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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】半導体装置及びモータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20221019BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20221019BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
H02P29/024
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019081522
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020176998
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 久晃
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-237459(JP,A)
【文献】特開2015-94635(JP,A)
【文献】特開2018-61350(JP,A)
【文献】特開2007-166735(JP,A)
【文献】特開2004-212225(JP,A)
【文献】特開平11-118520(JP,A)
【文献】特開2012-145371(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068684(WO,A1)
【文献】特開2010-288352(JP,A)
【文献】特開2013-140065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
H02P 29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号であるレゾルバ信号をデジタル化するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器によってデジタル化された前記レゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換する領域変換部と、
前記領域変換部によって周波数領域に変換された前記レゾルバ信号のスペクトルを分析するスペクトル分析部と、
前記スペクトル分析部からの出力信号に基づいて、前記レゾルバ信号に関するエラーを検出するエラー検出部と、を備え、
前記スペクトルは、パワースペクトル又は振幅スペクトルであって、
前記スペクトル分析部は、
前記スペクトルにおいて、上側帯波及び下側帯波のそれぞれに発生する最大ピークにおける周波数を用いて、レゾルバの励磁信号の周波数を算出し、
前記エラー検出部は、
算出された前記励磁信号の周波数を指示値と比較し、前記励磁信号の周波数のエラーを検出する、
半導体装置。
【請求項2】
前記指示値に基づいて前記励磁信号を生成し、前記レゾルバに対して出力する励磁信号生成回路をさらに備える、
請求項に記載の半導体装置。
【請求項3】
アナログ信号であるレゾルバ信号をデジタル化するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器によってデジタル化された前記レゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換する領域変換部と、
前記領域変換部によって周波数領域に変換された前記レゾルバ信号のスペクトルを分析するスペクトル分析部と、
前記スペクトル分析部からの出力信号に基づいて、前記レゾルバ信号に関するエラーを検出するエラー検出部と、を備え、
前記スペクトルは、パワースペクトル又は振幅スペクトルであって、
前記スペクトル分析部は、
前記スペクトルにおいて、上側帯波及び下側帯波のそれぞれに発生する最大ピークにおける周波数を用いて、レゾルバの回転周波数を算出し、
前記エラー検出部は、
算出された前記回転周波数を指示値と比較し、前記回転周波数のエラーを検出する
導体装置。
【請求項4】
アナログ信号であるレゾルバ信号をデジタル化するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器によってデジタル化された前記レゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換する領域変換部と、
前記領域変換部によって周波数領域に変換された前記レゾルバ信号のスペクトルを分析するスペクトル分析部と、
前記スペクトル分析部からの出力信号に基づいて、前記レゾルバ信号に関するエラーを検出するエラー検出部と、を備え、
前記スペクトルは、パワースペクトル又は振幅スペクトルであって、
前記エラー検出部は、
前記スペクトルにおいて、上側帯波及び下側帯波のそれぞれに発生する最大ピークの少なくとも一方の大きさに基づいて、前記レゾルバ信号の振幅のエラーを検出する
導体装置。
【請求項5】
前記エラー検出部からの信号に基づいて、デジタル化された前記レゾルバ信号の振幅を補正する信号補正回路と、
前記信号補正回路によって補正された前記レゾルバ信号からデジタル角度信号を演算する角度演算回路と、をさらに備えた、
請求項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記領域変換部は、前記信号補正回路によって補正された前記レゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換する、
請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
アナログ信号であるレゾルバ信号をデジタル化するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器によってデジタル化された前記レゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換する領域変換部と、
前記領域変換部によって周波数領域に変換された前記レゾルバ信号のスペクトルを分析するスペクトル分析部と、
前記スペクトル分析部からの出力信号に基づいて、前記レゾルバ信号に関するエラーを検出するエラー検出部と、を備え、
