(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】ノズル位置推定装置
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
E21D11/10 D
(21)【出願番号】P 2018219542
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】坂西 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 洋
(72)【発明者】
【氏名】北原 成郎
(72)【発明者】
【氏名】宮川 克己
(72)【発明者】
【氏名】手塚 仁
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179877(JP,A)
【文献】特開2003-013699(JP,A)
【文献】特開2018-017640(JP,A)
【文献】特開2005-069734(JP,A)
【文献】特開2010-090541(JP,A)
【文献】特開2013-023923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート吹付機のノズルブームに装着された吹付ノズルの先端部と根元部とを含む、前記吹付ノズルの先端部と根元部との間の所定の位置であるノズル位置に配置される標定点となるマークと、
前記コンクリート吹付機に取付けられた複数台のカメラと、
前記複数台のカメラのうちの2台のカメラでステレオ撮影された、前記マークを含む画像から、前記ノズル位置の3次元座標を算出する標定点座標算出手段と
、
を備えるノズル位置推定装置。
【請求項2】
前記吹付ノズルの先端部と根元部とに標定点となるマークを配置するとともに、
前記
吹付ノズルの傾斜角度を算出するノズル傾斜角度算出手段を設け、
前記標定点座標算出手段は、
前記複数台のカメラのうちの2台のカメラでステレオ撮影された、前記マークを含む画像から、前記吹付ノズルの先端部と根元部の3次元座標をそれぞれ算出し、
前記ノズル傾斜角度算出手段は、
前記算出された先端部と根元部の3次元座標とから求められる、前記先端部と根元部とを通る直線の傾きから、前記吹付ノズルの傾斜角度を算出することを特徴とする請求項1に記載のノズル位置推定装置。
【請求項3】
前記ノズル位置の3次元座標、または、前記吹付ノズルの先端部の3次元座標、または、前記吹付ノズルの根元部の3次元座標のいずれかと、予め求めておいた、トンネルパターンデータである設計掘削断面形状の3次元座標のデータ、もしくは、コンクリートの吹付前に測量した掘削断面形状である実測断面形状の3次元座標のデータとから、前記ノズル位置、または、前記吹付ノズルの先端部、または、前記吹付ノズルの根元部と切羽との距離である切羽距離と、トンネル壁面との距離である壁面距離とを算出する、ノズル位置算出手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のノズル位置推定装置。
【請求項4】
前記吹付ノズルに取付けられて、
当該吹付ノズルのコンクリートの吹付方向にレーザ光を照射するレーザ装置を更に設けたことを特徴とする
請求項1~請求項3のいずれかに記載のノズル位置推定装置。
【請求項5】
前記ノズル位置、前記
吹付ノズルの先端部、前記
吹付ノズルの根元部のいずれかと、前記切羽距離、及び、前記壁面距離を表示画面に表示する表示手段を備えることを特徴とする
請求項3に記載のノズル位置推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面などの吹付面へコンクリートを吹付ける吹付ノズルの位置を推定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の吹付作業においては、作業者が、吹付位置直下で吹付ロボットを操作することにより作業をしているが、作業環境及び作業者の安全確保の観点から、作業位置から離れた場所で吹付ロボットを操作する遠隔操作技術が開発されている。
遠隔作業の場合には、トンネル内に設置されるモニター室のような、吹付位置より離れた場所で、例えば、吹付機に設けられたカメラの映像を見ながら、吹付ロボットのコントローラを操作していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カメラの映像のみでは、吹付ノズルの方向や吹付壁との距離等が把握しづらいため、無駄にコンクリートを消費することになる。
