(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】移動装置及び移動装置を備えた昇降台車
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20221019BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20221019BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20221019BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20221019BHJP
B62B 3/06 20060101ALI20221019BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20221019BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
F16H25/20 H
F16H25/24 B
B62B3/00 B
B62B3/02 C
B62B3/06 B
B66F9/06 P
B66F11/04
(21)【出願番号】P 2020038748
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521515805
【氏名又は名称】ティフィル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義信
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-36027(JP,B1)
【文献】特開昭59-138584(JP,A)
【文献】実開平2-7293(JP,U)
【文献】実開平5-86987(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
F16H 25/24
B62B 3/00
B62B 3/02
B62B 3/06
B66F 9/06
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、移動体と、を備え、
前記回転体が板状の第1の螺旋状部を有し、
前記移動体が板状の第2の螺旋状部を有し、
前記第1の螺旋状部の間隔が、前記第1の螺旋状部及び前記第2の螺旋状部のそれぞれの板厚よりも大きく形成され、
前記第2の螺旋状部の間隔が、前記第1の螺旋状部及び前記第2の螺旋状部のそれぞれの板厚よりも大きく形成され、
前記第1の螺旋状部と前記第2の螺旋状部を係合させ、前記回転体を回転させることにより、前記移動体が移動することを特徴とする移動装置。
【請求項2】
前記移動体の移動範囲の一側範囲端と他側範囲端の少なくとも一方に前記移動体が移動すると、前記第1の螺旋状部と前記第2の螺旋状部との係合が解除されることを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記回転体が略円筒形状の軸部材であって、前記移動体が前記軸部材を挿通する被挿通部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動装置。
【請求項4】
前記第2の螺旋状部が不連続の板状突起部から構成されることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の移動装置。
【請求項5】
台車本体と、リンク機構と、作業台と、請求項1~4の何れか1項に記載の移動装置と、を備える昇降台車であって、
前記台車本体の上面部に前記リンク機構と前記移動装置が配設され、
前記リンク機構の上端部に前記作業台が配設され、
前記移動体が前記リンク機構に連結され、
前記回転体を回転させることにより前記移動体が上下方向に移動し、
前記移動体の移動に伴い前記リンク機構が伸縮し、
前記リンク機構の伸縮に伴い前記作業台が昇降することを特徴とする昇降台車。
【請求項6】
前記移動装置が被覆装置により被覆され、
前記移動体が前記被覆装置を介して前記リンク機構に連結され、
前記昇降台車の走行動力及び前記回転体の回転動力が電力であることを特徴とする請求項5に記載の昇降台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体と移動体とが係合した状態で、回転体を回転させることで移動体が直線的に移動する移動装置と、当該移動装置を備えた昇降台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、立設したボールねじに昇降部を螺合させ、モータの回転力をボールねじに伝達することで、ボールねじを回転させ、昇降部を昇降させる昇降機構が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載された昇降機構は、昇降部に片持ちバーの一端が固定されており、この片持ちバーを被補助者が把持した状態で昇降部を上昇させることで、被補助者の立ち上がり動作を補助するものである。