前記スペクトルは、パワースペクトル又は振幅スペクトルであって、
前記エラー検出部は、
前記スペクトルにおいて、上側帯波及び下側帯波のそれぞれに発生する最大ピーク以外のピークをノイズと判定し、前記ノイズの大きさに基づいて、前記レゾルバ信号の異常ノイズを検出する
導体装置。
【請求項8】
アナログ信号であるレゾルバ信号をデジタル化するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器によってデジタル化された前記レゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換する領域変換部と、
前記領域変換部によって周波数領域に変換された前記レゾルバ信号のスペクトルを分析するスペクトル分析部と、
前記スペクトル分析部からの出力信号に基づいて、前記レゾルバ信号に関するエラーを検出するエラー検出部と、を備え、
前記スペクトルは、パワースペクトル又は振幅スペクトルであって、
前記エラー検出部は、
前記スペクトルにおいて、上側帯波及び下側帯波のそれぞれに発生する最大ピークの少なくとも一方の大きさとバックグラウンドノイズの大きさとに基づいて、前記レゾルバ信号の信号ノイズ比のエラーを検出する
導体装置。
【請求項9】
モータと、
前記モータの回転角を検出するレゾルバと、
前記レゾルバから出力されたレゾルバ信号に基づいて、制御信号を生成する半導体装置と、
前記制御信号に基づいて、前記モータを駆動する駆動回路と、を備え、
前記半導体装置は、
アナログ信号である前記レゾルバ信号をデジタル化するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器によってデジタル化された前記レゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換する領域変換部と、
前記領域変換部によって周波数領域に変換された前記レゾルバ信号のスペクトルを分析するスペクトル分析部と、
前記スペクトル分析部からの出力信号に基づいて、前記レゾルバ信号に関するエラーを検出するエラー検出部と、
前記アナログ/デジタル変換器によってデジタル化された前記レゾルバ信号からデジタル角度信号を演算する角度演算回路と、を備え、
前記スペクトル分析部は、
前記モータの回転速度による前記レゾルバ信号の振幅の変化を示す第1のマップと、
前記モータの回転速度による前記レゾルバ信号の位相差の変化を示す第2のマップと、を生成し、
前記モータの回転速度に応じて、前記第1及び第2のマップに基づいて、前記デジタル角度信号を補正する、
モータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、モータ制御システム、及びエラー検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転角θをレゾルバによって検出し、検出されたレゾルバ信号をレゾルバ/デジタル変換器によりデジタル信号に変換し、モータをフィードバック制御するモータ制御システムが知られている。レゾルバは、固定子(ステータ)と、その内部を回転する回転子(ロータ)と、を備えた角度センサである。回転子は、例えばモータの回転軸の外周面に固定され、モータの回転軸と共に回転する。そのため、レゾルバの回転角はモータの回転角θに等しい。
【0003】
レゾルバ信号は、例えばsinωctに比例する励磁信号に、sinθ及びcosθが重畳した2相アナログ信号である。ここで、ωcは励磁信号の周波数(以下、「励磁周波数」という)、tは時間である。そのため、2つのレゾルバ信号は、振幅をAとすると、Asinωct・sinθ及びAsinωct・cosθと表現できる。すなわち、理論上、2つのレゾルバ信号は、同一振幅Aかつ位相差Δφ=90°を有している。
【0004】
そのため、レゾルバ信号に基づいて、レゾルバ信号の振幅A、位相差Δφ、レゾルバ回転周波数ωr(=dθ/dt)、励磁周波数ωcなどのエラー(異常)を検出できる。
例えば、特許文献1には、レゾルバ信号に関するエラー検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-42411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レゾルバ信号は種々のノイズの影響を受け易いため、特許文献1に開示されたような実時間上でのレゾルバ信号に関するエラー検出では、検出精度に問題があった。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態に係る半導体装置は、デジタル化されたレゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換する領域変換部と、周波数領域に変換された前記レゾルバ信号のスペクトルを分析するスペクトル分析部と、前記スペクトル分析部からの出力信号に基づいて、前記レゾルバ信号に関するエラーを検出するエラー検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、レゾルバ信号に関するエラーを精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る半導体装置100の構成を示すブロック図である。
図2】2つのアナログレゾルバ信号ar(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)の波形を示すグラフである。
図3】フーリエ変換されたレゾルバ信号のパワースペクトルを模式的に示すグラフである。
図4】フーリエ変換されたレゾルバ信号の位相差スペクトルを模式的に示す複素単位円である。
図5】第1の実施の形態に係る半導体装置100の構成を示す詳細なブロック図である。
図6】領域変換部DTの一例を示すブロック図である。
図7】デジタルレゾルバ信号drのうちf(t)sinθをハニング窓により窓関数処理した様子を示すグラフである。
図8】レジスタREGに格納された周波数領域信号fdの一例を示す表である。
図9】スペクトル分析部SAの一例を示すブロック図である。
図10】エラー検出部EDの一例を示すブロック図である。
図11】励磁周波数判定部31におけるエラー判定方法を模式的に示すパワースペクトルのグラフである。
図12】レゾルバ信号振幅判定部34におけるエラー判定方法を模式的に示すパワースペクトルのグラフである。
