(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】料金収受機、料金収受機の検査方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20221019BHJP
G07B 15/00 20110101ALI20221019BHJP
G06F 3/045 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
G06F3/041 520
G07B15/00 510
G06F3/045 C
(21)【出願番号】P 2017242237
(22)【出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-09-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 佳人
(72)【発明者】
【氏名】梅林 弘康
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敦志
(72)【発明者】
【氏名】中山 博之
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-033762(JP,A)
【文献】特開2017-016516(JP,A)
【文献】特開2006-243939(JP,A)
【文献】特開2017-188019(JP,A)
【文献】特開2008-065372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041 - 3/047
G07B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルを有する料金収受機であって、
前記タッチパネルに表示されるボタンに関連付けられた基準座標を中心とする押下指示領域を表示する表示処理部と、
前記押下指示領域が表示された状態で操作者により前記タッチパネルを押下されることで得られた検出座標の代表値を取得する検出座標取得部と、
前記検出座標の代表値が、前記基準座標に対し所定の判定閾値よりも離れていた場合に異常と判定する異常判定部と、
前記基準座標を決定する基準座標決定部と、
を備え、
前記基準座標決定部は、
過去の押下で検出された検出座標のうち前記ボタンの表示領域に属する検出座標の代表値を前記基準座標として決定し、
前記押下指示領域は、前記ボタンの表示領域よりも小さい領域となるように表示され、
一つのボタンについて異なる複数の前記基準座標が関連付けられるとともに、
前記表示処理部は、前記一つのボタンに関連付けられた複数の前記基準座標のそれぞれを中心とする押下指示領域を一つずつ表示する、
料金収受機。
【請求項2】
前記基準座標決定部は、
少なくとも1年の期間を通じて蓄積された、前記ボタンの表示領域に属する検出座標の代表値を前記基準座標として決定する
請求項1に記載の料金収受機。
【請求項3】
前記基準座標決定部は、
前記ボタンの押下累積回数が予め規定された所定回数に達した場合に、当該ボタンの表示領域に属する検出座標の代表値を前記基準座標として決定する
請求項1又は請求項2に記載の料金収受機。
【請求項4】
前記表示処理部は、複数の前記ボタンそれぞれについて前記押下指示領域を同時に表示し、
前記検出座標取得部は、複数の前記ボタンそれぞれについての前記検出座標を1回ずつ順に取得する
請求項1から
請求項3の何れか一項に記載の料金収受機。
【請求項5】
タッチパネルを有し、車両が走行する車線路側に設置される料金収受機の検査方法であって、
前記タッチパネルに表示されるボタンに関連付けられた基準座標を中心とする押下指示領域を表示するステップと、
前記押下指示領域が表示された状態で操作者が前記タッチパネルを押下して得られた検出座標の代表値を取得するステップと、
前記検出座標の代表値が、前記基準座標に対し所定の判定閾値よりも離れていた場合に異常と判定するステップと、
前記基準座標を決定するステップと、
を有し、
前記基準座標を決定するステップは、
過去の押下で検出された検出座標のうち前記ボタンの表示領域に属する検出座標の代表値を前記基準座標として決定し、
前記押下指示領域は、前記ボタンの表示領域よりも小さい領域となるように表示され、
一つのボタンについて異なる複数の前記基準座標が関連付けられるとともに、
前記押下指示領域を表示するステップでは、前記一つのボタンに関連付けられた複数の前記基準座標のそれぞれを中心とする押下指示領域を一つずつ表示する、
料金収受機の検査方法。
【請求項6】
タッチパネルを有し、車両が走行する車線路側に設置される料金収受機のコンピュータを、
前記タッチパネルに表示されるボタンに関連付けられた基準座標を中心とする押下指示領域を表示する表示処理部と、
前記押下指示領域が表示された状態で操作者が前記タッチパネルを押下して得られた検出座標の代表値を取得する検出座標取得部と、
前記検出座標の代表値が、前記基準座標に対し所定の判定閾値よりも離れていた場合に異常と判定する異常判定部と、
前記基準座標を決定する基準座標決定部と、
として機能させ、
前記基準座標決定部は、
過去の押下で検出された検出座標のうち前記ボタンの表示領域に属する検出座標の代表値を前記基準座標として決定し、
前記押下指示領域は、前記ボタンの表示領域よりも小さい領域となるように表示され、
一つのボタンについて異なる複数の前記基準座標が関連付けられるとともに、
前記表示処理部は、前記一つのボタンに関連付けられた複数の前記基準座標のそれぞれを中心とする押下指示領域を一つずつ表示する、
プログラム。
【請求項7】
タッチパネルを有する料金収受機であって、
