(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】加熱装置及びアルミニウム処理室
(51)【国際特許分類】
B22D 45/00 20060101AFI20221019BHJP
F27B 3/20 20060101ALI20221019BHJP
F27D 11/02 20060101ALI20221019BHJP
H05B 3/06 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B22D45/00 B
B22D45/00 C
F27B3/20
F27D11/02 A
H05B3/06 A
(21)【出願番号】P 2021212210
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】521387040
【氏名又は名称】ネクサスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】眞畑 進
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特許第6966664(JP,B1)
【文献】特開2005-226877(JP,A)
【文献】実開昭55-96155(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 45/00
F27D 11/02
F27B 3/20
H05B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム溶湯を貯留するアルミニウム処理室を加熱するための加熱装置において、
ヒータと、
前記ヒータを収容するヒータ収容部と、
前記ヒータ収容部の外周を覆うヒータチューブと、
前記ヒータチューブの後方に配置されるヒータブロックと、
前記ヒータチューブと前記ヒータブロックとの間に銅板が挟持されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記銅板は、厚さが1mm~5mmであることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記ヒータブロックの内周側にブランケットが配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記ヒータチューブ、前記銅板及び前記ヒータブロックの外周に耐火セメントが配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱装置を、壁面に一体化されてなることを特徴とするアルミニウム処理室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムが溶けた状態で保持されているアルミニウム処理室に取り付けられる加熱装置及びこの加熱装置が取り付けられたアルミニウム処理室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶湯用処理室に使用される加熱装置としては、抵抗発熱体を非酸化物セラミックス製のカバーで包囲した電熱ヒータが使用されている。例えば、抵抗発熱体としてモリブデンシリサイド系発熱体を、非酸化物セラミックス(Si3N4)製の有底円筒形のカバーで包囲してなり、開口部を気密閉鎖可能な銅製の蓋板で、抵抗発熱体の両端の端子部は、蓋板に取り付けた絶縁碍子により支持されて外方へ突出し、電源が接続されているものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
このように、溶湯用の電熱ヒータを作製される溶湯処理装置に適合するように専用設計にして完全に密閉可能であれば問題ないが、一般的なアルミニウム溶湯用処理室において一体焼成型のアルミニウム処理室(アルミニウムバス)を作製する場合、サイズが決められている汎用品である電熱ヒータを使用するため、
図2に示すように、後方部分に全周を覆うようにヒータブロックを設けることで、加熱装置の溶湯内への突出長さを調整して作製される。この場合に、前方に形成されるセラミックスにより作製されるヒータチューブと、後方側に配置されるヒータブロックとの間の密閉性を確保するために、従来はガラス繊維からなる板状のパッキンでシーリングを行っていた。これは、ガラス繊維はアルミニウム溶湯と反応しないため、シーリング材として最適であると考えられていたからである。
【0004】
しかしながら、長年の使用によるアルミニウム処理室の経年劣化によって、アルミニウムの溶湯がクラックなどから流入し、このガラス繊維のパッキンからアルミニウム溶湯がヒータ側へ流入し、ヒータ漏電異常を発生させるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、一体焼成型のアルミニウム処理室を作製するに際して、加熱装置の前方にセラミックスにより作製されるヒータチューブと、後方側に配置されるヒータブロックとを組み合わせて作製される加熱装置において、経年劣化によるアルミニウム溶湯による漏電等の発生の可能性を低減することができる加熱装置及びアルミニウム処理室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明にかかる加熱装置は、
