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特許7161311パネルの取付構造、パネル用の固定具、及び固定具の設置方法
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  • 特許-パネルの取付構造、パネル用の固定具、及び固定具の設置方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】パネルの取付構造、パネル用の固定具、及び固定具の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20221019BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20221019BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20221019BHJP
【FI】
E04D13/00 J ETD
E04D13/00 K
E04D13/18
H02S20/23 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018103809
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019206884
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】市川 直毅
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-012909(JP,A)
【文献】特開昭63-233155(JP,A)
【文献】特開2002-070247(JP,A)
【文献】特開2018-071091(JP,A)
【文献】特開2012-140774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00-13/18
H02S 20/00-20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造であって、
第1板部材と、
前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、
前記パネルを直接的又は間接的に支持する固定具と、を有し、
前記固定具は、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と前記設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記第1板部材の前記第1端部は、上方に折り返された第1折り返し部を有し、
前記第2板部材は、前記第1折り返し部と係合するよう下方に折り返された第2折り返し部を有し、
前記第1部材は、前記第1板部材の前記第1折り返し部に沿って上方に折り返されるとともに前記第2板部材の前記第2折り返し部に沿ってさらに上方に折り返される第1係合部を有し、
前記第2部材の前記第2係合部は、前記第1板部材の前記第1折り返し部に沿って上方に折り返されるとともに前記第1折り返し部及び前記第1係合部に係合する、パネルの取付構造。
【請求項2】
パネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造であって、
第1板部材と、
前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、
前記パネルを直接的又は間接的に支持する固定具と、を有し、
前記固定具は、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と前記設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記第1部材を前記設置面に固定する第1固定部材を有し、
前記第1部材は、前記第2板部材で覆われる挿入部を有し、
前記第1固定部材は、前記挿入部に設けられており、前記第2板部材で覆われている、パネルの取付構造。
【請求項3】
パネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造であって、
第1板部材と、
前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、
前記パネルを直接的又は間接的に支持する固定具と、を有し、
前記固定具は、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と前記設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材で覆われた第2固定部材によって前記設置面に固定される、パネルの取付構造。
【請求項4】
パネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造であって、
第1板部材と、
前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、
前記パネルを直接的又は間接的に支持する固定具と、を有し、
前記固定具は、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と前記設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記第1端部から、前記第1板部材の前記第1端部とは反対側の第2端部まで延びており、
前記第2部材の前記第2端部は、前記第1板部材の、前記第2板部材とは反対側に隣接する第3板部材の下側に挿入される第3係合部を有する、パネルの取付構造。
【請求項5】
パネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造であって、
第1板部材と、
前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、
前記パネルを直接的又は間接的に支持する固定具と、を有し、