前記タッチパネルに表示されるボタンに関連付けられた基準座標を中心とする押下指示領域を表示する表示処理部と、
前記押下指示領域が表示された状態で操作者により前記タッチパネルを押下されることで得られた検出座標の代表値を取得する検出座標取得部と、
前記検出座標の代表値が、前記基準座標に対し所定の判定閾値よりも離れていた場合に異常と判定する異常判定部と、
を備え、
前記押下指示領域は、前記ボタンの表示領域よりも小さい領域となるように表示され、
一つのボタンについて異なる複数の前記基準座標が関連付けられるとともに、
前記表示処理部は、前記一つのボタンに関連付けられた複数の前記基準座標のそれぞれを中心とする押下指示領域を一つずつ表示する、
料金収受機。
【請求項8】
タッチパネルを有する料金収受機であって、
前記タッチパネルに表示されるボタンに関連付けられた基準座標を中心とする押下指示領域を表示する表示処理部と、
前記押下指示領域が表示された状態で操作者により前記タッチパネルを押下されることで得られた検出座標の代表値を取得する検出座標取得部と、
前記検出座標の代表値が、前記基準座標に対し所定の判定閾値よりも離れていた場合に異常と判定する異常判定部と、
を備え、
前記押下指示領域は、前記ボタンの表示領域よりも小さい領域となるように表示され、
前記表示処理部は、複数の前記ボタンそれぞれについて前記押下指示領域を同時に表示し、
前記検出座標取得部は、複数の前記ボタンそれぞれについての前記検出座標を1回ずつ順に取得する、
料金収受機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、料金収受機、料金収受機の検査方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
有料道路の料金所では、有人ブースに待機する収受員が、到来した利用者に対して料金の収受業務を行う場合がある。この場合、収受員は、有人ブース内に設置された料金収受機を使用して料金の収受業務を行う。料金収受機は、利用者の走行区間や車種区分等の入力を受け付けて、当該利用者に応じた料金の収受を可能とする。
【0003】
近年、収受員からの入力手段としてタッチパネルを備えた料金収受機がある(例えば、特許文献1参照)。タッチパネルには、抵抗膜方式、静電容量方式、赤外線方式など、様々な技術的手段が用いられている。
【0004】
抵抗膜方式は、透明導電膜(ITO)が製膜されたフィルムと、ガラス(ディスプレイ表面)とを透明導電膜間が向い合う方向に貼り合わせた2層構造からなる。抵抗膜方式のタッチパネルは、フィルムを指やペンで押した際に接触する2層の透明導電膜の、上層から下層にかけての抵抗値(降下電圧)を計測することで、押下位置を検出することができる。
料金収受機は、車両が走行する車線に隣接して設けられるため、常に、粉塵、水滴、太陽光等に曝される環境に置かれる。抵抗膜方式のタッチパネルは、粉塵、水滴、太陽光等の外的要因に強く(誤動作しにくく)、また、比較的安価なことから、料金収受機には、抵抗膜方式のタッチパネルが採用されていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
料金収受機のタッチパネルは、収受員によって、限られた領域(ボタンの表示箇所)に、頻繁な押下(タッチ操作)を受け付ける。特に、抵抗膜方式のタッチパネルの場合、特定の箇所に押下が頻繁に行われると、押下ストレスが蓄積されることによって、当該箇所における抵抗膜が変質し、局所的に電気特性(抵抗値)が変化することがある。そうすると、抵抗膜方式のタッチパネルは、実際にタッチを受け付けた位置を検出できなくなり、または、異なる位置を検出するようになり、誤課金を引き起こす可能性がる。そのため、タッチパネルの劣化の度合いが深刻な状態となる前に、その劣化の進行を把握することが求められている。
【0007】
本発明の目的は、タッチパネルの劣化の度合いを把握することができる料金収受機、料金収受機の検査方法、及び、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、料金収受機(11)は、タッチパネル(130)を有する料金収受機であって、前記タッチパネルに表示されるボタン(B1~B5)に関連付けられた基準座標(Pm)を中心とする押下指示領域(D)を表示する表示処理部(112)と、前記押下指示領域が表示された状態で操作者により前記タッチパネルを押下されることで得られた検出座標の代表値(Pn)を取得する検出座標取得部(113)と、前記検出座標の代表値が、前記基準座標に対し所定の判定閾値(Δth)よりも離れていた場合に異常と判定する異常判定部(114)と、を備える。また、前記押下指示領域は、前記ボタンの表示領域よりも小さい領域となるように表示される。
このようにすることで、ボタンの表示領域よりも小さい領域(押下指示領域)を表示させて、検査担当者に対し検査用の押下(タッチ操作)を指示するので、タッチパネルについて異常の有無の検査対象範囲を、ボタンの表示領域よりも局所的な範囲に限定することができる。したがって、単に、ボタンの表示領域を表示させて検査用の押下を指示する場合に比べて押下位置が限定されるので、局所的な範囲において進行していた異常を、顕著に識別することができる。
【0009】
また、本発明の第2の態様によれば、上述の料金収受機は、前記基準座標を決定する基準座標決定部(111)を更に備え、前記基準座標決定部は、過去の押下で検出された検出座標(P)のうち前記ボタンの表示領域に属する検出座標の代表値を前記基準座標として決定する。