アルミニウム溶湯を貯留するアルミニウム処理室を加熱するための加熱装置において、
ヒータと、
前記ヒータを収容するヒータ収容部と、
前記ヒータ収容部の外周を覆うヒータチューブと、
前記ヒータチューブの後方に配置されるヒータブロックと、
ヒータチューブとヒータブロックとの間に銅板が挟持されていることを特徴とする。
【0009】
使用による劣化によってアルミニウム処理室の側壁にクラック等が発生し、ヒータチューブとヒータブロックとの間にアルミニウム溶湯が浸透してきた場合であっても、本発明は、この隙間に銅板が挟持されているので、アルミニウム溶湯が浸透してきた場合、銅板と溶融アルミニウムによる反応によるCu-Al合金への変化や、酸化銅への反応により黒変化するとともに周囲の隙間を埋めることで、アルミニウム溶湯の湯漏れの進行を防ぐことができる。
【0010】
また、本発明にかかる加熱装置において、前記銅板は、厚さが1mm~5mmであることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
かかる厚さの銅板を使用することによって、アルミニウム溶湯が浸透してきた場合であっても十分に反応可能な厚さを有し、複数回の浸透にも耐えうるものとすることができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる加熱装置において、前記ヒータブロックの内周側にブランケットが配置されていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
かかる構成を採用することによって、ヒータを効果的に保護可能であるとともに、ヒータブロックをより堅固に固定することができる。
【0014】
さらに、本発明にかかる加熱装置において、
前記ヒータチューブ、前記銅板及び前記ヒータブロックの外周に耐火セメントが配置されていることを特徴とするものであってもよい。
【0015】
かかる構成を採用することによって、ヒータチューブ、銅板及びヒータブロックをさらに、確実に保護することができる。
【0016】
さらに、本発明は、上述した加熱装置を、壁面に一体化されてなることを特徴とするアルミニウム処理室を提供する。
【0017】
かかるアルミニウム処理室を使用することによって、ヒータ内にアルミニウムが浸透することを防止することができるので、サイリスタ、ヒータ、ヒータチューブ、ヒータ熱電対、碍子、リード線等の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるアルミニウム処理室200の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるアルミニウム処理室200に一体的に取り付けられた加熱装置100の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態にかかる加熱装置100及びこの加熱装置100を備えたアルミニウム処理室200について、図に従って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0020】
本実施形態にかかるアルミニウム処理室200は、一般的には、アルミニウムのインゴット90を加熱して溶解し、アルミニウム溶湯Mに溶解する溶解室220と、溶解室220のアルミニウム溶湯Mが流入され、流入されたアルミニウム溶湯Mを溶湯のまま保持する保持室230及び保持室230で所定温度に保持されたアルミニウム溶湯Mを外部に汲み出すアルミニウム溶湯汲出室240等を有する。本発明の加熱装置100は、溶解室220、保持室230及びアルミニウム溶湯汲出室240のいずれの室にも適用可能なものである。なお、溶解室220、保持室230及びアルミニウム溶湯汲出室240の構成については、特に限定するものではなく、任意に脱ガス室を設けても良い。さらに、それぞれの溶解室220及び保持室230のアルミニウム溶湯Mの温度、湯面等を検知するための検知機器及びアルミニウム溶湯Mの制御等の制御機器等は任意に設けることができる。また、溶解室220及び保持室230の順番は逆であってもよいし、その他の室を設けても構わない。本実施形態においては、溶解室220に取り付けられた状態のものを例として説明する。
【0021】
本実施形態にかかるアルミニウム処理室200は、加熱装置100とアルミニウム処理室200が一体に作製された加熱装置一体型アルミニウムバスであり、アルミニウム処理室200の側壁210に加熱装置100が取り付けられている。
【0022】
加熱装置100は、
図2に示すように、主として、電熱発熱体等からなるヒータ10と、このヒータ10の前方側(アルミニウム溶湯側)で外周を覆うように配置されているヒータ収容部20と、このヒータ収容部20の外周であって、アルミニウム処理室200の側壁210内に配置される部分に設けられるヒータチューブ30と、ヒータ収容部20の後方側に後端から突出してヒータ10を覆うように形成され、ヒータ収容部20の内径とほぼ同様の外径を有するブランケット40と、ヒータ収容部20及びヒータチューブ30の後方であって、かつブランケット40の外周側に配置されるヒータブロック50と、ヒータ収容部20及びヒータチューブ30と、ヒータブロック50との間に配置される銅板60と、を備えている。