【0004】
この昇降機構の上部と下部には、リミットスイッチが設けられており、昇降部がリミットスイッチに対応する位置に達したときにモータの電源がオフ状態とされ、昇降部及び片持ちバーが停止する構造となっている。
【0005】
特許文献1に記載された昇降機構は、ボールねじの下端が下端側軸受部に回転自在に支持されており、昇降部は比較的軽量である片持ちバーを支持しているため、下部のリミットスイッチにより昇降部を停止させる位置は、昇降部が下端側軸受部から離れた位置で停止させた状態であっても、片持ちバーの重量によるボールねじ及び昇降部のねじ部への負荷は大きくない。しかしながら、昇降部が常時重量物を支持するような場合は、昇降機構の不使用時には、昇降部を最下端まで降下させ、下端側軸受部に当接した状態で停止させておくことで、ボールねじ及び昇降部のねじ部への重量負荷が緩和される。
【0006】
そのため、昇降部が端側軸受部に当接したときにリミットスイッチが昇降部を検知するようにリミットスイッチを配置することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、リミットスイッチが昇降部を検知した時からモータの駆動が停止するまでには、僅かに時間経過があり、昇降部が下端側軸受部に当接した後もモータによるボールねじの回転が継続し、モータやボールねじ及び昇降部のねじ部への負荷がかかってしまうという問題がある。
【0009】
また、リミットスイッチによる検知からモータの停止までの時間を考慮し、昇降部が下端側軸受部に当接する前にリミットスイッチが検知するように、リミットスイッチの検知位置を調節することも考えられるが、リミットスイッチによる検知からモータ停止までの時間にはバラつきがある等、この調節は容易ではない。
【0010】
そこで、本発明は以上の問題点を解決し、移動体が移動範囲の端部まで移動し、他の部材と当接した後も回転体の回転が継続した場合であっても、回転体、移動体及び移動体が当接した他の部材や、回転体を回転駆動させる駆動機構への負荷を回避可能な移動装置及び当該移動装置を備えた昇降台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る移動装置は、回転体と、移動体と、を備え、前記回転体が板状の第1の螺旋状部を有し、前記移動体が板状の第2の螺旋状部を有し、前記第1の螺旋状部の間隔が、前記第1の螺旋状部及び前記第2の螺旋状部のそれぞれの板厚よりも大きく形成され、前記第2の螺旋状部の間隔が、前記第1の螺旋状部及び前記第2の螺旋状部のそれぞれの板厚よりも大きく形成され、前記第1の螺旋状部と前記第2の螺旋状部を係合させ、前記回転体を回転させることにより、前記移動体が移動することを特徴とする。
【0012】
前記移動体の移動範囲の一側範囲端と他側範囲端の少なくとも一方に前記移動体が移動すると、前記第1の螺旋状部と前記第2の螺旋状部との係合が解除されることを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【0013】
また、本発明に係る移動装置は、前記回転体が略円筒形状の軸部材であって、前記移動体が前記軸部材を挿通する被挿通部材であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る移動装置は、前記第2の螺旋状部が不連続の板状突起部から構成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る昇降台車は、台車本体と、リンク機構と、作業台と、前記移動装置と、を備える昇降台車であって、前記台車本体の上面部に前記リンク機構と前記移動装置が配設され、前記リンク機構の上端部に前記作業台が配設され、前記移動体が前記リンク機構に連結され、前記回転体を回転させることにより前記移動体が上下方向に移動し、前記移動体の移動に伴い前記リンク機構が伸縮し、前記リンク機構の伸縮に伴い前記作業台が昇降することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る昇降台車は、前記移動装置が被覆装置により被覆され、前記移動体が前記被覆装置を介して前記リンク機構に連結され、前記昇降台車の走行動力及び前記回転体の回転動力が電力であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、移動体が移動範囲の端部まで移動し、他の部材と当接した後も回転体の回転が継続した場合に、回転体、移動体及び移動体が当接した他の部材や、回転体を回転駆動させる駆動機構への負荷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】実施例1のリンク機構を伸長した状態の走行台車の左側面図である。
