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特許7161252半導体装置、半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021516004
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2020016295
(87)【国際公開番号】W WO2020218063
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2019082589
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】関根 直希
(72)【発明者】
【氏名】パク ソン キ
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-340777(JP,A)
【文献】特開2004-296468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と電気的に接続される第2電極と、
一端が前記第1電極に接合され、他端が前記第2電極に接合されたボンディングワイヤと、を備え、
前記ボンディングワイヤは、
前記第1電極の表面に沿って延び、一部が押圧されて前記第1電極と電気的に接合した第1ワイヤ部と、
前記第1ワイヤ部に接触しないように、前記第1電極の表面から立ち上がる方向に延びる第2ワイヤ部と、
前記第2電極に向けて延び、端部が押圧されて前記第2電極と電気的に接合した第3ワイヤ部と、
前記第1ワイヤ部が延びる方向を前記第2ワイヤ部が延びる方向に曲げる第1曲げ部と、
前記第2ワイヤ部が延びる方向を前記第3ワイヤ部が延びる方向に曲げる第2曲げ部と、を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記第1ワイヤ部は、前記第1電極と電気的に接合した接合部と、前記接合部と前記第2ワイヤ部とに連続する延在部と、を含み、
前記延在部の長さは、前記接合部の長さよりも長い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1曲げ部において、前記第1ワイヤ部が延びる第1方向と前記第2ワイヤ部が延びる第2方向とのなす角度は、90度以下である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2曲げ部において、前記第2ワイヤ部が延びる第2方向と前記第3ワイヤ部が延びる第3方向とのなす角度は、90度以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1曲げ部は、前記ボンディングワイヤが塑性変形した部分である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1曲げ部は、前記ボンディングワイヤが塑性変形した部分である、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2曲げ部は、前記ボンディングワイヤが塑性変形した部分である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2曲げ部は、前記ボンディングワイヤが塑性変形した部分である、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項9】
第1電極と、前記第1電極と電気的に接続される第2電極と、一端が前記第1電極に接合され、他端が前記第2電極に接合されたボンディングワイヤと、を備える半導体装置の製造方法であって、
キャピラリを用いて、前記第1電極に前記ボンディングワイヤの一端を接合した後に、前記ボンディングワイヤの接合部よりも前記第2電極側であって前記接合部より上方の位置に前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリの先端を移動させる第1工程と、
前記第1電極に向けて前記キャピラリの先端を下降させて前記ボンディングワイヤの一部を前記第1電極に押し付けることにより、第1曲げ部を形成する第2工程と、
前記第1曲げ部より前記接合部側であって前記接合部より上方の位置に前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリの先端を移動させる第3工程と、
前記第1電極に向けて前記キャピラリの先端を下降させることにより、第2曲げ部を形成する第4工程と、を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1工程は、
前記第1電極の表面における法線方向に沿って前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを上昇させる工程と、
前記第1電極の表面における法線方向と交差する方向に沿って、前記第2電極側に前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを移動させる工程と、を含む請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第3工程は、
前記第1電極の表面における法線方向に沿って前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを上昇させる工程と、
前記第1電極の表面における法線方向と交差する方向に沿って、前記接合部側に前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを移動させる工程と、を含む請求項9又は10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第4工程の後に、前記キャピラリを用いて、前記第2電極に前記ボンディングワイヤの他端を接合する第5工程をさらに有し、
前記第5工程は、
前記第1電極の表面における法線方向に沿って前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを上昇させる工程と、
前記第2電極上の位置に前記キャピラリの先端を移動させる工程と、
前記第2電極に前記ボンディングワイヤの他端を接合する工程と、を含む、請求項9又は10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
