(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】多段寝台
(51)【国際特許分類】
B63B 29/10 20060101AFI20221019BHJP
A47C 19/20 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B63B29/10
A47C19/20
(21)【出願番号】P 2022078708
(22)【出願日】2022-05-12
【審査請求日】2022-05-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591136908
【氏名又は名称】シンコウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】井手 秀則
(72)【発明者】
【氏名】新宮 和也
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓也
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3100584(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0195983(US,A1)
【文献】特開2021-007525(JP,A)
【文献】特開2015-096122(JP,A)
【文献】実開平04-000249(JP,U)
【文献】実開昭53-101704(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0347609(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0143824(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 29/10
A47C 19/20
F16B 12/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝台枠の平面形において当該寝台枠の輪郭を形成する外枠と、前記外枠の内側にあって前記外枠に結合された床面材とを備えて、前記床面材の上にマットレスが載置される複数個の寝台枠と、
前記寝台枠の四隅に配置されて、設置場所に固定されて、前記寝台枠を支持する4本の脚部材を備え
て、
前記複数個の寝台枠が上下方向に離隔して配置されるとともに、
前記脚部材が前記設置場所に固定された状態において、前記床面材が前記外枠に結合された状態を維持しながら、前記複数個の寝台枠の前記脚部材に対する取り付け高さを変更可能にした多段寝台
であって、
前記寝台枠の四隅において前記寝台枠にボルト止めされる支持金物と、
4本の前記脚部材のそれぞれに固定されて、前記支持金物が係止される受け金物を備え、
前記支持金物は、
前記寝台枠の下面に当接する水平面材と、前記水平面材に固定されるとともに前記受け金物に係止される垂直面材を備えて、前記垂直面材が前記寝台枠の平面形の輪郭の外側に位置するように、前記寝台枠に固定され、
前記水平面材には、前記支持金物を前記寝台枠に固定するボルトが挿通される長穴であって、前記水平面材の平面形において前記垂直面材の幅方向に平行に延びる長穴が穿設され、
前記支持金物を前記長穴に沿ってスライドさせ、前記ボルト周りに回転させることによって、前記支持金物の全体を前記寝台枠の平面形の輪郭の内側に移動させることが可能に構成されていて、
前記脚部材のそれぞれにおいて、前記受け金物は、前記設置場所から測った高さが異なる複数の位置に配置されるとともに、
前記脚部材のそれぞれが備える前記受け金物の個数が前記寝台枠の個数よりも多い、
多段寝台。
【請求項2】
前記支持金物と前記受け金物を介して前記脚部材に係止される複数個の前記寝台枠と、
前記脚部材の特定の高さに固定される単数個の寝台枠を備える、
請求項1に記載の多段寝台。
【請求項3】
前記支持金物と前記受け金物を介して前記脚部材に係止される上段寝台枠及び中段寝台枠と、
前記脚部材の特定の高さに固定される下段寝台枠を備える、
請求項2に記載の多段寝台。
【請求項4】
前記上段寝台枠を高位置あるいは低位置の2箇所において係止する2組の前記受け金物の組と、
前記中段寝台枠を高位置あるいは低位置の2箇所において係止する2組の前記受け金物の組を備える、
請求項3に記載の多段寝台。
【請求項5】
2段寝台として使用される形態と3段寝台として使用される形態とを選択して変更可能な、
請求項4に記載の多段寝台。
【請求項6】
