(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20221019BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20221019BHJP
F21S 41/275 20180101ALI20221019BHJP
F21S 41/63 20180101ALI20221019BHJP
F21S 43/20 20180101ALI20221019BHJP
F21S 43/27 20180101ALI20221019BHJP
G09F 13/00 20060101ALI20221019BHJP
G09F 19/18 20060101ALI20221019BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20221019BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20221019BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221019BHJP
【FI】
F21S2/00 670
F21V5/00 610
F21V5/00 350
F21S2/00 330
F21S41/275
F21S41/63
F21S43/20
F21S43/27
G09F13/00 S
G09F19/18 Z
G03B21/00 D
F21W103:60
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019527981
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2018025663
(87)【国際公開番号】W WO2019009405
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2017134007
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505474256
【氏名又は名称】佐藤ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】土井 元裕
(72)【発明者】
【氏名】内田 皓介
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-500599(JP,A)
【文献】特開2014-048606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 5/00
F21S 41/275
F21S 41/63
F21S 43/20
F21S 43/27
G09F 13/00
G09F 19/18
G03B 21/00
F21W 103/60
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のデザインを表示する照明装置であって、
発光素子と、前記発光素子から出射された光を用いて二次光源を形成する光学素子と、前記二次光源が出射される出射面と、出射された前記二次光源が入射され、該二次光源上に焦点を有する光学レンズとを備え、
前記出射面に、前記デザインに対応した凸部および前記デザインに対応した凹部の少なくともいずれかの三次元形状が形成されて
おり、
前記三次元形状は、前記出射面に直交する方向に突出した又は凹んだ、前記出射面に平行な平面と、該平行な平面と前記出射面とを連結し、前記出射面に対して所定角度傾斜した平面とを有することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
所定のデザインを表示する照明装置であって、
発光素子と、前記発光素子から出射された光を用いて二次光源を形成する光学素子と、前記二次光源が出射される出射面と、出射された前記二次光源が入射され、該二次光源上に焦点を有する光学レンズとを備え、
前記出射面に、前記デザインに対応した凸部および前記デザインに対応した凹部の少なくともいずれかの三次元形状が形成されており、
前記三次元形状は、前記出射面に直交する方向に突出した又は凹んだ、前記出射面に平行な平面と、該平行な平面と前記出射面とを連結する曲面とを有することを特徴とする照明装置。
【請求項3】
所定のデザインを表示する照明装置であって、
発光素子と、前記発光素子から出射された光を用いて二次光源を形成する光学素子と、前記二次光源が出射される出射面と、出射された前記二次光源が入射され、該二次光源上に焦点を有する光学レンズとを備え、
