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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221019BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20221019BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221019BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
B60L1/00 L
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018151831
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020028182
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 良平
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-081677(JP,A)
【文献】国際公開第2013/076836(WO,A1)
【文献】特開2001-063347(JP,A)
【文献】特開2013-023048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載充電器と、
前記車載充電器から供給された電力を充電するバッテリと、
前記バッテリの電力を消費する車載機器と、
前記バッテリに充電可能な最大電力である充電可能最大電力を導出する充電可能最大電力導出部と、
前記車載機器で消費される最低電力である最低消費電力を導出する最低消費電力導出部と、
前記車載充電器が供給可能な最大電力である供給可能最大電力が前記充電可能最大電力より大きければ、前記供給可能最大電力から前記充電可能最大電力を減算した差分値と前記最低消費電力とを比較し、前記最低消費電力が前記差分値以下であれば、前記充電可能最大電力に前記最低消費電力を加えた電力を、前記車載充電器から供給が許可される最大電力である充電許可電力とし、前記最低消費電力が前記差分値より大きければ、前記供給可能最大電力を前記充電許可電力とする充電許可電力導出部と、
を備える充電システム。
【請求項2】
前記充電許可電力から、前記バッテリを充電するために必要な最低電力である基準充電電力を減算し、前記バッテリから前記車載機器に供給可能な最大電力である使用許可電力を導出する使用許可電力導出部を備える請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記最低消費電力導出部は、前記車載機器の消費電力の推移を予測して前記最低消費電力を導出する請求項1または2に記載の充電システム。
【請求項4】
前記車載機器の消費電力を測定する電力消費測定部と、
前記電力消費測定部が測定した消費電力が前記最低消費電力未満であれば、前記車載機器の消費電力を上げるフェールセーフ部と、
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項5】
前記フェールセーフ部は、前記電力消費測定部が測定した消費電力が前記最低消費電力未満であれば、その原因を考慮して前記最低消費電力導出部に前記最低消費電力を再導出させる請求項4に記載の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの充電を行う充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などの電気で動作する車両では、車両外部から電力の供給を受け、車両に搭載されている高電圧バッテリを充電している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-104143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高電圧バッテリを充電する場合、その高電圧バッテリのSOC(State Of Charge)や温度に基づいて定められる最大電力(以下、「充電可能最大電力(Win)」という)を超えて電力を供給してはならない。また、車載充電器の能力、すなわち、車載充電器が供給可能な最大電力(以下、「供給可能最大電力」という)を超えて電力を供給することはできない。したがって、車載充電器から供給が許可される最大電力(以下、「充電許可電力」という)は、充電可能最大電力と供給可能最大電力のうち、いずれか低い方が採用される。
【0005】
また、車両では、このような高電圧バッテリの充電中においても、エアコンディショナやカーナビゲーションといった車載機器を使用したいという要望がある。このとき、車載機器に対し、充電許可電力以上の電力を供給してしまうと、充電のための電力が残らず、高電圧バッテリへの充電が進まなくなってしまう。
【0006】
