(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】目詰まりが防止されたEGRフィルター
(51)【国際特許分類】
F02M 26/35 20160101AFI20221019BHJP
B01D 39/12 20060101ALI20221019BHJP
B01D 46/10 20060101ALI20221019BHJP
F02M 26/06 20160101ALI20221019BHJP
F02M 26/11 20160101ALI20221019BHJP
【FI】
F02M26/35 B
B01D39/12
B01D46/10 A
F02M26/06 311
F02M26/11 311C
F02M26/11 301
(21)【出願番号】P 2018229939
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0068824
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 鍾 天
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-530673(JP,A)
【文献】特開2012-237236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0173956(US,A1)
【文献】特開平08-144736(JP,A)
【文献】特開平11-081982(JP,A)
【文献】特開2003-097253(JP,A)
【文献】国際公開第2014/107130(WO,A1)
【文献】特開2008-180191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/35
B01D 39/12
B01D 46/10
F02M 26/06
F02M 26/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出された排気ガスの一部を、前記エンジンに再循環させるEGRラインに設けられ、前記排気ガスに含まれた異物をろ過するEGRフィルタアセンブリに装着されるEGRフィルターにおいて、
前記EGRフィルターは、
金属材質のワイヤからなる緯糸と経糸とが綾織で織り込まれ
、
前記緯糸と前記経糸とは、互いに異なる熱膨張率を有することを特徴とする目詰まりが防止されたEGRフィルター。
【請求項2】
前記緯糸は、
定められた本数の経糸を通過し、その次の経糸と交差することを特徴とする請求項1に記載の目詰まりが防止されたEGRフィルター。
【請求項3】
互いに隣接した緯糸は、互いに異なる経糸と交差することを特徴とする請求項2に記載の目詰まりが防止されたEGRフィルター。
【請求項4】
前記経糸は、前記緯糸より熱膨張率が大きい材質で形成され
ていることを特徴とする請求項
1に記載の目詰まりが防止されたEGRフィルター。
【請求項5】
前記緯糸は、SUS
400系を材質とし、
前記経糸は、SUS
300系を材質とすることを特徴とする請求項
4に記載の目詰まりが防止されたEGRフィルター。
【請求項6】
前記EGRフィルタアセンブリは、低圧EGRラインに設けられ
ていることを特徴とする請求項1に記載の目詰まりが防止されたEGRフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目詰まりが防止されたEGRフィルターに係り、より詳細には、車両のEGRシステムのEGRクーラに装着され、フィルターの有効空間が拡大され、非対称的に熱膨張してカーボン、スート、及び異物によって目詰まりする現象を防止することによりEGRガスの流動性が向上された、目詰まりが防止されたEGRフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のEGR(Exhaust Gas Recirculation)システムにおいて、エンジンで燃焼された排気ガスは、その一部を排気ガスに含まれた有害物質を低減させて再循環するようにする。
排気ガスを再循環させると、エンジンの燃焼温度が低くなり、排気ガスに含まれた窒素酸化物(NOx)が低減される。これは排気ガス規制に対する対応策の一つである。
【0003】
EGRシステムは、取付位置によって、低圧EGR(low pressure-EGR)と高圧EGR(high pressure-EGR)とに区分することができる。
【0004】
特に、ターボチャージャのように、過給された車両は、高圧の排気ガス特性によって、排気マニホールドの後端に装着された高圧EGR50に追加して、後処理装置40の後端に低圧EGR60を装着して、油圧の確保により正常な作動環境が形成されるようにする。
【0005】
図1に、高圧EGR50及び低圧EGR60が装着されたエンジンの排気システムを示す。
外部から流入した空気は、吸気ライン11に設けられたターボチャージャ30のコンプレッサ32、インタークーラ13、及び吸気マニホールド12を経てエンジン10の各シリンダに流入する。エンジン10で燃焼後に発生した排気ガスは、排気マニホールド22を経て排気ライン21に設けられたターボチャージャ30のタービン31を通過した後、DPF(Diesel Particulate Filter)やDOC(Disel Oxidation Catalyst)のような後処理装置40を通過した後、外部に放出される。
