(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20221019BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20221019BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/536
(21)【出願番号】P 2018201696
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】麦間 勲
(72)【発明者】
【氏名】中村 友美
(72)【発明者】
【氏名】山中 哲
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-231216(JP,A)
【文献】特開2001-160388(JP,A)
【文献】特開2006-156135(JP,A)
【文献】特開2018-055812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有している外装缶と、
前記外装缶の開口を封止している封口体であって、前記開口に配設された蓋板及び前記蓋板に取り付けられている一方極の端子を含んでいる封口体と、
一方極及び他方極がセパレータを介して重ね合わされて形成された電極群であって、前記外装缶の内部に電解液とともに収容されている電極群と、
前記電極群の前記一方極に接合されている集電体と、
前記集電体と前記封口体とを電気的に接続するために、前記封口体と前記集電体との間に介在し、前記封口体及び前記集電体に接合されている集電リードと、を備えており、
前記集電リードは、前記封口体の側に位置し、前記封口体と溶接される頂壁と、前記頂壁とは反対側である前記集電体の側に位置し、前記集電体と溶接される底壁と、前記頂壁と前記底壁との間に延びており、互いに対向している一対の側壁とを有しており、
前記底壁は、当該底壁の中心位置に想定される底壁中心と、前記集電体との溶接部が形成される底壁溶接予定部であって、前記底壁中心を囲むように配置された3個の底壁溶接予定部と、を含んで
おり、
前記集電体の中心から前記集電体の外縁までの長さをAとし、前記集電リードの前記底壁中心をCbとし、前記底壁溶接予定部のうちの1個目である第1底壁溶接予定部における中心をC1とし、前記底壁溶接予定部のうちの2個目である第2底壁溶接予定部における中心をC2とし、前記底壁溶接予定部のうちの3個目である第3底壁溶接予定部における中心をC3とし、前記Cbから前記C1までの長さをL1とし、前記Cbから前記C2までの長さをL2とし、前記Cbから前記C3までの長さをL3とした場合に、L1/A×100=50±5%、L2/A×100=50±5%、L3/A×100=50±5%の関係を満たしている、二次電池。
【請求項2】
前記L1、前記L2及び前記L3は、L1=L2=L3の関係を満たしている、請求項
1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記C1と前記Cbとを通る仮想線を仮想線Hとし、前記C2と前記C3とを通る仮想線を仮想線Vとし、前記仮想線Hと前記仮想線Vとが交差する点を中間点Pmとし、前記C2から前記Pmまでの長さをLy2とし、前記C3から前記Pmまでの長さをLy3とした場合に、前記Ly2と前記Ly3とは等しい値Lyであり、Ly/A×100≧25%の関係を満たしている、請求項
1又は
2に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関し、詳しくは、集電リード及び集電体を含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
充電が可能な二次電池においては、用途が拡大し、高率で充放電が行えるタイプの電池が開発されている。このような電池としては、例えば、以下に示すような円筒形アルカリ二次電池が知られている。
【0003】
当該円筒形アルカリ二次電池は、電極群が有底円筒形状の外装缶にアルカリ電解液とともに収容され、外装缶の開口部が正極端子を含む封口体により密閉されることにより形成される。
【0004】
上記した電極群は、セパレータを間に挟んだ状態で重ね合わされた正極及び負極が渦巻き状に巻回されて形成され、全体としてほぼ円柱形状をなしている。ここで、正極及び負極は、巻回作業に際し、互いに、電極群の軸線に沿う方向に僅かにずれた状態となるように配置されるとともに、これら正極及び負極の間には、所定サイズのセパレータが所定位置に配置される。そして、この状態で、正極、セパレータ及び負極は巻回される。その結果、電極群の一端面側から正極の端縁部が渦巻き状に突出し、電極群の他端面側から負極の端縁部が渦巻き状に突出する。
【0005】
突出した正極端縁部には、金属製の板材で形成された正極集電体が溶接され、突出した負極端縁部には、金属製の板材で形成された負極集電体が溶接される。これにより、正極は正極集電体と広い範囲で電気的に接続され、負極は負極集電体と広い範囲で電気的に接続されるので、集電効率が高められる。その結果、当該電池においては高率での充放電が可能となる。
【0006】
この円筒形アルカリ二次電池の組み立ての手順としては、例えば、まず、外装缶内に電極群を挿入し、外装缶の底壁内面と負極集電体とが溶接される。これにより、負極端子を兼ねる外装缶と負極とが電気的に接続された状態となる。次いで、正極集電体の所定位置に、金属製の薄板で形成されている正極リボンの一端が溶接される。更に、正極リボンの他端が封口体の所定位置に溶接される。これにより、正極端子と正極とが電気的に接続された状態となる。その後、封口体が外装缶の上端開口部に絶縁ガスケットを介在させた状態で装着され、外装缶の上端開口部がかしめ加工されることにより、当該外装缶が密閉される。これにより円筒形アルカリ二次電池が形成される。
【0007】
上記したような正極リボンは、封口体への溶接をし易くするために、比較的長めのものが用いられる。また、封口体が外装缶の上端開口部に装着されたとき、正極リボンは、外装缶内で封口体と電極群との間に屈曲するようにして収容される。このため、正極リボンは、屈曲し易いように比較的薄いものが用いられる。
【0008】
ところで、近年、アルカリ二次電池には、より高性能化が望まれている。例えば、大電流を効率良く出力できる性能や急速充電をすることができる性能を具備することが望まれている。つまり、高率充放電特性をより向上させることが望まれている。
【0009】
