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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】吊り足場における防護網の取付け装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/00 20060101AFI20221019BHJP
   E04G 3/30 20060101ALI20221019BHJP
   E04G 3/24 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
E04G5/00 301D
E04G3/30
E04G3/24 302H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018217159
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020084477
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227146
【氏名又は名称】日綜産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】栗山 人士
(72)【発明者】
【氏名】三浦 衛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴久
(72)【発明者】
【氏名】岩本 豊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正人
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸裕
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256861(JP,A)
【文献】特開平05-295712(JP,A)
【文献】実開昭49-082525(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第20-413775(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
E04G 3/30
E04G 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立済み足場(A)と、上記組立済み足場(A)の端部に接続した追加の足場(B)とをそれぞれ備えた下段足場と上段足場とが傾斜又は湾曲した構造物の工事箇所に対応して階段状に複数吊り下げられ、上記組立済み足場(A)と上記追加の足場(B)とがそれぞれ前後左右のジョイスト(1)、(2)、(3)、(4)と、各ジョイスト(1)、(2)、(3)、(4)の端部を回転自在に結合させたノード(5)と、上記ノード(5)に起立した手摺支柱(6a)と、上記各ジョイスト(1)、(2)、(3)、(4)上に載置した床材(7)とを備え、上記組立済み足場(A)の前後又は左右のジョイストに上記追加の足場(B)の前後又は左右のジョイストを上記ノード(5)を介して回転自在に結合させている吊り足場において、
上記追加の足場(B)の前後又は左右一対の各手摺支柱(6a)上に上記追加の足場(B)より外方に延びる一対の吊り材(8)を回転自在に取付け、上記各吊り材(8)の先端に防護網(9)の先端コーナを吊り下げ、上記防護網(9)の下端コーナを上記下段足場の手摺支柱(6a)に取り付けることを特徴とする吊り足場における防護網の取付装置。
【請求項2】
組立済み足場(A)と、上記組立済み足場(A)の端部に接続した追加の足場(B)とを備え、上記組立済み足場(A)と上記追加の足場(B)とがそれぞれ前後左右のジョイスト(1)、(2)、(3)、(4)と、各ジョイスト(1)、(2)、(3)、(4)の端部を回転自在に結合させたノード(5)と、上記ノード(5)に起立した手摺支柱(6a)と、上記各ジョイスト(1)、(2)、(3)、(4)上に載置した床材(7)とを備え、上記組立済み足場(A)の前後又は左右のジョイストに上記追加の足場(B)の前後又は左右のジョイストを上記ノード(5)を介して回転自在に結合させている吊り足場において、
上記追加の足場(B)の前後又は左右一対の各手摺支柱(6a)上に上記追加の足場(B)より外方に延びる一対の吊り材(8)を回転自在に取付け、上記各吊り材(8)の先端に防護網(9)の先端コーナを吊り下げ、上記防護網(9)の下端コーナを上記組立済み足場(A)の任意の位置に設けた介錯ロープに吊り下げることを特徴とする吊り足場における防護網の取付け装置。