特に、無支保工区間では、後方のトータルステーションの切羽管理レーザ装置から投影される赤色ポイントを目安に吹付作業を行うが、安全量を見込む必要があるため、作業員の感覚で多めに吹付をすることになり、その結果、吹付材料が必要以上に多くなってしまうといった問題点があった。また、遠隔操作では、赤色ポイントが映像では見難いためことから、吹付自体が難しかった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、吹付ノズルの位置や傾きなど精度よく推定することのできるノズル位置推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリート吹付機のノズルブームに装着されて、トンネル壁面などの吹付面へコンクリートを吹付ける吹付ノズルの位置を推定する装置であって、コンクリート吹付機のノズルブームに装着された吹付ノズルの先端部と根元部とを含む、前記吹付ノズルの先端部と根元部との間の所定の位置であるノズル位置に配置される標定点となるマークと、前記コンクリート吹付機に取付けられた複数台のカメラと、前記複数台のカメラのうちの2台のカメラでステレオ撮影された、前記マークを含む画像から、前記ノズル位置の3次元座標を算出する標定点座標算出手段とを備えることを特徴とする。
これにより、吹付ノズルの位置を確実に把握できるので、コンクリートの吹付作業を確実に行うことができる。
なお、先端部とは吹付ノズルの中心よりも開口部側を指し、根元部とは吹付ノズルの中心よりも開口部側とは反対側の端部側を指す。
【0007】
また、前記吹付ノズルの先端部と根元部とに標定点となるマークを配置するとともに、前記吹付ノズルの傾斜角度を算出するノズル傾斜角度算出手段を設け、前記標定点座標算出手段では、前記複数台のカメラのうちの2台のカメラでステレオ撮影された、前記マークを含む画像から、前記吹付ノズルの先端部と根元部の3次元座標をそれぞれ算出し、前記ノズル傾斜角度算出手段では、前記算出された先端部と根元部の3次元座標とから求められる、前記先端部と根元部とを通る直線の傾きから、前記吹付ノズルの傾斜角度を算出するようにしたので、吹付ノズルの位置と傾きの両方を正確に把握することでできる。
なお、上記の標定点となるマークは、吹付ノズルの傾斜角度を算出するために配置されるものであるので、上記の先端部の位置と根元部とは、当該吹付ノズルの軸方向に平行な直線上にあることはいうまでもない。
また、前記ノズル位置の3次元座標、または、前記吹付ノズルの先端部の3次元座標、または、前記吹付ノズルの根元部の3次元座標のいずれかと、予め求めておいた、トンネルパターンデータである設計掘削断面形状の3次元座標のデータ、もしくは、コンクリートの吹付前に測量した掘削断面形状である実測断面形状の3次元座標のデータとから、前記ノズル位置、または、前記吹付ノズルの先端部もしくは前記吹付ノズルの根元部と切羽との距離である切羽距離と、前記ノズル位置、または、前記吹付ノズルの先端部、または、前記吹付ノズルの根元部とトンネル壁面との距離である壁面距離とを算出する、ノズル位置算出手段を備えたので、吹付ノズルとトンネルとの位置関係を把握することができる。
【0008】
また、前記ノズル位置、前記吹付ノズルの先端部、前記吹付ノズルの根元部のいずれかと、前記切羽距離、及び、前記壁面距離を表示画面に表示するようにしたので、吹付ノズルの位置や吹付ノズルとトンネルとの位置関係を容易に把握することができる。
また、コンクリート吹付機のノズルブームに装着された吹付ノズルに取付けられて、当該吹付ノズルのコンクリートの吹付方向にレーザ光を照射するレーザ装置を更に設けたので、吹付位置を容易に算出できるとともに、吹付けの作業中であっても、吹付位置をモニター画面で視認することができる。
【0009】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。この明細書において、コンクリートは、モルタルも含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係るノズル位置推定装置を示す図である。
【
図2】吹付機、トータルステーション、及び、遠隔操作室の配置を示す図である。
【
図3】吹付ノズル、及び、カメラの配置例を示す図である。
【
図5】カメラと標定点との関係と、ステレオ画像の一例を示す図である。
【
図6】吹付ノズルの傾きとトンネル壁面との関係を示す図である。
【
