(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】振れ補正装置並びに振れ補正機能付き光学ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20221019BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20221019BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221019BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G02B7/02 Z
H04N5/225 100
H04N5/232 480
(21)【出願番号】P 2018161631
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】新井 努
【審査官】小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/010712(WO,A1)
【文献】特開2012-177864(JP,A)
【文献】特開2008-096566(JP,A)
【文献】特表平11-504136(JP,A)
【文献】特開2009-288332(JP,A)
【文献】特開2016-061958(JP,A)
【文献】特開2017-181864(JP,A)
【文献】特開2013-024944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G02B 7/02
H04N 5/225
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学モジュールを保持するための収容部を備え、該収容部の軸線上に前記光学モジュールの光軸を配置可能な可動体と、固定体と、前記軸線上の揺動支点を中心に前記可動体を前記固定体に揺動自在に支持する揺動支持機構と、前記可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構と、揺動した前記可動体を基準姿勢に復帰させるための姿勢復帰機構とを備え、
前記振れ補正用駆動機構は、前記可動体又は前記固定体のうちの一方部材に設けられた磁石と、前記可動体又は前記固定体のうちの他方部材に設けられ、前記磁石の磁場内で前記可動体に電磁力を作用させて駆動するコイルとを備え、
前記姿勢復帰機構は、前記磁石と、前記他方部材に設けられ、前記磁石との間の吸引力によって前記可動体を前記基準姿勢に向けて付勢する磁性部材とを備え、
前記磁性部材には、前記軸線に直交する方向に凸となる凸面が設けられ、前記他方部材には、前記吸引力によって前記磁性部材の前記凸面を押圧状態に接触させて前記軸線に直交する方向に位置決めする径方向位置決め部が設けられており、
前記径方向位置決め部は、前記凸面を接触させる凹面を有していることを特徴とする振れ補正装置。
【請求項2】
前記磁性部材の前記凸面は、前記軸線に直交する断面が円弧状に形成され、前記凹面は前記軸線に直交する断面がV字状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の振れ補正装置。
【請求項3】
前記凸面及び前記凹面は前記軸線に直交する断面が円弧状に形成されており、前記凹面は前記凸面より曲率半径が大きいことを特徴とする請求項1記載の振れ補正装置。
【請求項4】
前記他方部材には
、前記磁性部材の端部を当接させて前記軸線に沿う方向に位置決めする軸線方向位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の振れ補正装置。
【請求項5】
前記磁性部材は棒状に形成され、前記凸面及び前記凹面は、前記軸線に沿って延びるように形成され、前記軸線方向位置決め部は、前記磁性部材の端部を当接する面状に形成されていることを特徴とする請求項4記載の振れ補正装置。
【請求項6】
前記磁性部材は円柱状に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の振れ補正装置。
【請求項7】
前記他方部材には、前記位置決め部に配置された前記磁性部材との間に接着剤を溜める接着剤溜め部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の振れ補正装置。
【請求項8】
前記振れ補正用駆動機構は、前記軸線を挟んで該軸線と直交する方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けられ、前記コイルに前記一方側と前記他方側とを連結する方向に延びるフレキシブル配線基板が接続されており、
前記姿勢復帰機構の前記磁性部材は、前記一方側の振れ補正用駆動機構の磁石及び前記他方側の振れ補正用駆動機構の磁石にそれぞれ対応して前記一方側及び前記他方側のそれぞれに設けられ、前記一方側に設けられる前記磁性部材と、前記他方側に設けられる前記磁性部材との前記軸線方向の位置が異なっており、
前記可動体は、前記基準
姿勢に対して前記一方側から前記他方側にかけて傾斜して支持されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の振れ補正装置。
【請求項9】
請求項8記載の振れ補正装置を用いた振れ補正機能付き光学ユニットであって、前記収容部に前記光学モジュールが保持されるとともに、該光学モジュールに、第2フレキシブル配線基板が前記一方側と前記他方側とを連結する方向に接続されていることを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項10】
請求項9の振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法であって、前記光学モジュールを前記収容部に保持して前記フレキシブル配線基板及び前記第2フレキシブル
