(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】データ伝送装置とデータ伝送システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/423 20060101AFI20221019BHJP
H04N 7/15 20060101ALI20221019BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20221019BHJP
H04R 3/02 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
H04L12/423
H04N7/15 120
H04R3/00 320
H04R3/02
(21)【出願番号】P 2019525089
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2018010331
(87)【国際公開番号】W WO2018230063
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2017114909
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 一浩
(72)【発明者】
【氏名】菊原 靖仁
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-101803(JP,A)
【文献】特開2006-140930(JP,A)
【文献】特開2005-181391(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/423
H04N 7/15
H04R 3/00
H04R 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通
信ネットワークを介して接続する端末との間でパケットを送受信するデータ伝送装置であって、
前記パケットは、
前記端末から出力される
音声信号である個別出力データが格納される第1スロットと、
前記端末に入力される入力データが格納される第2スロットと、
を含み、
前記端末に前記パケットを送信する送信部と、
前記端末に送信された前記パケットを受信する受信部と、
前記第1スロットに格納された前記個別出力データにより構成される出力データに基づいて、前記入力データを生成して前記第2スロットに格納する制御部と、
を有してなり、
前記入力データは、
前記端末から出力される前記音声信号の総和信号であり、前記端末の動作を制御する制御情報
として機能し、
前記端末は、前記制御情報に基づいて、所定の信号処理を実行する、
ことを特徴とするデータ伝送装置。
【請求項2】
前記第1スロットは、前記送信部が前記端末に前記パケットを送信するとき、リセットされる、
請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項3】
前記端末は、入力される音声に基づいて
前記音声信号を生成して出力する音声信号出力装置を備え、
前記音声信号出力装置から出力される前記音声信号は、前記制御情報に基づいて前記端末により信号処理される、
請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項4】
入力される音声に基づいて音声信号を生成して出力する音声信号出力装置、
を有してなり、
前記制御情報は、前記音声信号出力装置から出力される前記音声信号と、前記端末から出力される前記音声信号と、の総和信号である、
請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項5】
前記所定の信号処理は、
ゲイン調整処理、ノイズ検出処理、音声検出処理、のうち、少なくとも1の処理、
を含む、
請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項6】
前記端末は、前記制御情報と前記個別出力データとに基づいて、前記所定の信号処理を実行する、
請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項7】
マ
スター端末と、
前記マスター端末と通信ネットワークとを介して接続する少なくとも1のスレーブ端末と、
を有してなり、
前記マスター端末は、前記スレーブ端末との間でパケットを送受信し、
前記パケットは、
前記マスター端末と前記スレーブ端末それぞれから出力される
音声信号である個別出力データが格納される第1スロットと、
前記マスター端末と前記スレーブ端末とに入力される入力データが格納される第2スロットと、
を含み、
前記マスター端末は、前記個別出力データにより構成される出力データに基づいて、前記入力データを生成して前記第2スロットに格納し、