図8】ノズル位置推定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】コンクリートの吹付位置の他の算出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施の形態に係るノズル位置推定装置1を示す図で、ノズル位置推定装置1は、吹付機2に設置される、バケット側カメラC11,C12と、本体側カメラC21~C24と、エレクタ側カメラC31~C34と、遠隔操作室10に配置される、標定点座標算出手段11と、ノズル傾斜角度算出手段12と、吹付角度算出手段13と、ノズル位置算出手段14と、記憶手段15と、表示手段16と、トータルステーション4に設置される切羽管理レーザ装置L1と、を備える。
標定点座標算出手段11~記憶手段15までの各手段は、例えば、コンピュータのソフトウェア、及び、RAM等のメモリーから構成され、表示手段16は、表示画面16Gを備えたディスプレイやウェラブル端末などにより構成される。
標定点座標算出手段11~表示手段16までの各手段を、以下、ガイダンスシステムの演算表示部という。
吹付機2は、
図2(a),(b)に示すように、トンネル3の切羽31のコンクリートの吹付けが完了していない区間L
kの後方(切羽31とは反対側)に配置されて、トンネル壁面32(トンネル側壁32aと天羽32b)にコンクリートを吹付ける。なお、同図の符号3Cは吹付コンクリート、符号3Hは支保工である。
トータルステーション4は、切羽31に赤色のレーザ光を照射する切羽管理レーザ装置L1やレーザ距離計L2の他に、図示しない、切羽監視用カメラ、3Dスキャナーなどの切羽31を監視する監視装置を備えた計測器で、吹付機2の後方で、切羽31から所定の距離離れた天羽32b等に設置される。
また、遠隔操作室10は、トンネル3内もしくは地上などの吹付機2から離れた箇所に設置される。遠隔操作室10には、吹付機2を遠隔操作する吹付機制御装置10Aや、支保工番号、支保パターン、設計掘削断面形状XYZのデータなどのトンネルパターンデータを備え、切羽管理レーザ装置L1などの監視装置を制御する切羽管理レーザシステム10Bなどが配置されている。なお、設計掘削断面形状XYZのデータは、トンネル3内の図示しない基準点を原点とした掘削断面の設計上の3次元座標である。
なお、本例では、トンネルパターンデータを、記憶手段15に、トンネルパターンデータベースとして取込んで保存している。
【0012】
図3は、吹付機2を示す図で、同図の左方向を前方(切羽方向)、右方向を後方、同図の上下方向を上下方向、図面に垂直な方向を左右方向とする。
吹付機2は、走行機構20aやアウトトリガー機構20bなどを備えた吹付機本体(以下、本体20という)と、先端側に図示しないコンクリート圧送装置に接続された吹付ノズル5が搭載されたノズルブームとしての吹付ロボット21と、バケット22bを支持する左右一対のバケットブーム22と、支保工の組み立てるための左右一対のエレクタブーム23とを備える。
また、左右一対のバケットブーム22のバケット22bの前方下端部には、バケット側カメラC11,C12がそれぞれ設置され、本体20の前面の上下左右には、本体側カメラC21~C24がそれぞれ設置され、左右一対のエレクタブーム23の第1アーム23aの先端側と第2アーム23bの中央側には、エレクタ側カメラC31~C34がそれぞれ設置される。
【0013】
図4(a),(b)は、吹付ロボット21を示す縦断面図と平面図で、同図のX軸方向がトンネルの軸方向(前後方向)、Y軸方向がトンネル幅方向(左右方向)、Z軸方向が上下方向である。
吹付ロボット21は、本体20の取付部20T側に位置する第1のアーム211と、図示しない切羽側に位置する第2のアーム212と、第1及び第2のアーム211,212をそれぞれ伸縮させる第1及び第2のスライド機構213,214と、第1及び第2のアーム211,212をそれぞれ水平面内及び垂直面内で回転させる第1及び第2の回転機構215,216と、第2のアーム212の先端に設置されたノズル設置部217と、ノズル設置部217を水平面内及び垂直面内で回転させるノズル回転機構218と、を備え、ノズル設置部217を上下、左右に回転させるととともに、前後(第1及び第2のアーム211,212の延長方向)移動させることで、吹付ノズル5の位置と吹付コンクリートの吹付方向とを設定する。
但し、吹付ロボット21は、全ての構成が上記と同一である必要はなく、一部省略されたり、組み合わせが変わる場合もあり、これらを包括して「吹付ロボット」と称する。
【0014】
次に、カメラ対C11,C12~C33,C34の動作について説明する。