前記出射面に、前記デザインに対応した凸部および前記デザインに対応した凹部の少なくともいずれかの三次元形状が形成されており、
前記三次元形状は、前記光学レンズの被写界深度の範囲内となる部分と、該被写界深度の範囲外となる部分を有することを特徴とする照明装置。
【請求項4】
前記三次元形状は、前記光学レンズの被写界深度の範囲内となる部分と、該被写界深度の範囲外となる部分を有することを特徴とする請求項1
または請求項2記載の照明装置。
【請求項5】
前記光学素子と前記出射面とが一体化され、前記光学素子の表面である前記出射面に前記三次元形状が形成されていることを特徴とする請求項1
から請求項4までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項6】
前記照明装置は、投影面を有しておらず、該装置外の投影面に投射して、前記デザインを表示することを特徴とする請求項1
から請求項5までのいずれか1項記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、任意のデザインが施されたデザインフィルムを用いて、模様が付いた投影像を映す照明装置が知られている(特許文献1参照)。例えば、特許文献1の照明装置は、光源から出射される光を遮光円板(デザインフィルム)およびレンズに透過させた後、ミラーに反射させて、ロゴマークなどのデザインを投影する。このようなデザインフィルムは、遮光部と非遮光部で構成されており、デザインフィルムを透過する光の光線量の差が模様となって表れる。このような照明装置は小型でありながら、投影像を大きく映し出せるように高倍率設計となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の照明装置では、装置の設計上デザインフィルムが微小となるため、デザインフィルムを高精度で作製しなければジャギーがそのまま投影像に表れ、投影品質に影響してしまう。そのため、デザインフィルムのコストが非常に高価になるという問題がある。また、デザインフィルムを照明装置に組み込む際には、その都度正確にデザインフィルムの位置決めをする必要があるため、デザインフィルム単体として扱いにくい部品となっている。
【0005】
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、デザインフィルムを使用しなくても、所定のデザイン(例えばロゴマーク)が表示できる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の照明装置は、所定のデザインを表示する照明装置であって、発光素子と、上記発光素子から出射された光を用いて二次光源を形成する光学素子と、上記二次光源が出射される出射面と、出射された上記二次光源が入射され、該二次光源上に焦点を有する光学レンズとを備え、上記出射面に、上記デザインに対応した凸部および上記デザインに対応した凹部の少なくともいずれかの三次元形状が形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記光学素子と上記出射面とが一体化され、上記光学素子の表面である上記出射面に上記三次元形状が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記三次元形状は、上記出射面に直交する方向に突出した又は凹んだ、上記出射面に平行な平面と、該平行な平面と上記出射面とを連結し、上記出射面に対して所定角度傾斜した平面とを有することを特徴とする。また、上記三次元形状は、上記出射面に直交する方向に突出した又は凹んだ、上記出射面に平行な平面と、該平行な平面と上記出射面とを連結する曲面とを有することを特徴とする。
【0009】
上記三次元形状は、上記光学レンズの被写界深度の範囲内となる部分と、該被写界深度の範囲外となる部分を有することを特徴とする。
【0010】
上記照明装置は、投影面を有しておらず、該装置外の投影面に投射して、上記デザインを表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の照明装置は、発光素子と、発光素子から出射された光を用いて二次光源を形成する光学素子と、二次光源が出射される出射面と、出射された二次光源が入射され、該二次光源上に焦点を有する光学レンズとを備え、出射面にデザインに対応した三次元形状が形成されているので、出射面から出射される二次光源はデザインに対応した三次元形状によって意図的に屈折または反射される。その結果、光学レンズに入射される光線量が減少し、その減少した部分が陰影となって表れるため、所定のデザインとして表示される。これにより、高精度加工のデザインフィルムを使用しなくても、所定のデザインを表示することができ、デザインフィルムに起因する不具合を解消することができる。
