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特許7161292連続溶融金属めっき装置及び連続溶融金属めっき方法
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  • 特許-連続溶融金属めっき装置及び連続溶融金属めっき方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】連続溶融金属めっき装置及び連続溶融金属めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/02 20060101AFI20221019BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
C23C2/02
C23C2/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018017645
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019131880
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-09-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】木谷 智治
(72)【発明者】
【氏名】永田 勝顕
(72)【発明者】
【氏名】松ヶ崎 晴司
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-043752(JP,A)
【文献】特開平07-180014(JP,A)
【文献】特開2007-239006(JP,A)
【文献】特開平08-176773(JP,A)
【文献】特開平07-157855(JP,A)
【文献】特開平11-302811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理炉で熱処理された鋼帯を、スナウトを介して溶融金属めっき浴に導入してめっきを行う連続溶融金属めっき装置であって、
前記鋼帯を前記スナウトに進行させるターンダウンロールと前記熱処理炉との間に、前記鋼帯の表面に不活性ガスを吹き付けるガス吹付け手段を有し、
前記ガス吹付け手段が、前記鋼帯の幅方向に平行なスリット状の吹付け口を有し、前記スリット状の吹付け口の長さが前記鋼帯の幅以上であり、
前記不活性ガスが前記鋼帯の進行方法と反対の方向に吹き付けられ、前記不活性ガスの吹付け角度が前記鋼帯に対して3~60°である連続溶融金属めっき装置。
【請求項2】
前記ガス吹付け手段が、前記ターンダウンロールと、前記熱処理炉の均熱帯及び/又は冷却帯との間に設けられている、請求項1に記載の連続溶融金属めっき装置。
【請求項3】
前記ガス吹付け手段が、前記熱処理炉と前記スナウトとの間を連結する連結部の内部に設けられており、前記連結部は、前記ガス吹付け手段が設けられた部分よりも鉛直方向の断面積が小さい部分を前記熱処理炉側に有する、請求項1又は2に記載の連続溶融金属めっき装置。
【請求項4】
前記ガス吹付け手段が、前記鋼帯の上面側に設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の連続溶融金属めっき装置。
【請求項5】
前記不活性ガスの吹付け速度が3.0m/秒以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の連続溶融金属めっき装置。
【請求項6】
前記不活性ガスの温度(T)が下記の条件を満たす、請求項1~5のいずれか一項に記載の連続溶融金属めっき装置。
(溶融金属めっき浴の温度[℃]-150℃)≦T≦溶融金属めっき浴の温度[℃]
【請求項7】
前記ガス吹付け手段の吹付け口と前記鋼帯との間の距離が0mm超過70mm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の連続溶融金属めっき装置。
【請求項8】
熱処理炉で熱処理された鋼帯を、スナウトを介して溶融金属めっき浴に導入してめっきを行う連続溶融金属めっき方法であって、
前記鋼帯を前記スナウトに進行させるターンダウンロールと前記熱処理炉との間に設けられたガス吹付け手段から前記鋼帯の表面に不活性ガスを吹き付け、