配線基板を前記固定体に固定する際に、前記可動体を前記基準姿勢に配置することを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付き携帯端末等に搭載される光学モジュールの振れ補正を行うための振れ補正装置並びに振れ補正機能付き光学ユニット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末、ドライブレコーダ、無人ヘリコプター等に搭載される撮像装置等の光学機器に用いられる光学ユニットにおいては、振れによる撮影画像の乱れを抑制するために、振れを打ち消すように光学モジュールを揺動させて振れを補正する機能が開発されている。この振れ補正機能においては、光学機器の筐体からなる固定体に対して、光学素子を備える光学モジュールを揺動可能に支持し、その光学モジュールを振れ補正用駆動機構により振れに応じて揺動させる構成が採用されている。
その振れ補正用駆動機構は、磁石とコイルとを備え、磁石の磁場内でコイルに電流を流すことにより光学モジュールに電磁力を作用させて駆動する構成とされている。
【0003】
例えば特許文献1では、光学モジュールの光軸方向に対して直交する二方向に支点を設けたジンバル機構によって光学モジュールを揺動可能に支持し、光学モジュール(可動体)を揺動させることにより振れを補正する構成が提案されている。
この種の振れ補正用駆動機構において、振れ補正用駆動機構の非通電時には光学モジュールは付勢手段によって基準姿勢に保持される。この付勢手段として、特許文献1では、板バネが用いられている。板バネは、可動体と固定体との間に架け渡されており、可動体に固定される可動体側固定部と、固定体に固定される固定体側固定部と、可動体側固定部と固定体側固定部との間で蛇行する蛇行部とを備える。可動体は、揺動に伴って変形する板バネ(蛇行部)の弾性復元力によって、基準姿勢に復帰させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定体に対する可動体の揺動を許容するために、板バネの蛇行部は細く形成されており、塑性変形し易い。したがって、板バネの取り扱いは容易でなく、振れ補正機能付き光学ユニットを製造する際に板バネを可動体と固定体との間に架け渡す作業も容易でない。また、振れ補正機能付き光学ユニットに外部から衝撃が加わって光学モジュールが過度に変位した場合には、蛇行部に塑性変形が生じてしまい、光学モジュールを基準姿勢に復帰させることができなくなる可能性もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、板バネを用いることなく、揺動した可動体を基準姿勢に復帰させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的達成のため、本出願人は、特願2017-092235号にて、振れ補正用駆動機構の磁石との間で磁気によって付勢力を発生させる磁気ばね機構を構成し、この磁気ばね機構によって可動体を基準姿勢に復帰させることを提案した。
この磁気ばね機構を精度良く機能させるには、振れ補正用駆動機構の磁石との位置調整が重要であり、正確に位置決めすることが必要である。本発明は、この磁気ばね機構を改良し、磁石に対する位置決め精度を高めるようにしたものである。
【0008】
本発明の振れ補正装置は、光学モジュールを保持するための収容部を備え、該収容部の軸線上に前記光学モジュールの光軸を配置可能な可動体と、固定体と、前記軸線上の揺動支点を中心に前記可動体を前記固定体に揺動自在に支持する揺動支持機構と、前記可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構と、揺動した前記可動体を基準姿勢に復帰させるための姿勢復帰機構とを備え、前記振れ補正用駆動機構は、前記可動体又は前記固定体のうちの一方部材に設けられた磁石と、前記可動体又は前記固定体のうちの他方部材に設けられ、前記磁石の磁場内で前記可動体に電磁力を作用させて駆動するコイルとを備え、前記姿勢復帰機構は、前記磁石と、前記他方部材に設けられ、前記磁石との間の吸引力によって前記可動体を前記基準姿勢に向けて付勢する磁性部材とを備え、前記磁性部材には、前記軸線に直交する方向に凸となる凸面が設けられ、前記他方部材には、前記吸引力によって前記磁性部材の前記凸面を押圧状態に接触させて前記軸線に直交する方向に位置決めする径方向位置決め部が設けられており、前記径方向位置決め部は、前記凸面を接触させる凹面を有している。
【0009】
姿勢復帰機構の磁性部材に設けた凸面と、他方部材の凹面とを接触させる構造であり、磁性部材を磁気による吸引力で凹面に当接状態に配置することで位置決めでき、磁性部材の取り付けが容易になるとともに、凹面と凸面との接触により、その位置決め精度を高めることができる。
【0010】
振れ補正装置の一つの実施態様として、前記磁性部材の前記凸面は、前記軸線に直交する断面が円弧状に形成され、前記凹面は前記軸線に直交する断面がV字状に形成されているとよい。
横断面V字状の凹面に磁性部材の断面円弧状の凸面が当接するので、磁性部材を高い精度で位置決めすることができる。
【0011】
振れ補正装置のさらに一つの実施態様として、前記凸面及び前記凹面は前記軸線に直交する断面が円弧状に形成されており、前記凹面は前記凸面より曲率半径が大きいとよい。
断面円弧状の凹面に磁性部材の断面円弧状の凸面が転がるように当接できるので、磁性部材の凸面の径にわずかなばらつきがあったとしても、位置決め部の凹面の最深部は、常に磁性部材の円弧の頂部を当接することができ、磁石との間の距離を常に一定の間隔で固定することができる。
【0012】
振れ補正装置のさらに一つの実施態様では、前記他方部材には、前記磁性部材の端部を当接させて前記軸線に沿う方向に位置決めする軸線方向位置決め部が設けられている。
磁性部材を軸線方向位置決め部に当接させることにより、磁石との間の吸引力によって位置決め状態に維持されるので、軸線方向の位置決めも容易にすることができる。