このようにすることで、ボタンの表示領域のうち、過去の押下において頻繁に押下されたと推定される範囲を、当該ボタンの押下指示領域として表示することができる。その結果、ボタンの表示領域において、「最も頻繁に押下されている領域=異常となる可能性が最も高い領域」との推定の下、より効率的かつ的確に、タッチパネル130の異常の有無を識別することができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様によれば、前記基準座標決定部は、少なくとも1年の期間を通じて蓄積された、前記ボタンの表示領域に属する検出座標の代表値を前記基準座標として決定する。
このようにすることで、外気温の変化に起因する検出座標の変動の影響を低減することができる。
【0011】
また、本発明の第4の態様によれば、前記基準座標決定部は、前記ボタンの押下累積回数が予め規定された所定回数に達した場合に、当該ボタンの表示領域に属する検出座標の代表値を前記基準座標として決定する。
このようにすることで、各ボタン別に、押下累積回数が所定回数に達したものから基準座標が決定されるので、各ボタンの劣化の度合いを、それぞれにとって適切なタイミングで評価することができる。
【0012】
また、本発明の第5の態様によれば、一つのボタンについて異なる複数の前記基準座標が関連付けられるとともに、前記表示処理部は、前記一つのボタンに関連付けられた複数の前記基準座標のそれぞれを中心とする押下指示領域を一つずつ表示する。
このようにすることで、一つのボタンについて、押下指示領域が変更されながら複数回繰り返し異常の有無の判定が行われるので、より確実に、当該一つのボタンの表示領域内における異常の有無を識別することができる。
【0013】
また、本発明の第6の態様によれば、前記表示処理部は、複数の前記ボタンそれぞれについて前記押下指示領域を同時に表示し、また、前記検出座標取得部は、複数の前記ボタンそれぞれについての前記検出座標を1回ずつ順に取得する。
このようにすることで、検査担当者は、ボタン別に複数表示された押下指示領域を順に押下することを要求されるので、実際の操作に基づく押下のばらつきをより正しく評価することができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様によれば、料金収受機の検査方法は、タッチパネルを有し、車両が走行する車線路側に設置される料金収受機の検査方法であって、前記タッチパネルに表示される特定のボタンに関連付けられた基準座標を中心とする押下指示領域を表示するステップと、前記押下指示領域が表示された状態で操作者が前記タッチパネルを押下して得られた検出座標の代表値を取得するステップと、前記検出座標の代表値が、前記基準座標に対し所定の判定閾値よりも離れていた場合に異常と判定するステップと、を有する。また、前記押下指示領域は、前記特定のボタンの表示領域よりも小さい領域となるように表示される。
【0015】
また、本発明の第6の態様によれば、プログラムは、タッチパネルを有し、車両が走行する車線路側に設置される料金収受機のコンピュータを、前記タッチパネルに表示される特定のボタンに関連付けられた基準座標を中心とする押下指示領域を表示する表示処理部と、前記押下指示領域が表示された状態で操作者が前記タッチパネルを押下して得られた検出座標の代表値を取得する検出座標取得部と、前記検出座標の代表値が、前記基準座標に対し所定の判定閾値よりも離れていた場合に異常と判定する異常判定部と、として機能させる。また、前記押下指示領域は、前記特定のボタンの表示領域よりも小さい領域となるように表示される。
【発明の効果】
【0016】
上述の発明の各態様によれば、タッチパネルの劣化の度合いを把握することができる料金収受機、料金収受機の検査方法、及び、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係る料金収受設備の全体構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る料金収受機の機能構成を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る料金収受機の構造を模式的に示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る料金収受機の通常業務モード時の処理フローを示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る料金収受機の通常業務モード時における機能を説明するための図である。
【
図6】第1の実施形態に係る料金収受機の検査モード時の処理フローを示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る料金収受機の検査モード時における機能を説明するための図である。
【
図8】第1の実施形態に係る料金収受機の検査モード時における機能を説明するための図である。
【
図9】第1の実施形態に係る料金収受機の検査モード時における機能を説明するための図である。
【
図10】第1の実施形態に係る料金収受機の検査モード時の処理フローを示す図である。
【
図11】第2の実施形態に係る料金収受機の検査モード時における機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る料金収受機について、
図1~
図9を参照しながら説明する。
【0019】
(料金収受設備の全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る料金収受設備の全体構成を示す図である。
図1に示す料金収受設備1は、有料道路(高速道路)の料金所に敷設された車線Lの路側に設置され、当該車線Lを走行する車両Aから料金を収受するための設備である。なお、料金収受設備1は、有料道路の料金方式(出口課金/入口課金等)に応じて、出口料金所に設けられていてもよいし、入口料金所に設けられていてもよい。