図13】ノイズ判定部35におけるエラー判定方法を模式的に示すパワースペクトルのグラフである。
図14】直流成分判定部36におけるエラー判定方法を模式的に示すパワースペクトルのグラフである。
図15】第1の実施の形態の変形例に係る半導体装置100の構成を示す詳細なブロック図である。
図16】第1の実施の形態の変形例に係る半導体装置100の構成を示す詳細なブロック図である。
図17】第2の実施の形態に係る半導体装置200の構成を示す詳細なブロック図である。
図18】信号補正回路SCの一例を示すブロック図である。
図19】第3の実施の形態に係る半導体装置300の構成を示す詳細なブロック図である。
図20】ピーク周波数ωp1、ωp2におけるパワー(ピークパワー)のモータ回転速度依存性を示すグラフである。
図21】2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)の位相差Δφのモータ回転速度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回路で構成でき、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。従って、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又はそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
(第1の実施の形態)
<半導体装置100の構成>
まず、図1を参照して、第1の実施の形態に係る半導体装置及びモータ制御システムについて説明する。図1は、第1の実施の形態に係る半導体装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施の形態に係る半導体装置100は、アナログ/デジタル変換器ADC1、領域変換部DT、スペクトル分析部SA、エラー検出部EDを備えている。
【0012】
半導体装置100は、レゾルバRESから出力されたアナログレゾルバ信号arに基づいて、スイッチング駆動回路SDを制御するパルス制御信号pwmを出力する。図1の例は、レゾルバRESがモータMTの回転角θを検出し、半導体装置100から出力されたパルス制御信号pwmに基づいて、スイッチング駆動回路SDがモータMTを駆動するモータ制御システムである。すなわち、半導体装置100は、モータ制御システムを構成するモータ制御用の半導体装置である。
【0013】
レゾルバRESは、固定子と、その内部を回転する回転子と、を備えた角度センサである。回転子は、例えばモータMTの回転軸の外周面に固定され、モータMTの回転軸と共に回転する。そのため、レゾルバRESの回転角はモータMTの回転角θに等しい。
【0014】
上述の通り、レゾルバRESから出力されるアナログレゾルバ信号arは、時間tの関数f(t)で表される励磁信号に、sinθ及びcosθが重畳した2相信号である。そのため、図1に示すように、2つのアナログレゾルバ信号arは、f(t)sinθ及びf(t)cosθと表現できる。
【0015】
ここで、図2は、2つのアナログレゾルバ信号ar(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)の波形を示すグラフである。f(t)で表される励磁信号は、励磁周波数をωcとして、例えばsinωctに比例する。そのため、2つのアナログレゾルバ信号arは、振幅をAとして、Asinωct・sinθ及びAsinωct・cosθと表現できる。すなわち、理論上、2つのレゾルバ信号は、同一振幅Aかつ一定の位相差Δφ=90°を有している。
【0016】
半導体装置100について説明する。
アナログ/デジタル変換器ADC1は、レゾルバRESから出力されたアナログレゾルバ信号arをデジタルレゾルバ信号drに変換する。ここで、デジタルレゾルバ信号drも、アナログレゾルバ信号arと同様に、Asinωct・sinθ及びAsinωct・cosθと表現できる。
領域変換部DTは、デジタルレゾルバ信号drを時間領域から周波数領域に変換する。例えば、領域変換部DTは、デジタルレゾルバ信号drをフーリエ変換する。
【0017】
スペクトル分析部SAは、周波数領域に変換されたデジタルレゾルバ信号drのスペクトルを分析する。スペクトル分析部SAは、パワースペクトル及び位相差スペクトルの少なくともいずれかを分析する。また、スペクトル分析部SAはパワースペクトルに代えて、振幅スペクトルを分析してもよい。
【0018】
図3は、フーリエ変換されたレゾルバ信号のパワースペクトルを模式的に示すグラフである。図3の横軸は周波数、縦軸はパワーを示している。図3に示すように、フーリエ変換されたレゾルバ信号のパワースペクトルでは、励磁周波数ωcを中心として、上側帯波及び下側帯波のそれぞれに最大ピークが発生する。図3に示すように、最大ピークにおける周波数(以下、「ピーク周波数」という)をωp1、ωp2とすると、ωp1=ωc+ωr及びωp2=ωc-ωrである。ωrはレゾルバ回転周波数である。
【0019】
ここで、励磁周波数ωc=(ωp1+ωp2)/2、及びレゾルバ回転周波数ωr=(ωp1-ωp2)/2の等式が成立する。そのため、スペクトル分析部SAにおいて、2つのピーク周波数ωp1、ωp2から励磁周波数ωc及びレゾルバ回転周波数ωrが精度良くかつ容易に得られる。
【0020】
図4は、フーリエ変換されたレゾルバ信号の位相差スペクトルを模式的に示す複素単位円である。図4に示した複素単位円は、2つのレゾルバ信号(sin相及びcos相)の位相差Δφを示している。位相差スペクトルによって、2つのレゾルバ信号の位相差Δφが精度良くかつ容易に得られる。
【0021】
エラー検出部EDは、スペクトル分析部SAからの出力信号に基づいて、レゾルバ信号に関するエラー(異常)を検出する。換言すると、エラー検出部EDは、周波数領域に変換されたレゾルバ信号のスペクトルの分析結果に基づいて、レゾルバ信号に関するエラーを検出する。
【0022】
例えば、スペクトル分析部SAが算出した励磁周波数ωc及びレゾルバ回転周波数ωrの観測値を指示値と比較し、励磁周波数ωc及びレゾルバ回転周波数ωrのエラーを精度良くかつ容易に検出できる。
また、ピーク周波数ωp1、ωp2におけるパワー値からレゾルバ信号のパワーすなわち振幅のエラーも精度良くかつ容易に検出できる。
【0023】
