(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20221019BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
H01L33/56
H01L23/28 D
(21)【出願番号】P 2018136515
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕介
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108092(JP,A)
【文献】特開2017-028124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0028361(US,A1)
【文献】特開2006-224043(JP,A)
【文献】特開2003-040621(JP,A)
【文献】特開2016-066742(JP,A)
【文献】特開2010-219324(JP,A)
【文献】特開2007-204354(JP,A)
【文献】特開2012-151466(JP,A)
【文献】特開2017-069452(JP,A)
【文献】特開2015-153981(JP,A)
【文献】特開2010-157638(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107987481(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01L 23/28 - 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された発光素子と、
前記発光素子上に配置された光透過部材と、
前記基板上において前記光透過部材を取り囲むように配置された枠体と、
前記基板上に配置され、前記光透過部材の側面及び前記枠体の上面を覆い、かつ外部に露出する上面を有する被覆体と、を有し、
前記被覆体は、前記被覆体内に分散された複数の粒子からなる粒子群を有し、
前記粒子群の粒子は、前記被覆体の前記上面の近傍において
のみ分散され、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有する複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子のうち、前記枠体の前記上面上に領域に分散された
前記複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子は、前記基板上の前記光透過部材及び前記枠体間の領域に分散された
前記複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子よりも低い密度で、各粒子内において前記
他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記粒子群における前記複数の粒子は、前記被覆体内において均一な密度で分散されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記粒子群における前記複数の粒子は、前記被覆体内において前記上面から前記基板に向かって徐々に密度が高くなるように分散されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記粒子群
の前記複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子は、前記被覆体の前記上面から前記基板に向かって、
前記各粒子内における
前記他の部分よりもバンドギャップが小さい部分の密度が低くなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記被覆体は、前記複数の粒子
が分散
されかつ一体的に形成された樹脂媒質を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項7】
前記粒子群は、最も前記上面側に設けられ、前記
他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を最も高い密度で有する
複数の第1の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子と、前記
複数の第1の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子よりも前記基板側に設けられ、前記
複数の第1の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子よりも低い密度で前記
他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有する
複数の第2の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子と、を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項8】
前記粒子群内の前記複数の粒子は、前記被覆体内において、5~70wt%の範囲内で分散されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項9】
前記複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子は、粒子本体と、前記粒子本体を被覆する被覆膜と、を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項10】
前記複数の第1の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子は、前記被覆体の前記上面から20μm以下の深さの範囲内の領域に分散されていることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項11】
前記複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子は、前記光透過部材の前記側面から所定の距離だけ離間して前記光透過部材の前記側面を取り囲むように前記被覆体内に分散されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項12】
前記所定の距離は、前記光透過部材の
前記側面から、前記光透過部材からの出射光の最大強度の1/100以上の光が出射される前記被覆体の前記上面の領域内の位置までの距離であることを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記被覆体は、前記上面に複数の凹凸を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項14】
前記複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子は、前記発光素子からの放出光における前記被覆体内の波長に対応する平均粒径を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項15】
基板と、
前記基板上に配置された発光素子と、
前記基板上において前記発光素子を取り囲むように配置された枠体と、
前記基板上に配置され、前記発光素子の側面及び前記枠体の上面を覆い、かつ外部に露出する上面を有する被覆体と、を有し、
前記被覆体は、前記被覆体内に分散された複数の粒子からなる粒子群を有し、
前記粒子群の粒子は、前記被覆体の前記上面の近傍において
のみ分散され、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有する複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項16】