【0012】
光学素子と出射面とが一体化され、光学素子の表面である出射面に三次元形状が形成されているので、デザインが施された部品が別途必要にならず、部品点数を少なくすることができる。さらに、二次光源から出た光線が界面に接触する機会を減らすことで、光の利用効率を高くすることができる。
【0013】
上記三次元形状は、出射面に直交する方向に突出した又は凹んだ、出射面に平行な平面と、該平行な平面と出射面とを連結し、出射面に対して所定角度傾斜した平面とを有する。この場合、平行な平面から出射される光は屈折または反射しないため、光学レンズに入射される光線量は維持される。一方、傾斜した平面から出射される光は一様に屈折または反射するため、光学レンズに入射される光線量は減少する。その結果、傾斜した平面に相当する部分が、投影像において所定の太さの陰影となって表される。また、傾斜した平面の傾斜角度に応じて光の屈折量または反射量が変化することを加味して、陰影の濃淡を調整することができる。
【0014】
上記三次元形状は、出射面に直交する方向に突出した又は凹んだ、出射面に平行な平面と、該平行な平面と出射面とを連結する曲面とを有する。この場合、平行な平面から出射される光は屈折または反射しないため、光学レンズに入射される光線量は維持される。一方、曲面から出射される光は曲面に沿って連続的に屈折または反射するため、光学レンズに入射される光線量は緩やかに減少する。その結果、曲面に相当する部分が、投影像において陰影のグラデーションとなって表される。これにより、デザインフィルムでは表すことが困難な陰影のグラデーションを、簡便な手法で表示することができる。
【0015】
上記三次元形状は、光学レンズの被写界深度の範囲内となる部分と、該被写界深度の範囲外となる部分を有する。この場合、被写界深度の範囲内となる部分では陰影が鮮明となり、被写界深度の範囲外となる部分では陰影が不鮮明となる。これにより、陰影の濃淡を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一例である照明装置の概略構成図である。
【
図3】
図2の集光レンズによる投影図を示した図である。
【
図5】傾斜角度を変化させた場合の屈折を示す図である。
【
図6】
図5の傾斜角度を変化させた場合の陰影の濃淡を示す図である。
【
図9】被写界深度と凸部の高さの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の照明装置の一例を
図1に基づいて説明する。
図1において、照明装置1は略円柱状の照明装置である。照明装置1は、円筒状のハウジング2の空間内に、発光素子としてのLED3と、LED3の光軸方向(図中左から図中右への方向)に沿って配置された集光レンズ4と、光学レンズ7とを備えている。ハウジング2には、光学レンズ7の前面部に開口部2aが設けられており、開口部2aから出射された光が投影面に映し出される。ここで、照明装置の外形形状は、球体、長方形でも良いが円筒が比較的好ましい。また、開口部2aは光学レンズ7の仕様によって最善の位置に設定される。
【0018】
図1において、LED3は、基板上に設けられている。LED3としては、例えば、青色、赤色、および緑色などの単色系LED、あるいは青色系LED、赤色系LED、および緑色系LEDを備えたRGB型のLEDを使用できる。なお、LED3として、表面実装型LEDの他に、砲弾型LEDを用いることができる。また、上記LEDに代わって、LDもしくは電球でもよい。
【0019】
集光レンズ4は、LED3から出射された光を集光して、二次光源を形成する光学素子であり、ポリカーボネートやアクリル、ガラスなどの透明材質によって形成されている。集光レンズ4は、光軸方向中央部に位置するレンズ部5と、光学レンズ7側のレンズ部5の周方向に拡がるフランジ部6とを有している。レンズ部5において、LED3と対向する面は凸曲面(半球面)状の入射面5aを構成しており、光学レンズ7と対向する面は光軸方向に対する垂直面である出射面5bを構成している。この出射面5bには、後述する三次元形状が形成されている。なお、二次光源を形成する光学素子(
図1では集光レンズ4)としては、発光素子から出射された光を用いて二次光源を形成する光学素子であればよく、例えば、発光素子から出射された光を拡散して、二次光源を形成する光学素子であってもよい。
【0020】
光学レンズ(投影レンズ)7は、投影像を投影面(スクリーンなど)に映すレンズであって、二次光源上に焦点を有している。光学レンズ7は、ポリカーボネートやアクリル、ガラスなどの透明材質によって形成されている。光学レンズ7は、単一のレンズから構成されてもよく、複数のレンズから構成されてもよい。