さらに、上記2つのピーク周波数ωp1、ωp2以外の周波数に表れるピークはノイズであるため、そのピーク値から異常ノイズも精度良くかつ容易に検出できる。
また、周波数0におけるパワー値から直流成分のエラーも精度良くかつ容易に検出できる。
なお、エラー検出部EDがパワースペクトルを利用したこれらのエラー検出を行う場合、これら全てのエラー検出を行う必要はない。
【0024】
図4に示すように、得られた位相差Δφを期待値90°と比較することによって、レゾルバ信号の位相差Δφのエラーも精度良くかつ容易に検出できる。例えば、図4に示すように、2つのレゾルバ信号(sin相及びcos相)の位相差Δφが期待値90°を中心とする所定の正常範囲から外れた場合、エラー検出部EDは、エラーを検出する。
【0025】
<効果の説明>
以上の通り、本実施の形態に係る半導体装置100では、領域変換部DTにおいて、レゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換し、スペクトル分析部SAにおいて、周波数領域に変換されたレゾルバ信号のスペクトルを分析する。すなわち、時間領域から周波数領域に変換されたレゾルバ信号のスペクトルを分析する。
【0026】
レゾルバ信号は励磁周波数ωc及びレゾルバ回転周波数ωrの2つの周波数成分しか有さない。そのため、実時間上でのエラー検出に比べ、本実施の形態に係る半導体装置100では、ノイズの影響が抑制され、精度良くかつ容易にエラーを検出できる。
さらに、エラー検出が容易になるため、例えばエラー検出部EDの回路構成を簡易にでき、半導体装置100のチップ面積を削減できる。
【0027】
<半導体装置100の詳細な構成>
次に、図5を参照して、第1の実施の形態に係る半導体装置について、より詳細に説明する。図5は、第1の実施の形態に係る半導体装置100の構成を示す詳細なブロック図である。図5に示すように、半導体装置100は、レゾルバ/デジタル変換器RDC、処理部CPU、PWM信号生成回路PG、及びアナログ/デジタル変換器ADC2を備えている。
【0028】
ここで、レゾルバ/デジタル変換器RDCは、図1に示したアナログ/デジタル変換器ADC1、領域変換部DT、スペクトル分析部SA、及びエラー検出部EDを全て備えている。さらに、レゾルバ/デジタル変換器RDCは、レジスタREG、角度演算回路AA、及び励磁信号生成回路EGを備えている。
【0029】
アナログ/デジタル変換器ADC2は、アナログ電流信号acをデジタル電流信号dcに変換し、処理部CPUに出力する。アナログ電流信号acは、スイッチング駆動回路から出力された駆動電流Idrを電流センサ等によって検出した信号である。
【0030】
レゾルバ/デジタル変換器RDCは、レゾルバRESから出力されたアナログレゾルバ信号arをデジタル角度信号daに変換し、処理部CPUに出力する。より詳細には、アナログ/デジタル変換器ADC1が、アナログレゾルバ信号arをデジタルレゾルバ信号drに変換する。そして、角度演算回路AAが、デジタルレゾルバ信号drからデジタル角度信号daを演算し、処理部CPUに出力する。デジタル角度信号daは、レゾルバの回転角θのデジタル値である。
【0031】
また、レゾルバ/デジタル変換器RDCにおける励磁信号生成回路EGは、処理部CPUから出力された励磁周波数指示値ωc_instに基づいて、f(t)で表される励磁信号esを出力する。ここで、上述の通り、f(t)で表される励磁信号esは、例えばsinωctに比例する。つまり、励磁信号生成回路EGは、励磁周波数ωcを励磁周波数指示値ωc_instに設定し、励磁信号esを出力する。
なお、図5に示すように、励磁周波数指示値ωc_instは、エラー検出部EDにも入力される。
【0032】
処理部CPUは、デジタル角度信号da、デジタル電流信号dc、及び要求信号reqに基づいて、制御信号ctrを生成する。制御信号ctrはPWM信号生成回路PGに出力される。処理部CPUは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。要求信号reqは、半導体装置100の外部から入力され、例えばモータMTの回転速度の指示値を示す信号である。
【0033】
より詳細には、処理部CPUは、モータMTからフィードバックされるデジタル角度信号da及びデジタル電流信号dcから現状のモータMTの回転速度を算出する。そして、処理部CPUは、算出した現状のモータMTの回転速度と要求信号reqとを比較して、モータMTの回転速度を増加もしくは減少させるための制御信号ctrを出力する。
PWM信号生成回路PGは、処理部CPUから出力された制御信号ctrに基づいて、パルス制御信号pwmを生成し、スイッチング駆動回路SDに出力する。
【0034】
本実施の形態に係る半導体装置100では、レゾルバ/デジタル変換器RDCが、領域変換部DT、レジスタREG、スペクトル分析部SA、及びエラー検出部EDを備えている。
【0035】
まず、領域変換部DTについて説明する。ここで、図6は、領域変換部DTの一例を示すブロック図である。図6の例では、領域変換部DTは、バンドパスフィルタ11、窓関数処理部12、及びフーリエ変換部13を備えている。つまり、図6に示した例では、時間領域/周波数領域変換としてフーリエ変換を用いている。
【0036】
バンドパスフィルタ11は、デジタルレゾルバ信号drの所定範囲の周波数のみを通過させる。バンドパスフィルタ11によって、デジタルレゾルバ信号drのノイズを抑制できる。このように、デジタルレゾルバ信号drを時間領域から周波数領域に変換する前に、バンドパスフィルタ11によってデジタルレゾルバ信号drからノイズを除去してもよい。ここで、バンドパスフィルタ11が通過させる周波数の範囲は、励磁周波数ωc及びレゾルバ回転周波数ωrが取り得る範囲などから適宜設定すればよい。
なお、バンドパスフィルタ11に代えて、ローパスフィルタを用いてもよい。
【0037】
窓関数処理部12は、バンドパスフィルタ11を通過したデジタルレゾルバ信号drを窓関数処理する。窓関数処理によって、フーリエ変換における時間窓による誤差を低減できる。このように、フーリエ変換部13においてデジタルレゾルバ信号drをフーリエ変換する前に、窓関数処理部12によってデジタルレゾルバ信号drを窓関数処理してもよい。ここで、図7は、デジタルレゾルバ信号drのうちf(t)sinθをハニング窓により窓関数処理した様子を示すグラフである。
【0038】