前記粒子群の前記複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子は、前記被覆体の前記上面から前記基板に向かって、前記各粒子内における前記他の部分よりもバンドギャップが小さい部分の密度が低くなることを特徴とする請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記被覆体は、前記複数の粒子が分散されかつ一体的に形成された樹脂媒質を有することを特徴とする請求項15又は16に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードなどの発光素子を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の波長(発光色)を有する光を放出する発光素子と、当該光源からの光の波長を変換する波長変換体とを組み合わせた発光装置が知られている(例えば特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光装置には、高い強度の光が出射されること(すなわち高出力であること)のみならず、明暗の境界が明確であること(すなわち高コントラストであること)が求められる場合がある。この場合、発光装置は、特定の領域から高出力の光を出射するように、かつ、その他の領域からは光を出射しないように構成されていることが求められる。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、単純な構成で高出力かつ高コントラストな発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による発光装置は、基板と、基板上に配置された発光素子と、発光素子上に配置された光透過部材と、基板上において光透過部材を取り囲むように配置された枠体と、基板上に配置され、光透過部材の側面及び枠体の上面を覆い、かつ外部に露出する上面を有する被覆体と、を有し、被覆体は、被覆体内に分散された複数の粒子からなる粒子群を有し、粒子群の粒子は、被覆体の上面の近傍において分散され、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有する複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子を含むことを特徴としている。
【0007】
また、本発明による発光装置は、基板と、基板上に配置された発光素子と、基板上において発光素子を取り囲むように配置された枠体と、基板上に配置され、発光素子の側面及び枠体の上面を覆い、かつ外部に露出する上面を有する被覆体と、を有し、被覆体は、被覆体内に分散された複数の粒子からなる粒子群を有し、粒子群の粒子は、被覆体の上面の近傍において分散され、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分を有する複数の酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1C】実施例1に係る発光装置の拡大断面図である。
【
図1D】実施例1に係る発光装置における被覆体内の粒子の断面図である。
【
図2A】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図2B】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図2C】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図3】実施例1に係る発光装置内の光の進路を模式的に示す図である。
【
図4A】実施例1の変形例1に係る発光装置の断面図である。
【
図4B】実施例1の変形例2に係る発光装置の断面図である。
【
図4C】実施例1の変形例3に係る発光装置の断面図である。
【
図4D】実施例1の変形例4に係る発光装置の断面図である。
【
図4E】実施例1の変形例5に係る発光装置の断面図である。
【
図5C】実施例2に係る発光装置の拡大断面図である。
【
図6】実施例2に係る発光装置からの光出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1Aは、実施例1に係る発光装置10の断面図である。
図1Bは、発光装置10の模式的な上面図である。
図1Aは、
図1BのV-V線に沿った断面図である。また、
図1Cは、
図1Aの破線で囲まれた部分Aを拡大して示す拡大断面図である。
図1A乃至
図1Cを用いて、発光装置10の構成について説明する。
【0011】
発光装置10は、基板11と、基板11上に載置された発光素子12と、発光素子12上に配置された透光部材13と、透光部材13上に配置された光透過部材14とを有する。また、発光装置10は、発光素子12、透光部材13及び光透過部材14の各々から離間して発光素子12、透光部材13及び光透過部材14の各々を取り囲むように基板11上に配置された枠体15を有する。
【0012】
発光素子12は、その底面が基板11の上面上に配置されている。また、透光部材13は、その底面が発光素子12の上面上に配置されている。また、光透過部材14は、その底面が透光部材13の上面上に配置されている。また、枠体15は、その底面が基板11の上面上に配置されている。
【0013】
また、発光装置10は、基板11上に形成され、発光素子12、透光部材13及び光透過部材14の各々の側面、並びに枠体15の上面を覆う被覆体16を有する。また、被覆体16は、外部に露出する上面S1を有する。
【0014】
本実施例においては、基板11は、発光素子12への給電用の配線を有する実装基板である。基板11は、発光素子12の載置面を有し、当該載置面に形成され、互いに電気的に絶縁された第1の配線及び第2の配線を有する。また、基板11は、当該載置面とは反対側の面(裏面)に形成され、第1の配線及び第2の配線にそれぞれ電気的に接続された第1の外部電極及び第2の外部電極を有する。発光素子12は基板11に実装され、基板11上の配線に接続されている。
【0015】
発光素子12は、例えば、発光ダイオードなどの半導体発光素子である。本実施例においては、発光素子12は、窒化物系半導体からなる半導体層(図示せず)を有する。発光素子12は、例えば、青色領域(420~470nmの波長)の光(以下、青色光と称する場合がある)を放出する。
【0016】
本実施例においては、発光素子12は、支持基板(例えばシリコン基板)、当該支持基板の第1の主面に接合された半導体層、当該支持基板の第1の主面上に形成された第1の電極、及び当該支持基板の第1の主面に対向する第2の主面上に形成されかつ第1の電極とは極性が異なる第2の電極を有する。なお、当該第1の電極は、当該支持基板の当該第1の主面に接合された半導体層上に形成されていてもよい。
【0017】
また、発光素子12の第2の電極は、導電性の接合部材を介して、基板11の第2の配線に電気的に接続されている。また、発光素子12の第1の電極は、金ワイヤを介して、基板11の第1の配線に電気的に接続されている。
【0018】
なお、基板11上における発光素子12の構成はこれに限定されない。例えば、他の構成を有する発光素子12としては、成長基板、当該成長基板上に成長された半導体層、当該半導体層上に形成された第1の電極及び第2の電極を有する発光素子(以下、発光素子12Aと称する)が挙げられる。
【0019】
発光素子12Aは、例えば、接合部材によって、成長基板における半導体層とは反対側の表面と基板11の載置面とを接合することで、基板11に接合することができる。また、発光素子12の第1の電極及び第2の電極は、それぞれ、基板11の第1の配線及び第2の配線に、金ワイヤを介して接合することができる。基板11に発光素子12Aを載置した場合、基板11上には成長基板が配置され、成長基板上に半導体層が配置されることとなる。
【0020】
また、発光素子12の他の構成としては、発光素子12Aの半導体層が基板11の載置面に接合される場合(フリップチップ接合、以下、発光素子12Bと称する)が挙げられる。この場合、発光素子12Bの第1の配線及び第2の電極は、基板11の第1の配線及び第2の配線に、導電性の接合部材によって接合されることができる。発光素子12Bを基板11に載置した場合、基板11上には半導体層が配置され、半導体層上には成長基板が配置されることとなる。
【0021】
また、本実施例においては、発光素子12は、基板11における発光素子12の実装面に垂直な方向から見たときに矩形(本実施例においては正方形)の上面形状を有する場合について説明する。しかし、発光素子12の上面形状は、矩形に限定されず、例えば円形状、楕円形状及び長方形状など、種々の形状であってもよい。本実施例においては、発光素子12の上面は、発光素子12の光取り出し面として機能する。
【0022】
透光部材13は、発光素子12から放出された光を透過させる部材であり、例えば少なくとも可視光を透過させる部材からなる。例えば、透光部材13としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、低融点ガラスなどを用いることができる。
【0023】
また、透光部材13は、発光素子12から放出された光の波長を変換する波長変換体、例えば蛍光体を含んでいてもよい。例えば、当該蛍光体としては、青色光を緑色光に変換する緑色蛍光体、青色光を黄色光に変換する黄色蛍光体、青色光を赤色光に変換する赤色蛍光体などを用いることができる。
【0024】
なお、透光部材13の構成はこれに限定されない。例えば、透光部材13は、発光素子12から放出された光、及び蛍光体によって変換された光を透過させる金属酸化物のナノ粒子焼結体から構成されていてもよい。また、発光装置10は、透光部材13を有していなくてもよい。
【0025】
光透過部材14は、透光部材13の上面上に配置されている。光透過部材14は、発光素子12から放出された光、及び/又は波長変換体によって変換された光を透過する部材であり、例えば少なくとも可視光を透過させる部材からなる。例えば、光透過部材14としては、ガラスプレート、サファイアプレート、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)プレートなどが用いられることができる。