そこで電動車両では、車載機器に供給可能な最大電力(以下、「使用許可電力」という)を制限し、高電圧バッテリを充電するために必要な最低電力(以下、「基準充電電力」という)を維持することが考えられる。
【0007】
しかし、充電許可電力が充電可能最大電力により制限されている場合、すなわち、供給可能最大電力にはまだ余裕がある場合においても、充電許可電力の制限に伴い使用許可電力を制限してしまうと、車載機器を十分に機能させることができなくなってしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、充電許可電力の制限を緩和し、車載機器の使用促進を図ることが可能な充電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の充電システムは、車載充電器と、車載充電器から供給された電力を充電するバッテリと、バッテリの電力を消費する車載機器と、バッテリに充電可能な最大電力である充電可能最大電力を導出する充電可能最大電力導出部と、車載機器で消費される最低電力である最低消費電力を導出する最低消費電力導出部と、車載充電器が供給可能な最大電力である供給可能最大電力が充電可能最大電力より大きければ、供給可能最大電力から充電可能最大電力を減算した差分値と最低消費電力とを比較し、最低消費電力が差分値以下であれば、充電可能最大電力に最低消費電力を加えた電力を、車載充電器から供給が許可される最大電力である充電許可電力とし、最低消費電力が差分値より大きければ、供給可能最大電力を充電許可電力とする充電許可電力導出部と、を備える。
【0010】
充電システムは、充電許可電力から、バッテリを充電するために必要な最低電力である基準充電電力を減算し、バッテリから車載機器に供給可能な最大電力である使用許可電力を導出する使用許可電力導出部を備えてもよい。
【0011】
最低消費電力導出部は、車載機器の消費電力の推移を予測して最低消費電力を導出してもよい。
【0012】
充電システムは、車載機器の消費電力を測定する電力消費測定部と、電力消費測定部が測定した消費電力が最低消費電力未満であれば、車載機器の消費電力を上げるフェールセーフ部と、を備えてもよい。
【0013】
フェールセーフ部は、電力消費測定部が測定した消費電力が最低消費電力未満であれば、その原因を考慮して最低消費電力導出部に最低消費電力を再導出させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充電許可電力の制限を緩和し、車載機器の使用促進を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】充電システムが適用される車両の構成を示すブロック図である。
図2】充電方法の流れを示すフローチャートである。
図3】充電許可電力の導出態様を示した説明図である。
図4】充電許可電力の導出態様を示した説明図である。
図5】車載機器の電力推移を説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
<充電システム10>
図1は、充電システム10が適用される車両1の構成を示すブロック図である。図1では、電力の流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。車両1は、車載充電器20、バッテリ22、車載機器24、電力消費測定部26、中央制御部28を含んで構成される。本実施形態における車両1は、車載機器24としての駆動モータを駆動源とした電気自動車として説明するが、駆動源として駆動モータと並行してエンジンが設けられたハイブリッド電気自動車にも適用できる。
【0018】
車載充電器20は、外部から電力を受電し、その電力を直流電力としてバッテリ22に供給する。電力の受電態様としては、車両1が停止した状態で、例えば、充電スタンドから電力の供給を受けることが考えられる。ここでは、充電スタンドから電力の供給を受ける場合を挙げて説明するが、電力の受電態様として、車両1の停止中または走行中に、路面に設置された給電装置から非接触で交流電力を受電し、受電した交流電力を直流電力に変換することも考えられる。
【0019】
バッテリ22は、リチウムイオンバッテリ等、高電圧(例えば200V)の二次電池で構成され、車載充電器20から供給された電力を充電(蓄電)する。
【0020】
車載機器24は、例えば、駆動モータ、バッテリ温度調節部、エアコンディショナ、カーナビゲーション、ヘッドライト、ブレーキランプ、冷却ファン、ウォーターポンプ、ラジエータ、エバポレータ、鉛バッテリ等、車載充電器20またはバッテリ22から電力の供給を受けて動作する機器である。
【0021】