【0020】
図1に示すように、料金収受設備1は、有人ブース10と、料金収受機11とを備えている。
有人ブース10は、車線Lの路側に設置され、料金の収受業務を行う収受員が待機する。
料金収受機11は、有人ブース10の内部に配され、収受員による料金の収受業務に使用される。具体的には、料金収受機11は、収受員から、到来した車両Aの車種区分、走行区間等を指定する操作を受け付ける。料金収受機11は、当該操作によって指定された車種区分、走行区間に応じた課金額を特定する。
【0021】
(料金収受機の機能構成)
図2は、第1の実施形態に係る料金収受機の機能構成を示す図である。
図2に示すように、料金収受機11は、CPU110と、メモリ120と、タッチパネル130と、接続インタフェース140と、記録媒体150とを備えている。
【0022】
CPU110は、記録媒体150等に格納されたアプリケーションプログラムをメモリ120上に展開し、展開されたアプリケーションプログラムに従って各種処理を実行するプロセッサである。
メモリ120は、CPU110のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリである。
タッチパネル130は、画面(ディスプレイ)をタッチして操作が可能なタッチセンサ式ディスプレイである。本実施形態に係るタッチパネル130は、抵抗膜方式のタッチパネルとされる。しかし、他の実施形態においてはこの態様に限定されることはない。
接続インタフェース140は、外部との接続インタフェースである。「外部」とは、例えば、外部接続用記録媒体(USBメモリ)や、広域通信ネットワーク網等である。
記録媒体150は、料金収受機11に内蔵される大容量記録デバイスであって、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。記録媒体150には、OS、アプリケーションプログラムの他、押下(タッチ操作)に係る各種検出データ、演算データ(後述する基準座標、検出座標代表値、正常押下範囲等)が記録される。
【0023】
CPU110は、上述のアプリケーションプログラムに基づいて動作することで、基準座標決定部111、表示処理部112、検出座標取得部113及び異常判定部114としての機能を発揮する。
基準座標決定部111は、通常業務モード時において、収受員による過去の押下で検出された検出座標のうち、特定のボタン(後述する車種区分指定用のボタン等)の表示領域に属する複数の検出座標の平均値を、当該特定のボタンの基準座標として決定する。基準座標は、タッチパネル130に表示される各ボタンのそれぞれについて決定され、後述するように、タッチパネル130の異常の有無を判定するための判定基準となる。「通常業務モード」とは、料金収受機11が行う動作モードの一つであって、収受員による通常業務、即ち、到来する車両A(
図1)に対する料金収受業務にて用いられる動作モードである。
表示処理部112は、検査モード時において、基準座標決定部111によって決定された基準座標を中心とする押下指示領域を表示する。「押下指示領域」とは、検査モード時において、タッチパネル130の検査担当者に対し、押下すべき位置を示す領域である。「検査モード」とは、料金収受機11が行う動作モードの一つであって、タッチパネル130の機能を検査する際に用いられる動作モードである。
検出座標取得部113は、検査モード時において、表示処理部112により押下指示領域が表示された状態で、操作者がタッチパネルを押下して得られた複数の検出座標の平均値を取得する。
異常判定部114は、検査モード時において、検出座標取得部113によって取得された検出座標の平均値が、基準座標に対し所定の判定閾値よりも離れていた場合に異常と判定し、その旨を検査担当者に通知する。
【0024】
また、第1の実施形態に係るCPU110は、上述に説明した各種機能の他、料金収受機としての一般的な機能を有する。特に、通常業務モード時においては、CPU110は、タッチパネル130を通じて、収受員から車種区分、走行区間の指定操作(タッチ操作)を受け付けるとともに、当該指定された車種区分、走行区間に応じた課金額を特定し、収受員に提示する。また、CPU110は、利用者から受け取った金額に対する釣銭の計算処理、領収書の発行処理等を行う。
【0025】
(料金収受機の構造)
図3は、第1の実施形態に係る料金収受機の構造を模式的に示す図である。
図3に示すように、タッチパネル130は、料金収受機11の筐体前面に配置されている。
図3には、タッチパネル130に表示される表示画面の一例として、収受員から車種区分の指定を受け付ける際に表示される画面を示している。
例えば、タッチパネル130には、“軽・二輪”(軽自動車及び二輪車)なる車種区分を指定するためのボタンB1、“普通”(普通自動車)なる車種区分を指定するためのボタンB2、“中型”(中型自動車)なる車種区分を指定するためのボタンB3、“大型”(大型車)なる車種区分を指定するためのボタンB4、及び、“特大”(特大車)なる車種区分を指定するためのボタンB5が表示される。
ここで、料金収受機11のCPU110は、タッチパネル130を通じて、収受員から受け付けた押下(タッチ操作)の検出座標を取得するとともに、当該検出座標が、ボタンB1~ボタンB5のうち、いずれのボタンの表示領域に属するかを判定する。そして、CPU110は、当該押下の検出座標が属するボタンの表示領域に応じた処理を実行する。例えば、収受員による押下の検出座標がボタンB1の表示領域に属していた場合には、CPU110は、ボタンB1(軽・二輪)の車種区分に対応する課金額を特定する。なお、押下の検出座標がボタンB1~ボタンB5のいずれの表示領域にも属していない場合には、CPU110は、何らの処理を行わないこととしてもよい。
