IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-位置同定システム 図1
  • 特許-位置同定システム 図2
  • 特許-位置同定システム 図3
  • 特許-位置同定システム 図4
  • 特許-位置同定システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】位置同定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20221019BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20221019BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221019BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01C15/00 101
B64C39/02
B64D47/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018069799
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178998
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓久
(72)【発明者】
【氏名】今仲 雅之
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022058(WO,A1)
【文献】特開2018-032958(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/203593(JP,A1)
【文献】特開2016-211973(JP,A)
【文献】特開2015-146371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0327946(US,A1)
【文献】特開2017-118386(JP,A)
【文献】特開2015-212621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 1/00- 1/14
G01C 5/00-15/14
G03B 15/00-15/035
G03B 15/06-15/16
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機に設けられ、基準点を含み真下方へ撮影方向が向けられた俯瞰画像を撮影可能な撮像部と、
前記基準点に対する前記無人航空機の相対位置を算出可能な相対位置算出部と、
前記俯瞰画像における前記基準点の位置座標を算出する基準点座標算出部と、
前記基準点の位置座標、並びに前記無人航空機の相対位置に基づいて、前記俯瞰画像における前記無人航空機の位置座標を算出する航空機座標算出部と、
前記俯瞰画像において、前記無人航空機の位置座標に、前記無人航空機の位置を示す記号を表示する位置表示部と、
を具備する位置同定システム。
【請求項2】
前記相対位置算出部は、
前記無人航空機の相対位置として、前記基準点から前記無人航空機までの水平距離及び方向を算出する、
請求項1に記載の位置同定システム。
【請求項3】
前記航空機座標算出部は、
前記水平距離及び前記方向に基づいて、前記基準点から前記無人航空機までの前記俯瞰画像における画素数を算出し、前記基準点の位置座標と前記画素数を加算又は減算することで、前記俯瞰画像における前記無人航空機の位置座標を算出する、
請求項2に記載の位置同定システム。
【請求項4】
前記撮像部により撮影可能な位置に設置される基準部をさらに具備し、
前記航空機座標算出部は、
前記俯瞰画像における前記基準部の大きさに基づいて前記俯瞰画像の画素と実際の距離との関係を把握し、当該関係を用いて前記俯瞰画像における前記無人航空機の位置座標を算出する、
請求項3に記載の位置同定システム。
【請求項5】
前記航空機座標算出部は、
前記基準部が設置された場所と、前記記号を表示する場所の高さの差に応じて、前記画素数を補正する、
請求項4に記載の位置同定システム。
【請求項6】
前記基準部は、
前記基準点に設置される、
請求項4又は請求項5に記載の位置同定システム。
【請求項7】
前記基準部は、
前記撮像部により撮影可能なコードを具備する、
請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の位置同定システム。
【請求項8】
前記俯瞰画像において指定される指定位置の位置座標を算出する指定位置座標算出部と、
前記基準点の位置座標、及び前記指定位置の位置座標に基づいて、前記基準点に対する前記指定位置の相対位置を算出する指定位置算出部と、
前記指定位置の相対位置に基づいて、前記無人航空機に対して前記指定位置まで移動するように指示を出す移動指示部と、