【請求項3】
上記吊り材(8)が上記手摺支柱(6a)の上端に回転自在に支持された水平ロッド(8a)と、上記水平ロッド(8a)の先端に連結したハの字状の一対の吊りロッド(8b)、(8c)とからなり、一方の吊りロッド(8b)に上記防護網(9)の先端コーナを吊り下げ、他方の吊りロッド(8c)に上記防護網(9)の任意の外端部を吊り下げていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吊り足場における防護網の取付け装置。
【請求項4】
上記手摺支柱(6a)の上部に筒体(11)が回転自在に挿入され、上記筒体(11)の側面に水平なガイド筒(10)が結合され、上記ガイド筒(10)に上記水平ロッド(8a)が挿入されるとともに、上記ガイド筒(10)と上記水平ロッド(8)に回転防止ピン(12)を抜き差し自在に挿入することを特徴とする請求項3に記載の吊り足場における防護網の取付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り足場における防護網の取付け装置に関し、特に、組立済み足場の端部に他の追加の足場を接続して取付ける際に、この追加の足場の下方に展張して工具や機材の落下を防止する防護網の取付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、橋梁等の構築物の構築工事、高層ビル等の建築物の建築工事あるいはこれらのメンテナンス工事を行う場合には構築物や建築物(以下、「構造物」とする)の下方に吊り足場を吊り下げ、この吊り足場上で諸作業を行っている。
【0003】
この吊り足場としては、例えば、特許文献1に開示されているものが開発されている。具体的には、地上又は構造物上で組み立てた足場である組立済み足場をクレーン等の重機を使って構造物に吊下げ、組立て済み足場上で、この組立済み足場の端部に作業面積に応じて一つ又は複数の追加の足場を縦横に順次接続して作業床を拡げるようにするものである。
【0004】
この場合、構造物の工事箇所が水平な場合は、この構造物の下方に水平な組立済み足場と、この組立済み足場の端部に水平に接続された追加の足場とで形成された全体が長い水平な単一の吊り足場を設置し、この単一の吊り足場上で諸作業を行っている。
【0005】
他方、例えば、アーチ橋からなる橋梁のように構造物の工事箇所である下側が傾斜したり、湾曲している場合は、工事箇所に沿って下段の吊り足場と上段の吊り足場とを複数階段状に吊り下げ、工事箇所に対応する吊り足場を利用してそれぞれ諸作業を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-256861号公報(段落0054~0056、図15図28A図28B図28C参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に示す吊り足場は特に機能上の欠陥があるわけではないが、次のような不具合があり、その改善が望まれている。
【0008】
特許文献1に示す吊り足場における、組立て済みの足場の端部に追加の足場を接続する作業は、組立て済みの足場の端部にユニット化された枠体を接続し、その枠体に床板、手摺、巾木等を取り付けて行われる。そのため、枠体を接続した時は、一時的にではあるものの、床板、手摺、巾木等がない状態となる。
【0009】
このような場合でも、足場組立て用の工具が落下しないように、工具を作業者のベルトに繋ぐなどして、落下防止の安全対策は講じられているものの、万一に備えさらなる落下防止策が要望されていた。
【0010】
そこで、本発明の目的は、組立済み足場の端部に追加の足場を接続する際に、工具等が落下するのを防止する吊り足場における防護網の取付け装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成させるため、本発明の一つの手段は、組立済み足場と、上記組立済み足場の端部に接続した追加の足場とをそれぞれ備えた下段足場と上段足場とが傾斜又は湾曲した構造物の工事箇所に対応して階段状に複数吊り下げられ、上記組立済み足場と上記追加の足場とがそれぞれ前後左右のジョイストと、各ジョイストの端部を回転自在に結合させたノードと、上記ノードに起立した手摺支柱と、上記各ジョイスト上に載置した床材とを備え、上記組立済み足場の前後又は左右のジョイストに上記追加の足場の前後又は左右のジョイストを上記ノードを介して回転自在に結合させている吊り足場において、上記追加の足場の前後又は左右一対の各手摺支柱上に上記追加の足場より外方に延びる一対の吊り材を回転自在に取付け、上記各吊り材の先端に矩形の防護網の先端コーナを吊り下げ、上記防護網の下端コーナを上記下段足場の手摺支柱に吊り下げることを特徴とする。