第1電極と、前記第1電極と電気的に接続される第2電極と、一端が前記第1電極に接合され、他端が前記第2電極に接合されたボンディングワイヤと、を備える半導体装置を製造するワイヤボンディング装置であって、
移動可能に構成されたキャピラリを含むボンディングユニットと、
前記ボンディングユニットの動作を制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、
前記キャピラリを用いて、前記第1電極に前記ボンディングワイヤの一端を接合した後に、前記ボンディングワイヤの接合部より前記第2電極側であって前記接合部より上方の位置に前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリの先端を移動させる第1制御信号と、
前記第1電極に向けて前記キャピラリの先端を下降させて前記ボンディングワイヤの一部を前記第1電極に押し付けることにより、第1曲げ部を形成させる第2制御信号と、
前記第1曲げ部より前記接合部側であって前記接合部より上方の位置に前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリの先端を移動させる第3制御信号と、
前記第1電極に向けて前記キャピラリの先端を下降させることにより、第2曲げ部を形成させる第4制御信号と、を前記ボンディングユニットに提供する、ワイヤボンディング装置。
【請求項14】
前記第1制御信号は、
前記第1電極の表面における法線方向に沿って前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを上昇させる制御信号と、
前記第1電極の表面における法線方向と交差する方向に沿って、前記第2電極側に前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを移動させる制御信号と、を含む請求項13に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項15】
前記第3制御信号は、
前記第1電極の表面における法線方向に沿って前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを上昇させる制御信号と、
前記第1電極の表面における法線方向と交差する方向に沿って、前記接合部側に前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを移動させる制御信号と、を含む請求項13又は14に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項16】
前記制御ユニットは、前記キャピラリを用いて、前記第2電極に前記ボンディングワイヤの他端を接合する第5制御信号をさらに前記ボンディングユニットに提供し、
前記第5制御信号は、
前記第1電極の表面における法線方向に沿って前記ボンディングワイヤを繰り出しながら前記キャピラリを上昇させる制御信号と、
前記第2電極上の位置に前記キャピラリの先端を移動させる制御信号と、
前記第2電極に前記ボンディングワイヤの他端を接合させる制御信号と、を含む、請求項13又は14に記載のワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に設けられた電極は、回路基板に設けられた半導体チップの電極に対して金属製の極めて細いワイヤによって電気的に接続される。このような接続技術は、いわゆるワイヤボンディングと呼ばれている。ワイヤボンディングの一種であるウエッジボンディングは、ワイヤを電極に押圧した状態で熱及び超音波といったエネルギを付与することによりワイヤを電極に物理的及び電気的に接続する。例えば、特許文献1、2は、ウエッジボンディングに関する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-273991号公報
【文献】特開2016-062962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤは、ワイヤの両端に接続された電極間の電気的な接続を維持することが要求される。例えば、ワイヤが切断された場合及びワイヤが電極から剥離した場合には、電気的な接続が維持できない。そこで、ボンディングされたワイヤには、プル強度と呼ばれる機械的な強度が要求される。プル強度とは、両端が電極に接続されたワイヤを引っ張った状態において、ワイヤの切断又はワイヤと電極との剥離が生じる荷重である。
【0005】
当該技術分野においては、プル強度の向上が望まれている。そこで、本発明は、プル強度が向上した半導体装置、当該半導体装置の製造方法及び、当該半導体装置を製造するワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である半導体装置は、第1電極と、第1電極と電気的に接続される第2電極と、一端が第1電極に接合され、他端が第2電極に接合されたボンディングワイヤと、を備える。ボンディングワイヤは、第1電極の表面に沿って延び、一部が押圧されて第1電極と電気的に接合した第1ワイヤ部と、第1ワイヤ部に接触しないように、第1電極の表面から立ち上がる方向に延びる第2ワイヤ部と、第2電極に向けて延び、端部が押圧されて第2電極と電気的に接合した第3ワイヤ部と、第1ワイヤ部が延びる方向を第2ワイヤ部が延びる方向に曲げる第1曲げ部と、第2ワイヤ部が延びる方向を第3ワイヤ部が延びる方向に曲げる第2曲げ部と、を有する。
【0007】
ボンディングワイヤは、第1電極に接合された箇所と第2電極に接合された箇所との間に、第1ワイヤ部の一部、第2ワイヤ部、第1曲げ部及び第2曲げ部が設けられている。つまり、第1電極に接合された箇所と第2電極に接合された箇所との間には、十分な長さのボンディングワイヤが繰り出されている。そして、ボンディングワイヤは、第1曲げ部及び第2曲げ部を含む。さらに、ボンディングワイヤは、第1電極に沿って延びる第1ワイヤ部を有している。これらの構成によれば、ボンディングワイヤにプルストレスが作用したとき、第1電極に接合された箇所に対して、直接に負荷が作用することがない。負荷は、第1ワイヤ部の一部、第2ワイヤ部、第3ワイヤ部、第1曲げ部及び第2曲げ部によって、負担される。これらの部位は、第1電極に接合された箇所のように断面形状が変化するような加工を受けていないので、少なくともボンディングワイヤが本来有する強度を維持している。従って、ボンディングワイヤは、プル強度を向上させることができる。
【0008】