を具備する請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の位置同定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機の位置を同定する位置同定システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無人航空機を用いた種々のシステムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、無人航空機(ラジコンヘリコプター)を用いてソーラーパネルの不具合箇所を検知する故障診断システムが記載されている。当該故障診断システムにおいては、無人航空機に赤外線カメラを搭載している。当該ラジコンヘリコプター及び赤外線カメラを遠隔操作することで、ソーラーパネルを撮影し、撮影された赤外線画像を映像モニターに出力することで、ソーラーパネルの不具合箇所を特定し、故障診断を行うことができる。
【0004】
また特許文献1に記載の故障診断システムにおいては、無人航空機にGPSを搭載している。当該GPSにより検出された無人航空機の位置情報を映像モニターに出力することで、無人航空機の位置を把握することができる。
【0005】
ここで、特許文献1に記載の技術のように、GPSにより検出された無人航空機の位置情報を映像モニターに出力する場合、一般的には、既存の地図(地図画像)上に無人航空機の現在位置を示す記号等が表示されることになる。
【0006】
しかしながら、既存の地図を用いる場合、当該地図の情報が適切でない場合(例えば、最新の情報ではない場合や、詳細な情報が記載されていない場合など)も考えられる。例えば実際(現在)の建物や道路と、地図に表示されている建物や道路とが一致しない場合には、操縦者は、映像モニターの表示(地図画像と無人航空機の位置を示す記号)だけでは、現在の無人航空機の位置を正確に把握することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-146371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、無人航空機の位置を正確に把握することができる位置同定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、無人航空機に設けられ、基準点を含み真下方へ撮影方向が向けられた俯瞰画像を撮影可能な撮像部と、前記基準点に対する前記無人航空機の相対位置を算出可能な相対位置算出部と、前記俯瞰画像における前記基準点の位置座標を算出する基準点座標算出部と、前記基準点の位置座標、並びに前記無人航空機の相対位置に基づいて、前記俯瞰画像における前記無人航空機の位置座標を算出する航空機座標算出部と、前記俯瞰画像において、前記無人航空機の位置座標に、前記無人航空機の位置を示す記号を表示する位置表示部と、を具備するものである。
【0011】
請求項2においては、前記相対位置算出部は、前記無人航空機の相対位置として、前記基準点から前記無人航空機までの水平距離及び方向を算出するものである。
【0012】
請求項3においては、前記航空機座標算出部は、前記水平距離及び前記方向に基づいて、前記基準点から前記無人航空機までの前記俯瞰画像における画素数を算出し、前記基準点の位置座標と前記画素数を加算又は減算することで、前記俯瞰画像における前記無人航空機の位置座標を算出するものである。
【0013】
請求項4においては、前記撮像部により撮影可能な位置に設置される基準部をさらに具備し、前記航空機座標算出部は、前記俯瞰画像における前記基準部の大きさに基づいて前記俯瞰画像の画素と実際の距離との関係を把握し、当該関係を用いて前記俯瞰画像における前記無人航空機の位置座標を算出するものである。
【0014】
請求項5においては、前記航空機座標算出部は、前記基準部が設置された場所と、前記記号を表示する場所の高さの差に応じて、前記画素数を補正するものである。
【0015】
請求項6においては、前記基準部は、前記基準点に設置されるものである。
【0016】
請求項7においては、前記基準部は、前記撮像部により撮影可能なコードを具備するものである。
【0017】
請求項8においては、前記俯瞰画像において指定される指定位置の位置座標を算出する指定位置座標算出部と、前記基準点の位置座標、及び前記指定位置の位置座標に基づいて、前記基準点に対する前記指定位置の相対位置を算出する指定位置算出部と、前記指定位置の相対位置に基づいて、前記無人航空機に対して前記指定位置まで移動するように指示を出す移動指示部と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、無人航空機の位置を正確に把握することができる。
【0020】
請求項2においては、無人航空機の相対位置を容易に把握することができる。
【0021】
請求項3においては、無人航空機の俯瞰画像における位置座標を容易に算出することができる。
【0022】
請求項4においては、無人航空機の位置をより正確に把握することができる。
【0023】