前記固定具は、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と前記設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記支持部は、前記固定具上に搭載される搭載物を締結可能な第1締結部材を有し、
前記第1締結部材は、前記設置面に沿った面内で前記第1板部材と前記第2板部材とが隣接する方向にスライド可能に構成されている、パネルの取付構造。
【請求項6】
第1板部材と、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、を含む面上にパネルを直接的又は間接的に支持する固定具であって、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記第1板部材の前記第1端部は、上方に折り返された第1折り返し部を有し、
前記第2板部材は、前記第1折り返し部と係合するよう下方に折り返された第2折り返し部を有し、
前記第1部材は、前記第1板部材の前記第1折り返し部に沿って上方に折り返されるとともに前記第2板部材の前記第2折り返し部に沿ってさらに上方に折り返される第1係合部を有し、
前記第2部材の前記第2係合部は、前記第1板部材の前記第1折り返し部に沿って上方に折り返されるとともに前記第1折り返し部及び前記第1係合部に係合する、固定具。
【請求項7】
第1板部材と、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、を含む面上にパネルを直接的又は間接的に支持する固定具であって、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記第1部材を前記設置面に固定する第1固定部材を有し、
前記第1部材は、前記第2板部材で覆われる挿入部を有し、
前記第1固定部材は、前記挿入部に設けられており、前記第2板部材で覆われている、固定具。
【請求項8】
第1板部材と、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、を含む面上にパネルを直接的又は間接的に支持する固定具であって、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材で覆われた第2固定部材によって前記設置面に固定される、固定具。
【請求項9】
第1板部材と、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、を含む面上にパネルを直接的又は間接的に支持する固定具であって、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記第1端部から、前記第1板部材の前記第1端部とは反対側の第2端部まで延びており、
前記第2部材の前記第2端部は、前記第1板部材の、前記第2板部材とは反対側に隣接する第3板部材の下側に挿入される第3係合部を有する、固定具。
【請求項10】
第1板部材と、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、を含む面上にパネルを直接的又は間接的に支持する固定具であって、
前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、
前記第1板部材と設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有し、
前記支持部は、前記固定具上に搭載される搭載物を締結可能な第1締結部材を有し、
前記第1締結部材は、前記設置面に沿った面内で前記第1板部材と前記第2板部材とが隣接する方向にスライド可能に構成されている、固定具。
【請求項11】
パネル用の固定具を設置面上に取り付ける固定具の設置方法であって、
搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、前記第1部材と係合する第2係合部を有する第2部材と、を有する固定具を準備するステップと、
前記固定具を設置すべき第1板部材を設置面上に設置する前に、前記設置面上に前記第2部材を配置するステップと、
前記第2部材上に第1板部材を設置するステップと、
前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するため前記第2係合部を前記第1部材に係合させるように、前記第1部材を前記第1板部材上に置くステップと、
前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材を、前記設置面上に設置するステップと、を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池モジュールのようなパネルを含むパネルの取付構造と、パネル用の固定具と、固定具の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池モジュールは様々な建造物の屋根に設置されている。住宅の屋根には、屋根材の種類によって、例えば、スレート屋根、瓦屋根、金属屋根など様々な種類がある。したがって、太陽電池モジュールを屋根材上に備え付けるための固定具も様々なものが提案されている(下記の特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、屋根板材の上面に太陽電池パネルを配置、固定する取付具を開示する。この取付具は、部分的に互いに重なった屋根板材どうしの間に挿入される挿入部と、挿入部から連続して延びて屋根板材の上方へ立ち上がる側壁と、側壁から連続して延びて太陽電池モジュールを支持する支持部と、を有する。この取付具は、屋根板材の下に挿入された挿入部のところで、釘又はねじによって下地材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-58797号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された太陽電池モジュールのように、屋外に設置されるパネルは、風圧のような外力を受けることがある。パネルが、特に太陽電池モジュールのようなパネルである場合、屋根面に対して上向きに風圧が働くことがある。このような風圧がパネルに作用した場合、パネルと固定された取付具は、取付具を支える屋根板材とともに上向きに外力が働くことがある。屋根板材は、下地材に固定されているわけではなく、隣接する屋根板と係合しているだけである。したがって、パネルは、風圧のような上向きの外力を受けると、固定具及び屋根板材とともに下地材から浮き上がってしまうことがある。