【
図3】実施例1のリンク機構を収縮した状態の走行台車の左側面図である。
【
図4】実施例1のリンク機構を収縮した状態の走行台車の平面図である。
【
図5】実施例1のリンク機構を収縮した状態の走行台車の正面図である。
【
図6】実施例1のリンク機構を収縮した状態の第1カバー体、第2カバー体、第3カバー体、第4カバー体及び支持部材の内部を示す走行台車の右側面図である。
【
図7】実施例1のリンク機構を伸長した状態の第1カバー体、第2カバー体、第3カバー体、第4カバー体及び支持部材の内部を示す走行台車の右側面図である。
【
図10】実施例1の一側被挿通部材の斜視図である。
【
図11】実施例1の他側被挿通部材の正面図である。
【
図13】他の実施例の一側被挿通部材の斜視図である。
【
図14】実施例1の軸部材、被挿通部材、第1カバー体及び支持部材の第1カバー体上端付近の縦断面図である。
【
図15】実施例1の軸部材、被挿通部材、第1カバー体及び支持部材の第1カバー体下端付近の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について、添付の
図1~
図15を参照して説明する。以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0020】
図1~
図7は、本実施例の昇降台車1を示している。昇降台車1は、台車本体2と、リンク機構3と、作業台4と、一対の昇降装置5A,5Bを有している。
【0021】
台車本体2は、いわゆる電動台車であって、操舵用の車輪である左右一対の前輪11と、駆動用の車輪である左右一対の後輪12を備え、図示しない操作装置により走行、転回、停止等の操作を行うことができる。台車本体2には、昇降台車1の電源であるバッテリー(図示せず)が備えられており、このバッテリーから昇降台車1の走行用電力と昇降装置3A,3Bの駆動電力が供給される。また、台車本体2の後部13には、90°回動自在の開閉式テーブル14が設けられており、
図5及び
図6に示すように、水平状態とすることで、所望の物品を載置して運搬することができる。
【0022】
主に
図2及び
図7に示すように、リンク機構3は、下から順に第1リンク21、第2リンク22、第3リンク23、第4リンク24の上下4段構成となっている。第1リンク21の下端が下側取付レール25に取り付けられており、第4リンク24の上端が上側取付レール26に取り付けられている。リンク機構3は、下側取付レール25が台車本体2の上面部15に固定されることで台車本体2に取り付けられ、上側取付レール26が作業台4の底面部33に固定されることで作業台4に取り付けられる。そして、リンク機構3が立ち上げられることで作業台4が上昇し、リンク機構3が折り畳まれることで作業台4が下降する。
【0023】
作業台4は、高所作業等を行う作業者が搭乗する矩形状の底板部31と、その四隅に立設された支柱32A,32B,32C,32Dを有する。この支柱32A,32B,32C,32Dには、作業者が落下することを防止する落下防止柵(図示せず)を取り付け可能となっている。底板部31の底面部33には、上側取付レール26が固定されている。
【0024】
主に
図1に示すように、昇降装置5Aと昇降装置5Bは、台車本体2の前側の上面部15に左右一対に設けられているが、昇降装置5Aと昇降装置5Bは同一の構成及び形状を有しているため、以下、昇降装置5Aについて説明し、昇降装置5Bの説明を省略する。昇降装置5Aは、回転体としての軸部材41や移動体としての被挿通部材51を備える移動装置と、移動装置を被覆すると共に移動装置の動力をリンク機構3に伝達する被覆装置を有している。
【0025】
図8に示すように、軸部材41は、中空円筒状の軸本体42と、軸本体42の外面部に螺旋状に配設された板状の螺旋状突起部43と、台車本体2に係止する係止部44と、減速機17に接続される接続部45と、軸本体42の上端部に設けられた揺れ止め部材46を有している。螺旋状突起部43が本願発明の第1の螺旋状部に相当する。
【0026】