前記受け金物が備える雌ねじに螺合されるとともに、前記支持金物が備える貫通穴に挿通されて、前記支持金物の前記受け金物からの脱落を防止するボルトを備える、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多段寝台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として艦船に装備される多段寝台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、艦船の居住区においては、3段式の寝台が装備されていた(特許文献1)。近年は、居住区の快適性が求められるとともに、艦船の省人化が進んだので、2段式の寝台が主流になりつつある。一方、艦船は、任務の多様化が進められていて、付与された任務によって、乗員の人数が一時的に増加することが予定されるようになった。つまり、特定の任務が付与されると、固有の乗員に加えて、臨時の乗員が乗り組むことが予定されるようになった。そのため、通常は、2段式の寝台として使用するとともに、必要に応じて3段式の寝台に変更することができる多段寝台が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3段式寝台は、3組の寝台枠を必要とするが、2段式寝台は2組の寝台枠があれば足りる。そのため、従来の3段式寝台を2段式寝台として使用する場合には、不要となる1組の寝台枠を取り外して、別の場所に格納する必要がある。そして、そのための作業スペースと格納スペースを必要とする。つまり、不要となる1組の寝台枠を引き出して、運搬して、格納するスペースを必要とするという問題がある。容積が限られている艦船において、かかるスペースを確保することは容易ではない。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、形態変更が可能な多段寝台であって、形態変更に伴う作業スペースと格納スペースを必要としない多段寝台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る多段寝台は、寝台枠の平面形において当該寝台枠の輪郭を形成する外枠と、外枠の内側にあって外枠に結合された床面材とを備えて、床面材の上にマットレスが載置される複数個の寝台枠と、寝台枠の四隅に配置されて、設置場所に固定されて、寝台枠を支持する4本の脚部材を備える。そして、本発明に係る多段寝台は、複数個の寝台枠が上下方向に離隔して配置されるとともに、脚部材が設置場所に固定された状態において、床面材が外枠に結合された状態を維持しながら、複数個の寝台枠の脚部材に対する取り付け高さを変更可能に構成されている。さらに、本発明に係る多段寝台は、寝台枠の四隅において寝台枠にボルト止めされる支持金物と、4本の脚部材のそれぞれに固定されて、支持金物が係止される受け金物を備える。支持金物は、寝台枠の下面に当接する水平面材と、水平面材に固定されるとともに受け金物に係止される垂直面材を備えて、垂直面材が寝台枠の平面形の輪郭の外側に位置するように、寝台枠に固定される。水平面材には、支持金物を寝台枠に固定するボルトが挿通される長穴であって、水平面材の平面形において垂直面材の幅方向に平行に延びる長穴が穿設され、支持金物を長穴に沿ってスライドさせ、ボルト周りに回転させることによって、支持金物の全体を寝台枠の平面形の輪郭の内側に移動させることが可能に構成されている。脚部材のそれぞれにおいて、受け金物は、設置場所から測った高さが異なる複数の箇所に配置されるとともに、脚部材のそれぞれが備える受け金物の個数が寝台枠の個数よりも多くされている。
【0007】
多段寝台は、支持金物と受け金物を介して脚部材に係止される複数個の寝台枠と、脚部材の特定の高さに固定される単数個の寝台枠を備えても良い。
【0008】
多段寝台は、支持金物と受け金物を介して脚部材に係止される上段寝台枠及び中段寝台枠と、脚部材の特定の高さに固定される下段寝台枠を備えても良い。
【0009】
多段寝台は、上段寝台枠を高位置あるいは低位置の2箇所において係止する2組の受け金物の組と、中段寝台枠を高位置あるいは低位置の2箇所において係止する2組の受け金物の組を備えても良い。
【0010】
多段寝台は、2段寝台として使用される形態と3段寝台として使用される形態とを選択して変更可能なものであっても良い。
【0011】
多段寝台は、受け金物が備える雌ねじに螺合されるとともに、支持金物が備える貫通穴に挿通されて、支持金物の受け金物からの脱落を防止するボルトを備えても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る多段寝台は形態変更に伴う作業スペースと格納スペースを必要としないので、スペースに制約される艦船の居住区に設置することができる。スペースに制約のある居住区内において、形態変更の作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る多段寝台の外形を示す斜視図である。
【
図2】2段寝台として使用される状態にある
図1に記載の多段寝台の正面図である。
【
図3】3段寝台として使用される状態にある
図1に記載の多段寝台の正面図である。
【
図4】多段寝台を
図2において、I-I線で示す平面で切断して示す断面図である。
【
図5】(A)は、
図4において上段寝台枠の左下にある受け金物の周囲を拡大して示す図であり、(B)は、受け金物の周囲を、(A)において、II-II線で示す平面で切断して示す断面図である。