【0006】
したがって、設置面に対して上向きの外力を受けたとしてもパネルが浮き上がり難いパネルの取付構造が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係るパネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造は、パネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造であって、第1板部材と、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、前記パネルを直接的又は間接的に支持する固定具と、を有し、前記固定具は、前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、前記第1板部材と前記設置面との間に設けられた第2部材と、を有し、前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有する。
【0008】
一態様に係る固定具は、第1板部材と、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材と、を含む面上にパネルを直接的又は間接的に支持する固定具に関する。固定具は、前記第1板部材上に置かれ、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、前記第1板部材と前記設置面との間に設けられた第2部材と、を有する。前記第2部材は、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するよう前記第1部材と係合する第2係合部を有する。
【0009】
パネル用の固定具を設置面上に取り付ける固定具の設置方法は、搭載物を支持する支持部を有する第1部材と、前記第1部材と係合する第2係合部を有する第2部材と、を有する固定具を準備するステップと、前記固定具を設置すべき第1板部材を設置面上に設置する前に、前記設置面上に前記第2部材を配置するステップと、前記第2部材上に第1板部材を設置するステップと、前記第1板部材の前記設置面からの浮き上がりを防止するため前記第2係合部を前記第1部材に係合させるように、前記第1部材を前記第1板部材上に置くステップと、前記第1板部材に隣接し、前記第1板部材の第1端部上に部分的に重なる第2板部材を、前記設置面上に設置するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、設置面に対して上向きの外力を受けたとしてもパネルが浮き上がり難いパネルの取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るパネルの取付構造の斜視図である。
図2】パネルの取付構造の分解斜視図である。
図3】固定具及び板部材の斜視図である。
図4】パネルの取付構造の側面図である。
図5】固定具を構成する第1部材と第2部材の斜視図である。
図6】固定具を構成する第1部材の斜視図である。
図7】固定具を構成する第2部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0013】
図1は、一実施形態に係るパネルの取付構造の斜視図である。図2は、パネルの取付構造の分解斜視図である。図3は、パネルの取付構造を構成する固定具及び板部材の斜視図である。なお、図3では、図の簡便のため、後述する複数の板部材のいくつかが図示されていないことに留意されたい。図4は、パネルの取付構造の部分的側面図である。ただし、図4では、図の簡便化のため、屋根材400は示されていない。図5は、固定具を構成する第1部材140と第2部材110の斜視図である。図6は、固定具を構成する第1部材140の斜視図である。図7は、固定具を構成する第2部材110の斜視図である。
【0014】
パネルを設置面上に取り付けるためのパネルの取付構造は、パネル10と、パネル10を支持する支持部材200と、固定具100と、複数の板部材300,300’,300’’と、を有する。パネル10は、例えば太陽電池モジュールであってよい。パネル10は、1つであってもよく、複数並んでいてもよい。
【0015】
本実施形態では、パネル10は、水平面から傾斜した設置面に設置されていてよい。そのような設置面として、例えば建造物の屋根、具体的にはスレートのような屋根材400が挙げられる。
【0016】
本明細書において、傾斜した設置面において最大傾斜線に沿って高い方から低い方へ向かう方向を「流れ方向F1」と称する。流れ方向F1の上流側を「水上側」と称する。流れ方向F1の下流側を「水下側」と称する。また、水平面に平行な面内で流れ方向F1と直交する方向を「横方向F2」と称する。
【0017】
支持部材200は、横方向F2に延びていてよい。支持部材200は、パネル10の端部を積載するパネル積載部220を有する(図4参照)。1つのパネル10は、一対の支持部材200のパネル積載部220によって支持されている。
【0018】
支持部材200は、固定具100に設けられた第1締結部材180によって固定具100に取り付けられている。固定具100は、板部材300に設けられている。本実施形態では、各々の支持部材200は、2つの固定具100によって固定されている。これに限らず、各々の支持部材200を固定する固定具100の数は、1つ、又は3つ以上であってもよい。
【0019】
複数の板部材300,300’,300’’は、互いに隣接して設けられている。複数の板部材300,300’,300’’は、元々設置されていた屋根材400上に、屋根材400を覆うように設けられていてよい。板部材300,300’,300’’は、例えば金属板によって構成されていてもよいが、これに限定されない。
【0020】