螺旋状突起部43は、揺れ止め部材46の下側部分の所定の範囲L1と、係止部44の上側部分の所定の範囲L2には設けられていない。螺旋状突起部43は所定の傾斜角度θを有するように設けられており、この傾斜角度θにより隣り合う螺旋状突起部43の間隔であるピッチP1が決定される。なお、軸本体42の外径が大きくなればピッチP1も大きくなり、外径が小さくなればピッチP1も小さくなるため、ピッチP1を決定する際には、軸本体42の外径も考慮する。螺旋状突起部43の板厚D1は、螺旋状突起部43に付加される重量に応じ、その重量を支持できる強度を有するものを選択可能である。全てのピッチP1は等間隔であり、螺旋状突起部43の板厚D1及び後述する板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fの板厚D2よりも大きく設定されている。
【0027】
螺旋状突起部43の上面部47には、後述する板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fの下面部60A,60B,60C,60D,60E,60Fが当接した状態で被挿通部材51が摺動することから、潤滑油を使用する。そのため、必須ではないが、螺旋状突起部43の上面部47に浅い溝部(図示せず)を形成し、この溝部に潤滑油を貯留し、被挿通部材51が摺動することで潤滑油が溝部から当接部分に少しずつ供給されるようにしてもよい。
【0028】
係止部44は、台車本体2の上面部15に穿設された軸挿通孔16に接続部45が挿通された状態で、上面部15に係止する。係止部44は、軸本体42の外径及び軸挿通孔16の直径よりも大径に形成されている。
【0029】
接続部45は、減速機17に接続されており、軸回転用モータ18の動力が減速機17を介して接続部45に伝達されることで、軸部材41が回転するようになっている。
【0030】
揺れ止め部材46は、軸本体42の上端部に固定されており、後述する第1カバー体61の内面に当接される。揺れ止め部材46の外径は、第1カバー体61の内径よりも僅かに小さいが略同一であり、軸部材41の回転時に第1カバー体61の内面に接触した状態で回転し、軸部材41の揺れを抑制するものである。
【0031】
図9~
図12に示すように、被挿通部材51は、縦長の略直方体形状を有し、長手方向に貫通する円形孔52が形成されている。被挿通部材51は、略矩形筒状に形成された本体部53と、本体部53の内面部54に配設された複数の板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fを有する。本実施例の被挿通部材51は、一側被挿通部材51Aと他側挿通部材51Bを接合して形成している。一側被挿通部材51Aの接合面56Aと他側挿通部材51Bの接合面56Bは、被挿通部材51の対角線Sを通る面と重なる。
【0032】
一側被挿通部材51Aと他側挿通部材51Bは同形状を有しており、何れか一方を逆さまにして接合することで被挿通部材51が形成される。一側被挿通部材51Aの内面部54Aには、3つの板状突起部55A,55C,55Eが形成され、他側挿通部材51Bの内面部54Bには、3つの板状突起部55B,55D,55Fが形成されている。板状突起部55A,55C,55Eは、上下方向に平行に並んでいる。また、板状突起部55B,55D,55Fも上下方向に平行に並んでいる。
【0033】
第2の螺旋状部としての板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fは、螺旋状突起部43と同角度である傾斜角度θを有するように設けられている。隣り合う板状突起部55Aと板状突起部55C、板状突起部55Cと板状突起部55E、板状突起部55Bと板状突起部55D、板状突起部55Dと板状突起部55F、の間隔であるピッチP2は、螺旋状突起部43のピッチP1と同一に形成されている。板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fの板厚D2は、板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fに付加される重量に応じ、その重量を支持できる強度を有するものを選択可能である。全てのピッチP2は等間隔であり、螺旋状突起部43の板厚D1及び板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fの板厚D2よりも大きく設定されている。
【0034】
