IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 資生堂の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】ケラチン繊維処理組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20221019BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20221019BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20221019BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/42
A61Q5/00
A61Q5/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018553011
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2017042482
(87)【国際公開番号】W WO2018097304
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2016229949
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】土居 亮介
(72)【発明者】
【氏名】上谷 祐樹
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-095914(JP,A)
【文献】特開2004-217589(JP,A)
【文献】特開2010-275293(JP,A)
【文献】特開2014-201584(JP,A)
【文献】特開2012-149072(JP,A)
【文献】国際公開第2010/016591(WO,A1)
【文献】Hair GeleeMist Silky Straight,Mintel GNPD,MINTEL,2011年03月,ID:1515690,URL(http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/)
【文献】Curl SetLotion,Mintel GNPD,Mintel,2010年08月,ID:1396450,URL(http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/)
【文献】Fluffy Curl Mist,Mintel GNPD,Mintel,2022年05月,ID:4854975,URL(http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/)
【文献】Straight Jelly Water,Mintel GNPD,Mintel,2003年10月,ID:233904,URL(http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/)
【文献】Anti-Wrinkle Eye Fluid,Mintel GNPD,Mintel,2012年09月,ID:1890103,URL(http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスリトールと、
尿素、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレアおよびヒドロキシプロピルウレアから選択される1つ以上
を含有することを特徴とする、洗い流さないタイプの、熱スタイリング用ケラチン繊維処理組成物。
【請求項2】
整髪樹脂を更に含有する、請求項1に記載のケラチン繊維処理組成物。
【請求項3】
組成物のpHが4.0~7.5の範囲内である、請求項1又は2に記載のケラチン繊維処理組成物。
【請求項4】
前記整髪樹脂がアニオン性樹脂である、請求項2または3に記載のケラチン繊維処理組成物。
【請求項5】
前記アニオン性樹脂がブロックコポリマーである、請求項4に記載のケラチン繊維処理組成物。
【請求項6】
前記整髪樹脂の配合量が2.0質量%以下である、請求項2から5のいずれか一項に記載のケラチン繊維処理組成物。
【請求項7】
毛髪の熱スタイリング用である、請求項1から6のいずれか一項に記載のケラチン繊維処理組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケラチン繊維処理組成物に関する。より詳細には、ケラチン繊維、特に毛髪や睫毛のスタイルを形成し、当該スタイルを長時間にわたって保持することができ、なおかつ使用感にも優れたケラチン繊維処理組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケラチン繊維、中でも毛髪について、ヘアアイロンやコテ等の高温整髪器具を用いてカールさせたりストレートに伸ばしたりすることにより望み通りにスタイリングすることが日常的に行われている。しかしながら、そのスタイリングは一時的なものであり、時間の経過とともにスタイルが崩れてしまう。また、高温で処理することにより毛髪にダメージをあたえるという問題もあった。