以下では、説明の便宜上、複数の板部材300,300’,300’’を互いに区別するために、「第1板部材」、「第2板部材」及び「第3板部材」という用語が用いられることがある。この場合、第1板部材300は、固定具100の直下に示されている板部材に相当する。また、第2板部材300’は、第1板部材300の水上側に隣接する板部材に相当する。第3板部材300’’は、第1板部材300の水下側に隣接する板部材に相当する。
【0021】
互いに隣接する板部材300,300’,300’’は、部分的に互いに重なっていてよい。より具体的には、図4に示すように、第1板部材300の第1端部は、上方に折り返された第1折り返し部300aを有し、第1板部材300の第2端部は、下方に折り返された第2折り返し部300bを有していてよい。ここで、第1折り返し部300aと第2折り返し部300bは、第1板部材300の互いに反対側の端部に位置していてよい。なお、複数の板部材300,300’,300’’の各々は、前述した第1板部材300と同様な構造を有する。第1板部材300の第1折り返し部300aは、水上側に隣接する第2板部材300’の第2折り返し部300b’と係合し、噛み合っている。また、第1板部材300の第2折り返し部300bは、水下側に隣接する第3板部材300’’の第1折り返し部300a’’と係合し、噛み合っている。このような板部材300の係合は、流れ方向F1に互いに隣接する板部材300,300’,300’’どうしの間に存在することが好ましい。これにより、板部材300,300’,300’’の表面に付着した水が、板部材300,300’,300’’の下側の屋根材400に達することを抑制することができる。
【0022】
固定具100は、第1部材140と、第2部材110と、を有していてよい。第1部材140は、第1板部材300上に置かれる当接部146と、支持部材200を支持する支持部148と、を有する。当接部146は、固定具100が置かれる第1板部材300に当接し、支持部材200及びパネル10の荷重を支える。
【0023】
支持部148は、当接部146から起立した起立壁147によって、当接部146よりも板部材300から離れた位置に設けられている。支持部材200は、第1締結部材180によって第1部材140の支持部148に締結されている。
【0024】
第1締結部材180は、設置面に沿った面内で第1板部材300と第2板部材300’とが隣接する方向、ここでは流れ方向F1にスライド可能に構成されていることが好ましい。これにより、例えば支持部材200のような搭載物の流れ方向F1の位置を調節することができる。
【0025】
本実施形態では、第1部材140は、流れ方向F1に沿って延びた穴130を有する(図5及び図6参照)。第1締結部材180は、穴130を貫通するよう配置されている。第1締結部材180は、例えばボルトとナットを含んでいてよい。この場合、流れ方向F1に直交する横方向F2における穴130の幅は、ボルトの頭部及びナットよりも狭く、ボルトの螺旋部よりも広い。これにより、ナットを緩めることで、第1締結部材180は、穴130が延びている方向、すなわち流れ方向F1にスライドできる。
【0026】
第1締結部材180の位置がスライドできれば、一対の支持部材200どうしの間の距離が、固定具100どうしの間の距離に制限されず、調整可能となる。すなわち、パネル10のサイズに合わせて、一対の支持部材200どうしの間の距離を調節できる。
【0027】
第1部材140は、第1板部材300の水上側に隣接する第2板部材300’の下側に挿入される挿入部142を有していてよい。挿入部142は、当接部146から連続的に延びていてよい。挿入部142は、第1部材140が置かれている第1板部材300に隣接する第2板部材300’にまで達している。挿入部142は、第1部材140が置かれる第1板部材300に隣接する第2板部材300’に覆われる。
【0028】
固定具100は、第1部材140を設置面に固定する第1固定部材190を有していてよい。第1固定部材190は、例えばビスや釘であってよい。第1固定部材190は、挿入部142を貫通し、屋根材400に達する。第1部材140はビスや釘のような固定部材190によって強固に固定される。この代わりに、第1固定部材190は、第1部材140を屋根材又はその下地に接着する接着剤や、第1部材140と引っ掛かるよう構成された屋根材又はその下地の凸部などであってもよい。
【0029】
第1固定部材190は、挿入部142に設けられており、第1部材140が置かれている第1板部材300に隣接する第2板部材300’に覆われることが好ましい。これにより、板部材300,300’,300’’の表面に付着した水が第1固定部材190のところまで浸入することが防止される。このように、第1固定部材190によって第1部材140を強固に固定しつつも、防水を実現することができる。
【0030】
第1部材140は、第1板部材300の第1折り返し部300aに沿って上方に折り返されるとともに第2板部材300’の第2折り返し部300b’に沿ってさらに上方に折り返される第1係合部144を有していることが好ましい。すなわち、第1部材140は、第1係合部144のところで略Z型に折り曲げられている。これにより、第1部材140は、第1係合部144よりも当接部146側では固定具100が置かれた第1板部材300の上に位置し、第1係合部144よりも挿入部142側では第1板部材300に隣接する第2板部材300’の下に配置されることになる。
【0031】
第2部材110は、第1板部材300と設置面との間に設けられており、第1部材140が置かれた第1板部材300の、設置面からの浮き上がりを防止するよう構成されている。第2部材110は、第2固定部材192によって設置面、ここでは屋根材400に固定される。第2部材110は、第1板部材300の第1折り返し部300aに沿って上方に折り返されるとともに第1折り返し部300a及び第1部材140の第1係合部144に係合する第2係合部111を有していてよい。これにより、第2部材110は、第1部材140と第1板部材300との両方に係合される。したがって、第2部材110は、第1部材140と、第1部材140が置かれた第1板部材300の両方を、設置面から浮き上がることを抑制する。
【0032】