【0012】
同じく、他の手段は、組立済み足場と、上記組立済み足場の端部に接続した追加の足場とを備え、上記組立済み足場と上記追加の足場とがそれぞれ前後左右のジョイストと、各ジョイストの端部を回転自在に結合させたノードと、上記ノードに起立した手摺支柱と、上記各ジョイスト上に載置した床材とを備え、上記組立済み足場の前後又は左右のジョイストに上記追加の足場の前後又は左右のジョイストを上記ノードを介して回転自在に結合させている吊り足場において、上記追加の足場の前後又は左右一対の各手摺支柱上に上記追加の足場より外方に延びる一対の吊り材を回転自在に取付け、上記各吊り材の先端に防護網の先端コーナを吊り下げ、上記防護網の下端コーナを上記組立済み足場の任意の位置設けた介錯ロープに取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
各請求項の発明によれば、次の効果を達成できる。
A)追加の足場の手摺支柱上に追加の足場より外方に延びる一対の吊り材を回転自在に取付け、各吊り材の先端に防護網の先端コーナを吊り下げ、またこの防護網の下端コーナを下段足場の手摺支柱や組立済み足場の任意の位置に吊り下げているので、防護網を追加の足場の下方に展張できる。
B)その結果、組立済み吊り足場の端部に追加の足場を接続する際に作業者や工具が落下するのが防止され、工事の安全性が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に防護網の取付け装置を使用している吊り足場の一部切欠き斜視図である。
図2】(A),(B),(C),(D)は吊り足場の組立工程を示す斜視図である。
図3】傾斜した構造物の工事箇所に下段足場と上段足場とを複数階段状に吊りさげた状態と防護網の取付け工程を示す側面図である。
図4】(A),(B),(C)は追加の足場用ジョイストの下方に防護網を吊り下げた状態を示す平面図と側面図と正面図である。
図5】(A),(B)は組立済み足場の端部に一つ目の追加の足場用ジョイストを取付け、併せて組立済み足場の両側の手摺支柱にそれぞれ取付けた一対の吊り材に防護網を吊り下げて防護網を追加の足場用ジョイストの下方に吊り下げる準備段階の工程を示す平面図と側面図である。
図6】(A),(B)は組立済み足場の手摺支柱に取付けた吊り材と追加の足場用のジョイストに取付けた手摺支柱にそれぞれ取付けた吊り材に防護網を吊り下げた状態の工程を示す平面図と側面図である。
図7】(A),(B)は追加の足場用ジョイストとこのジョイストに取付け手摺支柱に取付けた吊り材をそれぞれ回転して防護網を吊り下げた状態の工程を示す平面図と側面図である。
図8】(A),(B)は組立済み足場に二つ目の追加の足場用ジョイストを取り付け、併せてこのジョイストに取付けた手摺支柱に二つ目の吊り材を取り付け、この二つ目の吊り材に防護網を吊り下げた状態の工程を示す平面図と側面図である。
図9】(A),(B)は二つ目のジョイストと二つ目の吊り材をそれぞれ回転して防護網を吊り下げた状態の工程を示す平面図と側面図である。
図10】(A),(B)は追加した一つ目と二つ目の各ジョイストの手摺支柱にそれぞれ取付けた一つ目と二つ目の吊り材に防護網を吊り下げ、組立済み足場に取付けた吊り材を撤去する工程を示す平面図と側面図である。
図11】(A),(B),(C)は組立済み足場と追加の足場の各手摺支柱にそれぞれ取付けた吊り材に防護網を吊り下げた状態を示す平面図と側面図である。
図12】(A),(B),(C)は吊り材を構成する水平ロッドを回転自在に支持する支持部材の拡大平面図と側面図と横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一実施の形態を図1図12を参照しながら説明する。
【0016】
本発明は、橋梁等の構築工事、建築物の建築工事或いはメンテナンス工事に使用する吊り足場の下方に防護網を展張させて作業者や工具が落下するのを防止する防護網の取付け装置に関する。
【0017】
特に、ジョイストを関節移動式に組付けた組立済み足場の端部に同じく関節移動式のジョイストを利用した他の追加の足場を接続して取付ける際に、この追加の足場の下方に防護網を吊り下げる防護網の取付け装置に関する。
【0018】
本発明に係る吊り足場はジョイストを利用して予め組み付けた組立済み足場と、この組立済み足場の前後、左右の端部に接続した同じくジョイストを利用した追加の足場とからなるものである。
【0019】