【0026】
(料金収受機の通常業務モード時の処理フロー)
図4は、第1の実施形態に係る料金収受機の通常業務モード時の処理フローを示す図である。
以下、
図4を参照しながら、第1の実施形態に係る料金収受機11のCPU110が実行する第1の処理の流れについて説明する。
図4に示す通常業務モード時の処理フローは、タッチパネル130に表示されるボタン(
図3に示すボタンB1~ボタンB5)それぞれについての基準座標を決定するための処理フローであり、例えば、新品の料金収受機11の運用が開始された時点を起点として開始される。また、通常業務モード時の処理フローは、料金収受機11が実行する通常の料金収受処理(車種区分等の受付処理、課金額の特定処理、釣銭計算処理、領収書発行処理等)のバックグラウンド処理として実行される。
【0027】
図4に示すように、まず、CPU110の基準座標決定部111は、タッチパネル130に表示されているボタンB1~ボタンB5のそれぞれについて、各表示領域に属する検出座標を記録媒体150に記録して蓄積する(ステップS01)。ここで蓄積される検出座標は、上述した通常の料金収受処理の過程で、収受員がタッチパネル130に対して行う押下(タッチ操作)の検出座標である。
【0028】
次に、基準座標決定部111は、料金収受機11に備えられたタイマ機能(
図2には図示せず)を通じて、ボタンB1~ボタンB5のそれぞれの表示領域に属する検出座標が1年に渡って蓄積されたか否かを判定する(ステップS02)。各表示領域に属する検出座標が1年に渡って蓄積されていない場合(ステップS02:NO)、基準座標決定部111は、ステップS01に戻り、収受員による押下の検出座標の記録、蓄積を継続する。
【0029】
各表示領域に属する検出座標が1年に渡って蓄積された場合(ステップS02:YES)、基準座標決定部111は、1年の期間中に蓄積された、ボタンB1~ボタンB5のそれぞれの各表示領域に属する検出座標の平均値を算出する。基準座標決定部111は、算出された検出座標の平均値を、ボタンB1~ボタンB5のそれぞれの基準座標として決定し、記録媒体150に記録する(ステップS03)。
【0030】
(通常業務モード時における料金収受機の機能)
図5は、第1の実施形態に係る料金収受機の通常業務モード時における機能を説明するための図である。
以下、
図5を参照しながら、
図4に示す通常業務モード時の処理フローの各処理ステップで実行される処理について詳細に説明する。
【0031】
図5は、タッチパネル130に表示されるボタンB4と、当該ボタンB4についての検出座標P及び基準座標Pmを示している。
図5に示すように、ボタンB4の表示領域は、タッチパネル130の原点O(0,0)を基準とする二次元直交座標系において、座標(X1,Y1)及び座標(X2,Y2)で特定される矩形領域とされる。
【0032】
図4のステップS01にて、基準座標決定部111は、押下(タッチ操作)の検出座標P(X,Y)がボタンB4の表示領域に属しているか否か(即ち、XがX1≦X≦X2を満たし,かつ、YがY1≦Y≦Y2を満たすか否か)を判定する。押下の検出座標P(X,Y)がボタンB4の表示領域に属している場合、基準座標決定部111は、当該検出座標P(X,Y)をボタンB4に関連付けて記録媒体150に記録、蓄積する。
図4のステップS01~ステップS02の処理により、基準座標決定部111は、1年の期間内に検出された検出座標P(X,Y)(X1≦X≦X2、Y1≦Y≦Y2)を全てボタンB4に関連付けて蓄積する。
図4のステップS03にて、基準座標決定部111は、1年かけて蓄積された全ての検出座標(X,Y)(X1≦X≦X2、Y1≦Y≦Y2)の平均値より、ボタンB4についての基準座標Pm(Xm,Ym)を決定する。
【0033】
(料金収受機の検査モード時の処理フロー)
図6は、第1の実施形態に係る料金収受機の検査モード時の処理フローを示す図である。
以下、
図6を参照しながら、第1の実施形態に係る料金収受機11のCPU110が実行する検査モード時の処理の流れについて説明する。
料金収受機11の検査担当者は、タッチパネル130の検査を行う際に、料金収受機11の動作モードを通常業務モードから検査モードに切り替える。動作モードの切り替えは、例えば、料金収受機11の筐体に設けられた専用の切替スイッチによってなされるものであってよい。
図6に示す検査モードの処理フローは、通常業務モードから検査モードに切り替えられた時点から開始される。
【0034】
図6に示すように、CPU110の表示処理部112は、通常業務で押下される複数のボタン(例えば、
図3に示すボタンB1~ボタンB5)をタッチパネル130に表示するとともに、検査担当者から検査対象とするボタンの指定を受け付ける(ステップS11)。ここで、検査担当者は、表示された複数のボタンの何れか一つ(検査対象とするボタン)をタッチする。
【0035】
検査担当者からボタンの指定を受け付けると、表示処理部112は、更に、ステップS11で指定されたボタンの押下指示領域をタッチパネル130に表示する(ステップS12)。ここで、表示処理部112は、指定されたボタンの基準座標Pmを中心とする円形の領域を、押下指示領域として表示する。
併せて、表示処理部112は、検査担当者に対し押下指示領域を規定回数(例えば、100回)タッチすることを促す案内文をタッチパネル130に表示する。
【0036】
ステップS12の処理により、検査担当者は、上記案内文に従い、タッチパネル130に表示された押下指示領域をタッチする。CPU110の検出座標取得部113は、検査担当者のタッチパネル130に対する押下によって取得された検出座標を取得する(ステップS13)。