バケット側カメラC11,C12、本体側カメラC21,C22、及び、C23,C24、エレクタ側カメラC31,C32、及び、C33,C34は、それぞれ、後述する標定点となるマークとしての標定点ラベルA~Dをステレオ撮影する。
図5(a)は、標定点ラベルA~Dの設置箇所を示す図で、標定点ラベルAは吹付ノズルの先端側に設置され、標定点ラベルBは吹付ノズルの根元側に設置される。また、標定点ラベルCと標定点ラベルDとは、吹付が完了したトンネル壁面32の切羽31側の左右(以下、吹付完了壁部という)の任意の場所にそれぞれ不動点として設置される。
図5(b)は、2台のカメラC11,C12でステレオ撮影した画像(ステレオ画像)の一例を示す模式図で、カメラC11の画像とカメラC12の画像には、それぞれ、標定点ラベルAと標定点ラベルBとが映っている。
なお、ステレオ画像は、必ずしも、C11,C12などのカメラ対の画像である必要はなく、例えば、標定点ラベルA,Bがよく映っている2台以上のカメラの画像、標定点ラベルCがよく映っている2台以上のカメラの画像、標定点ラベルDがよく映っている2台以上のカメラの画像などを用いればよい。
【0015】
標定点座標算出手段11は、
図5(b)に示した、ステレオ撮影された2枚の画像から、標定点ラベルA,Bの位置である、吹付ノズル5の先端部と根元部の3次元座標と、吹付完了壁部の標定点ラベルCと標定点ラベルDの3次元座標とを算出するとともに、この算出された標定点ラベルA,Bの3次元座標を、算出した標定点ラベルC,Dの3次元座標と、トンネルパターンデータベース15Mに保存されている、設計掘削断面形状XYZのデータの基準点、もしくは、トータルステーションの設置位置を原点とした標定点ラベルC,Dの3次元座標とを用いて、上記したトンネル3内の基準点を原点とした3次元座標に変換する。
なお、設計掘削断面形状XYZのデータに代えて、レーザースキャナーや写真測量等で測量して算出した掘削断面形状である実測断面形状X
’Y
’Z
’のデータを用いてもよい。
【0016】
ノズル傾斜角度算出手段12は、算出された吹付ノズル5の先端側と根元側の3次元座標から、吹付ノズル5の傾きを算出する。
図6(a),(b)に示すように、吹付ノズル5(5p~5s)の傾きとは、切羽31の面に平行な断面Kにおけるトンネル幅方向(Y軸方向)と、吹付ノズル5の断面Kへの正射影とのなす角(切羽面内角θ)と、吹付ノズル5の軸方向と断面Kとのなす角(切羽仰角φ)を指す。
同図に示すように、吹付ノズル5の軸方向の延長方向とトンネル壁面32とが交わる点がコンクリートの吹付位置Gとなる。
コンクリートの吹付位置Gの3次元座標は、吹付ノズル5の先端側と根元側とを通る直線と、トンネル壁面32との交点の座標で、トンネル壁面32を表す曲面は、トンネルパターンデータベース15Mに保存されているので、コンクリートの吹付位置Gについても、吹付ノズル5の先端側と根元側の3次元座標から求めることができる。
吹付角度算出手段13は、ノズル傾斜角度算出手段12で算出された吹付ノズル5の先端側と根元側の3次元座標と、コンクリートの吹付位置Gとから、コンクリートの吹付方向とトンネル壁面32とのなす角度である吹付角度αを算出する。
図6(c),(d)に示すように、吹付角度αは、吹付ノズル5(5a,5b)の長さ方向と、コンクリート吹付位置Gにおけるトンネル壁面32の接平面S
G(以下、トンネル壁面32という場合もある)との成す角度に等しい。なお、吹付角度αは、コンクリートの吹付方向と吹付位置Gとを通る接線L
Gとのなす角度としても求められる。α=90°の時に、コンクリートの吹付方向とトンネル壁面32とが直交する。すなわち、吹付ノズル5aのように、吹付角度αが90°であれば、トンネル壁面32に垂直にコンクリートを吹付けることができるが、吹付ノズル5bのように、吹付角度αが90°でない場合には、トンネル壁面32に垂直にコンクリートを吹付けることができない。
なお、上記の接平面S
Gと接線L
Gについても、上記のトンネルパターンデータベース15Mに保存されている設計掘削断面形状XYZ、もしくは、実測断面形状X
’Y
’Z
’のデータから求めることができる。
トンネル壁面32の断面形状が掘削方向(X方向;(a)図の紙面に垂直な方向)で同一で、断面Kが天羽32bを通る半径rの円弧である場合は、
図6(a),(b)に示した白ヌキの吹付ノズル5pのように、円弧の中心をOとしたとき、吹付方向が原点Oと吹付位置Gとを結ぶ方向(OG方向)でかつφ=0°であれば、吹付ノズル5の吹付方向がトンネル壁面32に直交する。しかしながら、吹付ノズル5qのように、吹付方向がOGの方向であっても、φが0°でなければ、吹付ノズル5の吹付方向はトンネル壁面32には直交しない。