請求項5においては、無人航空機の位置をより正確に把握することができる。
【0024】
請求項6においては、無人航空機の位置同定のための処理を簡素化することができる。
【0025】
請求項7においては、無人航空機の位置同定のための処理を簡素化することができる。
【0026】
請求項8においては、無人航空機を任意の位置まで正確に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】点検システムの概略構成を示す側面模式図。
図2】基準ボードの上面を示す平面図。
図3】俯瞰画像の一例を示す図。
図4】位置同定処理の内容を示すフローチャート。
図5】位置指定処理の内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る点検システム100の構成について説明する。
【0029】
本実施形態に係る点検システム100は、建物1の屋根2を点検するためのものである。点検システム100は、主として制御端末110、無人航空機120、カメラ130及び基準ボード140を具備する。
【0030】
図1に示す制御端末110は、点検システム100の各種制御を行うものである。制御端末110は、RAM、ROM、HDD等の記憶部や、CPU等の演算処理部、タッチパネル等の入出力部等を具備する。本実施形態では、制御端末110としてタブレットを用いることを想定している。制御端末110は、所定の演算処理や記憶処理等を行うことができる。制御端末110には、点検システム100の各種処理(各種演算や無人航空機120の制御等)に用いられる種々の情報やプログラム等が、予め記憶される。
【0031】
無人航空機120は、人が搭乗しない小型の航空機である。無人航空機120は、複数のローター(回転翼)を具備し、安定した飛行を行うことができる。無人航空機120は、外部(本実施形態では、制御端末110)からの指示に基づいて操作される。無人航空機120は、制御端末110と各種の情報をやり取り(通信)することができる。また無人航空機120は、GPS受信機121、高度センサ122を具備する。
【0032】
GPS受信機121は、GPS衛星の電波信号を受信して位置(経度及び緯度)を特定するものである。GPS受信機121は、無人航空機120に内蔵されている。
【0033】
高度センサ122は、無人航空機120の高度を検出するものである。高度センサ122は、気圧を検出することによって、無人航空機120の現在の高度を検出することができる。高度センサ122は、無人航空機120に内蔵されている。
【0034】
カメラ130は、画像を撮影(撮像)するものである。カメラ130は、無人航空機120の下部に設けられる。カメラ130は、撮影方向を任意に変更することができる。カメラ130は、外部(本実施形態では、制御端末110)からの指示に基づいて操作される。カメラ130は、制御端末110と各種の情報をやり取り(通信)することができる。
【0035】
図1及び図2に示す基準ボード140は、無人航空機120の位置同定の基準となる部材である。基準ボード140は、平面視矩形(正方形)の板状に形成される。基準ボード140の寸法(一辺の長さ)は、予め制御端末110に記憶されている。基準ボード140は、飛行中の無人航空機120(カメラ130)により撮影可能な位置に配置される。また本実施形態では、基準ボード140が設置された位置が、位置同定の基準(基準点)となる。基準ボード140の上面には、方位記号141、コード142及び接地点マーク143が描かれている。
【0036】
方位記号141は、東西南北の方位を示すものである。方位記号141は、基準ボード140の中央に描かれている。基準ボード140を設置する際には、方位記号141が指し示す方位が実際の方位と一致するように、当該基準ボード140の向きが調節される。
【0037】
コード142は、各種の情報を一定の規則に従って模様化したものである。コード142は、基準ボード140の四隅にそれぞれ描かれている。制御端末110は、コード142をカメラ130によって撮影して解析することで、当該コード142から各種の情報を取得することができる。本実施形態においては、コード142は、基準ボード140の位置や大きさを特定するために用いられる。
【0038】
接地点マーク143は、無人航空機120の脚が接地する位置を示したものである。本実施形態では、無人航空機120が4本の脚を有しているものと想定して、4つの接地点マーク143(円形の記号)を基準ボード140に描いている。接地点マーク143は、方位記号141の周囲に描かれている。離陸前の無人航空機120は、接地点マーク143に脚がそれぞれ接地するように位置を調節されて、基準ボード140上に載置される。この状態で無人航空機120が北向きになるように、接地点マーク143の描かれる位置が設定されている。
【0039】