【
図6】(A)は受け金物の外形を示す斜視図であり、(B)は、受け金物に係止される支持金物の外形を示す斜視図である。(C)は、受け金物に支持金物取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図7】(A)~(C)は、支持金物を
図5(A)において、矢印Pで示す方向から視た矢視図であって、支持金物を受け金物から取り外す手順を時系列に沿って示す図である。
【
図8】(A)~(D)は、多段寝台を
図2においてI-I線で示す平面で切断して示す断面図であって、上段寝台枠と中段寝台枠を低位置から高位置に移動させる手順を時系列に沿って示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る多段寝台の構成と作用を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
【0015】
図1は、本開示の実施の形態に係る多段寝台1の外形を示す斜視図である。
図1に示すように、多段寝台1は、設置場所に固定される4本の脚部材2と、上下方向に離隔して配置された上段寝台枠3と中段寝台枠4と下段寝台枠5とを備えている。上段寝台枠3と中段寝台枠4と下段寝台枠5の上には、図示しないマットレスと寝具が置かれる。なお、以下において、上段寝台枠3と中段寝台枠4と下段寝台枠5を総称して、「寝台枠3,4,5」と記載することがある。また、
図1に示すように、本実施の形態において、脚部材2は、山形鋼で構成されていて、寝台枠3,4,5は、山形鋼の内角側に配置されている。
【0016】
図1に示すように、4本の脚部材2は寝台枠3,4,5の四隅に配置され、寝台枠3,4,5は4本の脚部材2に依って支持される。下段寝台枠5は脚部材2の特定の高さに固定されている。上段寝台枠3と中段寝台枠4は、それぞれ、高位置と低位置のいずれかの位置を選択して、脚部材2に係止されている。また、脚部材2には、上段寝台枠3の高位置と低位置、及び中段寝台枠4の高位置と低位置の、合計4箇所の係止位置に、受け金物6が固定されている。受け金物6には後述する支持金物が差し込まれて、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、支持金物を介して脚部材2に係止される。
【0017】
なお、
図1は、多段寝台1が2段寝台として使用される状態を示していて、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、それぞれの低位置において、脚部材2に係止されている。また、上段寝台枠3と中段寝台枠4には安全柵7,8が取付けられている。下段寝台枠5からは、安全柵7,8が取り外されている。
【0018】
図2は、2段寝台として使用される状態、つまり
図1に示す状態と同じ状態にある多段寝台1の正面図である。前述したように、この状態において、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、それぞれの低位置において係止されている。この場合において、上段寝台枠3と中段寝台枠4の上方のクリアランスは十分に確保されている。一方、中段寝台枠4と下段寝台枠5の間の間隔は接近しているので、中段寝台枠4と下段寝台枠5の間に使用者が入ることができない。
【0019】
図3は、3段寝台として使用される状態にある多段寝台1の正面図である。この状態において、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、それぞれの高位置に係止されている。この場合において、上段寝台枠3と中段寝台枠4の上方のクリアランスは、
図2に示した状態に比べて、小さくなっているが、使用者の出入りに必要なクリアランスは確保されている。一方、中段寝台枠4と下段寝台枠5の間の間隔は、
図2に示した状態に比べて、大きくなっているので、中段寝台枠4と下段寝台枠5の間に使用者が入ることができる。また、多段寝台1を3段寝台として使用する場合には、
図3に示すように、下段寝台枠5に安全柵7,8が取り付けられる。
【0020】
図4は、多段寝台1を
図2において、I-I線で示す平面で切断して示す断面図である。
図4に示すように、脚部材2には、それぞれ、4個の受け金物6が固定されている。上段寝台枠3は、上から数えて2番目に配置された受け金物6を介して、脚部材2に係止されている。中段寝台枠4は、最も低い位置に配置された受け金物6を介して、脚部材2に係止されている。なお、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、
図4において図示されない他の2本の脚部材2にも受け金物6を介して係止されている。つまり、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、四隅において受け金物6を介して、脚部材2に係止されている。また、
図4に示す状態において、最も高い位置に配置された受け金物6と、下から数えて2番目に配置された受け金物6は使用されていない。