本実施例の板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fは、本体部53の内面部54のうち、一側被挿通部材51Aの接合部56A側の縁部57Aと他側挿通部材51Bの接合部56B側の縁部57Bには形成されていない。そのため、一側被挿通部材51Aと他側挿通部材51Bを接合し被挿通部材51を形成した場合に、板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fは、1つの螺旋上に配置されるが、板状突起部55Aと板状突起部55Bの間に隙間58A、板状突起部55Bと板状突起部55Cの間に隙間58B、板状突起部55Cと板状突起部55Dの間に隙間58C、板状突起部55Dと板状突起部55Eの間に隙間58D、板状突起部55Eと板状突起部55Fの間に隙間58Eが形成される。なお、縁部57A,57Bにも板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fを形成し、板状突起部55Aと板状突起部55B、板状突起部55Bと板状突起部55C、板状突起部55Cと板状突起部55D、板状突起部55Dと板状突起部55E、板状突起部55Eと板状突起部55Fが当接するようにしてもよい。
【0035】
本実施例の被挿通部材51は、後述する第1カバー体61の形状に対応させて外形を略直方体形状としたが、被挿通部材51の移動が規制される等のするものでなければ、外形を他の形状としてもよい。
【0036】
本実施例の被挿通部材51は、接合面56A,56Bが被挿通部材51の対角線Sを通る面と重なる一側被挿通部材51Aと他側挿通部材51Bから構成されているが、接合面56A,56Bが被挿通部材51の外辺59A、外辺59B、外辺59C、外辺59D(
図12参照)のうち、外辺59Aの中点C1と外辺59Cの中点C3を通る面と重なるように接合したり、外辺59Bの中点C2と外辺59Dの中点C4を通る面と重なるように接合して形成してもよい。このとき、一側被挿通部材51Aの内面部54Aに3つの板状突起部55A,55C,55Eが形成され、他側挿通部材51Bの内面部54Bに3つの板状突起部55B,55D,55Fが形成されるようにする。
図13は、他の実施例である、外辺59Aの中点C1と外辺59Cの中点C3を通る面で接合する被挿通部材51の接合前の一側被挿通部材51Cを示している。
【0037】
図14は軸部材41を被挿通部材51に挿通し、螺旋状突起部43と板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fが係合した状態を示しており、螺旋状突起部43の上面部47と板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fの下面部60A,60B,60C,60D,60E,60Fが当接している。軸部材41を一側方向に回転させると、板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fの下面部60A,60B,60C,60D,60E,60Fが螺旋状突起部43の上面部47に当接した状態を維持しながら被挿通部材51が上昇する。軸部材41を他側方向に回転させると、板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fの下面部60A,60B,60C,60D,60E,60Fが螺旋状突起部43の上面部47に当接した状態を維持しながら被挿通部材51が下降する。
【0038】
図7に示すように、軸部材41は、台車本体2の上面部15に穿設された軸挿通孔16に接続部45が挿通され、台車本体2の内部に配設された減速機17に接続されている。
【0039】
台車本体2の前側部分に立設され、被挿通部材51が係合された軸部材41は、第1カバー体61により被覆されている。第1カバー体61は、上下が開口した中空角筒形状を有している。第1カバー体61の上端部62は、軸部材41の上端部48よりも上方に位置している。そのため、軸部材41の軸本体42及び被挿通部材51の側面は第1カバー体61により完全に被覆されている。第1カバー体61の下端部63には、第1カバー体61を台車本体2の上面部15に固定するための固定板64が取り付けられている。そのため、固定板64を台車本体2の上面部15に固定することで、第1カバー体61を台車本体2に立設することができる。
【0040】
被挿通部材51の上側には、第2カバー体65を支持する支持部材66が取り付けられている。支持部材66は、中空角筒形状を有している。支持部材66の上端部67は、第2カバー体65に固定されている。支持部材66は、軸部材41よりも太く形成され、第1カバー体61よりも細く形成されている。そのため、支持部材66は下降時に、被挿通部材51と共に軸部材41の軸本体42を被覆する。
【0041】
第2カバー体65は、上側が天板68により閉口され、下側が開口した中空角筒形状を有している。天板68に支持部材66の上端部67が固定されている。第2カバー体65は、第1カバー体61よりも太く形成されており、上昇時に支持部材66を被覆し、下降時に第1カバー体61を被覆する。被挿通部材51が下降した時には、支持部材66は第1カバー体61により被覆される。第2カバー体65の内側であって、下側開口付近には、第1カバー体61の外面に当接する揺れ止め部材(図示せず)が設けられている。この揺れ止め部材は、第2カバー体65の停止時及び移動時に第1カバー体61の外面に当接することで、第2カバー体65の揺れを抑制するものである。