【0021】
照明装置1は、例えば直径0.1~5cmの略円柱状をしており、投影面までの距離に応じて、例えば50~200倍の倍率で投影像を映すことができる。LED3から出射された光は、集光レンズ4の入射面5aによって屈折されて集光される。集光された光は、二次光源として出射面5bから光学レンズ7に向かって出射される。
【0022】
なお、照明装置1は、開口部2aの形状などに応じて任意の形状とすることができる。また、照明装置1は、必要に応じて、LED3と集光レンズ4の間に波長変換素子を備えていてもよい。波長変換素子は、例えば、YAG発光体を含んだシリコンなどの透過性材料などから構成され、LED3から出射された第1の分光分布の光を、第2の分光分布の光に波長変換する。波長変換素子によって、例えば、LED3の青色光の一部が黄色光に変換されると、白色光として出射される。
【0023】
ところで、従来の照明装置は、任意のデザインが施されたデザインフィルムを用いて、模様が付いた投影像を映す。この場合、デザインフィルムは集光レンズ4と光学レンズ7の間に配置される。しかしながら、デザインフィルムは、微小でありながらも設計に高い精度が求められることから、非常に高価である。また、照明装置に組み込む際に、その都度正確な位置決めが必要となるため、デザインフィルム単体として扱いにくい部品となっていた。
【0024】
そこで、本実施形態では、集光レンズ4の出射面5bにデザインに対応した三次元形状を設けた。三次元形状としては、凸部および凹部の少なくともいずれかを設けた。すなわち、出射面5bから出射される二次光源を凸部や凹部によって意図的に屈折させることで、光学レンズ7に入射される光線量を変化させ、所定のデザインを投影させる。これにより、デザインフィルムを使用しなくても、所定のデザインを表示することができる。
【0025】
三次元形状について、
図2に基づいて説明する。
図2は、集光レンズ4の出射面5bの拡大図である。例えば、直径Φ3~10mmの円形の出射面5bには、フライ返し状の凸部および凹部が複数形成されている。
【0026】
図2において、複数の凸部のうち凸部11について説明する。凸部11は、出射面5bから集光レンズ4外側に(光学レンズ7側に向かって)突出して形成されており、出射面5bに平行な平面である頂面Aと、頂面Aと出射面5bとを連結する傾斜面Bを有している。傾斜面Bは、出射面5bに対して所定角度傾斜した平面B1、および、出射面5bと頂面Aを滑らかに連結する曲面B2で構成される。また、高さH1は、出射面5bから凸部11の最高点までの距離、つまり出射面5bから頂面Aまでの距離を示しており、例えば5μm~500μmである。なお、高さH1は、複数の凸部間で、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0027】
続いて、複数の凹部のうち凹部12について説明する。凹部12は、出射面5bから集光レンズ4内側に(LED3側に向かって)凹んで形成されており、出射面5bに平行な平面である底面Cと、底面Cと出射面5bとを連結する傾斜面Dを有している。傾斜面Dは、出射面5bに対して所定角度傾斜した平面D1、および、出射面5bと底面Cを滑らかに連結する曲面D2の少なくともいずれかで構成される。また、深さH2は、出射面5bから凹部12の最低点までの距離、つまり出射面5bから底面Cまでの距離を示しており、例えば5μm~500μmである。なお、深さH2は、複数の凹部間で、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
図3は、
図2に示した三次元形状を有する集光レンズ4を用いて、1m先の投影面に投影させた写真である。なお、投影面において、円形の出射面5bに対応する円の直径は、Φ400~800mmである。
図3に示すように、複数のフライ返し状の凸部および凹部に対応する投影像(フライ返し状模様)が、複数映し出される。各投影像の輪郭は、陰影として表されており、各陰影の太さや濃淡(グラデーションを含む)はそれぞれ異なっている。この陰影は、凸部の傾斜面や凹部の傾斜面に対応する。すなわち、凸部の傾斜面や凹部の傾斜面を適宜調整することで、所定のデザインに応じた陰影の太さや濃淡を映すことができる。
【0029】
ここで、
図4に基づいて屈折による光線量の変化を説明する。
図4(a)は、出射面5bに凸部および凹部が形成されていない場合を示しており、
図4(b)は、出射面5bに凸部が形成されている場合を示している。
図4(a)では、二次光源として出射面5bのP点から出射される光は、屈折することなく光学レンズ7に入射される。一方、