【0026】
また、光透過部材14は、発光素子12から放出された光の波長を変換する波長変換体、例えば蛍光体を含んでいてもよい。例えば、当該蛍光体としては、青色光を緑色光に変換する緑色蛍光体、青色光を黄色光に変換する黄色蛍光体、青色光を赤色光に変換する赤色蛍光体などを用いることができる。
【0027】
なお、光透過部材14の構成はこれに限定されない。例えば、光透過部材14は、発光素子12から放出された光、及び波長変換体によって変換された光を透過させるアクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、又は金属酸化物のナノ粒子焼結体から構成されていてもよい。
【0028】
光透過部材14の上面は、発光装置10の光取り出し面として機能する。本実施例においては、光透過部材14の上面は、発光素子12の上面と同様の形状、例えば矩形の形状を有する。しかし、光透過部材14の上面形状は、矩形に限定されず、また、発光素子12の上面形状とは異なる形状であってもよい。また、例えば、光透過部材14の側面は、階段状に形成されていてもよいし、上面に対して傾斜していてもよい。
【0029】
枠体15は、発光素子12、透光部材13及び光透過部材14の各々から離間して発光素子12、透光部材13及び光透過部材14の各々を取り囲むように基板11上に配置されている。なお、枠体15は、基板11の外周を囲むように配置されていてもよい。また、本実施例においては、枠体15は、基板11と一体的に形成され、基板11とともに、発光素子12を収容する凹部を有するランプハウスを形成する。枠体15は、例えばアルミナ成形体からなる。
【0030】
被覆体16は、基板11上における発光素子12、透光部材13及び光透過部材14の外側の領域でありかつ枠体15に囲まれた領域に形成されている。また、被覆体16は、その一部が枠体15の上面を覆うように形成されている。なお、被覆体16は、枠体15の上面の一部の領域を覆っていてもよいし、また枠体15の全体を覆っていてもよい(枠体15を埋設していてもよい)。
【0031】
以下、被覆体16について詳細に説明する。被覆体16は、外部に露出する上面S1を有する。具体的には、被覆体16は、基板11上において、光透過部材14の上面(すなわち光取り出し面)の端部から、枠体15の上面(基板11とは反対側の表面)に亘って連続的に配置されている。また、被覆体16は、光透過部材14の側面を取り囲むように環状に設けられている。
【0032】
被覆体16は、基板11に接する内周底面と、光透過部材14の側面に接する内周側面と、枠体15の内側表面に接する外周側面と、枠体15の上面に接する外周底面と、当該内周底面及び外周底面の反対側に設けられて外部に露出する上面S1と、を有する。
【0033】
なお、本実施例においては、被覆体16が光透過部材14の側面全体に接する場合について説明する。しかし、被覆体16は、光透過部材14の側面の一部のみに接していてもよい。例えば、被覆体16は、光透過部材14の上面(光取り出し面)の端部から、光透過部材14の底面(発光素子12及び透光部材13からの光が入射する面)に向かって、光透過部材14の側面の途中まで(すなわち光透過部材14の側面の上方の領域)のみを覆っていてもよい。
【0034】
また、本実施例においては、被覆体16が枠体15の内側表面の全体に接する場合について説明する。しかし、被覆体16は、枠体15の内側表面の一部のみに接していてもよい。例えば、被覆体16は、枠体15の内側表面の上端から下端に向かう一部の領域(すなわち枠体15の内側表面の上方の領域)のみを覆っていてもよい。
【0035】
また、本実施例においては、枠体15の上面は、光透過部材14の上面よりも、基板11からの位置が高くなるように構成されている。従って被覆体16は、内周側面よりも外周側面の方が高い位置に配置されている。また、本実施例においては、被覆体16は、後述するように熱硬化性樹脂を含む。従って、被覆体16の上面S1は、硬化後の熱収縮によって、わずかに基板11側に窪んだ形状を有する。なお、枠体15の上面は、光透過部材14の上面と同一平面をなすような位置に配置されていてもよい。また、被覆体16が枠体15の上面を覆い易いように、枠体15の上面が光透過部材14の上面より低い位置に配置されていてもよい。
【0036】
次に、
図1C及び
図1Dを用いて、被覆体16の内部構造について説明する。まず、
図1Cに示すように、被覆体16は、被覆体16内に分散された複数の酸化チタン粒子(
図1Cには第1、第2及び第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3を示した)を含む粒子群PTを有する。
【0037】
本実施例においては、被覆体16は、粒子群PTを分散させる媒質(マトリックス)を含む。媒質としては、例えば熱硬化性のシリコーン樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられる。すなわち、被覆体16は、粒子を含有する樹脂体からなる。また、本実施例においては、当該媒質としての樹脂体は、可視光を透過させる特性を有する。
【0038】
また、本実施例においては、被覆体16は、基板11上における発光素子12及び他の機能素子(発光素子12への印加電圧を安定化させるツェナーダイオードなど)及び配線等を封止する封止体として機能する。
【0039】
また、
図1Dに示すように、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々は、粒子本体P10、P20及びP30と、粒子本体P10、P20及びP30をそれぞれ被覆する被覆膜P11、P21及びP31と、を有している。
【0040】
具体的には、本実施例においては、第1の酸化チタン粒子P1は、粒子本体P10(酸化チタンからなる部分)と、粒子本体P10の表面を被覆して粒子本体P10を保護する被覆膜P11と、を有する。被覆膜P11は、例えば、アルミナ、シリカ、ポリオールなどの有機物からなる膜である。同様に、第2及び第3の酸化チタン粒子P2及びP3の各々は、粒子本体P20及びP30と、粒子本体P20及びP30の表面を被覆する被覆膜P21及びP31と、を有する。
【0041】
次に、
図1Dに示すように、粒子群PTのうち、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3の各々は、各粒子内(各粒子本体P10及びP30内)において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分NBを有する。
【0042】
また、
図1Cに示すように、本実施例においては、粒子群PTは、被覆体16の上面S1から基板11に向かって、各粒子内における当該バンドギャップが小さい部分NBの密度が低くなるように分散された第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3を含む。なお、図の明確さのため、
図1Cにおいては、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3にハッチングを施している。本実施例においては、酸化チタン粒子P1~P3の各々は、ルチル型の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO
2)からなる。
【0043】
なお、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々内における当該バンドギャップが小さい部分NBの密度とは、例えば、各粒子内における当該バンドギャップが小さい部分NBが占める割合であり、例えば、各粒子本体P10~P30の表面における当該バンドギャップが小さい部分NBの占有面積である。
【0044】
本実施例においては、粒子群PTのうち、最も上面S1側の領域に分散された第1の酸化チタン粒子P1においては、第1の酸化チタン粒子P1内における他の部分よりもバンドギャップが小さい部分NBの密度が最も高い(第1の密度で当該バンドギャップの小さい部分NBを有する)。
【0045】
例えば、第1の酸化チタン粒子P1の当該バンドギャップが小さい部分NBは、可視光のエネルギー(詳細には可視光の波長のエネルギー)よりも小さなバンドギャップエネルギーを有する。例えば、第1の酸化チタン粒子P1における当該バンドギャップが小さい部分NBは、発光素子12からの放出光(本実施例においては青色光)及び透光部材13からの出射光(本実施例においては青色光及び黄色光)のエネルギーよりも小さなバンドギャップエネルギー(例えば約1.5eV)を有する。
【0046】
また、粒子群PTのうち、最も基板11側の領域に分散された第2の酸化チタン粒子P2においては、第2の酸化チタン粒子P2内における当該バンドギャップが小さい部分NBの密度が最も低い(第2の密度で当該バンドギャップの小さい部分NBを有する)。
【0047】
例えば、第2の酸化チタン粒子P2は、