【0042】
第3カバー体69は、上側が天板70により閉口され、下側が開口した中空角筒形状を有している。第3カバー体69は、第2カバー体65よりも太く形成されており、下降時に第2カバー体65を被覆する。第3カバー体69の内側であって、下側開口付近には、第2カバー体65の外面に当接する揺れ止め部材(図示せず)が設けられている。この揺れ止め部材は、第3カバー体69の停止時及び移動時に第2カバー体65の外面に当接することで、第3カバー体69の揺れを抑制するものである。
【0043】
第4カバー体71は、上側が天板72により閉口され、下側が開口した中空角筒形状を有している。第4カバー体71は、第3カバー体69よりも太く形成されており、下降時に第3カバー体69を被覆する。また、第4カバー体71の下部には、第3リンク23と第4リンク24の接続軸27に連結された一対の連結体73が固定されている。第4カバー体71の内側であって、下側開口付近には、第3カバー体69の外面に当接する揺れ止め部材(図示せず)が設けられている。この揺れ止め部材は、第4カバー体71の停止時及び移動時に第3カバー体69の外面に当接することで、第4カバー体71の揺れを抑制するものである。
【0044】
第2カバー体65の天板68の上面部には、2つのスプロケット74が回転自在に設けられている。スプロケット74には、ローラチェーン75が噛合されている。ローラチェーン75の一側端部76は第1カバー体61の上部に固定され、他側端部77は第3カバー体69の下部に固定されている。
【0045】
第3カバー体69の天板70の上面部には、2つのスプロケット78が回転自在に設けられている。スプロケット78には、ローラチェーン79が噛合されている。ローラチェーン79の一側端部80は第2カバー体65の上部に固定され、他側端部81は第4カバー体71の下部に固定されている。
【0046】
ここで、昇降装置5A,5Bの動作について説明する。
図6に示すリンク機構3が完全に収縮した状態から台車本体2の内部に配設された軸回転用モータ18を駆動させ、軸部材41を回転させると、被挿通部材51が支持部材66と共に上昇することで、支持部材66が第2カバー体65を押し上げる。第2カバー体65が上昇することで、スプロケット74を基準として、ローラチェーン75の一側端部76側が徐々に長くなり、他側端部77側が徐々に短くなることで、第3カバー体69が第2カバー体65と共に上昇する。また、第3カバー体69が上昇することで、スプロケット78を基準として、ローラチェーン79の一側端部80側が徐々に長くなり、他側端部81側が徐々に短くなることで、第4カバー体71が第3カバー体69と共に上昇する。すなわち、被挿通部材51が上昇することで、同時に第2カバー体65、支持部材66、第3カバー体69及び第4カバー体71が上昇する。また、第4カバー体71が連結体73を介してリンク機構3に連結されているため、第4カバー体71が上昇することで、リンク機構3が上方に引き上げられ、リンク機構3が伸長状態となる。
【0047】
図14に示すように、第1カバー体61の上端部62付近の内側には、リミットスイッチ82が設けられており、被挿通部材51に設けた上側接触部83がリミットスイッチ82に接触すると、軸回転用モータ18の駆動が停止するようになっており、軸回転用モータ18の駆動が停止すると被挿通部材51の移動が停止する。この被挿通部材51が停止した位置が被挿通部材51の最上位置となる。そして、被挿通部材51が最上位置にあるときに、リンク機構3が最も伸長した状態となるように設計されている。なお、螺旋状突起部43の上側の終端49より上側には螺旋状突起部43が設けられていないため、例えば、リミットスイッチ82の故障等により軸回転用モータ18の駆動が停止されない場合であっても、被挿通部材51がそれ以上上昇しないようになっている。また、リミットスイッチ82を配設する位置は、適宜変更可能であり、上側接触部83を設けなくても被挿通部材51が直接接触するようにしてもよい。
【0048】