【0003】
前記の問題を解決するため、形成したヘアスタイルを長時間維持する、あるいは、毛髪のダメージを補修することを目的とする様々な毛髪化粧料(ヘアスタイリング剤)が提案されている。
【0004】
特許文献1には、グルコース、炭素数とpKaが限定されたカルボン酸、及びベンジルアルコールを含み、pHが2.5~4である毛髪処理組成物が記載されている。この毛髪処理組成物は、高温整髪器具によるヘアダメージを抑制できるとされているが、整髪(スタイリング)効果の改善については何ら言及されていない。さらに、このような強酸性領域(pH=2.5~4)の組成物では、水分保持機能を有する尿素を配合すると分解して不快な匂いを生じるという問題もある。
【0005】
特許文献2には、(A)特定構造を有するアミンオキシド基含有樹脂と、(B)塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、尿素、及びパントテニルアルコールから選択される一種以上とを含有する毛髪化粧料が開示され、特にカーラーやホットカーラーを用いてウェーブを作る場合のセット性、セット保持力及び熱による毛髪損傷の防止効果に優れるとされている。しかし、樹脂によってスタイルを保持する化粧料では、樹脂によるごわつき(指通りの悪さ)を感じることがあった。
【0006】
一方、特許文献3には、(a)平均分子量25000~35000の加水分解ケラチン、および(b)羊毛又はヒト毛髪由来の分画タンパク質を、特定比率で配合したスタイリング化粧料が開示され、樹脂感を与えることなく良好にスタイリングを保持できるとされている。
【0007】
睫毛について、特許文献3と同様にタンパク質の加水分解物である加水分解シルクを配合することにより、睫毛への付着性やカール効果が向上することが記載されている(特許文献4)。しかしながら、特許文献4の化粧料ではワックスや樹脂を配合することによりボリューム感を付与することが必要とされている。
【0008】
即ち、これら従来の化粧料では、形状(スタイル)の形成及び保持を配合した樹脂に依存しているものが多く、樹脂によるごわついた感触が避けられなかった。また、特許文献3の化粧料では樹脂は必須とされていないが、達成されるスタイル保持及び使用感触の点で十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5779399号公報
【文献】特許第4136965号公報
【文献】特許第4881567号公報
【文献】特開2016-41673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって本発明における課題は、毛髪及び睫毛を含むケラチン繊維の形状(スタイル)を長時間にわたって保持することができ、なおかつ使用感触にも優れたケラチン繊維処理組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、糖アルコールがケラチン繊維スタイリング機能を有することを初めて見出した。その結果、糖アルコールを配合した組成物を用いることにより、ケラチン繊維のスタイルを長時間にわたって保持する効果に優れ、なおかつ使用感触も改善されるとの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、糖アルコールを含有することを特徴とする、ケラチン繊維処理組成物を提供する。
本発明のケラチン繊維処理組成物は、尿素及び/又は尿素誘導体あるいは整髪樹脂のいずれか一方又は両方を更に含有するのが好ましい。また、本発明のケラチン繊維処理組成物は、そのpHを4.0~7.5の範囲内とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のケラチン繊維処理組成物を毛髪又は睫毛等のケラチン繊維に適用し、好ましくは加熱下でスタイリングすることにより、形成されたスタイルが長期間にわたって保持される。さらに、本発明のケラチン繊維処理組成物は、適用する際の使用感触において極めて優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るケラチン繊維処理組成物(以下、単に「処理組成物」ともいう)は、糖アルコールを必須成分として含有する。
本発明における「ケラチン繊維」とは、繊維状のケラチン物質であってスタイリングの対象となるもの、特に毛髪及び睫毛を意味するものとする。
【0015】
本発明の必須成分である糖アルコールは、ケラチン繊維用化粧料等に配合可能なものであればよく、例えば、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、及びキシリトールから選択される一種又は二種以上である。これらの中でもエリスリトールが特に有効である。