図1Dに示すように、当該バンドギャップが小さい部分NBをほとんど有さない。従って、例えば、第2の酸化チタン粒子P2は、いずれの部分においても(ほぼ全体において)、発光素子12からの放出光のエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有する。
【0048】
例えば、第2の酸化チタン粒子P2がルチル型の結晶構造を有する場合、第2の酸化チタン粒子P2は、3.0eVのバンドギャップエネルギーを有する。なお、第2の酸化チタン粒子P2がアナターゼ型の結晶構造を有する場合、第2の酸化チタン粒子P2は、3.2eVのバンドギャップエネルギーを有する。
【0049】
また、粒子群PTのうち、第1及び第2の酸化チタン粒子P1及びP2間に分散された第3の酸化チタン粒子P3においては、第3の酸化チタン粒子P3内における当該バンドギャップが小さい部分NB(例えば1.5eVのバンドギャップエネルギーを有する部分)は、第1の酸化チタン粒子P1と第2の酸化チタン粒子P2との間の密度(第3の密度(第1の密度と第2の密度との間の密度))で、設けられている。
【0050】
なお、酸化チタンの結晶は、酸素欠損によってバンドギャップが小さくなると解されている。より詳細には、酸素欠損によって、酸化チタンの価電子帯と導電帯との間に中間準位が形成される。ここでいうバンドギャップとは、この中間準位と価電子帯又は導電帯との間のエネルギーギャップである。従って、例えば、第1又は第3の酸化チタン粒子P1又はP3におけるバンドギャップが小さい部分NBは、酸化チタンの結晶における酸素欠損の発生している部分であると解される。
【0051】
ここで、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3におけるバンドギャップ(各粒子内における局部的なバンドギャップ)について説明する。バンドギャップを有する結晶は、そのバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーの波長の光を吸収し、これよりも小さなエネルギーの波長の光を透過させる光学特性を有する。
【0052】
本実施例においては、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3の各々における当該バンドギャップが小さい部分NBは、可視光の波長に相当するバンドギャップエネルギーよりも小さなバンドギャップエネルギーを有する。従って、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3の各々は、当該バンドギャップが小さい部分NBによって、可視光を吸収する。従って、本実施例においては、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、白色の可視光を用いた観察下では、可視光が吸収されるために、黒色又は灰色を呈している。
【0053】
なお、本実施例においては、第2の酸化チタン粒子P2の各々は当該バンドギャップが小さい部分NBを有さない(ほとんど有さない)ため、可視光を透過及び散乱させる。従って、本実施例においては、第2の酸化チタン粒子P2の各々は、白色の可視光を用いた観察下では、白色を呈している。
【0054】
また、本実施例においては、被覆体16における第1、第2及び第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3の各々が分散された領域をそれぞれ第1、第2及び第3の分散領域(又は第1、第2及び第3の粒子層)16A、16B及び16Cとした場合、第1及び第3の分散領域16A及び16Cは、可視光を吸収する可視光吸収領域(以下、単に吸収領域と称する)ABとして機能する。一方、第2の分散領域16Bは、可視光を散乱及び反射させる可視光散乱反射領域(以下、単に散乱反射領域と称する)SCとして機能する。
【0055】
また、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、被覆体16の上面S1の近傍の領域のみに分散されている。例えば、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、上面S1から20μm以下の深さの範囲内の領域のみに分散されている。従って、被覆体16は、上面S1の近傍では吸収領域ABとして機能し、その内部では散乱反射領域SCとして機能する。
【0056】
また、本実施例においては、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3は、被覆体16内(媒質内)において、全体として均一な分散密度で分散されている。しかし、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3は、被覆体16の上面S1から基板11に向かって分散密度(含有量)が徐々に高くなるように、分散されていてもよい。例えば、第2の酸化チタン粒子P2の第2の分散領域16B内における分散密度は、第1の酸化チタン粒子P1の第1の分散領域16A内における分散密度より高くてもよい。
【0057】
第1、第2及び第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3は、それぞれ被覆膜P11、P21及びP31を有することによって、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3は、紫外線による黄変への耐性(耐黄変性)や、耐候性を有する。
【0058】
なお、紫外線による黄変への耐性や耐候性を必要としない場合、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3は被覆膜P11~P31を有していなくてもよい。例えば、被覆体16の上面S1の近傍に吸収領域ABを形成する場合、吸収領域ABによって紫外線を吸収することができる。従って、この場合、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々は、被覆膜P11~P31を有していなくてもよい。
【0059】
【0060】
まず、
図2Aは、発光素子12、透光部材13、光透過部材14、枠体15及び粒子含有樹脂16Pが形成された基板11を示す図である。本実施例においては、まず、基板11に枠体15が接合されたランプハウスを準備する(工程1)。次に、基板11上に発光素子12を配置して接合する(工程2)。次に、発光素子12上に黄色蛍光体を含む透光部材13を介して、光透過部材14(ガラスプレート)を接着する(工程3)。
【0061】
続いて、基板11上における光透過部材14及び枠体15間の領域並びに枠体15の上面に、粒子含有樹脂16Pとして、第3の酸化チタン粒子P3と同様の酸化チタン粒子P0を含有するシリコーン樹脂を充填する(工程4)。そして、粒子含有樹脂16Pを加熱して硬化させる(工程5)。本実施例においては、酸化チタン粒子P0として、平均粒径が250nm、バンドギャップエネルギーが3.0eVのルチル型の二酸化チタンを用いた。また、粒子含有樹脂16Pの樹脂媒質としては、シリコーン樹脂を用いた。そして、粒子含有樹脂16Pにおける酸化チタン粒子P0の濃度は16wt%とした。
【0062】
図2Bは、粒子含有樹脂16Pの上面S0にレーザ光の照射を行っている際の粒子含有樹脂16Pの上面を示す図である。粒子含有樹脂16Pを硬化させた後、粒子含有樹脂16Pにおける発光素子12及び枠体15内において外部に露出した上面S0にレーザ光LBを照射する(工程6)。
【0063】
本実施例においては、355nmの波長のレーザ光LBを出射するレーザ光源LSを準備した。そして、φ45μmのビーム径及び50kW/cm2の出力のレーザ光LBを、1000mm/secの速度で走査しつつ、粒子含有樹脂16Pの上面S0にレーザ光LBを照射した。なお、355nmの波長の光のエネルギーは約3.5eVであり、ルチル型の二酸化チタンのバンドギャップエネルギーは3.0eVである。従って、レーザ光LBのエネルギーは酸化チタン粒子P0のバンドギャップエネルギーよりも大きい。従って、レーザ光LBは、酸化チタン粒子P0に吸収される。
【0064】
これによって、レーザ光LBに照射された酸化チタン粒子P0から酸素原子が脱離する。また、レーザ光LBの照射強度、照射時間及び焦点位置などを調節することで、レーザ光LBは上面S0の近傍の酸化チタン粒子P0のみに照射される。従って、粒子含有樹脂16Pにおける上面S0の近傍で最も酸素欠損の多い酸化チタン粒子が生成され、上面S0から離れるに従ってその酸化チタン粒子P0の変質(酸素欠損)の程度が小さくなる。
【0065】
これによって、粒子含有樹脂16Pの上面S0の近傍に存在する酸素欠損の多い酸化チタン粒子P0は、高密度でバンドギャップが小さい部分NBを有する第1の酸化チタン粒子P1となる。そして、粒子含有樹脂16Pの上面S0からの離れた酸化チタン粒子P0は、バンドギャップの小さい部分NBが比較的少ない第3の酸化チタン粒子P3となる。
【0066】