図4(b)では、二次光源として出射面5bのP点から出射される光は、傾斜した平面B1によって屈折する。この場合、屈折によって光線の一部が光学レンズ7から外れるため、光学レンズ7に入射される光線量が減少する。その結果、投影面に陰影が生じる。ここで、出射面5bと傾斜した平面B1がなす傾斜角度をθとすると、例えば、好ましい傾斜角度θは、10~80度に設定される。
【0030】
図5および
図6に、傾斜角度θに応じた陰影の濃淡の変化を示す。
図5において、出射面5bには、傾斜角度が異なる4つの平面B1a~B1dが形成されており、各平面B1a~B1dの傾斜角度をθa~θdとする。なお、傾斜角度θa~θdの大小は、θa<θb<θc<θdとなっている。この場合、傾斜角度θが大きくなるほど光の屈折量が多くなり、光学レンズ7に入射される光線量は減少する。その結果、
図6に示すように、投影面での陰影の濃淡は、傾斜角度θが大きくなるほど濃くなる。言い換えると、陰影の明るさは、傾斜角度θが大きくなるほど暗くなる。また、各平面B1a~B1dにおいては陰影の濃淡が一定となっており、各平面B1a~B1dの幅に対応して陰影が所定の太さとなる。このように、傾斜した平面B1の傾斜角度θや幅によって、陰影の濃淡や太さを調整することができる。
【0031】
なお、
図4~
図6では、凸部の平面B1における光の屈折を示したが、凹部の平面D1についても同様のことが言える。具体的には、出射面5bと傾斜した平面D1がなす傾斜角度をαとすると、例えば、好ましい傾斜角度αは、10~80度に設定される。そして、傾斜角度αが大きくなるほど光学レンズ7に入射される光線量は減少し、陰影の濃淡が濃くなる。つまり、平面D1の傾斜角度αや幅によって、陰影の濃淡や太さを調整することができる。
【0032】
一方、
図7および
図8には、凸部の傾斜面Bが曲面B2である場合の陰影の濃淡の変化を示す。
図7において、出射面5bには、2つの曲面B2a、B2bが形成されている。出射面5bから出射する光は、曲面B2a、B2bによって屈折する。このとき、当該光は、曲面に沿って連続的に屈折するため、光学レンズ7に入射される光線量は緩やかに減少する。具体的には、出射面5bに近づくほど傾斜角度が大きくなり、光の屈折量が多くなる。その結果、陰影の濃淡が連続的に変化し、陰影にグラデーションが生じる。また、
図7において、曲面B2a、B2bは、各曲率が同じであり、各高さH1が異なっている。この場合、高さH1が大きい曲面B2aの方が、出射面5bに対して急勾配となるため、
図8に示すように、陰影の濃淡が濃い部分が曲面B2bよりも大きくなる。その他、曲面の曲率を変更させることによって、グラデーションを調整することができる。
【0033】
このように、凸部において、傾斜した平面B1では陰影の濃淡が一定であるのに対し、曲面B2では光線量を可変的に変化させることにより陰影にグラデーションを持たせることができる。なお、
図7および
図8では、凸部の曲面B2における光の屈折を示したが、凹部の曲面D2についても同様のことが言える。
【0034】
ところで、
図2における凸部11の高さH1や凹部12の深さH2は、例えば、集光レンズ4と光学レンズ7の距離に応じて設定される。この場合、高さH1や深さH2は、光学レンズ7の被写界深度に応じて設定されることが好ましい。被写界深度は、肉眼で投影像のぼけの発生を判別できない距離範囲である。すなわち、凹凸面が被写界深度の範囲内にある場合は、投影像は鮮明となり、凹凸面が被写界深度の範囲外にある場合は、投影像は不鮮明となる。この現象を考慮して、三次元形状が、光学レンズ7の被写界深度の範囲内となる部分と光学レンズ7の被写界深度の範囲外となる部分を含むようにすることで、陰影の濃淡を変化させることができる。
【0035】
図9に、被写界深度と凸部11の高さH1の関係を示す。
図9(a)は、凸部11がすべて被写界深度内にある場合を示している。この場合、凸部11は被写界深度の範囲Q内となるため、平面B1に対応する陰影は鮮明に映し出される。一方、
図9(b)は、凸部11が被写界深度の範囲Q内の部分と範囲Q外の部分を有する場合を示している。この場合、平面B1に対応する陰影は、被写界深度の範囲Q内では鮮明に映し出され、被写界深度の範囲Q外ではぼやけて映し出される。これにより、ピントの合った鮮明部とピントから外れ気味のボケといった両方をデザイン効果として取り入れることができる。なお、凸部11がすべて被写界深度の範囲Q外となるようにしてもよい。このように、光学レンズ7の被写界深度に対して、凸部11の高さH1を調整することで、陰影の濃淡を調整することができる。なお、凹部12の深さH2についても光学レンズ7の被写界深度に対して、設定することができる。
【0036】