高率充放電特性を向上させるためには、電池の内部抵抗をなるべく低くする必要がある。しかしながら、上記したような薄くて長い帯状の正極リボンを用いた場合、この正極リボンの比抵抗が高く、正極リボンが電池の内部抵抗を高める原因となっている。
【0010】
そこで、電池の内部抵抗をより低くし、高率充放電特性に優れる電池を得るために、従来よりも通電経路を短縮する検討が種々行われている。このような通電経路を短縮するための対策がとられた電池としては、例えば、特許文献1に示されるような電池が知られている。
【0011】
特許文献1に代表される電池においては、従来の正極リボンに代えて集電リードが用いられる。この集電リードは、正極リボンよりも厚い鋼板にニッケルめっきが施されたニッケルめっき鋼板を筒状となるように折り曲げ成型することにより形成されたものであり、封口体に溶接される頂部と、正極集電体に溶接される底部を備えている。
【0012】
このように、集電リードが封口体と正極集電体との間に介在し、これらを接続することにより、封口体と正極集電体とは、従来の正極リボンよりも厚いニッケルめっき鋼板により最短距離でつながるので、従来よりも通電経路を太く短くできる。これにより、電池の内部抵抗を低減することができる。その結果、特許文献1の電池は、従来の電池に比べて高率充放電特性に優れている。
【0013】
特許文献1の電池においては、正極集電体と集電リードとの間を溶接する場合、プロジェクション溶接が行われる。このプロジェクション溶接においては、プロジェクションと、このプロジェクションに当接する部分との間で溶接電流が集中して流れ、斯かる部分が溶融して溶接部が形成される。斯かるプロジェクションは、特許文献1に記載されているように、通常は、4箇形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、正極集電体の板面は、僅かな歪みを有している場合がある。また、正極集電体が集電リードに対し、僅かに傾いている場合がある。このように歪みや傾きがある場合、集電体と集電リードとは安定的に接触せず、溶接部が形成されるべき4箇所のうち、いくつかの箇所で溶接不良が起こることがある。このように溶接不良が起こると電池の生産において歩留まりが低下する。
【0016】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、優れた高率充放電特性を維持しつつ、生産における歩留まりを向上させることができる二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明によれば、開口を有している外装缶と、前記外装缶の開口を封止している封口体であって、前記開口に配設された蓋板及び前記蓋板に取り付けられている一方極の端子を含んでいる封口体と、一方極及び他方極がセパレータを介して重ね合わされて形成された電極群であって、前記外装缶の内部に電解液とともに収容されている電極群と、前記電極群の前記一方極に接合されている集電体と、前記集電体と前記封口体とを電気的に接続するために、前記封口体と前記集電体との間に介在し、前記封口体及び前記集電体に接合されている集電リードと、を備えており、前記集電リードは、前記封口体の側に位置し、前記封口体と溶接される頂壁と、前記頂壁とは反対側である前記集電体の側に位置し、前記集電体と溶接される底壁と、前記頂壁と前記底壁との間に延びており、互いに対向している一対の側壁とを有しており、前記底壁は、当該底壁の中心位置に想定される底壁中心と、前記集電体との溶接部が形成される底壁溶接予定部であって、前記底壁中心を囲むように配置された3個の底壁溶接予定部と、を含んでいる二次電池が提供される。
【0018】
また、前記集電体の中心から前記集電体の外縁までの長さをAとし、前記集電リードの前記底壁中心をCbとし、前記底壁溶接予定部のうちの1個目である第1底壁溶接予定部における中心をC1とし、前記底壁溶接予定部のうちの2個目である第2底壁溶接予定部における中心をC2とし、前記底壁溶接予定部のうちの3個目である第3底壁溶接予定部における中心をC3とし、前記Cbから前記C1までの長さをL1とし、前記Cbから前記C2までの長さをL2とし、前記Cbから前記C3までの長さをL3とした場合に、L1/A×100=50±5%、L2/A×100=50±5%、L3/A×100=50±5%の関係を満たしている構成とすることが好ましい。
【0019】
また、前記L1、前記L2及び前記L3は、L1=L2=L3の関係を満たしている構成とすることが好ましい。
【0020】
また、前記C1と前記Cbとを通る仮想線を仮想線Hとし、前記C2と前記C3とを通る仮想線を仮想線Vとし、前記仮想線Hと前記仮想線Vとが交差する点を中間点Pmとし、前記C2から前記Pmまでの長さをLy2とし、前記C3から前記Pmまでの長さをLy3とした場合に、前記Ly2と前記Ly3とは等しい値Lyであり、Ly/A×100≧25%の関係を満たしている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、優れた高率充放電特性を維持しつつ、生産における歩留まりを向上させることができる二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る円筒形のニッケル水素二次電池を示した部分断面図である。
【
図4】集電リードを底面の側から見た状態を示した平面図である。
【
図5】比較例の集電リードを底壁側から見た状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る集電リードを含むアルカリ二次電池について、図面を参照して説明する。
【0024】
本発明が適用される一実施形態の二次電池として、
図1に示す4/3FAサイズの円筒形のニッケル水素二次電池(以下、電池という)1を例に説明する。
【0025】
電池1は、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶2を備え、外装缶2は導電性を有し、その底壁は負極端子として機能する。外装缶2の中には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)とともに電極群4が収容されている。
【0026】