前記ガス吹付け手段が、前記鋼帯の幅方向に平行なスリット状の吹付け口を有し、前記スリット状の吹付け口の長さが前記鋼帯の幅以上であり、
前記不活性ガスが前記鋼帯の進行方法と反対の方向に吹付けられ、前記不活性ガスの吹付け角度が前記鋼帯に対して3~60°である連続溶融金属めっき方法。
【請求項9】
前記ガス吹付け手段が、前記ターンダウンロールと、前記熱処理炉の均熱帯及び/又は冷却帯との間に設けられている、請求項に記載の連続溶融金属めっき方法。
【請求項10】
前記ガス吹付け手段が、前記熱処理炉と前記スナウトとの間を連結する連結部の内部に設けられており、前記連結部は、前記ガス吹付け手段が設けられた部分よりも鉛直方向の断面積が小さい部分を前記熱処理炉側に有する、請求項又はに記載の連続溶融金属めっき方法。
【請求項11】
前記不活性ガスを前記鋼帯の上面に吹付ける、請求項10のいずれか一項に記載の連続溶融金属めっき方法。
【請求項12】
前記不活性ガスの吹付け速度が3.0m/秒以上である、請求項11のいずれか一項に記載の連続溶融金属めっき方法。
【請求項13】
前記不活性ガスの温度(T)が下記の条件を満たす、請求項12のいずれか一項に記載の連続溶融金属めっき方法。
(溶融金属めっき浴の温度[℃]-150℃)≦T≦溶融金属めっき浴の温度[℃]
【請求項14】
前記ガス吹付け手段の吹付け口と前記鋼帯との間の距離が0mm超過70mm以下である、請求項13のいずれか一項に記載の連続溶融金属めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続溶融金属めっき装置及び連続溶融金属めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続溶融金属めっき装置では、熱処理炉で鋼帯を加熱して表面を活性化した後、スナウトを介して溶融金属めっき浴に鋼帯を導入し、めっき処理が行われる。スナウトは、内部を大気雰囲気から遮断するため、一端が熱処理炉に連結部を介して連結され、他端が溶融金属めっき浴に浸漬されている。スナウト内は、鋼帯表面の酸化、汚れなどに起因する表面欠陥(めっき不良)の発生を防止するために還元性雰囲気に維持管理されているが、スナウト内の溶融金属めっき浴表面から蒸発した金属ヒュームがスナウト内に侵入する。そして、スナウト内の金属ヒュームは、鋼帯の進行方向と反対の方向に流入し、冷却されると、装置の内壁面などに異物として付着する。この異物は、内壁面などから脱落して鋼帯に付着すると、溶融金属めっき鋼帯の表面欠陥の原因となる。
【0003】
そこで、金属ヒュームに起因する表面欠陥の発生を抑制する手段として、スナウト内部の途中にガスシール部を設ける方法(特許文献1)、スナウトに設けたガス吹込み管から比重が大きい不活性ガスを吹き込む方法(特許文献2)、スナウト内の雰囲気ガス温度及びスナウト内壁温度を制御する方法(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-290761号公報
【文献】特開平11-279730号公報
【文献】特許第2897668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の方法では、金属ヒュームの流入を完全に抑制することができるわけではないため、流入した金属ヒュームによって異物が鋼帯に付着してしまうことがある。また、特許文献3の方法では、スナウト内の異物の付着は抑制することができるものの、スナウトの上流に金属ヒュームが流入してしまうため、スナウトよりも上流の領域において金属ヒュームによる異物が鋼帯に付着してしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、金属ヒュームに起因する溶融金属めっき鋼帯の表面欠陥の発生を抑制することができる連続溶融金属めっき装置及び連続溶融金属めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、金属ヒュームに起因する異物がスナウトよりも上流の領域で鋼帯に付着し易い傾向があるという知見に基づき、鋼帯をスナウトに進行させるターンダウンロールと熱処理炉との間に、鋼帯の表面に不活性ガスを吹き付けるガス吹付け手