【0006】
この時、排気マニホールド22と吸気マニホールド12とが連結されるように高圧EGRライン51を設け、高圧EGRライン51に高圧EGRバルブ52及び高圧EGRクーラ53を設ける。高圧EGRバルブ52は、高圧EGRライン51を介して再循環する排気ガスの量を制御し、高圧EGRクーラ53は、再循環する排気ガスを冷却する。
【0007】
又、後処理装置40の後端とコンプレッサ32の前端とを連結するように低圧EGRライン61を設け、低圧EGRライン61に低圧EGRバルブ62及び低圧EGRクーラ63を設ける。同様に、低圧EGRバルブ62は、低圧EGRライン61を介して再循環する排気ガスの量を制御し、低圧EGRクーラ63は、再循環する排気ガスを冷却する。
【0008】
一方、低圧EGRライン61には、排気ガスがコンプレッサの前端に流入するので、コンプレッサ32の部品、例えば、ブレード、コンプレッサホイールなどを保護するためのEGRフィルタアセンブリ170が設けられる。
【0009】
前記EGRフィルタアセンブリ170には、
図2に示すように、ハウジング172の内部にワイヤを織り込んだEGRフィルター171が装着される。従来技術に係るEGRフィルタアセンブリ170において、EGRフィルター171は、ワイヤを緯糸及び経糸として織り込んで製造される。緯糸171aと経糸171bとを平織、つまり、緯糸171aと経糸171bとを互いに交互に交差するように織り込んで製造される。
【0010】
EGRフィルター171が同じ材質のワイヤを緯糸171a及び経糸171bとして平織されるため、スート(煤)、カーボン、及び他の異物によってEGRフィルター171のメッシュに目詰まりが発生するという問題がある。緯糸171aと経糸171bとは平織されるため、織り目が丈夫である。また、緯糸171aと経糸171bとが同じ材質のワイヤであるため、熱膨張係数が互いに同一で、熱膨張の際にも、緯糸171aと経糸171bとは同じ比率で熱膨張する。これによって、EGRフィルターのメッシュの間に挟まれたスート、カーボン,及び他の異物は、EGRフィルター171に堆積され、これは容易にEGRフィルター171から除去することができずに目詰まりを誘発する。
【0011】
このようにEGRフィルター171に目詰まりが発生すると、低圧EGRライン61で差圧が増加して、低圧EGRクーラ63の冷却性能が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、内部の有効空間を拡大し、堆積物の自己清掃のために非対称熱膨張するようにしたEGRフィルターを装着することにより、EGRフィルターがカーボン、スート、及び他の異物によって目詰まりする現象を防止するようにした、目詰まりが防止されたEGRフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための、本発明に係る目詰まりが防止されたEGRフィルターは、エンジンから排出された排気ガスの一部をエンジンに再循環させるEGRラインに設けられ、排気ガスに含まれた異物をろ過するEGRフィルタアセンブリに装着されるEGRフィルターにおいて、EGRフィルターは、金属材質のワイヤからなる緯糸と経糸とが綾織で織り込まれ、前記緯糸と前記経糸とは、互いに異なる熱膨張率を有することを特徴とする。
【0015】
前記緯糸は、定められた本数の経糸を通過し、その次の経糸と交差することを特徴とする。
互いに隣接した緯糸は、互いに異なる経糸と交差することを特徴とする。
【0016】
前記経糸は、緯糸より熱膨張率が大きい材質で形成されていることを特徴とする。
前記緯糸は、SUS400系を材質とし、経糸は、SUS300系を材質とすることを特徴とする。
前記EGRフィルタアセンブリは、低圧EGRラインに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成を有する本発明の目詰まりが防止されたEGRフィルターは、緯糸と経糸とを綾織構造にしてEGRフィルターを織ることにより、有効空間率が増大してカーボン、スート、及び異物が堆積される現象を防止することができる。
また、EGRフィルターを構成する緯糸と経糸とが互いに異なる熱膨張率を有するため、堆積されたカーボン、スート、及び異物を容易に除去することができ、自己清掃が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】従来技術に係るEGRフィルターの断面図である。
【
図3】従来技術に係るEGRフィルターの織り込み状態を示す概略図である。
【
図4】本発明に係るEGRフィルターの織り込み状態を示す概略図である。
【
図5】本発明に係るEGRフィルターにおける有効空間率が増加した状態を示す概略図である。
【
図6】本発明に係るEGRフィルターにおける熱膨張状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付した図面を参照して、本発明に係るEGRフィルターについて詳細に説明する。
本発明のEGRフィルター71が装着されたEGRフィルタアセンブリは、エンジン10から排出された排気ガスの一部をエンジン10に再循環させるEGRライン上に、特に低圧EGRライン61上に設けられて、排気ガスに含まれる異物をろ過する。
EGRフィルタアセンブリには、ハウジングの内部に緯糸と経糸とが織り込まれたEGRフィルター71が装着される。
【0020】