前記スレーブ端末が前記第2スロットに前記入力データが格納された前記パケットを受信したとき、前記入力データは、前記パケットを受信した前記スレーブ端末に入力され、
前記入力データは、
前記マスター端末から出力される前記音声信号と、前記スレーブ端末から出力される前記音声信号と、の総和信号であり、前記マスター端末と前記スレーブ端末それぞれの動作を制御する制御情報
として機能し、
前記マスター端末と前記スレーブ端末とは、前記制御情報に基づいて、所定の信号処理を実行する、
ことを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項8】
前記マスター端末は、複数の前記スレーブ端末と接続し、
前記スレーブ端末のそれぞれは、前記第1スロットに前記個別出力データを格納する、
請求項
7記載のデータ伝送システム。
【請求項9】
前
記スレーブ端末は、入力される音声に基づいて音声信号を生成して出力する音声信号出力装置を備え、
前記音声信号出力装置から出力される前記音声信号は、前記制御情報に基づいて前記スレーブ端末により信号処理される、
請求項
7記載のデータ伝送システム。
【請求項10】
環境騒音を収音するリファレンスマイクロホン、
を有してなり、
複数の前記スレーブ端末は、前記リファレンスマイクロホンが接続される特定スレーブ端末を含み、
前記特定スレーブ端末に対応する前記個別出力データは、前記リファレンスマイクロホンが収音した前記環境騒音に対応する環境信号を含み、
前記マスター端末は、前記環境信号に基づいて、前記入力データを生成する、
請求項
8記載のデータ伝送システム。
【請求項11】
前
記パケットは、前記マスター端末から前記スレーブ端末に通知されるマスター通知データと、前記スレーブ端末から前記マスター端末に通知されるスレーブ通知データと、のうち、少なくともいずれか一方を含み、
前記マスター端末は、前記出力データと、前記マスター通知データと前記スレーブ通知データとのうち少なくともいずれか一方と、に基づいて、前記入力データを生成する、
請求項
7記載のデータ伝送システム。
【請求項12】
前記制御情報は、
前記総和信号と、前記複数のスレーブ端末それぞれからの前記音声信号と、の比を含む、
請求項
7記載のデータ伝送システム。
【請求項13】
前
記マスター端末に接続され
、入力される音声に基づいて音声信号を生成して出力するマスター音声信号出力装置と、
前記スレーブ端末に接続され
、入力される音声に基づいて音声信号を生成して出力するスレーブ音声信号出力装置と、
を有してなり
、
前
記マスター端末は、前記入力データに基づいて、前記マスター音声信号出力装置のゲイン値を算出して、前記マスター音声信号出力装置からの音声信号を処理し、
前記スレーブ端末は、前記入力データに基づいて、前記スレーブ音声信号出力装置のゲイン値を算出して、前記スレーブ音声信号出力装置からの音声信号を処理する、
請求項
7記載のデータ伝送システム。
【請求項14】
前
記マスター端末と前記スレーブ端末とは、前記制御情報と前記個別出力データとに基づいて、前記所定の信号処理を実行する、
請求項
7記載のデータ伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ伝送装置とデータ伝送システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、会議システムに使用されるコントロールユニット(マスターユニット)などのデータ伝送装置は、同データ伝送装置に接続された各端末から送信された音声信号を処理(例えば、合成)して、各端末に送信する(例えば、特許文献1参照)。データ伝送装置は、ユニキャスト方式やブロードバンド方式などの伝送方式により各端末との間で信号の送受信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のデータ伝送装置により1つのシステムを構成する場合、例えば、1台のデータ伝送装置がマスター端末として動作し、他のデータ伝送装置はスレーブ端末として動作する。マスター端末は、スレーブ端末の動作の制御を行う。システム全体でゲイン調整や、ノイズ検出などの特定の機能を実現する場合、マスター端末は、同機能を実現するためのデータをスレーブ端末に送信し、システム全体で同データを共有する必要がある。しかし、特許文献1に開示された発明では、マスター端末は、音声データや映像データなどスレーブ端末に出力させるためのデータをスレーブ端末に送信するが、システム全体で特定の機能を実現するためのデータの共有は行わない。
