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▶ ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】回転モータ車両の前輪台車
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/10 20130101AFI20221019BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20221019BHJP
   B62K 5/027 20130101ALI20221019BHJP
   B62K 5/01 20130101ALI20221019BHJP
   B60G 21/05 20060101ALN20221019BHJP
   B62D 9/02 20060101ALN20221019BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/08
B62K5/027
B62K5/01
B60G21/05
B62D9/02
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2018532305
(86)(22)【出願日】2016-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2016058045
(87)【国際公開番号】W WO2017115294
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-09-27
(31)【優先権主張番号】102015000088090
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレア
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/046280(WO,A1)
【文献】特開2014-237362(JP,A)
【文献】国際公開第2014/065381(WO,A1)
【文献】特開2014-193677(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146653(WO,A1)
【文献】特開2015-127183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 1/10 - 11/14
B60G 1/00 - 99/00
B62D 7/00 - 7/22
B62D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三輪または四輪の回転モータ車両の前輪台車であって、
- 前輪台車のフレーム16と、
- 前輪(10´、10´´)が同期式かつ鏡面式(対称に)に回転することを可能にする第1の運動学的機構(20)によって、互いに、かつ前記前輪台車のフレーム(16)へ運動学的に連結される少なくとも1対の前輪(10´、10´´)であって、各前輪(10´、10´´)は、前記第1の運動学的機構(20)へ個々の軸受ジャーナル(60)によって連結され、前記軸受ジャーナル(60)は、前記前輪の回転ピン(68)へ機械的に連結されて、前記前輪を回転軸(R´-R´、R´´-R´´)を中心にして回転できるように支持する、少なくとも1対の前輪(10´、10´´)と、
- ロール・ブロック・システム(100)と、
- 各軸受ジャーナル(60)に、前記第1の運動学的機構(20)に対する少なくとも1つのばね懸架運動を保証するサスペンション手段(90)と、
- 各前輪(10´、10´´)の個々の操舵軸(S´-S´、S´´-S´´)を中心とする前記軸受ジャーナル(60)の回転を指令することに適する操舵デバイス(36、86)と、を備え、
前記ロール・ブロック・システム(100)は、前記2つの前輪(10´、10´´)を前記個々の軸受ジャーナル(60)において2つの連結点間のヒンジ手段(71、72、73)によって互いに直に連結する第2の運動学的機構(110)を備え、前記2つの連結点の距離(D)は、前記2つの前輪(10´、10´´)が地面に対して斜めに転動する場合に変わるが、操舵時には変わらず、前記第2の運動学的機構(110)は、次のような少なくとも2つの設定、即ち、
- 前記第2の運動学的機構(110)が、前記2つの連結点間の前記距離(D)を変えられるようにすることで、前記2つの前輪(10´、10´´)の、互いに対する、および前記前輪台車のフレーム(16)に対する動きに受動的に、これらを妨害することなく追従するように構成される、自由な設定と、
- 前記第2の運動学的機構(110)が、前記2つの連結点間の前記距離(D)を変えられないようにすることで、前記2つの連結点間のヒンジ手段(71、72、73)での回転運動が防止され、同時にピッチングおよび操舵運動が可能にされる、ブロックされた設定と、を採用することができ、かつ、
前記ロール・ブロック・システム(100)は、前記第2の運動学的機構(110)に作用してこれを前記自由な設定から前記ブロックされた設定へ、かつこの逆にすることに適する、前記第2の運動学的機構(110)を設定する制御デバイス(120)を備えることを特徴とする、前輪台車。
【請求項2】
前記2つの軸受ジャーナル(60)間の前記2つの連結点は、各々、前記個々の軸受ジャーナル(60)の前記操舵軸(S´-S´、S´´-S´´)上に位置決めされる、請求項1に記載の前輪台車。
【請求項3】
前記2つの軸受ジャーナル(60)間の前記2つの連結点は、前記個々の軸受ジャーナル(60)の前記操舵軸(S´-S´、S´´-S´´)から等距離に位置決めされる、請求項1に記載の前輪台車。
【請求項4】
前記第1の運動学的機構(20)は、2つの懸架アームを有するシステムである、請求項2または3に記載の前輪台車。
【請求項5】
前記第1の運動学的機構(20)は、中間ヒンジ(28)において前記前輪台車のフレーム(16)へ蝶番づけされる1対の横材(24´、24´´)を備える関節連結式四辺形システムであり、前記横材(24´、24´´)は、対向する横方向端部においてサイドヒンジ(52)において、前記横方向端部上で旋回される直立部(48´、48´´)により、互いに連結され、前記横材(24´、24´´)および前記直立部(48´、48´´)は、前記関節連結式四辺形(20)を画定し、前記直立部(48´、48´´)は各々、前記前輪(10´、10´´)のうち、一方の軸受ジャーナル(60)を案内しかつ支持する、請求項2または3に記載の前輪台車。
【請求項6】
前記直立部(48´、48´´)の各々は、前記個々の前輪(10´、10´´)の前記軸受ジャーナル(60)をその主伸展軸(T-T)と同軸的に案内しかつ支持し、各前輪(10´、10´´)の前記サスペンション手段(90)は、前記対応する直立部に一体化され、かつ前記軸受ジャーナル(60)に、前記直立部(48´、48´´)の前記主伸展軸(T-T)に沿った直進性のばね懸架運動を保証する、請求項に記載の前輪台車。
【請求項7】
各軸受ジャーナル(60)と対応する前記直立部(48´、48´´)との結合は、円筒型であって、前記直立部(48´、48´´)の前記主伸展軸(T-T)に対する前記軸受ジャーナル(60)の並進および回転の双方が可能にされる、請求項に記載のモータ車両の前輪台車。
【請求項8】
各直立部(48´、48´´)は、上端(48s)から下端(48i)まで延び、各前輪(10´、10´´)の前記回転ピン(68)は、前記関節連結式四辺形システム(20)の対応する前記直立部(48´、48´´)の前記上端(48s)と前記下端(48i)との間に含まれる、請求項5~7のうちの一項に記載の前輪台車。
【請求項9】
前記直立部(48´、48´´)は、各々、前記個々の前輪(10´、10´´)の前記軸受ジャーナル(60)を、回転-並進型の機械的連結システムによってそれ自体の外側に案内しかつ支持し、各前輪の前記サスペンション手段(90)は、前記個々の軸受ジャーナル(60)に一体化され、前記連結システムは、ばね懸架運動を決定する請求項に記載の前輪台車。