第2固定部材192は、第1部材140が置かれた第1板部材300で覆われていることが好ましい。これにより、板部材300,300’,300’’の表面に付着した水が第2固定部材192のところまで浸入することが防止される。なお、防水性をより高めるため、屋根材400に打ち込まれるすべての固定部材190,192は、板部材300,300’,300’’に覆われた位置のみに存在することが好ましい。
【0033】
第2部材110は、第1板部材300の第1端部300aから、第1板部材300の第1端部300aとは反対側の第2端部300bまで延びていてよい。第2部材110は、第1板部材300の第2折り返し部300bのところで、第2折り返し部300bに沿って下側に折り返された第3係合部112を有することが好ましい。第3係合部112は、第1部材140が置かれた第1板部材300の水下側に隣接する第3板部材300’’の第1折り返し部300a’’に係合する。また、前述したように、第1部材140が置かれた第1板部材300の第2折り返し部300bも、第1板部材300の水下側に隣接する第3板部材300’’の第1折り返し部300a’’に係合する。これにより、パネルが上方の風圧を受けたとしても、第1板部材300は、第2部材110に支えられるため、第1板部材300ごとパネルが浮き上がることがより抑制される。
【0034】
本実施形態では、前述したように、第1部材140と第2部材110は、第1係合部144と第2係合部111のところで互いに係合しているが、例えばビスや螺旋のような部材によって固定されてはいない。この場合、第1部材140と第2部材110の設置に要する作業が簡易化される。
【0035】
(固定具の設置方法)
次に、前述した固定具100を用いたパネルの設置方法について簡単に説明する。本実施形態では、まず、もともと葺いてあった屋根材400のような設置面を覆うように板部材300,300’,300’’(金属屋根)を葺く(カバー工法)。まず、固定具100を設置すべき第1板部材300の水下側に隣接する第3板部材300’’まで、水下側から水上側に向かって順番に板部材を屋根材400上に設置する。
【0036】
次に、固定具100を設置すべき第1板部材300を屋根材400のような設置面上に設置する際に、第1板部材300の下側に固定具100の第2部材110を設置する。すなわち、屋根材400上に第2部材110を配置して第2部材110を第2固定部材192で屋根材400に固定してから、第2部材110上に第1板部材300を設置する。この際、第1板部材300の第1折り返し部300aが第2部材110の第2係合部111に沿うようにしつつ、第1板部材300の第2折り返し部300bと第2部材110の第3係合部112を、第1板部材300の水下側の第3板部材300’’の第1係合部300a’’に係合させる。
【0037】
次に、第1部材140を、第2部材110上に置かれた第1板部材300の上に置く。この際に、第1部材140の第1係合部144を、第1板部材300の第1折り返し部300aと第2部材110の第2係合部111に沿わせる。
【0038】
次に、ビスや釘のような第1固定部材190によって、第1部材140の挿入部142を屋根材400のような設置面に固定する。次に、第1固定部材190を覆うように、第1板部材300の水上側に隣接する第2板部材300’を設置する。この際、第2板部材300’の水下側の折り返し部300b’を、第1板部材300の水上側の折り返し部300aと、第1部材140の第1係合部144とに係合させる。
【0039】
上述したように固定具100が設置されたら、固定具100上に支持部材200を設置し、支持部材200によって太陽電池モジュールのようなパネル10を設置すればよい。
【0040】
以上のように、本実施形態の固定具100では、板部材300,300’,300’’を順番に葺きながら固定具100を設置することができる。この場合、すべての板部材300,300’,300’’を葺いた後に固定具を設置する場合と比較すると、固定具100の位置決めが容易であり、施工性が向上する。
【0041】
また、もともと葺いてあった屋根材400を覆うように金属屋根を葺く工法(カバー工法)は、屋根のリフォームの際に行われることがある。本実施形態に係る固定具100は、このリフォームで行われるカバー工法に好適に適用できる。したがって、屋根のリフォームとともに太陽電池モジュールのようなパネル10を設置することができる。
【0042】
なお、カバー工法は、もともと葺いてあった屋根材を撤去する必要がないため、人件費や施工にかかる日数を削減することができ、不要な屋根材の撤去費用もかからないというメリットがある。
【0043】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0044】
例えば、上記実施形態では、パネル10は水平面から傾斜した設置面に設置されている。この代わりに、パネル10は水平面から傾斜しない設置面に設置されていてもよい。この場合、流れ方向F1と横方向F2は、それぞれ互いに直交する2つの方向と読み変えることができることに留意されたい。
【0045】
また、上記実施形態では、もともと葺いてあった屋根材400を覆うように設置された金属屋根のような板部材300,300’,300’’上に固定具100が設けられている。この代わりに、固定具100は、もともと葺いてあった屋根材上に設けられてもよい。この場合、前述した実施形態において、板部材300,300’,300’’が、もともと葺いてあった屋根材に相当することに留意されたい。
【0046】
また、固定具100が置かれる板部材300,300’,300’’の下に不図示の防水シートが敷かれてもよい。この場合、防水シートは、少なくとも第1固定部材190及び第2固定部材192が存在する領域に設けられていてよい。
【符号の説明】
【0047】
10 パネル
100 固定具
110 第2部材
111 第2係合部
112 第3係合部
130 穴
140 第1部材
142 挿入部
144 第1係合部
146 当接部
148 支持部
180 第1締結部材
190 第1固定部材
192 第2固定部材
200 支持部材
300 板部材
300a 第1折り返し部
300b 第2折り返し部
400 屋根材
F1 流れ方向
F2 横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7