ここで、駆動モータは、供給された電力に応じたトルクで車両1を駆動する。バッテリ温度調節部は、効率良く充電するためバッテリ22の温度調整を行う。エアコンディショナは、車内の空気の温度や湿度などを調整する。カーナビゲーションは、車両1の運転支援のために、車両1内で自車の位置、道路地図や道路状況を提供する。ヘッドライトは、車両1の進路を照らすライトであり、ブレーキランプは、車両1がブレーキをかけたことを後方に知らせるランプである。冷却ファンは、対象物を冷却するファンである。ウォーターポンプは、エンジン周りに冷却水を循環させるためのポンプである。ラジエータは、液体や気体の熱を放熱する。エバポレータは、減圧することによって固体または液体を積極的に蒸発させる。鉛バッテリは、12Vや24Vといった二次電池である。ここでは、鉛バッテリをバッテリ22と区別し、車載機器24として扱う。
【0022】
電力消費測定部26は、車載充電器20およびバッテリ22の下流に接続され、車載機器24により消費されている実際の消費電力を測定する。なお、一般的に、車両1には、バッテリ22を保護するためにバッテリ22の入出力電力を測定する測定部が既設されている。したがって、電力消費測定部26に代え、バッテリ22の入出力電力と、車載充電器20の充電電力との差分を、車載機器24により消費されている実際の消費電力として推定することもできる。この場合、別途、電力測定部26を設けなくて済むので、コストや占有空間の低減を図ることができる。
【0023】
中央制御部(ECU)28は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。中央制御部28は、車両1全体を統括制御する。また、本実施形態において、中央制御部28は、放電可能最大電力導出部50、充電可能最大電力導出部52、充電許可電力導出部54、使用許可電力導出部56、最低消費電力導出部58、フェールセーフ部60としても機能する。以下、当該中央制御部28の各機能部の動作を詳述する。なお、本実施形態では各機能部を中央制御部28に配置する例を挙げて説明するが、これに限られるものではない。具体的には、中央制御部28が有する各機能部は複数の制御装置に分割配置されてもよい。この場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0024】
<充電方法>
図2は、充電方法の流れを示すフローチャートである。バッテリ22を放電する場合、過放電によるバッテリ22の破損を防止するため、SOCや温度に基づいて定められる最大電力である放電可能最大電力(Wout)を超えて電力を放電してはならない。そこで、放電可能最大電力導出部50は、バッテリ22のSOCおよび温度に基づいて放電可能最大電力を導出する(S200)。
【0025】
また、バッテリ22を充電する場合、SOCや温度に基づいて定められる最大電力である充電可能最大電力(Win)を超えて電力をバッテリ22に供給してはならない。そこで、充電可能最大電力導出部52は、バッテリ22のSOCおよび温度に基づいて充電可能最大電力を導出する(S202)。
【0026】
また、充電可能最大電力が大きかったとしても、車載充電器20の能力、すなわち、車載充電器20が供給可能な最大電力である供給可能最大電力を超えて電力を供給することはできない。そこで、充電許可電力導出部54は、充電可能最大電力と供給可能最大電力のうち、いずれか低い方を、車載充電器20から供給が許可される最大電力である充電許可電力とする。そして、充電許可電力導出部54は、車載充電器20に充電許可電力を供給させる。
【0027】
そして、使用許可電力導出部56は、放電可能最大電力導出部50が導出した放電可能最大電力を超えない範囲で、車載機器24に供給可能な最大電力である使用許可電力を導出する。そして、使用許可電力導出部56は、バッテリ22から出力される電力を使用許可電力以下となるように制限する。こうして、バッテリ22の充電中であっても、車載機器24に電力を供給することができる。
【0028】
しかし、車載機器24に対し、充電許可電力以上の電力を供給してしまうと、バッテリ22に充電するための電力が残らず、バッテリ22への充電が進まなくなってしまう。そうすると、車載充電器20による充電が進行しているにも拘わらず、バッテリ22のSOCが上がらないこととなり、運転者に違和感を与えてしまう。
【0029】
そこで、車両1では、使用許可電力を制限し、バッテリ22を充電するための最低電力である基準充電電力を確保している。したがって、使用許可電力導出部56は、充電許可電力から基準充電電力を減算して使用許可電力を導出する。
【0030】
しかしながら、充電許可電力が充電可能最大電力により制限されている場合、すなわち、車載充電器20の能力にはまだ余裕があり、供給可能最大電力が充電可能最大電力より高い場合においてまでも、充電許可電力の制限に伴い使用許可電力を制限してしまうと、車載機器24を十分に機能させることができなくなってしまう。そこで、充電許可電力の制限を緩和し、車載機器24の使用促進を図る。
【0031】
図3および図4は、充電許可電力の導出態様を示した説明図である。ここで、破線は供給可能最大電力を、一点鎖線は充電可能最大電力を示す。
【0032】
