(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
B25F5/00 A
(21)【出願番号】P 2020114964
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591045323
【氏名又は名称】瓜生製作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】滝川 陽平
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-56556(JP,A)
【文献】特開2012-76179(JP,A)
【文献】特表2019-524046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子を有する電動モータと、電動モータを収容する電動モータ収容部と、電動モータ収容部のハウジングに直接接触又は熱伝導体を介して間接接触するスイッチング素子と、冷却ファンとを備えてなる電動工具において、前記電動モータ収容部のハウジングに、相変化流体を封入したヒートパイプの一端側を装着することで、ヒートパイプの一端側が電動モータ収容部のハウジングを介してスイッチング素子と熱的に接続されるようにするとともに、ヒートパイプの他端側を電動モータ収容部のハウジングの外側で、冷却ファンによって冷却されるヒートシンクに装着してなることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記ヒートシンクを冷却した冷却ファンの空気を、電動モータ収容部に供給するようにしてなることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に関し、例えば、電動締付工具等の電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトやナットを所定のトルクで締め付けるために、電動トルクレンチ等の締付工具が用いられている(例えば、特許文献1~2参照。)。
【0003】
ところで、近年、電動締付工具の小型ハイパワー化に伴って、電動締付工具の使用頻度が高い場合、電動モータの発熱から作業効率が低下したり、スイッチング素子の寿命が低下したりし、場合によっては、破損に至るおそれがあるという問題があった。
【0004】
この問題に対処するため、 特許文献1~2に開示されるように、電動モータの温度上昇及び電動モータの回転を制御するスイッチング素子の温度上昇が実用上問題にならないように、冷却構造等の工夫が行われてきたが、従来の対策では、上記問題点の解消策としては不十分であったり、装置構成に制約をもたらすという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-58186号公報
【文献】特開2016-221632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の電動締付工具等の電動工具の有する問題点に鑑み、電動モータの温度上昇及び電動モータの回転を制御するスイッチング素子の温度上昇を確実に抑制することができるようにした電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電動工具は、回転子を有する電動モータと、電動モータを収容する電動モータ収容部と、電動モータ収容部のハウジングに直接接触又は熱伝導体を介して間接接触するスイッチング素子と、冷却ファンとを備えてなる電動工具において、前記電動モータ収容部のハウジングに、相変化流体を封入したヒートパイプの一端側を装着することで、ヒートパイプの一端側が電動モータ収容部のハウジングを介してスイッチング素子と熱的に接続されるようにするとともに、ヒートパイプの他端側を電動モータ収容部のハウジングの外側で、冷却ファンによって冷却されるヒートシンクに装着してなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記ヒートシンクを冷却した冷却ファンの空気を、電動モータ収容部に供給するようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電動工具によれば、電動モータの温度上昇及び電動モータの回転を制御するスイッチング素子の温度上昇を確実に抑制することで、電動締付工具の使用頻度が高い場合でも、電動モータの発熱から作業効率が低下したり、スイッチング素子の寿命が低下することがなく、電動工具の小型ハイパワー化を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の電動工具の第1実施例を示し、(a)は全体正面図、(b)は内部構造を示す説明図である。
【
図2】同内部構造を示す説明図で、(a)は内部構造を示す外観図、(b)は内部構造を示す説明図である。
【