【0005】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、各端末から受信したデータをシステム内で共有すると共に、同データに基づいて、システム全体として特定の機能を実現することが可能なデータ伝送装置とデータ伝送システムとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるデータ伝送装置は、通信ネットワークを介して接続する端末との間でパケットを送受信するデータ伝送装置であって、パケットは、端末から出力される個別出力データが格納される第1スロットと、端末に入力される入力データが格納される第2スロットと、を含み、端末にパケットを送信する送信部と、端末に送信された前記パケットを受信する受信部と、第1スロットに格納された個別出力データにより構成される出力データに基づいて、入力データを生成して第2スロットに格納する制御部と、を有してなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各端末から受信したデータをシステム内で共有すると共に、同データに基づいて、システム全体として特定の機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明にかかるデータ伝送システムの実施の形態を示すネットワーク構成図である。
【
図2】本発明にかかるデータ伝送装置の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図2のデータ伝送装置が送受信するパケットのデータ構造を示す模式図である。
【
図4】
図2のデータ伝送装置の情報処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図1のデータ伝送システムの情報処理の一部を示すシーケンス図である。
【
図6】
図1のデータ伝送システムの情報処理の別の一部を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかるデータ伝送装置と、データ伝送システムと、の実施の形態について説明する。
【0010】
●データ伝送システム●
先ず、本発明にかかるデータ伝送システムの実施の形態について説明する。
【0011】
●データ伝送システムの構成
図1は、本発明にかかるデータ伝送システム(以下「本システム」という。)の実施の形態を示すネットワーク構成図である。
【0012】
本システムSは、例えば、多人数の参加者が出席する会議や、授業、講習などで用いられる会議システムである。すなわち、例えば、本システムSは、参加者が使用する端末の制御や、音声信号などの信号の調整などを行う。
【0013】
本システムSは、マスターや親機に設定される端末(以下「マスター端末」という。)1と、4つのスレーブや子機に設定される端末(以下「スレーブ端末」という。)2A,2B,2C,2Dと、本システムSが設置された室内の空間の環境騒音を収音するリファレンスマイクロホン(不図示)と、を有してなる。以下、各スレーブ端末2A-2Dを区別することなく総称する場合、各スレーブ端末2A-2Dをスレーブ端末2と記載する。
【0014】
なお、スレーブ端末の数は、「4」に限定されない。すなわち、例えば、スレーブ端末の数は、「3以下」や「5以上」でもよい。
【0015】
マスター端末1と各スレーブ端末2A-2Dとは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などの通信ネットワーク3を介して接続される。マスター端末1は、パケットPを生成して、通信ネットワーク3を介してスレーブ端末2との間でパケットP(
図3参照)を送受信する。パケットPについては、後述する。
【0016】
各スレーブ端末2A-2Dは、各スレーブ端末2A-2Dが円環状に連なるリング接続により、マスター端末1と接続される。各スレーブ端末2A-2Dは、マスター端末1と通信可能である。すなわち、マスター端末1はスレーブ端末2Aに接続され、スレーブ端末2Aはスレーブ端末2Bに接続され、スレーブ端末2Bはスレーブ端末2Cに接続され、スレーブ端末2Cはスレーブ端末2Dに接続され、スレーブ端末2Dはマスター端末1に接続される。
【0017】
なお、各スレーブ端末は、各スレーブ端末が数珠繋ぎ状に連なるデイジーチェーン接続により、マスター端末と接続されてもよい。
【0018】
マスター端末1は、本発明にかかるデータ伝送装置(以下「本装置」という。)の例である。本装置1(マスター端末1)の構成については、後述する。
【0019】
スレーブ端末2は、例えば、スレーブ端末2に接続されるマイクロホン(不図示)の制御や、マイクロホンからの信号(音声信号)の混合、分配、バランス調整などの処理を行う。スレーブ端末2は、例えば、ミキサや会議システムのコントロールユニット、会議システムのディスカッションユニットなど、本装置1とデータの送受信を実行する端末である。スレーブ端末2に接続されるマイクロホンは、同マイクロホンに入力される音声に基づいて音声信号を生成して、同音声信号を出力する音声信号出力装置である。マイクロホンから出力される音声信号は、後述のとおり、制御情報に基づいてスレーブ端末2により信号処理される。スレーブ端末2が実行する信号処理は、例えば、ゲイン調整、エコーキャンセル、ノイズ検出、ボイス検出などである。