続いて、検出座標取得部113は、押下による検出座標の取得回数が規定回数(100回)に達したか否かを判定する(ステップS14)。押下による検出座標の取得回数が規定回数(100回)に達していない場合(ステップS14:NO)、検出座標取得部113は、ステップS13に戻り、検出座標の取得を繰り返す。
【0037】
他方、押下による検出座標の取得回数が規定回数(100回)に達した場合(ステップS14:YES)、検出座標取得部113は、取得された規定回数分(100個)の検出座標の平均値を演算する(ステップS15)。
【0038】
CPU110の異常判定部114は、ステップS15で取得された検出座標の平均値が、基準座標から所定の判定閾値よりも離れているか否かを判定する(ステップS16)。
基準座標から所定の判定閾値よりも離れている場合(ステップS16:YES)、タッチパネル130の動作が異常であると判定し、検査担当者に対し、その旨を通知する(ステップS17a)。他方、検出座標の平均値が、基準座標から所定の判定閾値よりも離れていない場合(ステップS16:NO)、異常判定部114は、タッチパネル130が正常に動作している旨の通知を行う(ステップS17b)。
【0039】
(検査モード時における料金収受機の機能)
図7~
図9は、それぞれ、第1の実施形態に係る料金収受機の検査モード時における機能を説明するための図である。
【0040】
図7は、
図6に示す検査モード時の処理フローのステップS11で実行される処理を説明するための図である。
料金収受機11の検査モードが開始されると、
図7に示すように、表示処理部112は、収受員の通常業務で使用される複数のボタン(例えば、車種区分指定用の画面(
図3)で表示されるボタンB1~ボタンB5)をタッチパネル130に表示する。また、表示処理部112は、ボタンB1~ボタンB5とともに、検査したい領域のボタンを選択(タッチ)する旨の案内文C1をタッチパネル130に表示する。ここで、例えば、ボタンB4の表示領域についてタッチパネル130の検査を行いたい場合、検査担当者は、
図7に示す状態で、ボタンB4をタッチする。
【0041】
図8は、
図6に示す検査モード時の処理フローのステップS12で実行される処理を説明するための図である。
検査担当者により、検査したい領域のボタンが選択(タッチ)されると、表示処理部112は、選択されたボタンについての押下指示領域Dを表示する。また、表示処理部112は、当該押下指示領域Dとともに、押下指示領域Dを規定回数(例えば100回)タッチする旨の案内文C2をタッチパネル130に表示する。ここで、例えば、検査担当者がステップS11でボタンB4を選択した場合、
図8に示すように、表示処理部112は、ボタンB4の押下指示領域Dを表示する。
【0042】
図9は、
図6に示す検査モード時の処理フローのステップS15~ステップS16で実行される処理を説明するための図である。
図9に示すように、押下指示領域Dは、ボタンB4の基準座標Pm(Xm,Ym)を中心とする、所定の大きさ(半径r1)の円形領域として表示される。半径r1は、押下指示領域Dが、ボタンB4の表示領域よりも小さい領域となるように規定される。
検査担当者は、タッチパネル130に表示された押下指示領域Dを目標に、押下を繰り返し行う。
【0043】
検出座標取得部113は、検査担当者による規定回数(100回)の押下を通じて、規定回数分の検出座標を取得する。そして、検出座標取得部113は、当該規定回数分の検出座標の平均値Pn(Xn,Yn)を演算する(
図6に示すステップS15参照)。
【0044】
次に、異常判定部114は、検出座標取得部113によって取得された検出座標の平均値Pnと基準座標Pm(Xm,Ym)との距離Δを演算する(Δ=(Xn-Xm)
2+(Yn-Ym)
2)
1/2)。更に、異常判定部114は、算出した距離Δが、予め規定された判定閾値Δthを上回っているか否かを判定する(
図6に示すステップS16参照)。
図9に示す例の場合、距離Δは、判定閾値Δthよりも大きい(Δ>Δth)。したがって、この場合、異常判定部114は、タッチパネル130の動作に異常がみられると判定し、その旨を通知する処理を行う(
図6に示すステップS17a参照)。
【0045】
なお、一つのボタン(例えば、ボタンB4)について、検査モード時の処理フロー(
図6)が完了した場合には、CPU110は、ステップS11に戻り、別のボタンについての指定を受け付けてよい。別のボタンについての指定を受け付けた場合には、CPU110は、当該別のボタンについて、ステップS12~ステップS17a(ステップS17b)の判定処理を行う。
【0046】
(作用・効果)
以上の通り、第1の実施形態に係る料金収受機11は、タッチパネル130に表示される特定のボタン(例えば、ボタンB4)に関連付けられた基準座標Pmを中心とする押下指示領域Dを表示する表示処理部112と、押下指示領域Dが表示された状態で操作者(検査担当者)によりタッチパネル130を押下されることで得られた検出座標の平均値を取得する検出座標取得部113と、検出座標の平均値Pnが、基準座標Pmに対し所定の判定閾値Δthよりも離れていた場合に異常と判定する異常判定部114とを備えている。ここで、押下指示領域Dは、特定のボタン(ボタンB4)の表示領域よりも小さい領域となるように表示される。
【0047】
このようにすることで、特定のボタン(ボタンB4)の表示領域よりも小さい(範囲が絞られた)領域(押下指示領域D)を表示させて、検査担当者に対し検査用の押下(タッチ操作)を指示するので、タッチパネル130について異常の有無の検査対象範囲を、ボタンの表示領域よりも局所的な範囲に限定することができる。したがって、単に、特定のボタンの表示領域を表示させて検査用の押下を指示する場合に比べて押下位置が限定されるので、局所的な範囲において進行していた異常を、顕著に識別することができる。