この場合、前記磁性部材は棒状に形成され、前記凸面及び前記凹面は、前記軸線に沿って延びるように形成され、前記軸線方向位置決め部は、前記磁性部材の端部を当接する面状に形成されているとよい。
【0013】
振れ補正装置のさらに一つの実施態様は、前記磁性部材は円柱状に形成されているとよい。円柱状であれば、その製作も容易である。
【0014】
振れ補正装置のさらに一つの実施態様は、前記他方部材には、前記位置決め部に配置された前記磁性部材との間に接着剤を溜める接着剤溜め部が形成されているとよい。
接着剤溜め部は、前記軸線方向の一端部側に開口する窪み部であるとよい。磁性部材の固定に例えば紫外線硬化型接着剤を用いる場合、窪み部により紫外線を照射可能な領域を広く確保できるので、接着剤を確実に硬化させ、磁性部材を固定することができる。また、接着剤を時間をかけずに硬化させることが可能であるので、効率よく製造することができる。なお、接着剤は、紫外線硬化型接着剤だけでなく、熱硬化型接着剤等を用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0015】
振れ補正装置のさらに一つの実施態様では、前記振れ補正用駆動機構は、前記軸線を挟んで該軸線と直交する方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けられ、前記コイルに前記一方側と前記他方側とを連結する方向に延びるフレキシブル配線基板が接続されており、前記姿勢復帰機構の前記磁性部材は、前記一方側の振れ補正用駆動機構の磁石及び前記他方側の振れ補正用駆動機構の磁石にそれぞれ対応して前記一方側及び前記他方側のそれぞれに設けられ、前記一方側に設けられる前記磁性部材と、前記他方側に設けられる前記磁性部材との前記軸線方向の位置が異なっており、前記可動体は、前記基準姿勢に対して前記一方側から前記他方側にかけて傾斜して支持されている。
【0016】
コイルに接続されたフレキシブル配線基板を配線して固定体に固定する際の力が可動体に伝わって、可動体が傾くことがある。姿勢復帰機構を有しない従来の光学ユニットでは、振れ補正用駆動機構のコイルにバイアス電流を流して、可動体の傾きを調整することが行われていたが、フレキシブル配線基板を固定する際の力が可動体に伝わったときに可動体を基準姿勢に配置することができるように、一方側の磁性部材と他方側の磁性部材とで軸線方向の位置を異ならせて、可動体を傾斜させて支持しておくことにより、コイルへのバイアス電流を「0」もしくは最小の電流値とすることができ、消費電力の低減を図ることができる。
【0017】
前述の振れ補正装置を用いた振れ補正機能付き光学ユニットは、前記収容部に前記光学モジュールが保持されるとともに、該光学モジュールに、第2フレキシブル配線基板が前記一方側と前記他方側とを連結する方向に接続されている。
コイルに接続されたフレキシブル配線基板と光学モジュールに接続された第2フレキシブル配線基板とを固定体に固定する際の力が可動体に伝わったときに可動体を基準姿勢に配置することができるように、一方側の磁性部材と他方側の磁性部材とで軸線方向の位置を異ならせておくことにより、可動体を基準姿勢に正確に配置することができる。
【0018】
この振れ補正機能付き光学ユニットを製造する方法は、前記光学モジュールを前記収容部に保持して前記フレキシブル配線基板及び前記第2フレキシブル配線基板を前記固定体に固定する際に、前記可動体を前記基準姿勢に配置する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、板バネを用いることなく、揺動した可動体を振れ補正用駆動機構の磁石の吸引力を利用して基準姿勢に復帰させるができるとともに、磁石との間で吸引力を生じる磁性部材の位置決め精度が高く、かつ組み立て作業性も良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の振れ補正機能付き光学ユニットに用いられる振れ補正装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1の振れ補正装置を軸線方向に沿って分解した斜視図である。
【
図3】
図1の振れ補正装置の軸線を通る縦断面図である。
【
図4】
図1の振れ補正装置においてカバー枠を外した状態の平面図である。
【
図5】
図1の振れ補正装置の軸線と直交する断面図であり、可動体を基準姿勢に配置している。
【
図6】ホルダフレーム及び磁性部材の斜視図である。
【
図8】一実施形態の振れ補正装置に光学モジュールを組み込んだ振れ補正機能付き光学ユニットの
図3同様の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る振れ補正機能付き光学ユニットの実施形態について図面を参照しながら説明する。
以下の説明では、互いに直交する3方向を各々X軸方向、Y軸方向、Z軸方向とし、Z軸方向に光軸L(レンズ光軸/光学素子の光軸)が配置されるものとする。また、各方向の振れのうち、X軸周りの回転は、いわゆるピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸周りの回転は、いわゆるヨーイング(横揺れ)に相当する。また、X軸方向の一方側には+Xを付し、他方側には-Xを付し、Y軸方向の一方側には+Yを付し、他方側には-Yを付し、Z軸方向の一方側(被写体側/光軸方向前側)には+Zを付し、他方側(被写体側とは反対側/光軸方向後側)には-Zを付して説明する。
【0022】
(振れ補正機能付き光学ユニット100の概略構成)
本実施形態の振れ補正機能付き光学ユニット(以下、光学ユニットと省略する。)100は、振れ補正装置101と、この振れ補正装置101内に組み込まれる光学モジュール210とにより構成される。
この光学ユニット100は、携帯端末、ドライブレコーダー、無人ヘリコプター等に搭載される撮像装置等の光学機器(図示略)に組み込まれる薄型カメラであって、光学機器のシャーシ(機器本体)に支持された状態で搭載される。本実施形態の光学ユニット100においては、