段を設けることにより、金属ヒュームに起因する異物の付着を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、熱処理炉で熱処理された鋼帯を、スナウトを介して溶融金属めっき浴に導入してめっきを行う連続溶融金属めっき装置であって、前記鋼帯を前記スナウトに進行させるターンダウンロールと前記熱処理炉との間に、前記鋼帯の表面に不活性ガスを吹き付けるガス吹付け手段を有し、前記ガス吹付け手段が、前記鋼帯の幅方向に平行なスリット状の吹付け口を有し、前記スリット状の吹付け口の長さが前記鋼帯の幅以上であり、前記不活性ガスが前記鋼帯の進行方法と反対の方向に吹き付けられ、前記不活性ガスの吹付け角度が前記鋼帯に対して3~60°である連続溶融金属めっき装置に関する。
また、本発明は、熱処理炉で熱処理された鋼帯を、スナウトを介して溶融金属めっき浴に導入してめっきを行う連続溶融金属めっき方法であって、前記鋼帯を前記スナウトに進行させるターンダウンロールと前記熱処理炉との間に設けられたガス吹付け手段から前記鋼帯の表面に不活性ガスを吹き付け、前記ガス吹付け手段が、前記鋼帯の幅方向に平行なスリット状の吹付け口を有し、前記スリット状の吹付け口の長さが前記鋼帯の幅以上であり、前記不活性ガスが前記鋼帯の進行方法と反対の方向に吹付けられ、前記不活性ガスの吹付け角度が前記鋼帯に対して3~60°である連続溶融金属めっき方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属ヒュームに起因する溶融金属めっき鋼帯の表面欠陥の発生を抑制することができる連続溶融金属めっき装置及び連続溶融金属めっき方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る連続溶融金属めっき装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の連続溶融金属めっき装置は、熱処理炉で熱処理された鋼帯を、スナウトを介して溶融金属めっき浴に導入してめっきを行うものであり、鋼帯をスナウトに進行させるターンダウンロールと熱処理炉との間に、前記鋼帯の表面に不活性ガスを吹き付けるガス吹付け手段を有する。
また、本発明の連続溶融金属めっき方法は、熱処理炉で熱処理された鋼帯を、スナウトを介して溶融金属めっき浴に導入してめっきを行うものであり、鋼帯をスナウトに進行させるターンダウンロールと熱処理炉との間に設けられたガス吹付け手段から鋼帯の表面に不活性ガスを吹き付ける。
以下、本発明の連続溶融金属めっき装置及び連続溶融金属めっき方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る連続溶融金属めっき装置の概略構成図を示す。
本実施形態の連続溶融金属めっき装置は、加熱帯1aと均熱帯及び/又は冷却帯1bとを含む熱処理炉1(例えば、焼鈍炉)と、スナウト2と、熱処理炉1とスナウト2の一端との間を連結する連結部3と、スナウト2の他端が浸漬される溶融金属めっき浴4を収容する溶融金属めっき浴槽5とを備える。連結部3の内部には、熱処理炉1で熱処理された鋼帯10をスナウト2に進行させるターンダウンロール6が設けられている。また、ターンダウンロール6と熱処理炉1(特に、熱処理炉1の均熱帯及び/又は冷却帯1b)との間には、鋼帯10の表面に不活性ガスを吹き付けるガス吹付け手段7が設けられている。さらに、溶融金属めっき浴4中には、鋼帯10を溶融金属めっき浴槽5の上方に導くためのシンクロール8が設けられている。
上記の連続溶融金属めっき装置の各部材のうち、ガス吹付け手段7以外の部材は、当該技術分野において公知である。そのため、ガス吹付け手段7以外の部材は、当該技術分野において公知の部材を採用することができ、また、本発明の効果を阻害しない範囲において、図示した部材以外の部材を付加することも可能である。
【0013】
