IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新川の特許一覧

<>
  • 特許-搬送装置 図1
  • 特許-搬送装置 図2
  • 特許-搬送装置 図3
  • 特許-搬送装置 図4
  • 特許-搬送装置 図5
  • 特許-搬送装置 図6
  • 特許-搬送装置 図7
  • 特許-搬送装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20221019BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20221019BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
H01L21/68 E
H01L21/78 Y
H01L21/78 N
H01L21/68 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021514936
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2020016291
(87)【国際公開番号】W WO2020213566
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019076885
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】李 瑾
(72)【発明者】
【氏名】菊地 広
(72)【発明者】
【氏名】榎戸 聡
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-99755(JP,A)
【文献】登録実用新案第3122750(JP,U)
【文献】特開平6-321351(JP,A)
【文献】特許第4766824(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0125062(KR,A)
【文献】特開平1-127538(JP,A)
【文献】特開2013-179139(JP,A)
【文献】特開2011-60849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
H01L 21/301
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ又は半導体ウェハである対象物を保持面に対面するように非接触で保持するチャック部と、
前記対象物の側面に当接可能な柱状のガイドプローブをそれぞれ間隔をおいて複数有し、前記チャック部に保持された前記対象物を、前記ガイドプローブが前記保持面の法線の方向と交差する横方向への前記対象物の移動を制限するガイド部と、を備え、
前記ガイドプローブは、前記ガイドプローブの先端が前記保持面に対して伸縮する往復移動が可能であり、
前記ガイドプローブは、前記ガイド部に設けられ前記法線の方向に傾斜する方向に延びる第1ガイドプローブと、別の前記ガイド部に設けられ前記法線の方向に傾斜する方向に延びる第2ガイドプローブであり、
前記第1ガイドプローブの先端と前記第2ガイドプローブの先端との離間幅は、前記第1ガイドプローブの基端と前記第2ガイドプローブの基端との離間幅よりも大きく、
前記第1ガイドプローブの先端、及び前記第2ガイドプローブの先端は、丸みを有している、搬送装置。
【請求項2】
前記ガイドプローブは、
前記ガイドプローブの先端から前記保持面までの距離が第1距離である第1形態と、
前記ガイドプローブの先端から前記保持面までの距離が第2距離である第2形態と、を相互に切り替え、
前記第2距離は、前記第1距離よりも短い、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
少なくとも2個の前記ガイド部は、前記保持面の第1縁部に沿って配置され、
少なくとも2個の別の前記ガイド部は、前記保持面の第2縁部に沿って配置される、請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記チャック部は、ベルヌーイチャックである、請求項1に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハを個片化した半導体チップは、電子デバイスの構成部品である。半導体チップの製造工程は、半導体ウェハを移動させる作業を含む。また、電子デバイスの製造工程は、半導体チップをピックアップする作業と、半導体チップを回路基板に配置する作業と、を含む。半導体ウェハ及び半導体チップは、清浄な状態を維持する必要性が高い。従って、半導体ウェハ及び半導体チップは、これらの作業において直接に触れないことが望ましい。例えば、特許文献1~3は、半導体ウェハなどを非接触で保持する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-003238号公報