なお、トンネル壁面32がトンネル幅方向に垂直な箇所では、吹付ノズル5sのように、吹付方向がトンネル幅方向であれば、α=90°となることはいうまでもない。
ノズル位置算出手段14は、ノズル傾斜角度算出手段12で算出された吹付ノズル5の根元側の3次元座標と、記憶手段15のトンネルパターンデータベース15Mに保存されている設計掘削断面形状XYZのデータ(もしくは、実測断面形状X
’Y
’Z
’のデータ)とから、吹付ノズル5の根元側の位置と切羽31との距離である切羽距離D
x、及び、トンネル壁面32との距離である壁面距離D
wを算出する(
図7のノズル位置画像P
Bを参照)。
また、切羽距離D
x、及び、壁面距離D
wを算出する基準となる吹付ノズル5の位置としては、吹付ノズル5の根元側ではなく、先端側としてもよく、根元側と先端側の中間点としてもよい。
【0017】
表示手段16は、
図7に示すように、吹付ノズルの軌跡を表示した吹付軌跡画像P
Aと、ノズル位置を表示したノズル位置画像P
Bとから成るガイダンス画面を、表示画面16Gに表示する。
吹付軌跡画像P
Aは、ノズル傾斜角度算出手段12で算出したコンクリートの吹付位置Gの軌跡と、トンネル軸方向から見たノズル位置、吹付ノズル5の根元部の軌跡である回転ラインR、及び、後述する推定した車体位置を重ね合わせたものである。
また、ノズル位置画像P
Bは、現在のノズル角度より、ノズル回転機構218で回転した場合の想定軌跡と、吹付角度αと、吹付ノズル5と切羽31との距離である切羽距離D
x、及び、トンネル壁面32との距離である壁面距離D
wとを表示する。
作業者は、上記のガイダンス画面から、吹付ノズル5の現在位置とコンクリート吹付の進捗状態を把握することができるので、吹付操作を効率よく行うことができる。
【0018】
次に、ノズル位置推定装置1の動作について、
図8のフローチャートを参照して説明する。
はじめに、映像カメラの校正を行う(ステップS10)。
これは、吹付機2に設置された10台のカメラのうち、本体側カメラC21~C24の位置は本体20に対して固定されているが、バケット22bに取付けられたバケット側カメラC11,C12の位置と、エレクタブーム23に取付けられたエレクタ側カメラC31~C34の位置とは、吹付機2の本体20に対して、設置毎に異なるためである。
そこで、本例では、絶対固定点カメラである本体側カメラC21~C24から、移動点カメラであるバケット側カメラC11,C12と、エレクタ側カメラC31~C34とを校正するようにしている。
次に、切羽管理レーザシステム10Bからトンネルパターンデータベース15Mを記憶手段15に読み込む(ステップS11)。
なお、トンネルパターンデータベース15Mは、切羽管理レーザシステム10Bにデータとして存在してることから、ノズル位置推定装置1と切羽管理レーザシステム10Bとでデータを共有することで、記憶手段15に読み込むことなく、切羽管理レーザシステム10Bから使用するデータを各手段に取り込むようにしてもよい。
ステップS12では、コンクリートの吹付を行う切羽番号を入力し、ステップS13では、切羽管理レーザシステム10Bと連携して、この入力された切羽番号と連動してデータを取り込み、吹付機2の本体20である「車体の位置」を推定する。
具体的には、
図9に示すように、トータルステーション4に設けられた切羽管理レーザ装置L1から切羽31に照射された赤色レーザ光の照射部P
1~P
3を、例えば、本体側カメラ対C23,C24によりステレオ撮影した画像から、照射部P
1~P
3とトータルステーション4との距離を、レーザ距離計L2にて測定するとともに、この測定された照射部P
1~P
3の3次元座標と、カメラC21,C23のいずれかと、カメラC22,C24のいずれかとでステレオ撮影した画像から求められた照射部P
1~P
3の3次元座標とから「車体の位置」を推定する。
なお、切羽管理レーザシステム10Bの能力不足や切羽面増水等により、照射部P
1~P
3の位置を直接計測できない場合には、以下のようにして「車体の位置」を求めればよい。
まず、カメラC21,C23のいずれかと、カメラC22,C24のいずれかとでステレオ撮影した画像から、照射部P
1~P
3の3次元座標を求め、次に、この3次元座標と、切羽管理レーザシステム10Bにより予め設定されたトンネル3内の図示しない基準点(例えば、トータルステーション4の設置位置など)を原点とした照射部P
1~P