【請求項10】
前記軸受ジャーナル(60)間の前記2つの連結点は、前記関節連結式四辺形システムの前記2つの横材(24´、24´´)に対して平行方向に位置合わせされる、請求項に記載の前輪台車。
【請求項11】
前記第2の運動学的機構(110)を前記2つの軸受ジャーナル(60)へ連結する前記ヒンジ手段(71、72、73)は、ボールジョイント(71)より、またはボールジョイントと運動学的に等価なデバイス(72、73)より成る、請求項1~10のうちの一項に記載の前輪台車。
【請求項12】
前記第2の運動学的機構(110)は、前記軸受ジャーナル(60)の少なくとも一方へ、互いに直交する軸を有する1対の円筒ヒンジ(72、73)によって連結される、請求項11に記載の前輪台車。
【請求項13】
前記ボールジョイント(71)またはヒンジ対(72、73)は、前記軸受ジャーナル(60)へ、前記軸受ジャーナル(60)と一体の支持要素(63)によって取り付けられる、請求項11または12に記載の前輪台車。
【請求項14】
前記第2の運動学的機構(110)は、その両端で前記軸受ジャーナル(60)へボールジョイント(71)またはボールジョイントと運動学的に等価なデバイス(72、73)によって固定される、長さが伸展可能なロッド(111)で構成され、前記設定制御デバイス(120)は、前記ロッド(111)の長さの伸展の阻止及び解除が可能なブロック手段(121)より成る、請求項1~13のうちの一項またはそれ以上に記載の前輪台車。
【請求項15】
前記ロッド(111)は、主たる長手方向の伸展方向に互いに入れ子式に関連づけられる少なくとも2つの部分(112、113)で形成され、前記2つの部分(112、113)における長手方向の入れ子式摺動は、前記ロッド(110)の前記両端間の、ひいては前記軸受ジャーナル(60)上の前記2つの連結点間の距離(D)の変動を決定することに適し、前記第2の運動学的機構(110)の前記設定制御デバイス(120)は、前記ロッド(111)の前記2つの部分(112、113)の前記入れ子式摺動をブロックすることに適する、前記ロッド(111)の前記ブロック手段(121)より成る、請求項14に記載の前輪台車。
【請求項16】
前記ロッド(111)の前記ブロック手段は、ブレーキキャリパ(122)より成る、請求項15に記載の前輪台車。
【請求項17】
前記ロッド(111)の前記ブロック手段は、ラチェットシステムより成る、請求項15に記載の前輪台車。
【請求項18】
前記ラチェットシステムは、断面が小さい方の入れ子式部分上に作られる歯付き要素と、断面が大きい方のもう一方の入れ子式部分上に蝶番づけされる、前記歯付き要素との係合または係合解除を制御できる爪とを備える、請求項17に記載の前輪台車。
【請求項19】
前記第2の運動学的機構(110)は、円筒ヒンジ(117)によって個々の第1の端部(115a、116a)で互いに回転式に連結される1対のロッド(115、116)より成り、前記2つのロッド(115、116)の各々は、個々の第2の端部(115b、116b)で前記2つの軸受ジャーナル(60)のうちの一方へ連結されて、前記2つの第1の端部(115a、116a)が互いに連結する頂点において前記2つのロッド(115、116)間に形成される角(α)が変わり、前記2つの第2の端部(115b、116b)間の、ひいては前記軸受ジャーナル(60)との連結点間の距離(D)が変わり、前記第2の運動学的機構(110)の前記設定制御デバイス(120)は、前記角(α)の変更を阻止及び解除が可能なブロック手段(121)より成る、請求項1~13のうちの一項に記載の前輪台車。
【請求項20】
第1のロッド(115)は、前記個々の軸受ジャーナル(60)へ球形ヒンジ(71)によって連結され、かつ第2のロッド(116)は、前記個々の軸受ジャーナルへ、直交する軸を有する1対の円筒ヒンジ(72、73)によって連結される、請求項19に記載の前輪台車。
【請求項21】
前記第2の運動学的機構(110)の前記設定制御デバイス(120)は、電子自動作動システムにより設定される予め規定された制御論理に従うことにより、あるいは、この代わりに、またはこれと並行して、前記モータ車両のユーザにより手動作動システムを介して設定される手動コマンドに従うことにより、前記第2の運動学的機構(110)に作用してこれを前記自由な設定から前記ブロックされた設定に、かつこの逆にさせることに適する、請求項1~20のうちの一項に記載の前輪台車。
【請求項22】
電子制御システムを備え、電子制御システムは、前記ユーザにより設定される前記手動コマンドを、モータ車両の安全の保証を目的とする前記モータ車両の管理の主要な論理に従ってフィルタリングするように構成される、請求項21に記載の前輪台車。
【請求項23】
後部における駆動輪と、請求項1~22のうちの一項に記載の前輪台車(8)とを有するモータ車両(4)。
【請求項24】
三輪または四輪の回転モータ車両の前輪(10´、10´´)の回転運動をブロックする方法であって、前記回転モータ車両は、
-前輪台車のフレーム(16)と、
-前輪(10´、10´´)が同期式かつ鏡面式に回転することを可能にする第1の運動学的機構(20)によって、互いに、かつ前記前輪台車のフレーム(16)へ運動学的に連結される少なくとも1対の前輪(10´、10´´)であって、各前輪(10´、10´´)は、前記第1の運動学的機構(20)へ個々の軸受ジャーナル(60)によって連結され、前記軸受ジャーナル(60)は、前記前輪の回転ピン(68)へ機械的に連結されて、前記前輪を回転軸(R´-R´、R´´-R´´)を中心にして回転できるように支持する、少なくとも1対の前輪(10´、10´´)と、
-各軸受ジャーナル(60)に、前記第1の運動学的機構(20)に対する少なくとも1つのばね懸架運動を保証するサスペンション手段(90)と、
-各前輪(10´、10´´)の個々の操舵軸(S´-S´、S´´-S´´)を中心とする前記軸受ジャーナル(60)の回転を指令することに適する操舵デバイス(36、86)と、を備え、
前記方法は、
a)前記2つの前輪(10´、10´´)を前記個々の軸受ジャーナル(60)において2つの連結点間で互いに直に連結する第2の運動学的機構(110)を提供する動作ステップであって、前記2つの連結点の距離(D)は、前記2つの前輪(10´、10´´)が地面に対して斜めに転動する場合に変わるが、操舵時には変わらず、前記第2の運動学的機構(110)は、次のような少なくとも2つの設定、即ち、
-前記第2の運動学的機構(110)が、前記2つの連結点間の前記距離(D)を変えられるようにすることで、前記2つの前輪(10´、10´´)の、互いに対する、および前記フレーム(16)に対する動きに受動的に、これらを妨害することなく追従するように構成される、自由な設定と、
-前記第2の運動学的機構(110)が、前記2つの連結点間の前記距離(D)を変えられないようにすることで、前記2つの連結点間のヒンジ手段(71、72、73)での回転運動が防止され、同時にピッチングおよび操舵運動が可能にされる、ブロックされた設定と、を採用することができる動作ステップと、
b)前記第2の運動学的機構(110)を起動して、前記ブロックされた設定が前記回転運動をブロックする動作ステップと、
c)前記第2の運動学的機構(110)を非活性化して、前記自由な設定が前記回転運動を許容する動作ステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールブロックを有する回転モータ車両の前輪台車に関する。
【0002】
具体的には、本発明によるモータ車両は、前側の2つの操舵および回転車輪と後側の1つの固定軸駆動輪とを装備したモータ車両であり得る。
【背景技術】
【0003】
モータ車両の分野では、管理容易性の点でオートバイの特性と、四輪車両の安定性とを組み合わせた「ハイブリッド」車両の提供がますます増えている。
【0004】
これらのモデルは、例えば、2つの操舵前輪を装備する三輪自動車、およびQUADとして知られる四輪車両に代表される。
【0005】