上述の如く構成された点検システム100を用いて、建物1の屋根2の点検を行うことができる。具体的には、作業者は制御端末110を操作することで、無人航空機120及びカメラ130の動作を制御することができる。作業者は、無人航空機120を点検対象となる建物1の屋根2よりも高い位置に飛行させ、カメラ130によって当該屋根2を撮影する。作業者は、撮影された屋根2の画像を制御端末110に表示させて確認したり、当該制御端末110で画像解析したりすることで、当該屋根2に異常がないか点検することができる。なお、制御端末110は、GPS受信機121及び高度センサ122からの信号に基づいて、無人航空機120の水平位置(経度及び緯度)及び高度を常時把握することができる。
【0040】
ここで、上述のような点検を行う場合、点検作業を効率的に実行するために、無人航空機120の位置をできるだけ正確に把握することが必要になる。特に本実施形態のように建物1の屋根2の点検を行う場合には、当該屋根2が鮮明に写った画像を撮影するために、当該建物1との相対位置(水平位置)をできるだけ正確に把握することが望ましい。
【0041】
そこで本実施形態に係る点検システム100は、点検を行う場合、以下で説明する処理(「位置同定処理」と称する)を行うことで、無人航空機120(カメラ130)により撮影された俯瞰画像P中における当該無人航空機120の位置を把握(位置同定)することができるように構成されている。以下、具体的に説明する。
【0042】
まず、屋根2の点検を行う場合、事前準備として、図1及び図3に示すように、点検の対象となる建物1付近の地面上に、基準ボード140が設置される。この際、基準ボード140は、無人航空機120(カメラ130)により撮影可能な位置に配置される。具体的には、基準ボード140は、上空から見て遮るもの(例えば、木、建物1の屋根2等)がない位置に配置される。また、基準ボード140は、位置同定の基準となる位置(基準点)に配置される。基準点は、作業者が任意に決定することができる。本実施形態では、基準ボード140が設置された位置を基準点としている。また、基準ボード140は、方位記号141(図2参照)が指し示す方位が実際の方位と一致するように、向きが適宜調整されて配置される。
【0043】
また、設置された基準ボード140の上に、離陸前の無人航空機120が載置される。この際、無人航空機120の脚が、基準ボード140の接地点マーク143に接地するように当該無人航空機120の位置が調整される。これによって、無人航空機120は北向きに載置されることになる。
【0044】
屋根2の点検が開始されると、以下の位置同定処理(図4のステップS101からステップS107まで)が行われる。
【0045】
図4に示す位置同定処理のステップS101において、制御端末110は、無人航空機120の離陸時の位置(経度及び緯度(x1、y1))を記録する。当該無人航空機120の離陸時の位置(x1、y1)は、基準ボード140の位置を示すことになる。なお、当該記録は、無人航空機120の離陸時における作業者の手動操作に基づいて行うことも、制御端末110自身の判断で自動的に行うことも可能である。
制御端末110は、当該ステップS101の処理を行った後、ステップS102に移行する。
【0046】
ステップS102において、制御端末110は、基準ボード140が写り込んだ俯瞰画像Pを、カメラ130から取得する。具体的には、作業者は無人航空機120を離陸させ、建物1の上空へと移動させる。そして、作業者は、無人航空機120のカメラ130を下方へ向けて基準ボード140及び建物1の屋根2が写った俯瞰画像Pを撮影する。この際、図3に示すように、基準ボード140と共に、点検の対象となる屋根2全体が写った俯瞰画像Pを取得することが好ましい。また当該俯瞰画像Pを撮影する際には、当該画像の上が北を向くように、無人航空機120やカメラ130の向きが調整される。
【0047】
なお、当該俯瞰画像Pは、無人航空機120の現在位置を示し、作業者が当該位置を確認するために用いられる。従って、当該俯瞰画像Pは、作業者が常に確認できるように、制御端末110のタッチパネルに常時表示される。
制御端末110は、当該ステップS102の処理を行った後、ステップS103に移行する。
【0048】
ステップS103において、制御端末110は、俯瞰画像P中の基準ボード140の座標(X1、Y1)を取得する。
【0049】
ここで、本実施形態において「座標」とは、平面画像(俯瞰画像P)中の位置を、互いに直交する2つの座標軸に基づいて特定するものである。本実施形態においては、俯瞰画像PにX軸(本実施形態では、図3における紙面左右方向の座標軸)及びY軸(本実施形態では、図3における紙面上下方向の座標軸)を定義し、当該座標軸に基づいて座標を特定するものとする。また、当該座標軸の単位としては、俯瞰画像Pのピクセル(画素)を用いるものとする。
【0050】
制御端末110は、俯瞰画像P中のコード142を読み取ることで、当該俯瞰画像P中の基準ボード140を特定し、ひいては当該基準ボード140の座標(X1、Y1)を特定することができる。なお、基準ボード140は一定の大きさを有しているため、例えば基準ボード140の中心点を当該基準ボード140の座標とすることができる。
制御端末110は、当該ステップS103の処理を行った後、ステップS104に移行する。