フーリエ変換部13は、窓関数処理されたデジタルレゾルバ信号drをフーリエ変換する。フーリエ変換部13によって、デジタルレゾルバ信号drが時間領域から周波数領域に変換される。フーリエ変換部13からフーリエ変換後のレゾルバ信号である周波数領域信号fdが出力される。フーリエ変換部13は、例えば高速フーリエ変換回路から構成される。高速フーリエ変換回路を用いることによって、処理速度を高められる。
【0039】
次に、レジスタREGについて説明する。レジスタREGは、周波数領域信号fdを例えば一時的に保持する。ここで、図8は、レジスタREGに格納された周波数領域信号fdの一例を示す表である。図8に示すように、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)のそれぞれについて、フーリエ変換後の周波数領域信号fdの値がレジスタREGに保持される。具体的には、周波数毎に実部及び虚部がレジスタREGに保持される。
【0040】
図8の例では、周波数0、ω1~ω4について実部及び虚部の値がデータとしてレジスタREGに保持されている。当然のことながら、実際には、より多くの周波数についてのデータが保持される。データ数を削減するために、周波数0の周辺、及び図3に示した2つのピーク周波数ωp1(=ωc+ωr)、ωp2(=ωc-ωr)の周辺のみのデータをレジスタREGに保持してもよい。
【0041】
レゾルバ信号f(t)sinθについては、周波数0における実部及び虚部の値がそれぞれR0s、I0sである。そして、周波数ω1~ω4では、実部の値がそれぞれR1s~R4s、虚部の値がそれぞれI1s~I4sである。同様に、レゾルバ信号f(t)cosθについては、周波数0における実部及び虚部の値がそれぞれR0c、I0cである。そして、周波数ω1~ω4では、実部の値がそれぞれR1s~R4s、虚部の値がそれぞれI1s~I4sである。
なお、レジスタREGに代えて、メモリに周波数領域信号fdを保持してもよい。
【0042】
次に、スペクトル分析部SAについて説明する。ここで、図9は、スペクトル分析部SAの一例を示すブロック図である。図9の例では、スペクトル分析部SAは、位相差スペクトル算出部21、パワースペクトル算出部22、ピーク周波数抽出部23、励磁周波数算出部24、及びレゾルバ回転周波数算出部25を備えている。
【0043】
位相差スペクトル算出部21は、レジスタREGに保持されたデータから各周波数について、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)の位相差Δφを算出する。レジスタREGに保持されたデータが、図8に示した表の場合、位相差スペクトル算出部21は、周波数0、及びω1~ω4について、f(t)sinθとf(t)cosθとの位相差Δφを算出する。
位相差スペクトル算出部21は、算出した位相差スペクトルphsを出力する。
【0044】
例えば、周波数ω1の場合、レゾルバ信号f(t)sinθの実部R1s及び虚部I1sからレゾルバ信号f(t)sinθの位相φsが得られる。レゾルバ信号f(t)cosθの実部R1c及び虚部I1cからレゾルバ信号f(t)cosθの位相φcが得られる。その結果、両信号の位相差Δφ=φc-φsが得られる。ここで、cosθ=sin(θ+90°)であるため、位相差Δφの期待値は、いずれの周波数においても90°である。
【0045】
パワースペクトル算出部22は、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)のそれぞれについて、レジスタREGに保持されたデータから各周波数のパワー値を算出する。レジスタREGに保持されたデータが、図8に示した表の場合、パワースペクトル算出部22は、周波数0、及びω1~ω4のパワー値を算出する。
パワースペクトル算出部22は、算出したパワースペクトルpwsを出力する。
【0046】
パワー値は、実部及び虚部の二乗和である。例えば、周波数ω1の場合、レゾルバ信号f(t)sinθのパワー値は(R1s)+(I1s)である。他方、レゾルバ信号f(t)cosθのパワー値は(R1c)+(I1c)である。全周波数についてパワー値を算出することによって、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)のそれぞれについて、図3に示したパワースペクトルが得られる。
【0047】
ピーク周波数抽出部23は、図3に示したパワースペクトルの上側帯波及び下側帯波のそれぞれにおいて、パワー値が最大となるピーク周波数を抽出する。すなわち、ピーク周波数抽出部23は、図3に示すピーク周波数ωp1、ωp2を抽出し、出力する。ここで、図3に示すように、2つのピーク周波数ωp1、ωp2と、励磁周波数ωc及びレゾルバ回転周波数ωrとの間には、ωp1=ωc+ωr及びωp2=ωc-ωrの関係が成立する。
【0048】
励磁周波数算出部24は、ピーク周波数抽出部23が出力したピーク周波数ωp1、ωp2から励磁周波数ωcを算出する。具体的には、励磁周波数算出部24は、励磁周波数ωc=(ωp1+ωp2)/2の等式を用いて、励磁周波数ωcを算出する。そして、励磁周波数算出部24は、算出した励磁周波数ωcを励磁周波数観測値ωc_obsとして出力する。このように、パワースペクトルから抽出された2つのピーク周波数ωp1、ωp2を用いて、励磁周波数ωcが精度良くかつ容易に得られる。
【0049】
レゾルバ回転周波数算出部25は、ピーク周波数抽出部23が出力したピーク周波数ωp1、ωp2からレゾルバ回転周波数ωrを算出する。具体的には、レゾルバ回転周波数ωr=(ωp1-ωp2)/2の等式を用いて、レゾルバ回転周波数ωrを算出する。そして、レゾルバ回転周波数算出部25は、算出したレゾルバ回転周波数ωrをレゾルバ回転周波数観測値ωr_obsとして出力する。このように、パワースペクトルから抽出された2つのピーク周波数ωp1、ωp2を用いて、レゾルバ回転周波数ωrが精度良くかつ容易に得られる。
【0050】
次に、エラー検出部EDについて説明する。ここで、図10は、エラー検出部EDの一例を示すブロック図である。図10の例では、エラー検出部EDは、エラー判定部30及びエラー出力制御部40を備えている。そして、エラー判定部30は、励磁周波数判定部31、レゾルバ回転周波数判定部32、レゾルバ信号位相差判定部33、レゾルバ信号振幅判定部34、ノイズ判定部35、直流成分判定部36、及びS/N判定部37を備えている。
【0051】