より詳細には、上述の三輪自動車は、2つの操舵および回転(即ち、斜行または傾斜可能な)車輪と、後側の1つの固定軸駆動輪とを装備している。後輪は、駆動トルクを提供し、よって牽引を可能にするという目的を有し、一方で、前輪は、対で、車両の方向性を提供するという目的を有する。操舵に加えて、前輪台車における対の車輪は、傾斜して回転することもできる。このソリューションによって、3つの車輪を有し、そのうちの2つが後側にあるモータ車両に比較して、前輪台車に2つの車輪を有するモータ車両は、モータ車両がオートバイ並みにカーブで傾斜することができるという理由で、実際のオートバイと同等である。しかしながら、車輪が2つだけのモータ車両に比べると、2つの車輪が前輪台車で対を成すこのような車両は、地面に対して前輪の二重支持によって提供される、自動車によって提供されるものと同様の、より大きい安定性を有する。
【0006】
前輪は、これらの前輪が例えば関節連結式四辺形の介在によって同期式かつ鏡面式に回転することを保証する運動学的機構によって、互いに運動学的に接続される。このようなモータ車両は、2つの前輪の各々に1つである、2つの独立したサスペンションも装備し、サスペンションは、同じく独立しているショックアブソーバを装備する。
【0007】
したがって、三輪回転モータ車両の意図は、二輪オートバイの操縦性と、四輪モータ車両の安定性および安全性とを同時にユーザへ提供することにある。
【0008】
このタイプの三輪回転モータ車両は、例えば、本件と同じ出願人に利する特許文献1に記載されている。
【0009】
このモータ車両は、このタイプのモータ車両の構造的特殊性に起因して、特定の走行状態において、例えば超低速時または一時停止もしくは停止中に、非制御の、および/または偶発的な回転運動の結果として倒れ得るという可能性がある。
【0010】
この欠点は、前述の車両に、ユーザにより手動で作動可能な、および/または自動制御システムによるロール・ブロック・システムを装備することによって対処される。
【0011】
このようなモータ車両のためのアンチロールシステムは、例えば、本件と同じ出願人に利する特許文献2に記載されている。このアンチロールシステムは、関節連結式四辺形構造および2つの独立したフロントサスペンションを有する操舵システムを装備した回転モータ車両に関連して記述されている。ロール・ブロック・システムは、それが許容する回転を防止するように関節連結式四辺形の動きをブロックするのに適した機械的キャリパと、2つの車輪における非対称のばね懸架動作(バネのサスペンション)に起因する回転を防止するために、ショックアブソーバと並列して配置されるロッドに作用する電気モータによって同時に作動される2つの油圧クランプと、を備える。
【0012】
上述のブロックシステムにおける第1の欠点は、その複雑さにある。実際に、これは、1つが関節連結式四辺形に作用し、2つがショックアブソーバ上にある、3つの別々のブロックデバイスを必要とする。
【0013】
このシステムには、四辺形および/または非対称のばね懸架動作に起因する回転運動だけでなく、ピッチング運動(対称性のばね懸架動作)においても、モータ車両を剛性にするという欠点もある。
【0014】
ピッチングブロックは、ショックアブソーバのブロックデバイスの十分なサイジングを必要とし、生産コストが増加する。実際に、モータ車両が、回転をブロックされた状態で道路から(例えば、穴から)衝撃を受ける場合、ブロックシステムは、サスペンションの幾何学的形状を変化させないために、衝撃力の衝撃ピークに打ち勝つことができなければならない。
【0015】
状況によっては、ピッチングブロックは、車両の挙動、ひいては、その安全性に影響を及ぼすこともある。例えば、一方の前輪が、関連するショックアブソーバのブロックデバイスの力に打ち勝つに足る衝撃を受ければ、その車輪は持ち上がり、モータ車両は、そちら側に低下することになる。事実、摂動が終了すると、ブロックデバイスは、モータ車両を新しい位置に保持しようとしてモータ車両を安全でない形状に置く。
【0016】
ショックアブソーバの並列ブロックも、制動の場号の結果が及ぶことになる。前輪台車は、静的荷重と制動に起因する動的移動との合計から結果的に生じる荷重によってより低い位置にブロックされることから、実際に、モータ車両は、静的に必要とされるものとは異なる平衡状況で「ブロック」される。
【0017】
関節連結式四辺形構造を有する操舵システムを装備するモータ車両用に意図される他のアンチロールシステムは、特許文献3、特許文献4および特許文献5に記載されている。これらのアンチロールシステムは、関節連結式四辺形構造に直接作用し、関節連結式四辺形自体の動きをブロックすることによって回転を阻止する。しかしながら、これらのアンチロールシステムは、2つの前輪のショックアブソーバによって許容される非対称振動に起因するロール運動を抑止することができない。
【0018】
加えて、上述のアンチロールシステムは、関節連結式四辺形構造を有する操舵システムに作用するような特殊設計であることから、このような構造体の存在に、かつその機械的構成に直に拘束される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】イタリア特許出願第IT2003MIA001108号明細書
【文献】イタリア特許出願第IT2004MIA000171号明細書
【文献】欧州特許出願第2810861号明細書
【文献】仏国特許2953184号明細書
【文献】欧州登録特許第2345576号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、上述の制限事項を完全に、または部分的に克服できるようにするロール・ブロック・システムを装備する回転モータ車両を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本発明の目的は、作動時に、ショックアブソーバの対称性圧縮に起因するモータ車両のピッチングを抑止せず、かつ操舵に影響しないロール・ブロック・システムを装備する回転モータ車両の前輪台車を提供することにより、従来技術に関連する上述の問題点を排除する、または少なくとも低減することにある。
【0022】
本発明のさらなる目的は、製造およびモータ車両自体への取付けが構造的に単純であって経済的なロール・ブロック・システムを装備する回転モータ車両の前輪台車を利用できるようにすることにある。
【0023】
本発明の技術的特徴は、以下に列挙する特許請求の範囲の内容から明確に理解することができ、かつその利点は、1つまたは複数の純粋に例示的かつ非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照して行なう以下の詳細な説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態による、関節連結式四辺形の傾斜システムおよびロール・ブロック・システムを有する前輪台車を装備したモータ車両を示す部分斜視図である。
図2図1の矢印IIの側から見た、図1のモータ車両の側面図である。
図3図1の矢印IIIの側から見た、図1のモータ車両前側の正面図である。
図4図1の矢印IVの側から見た、図1のモータ車両の側面平面図である。
図5図1のモータ車両の前輪台車を、前輪を省略して示した正面斜視図である。
図6図5に示す矢印VIに沿った、図2に示す車両の、前輪を省いて示したものである。
図7図5に示す矢印VIIに沿った、図3に示す車両の、前輪を省いて示したものである。
図8図5に示す矢印VIIに沿った、図4に示す車両の、前輪を省いて示したものである。
図9】本発明の第1の実施形態による、車輪を支持する軸受ジャーナルおよびロール・ブロック・システムと一体化された、回転運動を可能にすることを目的とする関節連結式四辺形システムを示す、図1のモータ車両における前輪台車の部分正面斜視図である。
図10図9と同じ詳細図であるが、ロール・ブロック・システムは、本発明の異なる実施形態によるものである。
図11】本発明の第2の実施形態による、図5と同じ関節連結式四辺形の傾斜システムとロール・ブロック・システムとを有する前輪台車を装備したモータ車両を示す正面斜視図である。