【0051】
ステップS104において、制御端末110は、俯瞰画像Pに写り込んだ基準ボード140に基づいて、当該俯瞰画像Pの1ピクセルあたりの実際の長さを算出する。具体的には、制御端末110は、予め記憶されている基準ボード140の寸法(一辺の長さ)と、俯瞰画像P中の基準ボード140の大きさ(一辺のピクセル数)を比較することで、当該俯瞰画像Pの1ピクセルが、実際のどのくらいの長さに相当するかを算出することができる。例えば、基準ボード140の一辺の長さが500(mm)であり、俯瞰画像P中の基準ボード140の一辺の長さが100(ピクセル)である場合、当該俯瞰画像Pの1(ピクセル)は5(mm)の長さに相当することが分かる。なお、基準ボード140の寸法は、作業者が制御端末110に適宜入力することも可能である。
制御端末110は、当該ステップS104の処理を行った後、ステップS105に移行する。
【0052】
ステップS105において、制御端末110は、無人航空機120の現在位置(経度及び緯度(x2、y2))に基づいて、基準ボード140からの水平距離A及び方位角θを算出する。ここで、水平距離Aとは、図3に示すように、平面視における基準ボード140から無人航空機120の現在位置までの実際の距離(水平方向の距離)である。また方位角θとは、基準ボード140を基準として、無人航空機120の現在位置のある方向を示す角度であり、本実施形態においては東向きを方位角θ=0度としている。
【0053】
水平距離A及び方位角θは、基準ボード140の位置(x1、y1)と無人航空機120の現在位置(x2、y2)を用いて算出することができる。なお、当該水平距離A及び方位角θは任意の方法で算出することができる。本実施形態においては、基準ボード140の位置(x1、y1)と無人航空機120の現在位置(x2、y2)を下記の数1及び数2に代入することで、水平距離A及び方位角θを算出するものとする。
【0054】
(数1)
A=rcos-1(siny1・siny2+cosy1・cosy2・cosΔx)
【0055】
(数2)
θ=90-atan2(sinΔx,cosy1・tany2-siny1・cosΔx)
【0056】
なお、上記数1及び数2において、rは地球の赤道半径であり、また、Δx=x2-x1である。
制御端末110は、当該ステップS105の処理を行った後、ステップS106に移行する。
【0057】
ステップS106において、制御端末110は、無人航空機120の俯瞰画像Pにおける現在の座標(X2、Y2)を算出する。具体的には、まず制御端末110は、ステップS105において算出した水平距離A及び方位角θから、基準ボード140から無人航空機120までの東西方向への距離(図3におけるB参照)及び南北方向への距離(図3におけるC参照)を算出する。当該距離B及びCは、三角関数を用いて算出することができる。
【0058】
さらに制御端末110は、各距離B及びCを、俯瞰画像Pにおけるピクセル数に変換する。制御端末110は、ステップS104において算出した、1ピクセルあたりの実際の長さを用いることで、各距離B及びCをピクセル数に変換することができる。
【0059】
さらに制御端末110は、基準ボード140の座標(X1、Y1)に、各距離B及びCをピクセル数に変換したものを適宜加算(又は減算)することで、無人航空機120の俯瞰画像Pにおける現在の座標(X2、Y2)を算出する。
制御端末110は、当該ステップS106の処理を行った後、ステップS107に移行する。
【0060】
ステップS107において、制御端末110は、俯瞰画像Pの座標(X2、Y2)に、無人航空機120を示すマーカー(アイコンM)を表示する。すなわち、制御端末110のタッチパネルに表示された俯瞰画像P上に無人航空機120のアイコンMが表示され、当該俯瞰画像Pを確認することで無人航空機120の位置を把握することができる。
【0061】
制御端末110は、ステップS105からステップS107までの処理を常時(又は所定の時間間隔で)繰り返すことで、無人航空機120の位置をリアルタイムで俯瞰画像P上に示すことができる。これによって、作業者は無人航空機120の位置を容易に把握することができる。特に、俯瞰画像Pは屋根2の点検時に撮影されたものであるため、現在の周辺環境(建物1や道路等)が反映されているため、現在の建物1等に対する無人航空機120の相対的な位置を正確に把握することができる。
【0062】
また、俯瞰画像P上に無人航空機120の位置を示すことで、作業者からは直接見えない位置(例えば、建物1の屋根2によって視界が遮られるような位置)に無人航空機120がある場合であっても、作業者は無人航空機120の位置を容易に把握することができる。また、ウェブサービス上の地図情報等を用いる必要がないため、インターネット環境が不要となり、設備構成を簡素化することができる。
【0063】
次に、上記位置同定処理で行うことが可能な補正処理について説明する。
【0064】