図1に示すように、外装缶2の開口3は封口体14によって閉塞されている。封口体14は、導電性を有する円板形状の蓋板16、この蓋板16の外面16aの上に配設された弁体20及び正極端子22を含んでいる。蓋板16の外周部には、この蓋板16を囲むようにリング形状の絶縁ガスケット18が配置され、絶縁ガスケット18及び蓋板16は外装缶2の開口縁17をかしめ加工することにより外装缶2の開口縁17に固定されている。即ち、蓋板16及び絶縁ガスケット18は互いに協働して外装缶2の開口3を封止している。ここで、蓋板16は、中央に中央貫通孔19を有し、そして、蓋板16の外面16aの上には、中央貫通孔19を閉塞するようにゴム製の弁体20が配置されている。更に、蓋板16の外面16aの上には弁体20を覆うようにフランジ付きの円筒形状の正極端子22が電気的に接続されている。この正極端子22は弁体20を蓋板16に向けて押圧している。また、この正極端子22は、側面にガス抜き孔23を有している。
【0027】
通常時、中央貫通孔19は弁体20によって気密に閉じられている。一方、外装缶2の内部にガスが発生し、ガスの圧力が高まれば、弁体20はガスの圧力によって圧縮され、中央貫通孔19が開かれる。その結果、外装缶2内から中央貫通孔19及び正極端子22のガス抜き孔23を介して外部にガスが放出される。つまり、中央貫通孔19、弁体20及び正極端子22のガス抜き孔23は電池1のための安全弁を形成している。
【0028】
電極群4は、それぞれ帯状の正極6、負極8及びセパレータ10を含み、これらは正極6と負極8との間にセパレータ10が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回されている。即ち、セパレータ10を介して正極6及び負極8が互いに重ね合わされている。このような電極群4は、全体としては円柱状をなしている。
【0029】
この電極群4においては、一方の端面から正極6の端縁部が渦巻状に露出しており、他方の端面から負極8の端縁部が渦巻状に露出している。ここで、露出している正極6の端縁部を正極接続端縁部32とし、露出している負極8の端縁部を負極接続端縁部(図示せず)とする。これら露出している正極接続端縁部32及び負極接続端縁部には、後述する正極集電体28及び負極集電体(図示せず)がそれぞれ溶接される。
【0030】
負極8は、帯状をなす導電性の負極芯体を有し、この負極芯体に負極合剤が保持されている。
【0031】
負極芯体は、帯状の金属材であり、その厚さ方向に貫通する貫通孔(図示せず)が多数設けられている。このような負極芯体としては、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。
【0032】
負極合剤は、負極芯体の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体の両面上にも層状にして保持されている。
【0033】
負極合剤は、水素吸蔵合金の粒子、導電材、結着剤等を含む。ここで、水素吸蔵合金は、負極活物質である水素を吸蔵及び放出可能な合金であり、ニッケル水素二次電池に一般的に用いられている水素吸蔵合金が好適に用いられる。上記した結着剤は水素吸蔵合金の粒子及び導電材を互いに結着させると同時に負極合剤を負極芯体に結着させる働きをする。ここで、導電材及び結着剤としては、ニッケル水素二次電池に一般的に用いられているものが好適に用いられる。
【0034】
負極8は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末、導電材、結着剤及び水を混練して負極合剤のペーストを調製する。得られた負極合剤のペーストは負極芯体に塗着され、乾燥させられる。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等を含む負極合剤が付着した負極芯体にはロール圧延及び裁断が施される。これにより、負極の中間製品が得られる。この負極の中間製品は、全体として長方形状をなしている。そして、この負極の中間製品における負極接続端縁部となるべき所定の端縁部については、負極合剤の除去が行われる。これにより、所定の端縁部は、負極芯体がむき出しの状態とされた負極接続端縁部となる。このようにして、負極接続端縁部を有する負極8が得られる。ここで、負極合剤の除去方法としては、特に限定はされないが、例えば、超音波振動を与えることにより除去することが好適に行われる。なお、負極接続端縁部以外の領域には、負極合剤が保持されたままの状態である。
【0035】
次に、正極6について説明する。
正極6は、導電性の正極基材と、この正極基材に保持された正極合剤とを含む。詳しくは、正極基材は、多数の空孔を有する多孔質構造をなしており、正極合剤は、前記した空孔内及び正極基材の表面に保持されている。
正極基材としては、例えば、発泡ニッケルを用いることができる。
【0036】
正極合剤は、正極活物質粒子としての水酸化ニッケル粒子、導電材としてのコバルト化合物、結着剤等を含んでいる。上記した結着剤は、水酸化ニッケル粒子及び導電材を互いに結着させると同時に水酸化ニッケル粒子及び導電材を正極基材に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、ニッケル水素二次電池に一般的に用いられているものが好適に用いられる。
【0037】
正極6は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、正極活物質粒子(水酸化ニッケル粒子)の集合体である正極活物質粉末、導電材、水及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。得られた正極合剤スラリーは、例えば、発泡ニッケルに充填され、乾燥させられる。その後、水酸化ニッケル粒子等が充填された発泡ニッケルには、ロール圧延及び裁断が施される。これにより、正極の中間製品が得られる。この正極の中間製品は、全体として長方形状をなしている。そして、この正極の中間製品における正極接続端縁部32となるべき所定の端縁部については、正極合剤の除去が行われ、正極基材がむき出しの状態とされる。次いで、正極合剤が除去された端縁部は、正極の中間製品の厚さ方向に圧縮加工され正極接続端縁部32となる。このように圧縮加工されることにより、正極基材は、稠密な状態となるので、この正極接続端縁部32は溶接がし易い状態となる。また、正極接続端縁部32にNiめっき鋼の薄板を抵抗溶接により接続し、更に溶接をし易くする場合もある。このようにして、正極接続端縁部32を有する正極6が得られる。ここで、正極合剤の除去方法としては、特に限定はされないが、例えば、超音波振動を与えることにより除去する方法が好適に用いられる。なお、正極接続端縁部32以外の領域には、正極合剤が充填されたままの状態である。