【0048】
以上より、第1の実施形態に係る料金収受機11によれば、タッチパネルの劣化の度合いを把握することができる。
【0049】
また、第1の実施形態に係る料金収受機11は、ボタン別に基準座標Pmを決定する基準座標決定部111を更に備える。基準座標決定部111は、例えば、通常業務モード時における過去の押下で検出された複数の検出座標のうち特定のボタン(例えば、ボタンB4)の表示領域に属する検出座標の平均値を基準座標Pmとして決定する。
【0050】
このようにすることで、特定のボタン(ボタンB4)の表示領域のうち、過去の押下において頻繁に押下されたと推定される範囲を、当該特定のボタンの押下指示領域Dとして表示することができる。ここで、抵抗膜方式のタッチセンサは、押下ストレスの蓄積によって電気特性が変化することで、実際の押下位置と検出位置との間に誤差が生じ得ることが知られている。そうすると、特定のボタンの表示領域において、「最も頻繁に押下されている領域=異常となる可能性が最も高い領域」との推定の下、より効率的かつ的確に、タッチパネル130の異常の有無を識別することができる。
【0051】
また、第1の実施形態に係る料金収受機11は、少なくとも1年を通じて蓄積された複数の検出座標の平均値に基づいて、特定のボタンについての基準座標Pmを決定する。
料金収受機11は、通常、外気に曝されていることから、季節の移り変わりに応じた外気温の変化の影響を受けやすい。特に、抵抗膜方式のタッチパネルの場合、環境温度変化に応じて、検出座標が微小に変化し得る。そこで、上記の態様とすることで、外気温の変化に起因する検出座標の変動の影響を低減することができる。
【0052】
(変形例)
以上、第1の実施形態に係る料金収受機11について詳細に説明したが、料金収受機11の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
【0053】
第1の実施形態においては、基準座標決定部111は、過去の押下で検出された検出座標のうち特定のボタンの表示領域に属する検出座標の平均値を基準座標Pmとして決定するものとして説明した。しかし、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態においては、ある特定のボタンについての基準座標Pmが、料金収受機11の運用前の段階で、予め決定されている態様であってもよい。この場合、基準座標Pmは、特定のボタンの表示領域のうち、その基準座標Pm周辺の領域(押下指示領域D)が最も頻繁に押下されるであろうとの推定に基づいて決定される。簡単な例としては、基準座標Pmは、上記特定のボタンの“表示領域の中心点”などとして予め決定され得る。
【0054】
また、第1の実施形態においては、一つの特定のボタンに関連付けられた一つの基準座標Pmに基づいて、当該一つの特定のボタンの表示領域内における異常の有無の判定が行われるものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
即ち、他の実施形態においては、一つの特定のボタンについて異なる複数の基準座標(基準座標Pm1、Pm2、Pm3、・・)が関連付けられていてもよい。そして、当該一つの特定のボタンに関連付けられた複数の基準座標Pm1、Pm2、・・のそれぞれを中心とする押下指示領域Dを一つずつ表示しながら検査を行ってもよい。
より具体的に説明すると、当該他の実施形態に係るCPU110は、指定された一つの特定のボタン(例えば、ボタンB4)について、検査モード時の処理フロー(
図6)のステップS12~ステップS17a、ステップS17bを複数回、繰り返し実行する。ただし、CPU110は、例えば、2回目の処理フローのステップS12で表示する押下指示領域Dの中心位置(基準座標Pm2)は、1回目の処理フローで表示する押下指示領域Dの中心位置(基準座標Pm1)とは異なる位置とする。
【0055】
このようにすることで、一つのボタンについて、押下指示領域Dが変更されながら複数回繰り返し異常の有無の判定が行われるので、より確実に、当該一つのボタンの表示領域内における異常の有無を識別することができる。
【0056】
また、第1の実施形態においては、基準座標決定部111は、過去の押下で検出された検出座標のうち、ボタンの表示領域に属する検出座標の「平均値」を基準座標Pmとして決定するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。即ち、ここでの「平均値」は、検出座標の代表値の一態様にすぎず、他の実施形態においては、例えば、検出座標の「最頻値」、「中央値」等であってもよい。
【0057】
同様に、第1の実施形態においては、検出座標取得部113は、検査モード時において、押下指示領域Dが表示された状態で検査担当者がタッチパネル130を複数回押下して得られた検出座標の「平均値」を取得するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。即ち、ここでの「平均値」は、検出座標の代表値の一態様にすぎず、他の実施形態においては、例えば、検出座標の「最頻値」、「中央値」等であってもよい。
【0058】
また、第1の実施形態においては、押下指示領域Dは、基準座標Pmを中心とする円形領域であるものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。例えば、他の実施形態に係る押下指示領域Dは、矩形(正方形)等、円形以外の図形で表されるものであってもよい。
【0059】