無人航空機120(カメラ130)を用いて屋根2の画像を撮影して点検を行う場合、無人航空機120は主に当該屋根2の上方を移動することになる。ここで、上述のように基準ボード140が地面に設置されている場合、俯瞰画像Pに映された屋根2は、当該基準ボード140よりも高い位置(飛行している無人航空機120に近い位置)にある。すなわち、遠近感によって、無人航空機120に近い屋根2は大きく、また無人航空機120から遠い基準ボード140は小さく、俯瞰画像Pに写り込むことになる。すると、上述のように基準ボード140の寸法に基づいて、屋根2の上方を移動する無人航空機120の位置を同定(算出)すると、遠近感による誤差が生じることになる。
【0065】
このような遠近感による寸法の変化(寸法比)は、対象物までの距離とおおよそ反比例することが分かっている。そこで、以下で述べる補正処理を行うことにより、当該遠近感による誤差の発生を抑制することができ、俯瞰画像Pに表示される無人航空機120の位置の精度を向上させることができる。以下、当該補正処理について具体的に説明する。
【0066】
制御端末110は、上記位置同定処理を行う際に、下記の数3で表される係数αを算出する。
【0067】
(数3)
α=H1/(H1-H2)
【0068】
なお、上記数3において、H1は無人航空機120が俯瞰画像Pを撮影した際の地面からの高さであり、H2は屋根2の高さである(図1参照)。本実施形態では、図1に示すように建物1の屋根2は傾斜屋根であり、当該屋根2の最も高い部分の高さをH2としているが、屋根2の任意の点の高さ(例えば、屋根2の上下中間点の高さ)をH2とすることが可能である。
【0069】
高さH1は、無人航空機120の高度センサ122の検出値に基づいて把握することができる。また、屋根2の高さH2が予め分かっている場合には、当該高さH2の値が制御端末110に適宜入力される。また屋根2の高さH2が不明である場合は、無人航空機120を屋根2の高さH2に飛行させ、当該無人航空機120の高さを高度センサ122で検出することで、屋根2の高さH2を把握することができる。
【0070】
制御端末110は、上記数3で算出された係数αを、ステップS106で算出された距離B及びCの俯瞰画像Pにおけるピクセル数に掛け合わせる。制御端末110は、係数αを掛け合わせた距離B及びCに基づいて、無人航空機120の座標(X2、Y2)を算出する(ステップS106)ことで、遠近感による誤差の発生を抑制することができる。
【0071】
上記補正処理は、屋根2と基準ボード140との遠近感による誤差を抑制するものであるため、無人航空機120が屋根2の上方を飛行している場合(俯瞰画像Pの屋根2上に、無人航空機120のアイコンMを表示する場合)に行われる。また、無人航空機120が地面の上方を飛行している場合には、遠近感による誤差は生じないため、上記補正処理は不要である。当該補正処理を行うか否かの判断は、例えば、制御端末110によって俯瞰画像Pを解析して建物1の屋根2の範囲を特定し、当該範囲にアイコンMが位置するかどうかに基づいて判断することが可能である。
【0072】
次に、図3及び図5を用いて、無人航空機120を俯瞰画像P上の任意の位置へと移動させる位置指定処理について説明する。
【0073】
上述の如く、本実施形態に係る点検システム100では、位置同定処理によって無人航空機120の位置同定を行い、当該無人航空機120の位置を俯瞰画像P上に表示させることができる。またこの位置同定を応用することで、俯瞰画像P上で指定した位置まで無人航空機120を移動させる処理(位置指定処理)を行うこともできる。以下、当該位置指定処理について具体的に説明する。
【0074】
なお、図5には、位置指定処理のフローチャートを示しているが、当該フローチャートのステップS201からステップS204までの処理は、前述の位置同定処理(図4参照)のステップS101からステップS104までの処理と同一であるため、説明を省略する。
【0075】
ステップS205において、制御端末110は、俯瞰画像Pにおいて、無人航空機120を移動させたい位置(以下、単に「指定ポイント」と称する)の座標(X2、Y2)を取得する。具体的には、作業者は、制御端末110のタッチパネルに表示された俯瞰画像P上の任意の位置(指定ポイント)をタッチ操作する。制御端末110は、作業者によるタッチ操作を検出し、当該位置(指定ポイント)の座標(X2、Y2)を算出する。
制御端末110は、当該ステップS205の処理を行った後、ステップS206に移行する。
【0076】
ステップS206において、制御端末110は、座標(X2、Y2)に相当する無人航空機120の実際の位置(基準ボード140からの水平距離A及び方位角θ)を算出する。具体的には、まず制御端末110は、基準ボード140の座標(X1、Y1)と、指定ポイントの座標(X2、Y2)の差から、俯瞰画像Pにおける当該2点間の東西方向への距離B及び南北方向への距離C(すなわち、距離B及びCのピクセル数)をそれぞれ算出する。
【0077】
さらに制御端末110は、各距離B及びCのピクセル数を、実際の距離に変換する。制御端末110は、ステップS204において算出した、1ピクセルあたりの実際の長さを用いることで、各距離B及びCのピクセル数を、実際の距離に変換することができる。