図12図11の矢印XIIの側から見た、図11のモータ車両の正面図である。
図13図11の矢印XIIIの側から見た、図11のモータ車両の側面平面図である。
図14】本発明の前記第2の実施形態による、車輪を支持する軸受ジャーナルおよびロール・ブロック・システムと一体化された、ロール運動を可能にすることを目的とする関節連結式四辺形システムを示す、図11のモータ車両における前輪台車の部分正面斜視図である。
図15】本発明の第3の実施形態による、車輪を支持する軸受ジャーナルおよびロール・ブロック・システムと一体化された、ロール運動を可能にすることを目的とする関節連結式四辺形システムを示す、図1または図11のモータ車両における前輪台車の部分正面斜視図である。
図16】本発明の第4の実施形態による、車輪を支持する軸受ジャーナルおよびロール・ブロック・システムと一体化されていない、ロール運動を可能にすることを目的とする関節連結式四辺形システムを示す、モータ車両の前輪台車の部分正面斜視図である。
図17】本発明の第5の実施形態による、ロール運動を可能にすることを目的とする図16と同じ関節連結式四辺形システムとロール・ブロック・システムとを有するモータ車両の前輪台車を示す部分正面斜視図である。
図18】軸受ジャーナルと関節連結式四辺形との相互連結に関連する、図17の前輪台車の部分詳細図を示す。
図19】軸受ジャーナルと関節連結式四辺形との相互連結に関連する、図17の前輪台車の部分詳細図を示す。
図20】軸受ジャーナルと関節連結式四辺形との相互連結に関連する、図17の前輪台車の部分詳細図を示す。
図21】本発明の第6の実施形態による、図5および図11と同じ関節連結式四辺形の傾斜システムとロール・ブロック・システムとを有する前輪台車を装備したモータ車両を示す正面斜視図である。
図22図21の矢印XXIIの側から見た、図21のモータ車両の正面図である。
図23図21の矢印XXIIIの側から見た、図21のモータ車両の部分側面図である。
図24図11の矢印XXIVの側から見た、図21のモータ車両の平面図である。
図25】本発明の第7の実施形態による、懸架式長手方向アームの傾斜システムおよびロール・ブロック・システムを有する前輪台車を装備したモータ車両を示す部分斜視図である。
図26】回転運動のために車輪が傾斜された状態にある、図25のモータ車両を示す。
図27】入れ子式に関連づけられた2つの部分で形成される、伸縮ロッドの長さの伸びを阻止するために使用されるブレーキキャリパの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述の諸図を参照すると、参照数字4は、総じて本発明によるモータ車両を示す。
【0026】
本発明の目的に沿って、モータ車両という用語が、少なくとも3つの車輪、即ち後に詳述するような2つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを有するあらゆるオートバイを包含して広義に考慮されなければならない点は、明確にすべきである。よって、モータ車両の定義には、前輪台車に2つの車輪および後部に2つの車輪を有するいわゆる四輪車も含まれる。
【0027】
モータ車両4は、少なくとも2つの前輪10を支持する前輪台車8から、1つまたは複数の後輪14を支持する後端12まで延びるフレーム6を備える。左側の前輪10´および右側の前輪10´´を区別することは可能であり、左右の車輪10´、10´´の定義は、完全に従来的であって、車両の運転者を起点にして理解される。前記車輪は、これを駆動する運転者の観測点に対して、モータ車両の中心線面M-Mの左右に配置される。
【0028】
以後の説明において、および図面においても、前記中心線面M-Mに対して鏡面反射的または対称性である前輪台車の要素の参照は、各々それを駆動する運転者の観測点に対して前輪台車の左右のコンポーネントを指す上付き文字「´」および「´´」を用いて行なう。
【0029】
本発明の目的に添って、モータ車両6のフレーム6は、任意の形状およびサイズを有することができ、かつ例えば、格子、箱またはクレードル型、シングルまたはダブル等であってもよい。モータ車両のフレーム6は、一体型であっても、幾つかのパーツであってもよく、例えば、モータ車両のフレーム6は、1つまたは複数の後駆動輪14を支持する揺動リアフォーク(不図示)を備えることができる後フレーム13と相互に連結される。前述の揺動リアフォークは、フレーム6へ、蝶番によって直に、またはレバーおよび/または中間フレームを介在して連結されてもよい。
【0030】
本発明の一般的な一実施形態によれば、モータ車両の前輪台車8は、前輪台車のフレーム16と、運動学的に互いに連結され、かつ両輪へ同期式および鏡面式に回転を与える第1の運動学的機構20によって前輪台車のフレーム16へ連結される1対の前輪10´、10´´と、を備える。
【0031】
以後の説明において再度取り上げるが、第1の運動学的機構は、同期式かつ鏡面式に転動する前輪を提供するように機能するものであれば、任意の構成であってもよい。具体的には、この第1の運動学的機構は、(図1~24の実施形態に示すような)関節連結式平行四辺形システムとして構成されるシステムであっても、(図25および図26の実施形態に示すような)懸架式長手方向アームシステムとして構成されるシステムであってもよい。
【0032】
各車輪10´、10´´は、前記第1の運動学的機構20へ個々の軸受ジャーナル60によって連結され、軸受ジャーナル60は、車輪の回転ピン68へ、これを回転軸R´-R´、R´´-R´´の周りに回転可能式に支持するようにして機械的に連結される。
【0033】
車輪の「軸受ジャーナル」とは、車輪自体の回転ピンを支持し、かつこれをサスペンションへ、操舵デバイスへかつ前記第1の運動学的機構20へ運動学的に相互連結するように意図される、モータ車両の機械的パーツを意味する。軸受ジャーナルは、車輪ピンに対して自由度がなく、よって、車輪ピンと運動学的に一体である。軸受ジャーナルは、車輪ピンと一体式に製造されても、車輪ピンへ機械的に結合されて単一部品を形成してもよい。
【0034】
モータ車両の前輪台車8は、さらに、
【0035】
-ロール・ブロック・システム100と、
【0036】
-各軸受ジャーナル60へ前記第1の運動学的機構20に対する少なくとも1つのばね懸架運動T-Tを提供するサスペンション手段90と、
【0037】
-各前輪10´、10´´の個々の操舵軸S´-S´、S´´-S´´を中心とする軸受ジャーナル60の回転を指令することに適する操舵デバイス36、86と、を備える。
【0038】
本発明によれば、前述のロール・ブロック・システム100は、2つの前輪10´、10´´を個々の軸受ジャーナル60において2点間のヒンジ手段71、72、73によって互いに直に連結する第2の運動学的機構110を備え、2点の距離Dは、2つの前輪10´、10´´が転動する場合に変わるが、操舵時には変わらない。
【0039】
機能的には、第2の運動学的機構110は、次のような少なくとも2つの異なる設定を想定することができる:
【0040】
-前述の第2の運動学的機構110が、前記2つの車輪10´、10´´の、互いに対する、および前輪台車のフレーム16に対する動きに受動的に、これらに干渉することなく追従するように構成される、自由な設定、および、
【0041】
-前述の第2の運動学的機構110が、前記2点間の距離Dを設定するように構成され、よって、2つの車輪間の回転運動が防止され、同時に対称性のばね懸架運動(ピッチング)および操舵運動が自由にされる、ブロックされた設定。
【0042】
前述のロール・ブロック・システム100は、第2の運動学的機構110に作用してこれを自由な設定からブロックされた設定へ、かつこの逆にすることに適する、第2の運動学的機構110を設定する制御デバイス120も備える。
【0043】
効果的には、前述の制御デバイス120は、電子自動作動システムにより設定される予め規定された制御論理に従って、第2の運動学的機構110に作用してこれを自由な設定からブロックされた設定に、かつこの逆にさせることに適する。
【0044】