上記の半導体装置において、第1ワイヤ部は、第1電極と電気的に接合した接合部と、接合部と第2ワイヤ部とに連続する延在部と、を含んでもよい。延在部の長さは、接合部の長さよりも長くてもよい。この構成によれば、ボンディングワイヤのプル強度を好適に向上することができる。
【0009】
上記の半導体装置の第1曲げ部において、第1ワイヤ部が延びる第1方向と第2ワイヤ部が延びる第2方向とのなす角度は、90度以下であってもよい。この構成によれば、ボンディングワイヤのプル強度を好適に向上することができる。
【0010】
上記の半導体装置の第2曲げ部において、第2ワイヤ部が延びる第2方向と第3ワイヤ部が延びる第3方向とのなす角度は、90度以下であってもよい。この構成によれば、ボンディングワイヤのプル強度を好適に向上することができる。
【0011】
上記の半導体装置の第1曲げ部は、ボンディングワイヤが塑性変形した部分であってもよい。この構成によれば、ボンディングワイヤのプル強度を好適に向上することができる。
【0012】
上記の半導体装置の第2曲げ部は、ボンディングワイヤが塑性変形した部分であってもよい。この構成によれば、ボンディングワイヤのプル強度を好適に向上することができる。
【0013】
本発明の別の形態は、第1電極と、第1電極と電気的に接続される第2電極と、一端が第1電極に接合され、他端が第2電極に接合されたボンディングワイヤと、を備える半導体装置の製造方法である。半導体装置の製造方法は、キャピラリを用いて、第1電極にボンディングワイヤの一端を接合した後に、ボンディングワイヤの接合部よりも第2電極側であって接合部より上方の位置にボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリの先端を移動させる第1工程と、第1電極に向けてキャピラリの先端を下降させてボンディングワイヤの一部を第1電極に押し付けることにより、第1曲げ部を形成する第2工程と、第1曲げ部より接合部側であって接合部より上方の位置にボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリの先端を移動させる第3工程と、第1電極に向けてキャピラリの先端を下降させることにより、第2曲げ部を形成する第4工程と、を含む。
【0014】
上記の製造方法によれば、第1曲げ部及び第2曲げ部を含むボンディングワイヤの端部を形成することができる。従って、半導体装置におけるボンディングワイヤのプル強度を向上させることができる。
【0015】
本発明の別の形態において、第1工程は、第1電極の表面における法線方向に沿ってボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させる工程と、第1電極の表面における法線方向と交差する方向に沿って、第2電極側にボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを移動させる工程と、を含んでもよい。これらの工程によれば、第1ワイヤ部を確実に形成することができる。
【0016】
本発明の別の形態において、第3工程は、第1電極の表面における法線方向に沿ってボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させる工程と、第1電極の表面における法線方向と交差する方向に沿って、接合部側にボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを移動させる工程と、を含んでもよい。これらの工程によれば、第2ワイヤ部を確実に形成することができる。
【0017】
本発明の別の形態は、第4工程の後に、キャピラリを用いて、第2電極にボンディングワイヤの他端を接合する第5工程をさらに有してもよい。第5工程は、第1電極の表面における法線方向に沿ってボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させる工程と、第2電極上の位置にキャピラリの先端を移動させる工程と、第2電極にボンディングワイヤの他端を接合する工程と、を含んでもよい。これらの工程によれば、第1電極を第2電極に接続するボンディングワイヤを形成することができる。
【0018】
本発明のさらに別の形態は、第1電極と、第1電極と電気的に接続される第2電極と、一端が第1電極に接合され、他端が第2電極に接合されたボンディングワイヤと、を備える半導体装置を製造するワイヤボンディング装置である。ワイヤボンディング装置は、移動可能に構成されたキャピラリを含むボンディングユニットと、ボンディングユニットの動作を制御する制御ユニットと、を備える。制御ユニットは、キャピラリを用いて、第1電極にボンディングワイヤの一端を接合した後に、ボンディングワイヤの接合部より第2電極側であって接合部より上方の位置にボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリの先端を移動させる第1制御信号と、第1電極に向けてキャピラリの先端を下降させてボンディングワイヤの一部を第1電極に押し付けることにより、第1曲げ部を形成させる第2制御信号と、第1曲げ部より接合部側であって接合部より上方の位置にボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリの先端を移動させる第3制御信号と、第1電極に向けてキャピラリの先端を下降させることにより、第2曲げ部を形成させる第4制御信号と、をボンディングユニットに提供してもよい。
【0019】
このワイヤボンディング装置によれば、第1曲げ部及び第2曲げ部を含むボンディングワイヤの端部を形成することができる。従って、半導体装置におけるボンディングワイヤのプル強度を向上させることができる。
【0020】
さらに別の形態において、第1制御信号は、第1電極の表面における法線方向に沿ってボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させる制御信号と、第1電極の表面における法線方向と交差する方向に沿って、第2電極側にボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを移動させる制御信号と、を含んでもよい。この構成によれば、第1ワイヤ部を確実に形成することができる。
【0021】
さらに別の形態において、第3制御信号は、第1電極の表面における法線方向に沿ってボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させる制御信号と、第1電極の表面における法線方向と交差する方向に沿って、接合部側にボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを移動させる制御信号と、を含んでもよい。この構成によれば、第2ワイヤ部を確実に形成することができる。