【0038】
次に、セパレータ10としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、あるいは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。
【0039】
以上のようにして製造された正極6及び負極8は、上記したセパレータ10を介在させた状態で、渦巻き状に巻回され、これにより電極群4が形成される。詳しくは、巻回の際、正極6及び負極8は、互いに、電極群4の軸線方向に沿う方向に僅かにずれた状態となるように配置されるとともに、これら正極6及び負極8の間には、所定サイズのセパレータ10が所定位置に配置され、この状態で巻回作業が行われる。その結果、円柱状の電極群4が得られる。得られた電極群4の態様としては、電極群4の一端側においては、正極6の正極接続端縁部32が、セパレータ10を介して隣り合っている負極8よりも突出した状態となっており、電極群4の他端側においては、負極8の負極接続端縁部が、セパレータ10を介して隣り合っている正極6よりも突出した状態となっている。
【0040】
なお、電極群4は、上記した正極6、負極8及びセパレータ10が、所定の外径寸法を有する巻芯により巻回されて形成され、巻回作業後は、この巻芯が抜き取られるので、電極群4の中央には貫通孔9が形成されている。
【0041】
以上のような電極群4においては、一端側に正極集電体28が接続され、他端側に負極集電体が接続される。
【0042】
まず、負極集電体については、特に限定されるものではなく、例えば、従来から用いられている円板形状の金属板を用いることが好ましい。準備した負極集電体は、電極群4の他端側の負極接続端縁部に溶接される。
【0043】
次に、正極集電体28について説明する。
正極集電体28は、導電性材料で形成された板状体であり、平面視形状は特に限定されるものではなく、円板形状、多角形状等任意の形状のものを採用することができる。また、正極集電体28の大きさは、電極群4の外径寸法よりも小さく、且つ、電極群4の一端側から突出している正極6の正極接続端縁部32をカバーできる大きさに設定される。
【0044】
本実施形態においては、
図2に示すように、平面視形状が円形状の板材が用いられる。詳しくは、正極集電体28は、全体として円形状のNiめっき鋼製の薄板であり、中央に円形の中央貫通孔29を含んでいる。
【0045】
ここで、円形の正極集電体28においては、
図2に示すように、その円の中心を集電体中心Caとし、集電体中心Caから当該円の外縁までの長さ、つまり、当該円の半径を集電体半径Aとする。上記した中央貫通孔29は、その中心が集電体中心Caと一致する位置に形成されている。
【0046】
電池1においては、
図1に示すように、正極集電体28と封口体14との間に集電リード34が介在し、この集電リード34が、電極群4の正極6に接続されている正極集電体28と、正極端子22を有する封口体14とを電気的に接続する。
【0047】
集電リード34は、
図1から明らかなように、封口体14の蓋板16に接続されている第1頂壁50及び第2頂壁52と、正極集電体28に接続されている底壁36と、第1頂壁50と底壁36との間に延びる第1側壁42と、第2頂壁52と底壁36との間に延びる第2側壁44とを有している。
【0048】
この集電リード34について、
図3、4を参照して詳しく説明する。
集電リード34の底壁36は、
図3から明らかなように、長方形状をなしており、中央に円形の底壁貫通孔51が設けられている。
【0049】
底壁36の長方形における短辺に相当する部分に位置付けられる第1短端縁60及び第2短端縁62において、底壁36の板面に対して直交する方向に延びる一対の第1側壁42及び第2側壁44が設けられている。これら第1側壁42及び第2側壁44の側面視形状は長方形である。
【0050】
第1側壁42及び第2側壁44における底壁36の第1短端縁60及び第2短端縁62と繋がっている側とは反対側の第1上端縁64及び第2上端縁66において、底壁36の板面と平行な方向であって、且つ、互いに離れる方向に延びる一対の第1頂壁50及び第2頂壁52が設けられている。これら第1頂壁50及び第2頂壁52の平面視形状は長方形である。
【0051】
ここで、第1頂壁50及び第2頂壁52における封口体14と接合される面である上面68、70には、僅かに突出した円形の頂壁プロジェクション56が複数個設けられている。これらの頂壁プロジェクション56の部分は、抵抗溶接が行われた場合に溶接電流が集中して流れ、溶接部となる溶接予定部である。本実施形態では、第1頂壁50に位置付けられる頂壁プロジェクション56は2個、第2頂壁52に位置付けられる頂壁プロジェクション56は2個とした。なお、頂壁プロジェクション56の数は特に限定されるものではない。
【0052】
集電リード34に関して、正極集電体28と対向する面である底面72の側から見た状態を示した
図4から明らかなように、底壁36は全体として長方形状をなしている。そして、底壁36においては、長方形の対角線(
図4中、仮想線La、Lbで示す。)が交差する点を仮想し、この仮想点を底壁中心Cbと規定する。ここで、底壁貫通孔51は、その中心が底壁中心Cbと一致する位置に形成されている。また、底壁36の底面72には、
図4に示すように、僅かに突出した円形の底壁プロジェクションが3個設けられている。これら底壁プロジェクションは、第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82、第3底壁プロジェクション83とする。
【0053】
これらの第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82、第3底壁プロジェクション83の部分は、抵抗溶接が行われた場合に溶接電流が集中して流れ、溶接部となる底壁溶接予定部である。つまり、本発明では、集電リード34の底壁36における底壁溶接予定部は3個に設定する。
【0054】
このように底壁溶接予定部が3個であると、集電リード34と正極集電体28とが接合された際、溶接部は3箇所形成される。仮に正極集電体28に僅かな歪みや傾きがあったとしても、集電リード34は3点で接するので安定的に接合され、溶接不良の発生を抑制することができる。その結果、電池の生産において歩留まりが向上する。
【0055】