図8に示すように、Z軸方向に沿って光軸Lが延在するように光学モジュール(光学素子及び撮像素子)210を振れ補正装置101の可動体20内に収容し、ジャイロスコープ等の振れ検出センサ(図示略)によって振れを検出した結果に基づいて揺動させ、ピッチング及びヨーイングを補正できるようにしている。
【0023】
本実施形態の振れ補正装置101は、固定体10と、光学モジュール210が収容される可動体20と、固定体10に対して可動体20を揺動可能に支持された状態とする揺動支持機構としてのジンバル機構30と、可動体20を揺動させる振れ補正用駆動機構40と、揺動させた可動体20を基準姿勢に復帰させるための姿勢復帰機構50とを備える。また、
図5に示すように、可動体20は、固定体10に対してジンバル機構30を介してZ軸方向と直交する第1軸線R1周りに揺動可能に支持されているとともに、Z軸方向および第1軸線R1方向に直交する第2軸線R2周りに揺動可能に支持されている。そして、光学モジュール210を組み込んだ光学ユニット100おいては、光軸LがZ軸上に配置され、その光軸Lに対して直交する2つの軸線(第1軸線R1および第2軸線R2)周りに可動体20を揺動させることで、ピッチングとヨーイングを補正する。
【0024】
(固定体10の構成)
固定体10は、可動体20の周りを囲む角筒状のケース110と、ケース110の上(Z軸方向の+Z)に固定されたカバー枠120と、ケース110の下端部(Z軸方向の-Z側の端部)に取付けられたストッパ板130と、下部ケース140及び底部カバー150とを有している。なお、本実施形態では、振れ補正装置101においては、
図1及び
図2等に示すように、固定体10はケース110、カバー枠120、ストッパ板130により構成され、下部ケース140及び底部カバー150は、
図8に示すように光学ユニット100に組み立てられる際に取付けられる。
【0025】
ケース110は、四方に配置された側板部111により矩形筒状に形成されている。カバー枠120は、ケース110のZ軸方向の一方側+Zの端部から径方向内側に張り出した矩形枠形状に形成されている。そして、
図1等に示すように、カバー枠120の中央部には円形の開口部121が形成されており、開口部121を通して被写体からの光を内部に導くようになっている。
ストッパ板130は、
図2に示すように、矩形枠状に形成されており、ケース110の下端部の内周部に固定される。
なお、固定体10は、ケース110の中心軸線C1がZ軸上に配置されるものとする。
【0026】
(可動体20の構成)
可動体20は、光学モジュール210を保持するためのホルダフレーム220と、ホルダフレーム220の上(Z軸方向の一方側+Z)に固定される重心位置調整部材としての円筒状のウエイト230とを有している。
ホルダフレーム220は、光学モジュール210を内側に保持するための収容部221aを有する筒状のホルダ保持部221と、このホルダ保持部221の下端部(Z軸方向の-Zの端部)でフランジ状に拡径するベース部222と、ベース部222の外周部上に立設された外壁部223とを有している。ホルダ保持部221の先端部(Z軸方向の一方側+Zの端部)にウエイト230が取り付けられる。
【0027】
また、外壁部223は、ホルダ保持部221よりも径方向外側に、Z軸方向に見て四角筒状に形成され、この外壁部223の外周部に、
図5に示すように、後述する振れ補正用駆動機構40を構成する4つのコイル42をそれぞれ保持するコイル保持部224が設けられている。外壁部223とホルダ保持部221との間には、
図3~
図6に示すように、後述するジンバル機構30の可動枠310が配置される可動枠配置空間240が形成されている。また、コイル保持部224には、コイル保持部224にコイル42が保持された状態で、コイル42の外面(磁石41と対向する面)から更に外方に向けて突出する突出部225が設けられており、
図3等に示すように、その突出部225が磁石41と対向している。したがって、外力によって、可動体20がX軸方向またはY軸方向に変位した際、コイル保持部224の突出部225が磁石41に当接し、コイル42と磁石41とが接触することを防止している。
【0028】
なお、本実施形態では、ホルダフレーム220が合成樹脂により形成されており、ホルダ保持部221、ベース部222、外壁部223、コイル保持部224が一体に形成されている。
この場合、可動体20は、固定体10に対して揺動自在に支持され、後述するように、振れ補正装置101においては固定体10に対してわずかに傾斜して支持されるため、可動体20のホルダフレーム220の中心軸線(筒状をなすホルダ保持部221の中心軸線;本発明の軸線)C2は厳密にはZ軸に一致するわけではないが、説明の都合上、特に断らない場合は、ホルダフレーム220の上下方向をZ軸方向として説明する場合がある。また、
図2では、ホルダフレーム220は、その中心軸線C2がケース110の中心軸線C1上となるように配置している。
【0029】
振れ補正用駆動機構40を構成するコイル42は、給電用のフレキシブル配線基板71に接続されている。このフレキシブル配線基板71には、その基端部にホルダフレーム220のZ軸方向の他方側-Zに配置される矩形枠状の枠状基板部711が設けられており(
図3参照)、この枠状基板部711に振れ補正用駆動機構40の各コイル42の巻き線が接続されている。
一方、可動体20のホルダフレーム220に保持される光学モジュール210には、
図7に示すように、光学素子であるレンズ212や撮像素子(図示略)等を保持するモジュールホルダ213と、撮像素子等に接続されたフレキシブル配線基板(本発明の第2フレキシブル配線基板)72とを有しており、このモジュールホルダ213に一体に保持された状態でホルダフレーム220の内側の収容部221aに保持される。この場合、フレキシブル配線基板72は、振れ補正用駆動機構40のコイル42に接続されているフレキシブル配線基板71と同じ向き(実施形態ではY軸方向)に引き出される(