【文献】特開2014-165470号公報
【文献】特開平01―127538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非接触で対象物を保持する技術として、いわゆるベルヌーイチャックが知られている。ベルヌーイチャックは、チャックと対象物との間に流体を流通させることにより生じる力を利用する。この力は、チャックに対象物を引き寄せる。当該引き寄せる力を、保持力と呼ぶ。しかし、ベルヌーイチャックは、この保持力の方向に交差する横方向には何らの拘束力も対象物に与えない。その結果、対象物がチャックに保持されている状態において、横方向の力が対象物に作用すると、対象物は容易に移動してしまう。その結果、対象物を安定してピックアップすることが難しかった。
【0005】
本発明は、対象物を安定してピックアップできる搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である搬送装置は、半導体チップ又は半導体ウェハである対象物を保持面に対面するように非接触で保持するチャック部と、対象物の側面に当接可能なガイドプローブを有し、チャック部に保持された対象物について、ガイドプローブが保持面の法線の方向と交差する横方向への対象物の移動を制限するガイド部と、を備える。ガイドプローブは、ガイドプローブの先端が保持面に対して近接及び離間する往復移動が可能である。
【0007】
搬送装置が備えるガイド部のガイドプローブは、チャックに保持された対象物の横方向への移動を制限する。ガイドプローブは、チャックの保持面に対して近接する移動及び離間する移動が可能である。そうすると、対象物をチャックに近づけたとき、ガイドプローブはチャックの保持面に近接するように移動する。従って、対象物の周囲状況によらず、チャックを対象物に容易に近づけることができる。そして、対象物を保持したチャックを持ち上げるとき、ガイドプローブは保持面から離間するように移動する。その結果、対象物の側面にガイドプローブが存在する。従って、対象物の横方向への移動は制限される。つまり、対象物の横方向への移動の制限と、対象物の持ち上げと、両立させることが可能である。従って、対象物を安定してピックアップすることができる。
【0008】
上記搬送装置のガイドプローブは、ガイドプローブの先端から保持面までの距離が第1距離である第1形態と、ガイドプローブの先端から保持面までの距離が第2距離である第2形態と、を相互に切り替え、第2距離は、第1距離よりも短くてもよい。この構成によれば、ガイドプローブの先端が保持面に対して近接及び離間する往復移動を確実に行うことができる。
【0009】
上記搬送装置のガイドプローブは、法線の方向に延びてもよい。この構成によれば、ガイド部の構成を簡易にすることができる。
【0010】
上記搬送装置のガイド部は、法線の方向に向かう付勢力をガイドプローブに提供する付勢力発生部を有してもよい。この構成によれば、ガイドプローブの先端が保持面に対して離間する動作を確実に生じさせることができる。
【0011】
上記搬送装置の少なくとも2個のガイド部は、保持面の第1縁部に沿って配置されてもよい。少なくとも2個の別のガイド部は、保持面の第2縁部に沿って配置されてもよい。これらの構成によれば、2個のガイド部は、対象物の側面に当接可能である。その結果、対象物の回転移動が好適に制限される。従って、対象物をさらに安定してピックアップすることができる。
【0012】
上記搬送装置のガイド部は、法線の方向に傾斜する方向に延びる第1ガイドプローブを有してもよい。別のガイド部は、法線の方向に傾斜する方向に延びる第2ガイドプローブを有してもよい。第1ガイドプローブの先端と第2ガイドプローブの先端との離間幅は、第1ガイドプローブの基端と第2ガイドプローブの基端との離間幅よりも大きくてもよい。これらの構成によれば、対象物に対してチャックの位置がずれた場合であっても、対象物をピックアップすることができる。
【0013】
上記搬送装置のチャック部は、ベルヌーイチャックであってもよい。この構成によれば、対象物を非接触で確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一形態である搬送装置によれば、対象物を安定してピックアップできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態の搬送装置が半導体チップをピックアップした様子を示す斜視図である。
図2図2は、搬送装置の構成を示す斜視図である。
図3図3は、搬送装置の端面を示す図である。
図4図4は、図2の搬送装置を用いて半導体チップをピックアップする動作を示す図である。
図5図5は、図4に続いて、搬送装置を用いて半導体チップをピックアップする動作を示す図である。
図6図6は、変形例1の搬送装置を示す図である。
図7図7は、変形例2の搬送装置を示す図である。