また、上面S0から所定の距離(レーザ光LBが酸化チタン粒子によって遮光される距離)以上離れると、レーザ照射の影響を受けず、酸化チタン粒子P0はその特性を維持する。従って、基板11の近傍に存在する酸化チタン粒子P0は、バンドギャップが小さい部分NBをほとんど有しない第2の酸化チタン粒子P2となる。このようにして、レーザ照射によって、各粒子内における他の部分よりもバンドギャップが小さい部分NBの密度が徐々に低くなるように分散された複数の酸化チタン粒子(粒子群PT)を含む被覆体16及びこれを含む発光装置10を製造することができる(
図2C)。
【0067】
なお、レーザ光LBの照射工程(工程6)においては、他の材料、例えば被覆体16の媒質(例えばシリコーン樹脂)、透光部材13及び光透過部材14などを変質させないようにレーザ光源LS及びレーザ光LBの調節を行うことが好ましい。例えば上記した条件でレーザ光LBを照射することで、他の材料の変質を抑制しつつ、酸化チタン粒子P0のみを変質させることができる。
【0068】
本願の発明者らは、当該条件(及び25~75kW/cm2の範囲内の出力)のレーザ光LBが被覆体16の媒質としてのシリコーン樹脂、透光部材13及び透光部材13内の蛍光体、並びに光透過部材14としてのガラスプレートを変質させないことを確認している。なお、本実施例においては、被覆体16の媒質として、355nmの波長の光に対して60%以上の透過率を有するシリコーン樹脂を用いた。
【0069】
なお、発光装置10の製造方法はこれに限定されない。例えば、粒子含有樹脂16Pを塗布し、所定時間静置した後、粒子含有樹脂16Pを加熱することによって酸化チタン粒子P0を沈降させる。これによって、上面S1側の酸化チタン粒子P0の分散密度を低くした被覆体16を形成することもできる。
【0070】
図3は、発光装置10内における光の進路を模式的に示す図である。まず、発光素子12から放出された光のうち、大部分の光は、光L1のように、透光部材13及び光透過部材14を通過して光透過部材14の上面(光取り出し面)から外部に取り出される。
【0071】
次に、光透過部材14の側面から被覆体16の散乱反射領域SCに進入する光(光L2のような光)は、散乱反射領域SCによって反射されて光透過部材14に戻って来る。そそして、光L2のような光は、光透過部材14の上面から外部に取り出される。
【0072】
一方、光透過部材14の側面から被覆体16の吸収領域ABに進入した光(光L3のような光)は、吸収領域ABによって吸収される。また、光L3のような光は、吸収領域ABにおいて完全に吸収されなかった場合でも、十分に減衰される。従って、被覆体16の上面S1から取り出される光はほとんど存在しない。
【0073】
また、光L1及びL2のように光透過部材14から外部に取り出された場合でも、その一部が発光装置10に戻って来る場合がある。具体的には、例えば、発光装置10が照明用途に用いられる場合、発光装置10は、その全体が照明装置の筐体内に収容される。また、発光装置10から取り出された光は、レンズなどの種々の光学系を介して当該照明装置から照明対象の領域(空間)に向けて投光される。従って、発光装置10から取り出された光の一部が当該筐体及び光学系によって反射又は散乱し、発光装置10に戻って来ることが想定される。
【0074】
これに対し、発光装置10においては、被覆体16が枠体15の上面に設けられ、また被覆体16が枠体15の上面上にも吸収領域ABを有する。従って、光透過部材14の上面である光取り出し面を除いて、基板11上のほぼ全面が吸収領域ABとなる。従って、
図3に光L4として示すように、発光装置10の外部から枠体15に向かって戻って来る光であっても、被覆体16の吸収領域ABによって吸収又は十分に減衰される。
【0075】
なお、枠体15の上面上の領域においては、光L4のような外部から発光装置10に入射する光を吸収することを優先して考慮すればよい。すなわち、枠体15の上面上の領域においては、光L3のような光を吸収することをあまり考慮する必要がない。従って、枠体15の上面上の領域においては、被覆体16は、基板11上の領域(光透過部材14と枠体15との間の基板11上の領域)よりも低い吸収率を有していてもよい。
【0076】
従って、例えば、被覆体16内における上面S1の近傍の領域において分散された酸化チタン粒子のうち、枠体15の上面上の領域に分散された酸化チタン粒子は、基板11上の光透過部材14及び枠体15間の領域に分散された酸化チタン粒子よりも低い密度で、当該バンドギャップが小さい部分NBを有していてもよい。
【0077】
より具体的には、例えば、粒子群PTは、枠体15の上面上の領域においては、第1の酸化チタン粒子P1(第1の分散領域16A)を有していなくてもよい。すなわち、被覆体16の上面S1における枠体15上の領域においては、第2及び第3の酸化チタン粒子P2及びP3のみが分散され、第3の酸化チタン粒子P3が上面S1の近傍に配置されていてもよい。また、例えば、枠体15の上面上の領域においては、第3の酸化チタン粒子P3(第3の分散領域16C)のみが設けられていてもよい。
【0078】
例えば、第1の酸化チタン粒子P1を形成しない場合、吸収領域ABを形成する際の工程6において、枠体15上の領域においてはレーザ光LBの走査速度を速くすることやレーザ光LBのビーム径を大きくするなどの調節を行えばよい。また、このように工程6の条件を工夫することで、粒子含有樹脂16Pの加工時間を短縮することができる。
【0079】
上記したように、被覆体16を有することで、発光装置10の光取り出し面を見たとき、光透過部材14の上面以外の領域からはほとんど光が取り出されない。よって、光透過部材14の領域とそれ以外の領域との間で明暗が明確に分かれるため、高いコントラストの出射光を得ることができる。換言すれば、発光装置10を照明装置に用いた際の迷光を低減することができる。
【0080】
また、被覆体16は、発光素子12、透光部材13及び光透過部材14側から被覆体16に入射した光のほとんどに対しては高い反射性を有し、外部から被覆体16に入射した光に対しては吸収性を有する。従って、発光装置10は、光の出力低下を犠牲にすることなく、高いコントラストの光を出射することができる。
【0081】
また、被覆体16の吸収領域ABは、レーザ光LBの照射工程(工程6)を加えるだけで、容易に形成することができる。従って、容易に、高出力かつ高コントラストな発光装置10を提供することが可能となる。
【0082】
なお、本実施例においては、粒子群PTの分散媒質である樹脂体は、一体的に形成されている。すなわち、例えば、被覆体16における第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々は同一の媒質内に分散されている。また、第1~第3の分散領域16A~16C間の各々には媒質の境界が存在しない。従って、吸収領域ABを設けた場合でも被覆体16の機械的強度が維持され、また上記したように光学機能も安定する。従って、高品質及び高寿命な被覆体16及び発光装置10となる。
【0083】
また、本実施例においては、粒子群PTは、被覆体16内において、全体として均一な分散密度を有する。従って、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々は、互いに同程度の範囲内の密度で被覆体16内に分散されている。従って、吸収領域ABを設けた場合でも被覆体16の全体としての熱膨張係数が均一化され、これによって、被覆体16の機械的強度が維持される。従って、高品質及び高寿命な被覆体16及び発光装置10となる。
【0084】
なお、上記したように、酸化チタン粒子の被覆体16内の分散密度は基板11に向かって徐々に低くなっていてもよい。例えば、密度基板11側における第2の酸化チタン粒子P2の分散密度を高くし、上面S1側における第1の酸化チタン粒子P1の分散密度を低くした場合には、被覆体16の上面S1の樹脂割れを抑制することができる。
【0085】
より具体的には、例えば、上記した工程4における酸化チタン粒子P0の含有量を16wt%から32wt%に変更した粒子含有樹脂16Pを用いて、静置工程(酸化チタン粒子P0を沈降させる工程)を経て被覆体16を形成した場合、被覆体16における吸収領域ABを構成する酸化チタン粒子(例えば第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3)の含有量を16wt%程度とすることができる。この場合、吸収領域ABの吸収率を維持しつつ散乱反射領域SCにおける反射率を向上させることができ、さらに樹脂割れを防止することが可能となる。
【0086】
また、本実施例においては、被覆体16は、樹脂媒質として、1.4~1.55の範囲内の屈折率を有する熱硬化性のエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂を有する。また、粒子群PTは、例えば、約2.5の屈折率を有するアナターゼ型の酸化チタン粒子、又は約2.7の屈折率を有するルチル型の酸化チタン粒子を含む。このように、被覆体16内で光を散乱させることを考慮すると、粒子群PT(特に第2の酸化チタン粒子P2)は、樹脂媒質よりも高い屈折率を有していることが好ましい。
【0087】