【0022】
さらに別の形態において、制御ユニットは、キャピラリを用いて、第2電極にボンディングワイヤの他端を接合する第5制御信号をさらにボンディングユニットに提供してもよい。第5制御信号は、第1電極の表面における法線方向に沿ってボンディングワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させる制御信号と、第2電極上の位置にキャピラリの先端を移動させる制御信号と、第2電極にボンディングワイヤの他端を接合させる制御信号と、を含んでもよい。この構成によれば、第1電極を第2電極に接続するボンディングワイヤを形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、プル強度が向上した半導体装置、当該半導体装置の製造方法及び、当該半導体装置を製造するワイヤボンディング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、ワイヤボンディング装置の構成を示す図である。
図2図2は、半導体装置の一部を拡大して示す図である。
図3図3は、図2に示されたワイヤの端部を拡大して示す図である。
図4図4は、ワイヤの形状とキャピラリの目標点とを示す図である。
図5図5は、半導体装置の製造方法における主要な工程を示すフロー図である。
図6図6の(a)部、(b)部及び(c)部は、半導体装置の製造方法が有する主要な工程を示す図である。
図7図7の(a)部、(b)部及び(c)部は、半導体装置の製造方法が有する図6に続く主要な工程を示す図である。
図8図8の(a)部及び(b)部は、半導体装置の製造方法が有する図7に続く主要な工程を示す図である。
図9図9は、半導体装置の製造方法が有する図8に続く主要な工程を示す図である。
図10図10は、実施例に係るワイヤの端部を拡大して撮影した写真である。
図11図11は、比較例に係るワイヤの端部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
〔ワイヤボンディング装置〕
図1に示すワイヤボンディング装置1は、例えば、プリント基板などの電極に、当該プリント基板に設けられた半導体素子の電極を細径の金属ワイヤを用いて電気的に接続する。ワイヤボンディング装置1は、ワイヤに対して熱、超音波又は圧力を提供してワイヤを電極に接続する。ワイヤボンディング装置1は、搬送ユニット2と、ボンディングユニット3と、制御ユニット4と、を有する。
【0027】
搬送ユニット2は、被処理部品である半導体装置10をボンディングエリアに搬送する。ボンディングユニット3は、移動機構6と、ボンディングツール7と、キャピラリ8と、を含む。移動機構6は、キャピラリ8を移動させる。ボンディングツール7の先端には、キャピラリ8が着脱可能に設けられる。キャピラリ8は、ワイヤに対して熱、超音波又は圧力を提供する。制御ユニット4は、ボンディングユニット3の動作を含むワイヤボンディング装置1の全体の動作を制御する。制御ユニット4は、いくつかの制御信号をボンディングユニット3に提供する。例えば、制御信号は、半導体装置10に対するキャピラリ8の位置を制御するための信号と、熱、超音波又は圧力の提供の開始及び停止のための信号と、を含む。制御ユニット4については、後述する。
【0028】
〔半導体装置〕
図2は、図1に示された半導体装置10の一部を拡大して示す。半導体装置10は、例えば、回路基板11(第1電子部品)と、半導体チップ12(第2電子部品)と、ワイヤ20(ボンディングワイヤ)と、を有する。半導体チップ12は、回路基板11の主面11aに対してダイボンドなどにより固定されている。回路基板11は、一又は複数の電極パッド13(第1電極)を有する。電極パッド13は、回路基板11の主面11aに設けられている。また、半導体チップ12も、一又は複数の電極パッド14(第2電極)を有する。電極パッド14は、半導体チップ12の主面12aに設けられている。
【0029】
ワイヤ20は、電極パッド13を電極パッド14に電気的に接続する。例えば、ワイヤ20は、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)及びこれらの合金により形成される。また、ワイヤ20の直径は、一例として20マイクロメートルである。ワイヤ20の一方の端部21(一端)は、回路基板11の電極パッド13に物理的及び電気的に接続されている。ワイヤ20の他方の端部22(他端)は、半導体チップ12の電極パッド14に物理的及び電気的に接続されている。
【0030】
図3は、ワイヤ20の端部21を拡大して模式的に示す。一体物であるワイヤ20は、その形状及び機械的性質に基づくいくつかの部分を含む。
【0031】
ワイヤ20は、第1ワイヤ部24と、第2ワイヤ部26と、第3ワイヤ部27と、第1曲げ部28と、第2曲げ部29と、を含む。
【0032】
第1ワイヤ部24は、電極パッド13の表面に沿って延びる。第1ワイヤ部24の一部は、押圧されている。押圧された部分は、電極パッド13と電気的に接続している。第1ワイヤ部24は、電極パッド13と電気的に接続されたボンディング部24a(接合部)と、ボンディング部24aから第2ワイヤ部26に連続する延在部24bと、を含む。
【0033】
ボンディング部24aは、電極パッド13に対して物理的及び電気的に接続されている。ここでいう物理的に接続されているとは、ワイヤ20が電極パッド13に接合されていることをいう。例えば、ボンディング部24aは、引っ張り力に対する抵抗力(反力)を生じさせる部分と定義してもよい。また、電気的に接続されているとは、ワイヤ20と電極パッド13との間の電気抵抗が極めて小さい状態をいう。
【0034】
ボンディング部24aは、いわゆるウエッジボンディングにより形成される。ウエッジボンディングでは、キャピラリ8がワイヤ20を電極パッド13に対して押圧する。この押圧された状態で、キャピラリ8は、ワイヤ20へエネルギ(熱、超音波など)を提供する。その結果、押圧された部分が押しつぶされて扁平状に変形する。その結果、ワイヤ20は、電極パッド13に対して圧着される。つまり、ボンディング部24aは、ワイヤ20の直径よりも小さい厚みを有する部分であると定義してよい。
【0035】