【0016】
糖アルコールは、従来の毛髪化粧料等において「湿潤剤」又は「保湿剤」等として配合されていたが、糖アルコールがケラチン繊維のスタイリング機能を有すること、即ち、ケラチン繊維のスタイリング剤として有効であることは、本発明において初めて見出された。
【0017】
本発明の処理組成物における糖アルコールの配合量は、0.1質量%以上かつ5.0質量%以下、好ましくは0.2~3.0質量%、より好ましくは0.5~2.0質量%である。配合量が0.1質量%未満であると十分なスタイリング保持効果が得られず、配合量が5.0質量%以上となると、べたつきを生じる傾向がある。
【0018】
本発明の処理組成物は、糖アルコールを水性媒体に溶解させた水性基剤であり、可溶化系の水性組成物あるいは水中油型乳化組成物の形態とするのが好ましい。
【0019】
本発明の処理組成物には、尿素及び/又は尿素誘導体を更に配合するのが好ましく、その配合によりスタイリングのセット力が更に向上する。
【0020】
尿素誘導体とは、尿素の水素原子の少なくとも1つがアルキル基等の官能基で置換された構造を有する化合物である。好ましくは、水素原子の少なくとも一つが炭素数1~10のヒドロキシアルキル基で置換された化合物であり、ヒドロキシエチルウレア、ヒドロキシメチルウレア、ヒドロキシプロピルウレア等を例示することができる。
【0021】
本発明の処理組成物における尿素及び/又は尿素誘導体の配合量は、0.1質量%以上かつ5.0質量%以下、好ましくは0.2~3.0質量%、より好ましくは0.5~2.0質量%である。配合量が0.1質量%未満であると添加によるセット力向上効果が得られない。
【0022】
本発明の処理組成物に整髪樹脂を更に配合すると、特に高温多湿環境におけるカールのもちが向上する。本発明で用いられる整髪樹脂には、両性高分子樹脂化合物、カチオン性高分子樹脂化合物、アニオン性高分子樹脂化合物、ノニオン性高分子樹脂化合物が含まれ、これらの中から任意の1種または2種以上を適宜選択することができる。中でも、アニオン性の樹脂を配合するのが好ましい。
【0023】
両性高分子樹脂化合物としては、例えば、一般式(I):
【化1】
(式中、n:m=2:8~8:2の範囲であり、分子量は50000~500000の範囲である。R1およびR6は水素原子またはメチル基、R3およびR4は1~4個の炭素原子を有するアルキル基、R2およびR5は1~4個の炭素原子を有するアルキレン基、R7は1~24個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル基、Aは酸素原子またはNH基であるか、あるいは存在しない。)で表されるジアルキルアミノエチルアクリレート、ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミド等と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等を共重合し、ハロゲン化酢酸で両性化した化合物[市販品:ユカフォーマーAM75(三菱化学社製)]や、アンフォマー(アクゾノーベル社製)で代表されるアクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ブチルアミノエチル、アクリル酸オクチルアミド共重合体等がある。
【0024】
カチオン性高分子樹脂化合物としては、例えば、マーコート100(Lubrizol社製)で代表されるポリ[ジメチルジアリルアンモニウムハライド]型カチオンポリマー、マーコート550(Lubrizol社製)で代表されるジメチルジアリルアンモニウムハライドとアクリルアミドの共重合体カチオン性ポリマー、ポリマーJR-400、ポリマーJR-125およびポリマーJR-30M(以上、ユニオンカーバイド社製)で代表される第4級チッ素含有セルロースエーテル、ポリコートH(ヘンケル社製)で代表されるポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、プロピレンアミン、タロイルアミノの共重合体、ポリコートNH(ヘンケル社製)で代表されるポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、ヤシ油アルキルアミン、ジプロピレントリアミン共重合体、H.C.ポリマー1,1N,2,HCP-3A(以上、大阪有機化学工業社製)、ガフコート755および734(以上、アイエスピー(ISP)社製)で代表されるビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物等がある。
【0025】