【0078】
さらに制御端末110は、距離B及びCに基づいて、基準ボード140から指定ポイントまでの水平距離A及び方位角θを算出する。当該水平距離A及び方位角θは、三角関数を用いて算出することができる。
制御端末110は、当該ステップS206の処理を行った後、ステップS207に移行する。
【0079】
ステップS207において、制御端末110は、基準ボード140からの水平距離A及び方位角θに基づいて、指定ポイントの実際の位置(経度及び緯度(x2、y2))を算出する。
制御端末110は、当該ステップS207の処理を行った後、ステップS208に移行する。
【0080】
ステップS208において、制御端末110は、無人航空機120に指示を出し、当該無人航空機120を指定ポイント(x2、y2)まで移動(自律飛行)させる。
【0081】
このように、制御端末110は、俯瞰画像P上で指定された場所まで無人航空機120を移動させることができる。この際、作業者は、点検時に撮影された俯瞰画像Pを用いて無人航空機120の移動先を指定することができるため、当該無人航空機120を任意の場所まで正確に移動させることができる。また、俯瞰画像Pを用いて指定ポイントを入力するだけで、無人航空機120を任意の場所へと移動させることができるため、無人航空機120を容易に移動させることができる。特に、作業者からは直接見えない指定ポイントへも、無人航空機120を容易に移動させることができる。
【0082】
なお、位置指定処理においても、前述の補正処理と同様に遠近感を考慮して指定ポイントの位置(水平距離A及び方位角θ)を算出することも可能である。これによって、より正確に指定ポイントへと無人航空機120を移動させることができる。
【0083】
以上の如く、本実施形態に係る点検システム100(位置同定システム)は、
無人航空機120に設けられ、俯瞰画像Pを撮影可能なカメラ130(撮像部)と、
基準点に対する前記無人航空機120の相対位置を算出可能な制御端末110(相対位置算出部、ステップS105)と、
前記俯瞰画像Pにおける前記基準点の位置座標(x1、y1)を算出する制御端末110(基準点座標算出部、ステップS103)と、
前記基準点の位置座標(x1、y1)、並びに前記無人航空機120の相対位置に基づいて、前記俯瞰画像Pにおける前記無人航空機120の位置座標(x2、y2)を算出する制御端末110(航空機座標算出部、ステップS106)と、
前記俯瞰画像Pにおいて、前記無人航空機120の位置座標(x2、y2)に、前記無人航空機120の位置を示すアイコンM(記号)を表示する制御端末110(位置表示部、ステップS107)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、無人航空機120の位置を正確に把握することができる。すなわち、無人航空機120により撮影された俯瞰画像P上に無人航空機120の位置(アイコンM)を表示させることで、現在(点検システム100を用いた点検等の作業時)の周辺環境(建物1や道路等)と無人航空機120の位置関係を把握することができる。
【0084】
また、前記制御端末110(相対位置算出部)は、
前記無人航空機120の相対位置として、前記基準点から前記無人航空機120までの水平距離A及び方位角θ(方向)を算出する(ステップS105)ものである。
このように構成することにより、無人航空機120の相対位置を容易に把握することができる。
【0085】
また、前記制御端末110(航空機座標算出部)は、
前記水平距離A及び前記方位角θに基づいて、前記基準点から前記無人航空機120までの前記俯瞰画像Pにおける画素数を算出し、前記基準点の位置座標(X1、Y1)と前記画素数を加算又は減算することで、前記俯瞰画像Pにおける前記無人航空機120の位置座標(X2、Y2)を算出する(ステップS106)ものである。
【0086】
このように構成することにより、無人航空機の俯瞰画像Pにおける位置座標を容易に算出することができる。
【0087】
また、本実施形態に係る点検システム100は、
前記カメラ130により撮影可能な位置に設置される基準ボード140(基準部)をさらに具備し、
前記制御端末110(航空機座標算出部)は、
前記俯瞰画像Pにおける前記基準ボード140の大きさに基づいて前記俯瞰画像Pの画素と実際の距離との関係を把握し(ステップS104)、当該関係を用いて前記俯瞰画像Pにおける前記無人航空機120の位置座標(X2、Y2)を算出する(ステップS106)ものである。
このように構成することにより、無人航空機120の位置をより正確に把握することができる。すなわち、基準ボード140を基準として俯瞰画像Pの画素と実際の距離との関係を把握することで、俯瞰画像Pにおける無人航空機120の表示位置の精度を向上させることができる。
【0088】
また、前記制御端末110(航空機座標算出部)は、
前記基準ボード140が設置された場所と、前記アイコンMを表示する場所の高さの差に応じて、前記画素数を補正する(補正処理を行う)ものである。