本発明の三次元形状を有する集光レンズ4は、精密な切削加工や電気鋳造によって加工された金型を用いた間接的な成形や、精密な切削加工、ポッティング、エッチングなどの直接的な成形によって得ることができる。前者の成形(間接的な成形)に用いる金型は、所定のデザインに応じて、凸部や凹部のパラメータ(高さH1、深さH2、傾斜角度θ、傾斜角度αなど)を調整して設計される。集光レンズ4に形成される三次元形状は、凸部のみでもよく、凹部のみでもよい。また、
図2に示すように凸部と凹部を組み合わせてもよい。なお、三次元形状として凸部を設けるのか、凹部を設けるのかについては、成形の際に生じる凸部または凹部の稜線部の加工Rとエッジ部の関係から、成形方法と加工時に発生するエッジ部の位置によって設定される。成形方法は、金型を用いた間接的な成形方法(例えば射出成形)、および直接的な成形方法(例えば集光レンズの切削加工)である。一例として、金型やレンズへの切削加工では、一般的安価な方法のエンドミル使用が多く、刃物先端Rによって付加される加工Rを考慮せざるを得ない場合に適用することが好ましい。
【0037】
ここで、エッジ部とは、陰影においてコントラストが最も高くなる陰影部(例えば、
図3のS1やS2)に対応する三次元形状の部分であり、
図2のE1やE2が相当する。エッジ部の位置とは、エッジ部に対応する陰影部の、その陰影における位置である。例えば、
図3のS1は、陰影の外側に位置しており、
図3のS2は、陰影の内側に位置している。すなわち、陰影を、外側から内側に向かって薄く(コントラストが低く)なるように表すことと、陰影を、内側から外側に向かって薄く(コントラストが低く)なるように表すことに相当する。ここで、
図2では、出射面5bの三次元形状を金型による間接的な成形方法で形成している。さらに、
図3のS1において外側から内側に向かって陰影が薄くなるようにするため、エッジ部E1に係る三次元形状を凸部としている。一方、
図3のS2において内側から外側に向かって陰影が薄くなるようにするため、エッジ部E2に係る三次元形状を凹部としている。このように、凸部または凹部とすることで、陰影のコントラストの向きを調整することができる。
【0038】
図1に示す実施形態では、透明な部材からなる集光レンズ4の表面に三次元形状を設け、三次元形状によって意図的に光を屈折させることで陰影を映し出した。これに限らず、例えば、集光レンズ4の表面を反射面とし、その表面に三次元形状を設けてもよい。この場合、二次光源として反射面から出射される光が、三次元形状により意図的に反射されることで、光学レンズ7へ入射する光線量が減少する。その結果、投影面に陰影を映し出すことができる。また、光学レンズ7として反射面で構成されていてもよい。また、
図1に示す実施形態では、集光レンズ4の表面、つまり二次光源となる面上に一体的に三次元形状を形成したが、これに限らない。例えば、集光レンズ4とは別に二次光源となる面の部品を設け、この部品の表面に三次元形状を設けてもよい。
【0039】
本発明の照明装置は、投影面を有しておらず、照明装置外の投影面に投射して、所定のデザインを表示する照明装置である。そのため、自身で投影面を有し、その投影面を介してデザインを表示する、いわゆる表示器とは異なる。例えば、本発明の照明装置は、投影面にロゴマークを投影するロゴランプとして用いることができる。本発明の照明装置は小型設計が可能であるため、ロゴランプとして使用する場合には、車両のサイドミラーに組み込むことができる。この場合、足元の地面を照射するとともに、ロゴマークを投影することができる。
【0040】
以上のように、本発明の照明装置は、別部品のデザインフィルム上に形成された二次元的な遮光・非遮光でデザインを表示するのではなく、二次光源の出射面に三次元形状(凸部や凹部)を設けて屈折、反射効果を利用することで、光の遮光・非遮光を行いデザイン形成に必要な陰影を作り出すことができる。これにより、高精度な印刷を求められ、製作工法も限定され、製品単価が高額であるデザインフィルムが不要となる。また、三次元形状は、ナノ加工などを金型駒1つに実施すれば連続的に形成が可能であるため、コスト面で有利である。また、デザインの位置決めは、金型製作時に固定されるため常に一定を維持することができる。そのため、都度の位置決めといった不都合を解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の照明装置は、デザインフィルムを使用しなくても、所定のデザインが表示できるので、照明装置として広く用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 照明装置
2 ハウジング
3 LED(発光素子)
4 集光レンズ(光学素子)
5 レンズ部
6 フランジ部
7 光学レンズ
11 凸部
12 凹部