○○:0~1)
結果を表1、表2に示した。
【0067】
【0068】
【0069】
表1、表2より、実施例1の粒子の比重は、比較例1の粒子に対して低比重化と沈降度の改善を確認し、実用範囲の3mm以下を達成した。また、多孔中空構造の為、粒子の屈折率が下がることなく、高感度(高吸光度)を達成している。実施例2では、架橋剤の添加による低比重化の効果アップを確認した。比較例2の粒子では、低比重化と沈降度の改善は見られるものの、粒子が単孔中空構造の為、屈折率が大きく低下し、通常のスチレン粒子よりも低い感度(吸光度)しか得ることが出来ない。
以上より、本発明の測定試薬用ラテックス粒子は、屈折率の高い材料を用いることで測定感度を高め、且つ多孔中空構造を有することにより、低比重化と、粒子の沈降を抑制することで、被検物質の濃度が希薄な測定試料を測定する場合であっても高感度な測定を可能にすることが確認された。