このように構成することにより、無人航空機120の位置をより正確に把握することができる。すなわち、遠近感による誤差の影響を低減し、俯瞰画像Pにおける無人航空機120の表示位置の精度を向上させることができる。
【0089】
また、前記基準ボード140は、
前記基準点に設置されるものである。
このように構成することにより、無人航空機120の位置同定のための処理を簡素化することができる。すなわち、俯瞰画像P上で基準ボード140を認識することは、基準点を認識することにもなり、俯瞰画像Pの解析処理を簡素化することができる。
【0090】
また、前記基準ボード140は、
前記カメラ130により撮影可能なコード142を具備するものである。
このように構成することにより、無人航空機120の位置同定のための処理を簡素化することができる。すなわち、コード142を用いて俯瞰画像P上の基準ボード140を容易に認識することができる。
【0091】
また、本実施形態に係る点検システム100は、
前記俯瞰画像Pにおいて指定される指定位置(指定ポイント)の位置座標(X2、Y2)を算出する制御端末110(指定位置座標算出部、ステップS205)と、
前記基準点の位置座標(X1、Y1)、及び前記指定位置の位置座標(X2、Y2)に基づいて、前記基準点に対する前記指定位置の相対位置を算出する制御端末110(指定位置算出部、ステップS206)と、
前記指定位置の相対位置に基づいて、前記無人航空機120に対して前記指定位置まで移動するように指示を出す制御端末110(移動指示部、ステップS208)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、無人航空機120を任意の位置まで正確に移動させることができる。すなわち、点検時に撮影された俯瞰画像P上で移動先を指定することができるため、当該無人航空機120を任意の場所まで正確に移動させることができる。
【0092】
なお、本実施形態に係る点検システム100は、本発明に係る位置同定システムの実施の一形態である。
また、本実施形態に係るカメラ130は、本発明に係る撮像部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御端末110は、本発明に係る相対位置算出部、基準点座標算出部、航空機座標算出部、位置表示部、指定位置座標算出部、指定位置算出部及び移動指示部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る基準ボード140は、本発明に係る基準部の実施の一形態である。
【0093】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0094】
例えば、本実施形態に係る点検システム100は、建物1の屋根2を点検するためのものとして説明したが、本発明に係る位置同定システムはこれに限らず、種々の用途(無人航空機の位置同定を要するもの)に用いることが可能である。
【0095】
また、本実施形態では、各種演算、表示、入力操作等が可能な制御端末110を用いるものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、その他種々の制御装置(例えば、パソコン等)を用いることも可能である。なお、パソコンを用いる場合には、各種情報を表示する手段としてのモニターや、各種情報を入力する手段としてのキーボード等が別途設けられることが望ましい。
【0096】
また、本実施形態では、基準ボード140(基準ボード140を設置した位置)を基準点として無人航空機120の位置同定を行うものとしたが、例えば基準ボード140と基準点を別の位置に設定することも可能である。
【0097】
また、本実施形態では、基準点に対する無人航空機120の相対位置として水平距離A及び方位角θを例示したが、本発明はこれに限るものではなく、両者の相対位置が分かる情報(例えば、東西方向の距離及び南北方向の距離等)を用いることが可能である。
【0098】
また、本実施形態では、基準ボード140の大きさに基づいて俯瞰画像Pの画素と実際の距離との関係を把握するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、その他の方法で画素と距離との関係を把握することも可能である。例えば、俯瞰画像Pを撮影する際の無人航空機120の高度やカメラ130の撮影条件等から把握することも可能である。
【0099】
また、本実施形態では、上が北を向くように俯瞰画像Pを撮影するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、他の方向を向けた俯瞰画像Pを撮影して用いることも可能である。この場合、俯瞰画像Pの傾きを適宜考慮して、各種の算出(経度や緯度の算出等)が行われる。
【符号の説明】
【0100】
1 建物
2 屋根
100 点検システム
110 制御端末
120 無人航空機
130 カメラ
140 基準ボード
142 コード
図1
図2
図3
図4
図5