ここで、底壁溶接予定部としての底壁プロジェクションが形成される位置、つまり、溶接部が形成される位置については、以下のような条件に基づき設定することが好ましい。このように設定すると、底壁36における溶接部が従来の4箇所から3箇所に減っても電池の内部抵抗値の著しい上昇を避けることができるので好ましい。
【0056】
まず、
図4に示すように、円形の第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82及び第3底壁プロジェクション83の中心をそれぞれ第1プロジェクション中心C1、第2プロジェクション中心C2、第3プロジェクション中心C3とする。そして、底壁中心Cbと第1プロジェクション中心C1とを結んだ直線の長さをL1とし、底壁中心Cbと第2プロジェクション中心C2とを結んだ直線の長さをL2とし、底壁中心Cbと第3プロジェクション中心C3とを結んだ直線の長さをL3とする。そして、集電リード34に接合される正極集電体28における集電体半径をAとした場合に、L1/A×100=50±5%、L2/A×100=50±5%、L3/A×100=50±5%の関係を満たしている位置に溶接予定部(底壁プロジェクション)、つまり、溶接部が位置付けられることが好ましい。より好ましくは、これらL1、L2及びL3の長さを一定値Lとする。つまり、L1=L2=L3=Lの関係を満たすようにする。そして、L/A×100=50±5%の関係を満たしている位置に溶接予定部(底壁プロジェクション)、つまり、溶接部が位置付けられるようにする。
【0057】
ここで、L1、L2、L3の長さは、長いほど内部抵抗値の低減に寄与するが、その低減効果は、上記したAとの比率が45%以上で飽和傾向が見えてくる。そして、正極集電体から電極群への通電を考えると、溶接部の位置は、正極集電体28の半径Aの中間(50%)付近にあると効率がよいので、最適な範囲として、上記したAとの比率は50±5%とすることが好ましい。
【0058】
更に、
図4に示すように、第1プロジェクション中心C1と底壁中心Cbとを結ぶ直線を更に延長させた延長線(仮想線H)と、第2プロジェクション中心C2及び第3プロジェクション中心C3を結んだ直線(仮想線V)とが交差する点を中間点Pmとする。そして、底壁中心Cbと中間点Pmとを結ぶ直線の長さをLxとし、第2プロジェクション中心C2と中間点Pmとを結んだ直線の長さ、及び、第3プロジェクション中心C3と中間点Pmとを結んだ直線の長さをLyとする。そして、集電リード34に接合される正極集電体28における集電体半径Aと上記したLyとが、Ly/A×100≧25%の関係を満たしている位置に溶接予定部(底壁プロジェクション)、つまり、溶接部が位置付けられることが好ましい。より好ましくは、LyとLxとを等しくする、つまり、Ly=Lxとする。
【0059】
ここで、第2プロジェクション中心C2及び第3プロジェクション中心C3は離れるほど内部抵抗値は低下するが、Ly/A×100が25%以上で飽和傾向が見えてくる。このため、Ly/A×100≧25%とすることが好ましい。
【0060】
以上より、内部抵抗値を低下させる態様において、より好ましくは、L/A×100=50±5%で且つLy/A×100≧25%とする。
【0061】
また、電池1内において電流が流れる通電経路の太さが電池1の内部抵抗に影響を与える。この通電経路の一部には、集電リード34の溶接部が含まれている。集電リード34の溶接部は、頂壁プロジェクション56、第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82及び第3底壁プロジェクション83により形成されるので、これらプロジェクションの直径が電池1の内部抵抗に影響を与えるといえる。通常、これらのプロジェクションの直径は、0.9mmであるが、1.2mm程度まで太くすると、内部抵抗の低下に貢献する。よって、これらのプロジェクションの直径は、可能であれば1.2mm程度に設定することが好ましい。
【0062】
上記した集電リード34は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、金属製の矩形状の薄板を準備し、この薄板を折曲げ加工することにより、第1頂壁50、第1側壁42、底壁36、第2側壁44及び第2頂壁52を形成する。そして、底壁36の中央に底壁貫通孔51を穿設する。また、例えば、プレス加工により、第1頂壁50及び第2頂壁52の所定位置に頂壁プロジェクション56を設けるとともに、底壁36の所定位置に第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82、第3底壁プロジェクション83を形成する。このようにして、
図3に示すような集電リード34を得ることができる。
【0063】
次に、電池1の組み立て手順の一例について説明する。
まず、上記したような電極群4を準備する。そして、電極群4の他方端側に負極集電体を接続した後、当該電極群4を外装缶の中に収容する。そして、外装缶の底壁に負極集電体を抵抗溶接する。
【0064】
次いで、電極群4の一方端側に正極集電体28を載置し、電極群4における正極接続端縁部32と正極集電体28とが抵抗溶接される。
【0065】
次いで、外装缶2内にアルカリ電解液を所定量注入する。外装缶2内に注入されたアルカリ電解液は、電極群4に保持され、その大部分はセパレータ10に保持される。このアルカリ電解液は、正極6と負極8との間での充放電の際の電気化学反応(充放電反応)を進行させる。このアルカリ電解液としては、KOH、NaOH及びLiOHのうちの少なくとも一種を溶質として含むアルカリ電解液を用いることが好ましい。
【0066】
一方、別工程において、封口体14の蓋板16の内面16bに集電リード34の第1頂壁50及び第2頂壁52を抵抗溶接し、封口体14と集電リード34との複合体を形成しておく。詳しくは、集電リード34の第1頂壁50及び第2頂壁52の頂壁プロジェクション56と封口体14の蓋板16の内面16bとが接触する部分に電流が集中して溶接部が形成され、これにより封口体14と集電リード34とが溶接された複合体が得られる。
【0067】
次いで、上記した複合体を正極集電体28の上部へ載置する。このとき、集電リード34の底壁36における底壁中心Cbと正極集電体28の集電体中心Caとが一致するように位置合わせすることが好ましい。また、封口体14の蓋板16の外周縁には、絶縁ガスケット18が配設されており、蓋板16は、この絶縁ガスケット18を介して、外装缶2の上端開口部に位置付けられる。
【0068】