連続溶融金属めっき装置では、スナウト2内の溶融金属めっき浴4の表面から蒸発した金属ヒュームがスナウト2内に侵入し、鋼帯10の進行方向と反対の方向に流入する。具体的には、金属ヒュームは、スナウト2内を通って連結部3及び熱処理炉1まで流入する。金属ヒュームは、冷却されると、装置の内壁面などに異物として付着するため、内壁面などから異物が脱落した場合に鋼帯10の表面に付着してしまう。このとき、スナウト2内では、鋼帯10は傾斜して進行しているため、異物が内壁面などから脱落しても鋼帯10の表面に付着し難い。他方、スナウト2の上流は、鋼帯10が水平を保ちながら進行しているため、異物が内壁面などから脱落すると鋼帯10の表面に付着し易い。そこで、本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置では、ターンダウンロール6と熱処理炉1との間にガス吹付け手段7を設け、ガス吹付け手段7から鋼帯10の表面に不活性ガスを吹き付けることにより、鋼帯10の表面に付着した異物を除去することを可能にしている。
【0014】
連結部3は、ガス吹付け手段7が設けられた部分よりも鉛直方向の断面積(鋼帯10の進行方向に対して垂直な方向の断面積)が小さい部分(狭断面連結部3a)を含むことが好ましい。この狭断面連結部3aは、熱処理炉1側に設けられる。狭断面連結部3aを設けることにより、狭断面連結部3aにおける不活性ガスの流速が、ガス吹付け手段7が設けられた部分における不活性ガスの流速よりも速くなるため、鋼帯10の表面に付着した異物の除去効果が高くなる。このような効果を十分に得る観点からは、狭断面連結部3aにおける不活性ガスの流速が0.1m/秒以上となるように狭断面連結部3aの断面積を調整することが好ましい。
【0015】
ガス吹付け手段7としては、鋼帯10の表面に不活性ガスを吹き付けることが可能であれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。
その中でもガス吹付け手段7は、鋼帯10の幅方向に平行なスリット状の吹付け口を有し、スリット状の吹付け口の長さが鋼帯10の幅以上であることが好ましい。このような吹付け口を有するガス吹付け手段7であれば、鋼帯10幅方向全体に不活性ガスを吹き付けることができるため、鋼帯10の表面に付着した異物を安定的に除去することができる。また、このようなガス吹付け手段7であれば、ガスシールドとしての機能を得ることができるため、不活性ガスが吹付けられる領域よりも先に金属ヒュームを流入し難くすることができる。
【0016】
金属ヒュームに起因する異物は、鋼帯10の上面に付着し易いことから、ガス吹付け手段7は、鋼帯10の上面側に設けることが好ましい。
また、ガス吹付け手段7は、鋼帯10の上面側だけでなく下面側にも設けてもよい。鋼帯10の下面側には、各種要因によって上流側から持ち込まれた様々な異物が付着していることもあるため、ガス吹付け手段7を鋼帯10の下面側に設けることにより、当該異物を除去することができる。
【0017】
ガス吹付け手段7における不活性ガスの吹付け速度は、使用するガス吹付け手段7に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、好ましくは3.0m/秒以上、より好ましくは4.0m/秒以上、さらに好ましくは5.0m/秒以上、特に好ましくは6.0m/秒以上である。このような吹付け速度であれば、異物の除去効果を高めることができる。
【0018】
不活性ガスとしては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。不活性ガスの例としては、窒素ガス、アルゴンガス、AXガスなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
不活性ガスの温度(T)は、特に限定されないが、下記の条件を満たすことが好ましい。
(溶融金属めっき浴4の温度[℃]-150℃)≦T≦溶融金属めっき浴4の温度[℃]
不活性ガスを上記のような温度範囲とすることにより、表面欠陥がより少ない溶融金属めっき鋼帯を得ることができる。不活性ガスの温度(T)が、(溶融金属めっき浴4の温度[℃]-150℃)未満であると、鋼帯10を溶融金属めっき浴4に導入する際に、溶融金属めっき浴4の表面が固化し易くなり、表面欠陥が発生することがある。一方、不活性ガスの温度(T)が、溶融金属めっき浴4の温度よりも高いと、溶融金属めっきが鋼帯10の表面に形成され難くなる。
なお、溶融金属めっき浴4の温度は、金属の種類に依存するため一義的に定義することができない。例えば、溶融金属めっき浴4が溶融亜鉛めっき浴である場合、その温度は一般的に440~480℃である。また、溶融金属めっき浴4が溶融アルミ-亜鉛めっき浴である場合、その温度は一般的に580~700℃である。