ノニオン性高分子樹脂化合物としては、例えば、PVP/VA(アイエスピー社製)、ルビスコールVA(BASF社製)およびPVA6450(大阪有機化学工業社製)で代表されるビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、PVPK(アイエスピー社製)およびルビスコールK(BASF社製)で代表されるポリビニルピロリドン、ルビフレックスD4101(BASF社製)、ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン-酢酸ビニル-アルキルアミノエチルアクリレート共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、デキストリン、ガラクタン、プルラン等が挙げられる。
【0026】
アニオン性高分子樹脂化合物としては、具体的には、アニオン性のブロックコポリマー、例えば、ダイヤホールドA-403(三菱化学社製)、アニセット、KB-1000、KB-100H、B-1015、HS-3000(以上、大阪有機化学工業社製)、プラスサイズL-33、L-53、L-9909BおよびL-6330(以上、互応化学工業社製)で代表されるアニオン性アクリルポリマー(表示名称:(アクリレーツ/メタクリル酸アルキル(C12,13)/アクリル酸メトキシエチル)クロスポリマー、アクリル酸アルキルコポリマーAMP、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1-18)/アルキル(C1-8)アクリルアミド)コポリマーAMP、(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー等)、BEM-42S、WEM-22S(以上、大阪有機化学工業社製)、ガントレッツES-425、ES-225、ES-33(以上、アイエスピー社製)で代表されるメチルビニルエーテルとマレイン酸モノアルキルエステルとの共重合体、レジン28-1310、レジン28-2930(以上、アクゾノーベル社製)、ルビセットCE5055(BASF社製)、酢酸ビニルとクロトン酸との共重合体、ウルトラホールド8(BASF社製)で代表されるアクリル酸とアクリル酸アルキルエステルとN-アルキルアクリルアミドの共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、ペクチン等がある。
【0027】
なお、以上は単なる例示であって、本発明における整髪樹脂はこれらに限定されるものではない。本発明では、アニオン性のアクリル酸系高分子樹脂、例えば、特開2012-162519号公報に記載されたブロックポリマー等が特に好ましく用いられる。
【0028】
本発明の処理組成物における整髪樹脂の配合量は、0.01質量%以上かつ2.0質量%以下、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。配合量が0.01質量%未満であると添加による向上効果が得られず、配合量が2.0質量%を超えると、樹脂によるごわつきが生じ、軽く柔らかな感触が得られない。
【0029】
本発明の処理組成物は、そのpHを4.0~7.5の範囲内に調製するのが好ましく、より好ましくは4.3~7.2、更に好ましくは4.6~7.0の範囲である。pHを前記の範囲内とすることにより、塗布時にべたつかず、軽く柔らかな使用感触が更に向上する。
【0030】
本発明の処理組成物のpHは、化粧料等に通常配合され得るpH調整剤(酸性化剤、塩基性化剤、緩衝系を含む)を配合することにより調整できる。緩衝系としては、乳酸/乳酸ナトリウムなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0031】
また、本発明の処理組成物には、アミノ酸、特に脂肪族アミノ酸、中でもL-アラニンを配合することができ、それを配合することにより、スタイリング保持効果をさらに向上させることができる。
【0032】
本発明の処理組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、毛髪や睫毛等のケラチン繊維処理、特にスタイリングのための組成物に配合可能な他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、多価アルコール、低級アルコール、界面活性剤、高級アルコール、糖類(単糖類、トレハロース等の二糖類、オリゴ糖類)、セラミド、リン脂質、植物抽出物、シリコーンおよびシリコーン誘導体、各種染料、金属イオン封鎖剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料等が挙げられる。
【0033】
本発明の処理組成物は、毛髪や睫毛等のケラチン繊維にカールやストレートのスタイルを形成するための洗い流さない整髪又はスタイリング化粧料として用いることができる。その剤型は特に限定されず、液状、ミスト状、クリーム状、ゲル状、泡状、エアゾール状など種々の形態とすることが可能である。
【0034】
本発明の処理組成物は、好ましくは加熱下でケラチン繊維にスタイルを形成することができる。