自動的な作動に代えて、またはこれと並行して、制御デバイスは、モータ車両のユーザにより手動作動システムによって課される手動コマンドに従って、第2の運動学的機構110に作用してこれを自由な設定からブロックされた設定へ、かつこの逆にすることができる。
【0045】
好ましくは、前輪台車およびモータ車両は、ユーザにより設定される手動コマンドを、モータ車両の安全の保証を目的とするモータ車両管理の主要な論理に従ってフィルタリングするように構成される電子制御システムを備える。
【0046】
導入部分で既に述べたように、既知のソリューションにおける回転ブロックは、回転を引き起こす全ての要素、即ちアーム、フォーク/ロッカアームおよびサスペンション、をブロックすることによって実装される。これとは異なり、本発明によれば、回転ブロックは、単に2つの要素間、即ち両車輪の軸受ジャーナル間に作用することにより、前輪同士を相互連結することによって実装される。
【0047】
個々の軸受ジャーナルに対応する2つの車輪の相互連結は、本発明によるロール・ブロック・システムを回転運動に対して選択的にする。
【0048】
既に述べたように、サスペンション手段90は、軸受ジャーナル自体に第1の運動学的機構20に対する少なくとも1つのばね懸架動作を提供する。したがって、軸受ジャーナルは、ばね懸架運動における車輪に関連づけられる。このため、本発明によるロール・ブロック・システムによるその相互的な連結は(ブロックされた設定においても)、対称性のばね懸架運動を妨害しない。したがって、ロール・ブロック・システムは、ピッチング運動に対してトランスペアレントであることになる。
【0049】
さらに、同じく、第2の運動学的機構110が、その距離Dが操舵において変わらない2点間で2つの軸受ジャーナル60を直に連結するという事実によって、本発明によるロール・ブロック・システム100は、(ブロックされた設定においても)操舵運動を妨害しない。したがって、ロール・ブロック・システムは、操舵に対してもトランスペアレントであることになる。
【0050】
したがって、上記から、ブロックされた設定において、本発明によるロール・ブロック・システム100は、ピッチング(対称性のばね懸架運動)および操舵運動を自由にさせながら、(非対称性のばね懸架運動にも起因する)回転動作のみを防止し、一方で、自由な設定において、本発明によるロール・ブロック・システム100は、車輪の動きに、操舵、回転(非対称性のばね懸架運動によるものであっても)およびピッチング(対称性のばね懸架運動)に起因する運動学的誤差を生じさせないことになる。
【0051】
最終的には、ロール・ブロック・システム100が、軸受ジャーナルへ直に作用し、かつ車輪に同期式かつ鏡面式な回転を提供する第1の運動学的機構には作用しないことに適するという事実によって、本発明によるロール・ブロック・システム100は、この第1の運動学的機構の存在およびその機械的設定に直接的には制約されないが、これにより、単に、この第1の運動学的機構が回転運動における軸受ジャーナルの運動学に影響する程度にまで間接的に影響される。
【0052】
第1の運動学的機構110が回転運動における軸受ジャーナルの運動学に与える影響は、以後の説明で明らかとなるように、この第1の運動学的機構の設定に依存する。
【0053】
より詳細には、第1の運動学的機構110が2つの懸架式長手方向アーム(図25および図26の例を参照)のシステムによって構成される場合、ロール・ブロック・システム100は、第1の運動学的機構によって影響されない。実際には、回転運動の間、軸受ジャーナル間の距離Dは、前記距離が測定される点に関わらず常に変わる。したがって、ロール・ブロック・システムの第2の運動学的機構110は、回転運動の阻止に関して常に有効であって、2つの軸受ジャーナルを任意の2点間で連結することができる。
【0054】
一方で、第1の運動学的機構110が関節連結式四辺形システム(図1図24の例を参照)によって構成される場合、ロール・ブロック・システム100は、第1の運動学的機構によって運動学的に影響される。実際には、回転運動の間、軸受ジャーナル間の距離Dは、軸受ジャーナルの何らかの部分間でのみ効果的に変わる。この場合、ロール・ブロック・システムの第2の運動学的機構110は、軸受ジャーナルを任意の2点間で連結することができず、軸受ジャーナル間で特定の連結点が識別されなければならない。
【0055】
より詳細には、これに関連して、識別条件は、関節連結式四辺形の直立部の理想的な2つの平坦面N-Nに対する軸受ジャーナル間の連結点によって想定される位置である。
【0056】
「直立部の理想的な平坦面」とは、関節連結式四辺形における2つの横材上における直立部のヒンジ軸を通る平面を意味する。
【0057】
2つの連結点の双方が、各直立部の理想的な平坦面N-N上に存在する点から選択される場合、ロール・ブロック・システムの第2の運動学的機構110は、互いに位置合わせされない関節連結式四辺形の2つの横材に平行する2点を接合しなければならない。言い換えれば、ロール・ブロック・システムの第2の運動学的機構110は、2つの軸受ジャーナル間の距離Dを、関節連結式四辺形の横材と平行しない直線に沿ってブロックすることができなければならない。転動する場合、ひいては平行四辺形の設定が変わる場合、この距離Dが変わり、かつロール・ブロック・システムは、軸受ジャーナル間の距離のブロックにおいて有効となる。このようなソリューションは、図11図14および図17に例示する実施形態に示されている。
【0058】
2つの連結点のうち、少なくとも一方が、個々の直立部の理想的な平坦面N-N上に存在しない点から選択される場合、ロール・ブロック・システムの第2の運動学的機構110は、任意の方向に沿って互いに位置合わせされる2点を接合することができる。転動する場合、ひいては平行四辺形の設定が変わる場合、前述の2点間のこの距離Dは、何れの場合も変わり、したがって、ロール・ブロック・システムは、この距離のブロックにおいて有効となる。具体的には、第2の運動学的機構110は、図1図10図15図16および図21図24に示す実施形態におけるように、関節連結式平行四辺形の2つの横材に平行な直線に沿った距離もブロックすることができる。
***
【0059】
既に述べたように、本発明によれば、第2の運動学的機構110は、2つの前輪10´、10´´を直に個々の軸受ジャーナル60において2点間で互いに連結し、2点の距離Dは、2つの前輪10´、10´´が転動する場合に変わるが、操舵時には変わらない。したがって、次に、軸受ジャーナル間の連結点の選択は、回転運動だけでなく、操舵非抑止の関数としても行われる。
【0060】
モータ車両の前輪が平行操舵に従う場合、ロール・ブロック・システム100の第2の運動学的機構110は、(回転ブロックを許容するように適切に選択される)2つの軸受ジャーナル間の連結点が個々の軸受ジャーナルの操舵軸から等距離にあれば、操舵を抑止しない。このソリューションは、図1図20に例示する全ての実施形態に示されている。
【0061】
モータ車両の前輪が運動学的操舵に従う場合、ロール・ブロック・システム100の第2の運動学的機構110は、(回転ブロックを許容するように適切に選択される)2つの軸受ジャーナル間における連結点の双方が正確に個々の軸受ジャーナルの操舵軸上に存在すれば、操舵を抑止しない。このソリューションは、図21図24および図25および図26に例示する実施形態において提供される。
【0062】
図21図24および図25および図26に例示する実施形態によれば、2つの軸受ジャーナル60間における2つの連結点は、各々、個々の軸受ジャーナル60の操舵軸S´-S´、S´´-S´´上に位置決めされる。このソリューションは、2つの車輪の操舵が平行であり得ない場合、即ち運動学的操舵が生じ得る場合に採用される。
【0063】
図1図20に例示する実施形態によれば、2つの軸受ジャーナル60間における2つの連結点は、個々の軸受ジャーナル60の操舵軸S´-S´、S´´-S´´から等距離に位置決めされる。このソリューションは、2つの車輪の操舵が常に平行であって、運動学的操舵が生じない場合に採用されてもよい。