また、被覆体16の粒子群PTにおける第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々の粒径(平均粒径)は、良好な拡散反射を得ることを考慮すると、150~350nmの範囲内であることが好ましい。また、被覆体16内に進入した光(可視光)の波長(例えばシリコーン樹脂の媒質内の波長)に対し、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の平均粒径を1~1/4程度の範囲内とすることで、後方散乱割合が高いミー散乱を生じさせ、極めて良好な拡散反射を得ることができる。これらを考慮して粒子群PT内の粒子の平均粒径を調節することで、散乱反射領域SCでの反射率を高めることができる。また、吸収領域ABにおいても、光が散乱することで光が高確率で粒子に取り込まれて吸収されるため、吸収率を高めることができる。
【0088】
また、被覆体16における粒子群PTの濃度は、所望の光反射性及び光吸収性を得ることを考慮すると、5~70wt%の範囲内であることが好ましく、製造の容易さ(粒子含有樹脂16Pの塗布の容易さ)や製造コストを考慮すると、8~30wt%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、被覆体16における上記した粒子群PT及び媒質の構成は一例に過ぎない。
【0089】
また、
図1Dに示したように、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3の各々が被覆膜P11~P31を有すること(すなわち各粒子の形成用に用いる酸化チタン粒子P0が被覆膜を有すること)で、発光装置10の製造時におけるレーザ光LBの照射工程(工程6)において、355nmの波長の高出力レーザを用いて、効果的にかつ安定して各粒子本体P10~P30の表面に酸素欠損を生じさせることができる。特に、各粒子に耐黄変性(紫外線への耐性)を持たせる目的で被覆膜を設ける場合、被覆体16の上面S1から数μmの薄い領域のみに安定して吸収領域ABを形成することができる。
【0090】
また、レーザ光LBの粒子含有樹脂16P内での波長に対して、酸化チタン粒子P0の粒径が略等しい場合は、粒子含有樹脂16P内の領域では酸化チタン粒子P0によって後方散乱割合の大きいミー散乱が生ずる。これによって、レーザ光LBは粒子含有樹脂16Pの上面S0近傍で散乱反射されるため、その結果、被覆体16の上面S1の近傍の数μm~20μmの薄い領域のみに吸収領域ABを形成することができる。
【0091】
また、レーザ光LBとして、粒子含有樹脂16P内の酸化チタン粒子P0のバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーの波長の光を用いることで、レーザ光LBを酸化チタン粒子P0に吸収させることができる。従って、被覆体16の上面S1の近傍の数μm~20μmの薄い領域のみに吸収領域ABを形成することができる。
【0092】
図4Aは、実施例1の変形例1に係る発光装置10Aの断面図である。発光装置10Aは、透光部材13Aの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。本変形例においては、透光部材13Aは、発光素子12の側面の一部を覆っている。すなわち、透光部材13Aは、発光素子12の上面及び側面上に形成されている。本変形例においては、被覆体16は、発光素子12の側面の下方領域においては発光素子12に接し、その上方領域においては透光部材13Aを介して発光素子12を覆っている。
【0093】
発光装置10Aにおいては、被覆体16が発光素子12の側面の上方において発光素子12の側面に接しない部分を有する。このように被覆体16が構成されている場合、発光素子12の側面から放出された光を、透光部材13Aによって導光させ、光透過部材14の外縁部に入射させることができる。従って、光透過部材14の外縁部から取り出される光を増大させることができる。従って、高コントラストな発光装置10Aとなる。
【0094】
図4Bは、実施例1の変形例2に係る発光装置10Aの断面図である。発光装置10Bは、透光部材13Bの構成を除いては、発光装置10及び10Aと同様の構成を有する。本変形例においては、透光部材13Bは、発光素子12の側面の全体を覆っている。すなわち、透光部材13Bは、発光素子12の上面及び側面の全体に接している。本変形例においては、被覆体16は、透光部材13Bを介して発光素子12の側面を覆っている。
【0095】
発光装置10Bにおいては、被覆体16が発光素子12の側面に完全に接しない。このように被覆体16が構成されている場合、発光素子12の側面から放出された光のほぼ全てを、透光部材13Bによって光透過部材14の外縁部に入射させることができる。従って、光透過部材14の外縁部から取り出される光を増大させることができる。従って、高コントラストな発光装置10Bとなる。
【0096】
図4Cは、実施例1の変形例3に係る発光装置10Cの断面図である。発光装置10Cは、透光部材13C及び光透過部材14Aの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。本変形例においては、光透過部材14Aが発光素子12の上面よりも大きな上面を有する。また、透光部材13Cは、発光素子12の側面から光透過部材14Aの底面に亘って形成されている。
【0097】
本変形例においては、発光素子12から放出された光は、透光部材13Cを介して光透過部材14Aの底面全体に入射した後、光透過部材14Aの上面から外部に取り出される。また、被覆体16は、透光部材13Cの側面及び光透過部材14Aの側面を覆っている。従って、例えば、発光素子12の側面から放出された光を透光部材13Cによって光透過部材14Aの外縁部に入射させることができる。従って、例えば、発光素子12のサイズを変えることなく光取り出し面のサイズを拡大し、かつコントラストの低下が抑制された発光装置10Cを提供することができる。
【0098】
図4Dは、実施例1の変形例4に係る発光装置10Dの断面図である。発光装置10Dは、透光部材13D及び光透過部材14Bの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。本変形例においては、光透過部材14Bは、発光素子12の上面よりも小さな上面を有する。また、透光部材13Dは、発光素子12の上面から光透過部材14Bの側面に亘って形成されている。
【0099】
本変形例においては、発光素子12から放出された光は、透光部材13Dを介して光透過部材14Bの底面及び側面に入射した後、光透過部材14Bの上面から外部に取り出される。また、被覆体16は、発光素子12及び透光部材13Dの側面と、光透過部材14Bの側面の上方部分を覆っている。従って、例えば、発光素子12のサイズを変えることなく光取り出し面のサイズを縮小し、高出力かつ高コントラストな発光装置10Dを提供することができる。
【0100】
図4Eは、実施例1の変形例5に係る発光装置10Eの断面図である。発光装置10Eは、透光部材13及び光透過部材14を有さない点を除いては発光装置10と同様の構成を有する。発光装置10Eは、基板11と、基板11上に配置された発光素子12と、発光素子12の側面を覆う被覆体17とを有する。また、本変形例においては、発光装置10Eは、発光素子12の高さ(厚さ)に合わせた高さの枠体15Aを有する。被覆体17は、基板11上における枠体15Aと発光素子12との間の領域並びに枠体15Aの上面上に設けられている。
【0101】
被覆体17は、発光素子12の側面を覆う点を除いては、被覆体16と同様の構成を有する。被覆体17は、発光素子12の側面及び枠体15Aの上面を覆い、外部に露出する上面S1を有する。また、被覆体17は、被覆体16と同様に、上面S1から基板11に向かって各粒子内における他の部分よりもバンドギャップが小さい部分NBの密度が低くなるように層状に分散された複数の酸化チタン粒子(例えば第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3)を含む粒子群PTを有する。
【0102】
本変形例においては、発光素子12の上面が外部に露出している。この場合、発光素子12からの放出光は、他の媒体を介さずに直接外部に取り出される。発光装置10Eにおいても、被覆体17が粒子群PTを含むことで、高出力かつ高コントラストな発光装置となる。
【0103】
なお、本実施例においては、被覆体16が可視光に対する吸収領域AB及び散乱反射領域SCを有する場合について説明した。しかし、被覆体16の構成はこれに限定されない。例えば、発光素子12は、可視光以外の帯域の光を放出する構成を有していてもよい。この場合、被覆体16の吸収領域AB及び散乱反射領域SCは、当該他の波長帯域の光及び/又は波長変換体によってさらに他の波長に変換された光に対し、それぞれ吸収性及び反射性を有していればよい。
【0104】
換言すれば、例えば、発光素子12からの放出光、並びに透光部材13又は光透過部材14に含まれる波長変換体からの出射光の波長に応じた光吸収性及び光反射性を有する領域を有するように被覆体16内の粒子及びそのバンドギャップ構成、並びに媒質が調節されていればよい。