図7に示すリンク機構3が完全に伸長した状態から、軸回転用モータ18を上昇時と逆回転駆動させると、被挿通部材51が支持部材66と共に下降することで、支持部材66に接続した第2カバー体65が下降する。第2カバー体65が下降することで、スプロケット74を基準として、ローラチェーン75の一側端部76側が徐々に短くなり、他側端部77側が徐々に長くなることで、第3カバー体69が第2カバー体65と共に下降する。また、第3カバー体69が下降することで、スプロケット78を基準として、ローラチェーン79の一側端部80側が徐々に短くなり、他側端部81側が徐々に長くなることで、第4カバー体71が第3カバー体69と共に下降する。すなわち、被挿通部材51が下降することで、同時に第2カバー体65、支持部材66、第3カバー体69及び第4カバー体71が下降する。また、第4カバー体71が連結体73を介してリンク機構3に連結されているため、第4カバー体71が下降することで、リンク機構3が下方に引き下げられ、リンク機構3が収縮状態となる。
【0049】
図15に示すように、第1カバー体61の下端部84付近の内側には、リミットスイッチ85が設けられており、被挿通部材51に設けた下側接触部86がリミットスイッチ85に接触すると、軸回転用モータ18の駆動が停止するようになっており、軸回転用モータ18の駆動が停止すると被挿通部材51の移動が停止する。リミットスイッチ85は、被挿通部材51が軸部材41の係止部44の上面に当接した位置で被挿通部材51が接触するように配設されている。そのため、被挿通部材51が係止部44の上面に当接した位置が被挿通部材51の最下位置となる。そして、被挿通部材51が最下位置にあるときに、リンク機構3が最も収縮した状態となるように設計されている。
図6に示すように、被挿通部材51が最下位置にあるときには、第2カバー体65、第3カバー体69及び第4カバー体71は、取付板64や台車本体2に当接しないようになっている。なお、リミットスイッチ82を配設する位置は、適宜変更可能であり、下側接触部86を設けなくても被挿通部材51が直接接触するようにしてもよい。
【0050】
本実施例では、被挿通部材51の最上位置から最下位置までが被挿通部材51の移動範囲であり、最上位置が一側範囲端、最下位置が他側範囲端である。
【0051】
被挿通部材51は、下降する際に板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fの下面60A,60B,60C,60D,60E,60F,60Gが螺旋状突起部43の上面部47に当接した状態を維持している。本実施例では、被挿通部材51が係止部44の上面に当接した位置にある時には、板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fが螺旋状突起部43から離れ、板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fが上下に隣り合う螺旋状突起部43の間の空間Mに位置した非接触状態となるように、螺旋状突起43と板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fの位置が設計されている。そのため、被挿通部材51が最下位置まで下降し、係止部44の上面に当接した後、軸部材41が回転を継続しても、被挿通部材51に対して被挿通部材51を下降させる動力が付加されなくなる。すなわち空回り状態となる。本実施例では、被挿通部材51が係止部44に当接した時から、下側接触部86がリミットスイッチ85に接触し、軸回転用モータ18の駆動が停止し、軸部材41の回転が完全に停止するまでに僅かな時間tを要するが、時間tの間、軸部材41が回転を継続したとしても軸部材41から被挿通部材51に動力が付加されないため、軸回転用モータ18に抗力が付加されず、軸回転用モータ18、軸部材41、係止部44及び被挿通部材51への負荷を回避することができ、故障等を防止することができる。
【0052】
本実施例の移動装置は、軸部材41、被挿通部材51、減速機17及び軸回転用モータ18を有して構成されている。また、本実施例の被覆装置は、第1カバー体61、第2カバー体65、支持部材66、天板68、第3カバー体69、天板70、第4カバー体71、天板72、連結体73、スプロケット74、ローラチェーン75、スプロケット78及びローラチェーン79を有して構成されている。
【0053】
以上のように、本実施例の移動装置は、軸部材41と、被挿通部材51と、を備え、軸部材41が板状の螺旋状突起部43を有し、被挿通部材51が板状の板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fを有し、螺旋状突起部43のピッチP1が、螺旋状突起部43及び板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fのそれぞれの板厚D1,D2よりも大きく形成され、板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55FのピッチP2が、螺旋状突起部43及び板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fのそれぞれの板厚D1,D2よりも大きく形成され、螺旋状突起部43と板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fを係合させ、軸部材41を回転させることにより、被挿通部材51が移動する。