また、第1の実施形態においては、少なくとも1年を通じて蓄積された複数の検出座標の平均値に基づいて、特定のボタンについての基準座標Pmを決定するものとして説明した。しかし、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態に係る料金収受機11は、特定のボタンについての押下累積回数(通常業務モード時において特定のボタンが押下された回数の累積値)が所定回数(例えば、10000回)に達した場合に、当該特定のボタンについての基準座標Pmを決定するものとしてもよい。
即ち、タッチパネルの劣化は押下累積回数にも依存するところ、走行台数が少ない車種区分に対応するボタンは、押下される頻度も小さいため、劣化の進行も遅いと考えられる。一方、走行台数が多い車種区分に対応するボタンは、押下される頻度が大きく、劣化の進行も早いと考えられる。そこで、ボタンB1~B5別に、押下累積回数が所定回数(10000回)以上になったボタンから、各ボタンについて基準座標Pmを決定し、検査対象とする。このようにすることで、各ボタンの劣化の度合いを、それぞれにとって適切なタイミングで評価することができる。
【0060】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る料金収受機について、
図10、
図11を参照しながら説明する。
【0061】
(検査モード時における料金収受機の機能)
図10は、第2の実施形態に係る料金収受機の検査モード時の処理フローを示す図である。
図11は、第2の実施形態第に係る料金収受機の検査モード時における機能を説明するための図である。
【0062】
第2の実施形態では、検査担当者により、検査モードの開始操作を受け付けると、
図10に示す処理フローが開始される。
【0063】
即ち、検査モードにおいて、表示処理部112は、5つ全てのボタンそれぞれについての押下指示領域を同時にタッチパネル130に表示する(ステップS12A)。
併せて、表示処理部112は、検査担当者に対し押下指示領域を規定回数(例えば、100回)タッチすることを促す案内文をタッチパネル130に表示する。
【0064】
ステップS12Aの処理により、検査担当者は、上記案内文に従い、タッチパネル130に表示された5つの押下指示領域を1回ずつ順にタッチする。CPU110の検出座標取得部113は、ボタンB1~B5それぞれについての押下で取得された検出座標を順に取得する(ステップS13A)。
続いて、検出座標取得部113は、ボタンB1~B5別の、押下による検出座標の取得回数が規定回数(100回)に達したか否かを判定する(ステップS14A)。押下による検出座標の取得回数が規定回数(100回)に達していない場合(ステップS14A:NO)、検出座標取得部113は、ステップS13Aに戻り、5つのボタンB1~B5それぞれについての検出座標の取得を繰り返す。
【0065】
他方、ボタンB1~B5別の、押下による検出座標の取得回数が規定回数(100回)に達した場合(ステップS14A:YES)、検出座標取得部113は、ボタンB1~B5別に取得された規定回数分(100個)の検出座標の平均値を演算する(ステップS15A)。
【0066】
異常判定部114は、第1の実施形態と同様の処理(ステップS16~S17a、S17b)を各ボタンB1~B5別に行う。
【0067】
図11は、
図10に示す検査モード時の処理フローのステップS12Aで実行される処理を説明するための図である。
検査担当者により、検査モードが開始されると、表示処理部112は、
図11に示すように、表示されている5つのボタンB1~B5それぞれについての押下指示領域Dを表示する。また、表示処理部112は、当該押下指示領域Dとともに、押下指示領域Dを規定回数タッチする旨の案内文C2をタッチパネル130に表示する。
この場合、検査担当者は、5つの押下指示領域Dを1回ずつ押下し、この操作を100回繰り返す。
【0068】
(作用、効果)
以上のとおり、第2の実施形態に係る表示処理部112は、複数の特定のボタン(ボタンB1~B5)それぞれについて押下指示領域Dを同時に表示する。そして、検出座標取得部113は、複数の特定のボタンそれぞれについての検出座標を1回ずつ順に取得する。
第1の実施形態においては、検査担当者が選択した1つのボタンに対して、100回の押下を指示するものとした。この場合、検査担当者は、腕、手首などは動かさず、指先だけで100回の押下動作を繰り返すことが想定される。このような操作がなされた場合、検査モードにおいて押下のばらつきを評価できない可能性がある。
他方、第2の実施形態のような態様とすることで、検査担当者は、ボタンB1~B5別に複数表示された押下指示領域Dを順に押下することを要求されるので、実際の操作に基づく押下のばらつきをより正しく評価することができる。
【0069】
また、上述の各実施形態においては、上述した料金収受機11の各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0070】
上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
また、料金収受機11は、上述の各種機能を全て具備する1台のコンピュータで構成されていても良いし、その機能の一部ずつを具備し、互いに通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0071】
以上のとおり、本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 料金収受設備
10 有人ブース
11 料金収受機
110 CPU
111 基準座標決定部
112 表示処理部
113 検出座標取得部
114 異常判定部
120 メモリ
130 タッチパネル
140 接続インタフェース
150 記録媒体