***
【0064】
既に述べたように、前述の第2の運動学的機構110がブロックされた設定にあって、距離Dを前述の2つの連結点間に決定すると、第2の運動学的機構110は、2つの車輪間の回転運動を防止し、かつ同時にピッチング(対称性のばね懸架運動)および操舵運動を自由にさせる。
【0065】
回転運動および操舵運動については、既に論じた。以下、回転が非対称性のばね懸架運動によって誘発される場合、およびピッチング運動(対称性のばね懸架動作)の場合について、より詳細に分析する。
【0066】
(車両の回転をもたらすことになる)サスペンションの非対称圧縮、即ち非対称性のばね懸架運動の場合、2つの前輪の軸受ジャーナル間における距離Dが第2の機構110によって決定されれば、圧縮されるサスペンションへの軸受ジャーナルの連結点は、理論上、その中心を他方の連結点に有する球の表面上で移動するように強いられる。しかしながら、サスペンションは、このような回転運動を許容せず、よって、軸受ジャーナルをその初期位置に留まらせる。したがって、第2の運動学的機構110は、ブロックされた設定において、やはり非対称性のばね懸架運動により誘発される回転をブロックすることができる。
【0067】
(2つのサスペンションにおける対称性のばね懸架運動に起因する運動として理解される)ピッチング運動に関しては、ブロックされた設定にある場合であっても、第2の運動学的機構110によって防止されないことは既に述べた。このことは、採用されるサスペンションのタイプ、およびサスペンションの実際の剛性には差があるという事実に関連する効果に関わらず、当てはまる。
【0068】
より詳細には、任意の車両におけるサスペンションの実際の剛性は、幾何学的公差およびコンポーネントの位置合わせという明白な理由により、等しいものではあり得ない。第2の運動学的機構が自由な設定にあるときは、その伸展性が提供され、かつヒンジ手段71、72、73により、第2の運動学的機構は、軸受ジャーナルを妨害することなくその運動に追従することができる。したがって、ピッチング運動は、許容される。
【0069】
第2の運動学的機構がブロックされた設定にある場合、これにより誘導される伸展性および剛性のブロックによって、軸受ジャーナル上へ調和した運動を課すことができ、サスペンションの実際の剛性の差異から生じる挙動の任意の差異が吸収される。したがって、第2の運動学的機構がブロックされた設定にある場合でも、ピッチング運動(対称性のばね懸架運動)は防止されない。
【0070】
***
【0071】
先に言及したように、ロール・ブロック・システム100の第2の運動学的機構120は、ヒンジ手段71、72、73を介して2つの軸受ジャーナル60へ連結される。
【0072】
好ましくは、以後の説明において詳述するように、前記第2の運動学的機構110を2つの軸受ジャーナルへ連結するヒンジ手段は、ボールジョイント71によって、またはボールジョイントと運動学的に等価なデバイス72、73によって構成される。この方法において、第2の運動学的機構120は、詰まりまたはブロックを生じさせることなく、2つの前輪10´、10´´の互いに対する、かつ前輪台車16に対する動きと共に進むことができる。
【0073】
具体的には、ボールジョイントと運動学的に類似するデバイスは、例えば図9図10および図14に例示されているように、互いに直交する軸を有する1対の円筒ヒンジ72および73によって構成される。また、図15に示されているように、一方の軸受ジャーナルへの連結点61上へボールジョイント71を設け、かつもう一方の軸受ジャーナル60への連結点62上へ直交する軸を有する1対の円筒ヒンジ72、73を設けることも想定することができる。
【0074】
好ましくは、但し必然ではなく、互いに直交する軸を有する対の円筒ヒンジ72、73において、各対における2つのヒンジの一方は、そのヒンジ軸を2つの前輪10´、10´´の回転面に直交させる。この方法では、第2の運動学的機構110が自由な設定にあるとき、第1の運動学的機構110は、この回転面に対して平行移動することができる。
【0075】
「回転面」は、モータ車両の長手方向X-Xまたは走行方向を横断する、よってモータ車両の中心線面M-Mに付帯的な平面を意味する。
【0076】
効果的には、ボールジョイント71またはヒンジ対72、73は、軸受ジャーナル60へ、例えば図9図10図14図15図16および図17に示されている軸受ジャーナル自体に一体化された支持要素63によって連結される。
【0077】
***
【0078】
第2の運動学的機構110は、制御デバイス120によって前述の少なくとも2つの異なる設定、即ち少なくとも1つの自由な設定、およびブロックされた設定、を想定するように命令可能であれば、どのように構成されてもよい。
【0079】
好ましくは、図1図14および図16図26に例示する実施形態に提示されているように、第2の運動学的機構110は、長さが伸展可能なロッド111で構成されてもよく、前記ロッド111は、その両端111aおよび111bに対応して軸受ジャーナル60へ、ボールジョイント71、またはボールジョイントと運動学的に類似するデバイス、例えば直交軸を有する1対の円筒ヒンジ72、73等によって固定される。
【0080】
効果的には、ロッド111は、ロッド長さの展開方向に従って互いに入れ子式に関連づけられる少なくとも2つの部分112および113によって形成されてもよい。機能的には、2つの部分112、113による長手方向の入れ子式摺動は、ロッド111の2つの端部111a、111b間、ひいては軸受ジャーナル60上の2つの連結点61および62間の距離Dの変動を決定する。
【0081】
この場合、第2の運動学的機構110を設定する制御デバイス120は、2つのロッド部分の入れ子式摺動をブロックすることに適する、ロッド111の長さの解放可能なブロック手段121で構成される。
【0082】
図9図14図16図17図22、および図25に具体的に例示されている実施形態によれば、ロッド111の長さの解放可能なロック手段121は、ロッド自体の入れ子式に関連づけられる2つの部分112および113に作用するブレーキキャリパ122で構成されてもよい。より詳細には、図27に具体的に例示されているように、キャリパ本体125は、ロッド113の一部分へ固定され、かつ互いに対向しかつロッドの第2の入れ子式部分112における形状に従って成形される2つの摩擦要素126を装備する。ブレーキキャリパ122は、いかなる方法で指令されてもよく、好ましくは、液圧式に作動されるが、ワイヤにより機械的に指令されてもよい。
【0083】
このブレーキキャリパ122は、あらゆる伸展長さの値でロッド111の連続的ブロックを可能にし、よって、車両を任意のロール角(回転角)でブロックさせることができる。
【0084】
図10に例示する代替実施形態によれば、ロッドの長さの解放可能なブロック手段121は、ラチェットシステムで構成されてもよい。より詳細には、このラチェットシステムは、断面が小さい方のロッドの入れ子式部分112上に形成される歯付き要素123と、断面が大きい方のもう一方の入れ子式部分113上で旋回される、歯付き要素123の係合または係合解除を指令することができる可動爪124とを備える。
【0085】
しかしながら、ブレーキキャリパ122とは異なり、このラチェットシステム123、124は、あらゆる伸展長さの値でロッドの連続的ブロックを可能にするのではなく、離散値でのブロックしか可能にしない。したがって、車両は、予め規定されたロール角のみでブロックされ得る。
【0086】
図15に例示する代替実施形態によれば、第2の運動学的機構110は、1対のロッド115および116で構成されてもよく、これらは、円筒ヒンジ117によって、それらの第1の端部115a、116aに対応してコンパスのように互いに連結される。前記2つのロッド115、116は各々、次に、個々の第2の端部115b、116bで2つの軸受ジャーナル60の一方へ連結される。2つの第1の端部115a、116aが互いに連結される頂点に対応して2つのロッド115、116間に形成される角度αを変えれば、2つの第2の端部115b、116b間の、ひいては軸受ジャーナル60との連結点61、62間の距離Dが変わる。