例えば、供給可能最大電力が充電可能最大電力以下であれば(S204におけるYES)、図3のように、充電許可電力導出部54は、充電可能最大電力と供給可能最大電力のうち、いずれか低い方、すなわち、供給可能最大電力を充電許可電力とする(S206)。そして、使用許可電力導出部56は、充電許可電力から基準充電電力を減算して使用許可電力を導出する(S208)。
【0033】
こうして、充電許可電力が供給可能最大電力を超えることなく、かつ、バッテリ22を充電するための基準充電電力を確保した状態で、車載機器24に使用許可電力を供給することが可能となる。
【0034】
一方、供給可能最大電力が充電可能最大電力より大きければ(S204におけるNO)、図4のように、車載充電器20の能力にはまだ余裕があることとなる。したがって、充電許可電力導出部54は、電力が低くなる充電可能最大電力ではなく、充電可能最大電力より高い(上乗せした)電力を充電許可電力とする。
【0035】
ただし、充電許可電力は、車載充電器20の能力、すなわち、供給可能最大電力を超えて設定できない。したがって、充電許可電力として追加される電力は、(供給可能最大電力-充電可能最大電力)の範囲内で設定される。
【0036】
また、充電許可電力として電力が追加された結果、バッテリ22に充電可能最大電力を超える電力が供給されてはならない。したがって、充電許可電力として追加される電力は、車載機器24で消費される最低電力である最低消費電力以下とすべきである。
【0037】
最低消費電力導出部58は、車載機器24への指令を解析し、それぞれで最低限消費する消費電力を所定時間間隔毎に合計して最低消費電力を導出する(S210)。なお、最低消費電力導出部58は、安全性に鑑みて、車載機器24の不安定な消費については最低消費電力として積算せず、安定的かつ確実に消費される消費電力のみを積算する。
【0038】
ここで、最低消費電力を安全側に導出すべく、最低消費電力導出部58は、車載機器24の消費電力の推移を予測して最低消費電力を導出してもよい。例えば、エアコンディショナのON/OFF等により車載機器24の電力消費態様が変わり、最低消費電力が変化する場合、以下のように対応する。
【0039】
図5は、車載機器24の電力推移を説明した説明図である。供給可能最大電力が充電可能最大電力より大きいとき、図5(a)に破線で示したように、車載機器24の消費電力を10kWから5kWに下げる指令がなされたとする。これに伴い、図5(a)に実線で示したように、最低消費電力導出部58は、最低消費電力を5kW下げる。しかし、車載機器24の実際の消費電力は、図5(a)に一点鎖線で示したように、すぐに低くなることはない。そうすると、車載機器24の消費電力が想定より大きくなるが、充電可能最大電力との関係では安全側に働く。すなわち、実際の消費電力が大きいことにより、充電許可電力から車載機器24の実際の消費電力を減算した値が充電可能最大電力を超えることはない。
【0040】
一方、図5(a)に破線で示したように、車載機器24の消費電力を5kWから10kWに上げる指令がなされたとする。これに伴い、図5(a)に実線で示したように、最低消費電力導出部58は、最低消費電力を5kW上げることになる。しかし、車載機器24の実際の消費電力は、図5(a)に一点鎖線で示したように、すぐに高くなることはない。そうすると、車載機器24の消費電力が想定より小さくなる。この場合、充電可能最大電力との関係で問題となる。すなわち、実際の消費電力が小さいことにより、充電許可電力から車載機器24の実際の消費電力を減算した値が充電可能最大電力を越えてしまうおそれがある。
【0041】
そこで、車載機器24の消費電力の推移を予測し、最低消費電力が大きくなった場合、充電許可電力の上げ方を、実際の消費電力の上がり方に応じて、それ以上とならないように制限する。例えば、最低消費電力導出部58は、図5(b)に実線で示したように、実際の消費電力の上昇が完了してから、充電許可電力を上げる。また、最低消費電力導出部58は、図5(c)に実線で示したように、実際の消費電力の上昇推移に追従させて、もしくは、遅れを伴わせて最低消費電力を上げる。こうして、最低消費電力導出部58は、最低消費電力を安全側で導出することが可能となる。
【0042】
そして、充電許可電力導出部54は、最低消費電力が(供給可能最大電力-充電可能最大電力)以下であれば、充電可能最大電力に最低消費電力を加えて充電許可電力とし、最低消費電力が(供給可能最大電力-充電可能最大電力)より大きければ、供給可能最大電力を充電許可電力とする(S212)。そして、使用許可電力導出部56は、充電許可電力から基準充電電力を減算して使用許可電力を導出する(S208)。
【0043】
こうして、供給可能最大電力が充電可能最大電力より大きい場合に、バッテリ22を充電するための基準充電電力を確保した状態で、充電許可電力や使用許可電力を増加することができる。また、この場合においても、少なくとも、車載機器24が必ず最低消費電力分を消費するので、バッテリ22に充電可能最大電力を超える電力が供給されることはない。
【0044】