【0105】
また、この場合、被覆体16内において効果的に吸収領域AB及び散乱反射領域SCを設けることを考慮すると、例えば、粒子群PTにおける酸化チタン粒子は、発光素子12からの放出光及び/又は透光部材13若しくは光透過部材14に含まれる波長変換体からの出射光の被覆体16内の波長に対応する平均粒径を有していることが好ましい。
【0106】
また、被覆体16は、機械的強度を維持させること考慮すると、粒子群PTの複数の酸化チタン粒子を分散させる一体的に形成された樹脂媒質(例えばシリコーン樹脂)を有していることが好ましい。
【0107】
また、本実施例においては、粒子群PTが第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3を有する場合について説明したが、粒子群PTの構成はこれに限定されない。例えば、粒子群PTは、例えば2種類の酸化チタン粒子P1及びP2のみから構成されていてもよい。
【0108】
この場合、例えば、被覆体16は、最も上面S1に近い位置に配置され、発光素子12からの放出光のエネルギーよりも小さいバンドギャップを有する部分(部分NB)を高密度で有する複数の第1の酸化チタン粒子P1と、第1の酸化チタン粒子P1よりも基板11側に配置され、発光素子12からの放出光のエネルギーよりも小さいバンドギャップを有する部分(部分NB)を低密度で有する複数の第2の酸化チタン粒子P2と、を含んでいればよい。
【0109】
また、例えば、粒子群PTは、少なくとも第1の酸化チタン粒子P1を含んでいればよい。すなわち、粒子群PTは、被覆体16の上面S1の近傍において分散され、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分NBを有する複数の酸化チタン粒子(第1の酸化チタン粒子P1)を有していればよい。
【0110】
また、粒子群PTにおいて吸収領域AB及び散乱反射領域SCを構成する粒子は、酸化チタン粒子に限定されない。例えば、酸化亜鉛(ZnO)は、酸化チタンと同様の性質を有する。例えば、酸化亜鉛のバンドギャップエネルギーは3.37eVであり、可視光を透過する。また、酸化亜鉛は、波長355nmの紫外線(例えばレーザ光LB)を吸収する性質を有する。さらに、酸化亜鉛の屈折率は2.0であり、シリコーン樹脂の屈折率(1.4~1.55)より大きい。そして、酸化亜鉛は、酸素欠損によって、深いドナー順位を形成してバンドギャップが小さくなり(バンドギャップが小さい部分NBに対応する部分が形成され)、可視光を吸収する性質を有する。
【0111】
従って、粒子群PTには、例えば酸化チタン粒子及び酸化亜鉛粒子など、酸素欠損がない結晶状態において可視光を透過し、酸素欠損によって可視光を吸収する性質を有する金属酸化物結晶を用いることができる。例えば、このような性質を有する金属酸化物の粒子は、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3に置き換えられてもよいし、第1~第3の酸化チタン粒子P1~P3に加えて粒子群PTに含有されていてもよい。
【0112】
また、粒子群PTには、酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子の他に、発光素子12からの放出光及び/又は透光部材13若しくは光透過部材14に含まれる波長変換体からの出射光を散乱する粒子が添加されていてもよい。当該粒子としては、炭化ケイ素(SiC)、窒化珪素(Si2N3)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの金属炭化物、また、金属酸化物、金属窒化物などの粒子が挙げられる。
【0113】
すなわち、粒子群PTは、被覆体16内に分散された複数の粒子を有していればよい。粒子群PTが酸化チタン粒子及び酸化亜鉛粒子以外の粒子を含む複数の粒子を含んでいる場合、当該複数の粒子が被覆体16内で均一な密度で分散されているか、又は上面S1から基板11に向かって徐々に密度が高くなるように分散されていればよい。また、例えば、粒子群PTに含まれる粒子の全体が上記した濃度で分散されていればよい。
【0114】
また、本実施例においては、発光装置10が1つの発光素子12を有する場合について説明した。しかし、発光装置10は、複数の発光素子12を有していてもよい。この場合についても、例えば、粒子群PTを有する被覆体16が光透過部材14の側面及び枠体15の上面を覆っていればよい。
【0115】
このように、例えば、発光装置10は、基板11と、基板11上に配置された発光素子12と、発光素子12上に配置された光透過部材14と、基板11上において光透過部材14を取り囲むように配置された枠体15と、基板11上において光透過部材14の側面及び枠体15の上面を覆い、かつ外部に露出する上面S1を有する被覆体16と、を有する。
【0116】
また、被覆体16は、被覆体16内に分散された複数の粒子からなる粒子群PTを有する。また、粒子群PTの粒子は、被覆体16の上面S1の近傍において分散され、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分NBを有する複数の酸化チタン粒子(第1の酸化チタン粒子P1)又は酸化亜鉛粒子を有する。従って、単純な構成で高出力かつ高コントラストな発光装置10を提供することができる。
【0117】
また、例えば、発光装置10Eは、基板11と、基板11上に配置された発光素子12と、基板11上において発光素子12を取り囲むように配置された枠体15Aと、基板11上において発光素子12の側面及び枠体15Aの上面を覆い、かつ外部に露出する上面S1を有する被覆体17と、を有する。
【0118】
また、被覆体17は、被覆体17内に分散された複数の粒子からなる粒子群PTを有する。また、粒子群PTの粒子は、被覆体17の上面S1の近傍において分散され、各粒子内において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分NBを有する複数の酸化チタン粒子(第1の酸化チタン粒子P1)又は酸化亜鉛粒子を有する。従って、単純な構成で高出力かつ高コントラストな発光装置10Eを提供することができる。
【実施例2】
【0119】
図5Aは、実施例2に係る発光装置20の断面図である。
図5Bは、発光装置20の上面図である。
図5Aは、
図5BにおけるW-W線に沿った断面図である。また、
図5Cは、
図5Aの破線で囲まれた部分Bを拡大して示す拡大断面図である。
【0120】
発光装置20は、被覆体21の構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。発光装置20においては、被覆体21は、被覆体16と同様に、光透過部材14の側面を覆い、外部に露出する上面S1を有する。
【0121】
本実施例においては、被覆体21は、上面S1の一部の領域から基板11に向かって各粒子内における当該バンドギャップが小さい部分NBの密度が低くなるように分散された複数の酸化チタン粒子(第1~第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3)を含む粒子群PT1を有する。
図5Cにおいては、酸化チタン粒子P1及びP3にハッチングを施している。
【0122】
換言すれば、粒子群PT1のうち、吸収領域ABをなす第1の酸化チタン粒子P1は、被覆体21の上面S1の一部に分散されている。すなわち、被覆体21は、上面S1の一部のみに第1の分散領域21Aを有する。また、被覆体21は、上面S1の他の領域においては、第2の酸化チタン粒子P2のみが基板11に向かって一様に分散された領域である第2の分散領域21Bを有する。被覆体21は、例えば、レーザ光LBを粒子含有樹脂16Pの上面S0の一部のみに照射することによって、形成することができる。
【0123】
本実施例においては、第1の酸化チタン粒子P1は、光透過部材14の側面から所定の距離(距離D)だけ離間して光透過部材14を取り囲むように被覆体21内に分散されている。従って、被覆体21は、光透過部材14の側面から被覆体21に進入する光(
図3における光L3のような光)を部分的に反射及び散乱させる。発光装置20は、例えば、高コントラスト化と高出力化のうち、高出力化を優先する場合に好適な構成となる。
【0124】
なお、取り出される光の出力とコントラストとのバランスは、被覆体21における光透過部材14の側面から吸収領域ABまでの距離D(
図5C)、すなわち光透過部材14の側面に接する散乱反射領域SCの吸収領域ABまでの厚さを調節することで、調節することができる。
【0125】
図6は、発光装置20からの光出力の分布を示す図である。
図6の横軸は
図5BのW-W線に沿った発光装置20の位置を示し、縦軸は光出力(輝度を最大値で規格化した値)を示している。
【0126】
なお、
図6においては、比較例に係る発光装置100として、被覆体21に代えて第2の酸化チタン粒子P2のみが分散された被覆体を有する発光装置を準備し、発光装置100からの出力の測定結果を発光装置20の測定結果と重ねて破線で示している。
【0127】