【0087】
この場合、第2の運動学的機構を設定する制御デバイス120は、2つのロッド間における角度αの解放可能なブロック手段121で構成されてもよい。具体的には、図15に例示されているように、これらの解放可能なブロック手段は、第1のロッド115へ固定されるキャリパ118と、他方のロッド116へ固定されていてキャリパ118が作用するディスクセクタ119とを備える、ディスクセクタ119の係合または係合解除を指令することができるディスク・セクタ・ブレーキで構成されてもよい。
***
【0088】
効果的には、前述の第1の運動学的機構20は、2つの懸架アームから成るシステムであってもよい。
【0089】
より詳細には、図25および図26に例示されているように、このようなシステムは、具体的には、モータ車両の中心線面M-Mを横断する共通の回転軸を中心にして回転するために、前輪台車のフレーム16に対する個々の第1の端部で旋回される2つの懸架アーム201および202を備えてもよい。双方のアーム201、202は、第1の端部とは反対側における個々の第2の端部に対応して、2つのばね90により略示されているサスペンション手段によって懸架され、ばね90は、前輪台車のフレーム16に対して旋回されるロッカアーム203によって支持される。2つの前輪10´、10´´の回転運動は、2つの懸架アーム201、202およびロッカアーム203の揺動によって許容される。
【0090】
各アーム201および202は、その第2の端部で、2つの前輪10´および10´´の一方の軸受ジャーナル60を支持する。具体的には、各軸受ジャーナル60は、個々のアーム201および202へ回転式に連結され、その固有の操舵軸S´-S´、S´´-S´´を中心にして回転する。操舵デバイス(不図示)は、軸受ジャーナル60と一体である2つの把持部分36に作用する。
【0091】
図25および図26に例示される実施形態において、第2の運動学的機構110は、具体的には、その両端部に対応して直交軸を有する2つの円筒ヒンジ72、73により軸受ジャーナル60へ固定される、長さ方向に伸展可能な入れ子式ロッド111(既に述べた)で構成される。具体的には、設定の制御デバイスは、ロッド自体における2つの部分の入れ子式摺動を阻止することに適する、ロッド111の長さの解放可能なブロック手段で構成される。具体的には、これらのブロック手段121は、既に述べたように、ブレーキキャリパ122を備える。
【0092】
ロッド111は、2つの軸受ジャーナル60を互いに、個々の軸受ジャーナル60の操舵軸S´-S´、S´´-S´´上に位置決めされる2つの連結点に対応して連結し、よって、固定長のロッド(ブロックされた設定)であっても運動学的操舵が可能になる。具体的には、ロッド11は、平衡状態における2つの車輪の回転軸に対して平行(即ち、地面に平行)であるように配置される。
【0093】
効果的には、ロッド11は、前述の状態において2つの車輪の回転軸および地面に対して傾斜するようにして配置されてもよい。実際には、既に述べたように、第1の運動学的機構20が2つの懸架アームを有するシステムで構成される場合、第2の運動学的機構110は、2つの車輪10´、10´´を直に、運動学的操舵の場合は個々の軸受ジャーナル60の操舵軸S´-S´、S´´-S´´上に存在する、または、平行操舵の場合は各々個々の軸受ジャーナル60の操舵軸S´-S´、S´´-Sから等距離にある、軸受ジャーナルの任意の部分に配置される2つの連結点間における個々の軸受ジャーナル60において、互いに連結することができる。
***
【0094】
効果的には、前述の第1の運動学的機構20は、関節連結式四辺形システムであってもよい。
【0095】
より詳細には、図1図24の例に示されているように、この関節連結式四辺形システムは、中間ヒンジ28に対応して前輪台車のフレーム16へ蝶番づけされる1対の横材24´、24´´を備える。横材24´、24´´は、対向する横方向端部に対応して、サイドヒンジ52に対応して前記横方向端部に対し旋回される直立部48´、48´´により、互いに連結される。横材24´、24´´および直立部48´、48´´は、前述の関節連結式四辺形20を画定する。
【0096】
動作的には、直立部48´、48´´は各々、前記前輪10´、10´´のうち、一方の軸受ジャーナル60を案内しかつ支持する。
【0097】
図11図14および図17に例示する実施形態によれば、2つの軸受ジャーナル間における2つの連結点61および62は、共に、個々の直立部における理想の平坦面上に存在する点から選択されてもよい。この場合、第2の運動学的機構110により連結される2つの連結点は、関節連結式四辺形の2つの横材に非平行な方向に従って互いに位置合わせされる。
【0098】
具体的には、ロール・ブロック・システムの第2の運動学的機構110は、これらの2つの連結点61、62を連結しかつ2つの横材24´、24´´に対して斜めに配置される、長さを伸展できる入れ子式タイプのロッド111(既に述べた)で構成される。
【0099】
具体的には、設定の制御デバイス120は、ブレーキキャリパ型である、ロッドの長さの解放可能なブロック手段(既に述べた)で構成される。
【0100】
図1図10図15図16および図21図24に例示されている実施形態によれば、2つの軸受ジャーナル間における2つの連結点61および62の少なくとも一方は、個々の直立部における理想の平坦面上に存在する点から選択されてもよい。この場合、第2の運動学的機構110によって連結される2つの連結点61、62は、関節連結式四辺形の2つの横材に対して平行に、よって具体的には、車両が平衡状態にあるときの地面に対して平行に互いに位置合わせされる。
【0101】
具体的には、図9図10図16および図22に具体的に例示されているように、ロール(回転)・ブロック・システムの第2の運動学的機構110は、これらの2つの連結点61および62を連結する、長さを伸展できる入れ子式タイプのロッド111(既に述べた)で構成される。この場合、ロッド111は、関節連結式四辺形の2つの横材24´、24´´に対して平行に配置される。
【0102】
ロッドの長さをブロックする解放可能な手段は、図9、16および22に例示する実施形態で提示されているように、既述のブレーキキャリパ122で構成されてもよく、または、図10に例示する実施形態で提示されているように、ラチェットシステム(既に述べた)で構成されてもよい。
【0103】
あるいは、図15に例示する実施形態で提示されているように、ロール・ブロック・システムの第2の運動学的機構110は、コンパスのように互いに連結される(既に述べた)、かつ関節連結式四辺形の横材24´、24´´に対して平行に位置合わせされる2つの連結点61および62を繋ぐ1対のロッド115および116で構成される。第2の運動学的機構を設定する制御デバイス120は、具体的には、ディスク・セクタ・ブレーキ118および119で構成される、2つのロッド間における角度αの解放可能なブロック手段121によって画定される。
***
【0104】
効果的には、例えば図1図15および図21図24に例示する実施形態で提示されているように、関節連結式四辺形の第1の運動学的機構20は、直立部48´、48´´の各々が、個々の前輪10´、10´´の軸受ジャーナル60をその主伸展軸T-Tと同軸的に案内しかつ支持するようにして製造されてもよい。
【0105】
この場合、各前輪のサスペンション手段90は、個々の直立部に一体化され、かつ軸受ジャーナル60に、直立部48´、48´´の主伸展軸T-Tに沿った直進性のばね懸架動作を与える。
【0106】
より詳細には、軸受ジャーナル60は、直立部48´、48´´と同軸に配置されるスリーブ88を備える。軸受ジャーナル60と直立部48´、48´´との間には、車輪10のサスペンション手段90が配置される。例えば、サスペンション手段90は、ばねおよび/またはダンパを備える。
【0107】
具体的には、直立部48´、48´´は、内部に前記サスペンション手段90を少なくとも部分的に収容するように、中空である。好ましくは、サスペンション手段90は、個々の直立部48´、48´´に対して同軸に配置される。