そのため、軸部材41の回転により被挿通部材51が移動し、被挿通部材51が係止部44に当接することで、板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fが隣り合う螺旋状突起部43の間の空間Mに位置し、螺旋状突起部43と板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fとの係合が解除された状態とすることができる。
【0054】
また、本実施例の移動装置は、被挿通部材51の移動範囲の一側範囲端と他側範囲端の少なくとも一方に被挿通部材51が移動すると、螺旋状突起部43と板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fとの係合が解除される。すなわち、被挿通部材51が移動範囲の一側範囲端(最上位置)まで移動し、係止部44に当接することで、螺旋状突起部43と板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fとの係合が解除され、軸回転用モータ18、軸部材41、係止部44及び被挿通部材51に不要な負荷がかかることを回避することができる。
【0055】
また、本実施例の移動装置は、回転体が略円筒形状の軸部材41であって、移動体が軸部材41を挿通する被挿通部材51であることにより、軸部材41を被挿通部材51に挿通することで軸部材41と被挿通部材51を係合させることができ、被挿通部材51を移動させる機構を簡易とすることができる。
【0056】
また、本実施例の移動装置は、板状突起部55A,55B,55C,55D,55E,55Fが不連続の板状突起部から構成されることにより、一側挿通部材51A及び他側挿通部材51Bを金型成形する際に離型が容易となる。
【0057】
また、本実施例の昇降台車1は、台車本体2と、リンク機構3と、作業台4と、移動装置と、を備える昇降台車1であって、台車本体2の上面部15にリンク機構3と移動装置が配設され、リンク機構3の上端部に作業台4が配設され、軸部材41がリンク機構3に連結され、軸部材41を回転させることにより被挿通部材51が上下方向に移動し、被挿通部材51の移動に伴いリンク機構3が伸縮し、リンク機構3の伸縮に伴い作業台4が昇降することにより、移動装置を駆動させ、被挿通部材51を上下方向に移動させることで、リンク機構3を伸縮させ、作業台4を安定して昇降させることができる。
【0058】
また、本実施例の昇降台車1は、移動装置が被覆装置により被覆され、軸部材41が被覆装置を介してリンク機構3に連結され、昇降台車1の走行動力及び軸部材41の回転動力が電力である。したがって、被覆装置により軸部材41と被挿通部材51との係合部分に塗布された潤滑油が外部へ漏れ出すことを防止できる。また、被挿通部材51の昇降に油圧装置を使用しないため、油漏れ厳禁のクリーンルームや食品を取り扱う場所等で昇降台車1を使用することができる。さらに、被覆装置の昇降に伴いリンク機構3の伸縮を行うことができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、実施例1は、軸部材41を台車本体2の上面部15に対して垂直方向に立設し、被挿通部材51を上下方向に移動させるものであるが、昇降台車1以外の用途で軸部材41を水平方向が長手方向となるように配設し、被挿通部材51を水平方向に移動させてもよい。また、軸部材41を傾斜した状態で回転自在に保持し、被挿通部材51を傾斜方向に移動させるようにしてもよい。
【0060】
実施例1では、2つの昇降装置5A,5Bを用いたが、昇降装置5A又は昇降装置5Bの何れか1つを使用してもよい。また、3つ以上の昇降装置を使用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 昇降台車
2 台車本体
3 リンク機構
4 作業台
15 上面部
41 軸部材(回転体)
43 螺旋状突起部(第1の螺旋状部)
51 被挿通部材(移動体)
55A 板状突起部(第2の螺旋状部)
55B 板状突起部(第2の螺旋状部)
55C 板状突起部(第2の螺旋状部)
55D 板状突起部(第2の螺旋状部)
55E 板状突起部(第2の螺旋状部)
55F 板状突起部(第2の螺旋状部)
D1 板厚
D2 板厚
P1 ピッチ(第1の螺旋状部の間隔)
P2 ピッチ(第2の螺旋状部の間隔)