そして、構造物の工事箇所がアーチ橋のように傾斜したり、湾曲している場合は、下段の吊り足場と上段の吊り足場とを構造物の工事箇所に対応して階段状に複数吊り下げ、それぞれの足場上で諸作業を行うものである。
【0020】
他方、構造物の工事箇所が水平な場合は組立済み足場の前後、左右に追加の足場を連続して複数接続させて構成させた単一の水平な吊り足場を吊り下げ、この吊り足場上で諸作業を行うようになっている。
【0021】
例えば、上記の吊り足場は上記特許文献1に開示されたものと同じである。即ち、この吊り足場の基本構造は、図2(D)に示すように、組立済み足場Aと、組立済み足場Aの前後、左右の端部に連続して接続した複数の追加の足場Bとを備えたものである。
【0022】
組立済み足場Aと追加の足場Bとは同じ構造が採用されている。即ち、各足場A、Bは前後左右のトラス梁からなる4組のジョイスト1、2、3、4と、各ジョイスト1、2、3、4の端部を関節移動式に回転自在に結合させたノード5とを有し、上記ジョイスト1、2、3、4で長方体状の枠体を構成している。
【0023】
そしてジョイスト1、2、3、4で組付けた枠体をノード5を介して縦横に回転自在に多数接続することにより構造物の工事箇所の面積に対応して図2(D)に示すような大きな吊り足場の枠体を組立てることができる。
【0024】
この場合、図2(A)に示すように基本となる最初の吊り足場である組立済み足場Aは、4つのノード5を介してジョイスト1、2、3、4を回転自在に連結して四角状に組立てられた枠体のジョイスト1、2、3、4上に床材7を載置して組立てられる。
【0025】
次に、この床材7を利用して図2(A)に示すように組立済み足場Aの端部に、例えば、背面側のジョイスト2に対向して追加の足場Bにおける左右のジョイスト3、4の端部をそれぞれ左右のノード5、5を介して回転自在に接続し、次いで図2(B)、(C)に示すように回転して正方形又は長方形の枠体を構成させる。
【0026】
この場合、組立済み足場Aの背面側ジョイスト2は、追加の足場Bの正面側のジョイスト1を兼ねることになる。上記のようにして組付けた追加の足場Bにおいても各ジョイスト1、2、3、4上に床材7を載置し、更に組立済み足場Aと追加の足場Bにおける手摺6用の手摺支柱6a(図1参照)を各ノード5の中心に設けられた孔に差し込んで起立させるようになっている。
【0027】
上記したように、例えば、傾斜又は湾曲した梁等の構造物の工事箇所におけるメンテナンス工事では図3に示すように梁Xの下方にこの梁Xの傾斜面に沿って下側から上側に複数の足場Y1、Y2・・・Ynを階段状に吊りワイヤWを介して吊り下げ、工事箇所に対応した位置に配置されている足場上で諸作業を行うようにしている。
【0028】
この場合、例えば、最下段の足場Y1上に上段の足場Y2における組立済み足場Aに最初の第1の追加の足場Bを接続する時は、図1で後述するように、防護網9の先端は吊り材8に吊り下げられ、更にこの防護網9の下端は下段の足場Y1の手摺支柱6aに吊り下げられる。
【0029】
次いで、上記第1の追加の足場Bに第2の追加の足場Bを、同じく第2の追加の足場Bに第3の追加の足場Bを順次接続した時は、防護網9が矢印Rに示すように順次盛り替えられる。この時は防護網9の下端は最下段の足場Y1の手摺支柱6aに届かないので自己の足場Y2の任意の位置に吊り下げた介錯ロープに吊り下げるようになっている。
【0030】
以後、上記のような防護網9の盛り替え作業を繰り返して各足場Y2、Y3・・・Ynの追加の足場Bの下方に防護網9を展張するようになっている。
【0031】
次に、階段状に複数の足場を吊り下げた時の防護網9の取付け装置の実施の形態を図1図4に基づいて説明する。
【0032】
この実施の形態に係る吊り足場における防護網の取付け装置では、4つの組立済み足場Aと、この組立済み足場Aの正面側端部にそれぞれ接続した4つの追加の足場Bとをそれぞれ備えた下段足場Y1と上段足場Y2とが傾斜又は湾曲した構造物の工事箇所に対応して階段状に吊りワイヤWを介して吊り下げられている。
【0033】
上記の組立済み足場Aと追加の足場Bの枠体の構造と、両者の接続工程は上記図2で説明した場合の構造及び工程と同じである。即ち、組立済み足場Aと追加の足場Bとがそれぞれ前後左右のジョイスト1、2、3、4と、各ジョイスト1、2、3、4の端部を関節移動式に回転自在に結合させたノード5と、ノード5の中心から起立した手摺支柱6aと、各ジョイスト1、2、3、4上に載置した床材7とを備えている。
【0034】
そして、上記組立済み足場Aの前側のジョイスト1に追加の足場Bの左右のジョイスト3、4をノード5を介して回転自在に結合させている。