その後、電池1の正極端子22と負極端子との間に加圧しながら電流を流し、抵抗溶接(プロジェクション溶接)を行う。このとき、正極集電体28と、第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82及び第3底壁プロジェクション83とが接触する部分に電流が集中して溶接部が形成され、正極集電体28と集電リード34の底壁36とが溶接される。
【0069】
上記のような溶接が完了した後、外装缶2の開口縁17をかしめ加工することにより、外装缶2の開口3を封止する。このようにして、電池1が形成される。
【0070】
本発明においては、正極集電体28と集電リード34との溶接部を3点としているので、正極集電体28の板面が僅かに歪んでいたり、傾いていても安定的に溶接部が形成され、電池の製造の歩留まりは向上する。また、本発明の電池1に係る集電リード34は、溶接部となる溶接予定部としての底壁プロジェクションを所定の位置に位置付けることにより、溶接部が従来の4箇所から3箇所に減っても電池1の内部抵抗値を従来と同等の値に維持することができる。このため、本発明に係る電池1は優れた高率充放電特性を維持することもできる。
【0071】
よって、本発明によれば、集電体と集電リードを用いて高率充放電を可能とする二次電池において、生産における歩留まりを向上させることができる二次電池を得ることができる。
【0072】
ここで、近年、各種機器の小型化が進んでおり、小型の機器についても高率での充放電が要求されている。このような状況にともない、小型の機器に使用される、FA形、AA形やAAA形といった小型の電池についてもより高率での充放電が要求されている。
【0073】
これら小型の電池においては、D形やC形といった、外径が19mmを超える大型の電池の場合に比べ、構成部品をより小型化しなければならない。構成部品の小型化にともない、正極集電体と集電リードとの溶接安定性が低くなり、溶接不良が発生し易く、小型の電池の生産の歩留まりが低下している。
【0074】
このような状況に対し、本発明は、正極集電体と集電リードとの溶接性を安定化できるので、特に、高率充放電特性に優れる小形の電池、具体的には、直径19mm未満の電池の生産における歩留まりの向上に有効である。
【0075】
[実施例]
1.二次電池の製造
実施例1
【0076】
(1)集電リードの製造
【0077】
いわゆるSPCC(冷間圧延鋼板)に相当する鋼の薄板に厚さが2μmのNiめっきが施されたNiめっき鋼板を準備した。このNiめっき鋼板の厚さは0.30mmである。そして、このNiめっき鋼板に打ち抜き加工及びプレス加工を施すことにより、
図3に示すような、集電リード34を製造した。
【0078】
ここで、集電リード34の各部の寸法を、
図3、4を参照して以下に記載する。
底壁36の矢印X方向の長さX1は10.2mmであり、第1頂壁50の矢印X方向の長さX2は1.45mmであり、第2頂壁52の矢印X方向の長さX3は1.45mmであり、集電リード34の矢印Y方向の長さY1は7.0mmである。第1側壁42及び第2側壁44の高さH1の寸法は1.95mmである(
図3参照)。底壁貫通孔51の直径は3mmであり、頂壁プロジェクション56、第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82及び第3底壁プロジェクション83の直径は0.9mmである。L1=L2=L3=L=2.55mmであり、Lx=1.8mmであり、Ly=1.8mmである。なお、C1、Cb及びPmを通る線と、C2、Pm及びC3を通る線とは、直交している。
【0079】
(2)電池の組み立て
【0080】
一般的なニッケル水素二次電池に用いられる正極6、負極8及びセパレータ10を準備した。これら正極6、負極8及びセパレータ10はそれぞれ帯状をなしている。準備した正極6及び負極8の間にセパレータ10を介在させた状態で、渦巻き状に巻回し、4/3FAサイズ用の電極群4を形成した。巻回の際、正極6及び負極8を、互いに、電極群4の軸線方向に沿う方向に僅かにずれた状態となるように配置するとともに、これら正極6及び負極8の間の所定位置にセパレータ10を配置し、この状態で巻回作業を行い、円柱状の電極群4を得た。得られた電極群4は、電極群4の一端側において正極6の正極接続端縁部32が、セパレータ10を介して隣り合っている負極8よりも突出した状態となっており、電極群4の他端側において負極8の負極接続端縁部が、セパレータ10を介して隣り合っている正極6よりも突出した状態となっている。
【0081】
次に、円板形状をなし、Niめっき鋼の薄板で形成された4/3FAサイズ用の負極集電体を準備した。この負極集電体は、電極群4の負極接続端縁部に溶接した。
【0082】
次に、
図2に示すような、全体として円形状をなし、中央に円形の中央貫通孔29を含んでいる4/3FAサイズ用の正極集電体28を準備した。この正極集電体28は、いわゆるSPCC(冷間圧延鋼板)に相当する鋼の薄板にNiめっきが施されたNiめっき鋼板で形成されている。この正極集電体28の厚さは0.40mmであり、半径Aは7.5mmである。
【0083】
次に、負極集電体が溶接された電極群4を有底円筒形状の外装缶2の中に収容した。そして、外装缶2の底壁の内面と負極集電体とを溶接した。
【0084】
次に、電極群4の上端部に正極集電体28を載置し、電極群4における正極接続端縁部32と正極集電体28とを抵抗溶接した。
次に、外装缶2内にKOHを溶質として含むアルカリ電解液を所定量注入した。
【0085】
次に、上記のようにして製造した集電リード34を封口体14に抵抗溶接し、封口体14と集電リード34との複合体を形成した。詳しくは、集電リード34の第1頂壁50及び第2頂壁52における頂壁プロジェクション56と封口体14の蓋板16の内面とが接触する部分に電流が集中して溶接部が形成され、これにより封口体14と集電リード34とが溶接された複合体を得た。
【0086】
得られた複合体は正極集電体28の上部へ載置した。このとき、集電リード34の底壁36における底壁中心Cbと、正極集電体28の集電体中心Caとが一致するように正極集電体28と複合体とを位置合わせした。
【0087】
その後、封口体14の正極端子22と負極端子との間に加圧しながら電流を流し、抵抗溶接(プロジェクション溶接)を行った。このとき、集電リード34の底壁36における第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82及び第3底壁プロジェクション83と、正極集電体28とが接触する部分に電流が集中して溶接部が形成され、正極集電体28と集電リード34の底壁36とが溶接された。