図8図8は、比較例の搬送装置を用いて半導体チップをピックアップする動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示すように、ダイシングされた半導体ウェハ100は、複数の半導体チップ101を有する。半導体チップ101の間隔は、少なくともダイシングカッターの厚みと同等である。一例として、半導体チップ101の間隔は、100マイクロメートル程度である。半導体チップ101は、清浄度を保つためにチップ主面101tへの接触を避けることが望ましい。そこで、実施形態の搬送装置1は、半導体チップ101を対象物として、半導体チップ101のチップ主面101tに触れることなく、一個ずつピックアップする。搬送装置1は、ピックアップ対象となる半導体チップ101の周囲の全てに別の半導体チップ101が配置されている場合にも、ピッアップ対象となる半導体チップ101をピックアップできる。搬送装置1は、半導体ウェハ100の周辺部のように、ピッアップ対象となる半導体チップ101の周囲の一部に別の半導体チップ101が配置されている場合にも、ピッアップ対象となる半導体チップ101をピックアップできる。
【0018】
半導体チップ101を搬送する搬送装置1は、例えば、ダイボンド装置およびピックアップ装置に用いてよい。
【0019】
図2に示すように、搬送装置1は、チャック2(チャック部)と、ガイド3(ガイド部)と、を有する。チャック2は、半導体チップ101を保持する保持力FKを保持面2Bに発生させる。この保持力FKは、例えば、ベルヌーイの効果に基づく。チャック2は、いわゆるベルヌーイチャックである。チャック2は、空気穴2hを有する。空気穴2hには、保持力FKを生じさせるための圧縮空気が供給される。空気穴2hは、チャック主面2tに形成された開口と、チャック2の保持面2Bに形成された開口と、を有する。保持面2B側の開口の近傍には、空気の流れを制御する制御板4が設けられてもよい。チャック主面2tから供給された圧縮空気は、チャック下面である保持面2Bの開口から噴出する。制御板4は、圧縮空気の方向を制御する。その結果、圧縮空気は、保持面2Bに沿う方向に流れる。そして、圧縮空気は、チャック側面2s側から周囲に流出する。
【0020】
なお、チャック2の構成は、上記の構成に限定されず、非接触にて半導体チップ101を保持可能な構成を採用してよい。
【0021】
チャック2の保持力FKは、保持面2Bの法線Nの方向に沿う。保持力FKの向きは、法線Nの向きとは逆である。つまり、保持力FKの向きは、保持面2Bに向かう。半導体チップ101が保持力FKによって保持されているとき、半導体チップ101は、法線Nと交差する横方向であるX方向の拘束を受けない。従って、半導体チップ101に、X方向の力が作用すると、半導体チップ101は容易にX方向に動く。同様に、半導体チップ101は、法線Nと交差する別の横方向であるY方向の拘束も受けない。従って、半導体チップ101に、Y方向の力が作用すると、半導体チップ101は容易にY方向に動く。
【0022】
そこで、ガイド3は、横方向の動きを規制する。横方向は、X方向及びY方向を含む。搬送装置1は、8個のガイド3を有する。法線Nの方向から見てチャック2の平面形状が矩形であるとき、それぞれのチャック側面2sにガイド3が2個ずつ配置される。換言すると、2個のガイド3は、保持面2Bの第1縁部2Baに沿って配置されている。さらに、2個の別のガイド3は、保持面2Bの第2縁部2Bbに沿って配置されている。複数のガイド3は、配置される位置が異なるだけであり、個々の構成は同一である。以下、ガイド3Aを例に、その詳細な構成を説明し、そのほかのガイド3について説明を省略する。
【0023】
図3の(a)部に示すように、ガイド3Aは、ガイド本体7と、バネ8と、ガイドプローブ9と、を有する。なお、図3図4および図5は、一対のガイド3A、3Bのみを図示し、そのほかのガイド3の図示を省略する。ガイド本体7は、チャック側面2sに固定されている。ガイド本体7は、バネ8とプローブ基端9bとを収容する。ガイド本体7のガイド下面7bの位置は、チャック2の保持面2Bの位置よりも上方である。換言すると、ガイド下面7bは、保持面2Bから突出しない。なお、ガイド下面7bは、保持面2Bと同一平面(面一)であってもよい。また、ガイド下面7bは、少なくとも保持力作用領域SAから突出することはない。
【0024】
ガイドプローブ9は、ガイド本体7に対してガイドプローブ9の軸線方向に往復移動が可能である。つまり、ガイドプローブ9は、チャック2に対して、保持面2Bの法線Nに沿って往復移動が可能である。バネ8は、ガイド本体7に収容されている。バネ8は、ガイドプローブ9に対して法線Nに沿う付勢力FSを付与する。バネ8は、圧縮バネである。バネ8の上端は、ガイド本体7に固定されている。バネ8の下端は、ガイドプローブ9に固定されている。初期状態において、バネ8は、自然長よりもわずかに短い。自然長よりもわずかに短い状態によれば、初期状態において、バネ8は、ガイドプローブ9を下方に押圧する付勢力FSをガイドプローブ9に付与している。従って、ガイドプローブ9を確実に突出させることができる。この状態における保持面2Bからプローブ先端9aまでの距離は、第1距離である。