図10に示すように、励磁周波数判定部31は、励磁周波数算出部24から出力された励磁周波数観測値ωc_obsと励磁周波数指示値ωc_instとを比較し、励磁周波数ωcがエラーか否かを判定する。励磁周波数指示値ωc_instは、図5に示すように、処理部CPUから出力される。励磁周波数判定部31は、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)から得られる励磁周波数観測値ωc_obsの少なくとも一方を用いてエラー判定を行う。
【0052】
ここで、図11は、励磁周波数判定部31におけるエラー判定方法を模式的に示すパワースペクトルのグラフである。図11に示すように、励磁周波数観測値ωc_obsと励磁周波数指示値ωc_instとの偏差Δωcが所定の基準値を所定の回数もしくは時間超えた場合、励磁周波数判定部31は、励磁周波数ωcがエラーであると判定する。
【0053】
このように、励磁周波数観測値ωc_obsと励磁周波数指示値ωc_instとを比較することによって、励磁周波数ωcのエラーを精度良くかつ容易に検出できる。また、励磁周波数判定部31の回路構成を簡易にできる。
励磁周波数判定部31は、判定結果をエラー出力制御部40に出力する。
【0054】
図10に示すように、レゾルバ回転周波数判定部32は、レゾルバ回転周波数算出部25から出力されたレゾルバ回転周波数観測値ωr_obsとレゾルバ回転周波数指示値ωr_instとを比較し、レゾルバ回転周波数ωrがエラーか否かを判定する。レゾルバ回転周波数判定部32は、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)から得られるレゾルバ回転周波数観測値ωr_obsの少なくとも一方を用いてエラー判定を行う。
【0055】
レゾルバ回転周波数観測値ωr_obsとレゾルバ回転周波数指示値ωr_instとの偏差Δωrが所定の基準値を所定の回数もしくは時間超えた場合、レゾルバ回転周波数判定部32は、レゾルバ回転周波数ωrがエラーであると判定する。ここで、図5に示すように、レゾルバ回転周波数指示値ωr_instは、要求信号req(モータMTの回転速度指示値)に基づいて、処理部CPUから出力される。
【0056】
このように、レゾルバ回転周波数観測値ωr_obsとレゾルバ回転周波数指示値ωr_instとを比較することによって、レゾルバ回転周波数ωrのエラーを精度良くかつ容易に検出できる。また、レゾルバ回転周波数判定部32の回路構成を簡易にできる。
レゾルバ回転周波数判定部32は、判定結果をエラー出力制御部40に出力する。
【0057】
図10に示すように、レゾルバ信号位相差判定部33は、位相差スペクトルphs及びピーク周波数ωp1、ωp2に基づいて、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)の位相差Δφがエラーか否かを判定する。具体的には、レゾルバ信号位相差判定部33は、ピーク周波数ωp1、ωp2における2つのレゾルバ信号の位相差Δφの両方もしくは一方を期待値90°と比較する。例えば、図4に示すように、位相差Δφが期待値90°を中心とする所定の正常範囲から所定の回数もしくは時間外れた場合、レゾルバ信号位相差判定部33は、位相差Δφがエラーであると判定する。
【0058】
このように、位相差スペクトルから得られた位相差Δφを期待値90°と比較することによって、レゾルバ信号の位相差Δφのエラーも精度良くかつ容易に検出できる。また、レゾルバ信号位相差判定部33の回路構成を簡易にできる。
レゾルバ信号位相差判定部33は、判定結果をエラー出力制御部40に出力する。
【0059】
図10に示すように、レゾルバ信号振幅判定部34は、パワースペクトルpws及びピーク周波数ωp1、ωp2に基づいて、レゾルバ信号の振幅がエラーか否かを判定する。ここで、振幅の二乗がパワー値であるため、パワースペクトルpwsに基づいて、振幅のエラーを判定できる。レゾルバ信号振幅判定部34は、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)から得られるパワースペクトルpwsの少なくとも一方を用いてエラー判定を行う。
【0060】
ここで、図12は、レゾルバ信号振幅判定部34におけるエラー判定方法を模式的に示すパワースペクトルのグラフである。例えば、ピーク周波数ωp1、ωp2におけるパワー値と期待値との偏差の両方もしくは一方が、所定の基準範囲から所定の回数もしくは時間外れた場合、レゾルバ信号振幅判定部34は、レゾルバ信号の振幅がエラーであると判定する。両方の偏差の平均値を用いてもよい。図12は、2つのピーク周波数ωp1、ωp2におけるパワー値が所定の基準範囲を下回り、異常であると判断された場合を示している。
【0061】
このように、パワースペクトルpwsのピーク周波数ωp1、ωp2におけるパワー値に基づいて、レゾルバ信号の振幅のエラーを精度良くかつ容易に検出できる。また、レゾルバ信号振幅判定部34の回路構成を簡易にできる。
レゾルバ信号振幅判定部34は、判定結果をエラー出力制御部40に出力する。
【0062】
図10に示すように、ノイズ判定部35は、パワースペクトルpws及びピーク周波数ωp1、ωp2に基づいて、異常ノイズが発生しているか否かを判定する。ノイズ判定部35は、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)から得られるパワースペクトルpwsの少なくとも一方を用いてエラー判定を行う。
【0063】
ここで、図13は、ノイズ判定部35におけるエラー判定方法を模式的に示すパワースペクトルのグラフである。図13に示すように、2つのピーク周波数ωp1、ωp2以外の周波数に表れるピークはノイズである。そのため、ノイズのピーク値が所定の基準値を所定の回数もしくは時間超えた場合、ノイズ判定部35は、異常ノイズであると判定する。
【0064】
このように、パワースペクトルpwsにおいてピーク周波数ωp1、ωp2以外の周波数に表れるピークに基づいて、異常ノイズを精度良くかつ容易に検出できる。また、ノイズ判定部35の回路構成を簡易にできる。
ノイズ判定部35は、判定結果をエラー出力制御部40に出力する。さらに、ノイズ判定部35は、異常ノイズが発生した周波数を、保持してもよいし、エラー出力制御部40に出力してもよい。
【0065】