延在部24bは、第1ワイヤ部24の一部分である。延在部24bは、ボンディング部24aから連続して延びる。延在部24bは、ワイヤ20の断面形状を保っている。延在部24bの断面形状は、ほぼ円形である。延在部24bは、電極パッド13の主面13aに沿って延びている。延在部24bの長さは、例えば、キャピラリ8の先端の直径と同じであってもよい。また、延在部24bの長さは、例えば、キャピラリ8の先端の直径よりも大きくてもよい。延在部24bは、電極パッド13に対して物理的及び電気的に接続されることを要しない点で、ボンディング部24aと異なる。例えば、延在部24bは、電極パッド13に接触していてもよい。この状態によれば、延在部24bは、電極パッド13に対して電気的に接続されている。一方、延在部24bは、主面13aの法線方向に向く引っ張り力に対して抵抗できない。従って、物理的に接続されているとは言えない。しかし、延在部24bの状態は、電極パッド13に対して物理的に接続されている状態を排除しない。つまり、延在部24bは、電極パッド13に対して物理的に接続されていてもよい。なお、延在部24bは、電極パッド13に対して接触しておらず、延在部24bは電極パッド13の主面13aからわずかに離間していてもよい。離間した状態によれば、延在部24bは、電極パッド13に対して電気的に接続されていない。また、離間した状態によれば、延在部24bは、物理的にも接続されていない。
【0036】
第2ワイヤ部26は、後述する第1曲げ部28を介して第1ワイヤ部24の延在部24bに連続する。第2ワイヤ部26は、電極パッド13の主面13aと交差する方向D2に延びる。例えば、第2ワイヤ部26は、主面13aの法線方向に延びていると定義してもよい。つまり、第2ワイヤ部26は、主面13aから起立するワイヤ20の一部である。第2ワイヤ部26が延びる方向D2(第2方向)と第1ワイヤ部24の延在部24bが延びる方向D1(第1方向)とのなす角度A1は、直角以下(90度以下)であってよい。換言すると、方向D1、D2のなす角度A1は、鋭角である。一例として、角度A1は、一例として、20度以上60度以下としてよい。つまり、第2ワイヤ部26が延びる方向D2は、主面13aの法線方向の成分と、第1ワイヤ部24の延在部24bが延びる方向D1とは逆方向の成分と、を含む。従って、第2ワイヤ部26が延びる方向D2は、主面13aの法線方向に対して傾いている。一方、方向D1、D2のなす角度は、0度よりも大きい。つまり、方向D2は、方向D1に対して平行ではない。換言すると、第2ワイヤ部26は、第1ワイヤ部24の延在部24bに対して接触しない。第2ワイヤ部26の長さは、例えば、第1ワイヤ部24の延在部24bと同程度としてよい。第2ワイヤ部26は、第1ワイヤ部24の延在部24bと同様にワイヤ20の断面形状を保っている。第2ワイヤ部26の断面形状は、ほぼ円形である。
【0037】
第3ワイヤ部27は、後述する第2曲げ部29を介して第2ワイヤ部26に連続する。第3ワイヤ部27の端部は、半導体チップ12の電極パッド14に接続されている。従って、第3ワイヤ部27の長さは、電極パッド13から電極パッド14までの距離とおおむね同じである。第3ワイヤ部27の形状は、円弧である。従って、第3ワイヤ部27の形状は、電極パッド13から電極パッド14までの直線距離よりも長い。第3ワイヤ部27は、回路基板11の電極パッド13から半導体チップ12の電極パッド14に向かって延在する。例えば、第2ワイヤ部26の延びる方向D2と第3ワイヤ部27の延びる方向D3(第3方向)とのなす角度A2は、直角より大きい(90度以上)。つまり、角度A2は、鈍角である。角度A2は、一例として、90度以上120度以下としてよい。第3ワイヤ部27は、電極パッド14に接続された端部を除き、第1ワイヤ部24の延在部24bと同様にワイヤ20の断面形状を保っている。おり、第3ワイヤ部27の断面形状は、ほぼ円形である。
【0038】
第1曲げ部28は、第1ワイヤ部24と第2ワイヤ部26の間に設けられている。つまり、第1曲げ部28は、第1ワイヤ部24の延在部24bが延びる方向D1を第2ワイヤ部26が延びる方向D2に変化させる。第1曲げ部28の形状は、円弧である。第1曲げ部28は、曲げ加工が施されたワイヤ20の一部である。第1曲げ部28を形成する曲げ加工の詳細については、後述する。この曲げ加工は、ワイヤ20に塑性変形を生じさせる。塑性変形によれば、第1曲げ部28には、加工硬化が生じる。従って、第1曲げ部28の強度は、そもそものワイヤ20が有する強度よりも高い場合がある。
【0039】
第2曲げ部29は、第2ワイヤ部26と第3ワイヤ部27の間に設けられている。つまり、第2曲げ部29は、第2ワイヤ部26が延びる方向D2を第3ワイヤ部27が延びる方向D3に変化させる。第2曲げ部29の形状は、第1曲げ部28と同様に円弧である。第2曲げ部29は、曲げ加工が施されたワイヤ20の一部である。第2曲げ部29を形成する曲げ加工の詳細については、後述する。従って、第1曲げ部28と同様に、第2曲げ部29は、塑性変形を生じた部位であり、加工硬化が生じている。
【0040】
〔半導体装置の製造方法〕
上述した半導体装置10は、ワイヤボンディング装置1によって製造される。以下、図3図4図5及び図6を参照しながら、ワイヤボンディング装置1における制御ユニット4の制御動作を説明する。さらに、半導体装置10の製造方法を説明する。
【0041】
図4は、ワイヤ20の形状とキャピラリ9の目標点とを示す。制御ユニット4は、予め設定された第1目標点P1~第9目標点P9(第9目標点は図9参照)に関する情報を有する。制御ユニット4は、第1目標点P1~第9目標点P9にキャピラリ8が順次移動するように、ボンディングユニット3に制御信号を提供する。また、制御ユニット4は、移動中におけるワイヤ20の繰り出しの許可と繰り出しの停止とを制御する制御信号もボンディングユニット3に提供する。さらに、制御ユニット4は、キャピラリ8からの超音波などの提供の許可と停止を制御する制御信号もボンディングユニット3に提供する。
【0042】
第1目標点P1は、ワイヤ20を電極パッド13にボンディングする位置を示す。換言すると、第1目標点P1は、ボンディング部24aを形成する位置である。ワイヤ20のボンディングの際には、ワイヤ20を電極パッド13の主面13aに押圧する。従って、第1目標点P1は、電極パッド13の主面13a上に設定される。より詳細には、主面13aから第1目標点P1までの距離は、ワイヤ20の直径と同等又はワイヤ20の直径よりもわずかに小さい。
【0043】
第2目標点P2は、延在部24bの一部を形成するための位置である。第2目標点P2は、第1目標点P1の直上に設定される。以下の説明において、主面13aの法線に沿って主面13aから離れる方向を「上方向」と呼ぶ。また、法線に沿って主面13aに近づく方向を「下方向」と呼ぶ。第2目標点P2は、第1目標点P1を通る主面13aの法線上に設定される。主面13aから第2目標点P2までの距離は、主面13aから第1目標点P1までの距離よりも大きい。第1目標点P1から第2目標点P2までの距離は、例えば、延在部24bの長さに基づいて決定してよい。