【0025】
図3の(b)部に示すように、プローブ先端9aがチップ主面104tに接触すると、ガイドプローブ9は、上向きの反力FUを受ける。ガイドプローブ9に上向きの反力FUが作用すると、バネ8は圧縮される。その結果、バネ8は、短くなる。つまり、ガイドプローブ9は、上方への移動が許可される。そして、図3の(a)部に示すように、プローブ先端9aがチップ主面104tから離間する。その結果、ガイドプローブ9へ作用する上向きの反力FUが消失する。従って、ガイドプローブ9は、バネ8の付勢力FSによって下方へ押圧される。
【0026】
なお、ガイド3は、付勢力FSを発揮可能な構成を付勢力発生部として採用してよい。例えば、ガイド3は、付勢力発生部としてエアシリンダを利用してもよい。さらに、ガイド3は、必要に応じて付勢力発生部を省略してもよい。
【0027】
上記の動作に基づき、ガイドプローブ9は、相互に切り替え可能な第1形態と第2形態とを取り得る。第1形態とは、保持した半導体チップ101の横方向への移動を規制可能な状態である(図3の(a)部参照)。第1形態であるとき、ガイドプローブ9のプローブ先端9aの位置は、少なくとも、保持力作用領域SAよりも下方である。なお、保持した半導体チップ101の横方向への規制が実現さればよい。少なくとも、プローブ先端9aの位置は、保持状態にある半導体チップ101のチップ主面103tよりも下方であればよい。つまり、ガイドプローブ9は、半導体チップ103のチップ側面103sと重複する。第1形態は、半導体チップ101に近づく工程(例えば図4の(c)部)において取り得る。また、第1形態は、半導体チップ101を保持した後に半導体ウェハ100より上まで移動する工程(例えば図5の(a)部)において取り得る。換言すると、第1形態は、チャック2が半導体チップ103に保持力FKを作用させない状態から作用させる状態に切り替わる瞬間(例えば、図3の(b)部参照)を含まない。この期間では、ガイドプローブ9は、下記に説明する第2形態をとる。
【0028】
第2形態は、ガイドプローブ9が最も縮んだ状態である。換言すると、プローブ先端9aから保持面2Bまでの距離が最も短い状態であるとも言える。この状態における保持面2Bからプローブ先端9aまでの距離は、第2距離である。この状態では、プローブ先端9aは、保持力作用領域SAと重複する。つまり、ガイドプローブ9が最も縮まった状態では、プローブ先端9aの位置は、保持力作用領域SAの下端よりも保持面2B側である。
【0029】
以下、図4図5を参照しつつ、搬送装置1を用いて半導体チップ103をピックアップする動作を説明する。
【0030】
まず、図4の(a)部に示すように、搬送装置1をピックアップ対象である半導体チップ103の真上に移動させる。このとき、ガイドプローブ9の位置は、半導体チップ103のチップ側面103sよりも外側である。
【0031】
次に、図4の(b)部に示すように、搬送装置1を半導体チップ103に近づける。その結果、プローブ先端9aは、半導体チップ103に隣接する別の半導体チップ104のチップ主面104tにそれぞれ接触する。この状態では、チャック2の保持力作用領域SAは、半導体チップ103に重複していない。従って、チャック2は、半導体チップ103を保持できない。
【0032】
次に、図4の(c)部に示すように、さらに搬送装置1を半導体チップ103に近づける。より詳細には、保持面2Bをチップ主面103tに近づける。そうすると、プローブ先端9aは、半導体チップ104から反力FUを受ける。従って、チャック2が半導体チップ103に近づくにつれて、バネ8が縮まる。この動作と並行して、プローブ基端9bは、ガイド本体7の内部に収容されていく。換言すると、ガイドプローブ9は移動しないが、静止するガイドプローブ9に対して、チャック2及びガイド本体7が下方に移動していく。この状態においても、チャック2の保持力作用領域SAは、半導体チップ103に重複していない。従って、チャック2は、半導体チップ103を保持できない。
【0033】
次に、図4の(d)部に示すように、さらに搬送装置1を半導体チップ103に近づける。より詳細には、保持面2Bをチップ主面103tに近づける。その結果、保持力作用領域SAは、チップ主面103tに重複する。この状態において、半導体チップ103にチャック2の保持力FKが作用する。そして、圧縮空気をチャック2に供給する。その結果、保持力FKが発生する。従って、半導体チップ103は、チャック2に保持される。
【0034】