図8参照)。
本実施形態において、可動体20は、振れ補正装置101においては光学モジュール210を有しない、ホルダフレーム220、コイル42、ウエイト230により構成され、光学ユニット100においては、これらに加えて光学モジュール210が備えられる。
【0030】
(振れ補正用駆動機構40の構成)
振れ補正用駆動機構40は、
図5等に示すように、板状の磁石41と、磁石41の磁界内で電磁力を作用させるコイル42とを利用した磁気駆動機構である。本実施形態では、磁石41とコイル42との組み合わせが、可動体20(ホルダフレーム220)の周方向に90°ずつ間隔をおいて4組設けられる。また、各磁石41はケース110に保持され、各コイル42はホルダフレーム220に保持されており、本実施形態では、ケース110とホルダフレーム220との間に振れ補正用駆動機構40が構成されている。
【0031】
磁石41は、ケース110の周方向に90°ずつ間隔をおいて配置された4つの各側板部111の内面にそれぞれ保持されている。各側板部111はX軸方向の一方側+X、他方側-X、Y軸方向の一方側+X、他方側-Yにそれぞれ配置されている。このため、ケース110とホルダフレーム220との間では、X軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側-X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側-Yのいずれにおいても、磁石41とコイル42とが対向している。
【0032】
本実施形態において、4つの磁石41は、外面側及び内面側が異なる極に着磁されている。また、磁石41は、Z軸方向に2つに分離して着磁されており、コイル42側(内面側)に位置する磁極411、412がZ軸方向で異なるように着磁されている(
図2及び
図3参照)。したがって、両磁極411、412を分離する着磁分極線413は、Z軸と直交する方向と平行に配置されている。X軸方向の一方側+X及びX軸方向の他方側-Xにそれぞれ配置されている2つの磁石41は、着磁分極線413がY軸方向に沿って配置され、Y軸方向の一方側+Y及びY軸方向の他方側-Yに配置されている2つの磁石41は、着磁分極線413がX軸方向に沿って配置される。
なお、4つの磁石41は、外面側および内面側に対する着磁パターンが同一である。このため、周方向で隣り合う磁石41同士が吸着し合うことがないので、組み立て等が容易である。また、ケース110は磁性材料から構成されており、磁石41に対するヨークとして機能する。
【0033】
コイル42は、磁心(コア)を有しない空芯コイルであり、前述したように、ホルダフレーム220に保持されている。また、コイル42は、それぞれホルダフレーム220のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側-X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側-Yに保持されている。このうち、ホルダフレーム220のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側-Xに配置される両コイル42は、巻き線によってX軸方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。また、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側-Yに配置される両コイル42は、巻き線によってY軸方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。したがって、いずれのコイル42もZ軸方向に直交する方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。また、これら4つのコイル42は、同じ平面形状、同じ厚さ(高さ)寸法に形成される。
【0034】
4つのコイル42のうち、X軸方向をコイルの軸心方向とする2つのコイル42は、Y軸方向に延びる矩形状に形成される。また、Y軸方向をコイルの軸心方向とする2つのコイル42は、X軸方向に延びる矩形状に形成される。そして、いずれのコイル42も、上下に配置される長辺部が、各磁石41の磁極411,412に対峙する有効辺421,422として利用される。
また、可動体20は振れ補正のために揺動するが、このコイル42の両有効辺421,422が、対向する磁石41の着磁分極線413と平行で、着磁分極線413から上下に等しい距離に配置される状態が、可動体20の基準姿勢となる。
なお、
図5及び
図8において符号350は振れ補正用駆動機構40の作動を検出するホール素子等のセンサを示している。センサ350は、フレキシブル配線基板71に接続され、その検出結果に基づき振れ補正用駆動機構40のフィードバック制御がなされる。
【0035】
(ジンバル機構30の構成)
本実施形態の振れ補正装置101では、ピッチング方向およびヨーイング方向の振れを補正するため、可動体20をZ軸方向(光学モジュール210が組み込まれると光軸L方向)に交差する第1軸線R1周りに揺動可能に支持するとともに、Z軸方向および第1軸線R1に交差する第2軸線R2周りに揺動可能に支持する。このため、固定体10と可動体20との間には、ジンバル機構(揺動支持機構)30が構成されている。
【0036】
本実施形態では、ジンバル機構30が矩形の可動枠310を有しており、可動枠310は、ホルダフレーム220の可動枠配置空間240内に配置され、固定体10のカバー枠120の下面(Z軸方向の他方側-Zの面)と可動体20のホルダフレーム220との間に配置されている。
可動枠310はバネ性を有する金属材料等で構成されており、
図2に示すように、周方向に90°間隔をおいて配置された4つの角部311と、各角部311を連結する連結部312とを有する矩形形状に形成されている。そして、