【0044】
第3目標点P3も、延在部24bの一部を形成するための位置である。第3目標点P3は、第2目標点P2に対して法線に直交する軸線に沿って離間した位置に設定される。以下の説明において、第2目標点P2に対して法線に直交する軸線を、「平行軸線」と称する。平行軸線に沿って電極パッド13から電極パッド14に向かう方向を「順方向」と呼ぶ。平行軸線に沿って電極パッド14から電極パッド13に向かう方向を「逆方向」と呼ぶ。つまり、第3目標点P3は、第2目標点P2から順方向に所定距離だけ離間した位置に設定される。例えば、第2目標点P2から第3目標点P3までの距離は、例えば、延在部24bの長さに基づいて決定してよい。つまり、第2目標点P2から第3目標点P3までの距離は、第1目標点P1から第2目標点P2までの距離と同等であってもよいし、大きくてもよいし、短くてもよい。
【0045】
第4目標点P4は、第1曲げ部28を形成するための位置である。第4目標点P4は、第3目標点P3に対して下方向に離間するように設定される。従って、第3目標点P3から第4目標点P4への移動とは、下方向への移動である。第4目標点P4は、第1目標点P1よりも電極パッド14に近い。第4目標点P4は、主面13aに含まれてもよいし、主面13aから所定距離だけ離間してもよい。主面13aから第4目標点P4までの距離は、主面13aから第1目標点P1までの距離に無関係であってもよい。つまり、主面13aから第4目標点P4までの距離は、主面13aから第1目標点P1までの距離と同等であってもよい。主面13aから第4目標点P4までの距離は、主面13aから第1目標点P1までの距離より小さくてもよい。第3目標点P3から第4目標点P4までの距離は、例えば、第2ワイヤ部26の長さに基づいて決定してよい。
【0046】
第5目標点P5は、第2ワイヤ部26を形成するための位置である。第5目標点P5は、第4目標点P4の上方向に位置する。従って、法線方向において、第3目標点P3、第4目標点P4及び第5目標点P5は、同一の線上に設定される。つまり、第4目標点P4から第5目標点P5への移動とは、上方向への移動である。また、第5目標点P5は、第4目標点P4よりも上方に設定される。例えば、主面13aから第5目標点P5までの距離は、主面13aから第4目標点P4までの距離よりも大きい。一方、図7の(b)部は、主面13aから第5目標点P5までの距離が、主面13aから第3目標点P3までの距離よりも小さい場合を例示する。主面13aから第5目標点P5までの距離は、主面13aから第3目標点P3までの距離と同じであってもよい。主面13aから第5目標点P5までの距離は、主面13aから第3目標点P3までの距離より大きくてもよい。第4目標点P4から第5目標点P5までの距離は、例えば、第2ワイヤ部26の長さに基づいて決定してよい。
【0047】
第6目標点P6も、第2ワイヤ部26を形成するための位置である。第6目標点P6は、第5目標点P5に対して逆方向に離間する。つまり、第5目標点P5から第6目標点P6への移動とは、逆方向への移動である。なお、図7の(c)部は、水平方向において、第5目標点P5から第6目標点P6までの距離が、第5目標点P5から第1目標点P1又は第2目標点P2までの距離よりも大きい場合を例示する。第5目標点P5から第6目標点P6までの距離は、第5目標点P5から第1目標点P1又は第2目標点P2までの平行軸線に沿った距離と同じであってもよい。第5目標点P5から第6目標点P6までの距離は、第5目標点P5から第1目標点P1又は第2目標点P2までの平行軸線に沿った距離より小さくてもよい。第5目標点P5から第6目標点P6までの距離は、例えば、第2ワイヤ部26の長さに基づいて決定してよい。
【0048】
第7目標点P7は、第2曲げ部29を形成するための位置である。第7目標点P7は、第6目標点P6に対して下方向に離間するように設定される。つまり、第7目標点P7は、第6目標点P6よりも電極パッド13に近い。つまり、第6目標点P6から第7目標点P7への移動とは、下方向への移動である。例えば、主面13aから第7目標点P7までの距離は、主面13aから第6目標点P6までの距離よりも小さい。第6目標点P6から第7目標点P7までの距離は、ワイヤ20に塑性変形を生じさせるために要求される移動量に基づいて決定されてもよい。このワイヤ20に塑性変形を生じさせるために要求される移動量とは、例えば、ワイヤ20の直径に基づいて決定してもよい。一例として、第6目標点P6から第7目標点P7までの距離は、ワイヤ20の直径の1.5倍程度としてもよい。
【0049】
第8目標点P8は、第3ワイヤ部27を形成するための位置である。第8目標点P8は、第7目標点P7の上方向に位置する。従って、法線方向において、第6目標点P6、第7目標点P7及び第8目標点P8は、同一の線上に設定される。つまり、第7目標点P7から第8目標点P8への移動とは、上方向への移動である。また、第8目標点P8は、第7目標点P7よりも上方に設定される。例えば、主面13aから第8目標点P8までの距離は、主面13aから第7目標点P7までの距離よりも大きい。第7目標点P7から第8目標点P8までの距離は、例えば、第3ワイヤ部27の長さに基づいて決定してよい。
【0050】
第9目標点P9(図9参照)も、第3ワイヤ部27を形成するための位置である。第9目標点P9は、半導体チップ12上に設定される。より詳細には、半導体チップ12の電極パッド14上に設定される。従って、第8目標点P8から第9目標点P9への移動とは、順方向への移動である。
【0051】
<第1工程>
制御ユニット4は、第1制御信号をボンディングユニット3に提供する(図5の工程S10、図6の(a)部、同(b)部及び同(c)部参照)。第1制御信号は、キャピラリ8を第1目標点P1に移動させる動作と、キャピラリ8から所定期間だけ超音波を放射させる動作(工程S11)と、キャピラリ8を第2目標点P2に移動させる動作(工程S12)と、キャピラリ8を第3目標点P3に移動させる動作(工程S13)と、ワイヤ20の繰り出しを許可する動作と、を含む。
【0052】