また、上述したように最低消費電力が変化する場合以外にも、故障等により、車載充電器20から供給される電力が充電可能最大電力を超える場合がある。例えば、上記では、最低消費電力導出部58が、車載機器24への指令を解析し、それぞれで最低限必要な消費電力を所定時間間隔毎に合計して最低消費電力を導出する例を挙げたが、車載機器24が故障し、実際には最低消費電力以下の電力しか消費していない場合がある。この場合、車載機器24の実際の消費電力が最低消費電力より小さいことにより、充電許可電力から車載機器24の実際の消費電力を減算した電力、すなわち、車載充電器20から供給される電力が充電可能最大電力を超えてしまう。
【0045】
そこで、フェールセーフ部60は、電力消費測定部26で測定された実際の消費電力と、最低消費電力とを比較し、実際の消費電力が下がり、最低消費電力未満となると(もしくは、最低消費電力未満になりそうになると)、車載機器24での消費電力が最低消費電力以上となるように上げる。具体的に、フェールセーフ部60は、ウォーターポンプ、冷却ファン、ラジエータ、エバポレータの少なくともいずれかを敢えて悪い効率で動作させることで電力を消費させる。また、かかる場合に限らず、消費電力を積極的に費やせば足り、例えば、バッテリ22と異なる低電圧の鉛バッテリに電力を供給することで電力を消費させてもよい。
【0046】
こうして、実際の消費電力が最低消費電力に満たない場合であっても、車載充電器20から供給される電力が充電可能最大電力を超えることを防止できる。
【0047】
そして、車載機器24の消費電力が下がった理由、例えば、いずれの車載機器24が故障しているかが特定されると、充電許可電力導出部54は、その原因を考慮し、すなわち、特定された車載機器24の消費電力を排除して、最低消費電力導出部58に最低消費電力を再導出させる。
【0048】
こうして、充電許可電力は適切な値となり、車載充電器20から供給される電力が充電可能最大電力を超えるおそれがなくなるので、フェールセーフ部60は、車載機器24の消費電力を元に戻す。
【0049】
また、上述した実施形態では、基準充電電力を確保すべく、使用許可電力導出部56が、充電許可電力から基準充電電力を減算して使用許可電力を導出する例を挙げて説明した。しかし、以下の場合、基準充電電力を小さく、または、0にして、使用許可電力を確保してもよい。
【0050】
例えば、バッテリ22の周囲温度が下がり、有効に放電を行うのに必要な所定範囲を逸脱した場合、車両1の走行が制限されるおそれがある。この場合、基準充電電力の確保より、バッテリ温度調節部等、車載機器24への使用許可電力の確保を優先すべきである。そこで、バッテリ22の温度が所定範囲を逸脱すると、使用許可電力導出部56は、基準充電電力を小さく、または、0にして、使用許可電力を確保する。
【0051】
また、車載充電器20が、車両1の走行中に、路面に設置された給電装置から非接触で交流電力を受電する場合、車載モータも使用許可電力を消費する。この場合、基準充電電力の確保より、車載モータへの使用許可電力の確保を優先すべきである。そこで、バッテリ22の温度が所定範囲を逸脱すると、使用許可電力導出部56は、基準充電電力を小さく、または、0にして、使用許可電力を確保する。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態では、最低消費電力を充電可能最大電力に上乗せした充電許可電力で充電することで、充電許可電力の制限を緩和し、車載機器の使用促進を図ることが可能となる。
【0053】
また、車載充電器20から供給される電力が充電可能最大電力を超えそうな場合であっても、充電許可電力や車載機器24の実際の消費電力を調整することで、車載充電器20から供給される電力が充電可能最大電力を超えることを防止できる。
【0054】
また、コンピュータを充電システム10として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、使用許可電力導出部56が、充電許可電力から基準充電電力を減算して使用許可電力を導出する例を挙げて説明しているが、かかる基準充電電力を減算することは必須ではなく、充電許可電力をそのまま使用許可電力としてもよい。この場合、充電許可電力導出部54は、供給可能最大電力が充電可能最大電力以下であれば、供給可能最大電力を充電許可電力とし、供給可能最大電力が充電可能最大電力より大きければ、充電可能最大電力に最低消費電力を加えた電力を充電許可電力とする。
【0057】
なお、本明細書の充電方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、バッテリの充電を行う充電システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
10 充電システム
20 車載充電器
22 バッテリ
24 車載機器
26 電力消費測定部
28 中央制御部
50 放電可能最大電力導出部
52 充電可能最大電力導出部
54 充電許可電力導出部
56 使用許可電力導出部
58 最低消費電力導出部
60 フェールセーフ部
図1
図2
図3
図4
図5