また、測定に際し、発光装置20及び100の各々を収容し、発光装置20及び100における光透過部材14の上方の領域に基板11の上面とほぼ同様の形状及びサイズの開口部を有する遮光性の筐体(試験用筐体)を準備した。そして、当該筐体の開口部における発光装置20及び100から出力される光を測定し、
図6に示す結果を得た。
【0128】
具体的には、発光装置は、当該発光装置を収容する遮光性の筐体内に搭載されることが想定される。この場合、筐体の一部には例えばレンズなどの光学系が配置された光取り出し口が設けられ、発光装置から出射された光は当該光取り出し口から当該筐体の外部に取り出されることとなる。
【0129】
当該試験用筐体の開口部は、実際に発光装置20が収容されることが想定される筐体の仮想の光取り出し口である。すなわち、当該試験用筐体の開口部における光出力の測定結果である
図6のグラフは、実際の使用環境に近い環境での発光装置20の評価結果といえる。
【0130】
図6に示すように、発光装置20においては、発光装置100に比べ、発光素子12(光透過部材14)の領域以外からの出力が大きく抑えられ、発光素子12の領域からは高い出力の光が出射されていることがわかる。また、発光装置20及び100の最大出力値はほぼ同一であった。すなわち、発光装置20は、出力を低下させることなく、高コントラストな発光装置であることがわかる。
【0131】
ここで、被覆体21における枠体15上の吸収領域AB(実施例1における被覆体16についても同様である)について説明する。
図6に示すように、発光装置100において測定された枠体15の近傍の光が発光装置20では大きく抑制されていることがわかる。これは、被覆体21が枠体15の上面を被覆しており、また被覆体21が当該枠体15の上面上にも吸収領域ABを有することに起因する。
【0132】
具体的には、
図6に示すように、発光装置100における枠体15の近傍の領域では、光取り出し面である光透過部材14(及び散乱反射領域SC)から離れているにも関わらず、わずかな光が測定されている。これは、例えば
図3に示した光L4のような光(例えば当該試験用筐体内で反射を繰り返し、枠体15の上面に向かって進む迷光)が測定された結果である。
【0133】
一方、発光装置20においては、光透過部材14から離れるに従って単調にかつ急激に光出力が低下しており、枠体15の近傍においてはほとんど光が測定されていない。これは、当該試験用筐体において枠体15に向かって進む迷光が被覆体21における枠体15の近傍の吸収領域ABによって吸収されていることに起因する。従って、発光装置20(及び発光装置10)は、被覆体21(及び被覆体16)を有することで、実際に使用される環境で動作場合でも、高いコントラストを維持することができる。
【0134】
次に、高いコントラストを維持することを考慮すると、
図6に示すように、光透過部材14の側面から、光透過部材14の上面の光強度の1/100以上の強度となる距離Dまで散乱反射領域SCを設けることが好ましい。これは、1/100未満の強度の光は、コントラストを悪化させない程度の強度の光だからである。本実施例においては、この距離Dの上限は、約0.2mmであった。
【0135】
なお、この距離Dは、被覆体21(散乱反射領域SC)における光の進入可能距離に対応する。また、距離Dは、酸化チタン粒子の分散密度によって異なる。従って、例えば上記したように、光透過部材14及びその周囲の被覆体21からの出力を測定し、その出力が光透過部材14の上面の1/100となる位置よりも光透過部材14の側面に近い位置まで散乱反射領域SCを設けることが好ましい。
【0136】
すなわち、距離Dは、光透過部材14の側面から、光透過部材14からの出射光の最大強度の1/100以上の光が出射される被覆体21の上面S1の領域内の位置までの距離であることが好ましい。また、被覆体21は、光透過部材14からの光出力の1/100の強度の光が出射される位置(光透過部材14の側面から距離Dだけ離れた位置)の外側の領域において、各粒子内における当該バンドギャップが小さい部分NBの密度が低くなるように分散された複数の酸化チタン粒子(例えば第1~第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3)を有することが好ましい。
【0137】
なお、本実施例においても、発光装置20は透光部材13及び光透過部材14を有していてなくてもよい。また、被覆体21は、発光素子12の側面近傍の全周に亘って散乱反射領域SCを有していなくてもよい。例えば、被覆体21は、上面S1の一部から基板11に向かって各粒子内における当該バンドギャップが小さい部分NBの密度が低くなるように層状に分散された複数の酸化チタン(第1~第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3)を含む粒子群PT1を有していればよい。
【0138】
このように、本実施例においては、例えば、被覆体21の第1の酸化チタン粒子P1(最も上面S1に近い位置に配置され、発光素子12からの放出光のエネルギーよりもバンドギャップが小さい部分(部分NB)を他の粒子より高い密度で有する酸化チタン粒子)は、光透過部材14の側面から所定の距離Dだけ離間して光透過部材14の側面を取り囲むように被覆体21内に分散されている。従って、高出力かつ高コントラストな発光装置20を提供することができる。
【0139】
また、被覆体21は、第1の酸化チタン粒子P1の内側の領域(上面S1における発光素子12の側面に接する領域)に発光素子12からの放出光のエネルギーよりもバンドギャップが小さい部分(部分NB)を第1の酸化チタン粒子P1よりも低い密度で有する複数の第2の酸化チタン粒子P2を有する。従って、高コントラストな光を出射可能であり、かつ高出力な発光装置20となる。
【実施例3】
【0140】
図7Aは、実施例3に係る発光装置30の断面図である。また、
図7Bは、発光装置30の上面図である。
図7Aは
図7BのX-X線に沿った断面図である。発光装置30は、被覆体31の構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。
【0141】
被覆体31は、上面S1に複数の凹部31Rを有する。本実施例においては、
図7Bに示すように、被覆体31の凹部31Rの各々は、発光素子12、透光部材13及び光透過部材14の周囲を取り囲むように溝状に形成されている。また、凹部31Rの各々は、円柱状(うろこ状)の内壁を有する。
【0142】
被覆体31は、例えば、粒子含有樹脂16Pの上面S0にレーザ光LB(紫外領域の波長の光)を重畳して(複数回に亘って)照射することで形成することができる。具体的には、355nmの波長で25kW/cm2以上の出力のレーザ光LBを特定のパターンで照射し、これを再度同じパターンで照射することで、シリコーン樹脂が表面から順次昇華除去され、その表面にレーザ光LBの照射痕が残存する。これによって、粒子含有樹脂16Pの上面S0には、レーザ光LBのビーム径及びその移動方向に応じた溝が形成される。このレーザ痕は、被覆体31の凹部31Rとなる。
【0143】
なお、被覆体31の凹部31Rは、レーザ光LBを複数回に亘って照射する場合のみならず、例えば、レーザ光LBの出力、走査速度などを調節することによっても、形成することができる。また、凹部31Rの形状は、図示した形状に限定されない。例えば、被覆体31の上面には、凸部が形成されていてもよいし、波状の連続した凹凸が形成されていてもよい。被覆体31は、種々の凹凸を有する上面S1を有していればよい。
【0144】
本実施例においても、被覆体31は、被覆体16と同様に、上面S1の近傍に可視光のエネルギーよりもバンドギャップが小さい部分(部分NB)を有する酸化チタン粒子(第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3)を有する粒子群PTを有する。
【0145】
本実施例においては、被覆体31の上面S1は、例えば繰り返し設けられた凹部31Rを有することによって、例えば平坦な面(例えば被覆体16の上面S1)に比べて外部に露出する面の面積が増大する。これによって、被覆体31に設けられた吸収領域ABの表面積が増大する。従って、被覆体31は、光透過部材14の側面から被覆体31に進入する光(
図3における光L3のような光)を高効率で吸収する。従って、発光装置30は、例えば、コントラストと出力のうち、コントラストを優先する場合に好適な構成となる。
【0146】
なお、本実施例においては、被覆体31の上面S1の全体に凹部31Rが形成されている場合について説明した。しかし、凹部31Rは、被覆体31の上面S1の一部のみに形成されていてもよい。また、凹部31Rの形状についても、
図7A及び
図7Bに示した場合に限定されない。被覆体31は、上面S1上に凹部31Rを有していればよい。
【符号の説明】
【0147】
10、10A、10B、10C、10C、10D、10E、20、30 発光装置
11 基板
12 発光素子
13 透光部材
14 光透過部材
15、15A 枠体
16、17、21、31 被覆体
P1、P2、P3 酸化チタン粒子
PT、PT1 粒子群