【0020】
なお、本システムがマイクロホンを備えてもよく、あるいは、本装置やスレーブ端末がマイクロホンを備えてもよい。
【0021】
スレーブ端末2は、入力ポート(不図示)と、出力ポート(不図示)と、制御部(不図示)と、記憶部(不図示)と、を備える。
【0022】
入力ポートは、本装置1や隣接するスレーブ端末2からのパケットPを受信する手段である。出力ポートは、本装置1や隣接するスレーブ端末2にパケットPを送信する手段である。入力ポートと出力ポートとは、例えば、コネクタや端子などの通信インターフェイス(I/F)、増幅器、などにより構成される。
【0023】
制御部は、パケットPへのデータの格納と、パケットPからのデータの取り込みと、を実行する手段である。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路により構成される。
【0024】
記憶部は、パケットPからのデータを記憶する手段である。記憶部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの記録装置や、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、などにより構成される。
【0025】
●データ伝送装置●
次に、本装置1について説明する。
【0026】
●本装置の構成
図2は、本装置1の実施の形態を示す機能ブロック図である。
同図は、スレーブ端末2と通信ネットワーク3とを併せて示す。
【0027】
本装置1は、スレーブ端末2からの信号の混合、分配、バランス調整などの処理を行う。本装置1は、例えば、ミキサや会議システムのコントロールユニットである。本装置1は、制御部10と、送信部20と、受信部30と、記憶部40と、を有してなる。
【0028】
制御部10は、本装置1が送受信するパケットPの生成や、スレーブ端末2の動作の制御、後述する信号処理を実行すると共に、本装置1全体の動作を制御する。制御部10は、例えば、CPU、MPU、DSPなどのプロセッサや、ASIC、FPGAなどの集積回路により構成される。制御部10の動作については、後述する。
【0029】
図3は、本装置1が送受信するパケットPのデータ構造を示す模式図である。
同図は、パケットPがアドレス格納領域Paと、制御データ格納領域Pcと、スロット領域Psと、を含むことを示す。
【0030】
「アドレス格納領域Pa」は、例えば、パケットPの送信先(スレーブ端末2)のMACアドレスや、パケットPの送信元(本装置1)のMACアドレスなど、本装置1とスレーブ端末2との間の通信や、スレーブ端末2同士の通信に必要なアドレスを格納する領域である。
【0031】
「制御データ格納領域Pc」は、例えば、本装置1で実行されるコマンドや、本装置1に接続されるスレーブ端末2で実行されるコマンド、などの通知データを格納する領域である。通知データは、本装置1からスレーブ端末2に通知されるマスター通知データと、スレーブ端末2から本装置1に通知されるスレーブ通知データと、を含む。
【0032】
「マスター通知データ」は、例えば、スレーブ端末2のステータスデータを取得するコマンドや、スレーブ端末2からの発話の要求を許可するコマンドなどを構成するデータである。「スレーブ通知データ」は、例えば、スレーブ端末2からの発話を要求するコマンドを構成するデータや、スレーブ端末2のステータスデータである。「ステータスデータ」は、例えば、スレーブ端末2に接続されているマイクロホンのオン・オフを示すデータや、スレーブ端末2に設定されているプライオリティを示す設定データ、スレーブ端末2に接続されているスピーカの音量を示す音量データなど、スレーブ端末2の動作状況を示すデータである。
【0033】
「スロット領域Ps」は、本装置1とスレーブ端末2とから出力されるデータ(個別出力データ)により構成される出力データや、本装置1の制御部10からスレーブ端末2に入力されるデータ(入力データ)を格納する領域である。「個別出力データ」は、例えば、マイクロホンにより収音された音声や室内の空調音などの環境音などの信号や、本装置1やスレーブ端末2がエコーキャンセルやノイズ検出、ボイス検出などに用いるリファレンス信号、などのオーディオデータである。「入力データ」は、制御部10が出力データに基づいて生成するデータである。入力データの詳細については後述する。
【0034】
スロット領域Psは、格納スロットPs1と取込スロットPs2とを含む。「格納スロットPs1」は、本装置1やスレーブ端末2から出力される個別出力データが格納される、書き込み専用の領域である。格納スロットPs1への個別出力データの格納は、格納スロットPs1に格納されている個別出力データに新たな個別出力データを加算することで実行される。加算された個別出力データの総和は、本発明における出力データである。「取込スロットPs2」は、スレーブ端末2に入力される(取り込まれる)入力データが格納される、スレーブ端末2の読み取り専用の領域である。格納スロットPs1は本発明における第1スロットであり、取込スロットPs2は本発明における第2スロットである。