第1制御信号を受けたボンディングユニット3は、まず、キャピラリ8を第1目標点P1に移動させる。このとき、キャピラリ8の先端は、ワイヤ20を電極パッド13に対して押圧している。次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8の先端から所定期間だけ超音波を放射する。そうすると、キャピラリ8の先端に押圧されていたワイヤ20の一部は、扁平状に変形する。この変形によって、ワイヤ20は、電極パッド13に対して接合される。その結果、ボンディング部24aが形成される。
【0053】
次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8を第1目標点P1から第2目標点P2に移動させる(工程S12、図6の(b)部参照)。さらに、ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを許可する。つまり、ボンディングユニット3は、ワイヤ20を繰り出しながらキャピラリ8を第1目標点P1から第2目標点P2に移動させる。ここで繰り出されたワイヤ20は、延在部24bを構成する。
【0054】
次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8を第2目標点P2から第3目標点P3に移動させる(工程S13、図6の(c)部参照)。さらに、ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを許可する。つまり、ボンディングユニット3は、ワイヤ20を繰り出しながらキャピラリ8を第2目標点P2から第3目標点P3に移動させる。ここで繰り出されたワイヤ20も、延在部24bを構成する。
【0055】
なお、工程S12、S13は、キャピラリ8を第1目標点P1から第3目標点P3に移動させることができればよい。例えば、工程S12、S13に相当する工程として、第1目標点P1から第3目標点P3に直接にキャピラリ8を移動させてもよい。換言すると、キャピラリ8は、第2目標点P2を経由しなくてもよい。例えば、第1目標点P1と第3目標点P3とを結ぶ直線の軌跡に沿って、キャピラリ8を移動させてもよい。また、第1目標点P1と第3目標点P3とを通る円弧の軌跡に沿って、キャピラリ8を移動させてもよい。
【0056】
<第2工程>
制御ユニット4は、第2制御信号をボンディングユニット3に提供する(図5の工程S20及び図7の(a)部参照)。第2制御信号は、キャピラリ8を第4目標点P4に移動させる動作を含む。
【0057】
第2制御信号を受けたボンディングユニット3は、キャピラリ8を第3目標点P3から第4目標点P4に下降させる(工程S20)。このとき、ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを禁止してもよい。このとき、キャピラリ8内に存在するワイヤ20の一部分と、工程S12、S13においてキャピラリ8から繰り出されたワイヤ20の別の部分とは、所定の曲げ角度を有して連続している。具体的には、キャピラリ8の内部に存在するワイヤ20の一部分は、主面13aの法線方向と一致している。一方、キャピラリ8から繰り出されているワイヤ20の別の部分は、当該法線方向に対して傾いている。例えば、ワイヤ20の別の部分は、第1目標点P1と第3目標点P3とを結ぶ仮想線に沿っているとしてよい。従って、ワイヤ20の一部分とワイヤ20の別の部分との接続部分は、曲げられている。この接続部分は、キャピラリ8の先端部分に生じている。
【0058】
この状態において、キャピラリ8を下降させると、ワイヤ20の一部分とワイヤ20の別の部分との間の角度が小さくなる。具体的には、ワイヤ20の一部分とワイヤ20の別の部分との間の角度は、直角に近づく。つまり、ワイヤ20の一部分とワイヤ20の別の部分との接続部分には、曲げ加工が施される。そして、この曲げの程度が大きくなると、ワイヤ20の一部分とワイヤ20の別の部分との接続部分における変形は、弾性変形から塑性変形へ移行する。接続部分が塑性変形すると、接続部は元の形状に戻ることなく、形状を維持する。この状態は、いわゆるワイヤ20に「くせ」がついた状態である。つまり、第2制御信号によるキャピラリ8の下降は、ワイヤ20に「くせ」をつける工程である。そして、第2制御信号によるキャピラリ8の下降によってつけられた「くせ」を含む部分は、本実施形態における第1曲げ部28である。
【0059】
<第3工程>
制御ユニット4は、第3制御信号をボンディングユニット3に提供する(図5の工程S30及び図7の(b)部及び(c)部参照)。第3制御信号は、キャピラリ8を第5目標点P5に移動させる動作(工程S31)と、キャピラリ8を第6目標点P6に移動させる動作(工程S32)と、ワイヤ20の繰り出しを許可する動作と、を含む。
【0060】
第3制御信号を受けたボンディングユニット3は、キャピラリ8を第4目標点P4から第5目標点P5に移動させる(工程S31、図7の(b)部参照)。さらに、ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを許可する。つまり、ボンディングユニット3は、ワイヤ20を繰り出しながらキャピラリ8を第4目標点P4から第5目標点P5に移動させる。ここで繰り出されたワイヤ20は、第2ワイヤ部26を構成する。
【0061】
次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8を第5目標点P5から第6目標点P6に移動させる(工程S32、図7の(c)部参照)。さらに、ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを許可する。つまり、ボンディングユニット3は、ワイヤ20を繰り出しながらキャピラリ8を第5目標点P5から第6目標点P6に移動させる。ここで繰り出されたワイヤ20も、第2ワイヤ部26を構成する。
【0062】
なお、この工程S30では、キャピラリ8を第4目標点P4から第6目標点P6に移動させることができればよい。例えば、工程S30は、第4目標点P4から第6目標点P6に直接にキャピラリ8を移動させてもよい。換言すると、工程S30において、キャピラリ8は、第5目標点P5を経由しなくてもよい。例えば、工程S30では、第4目標点P4と第6目標点P6とを結ぶ直線の軌跡に沿って、キャピラリ8を移動させてもよい。
【0063】
<第4工程>
制御ユニット4は、第4制御信号をボンディングユニット3に提供する(図5の工程S40及び図8の(a)部参照)。第4制御信号は、キャピラリ8を第7目標点P7に移動させる動作を含む。
【0064】