具体的な使用方法としては、例えば、毛髪や睫毛等のケラチン繊維に本発明の処理組成物を塗布し、ヘアアイロンやホットカーラー、ロッド、ビューラー等でスタイル形成すればよい。加熱温度としては、40~200℃が好適であり、毛髪については160~200℃の範囲にするのが好ましい。次いで、任意に、ドライヤによるブローセットを施してもよい。
【実施例
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される組成物全量に対する質量%で示す。
【0036】
以下の表1~表3に掲げた処方でケラチン繊維処理組成物を調製した。各例の組成物(試料)を専門パネルに使用してもらい、以下の項目(1)~(6)について、下記の方法及び基準に従って評価した。
(1)セット力(理想通りに毛髪をスタイリング(カール形成)する能力)
(2)カールの持ち(形成されたカール形状を保持(キープ)する能力)
(3)塗布時のべたつきのなさ(試料を毛髪に塗布しているときに感じるべたついた感触がないこと)
(4)カールのごわつきのなさ(カール形成した後、毛流れに沿って毛束に指を通した際にごわついた感覚がないこと、「指通りのよさ」とも言える)
(5)カールのやわらかさ(形成されたカール自体の柔らかな感触)
(6)カールの軽さ(形成されたカールの軽い感触)
【0037】
<評価方法及び評価基準>
(1) セット力(カール形成能)
長さ10cmの毛髪(1g)からなる毛束に各例の試料0.3gを均一に塗布し、2時間自然乾燥させた後、180℃に設定したヘアアイロンに巻き、ヘアアイロンから外した毛束の見かけの長さ(L1)を測定した。測定値(L1)に基づき、カールした毛束の径がヘアアイロンの直径(L0)と一致することを理想値(100%)として、セット力を次式により定義した。
セット力(%)=100-(L1-L0)÷(10-L0)×100
(この値が100% に近いほどセット力が高いことを示す。)
A++:セット力が70%以上
A+:セット力が60%以上
A:セット力が50%以上
B:セット力が50%未満
【0038】
(2)カールの持ち(キープ力)
上記(1)と同様にセット(カール形成)した毛束を、25℃湿度80%の恒温恒湿室に一端を固定して吊るし、120分後に取り出し、再び毛束の見かけの長さ(L2)を測定した。測定値(L2)に基づき、カールの持ち(キープ力)を次式により定義した。
キープ力(%)=100-(L2-L0)÷(10-L0)×100
(この値が大きいほどカールの持ち(キープ力)に優れることを示す。)
A++:キープ力が25%以上
A+:キープ力が20%以上
A:キープ力が10%以上
B:キープ力が10%未満
【0039】
(3)~(6)その他評価項目
10名の専門パネラーによる使用テストを行い、各例の試料を手に取り、髪へ塗布した際のべたつきのなさや、カール形成後のごわつきのなさ、やわらかさや軽さを下記評価点基準に基づいて評価した。
(評価点基準)
5点:認められる
4点:やや認められる
3点:わずかに認められる
2点:あまり認められない
0点:全く認められない
(評価基準)
A+:合計点が40点以上
A:合計点が25点以上40点未満
B:合計点が25点未満
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示すように、糖アルコールであるエリスリトール、ソルビトール、又はマルチトールを配合した実施例1~3は、全ての項目で優れた評価であった。中でもエリスリトールが最も優れていた。これらに対して、単糖類であるグルコース又は特許文献3に記載の加水分解ケラチンを配合した比較例1及び2では、特にカールの持ちが劣っていた。
【0042】
【表2】
【0043】
表2に示すように、糖アルコールに加えて尿素を配合することにより、セット力が更に向上した(実施例4)。また、糖アルコール単独あるいは糖アルコールと尿素の組み合わせを配合した組成物のpHを4.0~7.5に調整した実施例5~9では、特にカールの持ちが極めて優れており、pHを4.6~7.0の範囲に調整した実施例6及び7は、評価した全ての項目で極めて優れる(A+)という結果が得られた。
【0044】
これらの実施例とは対象的に、特許文献2に記載されたアミンオキシド基含有樹脂(カチオン性樹脂)を2質量%配合することにより良好なカール持ちを達成した比較例3及び4では、糖アルコール及び尿素の有無に拘らず、塗布時のべたつきがあり、樹脂によるごわつきが感じられ、柔らかく軽い使用感が得られなかった。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示した結果から、糖アルコール(エリスリトール)に加えて、尿素及びL-アラニンを加えると、全ての評価項目において極めて優れていた。これらの組成物にアニオン性整髪樹脂を2質量%まで配合しても、塗布時のべたつきやごわついた感触が生じず、柔らかで軽いカールが形成された。これらに対して、糖アルコールを配合せずにアニオン性整髪樹脂のみを配合した比較例5及び6では、ごわついた感触が生じ、柔らかなカールが得られなかった。