【0035】
図2に戻る。
送信部20は、制御部10が生成したパケットPを、通信ネットワーク3を介してスレーブ端末2に送信する。送信部20は、例えば、コネクタや端子などのI/F、増幅器、などにより構成される。本装置1は、送信部20と受信部30と、スレーブ端末2と、の間で、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3に準拠した通信を行う。
【0036】
受信部30は、送信部20から送信されたパケットPをスレーブ端末2から受信する。受信部30は、例えば、I/F、増幅器、などにより構成される。
【0037】
記憶部40は、本装置1が後述する情報処理を実行するために必要な情報を記憶する手段である。記憶部40は、例えば、HDD、SSDなどの記録装置や、RAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、などにより構成される。
【0038】
●本システムの動作
次に、本システムSの動作について、説明する。
【0039】
図4は、本装置1の情報処理を示すフローチャートである。
図5は、本システムSの情報処理の一部を示すシーケンス図である。
【0040】
ここで、
図5は、本システムSの情報処理が処理(ST2a,ST2b,ST2c、ST2d)を含み、各スレーブ端末2が格納スロットPs1にデータを格納するときの例を示す。
【0041】
先ず、制御部10は、格納スロットPs1が空のパケットPを生成する(ST1)。送信部20は、スレーブ端末2AにパケットPを送信する(ST2)。
【0042】
スレーブ端末2Aは、格納スロットPs1に個別出力データ「Da1」を格納して(ST2a)、パケットPをスレーブ端末2Bに送信する。
【0043】
スレーブ端末2Bは、格納スロットPs1に個別出力データ「Db1」を格納して(ST2b)、パケットPをスレーブ端末2Cに送信する。
【0044】
スレーブ端末2Cは、格納スロットPs1に個別出力データ「Dc1」を格納して(ST2c)、パケットPをスレーブ端末2Dに送信する。
【0045】
スレーブ端末2Dは、格納スロットPs1に個別出力データ「Dd1」を格納して(ST2d)、パケットPを本装置1の受信部30に送信する。
【0046】
なお、各スレーブ端末は、格納スロットに格納されている個別出力データの総和(出力データ)と、自己の個別出力データと、を比較して、格納スロットに個別出力データを格納するか否かを判定してもよい。すなわち、例えば、各スレーブ端末は、自己の個別出力データの信号レベルが、格納スロットに格納されている出力データの信号レベルよりも極端に小さいとき(例えば、誤差レベル)、格納スロットに個別出力データを格納しなくてもよい。
【0047】
次いで、受信部30は、パケットPを受信する(ST3)。制御部10は、パケットPの格納スロットPs1に個別出力データ「Dm1」を格納して(ST4)、格納スロットPs1に格納された出力データ(例えば、Da1+Db1+Dc1+Dd1+Dm1)を記憶部40に記憶する(ST5)。ここで、出力データを構成する個別出力データのいずれかは、リファレンスマイクロホンが収音した環境騒音に対応する信号(環境信号)を含む。すなわち、例えば、リファレンスマイクロホンがスレーブ端末2Dに接続されているとき、個別出力データ「Dd1」は、環境信号を含む。この場合、スレーブ端末2Dは、本発明における特定スレーブ端末である。
【0048】
制御部10は、格納スロットPs1に格納された出力データに基づいて、入力データを生成する(ST6)。制御部10は、入力データを記憶部40に記憶する(ST7)。つまり、入力データは、本装置1に入力される。
【0049】
図6は、本システムSの情報処理の別の一部を示すシーケンス図である。
【0050】
ここで、
図6は、本システムSの情報処理が処理(ST10a,ST10b,ST10c、ST10d)を含み、各スレーブ端末2が格納スロットPs1に個別出力データを格納するときの例を示す。
【0051】
次いで、制御部10は、入力データを取込スロットPs2に格納すると共に、格納スロットPs1をリセット、すなわち、格納スロットPs1を空にする(ST8)。送信部20は、格納スロットPs1が空、かつ、取込スロットPs2に入力データが格納されたパケットPを、スレーブ端末2Aに送信する(ST9)。
【0052】