第4制御信号を受けたボンディングユニット3は、キャピラリ8を第6目標点P6から第7目標点P7に下降させる(工程S40)。ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを禁止してもよい。このとき、キャピラリ8内に存在するワイヤ20の一部分と、工程S30においてキャピラリ8から繰り出されたワイヤ20の別の部分とは、所定の曲げ角度を有して連続している。つまり、ワイヤ20の一部分と繰り出された部分との関係は、工程S20で説明した関係と類似する。そうすると、キャピラリ8を下降すると、ワイヤ20の一部分と、繰り出された部分との間の接続部分の角度が小さくなる。そして、曲げの程度がワイヤ20を構成する材料が有する塑性域に達すると、ワイヤ20の一部分と、繰り出された部分との間の接続部分に塑性変形が生じる。この塑性変形を生じさせた部分も、工程S12、S13と同様に、「くせ」を付けた部分と呼ぶことができる。従って、ワイヤ20の一部分と繰り出された部分との間は、曲げられた形状を保つ。その結果、ワイヤ20の一部分と繰り出された部分との間には、第2曲げ部29が生じる。
【0065】
<第5工程>
制御ユニット4は、第5制御信号をボンディングユニット3に提供する(図5の工程S50及び図8の(b)部及び図9参照)。第5制御信号は、キャピラリ8を第8目標点P8に移動させる動作(工程S51)と、キャピラリ8を第9目標点P9に移動させる動作(工程S52)と、ワイヤ20の繰り出しを許可する動作と、キャピラリ8から所定期間だけ超音波を放射させる動作(工程S53)と、を含む。
【0066】
第5制御信号を受けたボンディングユニット3は、キャピラリ8を第7目標点P7から第8目標点P8に移動させる(工程S51、図8の(b)部参照)。さらに、ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを許可する。つまり、ボンディングユニット3は、ワイヤ20を繰り出しながらキャピラリ8を第7目標点P7から第8目標点P8に上昇させる。ここで繰り出されたワイヤ20は、第3ワイヤ部27の一部を構成する。
【0067】
次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8を第8目標点P8から第9目標点P9に移動させる(工程S52、図9参照)。さらに、ボンディングユニット3は、キャピラリ8からのワイヤ20の繰り出しを許可する。つまり、ボンディングユニット3は、ワイヤ20を繰り出しながらキャピラリ8を第8目標点P8から第9目標点P9に移動させる。ここで繰り出されたワイヤ20も、第2ワイヤ部26の別の一部を構成する。
【0068】
次に、ボンディングユニット3は、キャピラリ8の先端から所定期間だけ超音波を放射する(工程S52、図9参照)。そうすると、キャピラリ8の先端に押圧されていたワイヤ20の一部は、扁平状に変形する。この変形によって、ワイヤ20は、電極パッド14に対して接合される。
【0069】
上記の工程を経て形成されたワイヤ20によれば、プル強度を向上させることができる。以下、比較例の半導体装置110と比較しつつ、本実施形態の半導体装置10の作用効果について説明する。
【0070】
図11は、比較例の半導体装置110が有するワイヤ120の端部を示す。ワイヤ120は、電極パッド113に接続されたボンディング部123と、別の電極パッドへ向けて延びるワイヤ部124と、を有する。つまり、ワイヤ120は、第1ワイヤ部24、第2ワイヤ部26、第3ワイヤ部27、第1曲げ部28及び第2曲げ部29に相当する部位を有しない。このようなワイヤ120にプルストレスを加えると、その負荷はボンディング部123から斜め上方に延びる部分(いわゆるネック125)に作用する。このネック125は、ボンディング部123の一部を含むため、その厚みが薄い。従って、ネック125における強度は、ワイヤ120が有する強度よりも低い。
【0071】
一方、本実施形態のワイヤ20は、ボンディング部24aと、第3ワイヤ部27との間に、延在部24b、第2ワイヤ部26、第1曲げ部28、第2曲げ部29が設けられている。つまり、ボンディング部24aと、第3ワイヤ部27との間には、十分な長さのワイヤが繰り出されている。そして、ワイヤ20は、加工硬化を生じた第1曲げ部28及び第2曲げ部29を含む。さらに、ワイヤ20は、ボンディング部24aから電極パッド13に沿って延びる延在部24bを有している。これらの構成によれば、ワイヤ20にプルストレスが作用したとき、ボンディング部24aと延在部24bとの接続部分に対して、直接に負荷が作用することがない。負荷は、ボンディング部24aと第3ワイヤ部27との間に繰り出されたワイヤと、加工硬化を生じた第1曲げ部28及び第2曲げ部29とによって、負担される。これらの部位は、ボンディング部24aのように断面形状が変化するような加工を受けていないので、少なくともワイヤ20が本来有する強度を維持している。さらに、これらの部位における第1曲げ部28及び第2曲げ部29は、加工硬化によってさらに強度が高まっていることもあり得る。従って、ワイヤ20は、プル強度を向上させることができる。
【0072】
比較例として、直径が20マイクロメートルであるワイヤを、図11に示すような形状として電極パッド間に張り渡した。また、ワイヤは、金、銀、アルミニウム及び銅のそれぞれについて準備した。その結果、プル強度の最低値は1.0gfであることがわかった。次に、同じワイヤを、実施形態に係る製造方法を用いて電極パッド間に張り渡した。図10は、その一例を示す。その結果、プル強度の最低値は2.5gfであることがわかった。つまり、実施形態に係るワイヤボンディング装置1を用いて実施形態に係る製造方法によるワイヤボンディングを行った場合には、プル強度を2.5倍程度向上させ得ることがわかった。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施してよい。
【符号の説明】
【0074】
1…ワイヤボンディング装置、2…搬送ユニット、3…ボンディングユニット、4…制御ユニット、6…移動機構、7…ボンディングツール、8…キャピラリ、10…半導体装置、11…回路基板(第1電子部品)、12…半導体チップ(第2電子部品)、13…電極パッド(第1電極)、14…電極パッド(第2電極)、20…ワイヤ(ボンディングワイヤ)、21…端部(一端)、22…端部(他端)、24…第1ワイヤ部、24a…ボンディング部(接合部)、24b…延在部、26…第2ワイヤ部、27…第3ワイヤ部、28…第1曲げ部、29…第2曲げ部、110…半導体装置、120…ワイヤ、113…電極パッド、123…ボンディング部、124…ワイヤ部、125…ネック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11