【0021】
図5(A)は、
図4において上段寝台枠3の左下にある受け金物6の周囲を拡大して示す図である。
図5(B)は、受け金物6の周囲を、
図5(A)において、II-II線で示す平面で切断して示す断面図である。
図6(A)は受け金物6の外形を示す斜視図であり、
図6(B)は、受け金物6に係止される支持金物9の外形を示す斜視図である。
図6(C)は、受け金物6に支持金物9を取り付けた状態を示す斜視図である。
【0022】
受け金物6は、
図5(B)に現れるL字形の断面形を有する部材であって、脚部材2に溶接固定されている。そして、受け金物6と脚部材2の間には、間隙が形成されている。また、
図5(B)と
図6(A)に示すように、受け金物6には、カシメナット6aが固定されている。
【0023】
図5(A)と
図5(B)に示すように、受け金物6には、支持金物9が係止される。
図6(B)に示すように、支持金物9は垂直面材9aと、垂直面材9aに結合された水平面材9bを備えている。また、垂直面材9aと水平面材9bの間にはブラケット9cがあって、垂直面材9aと水平面材9bの間の結合部を補強している。また、水平面材9bには、長穴9dが形成されている。
【0024】
図5(B)と
図6(C)に示すように、支持金物9の垂直面材9aは、受け金物6と脚部材2の間に形成された間隙に差し込まれている。また、
図5(A)と
図5(B)に示すように、支持金物9の水平面材9bの上には上段寝台枠3が載置される。
【0025】
図5(B)に示すように、受け金物6に固定されたカシメナット9aにはボルト10が螺合されている。また、ボルト10は、支持金物9に形成された貫通穴9eに挿通されていて、ボルト10の先端は、脚部材2に当接している。このように構成されているので、ボルト10は、支持金物9の受け金物6からの脱落を防止する抜け止めとして機能する。
【0026】
上段寝台枠3には、図示しないボルト穴が形成されていて、
図5(A)に示すように、ボルト11が挿通されている。また、ボルト11は支持金物9に形成された長穴9d(
図5(A)において不図示)に挿通されている。そして、
図5(A)に示すように、ボルト11の先端にはナット12が螺合されている。ナット12を締め上げることによって、上段寝台枠3は支持金物9に固定される。
【0027】
このように、上段寝台枠3は、受け金物6と支持金物9を介して脚部材2に係止される。同様に、他の隅部においても、上段寝台枠3は脚部材2に係止される。つまり、上段寝台枠3は、四隅において、受け金物6と支持金物9を介して脚部材2に係止される。同様に、中段寝台枠4も、受け金物6と支持金物9を介して脚部材2に係止される。
【0028】
次に、
図7(A)~(C)を参照して、支持金物9を受け金物6から取り外す手順を説明する。なお、
図7(A)~(C)は、支持金物9を
図5(A)において、矢印Pで示す方向から視た矢視図であって、支持金物9を受け金物6から取り外す手順を時系列に沿って示す図である。
【0029】
支持金物9を受け金物6から取り外す場合には、まず、ボルト10(
図7において図示なし)を取り外す。そして、
図7(A)に示すように、ボルト11を緩めて、支持金物9を、
図7(A)において矢印で示す方向にスライドさせて、
図7(B)に示す位置まで移動させる。その後、支持金物9をボルト11周りに時計回りに、つまり
図7(B)において矢印で示す方向に、90°回転させる。その結果、
図7(C)に示すように、支持金物9が受け金物6から取り外され、上段寝台枠3の上下方向の移動が可能になる。
【0030】
最後に、
図8(A)~(D)を参照して、多段寝台1の形態を変更する手順を説明する。なお、
図8(A)~(D)は、多段寝台1を
図2においてI-I線で示す平面で切断して示す断面図であって、上段寝台枠3と中段寝台枠4を低位置から高位置に移動させる手順を時系列に沿って示す図である。
【0031】
図8(A)に示した多段寝台1は2段寝台として使用される状態にあって。上段寝台枠3と中段寝台枠4は、それぞれの低位置に係止されている。すなわち、上段寝台枠3は、上から数えて2番目に配置された受け金物6を介して脚部材2に係止されている。中段寝台枠4は、最下部に配置された受け金物6を介して脚部材2に係止されている。
【0032】
この状態において、受け金物6を支持金物9に固定するボルト10を取り外すとともに、上段寝台枠3を受け金物6に固定するナット12(
図8において不図示)を緩めて、前述した手順を実施すると、支持金物9が受け金物6から取り外される。その結果、上段寝台枠3の係止状態が解除される。上段寝台枠3の係止状態が解除されると、
図8(B)に示すように、上段寝台枠3を上方に移動させることができる。
【0033】
なお、上段寝台枠3を水平に保ったまま、上段寝台枠3を
図8(A)に示す位置から
図8(B)示す位置に移動させると、支持金物9が受け金物6と干渉する。そのため、上段寝台枠3の頭側の端部を足元側の端部よりも僅かに高く、あるいは僅かに低くして、つまり、上段寝台枠3を僅かに傾けて、上段寝台枠3を