図10に示すように、直流成分判定部36は、パワースペクトルpwsに基づいて、直流成分(周波数0におけるパワー値)がエラーか否かを判定する。直流成分判定部36は、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)から得られるパワースペクトルpwsの少なくとも一方を用いてエラー判定を行う。
【0066】
ここで、図13は、直流成分判定部36におけるエラー判定方法を模式的に示すパワースペクトルのグラフである。図13に示すように、期待値0である周波数0におけるパワー値が基準値を所定の回数もしくは時間超えた場合、直流成分判定部36は、直流成分がエラーであると判定する。
【0067】
このように、パワースペクトルpwsに基づいて、直流成分(周波数0におけるパワー値)のエラーを精度良くかつ容易に検出できる。また、直流成分判定部36の回路構成を簡易にできる。
直流成分判定部36は、判定結果をエラー出力制御部40に出力する。
【0068】
図10に示すように、S/N判定部37は、パワースペクトルpwsに基づいて、S/N(信号ノイズ比)がエラーか否かを判定する。S/Nにおける信号はピーク周波数ωp1、ωp2における信号の少なくとも一方、ノイズはバックグラウンドノイズである。S/N判定部37は、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)から得られるパワースペクトルpwsの少なくとも一方を用いてエラー判定を行う。パワースペクトルpwsから得られるS/Nが所定の基準値を所定の回数もしくは時間下回った場合、S/N判定部37は、S/Nがエラーであると判定する。
【0069】
このように、パワースペクトルpwsに基づいて、S/Nのエラーを精度良くかつ容易に検出できる。また、S/N判定部37の回路構成を簡易にできる。
S/N判定部37は、判定結果をエラー出力制御部40に出力する。
【0070】
エラー出力制御部40は、エラー判定部30の各判定部(レゾルバ信号位相差判定部33等)から出力された判定結果に基づいて、エラー信号errを生成する。そして、エラー出力制御部40は、例えば割り込み処理によって、処理部CPUにエラー信号errを出力する。
レゾルバ信号にエラー信号errが発生した場合、例えば、処理部CPUはモータMTを安全に停止させる。あるいは、デジタル電流信号dcのみに基づいて、処理部CPUはモータMTの制御を継続してもよい。
【0071】
<効果の説明>
以上の通り、本実施の形態に係る半導体装置100では、領域変換部DTにおいて、レゾルバ信号を時間領域から周波数領域に変換し、スペクトル分析部SAにおいて、周波数領域に変換されたレゾルバ信号のスペクトルを分析する。すなわち、時間領域から周波数領域に変換されたレゾルバ信号のスペクトルを分析する。
【0072】
レゾルバ信号は励磁周波数ωc及びレゾルバ回転周波数ωrの2つの周波数成分しか有さない。そのため、実時間上でのエラー検出に比べ、本実施の形態に係る半導体装置100では、ノイズの影響が抑制され、精度良くかつ容易にエラーを検出できる。
さらに、エラー検出が容易になるため、上述の通り、エラー検出部EDのエラー判定部30の回路構成を簡易にでき、半導体装置100のチップ面積を削減できる。
【0073】
<第1の実施の形態の変形例>
ここで、図15図16を参照して、第1の実施の形態の変形例に係る他の半導体装置について説明する。図15図16は、第1の実施の形態の変形例に係る半導体装置100の構成を示す詳細なブロック図である。
【0074】
まず、図15に示した半導体装置100について説明する。
図5に示した半導体装置100では、レゾルバ/デジタル変換器RDCは、アナログ/デジタル変換器ADC1、領域変換部DT、レジスタREG、スペクトル分析部SA、及びエラー検出部EDを備えている。
これに対し、図15に示した半導体装置100では、アナログ/デジタル変換器ADC1、領域変換部DT、レジスタREG、スペクトル分析部SA、及びエラー検出部EDが、レゾルバ/デジタル変換器RDCに含まれない。
【0075】
ここで、レゾルバ/デジタル変換器RDCは、角度演算回路AA2、励磁信号生成回路EGを備えている。図5に示した角度演算回路AAは、アナログ/デジタル変換器ADC1が出力したデジタルレゾルバ信号drからデジタル角度信号daを演算する。これに対し、図15に示した角度演算回路AA2は、レゾルバRESから出力されたアナログレゾルバ信号arからデジタル角度信号daを直接演算する。
その他の構成は、図5に示した半導体装置100と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
次に、図16に示した半導体装置100について説明する。
図5に示した半導体装置100は、レゾルバ/デジタル変換器RDCの内部に励磁信号生成回路EGを備えている。これに対し、図15に示した半導体装置100は、内部に励磁信号生成回路EGを備えておらず、外部に励磁信号生成回路EGが設けられている。そして、励磁信号生成回路EGから出力された励磁周波数指示値ωc_instがエラー検出部EDに入力される。
その他の構成は、図5に示した半導体装置100と同様であるため、説明を省略する。
図15図16に示した半導体装置100においても、図5に示した半導体装置100と同様の効果が得られる。
【0077】
(第2の実施の形態)
<半導体装置200の詳細な構成>
次に、図17を参照して、第2の実施の形態に係る半導体装置について詳細に説明する。図17は、第2の実施の形態に係る半導体装置200の構成を示す詳細なブロック図である。図5に示した半導体装置100に対し、図17に示した半導体装置200では、レゾルバ/デジタル変換器RDCが、信号補正回路SCをさらに備えている。
【0078】
図17に示すように、信号補正回路SCは、アナログ/デジタル変換器ADC1と角度演算回路AAとの間に設けられている。アナログ/デジタル変換器ADC1から出力されたデジタルレゾルバ信号drが信号補正回路SCに入力される。信号補正回路SCは、エラー検出部EDからの出力信号に基づいて、デジタルレゾルバ信号drを補正し、補正されたデジタルレゾルバ信号dr_crrを出力する。角度演算回路AAは、補正されたデジタルレゾルバ信号dr_crrからデジタル角度信号daを演算し、処理部CPUに出力する。
【0079】
また、デジタルレゾルバ信号drに代えて補正されたデジタルレゾルバ信号dr_crrが領域変換部DTに入力される。
なお、第2の実施の形態に係る半導体装置200においても、デジタルレゾルバ信号drが領域変換部DTに入力されてもよい。