【0035】
更に、追加の足場Bの左右一対の各手摺支柱6a、6a上に追加の足場Bより前側外方に延びる一対の吊り材8、8を回転自在に取付け、各吊り材8の先端に矩形の防護網9の先端コーナを吊り下げ、防護網9の下端コーナを下段足場Y1の手摺支柱6aに吊り下げるようにしている。なお、本例では防護網9は矩形とされているが、防護網9の形状は特に限定されない。
【0036】
上記の実施の形態では追加の足場Bを組立済み足場Aの前側に接続した状態を示しているが、この追加の足場Bは図2(D)に示すように前後、左右に接続しても良い。
【0037】
上記の実施の形態は傾斜又は湾曲した構造物の工事箇所に上下の足場Y1、Y2を階段状に吊り下げているが、構造物の工事箇所が水平な場合は、組立済み足場Aと、組立済み足場Aの端部に接続した追加の足場Bとを備えた単一の吊り足場を吊り下げるようにしている。
【0038】
この場合の組立済み足場Aと追加の足場Bとの構造、手摺支柱6a、吊り材8の構造、取り付け位置は上記の実施の形態と同じである。
【0039】
但し、この場合、吊り材8の先端に矩形の防護網9の先端コーナを吊り下げるが、この防護網9の下端コーナは組立済み足場Aの任意の位置に設けた介錯ロープによって吊り下げるようにしている。
【0040】
上記吊り材8は図1に示すように、手摺支柱6aの上端に回転自在に支持された水平ロッド8aと、水平ロッド8aの先端に連結したハの字状の一対の吊りロッド8b、8cとから構成されている。
【0041】
そして、一方の吊りロッド8bに防護網9の先端コーナを吊り下げ、他方の吊りロッド8cに防護網9の任意の外端部を吊り下げて防護網9にテンションを掛けて下方に弛むのを防止させている。
【0042】
本例では、吊りロッド8b、8cはハの字状に設けられているが、水平ロッド8aと同軸に延びる一本の吊りロッドを水平ロッド8aの先端に連結するようにしても良い。
【0043】
吊り材8は、支持部材17を介して手摺支柱6aの上部に連結されている。この支持部材17は、図1図12に示すように、足場A、Bの延長方向に沿って並べて設けられる2つの手摺支柱6a,6aの上部にそれぞれ回転自在に挿入されるとともに手摺6の横支柱6bを連結支持するフランジ13に支えられた筒体11と、筒体11の外周に筒体11に対して直交する向きで溶接等で固定されるガイド筒10とを備える。
【0044】
また、ガイド筒10と水平ロッド8aには、それぞれピン孔が設けられており、ガイド筒10に水平ロッド8aを挿入するとともに当該ピン孔を互いに対向させた状態で回転防止ピン12が挿入されている。
【0045】
このように、ガイド筒10と水平ロッド8aに回転防止ピン12を挿入すると水平ロッド8aが軸周りに回転するのが防止され、吊りロッド8b、8cを平面視でハの字状となる正位置で固定できるので吊り下げた防護網9が捩れるのを防止できるようになっている。
【0046】
さらに、筒体11は手摺支柱6aの外周に沿って回転自在に挿入されているため、いずれか一方のガイド筒10から水平ロッド8aを抜きつつ他方のガイド筒10に結合された筒体11を回転すれば、ガイド筒10に挿入された水平ロッド8aを横向きにできるので、追加の足場Bの組立て完了後に不要となった吊り材8を簡単に引き抜いて取り外しでき、取り外した吊り材8を次の追加の足場Bを組み立てる際に利用できる。
【0047】
また、吊りロッド8b,8bの先端には、それぞれ半円状の引掛け具15が設けられている。そして、先端が吊り具16を介して防護網9の先端コーナに結合された牽引ロープ14を、引掛け具15に挿通させるとともに牽引ロープ14の後端を手摺支柱6aや横支柱6b等に結合することで吊り材8で防護網9を吊っている。この際、牽引ロープ14の引っ張り具合によって防護網9をテンションを調整できる。
【0048】
次に、階段状に吊り下げた下段足場Y1と上段足場Y2とに防護網9を取付ける一実施の形態に係る工程を図5図10に基づいて説明する。
【0049】
先ず、地上又は構造物上で予め組立てられた下段足場Y1をクレーン等の重機でワイヤWを介して構造物に吊下げる。さらに、下段足場Y1上で組み立てた上段足場Y2を重機を使って構造物にワイヤWを介して吊下げて、図5に示すような状態とする。
【0050】
図5は、上段足場Y2の組立済み足場Aに追加の足場Bを接続し、この追加の足場Bの両側に設けた第1の吊り材8A、8Aを介して追加の足場Bの下方に防護網9を展張させた状態を示している。
【0051】
この第1の吊り材8Aとしては上記した吊り材8と同じ構造ものが使用される。
【0052】
この時、防護網9の下端は下段足場Y1に起立させた手摺支柱6aに連結されている。