図5に示すように、可動枠310の4つの角部311の内側にはそれぞれ球体320が固定されている。また、各連結部312は、各々の延在方向およびZ軸方向に対して直交する方向に屈曲した形状を有している。したがって、可動枠310は、外部から衝撃が加わった際に、衝撃を吸収可能なバネ性を有している。
【0037】
一方、カバー枠120の下面(-Z側の面)には、Z軸周りの4つの角部のうち、第1軸線R1が延在する方向の対角に位置する2箇所の角部に、Z軸方向の他方側-Zに向けて突出する突出部122が設けられ、これら突出部122の径方向外方に向けて溝部123がそれぞれ形成されている。そして、
図5に示すように、各溝部123には、接点用ばね330がそれぞれ取り付けられており、これら接点用ばね330に可動枠310の4つの球体320のうち、第1軸線R1が延在する方向の対角に位置する2つの球体320がそれぞれ支持されている。
また、ホルダフレーム220には、第2軸線R2が延在する方向の対角に位置する2箇所の角部に、ホルダ保持部221から径方向外方に向けて突出する突出部226が一体に形成され、両突出部226の先端に径方向外方に向けて開口する溝部227がそれぞれ形成されている。各溝部227には、接点用ばね330がそれぞれ取り付けられ、これら接点用ばね330に可動枠310の4つの球体320のうち、第2軸線R2が延在する方向の対角に位置する2つの球体320がそれぞれ支持されている。
【0038】
具体的には、各接点用ばね330は、弾性変形可能なステンレス鋼等の金属からなる板材をプレス成型することにより縦断面U字状となるように屈曲形成されており、可動枠310に設けられた球体320との接触点に径方向内側から外側に向けて弾性的な荷重(弾性力)を作用させる。つまり、可動枠310の4箇所の角部311に設けられた各球体320は、固定体10のカバー枠120又は可動体20のホルダフレーム220に取り付けられた各接点用ばね330に、径方向外側から弾性的に接触させられ、その接触部で摺動できるようになっている。
【0039】
この場合、カバー枠120に固定された接点用ばね330は、第1軸線R1方向で対をなすように対向し、可動枠310の球体320との間で第1揺動支点を構成する。一方、ホルダフレーム220に固定された接点用ばね330は、第2軸線R2方向で対をなすように対向し、可動枠310の球体320との間で第2揺動支点を構成する。したがって、可動体20の揺動中心位置(揺動支点)35は、これらの第1揺動支点と第2揺動支点とが組み合わされた第1軸線R1と第2軸線R2との交点に配置される。
【0040】
このように、接点用ばね330に可動枠310の各球体320が摺動可能に接触していることにより、固定体10のカバー枠120に対して、可動体20のホルダフレーム220が揺動可能に支持されている。また、このように構成したジンバル機構30において、各接点用ばね330の付勢力は等しく設定される。なお、本実施形態では、振れ補正用駆動機構40に磁気駆動機構が用いられていることから、ジンバル機構30に用いた可動枠310、接点用ばね330はいずれも、非磁性材料からなる。
また、本実施形態において、可動枠310は、コイル保持部224と同じ高さ位置(Z軸方向における同一の位置)に配置されている。
このため、Z軸方向に対して直交する方向から見たとき、ジンバル機構30が振れ補正用駆動機構40のコイル42のZ軸方向の中心位置と重なる位置に配置される。
【0041】
(姿勢復帰機構50の構成)
ホルダフレーム220の各コイル保持部224の径方向内方位置には棒状の磁性部材51が設けられている。ホルダフレーム220には、Z軸方向に沿って凹溝52が形成されている。具体的には、
図4に示すように、ホルダフレーム220の各コイル保持部224の背面側で、かつコイル保持部224に保持されているコイル42の有効辺(長辺部)421,422の長さ方向の中間位置における径方向内側に1個ずつ凹溝52がZ軸方向に沿って形成されている。したがって、Z軸を挟んで、X軸方向の一方側+Zと他方側-Z、及びY軸方向の一方側+Yと他方側-Yの合計4箇所に凹溝52が形成される。
【0042】
そして、これら凹溝52内に棒状の磁性部材51がそれぞれ固定されている。磁性部材51は、実施形態では、同じ長さの円柱の棒状に形成されている。また、これら磁性部材51を収容する凹溝52は、その内面がZ軸に直交する断面が凹円弧状(凹面)に形成され、径方向内方に向けて開口している。また、その開口幅は、径方向内方に向けて漸次拡大するように形成されており、その凹溝52の最深部の内面に磁性部材51の外周面が当接している。この場合、凹溝52は磁性部材51の外周円弧面(凸面)の半径よりもわずかに大きい曲率半径に形成されている。
また、凹溝52はZ軸方向の一方側+Zには開放状態とされているが、他方側-Zにはホルダフレーム220のベース部222によって閉塞されており、磁性部材51の端面が当接される受け部53が形成されている。
【0043】
磁性部材51は、振れ補正用駆動機構40の磁石41との間で吸引力が作用することにより、凹溝52の内面に押し付けられる。したがって、磁性部材51の長さ方向の中心のZ軸方向位置が、振れ補正用駆動機構40における磁石41の着磁分極線413のZ軸方向の位置と同じに設定すれば、無励磁時に、可動体20の軸線C1がZ軸に一致した姿勢(基準姿勢)とすることができる。
しかし、可動体20の振れ補正用駆動機構40にはフレキシブル配線基板71が引き出されており、また、後述する光学モジュール210にもフレキシブル配線基板72が引き出されており、これらフレキシブル配線基板71,72を固定体10に保持する際に、フレキシブル配線基板71,72の弾性力が可動体20を傾ける方向に作用する。このため、このフレキシブル配線基板71,72を固定する前の状態で、可動体20が基準姿勢に配置されていたとしても、フレキシブル配線基板71,72を固定したときに基準姿勢からずれてしまう。そこで、このフレキシブル配線基板71,72の弾性力が作用したときに、可動体20が基準姿勢に配置されるように、磁性部材51のZ軸方向の位置が調整されている。