本発明において、EGRフィルター71を、ワイヤを用いて織り込む時には、緯糸71aと経糸71bとを綾織(twill weave)で織り込むようにする。
金属のワイヤを用いてEGRフィルター71を織り込むが、緯糸と経糸とが毎回互いに交差する平織の代わりに、緯糸71aが経糸71bを2本以上飛ばして交差する綾織で織り込むようにすることで、カーボン、スート、及び異物を容易に分離してEGRフィルター71が目詰まりしないようにする。綾織は、緯糸と経糸とで織り込む時、2本以上飛ばして互いに交差させることにより、緯糸と経糸とが交差する交差点が経糸方向に形成される。一方、平織では、毎回緯糸と経糸とが交差するため、緯糸と経糸とが交差する交差点も格子状に形成される。
【0021】
綾織では、緯糸が2本以上飛ばしてから経糸と交差されるため、綾織で織り込まれた織物は、平織による織物に比べて伸縮性が良い。
【0022】
緯糸71aと経糸71bとを織り込むに際して、緯糸71aは、2以上の定められた本数の経糸71bを通過し、その次の経糸71bで交差するようにし、このようなパターンが繰り返され、緯糸71aと経糸71bとが綾織で織り込まれる。
例えば、
図4に示すように、緯糸71aは、3本の経糸71bを通過した後、その次の経糸71bで交差され、更に、3本の経糸71bを通過したその次の経糸71bで織り込まれる方式が繰り返される形式で織り込まれる。
【0023】
特に、緯糸71aは、互いに隣接した他の緯糸71aとは異なる経糸71bと交差する。すなわち、
図4に示したように、1番目の緯糸71aは、3番目の経糸71bと交差され、2番目の緯糸71aは、4番目の経糸71bと交差され、3番目の緯糸71aは、2番目の経糸71bと交差され、4番目の緯糸71aは、1番目の経糸71bと交差されることができる。
【0024】
緯糸71aと経糸71bとが綾織で織り込まれているため、平織で織り込まれる場合より、有効空間が増加し、カーボン、スート、及び異物の排出が容易になってフィルターの目詰まりを防止することができる。
【0025】
つまり、
図5に示すように、緯糸171aと経糸171bとが平織で織り込まれると、互いに隣接した緯糸間の間隔、及び互いに隣接した経糸間の間隔で形成される面積Aが有効空間になる。したがって、
図5において、2本の緯糸171aと4本の経糸171bとで織り込まれると、面積がAの空間が3つ形成される。ここで、有効空間とは、フィルターの面積で開放された空間の線と線との間の空間になる。
【0026】
しかし、緯糸71aと経糸71bとが綾織で織り込まれると、互いに隣接した緯糸、又は互いに隣接した経糸によって形成される面積ではなく、緯糸71aと経糸71bが交差する地点を連結する四角形に形成される面積A’が有効空間になる。これによって、2本の緯糸71aと4本の経糸71bとで織り込まれると、
図5において、経糸71b間の間隔の3倍を横とし、互いに隣接した緯糸71a間の間隔を高さとする長方形の面積が有効空間になる。
【0027】
平織時の有効空間の面積であるAより、綾織時の有効空間の面積であるA’が当然大きいだけでなく、平織時の有効空間の面積の合計3Aより、綾織時の有効空間の面積であるA’が大きいことから、EGRフィルター71において、カーボン、スート、及び異物によるフィルターの目詰まりを防止することができる。
【0028】
また、本発明では、緯糸71aと経糸71bとが互いに異なる材質のワイヤからなる。特に、緯糸71aと経糸71bとは、互いに異なる熱膨張率を有するワイヤからなることにより、熱間時、緯糸71aと経糸71bとが非対称熱膨張する。
具体的には、緯糸71aは、SUS400系を材質とするワイヤからなり、経糸71bは、SUS300系を材質とするワイヤからなるようにする。
【0029】
SUS300系の金属とSUS400系の金属とは、熱膨張率が互いに異なり、特に、SUS300系の金属は、SUS400系の金属より熱膨張率が約3倍程度大きい。したがって、排気ガスがEGRフィルター71に供給されてEGRフィルター71の温度が高くなると、緯糸71aと経糸71bとが熱膨張し、エンジンが停止した後、EGRフィルター71が冷却すると、緯糸71aと経糸71bとは熱収縮する。
【0030】
この時、経糸71bの熱膨張率が緯糸71aの熱膨張率より大きいことから、経糸71bがより大きく変形するので、EGRフィルター71の内部にカーボン、スート、及び異物などが容易に分離可能である。
一方、緯糸71aの材質を経糸71bより熱膨張率が大きい材質としてもよい。
【0031】
以上説明したように、本発明に係るEGRフィルター71は、緯糸71aと経糸とを織り込むに際して、有効空間が拡大するように綾織で織り込むようにし、経糸71bを緯糸71aより熱膨張率がより高い材質として、加熱時、非対称熱膨張させることにより、カーボン、スート、及び異物の自己清掃が可能になる。
【符号の説明】
【0032】
10 エンジン
11 吸気ライン
12 吸気マニホールド
13 インタークーラ
21 排気ライン
22 排気マニホールド
30 ターボチャージャ
31 タービン
32 コンプレッサ
40 後処理装置
50 高圧EGR
51 高圧EGRライン
52 高圧EGRバルブ
53 高圧EGRクーラ
60 低圧EGR
61 低圧EGRライン
62 低圧EGRバルブ
63 低圧EGRクーラ
71 EGRフィルター
71a 緯糸
71b 経糸
170 EGRフィルタアセンブリ
171 EGRフィルター
171a 緯糸
171b 経糸