ここで、「格納スロットPs1のリセット」は、制御部10が格納スロットPs1が空の状態のパケットPを生成することを指す。すなわち、例えば、格納スロットPs1のリセットは、格納スロットPs1に格納されている出力データを消去する処理と、格納スロットPs1が空の状態のパケットPを新たに生成する処理と、を含む。このように、格納スロットPs1を空にしたパケットPをスレーブ端末2に送信することで、スレーブ端末2に伝送されるパケットPの容量が小さくなる。そのため、本システムSの通信負荷は、軽減される。また、格納スロットPs1に不要なデータが混在せず、パケットPを介して送受信されるデータへのノイズの混入が抑制される。
【0053】
スレーブ端末2Aは、本装置1から取込スロットPs2に入力データが格納されたパケットPを受信したとき、パケットPに格納された入力データをスレーブ端末2Aの制御部に入力する(取り込む)。取り込まれた入力データは、スレーブ端末2Aの記憶部に記憶される。その結果、例えば、スレーブ端末2Aの動作を規定する設定内容は、後述のとおり、入力データに基づいて、変更される。このとき、スレーブ端末2Aは、格納スロットPs1に個別出力データ「Da2」を格納する(ST9a)。スレーブ端末2Aは、パケットPをスレーブ端末2Bに送信する。
【0054】
スレーブ端末2Bは、本装置1から取込スロットPs2に入力データが格納されたパケットPを受信したとき、パケットPに格納された入力データをスレーブ端末2Bの制御部に入力する(取り込む)。取り込まれた入力データは、スレーブ端末2Bの記憶部に記憶される。その結果、例えば、スレーブ端末2Bの動作を規定する設定内容は、後述のとおり、入力データに基づいて、変更される。このとき、スレーブ端末2Bは、格納スロットPs1に個別出力データ「Db2」を格納する(ST9b)。スレーブ端末2Bは、パケットPをスレーブ端末2Cに送信する。
【0055】
スレーブ端末2Cは、本装置1から取込スロットPs2に入力データが格納されたパケットPを受信したとき、パケットPに格納された入力データをスレーブ端末2Cの制御部に入力する(取り込む)。取り込まれた入力データは、スレーブ端末2Cの記憶部に記憶される。その結果、例えば、スレーブ端末2Cの動作を規定する設定内容は、後述のとおり、入力データに基づいて、変更される。このとき、スレーブ端末2Cは、格納スロットPs1に個別出力データ「Dc2」を格納する(ST9c)。スレーブ端末2Cは、パケットPをスレーブ端末2Dに送信する。
【0056】
スレーブ端末2Dは、本装置1から取込スロットPs2に入力データが格納されたパケットPを受信したとき、パケットPに格納された入力データをスレーブ端末2Dの制御部に入力する(取り込む)。取り込まれた入力データは、スレーブ端末2Dの記憶部に記憶される。その結果、例えば、スレーブ端末2Dの動作を規定する設定内容は、後述のとおり、入力データに基づいて、変更される。このとき、スレーブ端末2Dは、格納スロットPs1に個別出力データ「Dd2」を格納する(ST9d)。スレーブ端末2Dは、パケットPを本装置1の受信部30に送信する。
【0057】
受信部30は、パケットPを受信して(ST10)、パケットPを制御部10に送信する。制御部10は、取込スロットPs2をリセットして(ST11)、本システムSの情報処理は、処理(ST4)に戻る。
【0058】
なお、本装置は、入力データが格納されたパケットをスレーブ端末から受信したとき、入力データを本装置の記憶部に記憶してもよい。換言すれば、取込スロットに格納された入力データが、本装置に入力されてもよい。
【0059】
このように、スレーブ端末2が取込スロットPs2に入力データが格納されたパケットPを受信したとき、入力データは、パケットPを受信したスレーブ端末2に入力される(取り込まれる)。すなわち、スレーブ端末2は、格納スロットPs1への個別出力データの格納の有無に関わらず、入力データを取り込む。そのため、スレーブ端末2は、マスター端末である本装置1と入力データを常に共有する。その結果、スレーブ端末2の動作は、本装置1が生成した入力データに基づいて制御される。
【0060】
●入力データ
制御部10により生成される入力データは、個別出力データ(例えば、Da1,Db1,Dc1,Dd1,Dm1)の種類や、本装置1とスレーブ端末2それぞれの接続形態、スレーブ端末2のステータス情報、などにより決定される。
【0061】
例えば、個別出力データが本装置1やスレーブ端末2に接続されているマイクロホンからの音声信号のとき、入力データは、各音声信号の総和(Da1+Db1+Dc1+Dd1)と、本装置1に接続されるマイクロホンからの音声信号(Dm1)と、の総和(Da1+Db1+Dc1+Dd1+Dm1)である。すなわち、制御部10は、各スレーブ端末2A-2Dからの出力データ(Da1+Db1+Dc1+Dd1)に自己の個別出力データ(Dm1)を加算して出力データ(Da1+Db1+Dc1+Dd1+Dm1)を生成(更新)し、出力データに基づいて入力データ(Da1+Db1+Dc1+Dd1+Dm1)を生成する。この場合、入力データは、本システムSを構成する全端末からの音声信号の総和信号(サミング信号)である。その結果、例えば、本装置1とスレーブ端末2とは、同総和信号に基づいて、マイクロホンのゲイン値を算出する。本装置1とスレーブ端末2とは、算出されたゲイン値に基づいて、マイクロホンから出力される音声信号の信号処理を実行する。この場合、総和信号は、本装置1とスレーブ端末2それぞれの動作を制御する、本発明における制御情報の例である。すなわち、本システムSは、パケットPの送受信を介して、本システムS全体でのリアルタイムのゲインシェアリングを実現する。本装置1に接続されるマイクロホンは本発明におけるマスター音声信号出力装置であり、スレーブ端末2に接続されるマイクロホンは本発明におけるスレーブ音声信号出力装置である。