図8(A)に示す位置から
図8(B)示す位置へ移動させる。
【0034】
その後、上段寝台枠3に取付けられた支持金物9を、脚部材2において最も高い位置に配置された受け金物6に差し込み、ナット12(
図8において不図示)とボルト10を締めると、
図8(C)に示すように、上段寝台枠3が高位置に係止される。以上のプロセスを経て、上段寝台枠3の低位置から高位置への移動が完了する。
【0035】
同様の手順を経て、中段寝台枠4を低位置から高位置へ移動させることができる。つまり、最も低い位置に配置された受け金物6を介して、脚部材2に係止されていた中段寝台枠4を、下から数えて2番目に配置された受け金物6を介して、脚部材2に係止させることができる。そして、
図8(D)に示すように、下段寝台枠5に安全柵7(
図8において図示なし)と安全柵8を取り付ければ、多段寝台1を、
図1,2に示す形態から、多段寝台1は3段寝台として使用される形態に変更される。
【0036】
また、上記と逆順の操作を行えば、多段寝台1を3段寝台として使用される形態から、2段寝台として使用される形態に変更することができる。また、上記の操作は、上段寝台枠3あるいは中段寝台枠4を一時的に保持して、上げ下げを行う作業者2名、支持金物9の着脱を行う作業者1名の合計3名の作業者が居れば足りる。また作業者が上段寝台枠3あるいは中段寝台枠4を保持する時間、あるいは上げ下げする時間は、短いので、作業者の筋力的負担は小さい。また、上記の作業において、特別な機械あるいは器具は不要である。
【0037】
また、上記の作業において、上段寝台枠3あるいは中段寝台枠4は、4本の脚部材2の間に形成されたスペースの中で移動するので、大きな作業スペースを必要としない。多段寝台1を2段寝台として使用する場合、つまり下段寝台枠5を使用しない場合であっても、下段寝台枠5を取り外さないので、下段寝台枠5を保管するスペースを用意する必要がない。
【0038】
以上、説明したように、本実施の形態に係る多段寝台1は、形態変更に伴う作業スペースと格納スペースを必要としない。そのため、スペースが限られる艦船の居住区内に設置して、当該居住区内で容易に形態変更を行うことができる。
【0039】
しかしながら、本発明の技術的範囲は上記の実施の形態によっては限定されない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術的思想の限りにおいて、自由に変形あるいは改良して実施することができる。
【0040】
例えば、上記の実施の形態において、2段寝台あるいは3段寝台として利用できる多段寝台1を例示したが、本発明の技術的範囲は2段寝台あるいは3段寝台として利用できる多段寝台には限定されない。例えば、本発明に係る多段寝台は4段寝台と3段寝台あるいは2段寝台の間で形態変更可能な多段寝台であっても良い。
【0041】
上記の実施の形態において、下段寝台枠5が脚部材2に直接固定されると説明したが、下段寝台枠5が脚部材2に直接固定されるものには限定されない。下段寝台枠5は、上段寝台枠3及び中段寝台枠4と同様に、受け金物6と支持金物9を介して、脚部材2に係止されても良い。
【0042】
本実施の形態において、脚部材2は山形鋼で構成されているが、本発明は、山形鋼で構成された脚部材を備えるものには限定されない。脚部材は、他の形状の部材、例えば円管あるいは角管で構成されるものであっても良い。
【0043】
上記において、支持金物9の受け金物6からの脱落を防止するために、ボルト10を備える例を示したが、ボルト10は任意的構成要素である。つまり、本発明に係る多段寝台はボルト10に相当するねじ要素を備えないものであっても良い。また、本発明に係る多段寝台は、ボルト10に代わる脱落防止部材を備えていても良い。
【0044】
上記の実施の形態に示された多段寝台1の外観上の特徴は例示に過ぎない。本発明に係る多段寝台の外観は、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において自由に変更できる。
【符号の説明】
【0045】
1 多段寝台、2 脚部材、3 上段寝台枠、4 中段寝台枠、5 下段寝台枠、6 受け金物、6a カシメナット、7,8 安全柵、9 支持金物、9a 垂直面材、9b 水平面材、9c ブラケット、9d 長穴、10,11 ボルト、12 ナット
【要約】
【課題】形態変更が可能な多段寝台であって、形態変更に伴う作業スペースと格納スペースを必要としない多段寝台を提供する。
【解決手段】多段寝台1は、上下方向に離隔して配置される複数個の寝台枠と、寝台枠の四隅に配置されて、寝台枠を支持する4本の脚部材2を備える。そして、寝台枠の四隅において寝台枠にボルト止めされる支持金物と、4本の脚部材2のそれぞれに固定されて、支持金物が係止される受け金物6を備える。脚部材2のそれぞれにおいて、受け金物6は、設置場所から測った高さが異なる複数の箇所に配置されるとともに、脚部材2のそれぞれが備える受け金物6の個数が寝台枠の個数よりも多い。
【選択図】
図1