次に、図5の(a)部に示すように、搬送装置1をダイシングテープ201から離間させる。換言すると、搬送装置1のチャック2を上方向(Z方向)に移動させる。この移動に伴って、半導体チップ103は、上方に移動する。そして、ガイドプローブ9は、バネ8の付勢力FSによって半導体チップ104に押し付けられた状態を保つ。つまり、チャック2及びガイド本体7は、上方に移動するが、ガイドプローブ9は、その位置を保っている。そうすると、チャック2が上昇するに従って、ガイド本体7に収容されていたガイドプローブ9が伸びるように見える。従って、この期間では、半導体チップ103の上昇に伴って、当該半導体チップ103のチップ側面103sとガイドプローブ9との重複部分が形成される。つまり、半導体チップ103の上昇に伴って、半導体チップ103の横方向へのずれを抑制する機能が発揮される。特に、半導体チップ103のチップ裏面103bがダイシングテープ201から剥離している間は、部分的な剥離が不規則に生じる。その結果、意図しない外力が半導体チップ103に作用しやすい。しかし、すでに半導体チップ103の側方には、ガイドプローブ9が存在している。つまり、半導体チップ103の横方向へのずれが抑制可能な状態である。
【0035】
なお、ダイシングテープ201の裏面側に配置されたピックアップピン202を用いて、半導体チップ103を押し上げてもよい。また、ピックアップピン202の押し上げによって、半導体チップ103のチップ主面103tを保持力作用領域SAに到達させてもよい。
【0036】
次に、図5の(b)部に示すように、搬送装置1のチャック2を上方向に移動させる。この移動に伴って、半導体チップ103は、さらに上方に移動する。半導体チップ103が移動している間には、上述のようにチップ側面103sとガイドプローブ9との重複領域は増加する。そして、チャック2とガイドプローブ9との位置関係が、第1形態に復帰する。この状態では、ガイドプローブ9の長さは、最大である。
【0037】
そして、図5の(c)部に示すように、搬送装置1のチャック2をさらに上方向に移動させる。この移動に伴って、半導体チップ103は、さらに上方に移動する。また、ガイドプローブ9の長さは、最大である。つまり、チャック2に対するガイドプローブ9の相対的な位置は変化しない。従って、ガイドプローブ9は、チャック2の移動に伴って上方に移動する。その結果、プローブ先端9aは、半導体チップ104のチップ主面104tから離間する。
【0038】
以上の動作を経て、搬送装置1は、半導体チップ103をピックアップする。
【0039】
搬送装置1は、チャック2と、ガイド3と、を有する。チャック2は、半導体チップ103を保持面2Bに対面するように非接触で保持する。ガイド3は、半導体チップ103のチップ側面103sに当接可能なガイドプローブ9を有する。ガイドプローブ9は、チャック2に保持された半導体チップ103について、保持面2Bの法線Nの方向と交差する横方向への半導体チップ103の移動を制限する。ガイドプローブ9は、プローブ先端9aが保持面2Bに対して近接及び離間する往復移動が可能である。
【0040】
搬送装置1が備えるガイド3のガイドプローブ9は、チャック2に保持された半導体チップ103の横方向への移動を制限する。このガイドプローブ9は、チャック2の保持面2Bに対して近接する移動及び離間する移動が可能である。そうすると、半導体チップ103にチャック2を近づけたとき、ガイドプローブ9は保持面2Bに近接するように移動することができる。従って、半導体チップ103の周囲に別の半導体チップ104が存在した場合でも、チャック2を容易に半導体チップ103に近づけることができる。そして、半導体チップ103を保持したチャック2を持ち上げるとき、ガイドプローブ9はチャック2の保持面2Bから離間するように移動する。その結果、半導体チップ103のチップ側面103s上にはガイドプローブ9が存在する。従って、半導体チップ103の横方向への移動は制限される。つまり、搬送装置1は、半導体チップ103の横方向への移動の制限と、半導体チップ103を持ち上げと、を両立させことが可能である。従って、半導体チップ103を安定してピックアップすることができる。
【0041】
例えば、図8の(a)部に示す比較例の搬送装置300のガイドプローブ309は、搬送装置1とは異なり、ガイド本体307に固定されている。この構成によれば、チャック302の保持面302Bを半導体チップ103に近づけると、プローブ先端309aは、当該半導体チップ103に隣接する別の半導体チップ104のチップ主面104tに押し当てられる。比較例の搬送装置300は、ガイドプローブ309が伸縮しない。従って、さらにチャック302を半導体チップ103に近づけると、図8の(b)部に示すように、プローブ先端309aがチップ主面104tを押圧する力がさらに高まる。その結果、半導体チップ104を破損させてしまうおそれがある。
【0042】
一方、搬送装置1は、チャック2を半導体チップ103に近づけると、プローブ先端9aが保持面2Bに近接するように移動する。従って、比較例の搬送装置300のように、チャック2の近接に伴って、チップ主面104tへの押圧力が高まることが抑制される。従って、搬送装置1は、半導体チップ104を破損させることがない。