【0044】
すなわち、Z軸を挟んでフレキシブル配線基板71,72の引き出し方向(実施形態ではY軸方向)と直交する方向、つまりX軸方向には、フレキシブル配線基板71,72の固定の際に揺動しないので、X軸方向の一方側+Xと他方側-Xに配置される2個の磁性部材51は、対応する振れ補正用駆動機構40の磁石41の着磁分極線413と磁性部材51のZ軸方向の中心位置とがほぼ同じとなるように配置されている。具体的には、これら2個の磁性部材51の端面を当接するホルダフレーム220の凹溝52の受け部53の高さ位置(Z軸方向の位置)が同じに設定されている。
【0045】
一方、Z軸を挟んでフレキシブル配線基板71,72の引き出し方向(Y軸方向)の一方側+Yと他方側-Yに配置される2個の磁性部材51については、ホルダフレーム220の凹溝52の受け部53の高さ位置(Z軸方向の位置)を異ならせている。
図8は可動体20のホルダフレーム220に光学モジュール210を保持し、フレキシブル配線基板71,72を固定体10に固定した光学ユニット100の断面図であるが、この
図8において、Y軸方向の一方側+Yに配置される磁性部材51は、反対側(Y軸方向の-Y)に配置される磁性部材51よりもZ軸方向の位置が若干-Z側にずれて配置されている。
図9に拡大して示したように、この磁性部材51は、対応する振れ補正用駆動機構40の磁石41の着磁分極線413のZ軸方向の位置Z1に対して、長さ方向の中間でのZ軸方向の位置Z2が下方-Z側にずれて配置されている。したがって、この
図9に示す状態では、磁性部材51は矢印Aで示すように磁石41の吸引力によりZ軸方向の一方側+Zに向けて付勢される。
【0046】
このため、ホルダフレーム220内に光学モジュール210がなく、フレキシブル配線基板71,72が固定体10に固定される前の状態、つまり振れ補正装置101の状態においては、
図3に示すように、Y軸方向の一方側+Yの部分が、反対側(Y軸方向の-Y)の部分よりもZ軸方向の+Z側に位置するように、ホルダフレーム220の中心軸線C2が固定体10の中心軸線C1に対して傾斜して配置される。この
図3に示す状態で、Y軸方向の一方側+Yに配置される磁性部材51と、反対側(Y軸方向の-Y)に配置される磁性部材51とは、これらに対応する振れ補正用駆動機構40の磁石41との間の吸引力が釣り合った状態となっている。
【0047】
そして、光学モジュール210をホルダフレーム220に保持し、フレキシブル配線基板71,72を固定体10に固定すると、このフレキシブル配線基板71,72の弾性力によって可動体20が
図3の時計周り(
図9の矢印Bに示す方向)に回動させられ、
図8に示すように可動体20が基準姿勢に配置される。
言い換えれば、光学モジュール210を有しない振れ補正装置101においては、光学モジュール210をホルダフレーム220に保持し、フレキシブル配線基板71,72を固定体10に固定する際に可動体20が回動させられる方向とは逆方向の吸引力が磁性部材51と磁石41との間に作用するように(
図9の矢印Bで示す方向の弾性力に対して矢印Aで示す方向の吸引力が作用するように)、磁性部材51のZ軸方向の中心位置と磁石41の着磁分極線413との位置関係が設定される。その吸引力はフレキシブル配線基板71,72の弾性力により可動体20が回動させられたときに、吸引力と弾性力とが釣り合った状態で可動体20を基準姿勢に配置できる大きさである。
【0048】
そして、
図8に示す基準姿勢において、振れ補正用駆動機構40により振れ補正がなされた後に、振れ補正用駆動機構40のコイル42への通電が停止されると、各磁性部材51と対応する振れ補正用駆動機構40の磁石41との間の吸引力によって、可動体20は基準姿勢に復帰させられる。
すなわち、これら振れ補正用駆動機構40の磁石41と、磁性部材51とにより、これらの間で吸引力を生じさせて、可動体20を基準姿勢に復帰させる姿勢復帰機構50が構成される。そして、凹溝52が磁性部材51と磁石41との距離を設定する径方向位置決め部であり、受け部53が磁性部材51のZ軸方向の位置を決める軸線方向位置決め部である。
【0049】
なお、磁性部材51は凹溝52内に収容された状態で接着剤によって固定される。凹溝52の上端部(Z軸方向の一方側+Zの端部)には、接着剤を溜める接着剤溜め部54が設けられている。この接着剤溜め部54は、Z軸方向の+Zに向けた凹状に形成されており、磁性部材51は、この接着剤溜め部54に端部が突出した状態に配置される。したがって、この接着剤溜め部54に接着剤を充満させることにより、磁性部材51をホルダフレーム220に固定することができる。また、例えば紫外線硬化型接着剤を用いる場合は、接着剤溜め部54により紫外線を照射可能な領域を広く確保できるので、接着剤を確実に硬化させ、磁性部材を固定することができる。接着剤としては、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤等を用いることができ、これらを併用してもよい。
【0050】
<振れ補正機能付き光学ユニットの製造方法>
以上のように構成した振れ補正装置101を用いて振れ補正機能付き光学ユニット100を製造するには、まず
図3に示す振れ補正装置101を組み立てる。この状態では、前述したように、可動体20は、固定体10のケース110の中心軸線C1に対して傾斜した状態である。
そして、そのホルダフレーム220におけるホルダ保持部221の収容部221aに光学モジュール210を挿入状態に保持する。この保持状態で、光学モジュール210の光軸Lは、収容部221aの中心軸線C2と一致する。
この光学モジュール210を保持した後、ケース110に下部ケース140を取り付け、コイル42のフレキシブル配線基板71と光学モジュール210のフレキシブル配線基板72とを