【0088】
上記のような溶接が完了した後、外装缶2の開口縁17をかしめ加工することにより、外装缶2の開口3を封止した。上記の手順を繰り返し、電池1を10個製造した。
【0089】
また、後述する抵抗値の測定用に、上記した封口体14と、集電リード34と、正極集電体28とを抵抗溶接(プロジェクション溶接)して製造した抵抗値測定試料を別途準備した。
【0090】
このとき、正極集電体28の半径Aの値と、集電リード34におけるL1、L2、L3の値との百分率、及び、正極集電体28の半径Aの値と、集電リード34におけるLyの値との百分率を求め、その結果を表1に示した。
【0091】
実施例2
頂壁プロジェクション56、第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82及び第3底壁プロジェクション83の直径を1.2mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0092】
実施例3
L1=L2=L3=L=2.96mmとし、Lx=2.35mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0093】
実施例4
頂壁プロジェクション56、第1底壁プロジェクション81、第2底壁プロジェクション82及び第3底壁プロジェクション83の直径を1.2mmとしたこと、L1=L2=L3=L=2.96mmとし、Lx=2.35mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0094】
実施例5
L1=L2=L3=L=3.75mmとし、Lx=2.6mmとし、Ly=2.6mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0095】
実施例6
L1=L2=L3=L=3.38mmとし、Lx=2.4mmとし、Ly=2.4mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0096】
実施例7
L1=L2=L3=L=3.00mmとし、Lx=2.1mmとし、Ly=2.1mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0097】
実施例8
L1=L2=L3=L=3.75mmとし、Lx=3.62mmとし、Ly=0.98mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0098】
実施例9
L1=3.00mmとし、L2=L3=3.75mmとし、Lx=3.62mmとし、Ly=0.98mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0099】
実施例10
L1=3.38mmとし、L2=L3=3.75mmとし、Lx=2.68mmとし、Ly=2.63mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0100】
比較例1
図5に示すように、第4底壁プロジェクション84を追加し、底壁プロジェクションを4個としたこと、底壁中心Cbから各底壁プロジェクションの中心までの長さL1=L2=L3=L4=2.55mmとしたこと、各底壁プロジェクションにおけるLx及びLyを1.8mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0101】
比較例2
図5に示すように、第4底壁プロジェクション84を追加し、底壁プロジェクションを4個としたこと、底壁中心Cbから各底壁プロジェクションの中心までの長さL1=L2=L3=L4=3.38mmとしたこと、各底壁プロジェクションにおけるLx及びLyを2.4mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0102】
比較例3
図5に示すように、第4底壁プロジェクション84を追加し、底壁プロジェクションを4個としたこと、底壁中心Cbから各底壁プロジェクションの中心までの長さL1=L2=L3=L4=3.68mmとしたこと、各底壁プロジェクションにおけるLx及びLyを2.6mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電池1及び抵抗値測定試料を製造した。
【0103】
2.二次電池の評価
(1)溶接不良の観察
得られた電池1を分解し、所定の工具を用いて正極集電体28と集電リード34とを引き剥がして破壊検査を行った。引き剥がされた正極集電体28及び集電リード34の底壁36の接合面を観察し、溶接部に相当する部分にえぐれた傷痕があれば、溶接部が形成されたものとして、斯かる傷痕の個数をカウントした。そして、この傷痕の個数が、実施例1~10であれば3個確認できたものは良品とし、3個未満のものは不良品とし、比較例1~3であれば4個確認できたものは良品とし、4個未満のものは不良品とした。
【0104】
製造した電池10個中、不良品がなかった場合、歩留まりは優良と判断し、表1の歩留まりの欄に○印を付した。一方、製造した10個中、不良品が1個でも存在した場合、歩留まりは不良と判断し、表1の歩留まりの欄に△印を付した。
【0105】
(2)抵抗値の測定
上記した抵抗値測定試料について、正極端子と正極集電体との間の抵抗値を測定した。得られた抵抗値を電池の内部抵抗値として表1に示した。このような抵抗値測定試料を用い、正極端子から正極集電体までの抵抗を測定することにより、溶接部の位置が内部抵抗値に与える影響を把握し易くなる。この内部抵抗値が低いほど高率充放電特性に優れることを示している。
【0106】
【0107】
(3)考察
(i)底壁プロジェクションが4個、つまり、集電リードと正極集電体との溶接部が4箇所である比較例1~3の電池には、溶接不良が生じた不良品が存在していた。これに対し、底壁プロジェクションが3個、つまり、集電リードと正極集電体との溶接部が3箇所である実施例1~10の電池には、溶接不良がなく、電池の歩留まりが向上していることがわかる。これは、集電リードの底壁における溶接部が3箇所であるので、正極集電体に僅かな歪みや傾きがあっても安定的に接触でき、良好な接合が行えるためと考えられる。
【0108】
(ii)実施例1と、実施例2とを比較すると、底壁プロジェクションの直径を大きくした方が電池の内部抵抗値が下がることがわかる。
【0109】