【0062】
ここで、前述のとおり、特定スレーブ端末であるスレーブ端末2Dから出力された個別出力データは、環境信号を含む。本装置1は、特定スレーブ端末(スレーブ端末2D)から出力された個別出力データに基づいて出力データを生成し、同出力データに基づいて入力データを生成する。換言すれば、本装置1は、特定スレーブ端末から出力された個別出力データ(環境信号)に基づいて、入力データを生成する。その結果、本システムSは、環境騒音を加味した、精度の良い信号処理を実現する。
【0063】
さらに、本装置1と各スレーブ端末2は、総和信号に基づいて、全てのマイクロホンからの音声信号の信号レベルの最大値を共有することができる。この場合、本装置1とスレーブ端末2とは、信号レベルの最大値を閾値(例えば、最大値±数dBの値)として、ボイス検出を実行する。すなわち、本システムSは、ボイス検出に必要な閾値を本システムS全体で共有する。
【0064】
ここで、例えば、個別出力データが本装置1やスレーブ端末2に接続されているマイクロホンが収音した暗騒音に対応する信号(暗騒音信号)のとき、入力データは、暗騒音信号の総和の信号である。この場合、本装置1とスレーブ端末2とは、例えば、同暗騒音信号の総和の信号をリファレンス信号として、ノイズ検出を実行する。
【0065】
このように、本システムSは、本装置1が各スレーブ端末2から収集する出力データの種類と、出力データに基づいて生成される入力データと、に基づいて、本システムS全体や、端末ごとに入力データを共有して、所定の信号処理を実行する。つまり、本システムSは、本システムS内で入力データを共有すると共に、同入力データに基づいて、本システムS全体としてある特定の機能を実現することができる。
【0066】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、スレーブ端末2が取込スロットPs2に入力データが格納されたパケットPを受信したとき、入力データは、パケットPを受信したスレーブ端末2の格納スロットPs1への出力データの格納の有無に関わらず、パケットPを受信したスレーブ端末2に入力される(取り込まれる)。そのため、本システムSにおいて、スレーブ端末2は、マスター端末である本装置1と入力データを共有し、入力データを更新することができる。
【0067】
また、以上説明した実施の形態によれば、格納スロットPs1は、送信部20がスレーブ端末2にパケットPを送信するとき、リセットされる。そのため、スレーブ端末2に送受信されるパケットPの容量が小さくなり、本システムSの通信負荷は、軽減される。また、格納スロットPs1に不要なデータが混在せず、パケットPを介して送受信されるデータへのノイズの混入が抑制される。
【0068】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、本システムSは、スレーブ端末2からの格納スロットPs1への出力データの格納と、マスター端末1(本装置1)の制御部10による入力データの生成と、取込スロットPs2に格納された入力データのスレーブ端末2への入力と、をパケットPの送受信と共に実行する。すなわち、本システムSは、本システムSの運用中に入力データを共有すると共に、共有した入力データを本システムSの運用中に更新することができる。
【0069】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、各スレーブ端末2は、格納スロットPs1に出力データを格納する。格納スロットPs1に格納される出力データは、既に格納スロットPs1に格納されている出力データに加算される。すなわち、各出力データは、各スレーブ端末2を経由するときに加算される。そのため、本装置1の出力データの処理負荷は、軽減される。
【0070】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本システムSでは、本装置1がスレーブ端末2からの出力データに基づいて入力データを生成し、同入力データがスレーブ端末2に入力される。その結果、本装置1やスレーブ端末2が備えていない機能(例えば、エコーキャンセル機能や、ノイズ検出機能)を備える新たなスレーブ端末2を本システムSに追加して、同新たなスレーブ端末2に入力データを共有させて同機能を実行させることで、本システムSは、容易に機能拡張を図ることができる。