【0108】
好ましくは、このような実施形態によれば、各軸受ジャーナル60と個々の直立部48´、48´´との結合は、円筒型であって、直立部48´、48´´の主伸展軸T-Tに対する軸受ジャーナル60の並進および回転の双方が可能になる。各前輪10´、10´´は、関連する直立部48´、48´´の主伸展軸T-Tおよび対称軸に一致する操舵軸S´-S´、S´´-S´´を有する。
【0109】
具体的には、各直立部48´、48´´は、上端48sから下端48iまで延びる。各前輪10´、10´´の回転ピン68(軸受ジャーナル60と一体式)は、関節連結式四辺形の第1の運動学的機構20に対応する直立部48´、48´´の上端48sと下端48iとの間に配置される。
***
【0110】
効果的には、図16図20に例示する実施形態で提示されているように、関節連結式四辺形の第1の運動学的機構は、直立部48´、48´´の各々が個々の前輪10´、10´´の軸受ジャーナル60を、回転-並進型の運動学的連結システムによってそれ自体とは外的に案内しかつ支持するようにして製造されてもよい。
【0111】
より詳細には、各軸受ジャーナル60は、支持ブラケット65によって支持され、支持ブラケット65は、前述の関節連結式四辺形20へ、各直立部48´、48´´の上端48sおよび下端48iに対応して配置される操舵ヒンジ76によって蝶番づけされる。これらの操舵ヒンジ76は、車輪10´、10´´の個々の操舵軸S´-S´、S´´-S´´を互いに平行に画定する。
【0112】
より詳細には、軸受ジャーナル60は、軸方向の対向する上端および下端に対応して支持ブラケット65へ、個々の傾斜軸B-Bを画定しかつ軸受ジャーナル60と支持ブラケット65との回転-並進連結を実現する少なくとも3つの傾斜ヒンジ65a、65bおよび65cによって蝶番づけされる。具体的には、軸受ジャーナル60は、支持ブラケット65へ、前記ヒンジのうちの2つ、65bおよび65cにより連結ロッド66を介して蝶番づけされる。
【0113】
各前輪のサスペンション手段90は、具体的には、個々の軸受ジャーナル60に一体化されてもよい。より詳細には、軸受ジャーナル60は、ステムにより支持ブラケットへ機械的に連結されるばね(図中には見えない)が内部に挿入されるシースを含む。シースは、ばねの効果により、ステムに対して並進可能である。
【0114】
動作的には、このようなシステムは、曲線軌道に沿ったばね懸架動作を生み出す。
***
【0115】
本発明は、後部における少なくとも1つの駆動輪と、本発明による、かつ具体的にはこれまでに述べた前輪台車8と、を有するモータ車両4に関する。
【0116】
モータ車両が四輪車である場合、後部12における後駆動輪14は、第1の運動学的機構20により、前輪に関連してこれまでに述べたことに従って、互いに、かつ後フレーム13へ連結される。
***
【0117】
本発明は、本発明による、かつ具体的にはこれまでに述べたような前輪台車を有する、三輪または四輪の回転モータ車両の回転運動をブロックする方法に関する。本方法は、
【0118】
-前記第2の運動学的機構110を作動するステップであって、前記第2の運動学的機構110は、回転運動をブロックするために前記ブロックされた設定にされるステップと、
【0119】
-前記第2の運動学的機構110を非活性化する(有効にしない、無効にする)ステップであって、前記第2の運動学的機構110は、回転運動を解放するために前記自由な設定にされるステップと、を含む。
【0120】
本発明は、三輪または四輪の回転モータ車両の回転運動をブロックする方法に関し、前記回転モータ車両は、
【0121】
-前輪台車のフレーム16と、
【0122】
-前輪が同期式かつ鏡面式(対称に)に回転することを可能にする第1の運動学的機構20によって、互いに、かつ前輪台車のフレーム16へ運動学的に連結される少なくとも1対の前輪10´、10´´であって、各車輪10´、10´´は、前記第1の運動学的機構20へ個々の軸受ジャーナル60によって連結され、前記軸受ジャーナル60は、車輪の回転ピン68へ機械的に連結されて、車輪を回転軸R´-R´、R´´-R´´を中心にして回転できるように支持する、少なくとも1対の前輪10´、10´´と、
【0123】
-各軸受ジャーナル60に、前記第1の運動学的機構20に対する少なくとも1つのばね懸架運動を提供するサスペンション手段90と、
【0124】
-各前輪10´、10´´の個々の操舵軸S´-S´、S´´-S´´を中心とする軸受ジャーナル60の回転を指令することに適する操舵デバイス36、86と、を備える。
【0125】
本方法は、2つの車輪10´、10´´を直に個々の軸受ジャーナル60において2つの連結点61、62間で互いに連結する第2の運動学的機構110を提供する動作ステップa)を含み、2点の距離Dは、2つの前輪10´、10´´が転動する場合に変わるが、操舵時には変わらない。
【0126】
前述の第2の運動学的機構110は、次のような2つの異なる設定を想定することができる:
【0127】
-前記第2の運動学的機構110が、2つの車輪10´、10´´の、互いに対する、およびフレーム16に対する動きに受動的に、これらに干渉することなく追従するように構成される、自由な設定、および、
【0128】
-前記第2の運動学的機構110が、前記2つの連結点間の距離Dを設定するように構成され、よって、2つの車輪間の回転運動が防止され、同時にピッチングおよび操舵運動が可能にされる、ブロックされた設定。
【0129】
本方法は、さらに、次のような動作ステップを含む:
【0130】
-b)前記第2の運動学的機構110を起動して、回転運動をブロックするための前記ブロックされた設定を想定させるステップ、および、
【0131】
-c)前記第2の運動学的機構110を非活性化して(有効にせずに、無効にして)、回転運動を可能にするための前記自由な設定を想定させるステップ。
【0132】
本発明は、既に部分的に説明した多くの利点を達成できるようにする。
【0133】
本発明による回転モータ車両の前輪台車は、作動されるとモータ車両のピッチングも操舵も抑止するロール・ブロック・システムを装備している。非作動時において、本発明によるロール・ブロック・システムは、操舵、回転およびばね懸架運動に起因するいかなる運動学的エラーも車輪の動作に導入しない。作動されると、ブロックシステムは、ピッチング(対称性のばね懸架運動)および操舵運動を妨害することなく、回転運動をブロックできるようにする。
【0134】
さらに、本発明によるモータ車両の前輪台車は、構造が単純でありかつ製造およびモータ車両への搭載の両面で経済的であるロール・ブロック・システムを装備している。実際には、これは、関連する長さブロックデバイスを有する長さを伸展できる入れ子式ロッドで構成されても、前輪の2つの軸受ジャーナル間に連結して配置される、2つのロッド自体の間における角度の関連するロックデバイスを備えるコンパス様に連結される2つのロッドで構成されてもよい。
【0135】
本発明によるロール・ブロック・システムは、車輪に回転を同期式かつ鏡面式に提供する運動学的機構とも独立している。
【0136】
提案するシステムは、回転がブロックされることにより、安全性および構造体にかかる荷重の低減のために、ピッチング(対称性のばね懸架運動として理解される)が抑止されないことから、従来のソリューションより経済的であることに加えて、概念的にも、より強力である。
【0137】
したがって、このように考案された本発明は、所定の目的を達成する。
【0138】
明らかに、本発明は、その実際的な実施形態において、こうした理由により、現在の保護の範囲を逸脱することなく、これまでに例示したものとは異なる形式および構成をも想定し得る。
【0139】
さらに、全ての詳細は、技術的に等価である要素に置き換えられてもよく、よって、使用される寸法、形態、および材料は、必要に応じて任意であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27