3の3次元座標との差を求めることで「車体の位置」を推定する。この「車体の位置」としては、本体20のどこに設定してもよいが、吹付機2の本体20に最も近い位置にある本体側カメラ対C23,C24の中心位置とすることが好ましい。
なお、赤色レーザ光の照射部P
1~P
3に加えて、吹付完了壁部の左右に設置された標定点ラベルCと標定点ラベルDとを用いて、車体の位置を推定してもよい。
これにより、全てのカメラC11~C34の位置を特定することができる。
【0019】
次に、カメラC11~C34にて、標定点ラベルA~Dを撮影(ステップS14)し、この撮影された画像からノズル位置と吹付位置Gとを算出する(ステップS15)。
具体的には、バケット側カメラC11,C12、本体側カメラC21,C22、本体側カメラC23,C24、エレクタ側カメラC31,C32、及び、エレクタ側カメラC33,34がそれぞれ、標定点ラベルA~Dを撮影し、これら撮影された2枚以上のステレオ画像から、コンクリートの吹付位置の3次元座標、標定点ラベルA,Bの位置である、吹付ノズル5の先端側と根元側の3次元座標を算出するとともに、吹付ノズル5の先端側と根元側の3次元座標から、吹付位置Gの3次元座標を算出する。
なお、上記のように、吹付ノズル5の先端側と根元側の3次元座標と吹付位置Gの3次元座標とは、トンネル3内の基準点を原点とした3次元座標である。
次に、ステップS16にて、吹付ノズル5の傾き(θ,φ)を算出し、ステップS17にて、吹付角度αを算出した後、ステップS18にて、吹付ノズル5と切羽31との距離である切羽距離D
x、及び、トンネル壁面32との距離である壁面距離D
wとを算出する。
最後に、
図7に示すような、吹付ノズルの軌跡を示す吹付軌跡画像P
Aと、トンネル内のノズル位置を示すノズル位置画像P
Bとから成るガイダンス画面を表示手段16の表示画面16Gに表示する(ステップS19)。
【0020】
以上、本発明を実施の形態及び実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0021】
例えば、前記実施の形態では、ステレオ撮影する10台のカメラの映像から吹付位置とノズル位置とを算出したが、少なくとも1対のカメラがあれば、吹付位置とノズル位置とを求めることができる。
また、カメラの配置としては、少なくとも、バケットブーム22側、本体20側、及び、エレクタブーム側に、それぞれ、2台ずつ配置すれば、標定点ラベルA~Dがよく映っている2台以上のカメラの画像が得られるので、好ましい。
また、前記実施の形態では、バケットブーム22のバケット22bにカメラC11,C12を、吹付機2の本体20にカメラC21~C24を、エレクタブーム23にカメラC31~C34をそれぞれ配置する構成としたが、吹付機2が、バケットブーム22、エレクタブーム23を搭載していない場合には、カメラC11,C12、及び、カメラC31~C34、もしくは、その一部を、本体以外の場所、例えば、地面に立設された三脚上などに設置してもよい。
また、前記実施の形態では、吹付ノズル5の先端側と根元側とを通る直線と、トンネルパターンデータベース15Mに保存されている設計掘削断面形状XYZ(もしくは、実測断面形状X
’Y
’Z
’)のデータであるトンネル壁面32を構成する曲面との交点から、コンクリートの吹付位置Gの3次元座標を求めたが、
図10に示すように、吹付ロボット21に装着された吹付ノズル5に、吹付ノズル5の延長方向であるコンクリートの吹付方向にレーザ光を照射するノズル側レーザ装置L3を設け、このノズル側レーザ装置L3の照射部を標定点として、コンクリートの吹付位置Gを求めるようにしてもよい。これにより、吹付けの作業中であっても、吹付位置Gをモニター画面で視認することができる。
なお、吹付位置Gの3次元座標は、吹付ノズル5の先端側と根元側の3次元座標と同様に、ステレオ投影により求めることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ノズル位置推定装置、2 吹付機、3 トンネル、4 トータルステーション、
5 吹付ノズル、
10 遠隔操作室、10A 吹付機制御装置、10B 切羽管理レーザシステム、
11 標定点座標算出手段、12 ノズル傾斜角度算出手段、13 吹付角度算出手段、
14 ノズル位置算出手段、15 記憶手段、16 表示手段、16G 表示画面、
20 吹付機本体、21 吹付ロボット、22 バケットブーム、22b バケット、
23 エレクタブーム、
C11,C12 バケット側カメラ、C21~C24 本体側カメラ、
C31~C34 エレクタ側カメラ、L1 切羽管理レーザ装置。