図3】本発明の電動工具の第2実施例の内部構造を示す説明図で、(a)は内部構造を示す外観図、(b)は内部構造を示す説明図である。
【
図4】本発明の電動工具の第3実施例の内部構造を示す説明図で、(a)は内部構造を示す外観図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電動工具の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1~
図2に、本発明の電動工具の第1実施例を示す。
この電動工具は、本発明の電動工具の構成を、ボルトやナットを所定のトルクで締め付けるための電動トルクレンチ1に適用したものであって、回転子を有する電動モータ2と、電動モータ2を収容する電動モータ収容部3と、電動モータ収容部3のハウジングに直接接触する電界効果トランジスタ(FET(Field Effect Transistor))からなるスイッチング素子4と、冷却ファン5とを備えた電動トルクレンチ1において、電動モータ収容部3のハウジングに、相変化流体を封入したヒートパイプ6の一端側を装着することで、ヒートパイプ6の一端側が電動モータ収容部3のハウジングを介してスイッチング素子4と熱的に接続されるようにするとともに、ヒートパイプ6の他端側を電動モータ収容部3のハウジングの外側で、冷却ファン5によって冷却されるヒートシンク7に装着するようにしている。
【0013】
この電動トルクレンチ1は、スイッチング素子4によって電動モータ2を回転させることでスイッチング素子4から熱エネルギが発せられるが、電動モータ2をケーシングする電動モータ収容部3の金属製のハウジングにスイッチング素子4を直接接触させることで、熱エネルギを効率よく、ハウジングに移動させることができ、スイッチング素子4の温度上昇を抑制することができる。
【0014】
さらに、電動モータ収容部3の金属製のハウジングに、相変化流体を封入したヒートパイプ6の一端側6aを装着することで、ヒートパイプ6の一端側6aが電動モータ収容部3の金属製のハウジングを介してスイッチング素子4と熱的に接続されるようにするとともに、ヒートパイプ6の他端側6bを電動モータ収容部3のハウジングの外側で、冷却ファン5によって冷却されるヒートシンク7に装着するようにすることで、電動モータ収容部3の金属製のハウジングに移動した熱エネルギを、ヒートパイプ6を介して、放熱特性の優れた素材からなるヒートシンク7から放散させることができ、これにより、冷却性能を高めることができるようにしている。
ここで、ヒートパイプ6は、スイッチング素子4と熱的に接続される電動モータ収容部3の金属製のハウジングの近傍に配設することが好ましいが、これに加え、電動モータ収容部3の金属製のハウジングとヒートシンク7を熱的に接続する1本又は複数本のヒートパイプ6を設けることもできる。
【0015】
この場合において、構成部材である冷却ファン5、ヒートシンク7及び電動モータ収容部3のハウジングをこの順に配置し、ヒートシンク7に複数の透孔を設けたり、ヒートシンク7を格子構造としたりすることによって通気構造とすることで、ヒートシンク7を冷却した冷却ファン5の空気を、電動モータ収容部3のハウジングに供給するようにすることができる。
これにより、電動モータ2や周辺の発熱部材を含む電動トルクレンチ1全体を冷却することができる。
【0016】
また、スイッチング素子4の配置位置は、熱的に低温となる電動トルクレンチ1に下部位置に配置することが好ましい。
【0017】
ところで、冷却ファン5及びヒートシンク7の配置位置は、上記第1実施例に記載の配置位置に限定されず、
図3に示す本発明の電動工具の第2実施例のように、電動モータ収容部3のハウジングの前方の下方位置に配置することもできる。
【0018】
また、ヒートシンク7は、上記第1~第2実施例に記載したように、独立した部材として設けるほか、
図4に示す本発明の電動工具の第3実施例のように、ヒートパイプ6の他端側6bを電動モータ収容部3のハウジングの外側で、冷却ファン5によって冷却される構造長調節筒8のような電動トルクレンチ1の内部構造に装着することで、電動トルクレンチ1の内部構造で兼ねることができる。
【0019】
以上、本発明の電動工具について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の電動工具は、電動モータの温度上昇及び電動モータの回転を制御するスイッチング素子の温度上昇を確実に抑制することができるという特性を有していることから、電動トルクレンチ等の締付工具の用途に好適に用いることができるほか、例えば、電動モータを備えた電動工具の用途に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 電動工具(電動トルクレンチ)
2 電動モータ
3 電動モータ収容部
4 スイッチング素子
5 冷却ファン
6 ヒートパイプ
7 ヒートシンク
8 構造長調節筒(兼ヒートシンク)