【0053】
そして、組立済み足場Aと追加の足場Bとからなる一体の足場を次の工程において組立済みの足場Aとして利用する。即ち、この状態で次の追加の足場Bを接続する場合は上記の追加の足場Bを組立済みの足場Aとして利用し、この追加の足場Bの正面側の一端部に次に接続する他の追加の足場B用のジョイスト2、3、4をノード5を介して回転自在に接続する(第一の工程)。
【0054】
次に、図6に示すように、上記ジョイスト2を取付けるノード5に起立させた手摺支柱6aにもう一つの第2の吊り材8Bを回転自在に取付け、この第2の吊り材8Bの先端にも防護網9の先端部を吊り下げる。また、この防護網9の下端は上記のように下段足場Y1における手摺支柱6aに連結されている(第二の工程)。
【0055】
次に、図7に示すように、上記のようにして取付けたジョイスト2、3、4を矢印のように回転して矩形の枠体を構成させ、上記の第2の吊り材8Bに防護網9を盛替えてそのコーナ端部を吊り下げる。
【0056】
併せて、追加の足場Bの正面側端部にもジョイスト2、3、4をノード5を介して取付ける。
【0057】
この際、防護網9の側部は上記の第1の吊り材8Aに吊り下げられ、更に防護網9の下端は上記の場合と同じく下段足場Y1における手摺支柱6aに連結される(第三の工程)。
【0058】
次に、図8に示すように、追加したジョイスト4の先端と末端にそれぞれ連結されるノード5,5に設けられた各手摺支柱6a,6aにも筒体11とガイド筒10を介して第2の吊り材8Bが取り付けられており、この第2の吊り材8Bは防護網9の先端部を吊り下げる(第四の工程)。
【0059】
更に、図9に示すように、第三の工程で追加したジョイスト2、3、4を矢印のように回転させて矩形の枠体を構成させると、ジョイスト4の両端部にそれぞれ連結されるノード5,5に設けられた第2の吊り材8Bもジョイスト4とともに移動し、両側一対の第2の吊り材8B、8Bによって、防護網9の両端の先端コーナが吊り下げられる(第五の工程)。
【0060】
上記のようにして、次々に追加の足場Bを追加接続して広い吊り足場を組み立てた後、図10に示すように最初の第1の吊り材8Aを矢印方向に回転させて取外して撤去することで、図11に示すように、防護網9の両端の先端コーナは一対の第2の吊り材8B、8Bに吊り下げられ、防護網9の下端は下段足場Y1の手摺支柱6aに連結される(第六の工程)。
【0061】
なお、図10に示すように、多数の追加の足場Bが接続された時、防護網9の下端が手摺支柱6aに届かなくなる場合がある。この場合は、この防護網9の下端は、例えば、上段足場の手摺やジョイスト等の任意の位置から介錯ロープを介して吊り下げても良い。
【0062】
以上のように、本発明によれば、追加の足場Bの手摺支柱6a上に追加の足場Bより外方に延びる一対の吊り材8、8を回転自在に取付け、各吊り材8,8の先端に矩形の防護網9の先端コーナを吊り下げ、またこの防護網9の下端コーナを下段足場Y1の手摺支柱6aや組立済み足場Aの任意の位置に連結しているので、防護網9が追加の足場Bの下方に展張できる。
【0063】
その結果、組立済み足場Aの端部に追加の足場Bを接続する際に工具等が落下するのがより確実に防止され、工事の安全性が図れる。
【0064】
また、本実施の形態では、吊り材8の吊りロッド8b、8cを平面視でハの字状に設けている。これにより、一対の吊り材8のうち互いに内側に配置された吊りロッド8c、8c間の距離が、互いに外側に配置された吊りロッド8b、8b間の距離よりも近くなるため、防護網9を吊り下げ支持する支点間の距離が短くなるので、防護網9が撓みづらくなる。さらに、外側に配置された吊りロッド8bは、ジョイスト1,2,3,4とノード5によって形成された枠体の外方に向けて張り出すため、追加の足場Bの側方にも防護網9を展張することができるので、より工事の安全性が図れる。
【0065】
ただし、吊り材8は、吊りロッド8b、8cをハの字状に設ける構成には限定されない。例えば、防護網9の撓み易さは防護網9の重量に依存するので、防護網9が軽量であって吊りロッド8b、8bのみで吊下げ支持しても防護網9が撓まないのであれば、内側に配置された吊りロッド8cを省略してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、2、3、4 ジョイスト
5 ノード
6 手摺
6a 手摺支柱
7 床材
8 吊り材
8a 水平材
8b、8c 吊りロッド
9 防護網
10 ガイド筒
11 筒体
12 回転防止ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12