(iii)底壁中心からの各底壁プロジェクションまでの長さL(L1、L2、L3)と正極集電体の半径Aとの比率(L/A)が50%である実施例5と、L/Aの比率が40%の実施例7とを比較すると、実施例5の内部抵抗値は0.305mΩであるのに対し、実施例7の内部抵抗値は0.348mΩであった。このことから、L/Aの比率を50%程度とすることが、内部抵抗値の低下に有効であることがわかる。
【0110】
(iv)実施例8は、L/Aの比率が50%であり、Lyと、正極集電体28の半径Aとの比率(Ly/A)は13%である。この実施例8の内部抵抗値は、0.336mΩであった。これに対し、実施例5は、L/Aの比率が50%であり、Ly/Aの比率が35%である。そして、実施例5の内部抵抗値は、0.305mΩであった。このことから、L/Aの比率を50%程度に設定することに加えて、Ly/Aの比率を高くすることが内部抵抗値の低下に有効であることがわかる。
【0111】
(v)実施例1と比較例1との結果より、単純に底壁プロジェクションの個数を4個から3個にしただけでは、内部抵抗値が上昇してしまうことがわかる。しかしながら、底壁中心から底壁プロジェクションまでの長さを長くする、すなわち、L/Aの比率を大きくし、更に、第2底壁プロジェクションと第3底壁プロジェクションとの間の距離を広げる、すなわち、Ly/Aの比率を大きくすると、実施例5のように、内部抵抗値が0.305mΩまで低下させることができる。この実施例5の抵抗値は、同等のL/A及びLy/Aの条件で4個の底壁プロジェクションを形成した比較例3の内部抵抗値と同等である。つまり、底壁プロジェクションの位置を適切な位置に配置すれば内部抵抗値の著しい上昇を伴わずに底壁プロジェクションの個数を4個から3個に減らすことができるといえる。
【0112】
なお、本発明は上記した一実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々の変形が可能であって、例えば、電池の種類は、ニッケル水素二次電池に限定されず、ニッケル-カドミウム二次電池、リチウムイオン二次電池等であってもよい。
【0113】
また、上記した一実施形態及び実施例では、プロジェクションを集電リードに形成したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、溶接部が所定位置に形成できればプロジェクションは、正極集電体や封口体に設けても構わない。
【0114】
また、上記した一実施形態及び実施例では、正極集電体は円板状としたが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、正極集電体は多角形状としても構わない。この場合、多角形の外接円の中心が集電体中心となる。
【0115】
更に、上記した一実施形態及び実施例では、外装缶に接続される側の極を負極とし、封口体に接続される側の極を正極としたが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、外装缶に接続される側の極を正極とし、封口体に接続される側の極を負極としてもよい。
【0116】
更に、本発明において、電池のサイズは、特に限定されず、FAサイズやAAサイズであってもよく、これら以外のサイズであってもよい。
【0117】
<本発明の態様>
本発明の第1の態様は、開口を有している外装缶と、前記外装缶の開口を封止している封口体であって、前記開口に配設された蓋板及び前記蓋板に取り付けられている一方極の端子を含んでいる封口体と、一方極及び他方極がセパレータを介して重ね合わされて形成された電極群であって、前記外装缶の内部に電解液とともに収容されている電極群と、前記電極群の前記一方極に接合されている集電体と、前記集電体と前記封口体とを電気的に接続するために、前記封口体と前記集電体との間に介在し、前記封口体及び前記集電体に接合されている集電リードと、を備えており、前記集電リードは、前記封口体の側に位置し、前記封口体と溶接される頂壁と、前記頂壁とは反対側である前記集電体の側に位置し、前記集電体と溶接される底壁と、前記頂壁と前記底壁との間に延びており、互いに対向している一対の側壁とを有しており、前記底壁は、当該底壁の中心位置に想定される底壁中心と、前記集電体との溶接部が形成される底壁溶接予定部であって、前記底壁中心を囲むように配置された3個の底壁溶接予定部と、を含んでいる二次電池である。
【0118】
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記集電体の中心から前記集電体の外縁までの長さをAとし、前記集電リードの前記底壁中心をCbとし、前記底壁溶接予定部のうちの1個目である第1底壁溶接予定部における中心をC1とし、前記底壁溶接予定部のうちの2個目である第2底壁溶接予定部における中心をC2とし、前記底壁溶接予定部のうちの3個目である第3底壁溶接予定部における中心をC3とし、前記Cbから前記C1までの長さをL1とし、前記Cbから前記C2までの長さをL2とし、前記Cbから前記C3までの長さをL3とした場合に、L1/A×100=50±5%、L2/A×100=50±5%、L3/A×100=50±5%の関係を満たしている二次電池である。
【0119】
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第2の態様において、前記L1、前記L2及び前記L3は、L1=L2=L3の関係を満たしている二次電池である。
【0120】
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第2の態様又は第3の態様において、前記C1と前記Cbとを通る仮想線を仮想線Hとし、前記C2と前記C3とを通る仮想線を仮想線Vとし、前記仮想線Hと前記仮想線Vとが交差する点を中間点Pmとし、前記C2から前記Pmまでの長さをLy2とし、前記C3から前記Pmまでの長さをLy3とした場合に、前記Ly2と前記Ly3とは等しい値Lyであり、Ly/A×100≧25%の関係を満たしている二次電池である。
【符号の説明】
【0121】
1 ニッケル水素二次電池
2 外装缶
4 電極群
6 正極
8 負極
10 セパレータ
14 封口体
18 絶縁ガスケット
22 正極端子
28 正極集電体
32 正極接続端縁部
34 集電リード
36 底壁
42 第1側壁
44 第2側壁
50 第1頂壁
52 第2頂壁
81 第1底壁プロジェクション
82 第2底壁プロジェクション
83 第3底壁プロジェクション