図8に示すように湾曲させた状態で下部ケース140と底部カバー150との間に挟持し固定する。このとき、フレキシブル配線基板71,72が湾曲させられた状態で固定されることにより、その弾性力が可動体20に作用し、先に述べたように、傾斜状態であった可動体20は基準姿勢に配置される。
【0051】
この基準姿勢においては、4組設けられている振れ補正用駆動機構40のコイル42と磁石41とは、いずれの組においても、コイル42の両有効辺421,422が磁石41の着磁分極線413と平行で、着磁分極線413から上下に等しい距離に配置される。また、ジンバル機構30の可動枠310及び各球体320が、Z軸方向において磁石41の着磁分極線413と同じ高さ位置に設けられる。
なお、組み立て完了後において可動体20がわずかに基準姿勢からずれていた場合には、振れ補正用駆動機構40のコイル42にわずかな電流を流して調整することが行われるが、その場合でも、磁性部材51と磁石41との吸引力によってほぼ基準姿勢に位置決めされているので、コイル42への電流(バイアス電流)はわずかで済む。
振れ補正用駆動機構40のフレキシブル配線基板71とホルダフレーム220に組み込まれた光学モジュール210のフレキシブル配線基板72とは、光学機器の本体側に設けられた上位の制御部等に電気的に接続される。
【0052】
この製造方法において、磁性部材51は、磁石41によって斜め下側(径方向外側かつ軸方向下側)から吸引されることにより、凹溝52の内面と受け部53の上面とに当接して位置決めされる。
この場合、実施形態では円柱状の磁性部材51に対して凹溝52も凹円弧状に形成され、円弧面どうしが当接するので、磁性部材51は凹溝52の内面で転がるように当接し、X軸方向又はY軸方向には凹溝52の最深部に点で接触することになり、磁性部材51と磁石41とのX軸方向又はY軸方向の距離が正確に設定される。凹溝52は断面凹円弧状が好ましいが、断面V字状としてもよい。断面V字状の凹溝とする場合は、磁性部材51が左右にずれにくくなるので、特に周方向の位置決め精度を高めることができる。
一方、磁性部材51のZ軸方向の位置は、ホルダフレーム220の受け部53によって設定され、その位置がフレキシブル配線基板71,72の引き出し方向において異なるように設定したので、対応する振れ補正用駆動機構40の磁石41との間でフレキシブル配線基板71,72の弾性力を押し戻す方向に吸引力を作用させることができ、可動体20を基準姿勢に正確に位置決めすることができる。
【0053】
なお、振れ補正装置101に磁性部材51を取付けるときは、凹溝52に磁性部材51を配置すれば、対応する振れ補正用駆動機構40の磁石41からの吸引力が作用して、磁性部材51を凹溝52の内面に押圧した状態に接触させることができ、その位置決め作業が容易である。また、凹溝52内に配置した後は、接着剤溜め部54に接着剤を注入すれば、磁性部材51を凹溝52内に位置決め状態に固定することができる。
したがって、ホルダフレーム220の凹溝52に磁性部材51を収容して接着剤で固定するという簡単な作業により、可動体20を位置決めすることができ、作業性がよい。凹溝52に磁性部材51を収容する際も、孔への圧入等とは異なり、特に大きな力を必要としないので、樹脂製のホルダフレーム220を変形させることはない。したがって、ベース部222の厚さも小さくて済み、小型化を損なうことはない。
【0054】
なお、本発明においては、磁性部材51は必ずしも円柱状でなくてもよい。例えば、凹溝と接する部分のみ断面円弧状となるように形成してもよく、角柱状等とすることも可能である。磁性部材としては、軸線C2に直交する方向に凸となる凸面を有していればよい。また、凹溝についても、磁性部材を角柱状としたときは、角柱の角部の二面が当接するV溝状としてもよい。この凹溝としては、径方向位置決め部は、磁性部材の凸面を面状あるいはZ軸に沿う線状に接触させることができる凹面を有していればよい。
さらに、磁性部材51を球面状とすることも可能であり、凹溝を凹球面状にしてもよい。磁性部材及び凹溝を球面状に形成した場合、凹溝の球面は、径方向位置決め部及び軸線方向位置決め部の両方の機能を有することになる。したがって、凹溝の端部に形成される受け部も平面だけでなく、凹面に形成される場合もあり、磁性部材の端部の形状に合わせて形成される。
【0055】
ジンバル機構30においても、可動枠310に固定した球体320を接点用ばね330に接触させる構造としたが、必ずしも球体320でなくてもよく、棒状部材等の先端面を球状に形成してなる球状先端面を接点用ばね330に接触させる構造としてもよい。
また、振れ補正用駆動機構40の磁石41を固定体10のケース110に、コイル42を可動体20のホルダフレーム220に設けたが、逆に、磁石41を可動体20のホルダフレーム220に、コイル42を固定体10のケース110に設けてもよい。その場合、磁性部材51及び凹溝52は固定体10のケース110に設けられる。つまり、磁性部材51は、振れ補正用駆動機構40の磁石41が設けられている部材とは反対側の部材で、コイル42が設けられている部材に設けられる。
【符号の説明】
【0056】
C1…ケースの中心軸線、C2…ホルダフレームの中心軸線(収容部の軸線)、R1…第1軸線、R2…第2軸線、10…固定体、20…可動体、30…ジンバル機構(揺動支持機構)、35…揺動中心位置、40…振れ補正用駆動機構、41…磁石、42…コイル、50…姿勢復帰機構、51…磁性部材、52…凹溝、53…受け部、54…接着剤溜め部、71,72…フレキシブル配線基板、100…補正機能付き光学ユニット、101…振れ補正装置、110…ケース、111…側板部、120…カバー枠、121…開口部、130…下部ケース、140…底部カバー、210…光学モジュール、212…光学素子、213…モジュールホルダ、220…ホルダフレーム、221…ホルダ保持部、222…ベース部、223…外壁部、224…コイル保持部、225…突出部、230…ウエイト、240…可動枠配置空間、310…可動枠、311…角部、312…連結部、320…球体、330…接点用ばね、411,412…磁極、413…着磁分極線、421,422…有効辺。