【0020】
不活性ガスは、鋼帯10の進行方法と反対の方向に吹付けられ、不活性ガスの吹付け角度が鋼帯10に対して、好ましくは0°超過65°以下、より好ましくは3~60°、さらに好ましくは5~55°である。このような条件で不活性ガスを吹き付けることにより、異物の除去効果を高めることができる。
【0021】
ガス吹付け手段7の吹付け口と鋼帯10との間の距離は、使用するガス吹付け手段7の種類に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、好ましくは0mm超過70mm以下、より好ましくは5~65mm、さらに好ましくは10~60mm、特に好ましくは15~55mmである。ガス吹付け手段7の吹付け口と鋼帯10との間の距離が、上記の範囲であれば、異物の除去効果を高めることができる。
【0022】
ターンダウンロール6と熱処理炉1との間にガス吹付け手段7を設けた連続溶融金属めっき装置では、熱処理炉1で加熱して表面が活性化された鋼帯10が、ターンダウンロール6によってスナウト2に導入された後、スナウト2内を通って溶融金属めっき浴4中に導入される。このとき、蒸着ヒュームに起因する異物は、スナウト2と熱処理炉1との間の領域(連結部3)で鋼帯10の表面に付着し易いが、ターンダウンロール6と熱処理炉1との間に設けられたガス吹付け手段7によって、鋼帯10の表面に付着した異物を除去することができるため、異物が付着していない鋼帯10を溶融金属めっき浴4中に導入することができる。その後、溶融金属めっき浴4中に侵入した鋼帯10は、シンクロール8によって進行方法が上方に変えられ、溶融金属めっき浴4から引き上げられる。引き上げられた鋼帯10は、ガスワイピング装置(図示していない)によってめっき金属の付着量が調整され、次工程へと導かれる。このようにして得られる溶融金属めっき鋼帯は、金属ヒュームに起因する異物が付着していない鋼帯10をめっきしているため、表面欠陥の発生が少ない。
【実施例
【0023】
以下に、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0024】
(実施例1)
図1に示す連続溶融金属めっき装置を用い、3000コイルの鋼帯10に対して表1の条件で連続溶融金属めっきを行った。不活性ガスとしてはAXガス、溶融金属めっき浴4としては溶融アルミ-亜鉛めっき浴(温度600℃)を用いた。また、ガス吹付け手段7は、鋼帯10の幅方向に平行なスリット状の吹付け口を有し、スリット状の吹付け口の長さが鋼帯10の幅以上である。なお、狭断面連結部3aは、不活性ガスの流速が0.1m/秒となる断面積を有する。
(比較例1)
ガス吹付け手段7から不活性ガスを吹き付けなかったこと以外は実施例1と同様にして連続溶融金属めっきを行った。
【0025】
実施例1及び比較例1で得られた溶融金属めっき鋼帯において発生した表面欠陥(めっき不良)の有無を目視にて評価した。具体的には、表面欠陥が1ヶ所以上確認された溶融金属めっき鋼帯のコイルをめっき不良コイルとし、めっきを行った全てのコイルに対するめっき不良コイルの割合(めっき不良コイルの数/めっきを行った全てのコイルの数)を算出することによって評価した。また、実施例1の表面欠陥の発生率は、比較例1のめっき不良コイルの割合を100%としたときの相対評価とした。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示すように、実施例1は、比較例1に比べて溶融金属めっき鋼帯の表面欠陥の発生率が少なかった。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、金属ヒュームに起因する溶融金属めっき鋼帯の表面欠陥の発生を抑制することができる連続溶融金属めっき装置及び連続溶融金属めっき方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 熱処理炉
1a 加熱帯
1b 均熱帯及び/又は冷却帯
2 スナウト
3 連結部
3a 狭断面連結部
4 溶融金属めっき浴
5 溶融金属めっき浴槽
6 ターンダウンロール
7 ガス吹付け手段
8 シンクロール
10 鋼帯
図1