【0023】
ヒータ10は、通電により所定の温度へ加温可能な電熱ヒータ又はIHヒータを用いるとよい。通電により加熱可能なものであれば、特に限定するものではない。
【0024】
ヒータ収容部20は、このヒータ10をアルミニウム溶湯から保護するためのものであり、耐熱性を有するセラミックで作製されており、先端が閉塞した円筒状に形成されている。本実施形態では、図示されていないが、任意に、ヒータを所定の位置に保持する保持器具や、サイリスタ、熱電対等を配置してもよい。
【0025】
ヒータチューブ30は、ヒータ収容部20の外周であって、アルミニウム処理室200の側壁210に配置される部分に設けられたセラミックで作製されたチューブ部材であり、ヒータ10及びヒータ収容部20を保護する機能を有している。
【0026】
これらヒータ収容部20及びヒータチューブ30は、一定の規格で作製されていることから、作製するアルミニウム処理室200にぴったりなサイズであることはまれであり、ブランケット40及びヒータブロック50を使用することによって長さが調整される。
【0027】
ブランケット40は、ヒータ収容部20内の後方側でヒータ収容部20内からアルミニウム処理室200の側壁210の外壁側に至るまで断熱性を有する素材が使用され、ヒータ10を保護する機能を有する。例えば、シリカとマグネシア等で作製されるバイオソルブルファイバー(BSF)等を使用するとよい。
【0028】
ヒータブロック50は、内部のヒータ10を保護するとともに、長さを調整するための部材であって、ブランケット40の外周であって、ヒータ収容部20及びヒータチューブ30の後方側に配置されている。
【0029】
このヒータ収容部20及びヒータチューブ30とヒータブロック50との間には、厚さが1mm~5mm程度のドーナッツ型の形態の銅板60が挟持されており、この隙間からアルミニウム溶湯が侵入することを防止している。従来は、この銅板60の代わりに、ガラス繊維からなるパッキンを挟持していた。なぜなら、ガラス繊維は、アルミニウム溶湯と反応せず、アルミニウム溶湯の湯漏れを防止するのに最適な素材と考えられていたからである。しかしながら、アルミニウム溶湯は、温度等によって異なるが。400℃に近い温度になると非常に粘度が低く、水のような状態になる。そのため、0.3mm程度の隙間があれば、クラック等を通じてこのヒータチューブ30とヒータブロック50まで浸透すると、ガラス繊維の間を浸透し、ヒータ10までアルミニウム溶湯が浸透し、ヒータ漏電異常を発生させたり、ヒータを故障させたりしていた。そこで、ガラス繊維によるパッキンの代わりに銅板60を挟持することとしたものである。本発明者は、銅板60を採用したことによって、アルミニウム溶湯が銅板60内に浸透した場合、銅板60と溶融アルミニウムによる反応によるCu-Al合金への変化や、酸化銅への反応により黒変化するとともに周囲の隙間を埋めることで、アルミニウム溶湯の湯漏れの進行を防ぐことを見出したのである。これにより、アルミニウム溶湯が漏れ出してきても、効果的にアルミニウム溶湯がヒータ10へ浸透することを防止することができる。
【0030】
さらに、より密閉性を防止するために、ヒータチューブ30、銅板60及びヒータブロック50全体を耐火セメント80で覆ってもよい。
【0031】
以上のように構成された加熱装置100及びアルミニウム処理室200は、アルミニウム溶湯による湯漏れを効率的に防止できるため、従来と比較して高温での連続使用を行うことができる。
【0032】
また、地震等が発生した後、ヒータチューブ、ヒータチューブブロックの間に隙間が発生し湯漏れが発生することが多いが、銅板を使用することによって、地震により隙間が発生したとしても、銅板と溶融アルミニウムによる反応によって隙間を埋めるので湯漏れを防げる可能性が非常に高くなる。
【0033】
さらに、ヒータ10内にアルミニウムが浸透することを防止することができるので、サイリスタ、ヒータ、ヒータチューブ、ヒータ熱電対、碍子、リード線等の寿命を長くすることができる。
【0034】
なお、本発明は上述した各実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上述した実施の形態で示すように、アルミニウム溶湯を作製するための加熱装置として産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10…ヒータ、20…ヒータ収容部、30…ヒータチューブ、40…ブランケット、50…ヒータブロック、60…銅板、80…耐火セメント、90…インゴット、100…加熱装置、200…アルミニウム処理室、210…側壁、220…溶解室、230…保持室、240…アルミニウム溶湯汲出室
【要約】
【課題】経年劣化によるアルミニウム溶湯による漏電等の発生の可能性を低減することができる加熱装置及びアルミニウム処理室を提供する。
【解決手段】本発明にかかる加熱装置100は、アルミニウム溶湯を貯留するアルミニウム処理室を加熱するための加熱装置において、ヒータ10と、ヒータ10を収容するヒータ収容部20と、ヒータ収容部20の外周を覆うヒータチューブ30と、ヒータチューブの後方に配置されるヒータブロック50と、ヒータチューブ30とヒータブロック50との間に銅板60が挟持されていることを特徴とする。
【選択図】
図2