【0071】
なお、以上説明した実施の形態は、本装置1の制御部10が格納スロットPs1に格納された出力データに基づいて、入力データを生成する構成であった。これに代えて、本装置の制御部は、格納スロットに格納された出力データに基づいて追加データを生成し、出力データと追加データとに基づいて、入力データを生成してもよい。すなわち、例えば、本装置の制御部は、スレーブ端末に接続されるマイクロホンが収音した音声信号の総和を出力データとして入手し、同総和と各音声信号との比を追加データとして算出する。本装置の制御部は、出力データと追加データとに基づいて、各マイクロホンに設定されるゲイン値を算出し、同ゲイン値を入力データとしてスレーブ端末に送信する。その結果、マスター端末である本装置は、全てのマイクロホンに設定されるゲイン値を算出して、本システム全体でのゲインシェアリングを実現する。この場合、ゲイン値は、本発明における制御情報の例である。
【0072】
また、以上説明した実施の形態によれば、入力データは、出力データに基づいて、生成される。これに代えて、入力データは、出力データと、スレーブ端末それぞれに対応する個別入力データと、に基づいて、生成されてもよい。「個別入力データ」は、同個別入力データに対応するスレーブ端末が信号処理の際に用いるデータである。個別入力データは、例えば、個別出力データの信号レベルなどに基づいて生成される重み係数である。スレーブ端末は、例えば、ゲイン値を算出するとき、個別入力データを用いてゲイン値の微調整を実行する。
【0073】
さらに、個別入力データは、例えば、ゲイン値などスレーブ端末の動作を制御する制御情報を含んでもよい。この場合、スレーブ端末に接続される(スレーブ端末が備える)マイクロホンから出力される音声信号は、同ゲイン値に基づいて信号処理される。
【0074】
さらにまた、例えば、スレーブ端末が本装置とは別の拠点に配置されたとき、入力データは、スレーブ端末からの音声信号を合成した信号(合成信号)と、本装置からの音声信号と、でもよい。すなわち、制御部は、出力データから、スレーブ端末からの合成信号と、本装置からの音声信号と、を入力データとして生成してもよい。この場合、合成信号は本装置に入力され、本装置の音声信号はスレーブ端末に入力される。その結果、本装置とスレーブ端末とは、入力データ(各合成信号)をエコーキャンセルのリファレンス値(遠隔側からの音声信号)として共有する。すなわち、本システムは、本システム全体としてエコーキャンセル機能を実現する。
【0075】
さらにまた、例えば、本装置のみがエコーキャンセル機能を備える場合、入力データは、各音声信号からエコー成分を除去した信号でもよい。
【0076】
さらにまた、例えば、出力データがスレーブ端末に接続されるマイクロホンからの音声信号のとき、入力データは、各音声信号の総和と、各音声信号と、の比でもよい。この場合、各音声信号の総和と各音声信号との比は、本装置やスレーブ端末の動作を制御する制御情報の例である。スレーブ端末は、入力データに基づいて、同スレーブ端末に接続されるマイクロホンに設定するゲイン値を算出する。すなわち、本システムは、本システム全体でのゲインシェアリングを実現する。
【0077】
さらにまた、本装置は、出力データとステータスデータとに基づいて、個別入力データを生成してもよい。すなわち、例えば、本装置は、マイクロホンのゲートがオンのマイクロホンのゲイン値を上げ、マイクロホンのゲートがオフのマイクロホンのゲイン値を下げる個別入力データ(重み係数など)を生成してもよい。また、例えば、本装置は、スレーブ端末のプライオリティに応じて、プライオリティの設定されているスレーブ端末のゲイン値を上げる個別入力データを生成してもよい。その結果、本装置は、スレーブ端末の状態に応じて、スレーブ端末の動作を制御することができる。
【0078】
このように、本装置は、出力データと、マスター通知データとスレーブ通知データとのうち少なくともいずれか一方と、に基づいて、個別入力データを生成してもよい。
【0079】
また、パケットは、複数の格納スロットと、複数の取込スロットと、を含んでもよい。この場合、本システムは、複数の取込スロットそれぞれに別の入力データを格納することにより、1回のパケットの送受信で各スレーブ端末に複数の入力データを共有させることができる。すなわち、本システムは、パケットの送受信による通信負荷を軽減させると共に、複数の処理をスレーブ端末に実行させる。
【符号の説明】
【0080】
S データ伝送システム
1 データ伝送装置
2 スレーブ端末
3 通信ネットワーク
10 制御部
20 送信部
30 受信部
40 記憶部
P パケット
Ps1 格納スロット(第1スロット)
Ps2 取込スロット(第2スロット)