【0043】
搬送装置1のガイドプローブ9は、プローブ先端9aから保持面2Bまでの距離が第1距離である第1形態と、プローブ先端9aから保持面2Bまでの距離が第2距離である第2形態と、を相互に切り替える。第2距離は、第1距離よりも短い。この構成によれば、プローブ先端9aが保持面2Bに対して近接及び離間する往復移動を確実に行うことができる。
【0044】
搬送装置1のガイドプローブ9は、法線Nの方向に延びる。この構成によれば、ガイド3の構成を簡易にすることができる。
【0045】
搬送装置1のガイド3は、バネ8を有する。バネ8は、法線Nの方向に向かう付勢力FSをガイドプローブ9に提供する。この構成によれば、ガイドプローブ9の先端が保持面2Bに対して離間する動作を確実に生じさせることができる。
【0046】
搬送装置1の2個のガイド3は、保持面2Bの第1縁部2Baに沿って配置される。搬送装置1の少なくとも2個の別のガイド3は、保持面2Bの第2縁部2Bbに沿って配置される。この構成によれば、2個のガイド3は、半導体チップ103のチップ側面103sに当接可能である。その結果、半導体チップ103の回転移動は、好適に制限される。従って、半導体チップ103をさらに安定してピックアップすることができる。
【0047】
以上、本開示の搬送装置1について説明した。しかし、本開示の搬送装置1は、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施してよい。
【0048】
例えば、図6に示す搬送装置1Aは、ガイド3A、3Bを有する。ガイド3A、3Bのガイドプローブ9A、9B(第1ガイドプローブ、第2ガイドプローブ)は、保持面2Bの法線Nに対して傾いていてもよい。ガイドプローブ9A、9Bは、法線Nに対して傾いた方向にガイド本体7に対して伸縮する。なお、ガイドプローブ9A、9Bは、法線Nの方向に沿って移動してもよい。つまり、チャック2に対するプローブ先端9aの相対的な位置関係が可変であればよい。なお、図6においては、バネ8の図示を省略しているが、ガイド3A、3Bはバネ8を有してもよいし、有していなくてもよい。
【0049】
ここで、ガイドプローブ9Aのプローブ先端9aからガイドプローブ9Bのプローブ先端9aまでの離間幅H1は、ガイドプローブ9Aのプローブ基端9bからガイドプローブ9Bのプローブ基端9bまでの離間幅H2よりも大きい。換言すると、保持面2Bから離れるに従って、ガイドプローブ9Aからガイドプローブ9Bまでの離間幅は、拡大している。
【0050】
要するに搬送装置1Aのガイド3A、3Bは、法線Nの方向に傾斜する方向に延びるガイドプローブ9A、9Bを有する。ガイドプローブ9Aのプローブ先端9aからガイドプローブ9Bのプローブ先端9aまでの離間幅H1は、ガイドプローブ9Aのプローブ基端9bからガイドプローブ9Bのプローブ基端9bまでの離間幅H2よりも大きい。この構成によれば、半導体チップ103に対してチャック2の位置がずれた場合であっても、半導体チップ103をピックアップすることができる。
【0051】
つまり、搬送装置1Aは、搬送装置1Aとピックアップ対象である半導体チップ103との位置がわずかにずれていても、半導体チップ103を所定の保持位置まで導くことができる。従って、半導体チップ103を保持可能な位置の条件を緩めることができる。その結果、搬送装置1Aは、半導体チップ103をさらに安定して保持することができる。
【0052】
搬送装置に対する半導体チップの水平方向の位置ずれを許容する機構は、図6に示す機構とは異なる機構でも実現できる。例えば、図7に示すように、ガイド3C、3Dのガイドプローブ9C、9Dは、そのプローブ側面9sが傾斜している。換言すると、ガイドプローブ9C、9Dの形状は、先すぼみである。このような構成であっても、搬送装置1Bに対するピックアップ対象である半導体チップ103の位置がわずかにずれていても、半導体チップ103を所定の保持位置まで導くことができる。
【0053】
実施形態の搬送装置1は、半導体チップ103の搬送に適用するものであった。搬送装置は、半導体ウェハの搬送に適用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B…搬送装置、2…チャック(チャック部)、2B…保持面、3,3A,3B,3C,3D…ガイド(ガイド部)、4…制御板、7…ガイド本体、8…バネ、9,9A,9B,9C,9D…ガイドプローブ、100…半導体ウェハ、101…半導体チップ、101,103,104…半導体チップ、201…ダイシングテープ、202…ピックアップピン、SA…保持力作用領域、FK…保持力、FS…付勢力、N…法線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8