【0080】
ここで、図18を参照して、信号補正回路SCの詳細な構成について説明する。図18は、信号補正回路SCの一例を示すブロック図である。図18の例では、信号補正回路SCは、オフセット調整部51、振幅調整部52、遅延調整部53、及びノイズ除去フィルタ54を備えている。
【0081】
オフセット調整部51は、図14に示したパワースペクトルにおける直流成分(周波数0におけるパワー値)が0になるように、デジタルレゾルバ信号drのオフセット量を調整する。例えば、図18に示すように、オフセット調整部51は、直流成分判定部36が判定に使用した直流成分値を受け取り、オフセット量を調整する。2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)について、それぞれの直流成分を用いてオフセット量を調整することが好ましい。
【0082】
振幅調整部52は、図12に示したピーク周波数ωp1、ωp2におけるパワー値が期待値に近付くように、デジタルレゾルバ信号drの振幅を調整する。例えば、図18に示すように、振幅調整部52は、レゾルバ信号振幅判定部34が判定に使用したピーク周波数ωp1、ωp2におけるパワー値と期待値との偏差の両方もしくは一方に基づいて、デジタルレゾルバ信号drの振幅を調整する。偏差の両方を用いる場合、例えば偏差の平均値を用いて、デジタルレゾルバ信号drの振幅が調整される。2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)について、それぞれの偏差を用いて振幅を調整することが好ましい。
【0083】
遅延調整部53は、図4に示した2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)の位相差Δφが期待値90°に近付くように、デジタルレゾルバ信号dr(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)の両方もしくは一方の遅延量を調整する。例えば、図18に示すように、遅延調整部53は、レゾルバ信号位相差判定部33が判定に使用した位相差Δφを受け取り、遅延量を調整する。
【0084】
ノイズ除去フィルタ54は、デジタルレゾルバ信号drからノイズを除去する。ノイズ除去フィルタ54として、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ又はIIR(Infinite Impulse Response)フィルタなどを用いることができる。例えば、図18に示すように、ノイズ除去フィルタ54は、S/N判定部37が判定に使用したパワースペクトルのS/Nを受け取り、フィルタ係数を調整する。2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)について、それぞれのS/Nを用いてフィルタ係数を調整することが好ましい。
【0085】
以上の通り、第2の実施の形態に係る半導体装置200では、信号補正回路SCがデジタルレゾルバ信号drを補正する。補正されたデジタルレゾルバ信号dr_crrを用いることによって、角度演算回路AAは、デジタル角度信号daを精度良く演算できる。
また、エラー検出部EDからフィードバックされる信号に基づいて、信号補正回路SCはデジタルレゾルバ信号drを自動的に補正できる。
【0086】
その他の構成は、図5に示した半導体装置100と同様であるため、説明を省略する。
図17に示した半導体装置200においても、図5に示した半導体装置100と同様の効果が得られる。
【0087】
(第3の実施の形態)
<半導体装置300の詳細な構成>
次に、図19を参照して、第3の実施の形態に係る半導体装置について詳細に説明する。図19は、第3の実施の形態に係る半導体装置300の構成を示す詳細なブロック図である。図5に示した半導体装置100に対し、図19に示した半導体装置300では、処理部CPUが、パワースペクトル及び位相差スペクトルを格納するためのメモリMEMをさらに備えている。
【0088】
ここで、図20は、ピーク周波数ωp1、ωp2におけるパワー(ピークパワー)のモータ回転速度による変化を示すグラフである。図20に示したピークパワーのモータ回転速度依存性は、スペクトル分析部SAのパワースペクトル算出部22が算出したパワースペクトルから得られる。具体的には、事前にモータ回転速度を低速から高速まで変化ながらパワースペクトルのピークパワーを調査することによって、図20に示したような特性が得られる。
【0089】
また、図21は、2つのレゾルバ信号(f(t)sinθ及びf(t)cosθ)の位相差Δφのモータ回転速度による変化を示すグラフである。図21に示した位相差Δφのモータ回転速度依存性は、スペクトル分析部SAの位相差スペクトル算出部21が算出した位相差スペクトルから得られる。具体的には、事前にモータ回転速度を低速から高速まで変化ながら位相差スペクトルを調査することによって、図21に示したような特性が得られる。
【0090】
本実施の形態に係る半導体装置300では、図20に示したピークパワーのモータ回転速度依存性を示すマップ(第1のマップ)と、図21に示した位相差Δφのモータ回転速度依存性のマップ(第2のマップ)とが、メモリMEMに格納されている。これらのマップは、図19に破線矢印によって示したように、事前にスペクトル分析部SAによって生成され、メモリMEMに格納される。
【0091】
そのため、処理部CPUは、各モータ回転速度において、メモリMEMに格納されたマップを参照し、角度演算回路AAから出力されたデジタル角度信号daを補正する。図17に示した信号補正回路SCを設けずに、デジタル角度信号daを補正できる。
【0092】
なお、処理部CPUに代えてレゾルバ/デジタル変換器RDCが、図20及び図21に示したマップを格納するためのメモリMEMを備えていてもよい。そして、例えば角度演算回路AAがマップを参照し、予め補正されたデジタル角度信号daを出力してもよい。
【0093】
その他の構成は、図5に示した半導体装置100と同様であるため、説明を省略する。
図19に示した半導体装置300においても、図5に示した半導体装置100と同様の効果が得られる。
【0094】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0095】
11 バンドパスフィルタ
12 窓関数処理部
13 フーリエ変換部
21 位相差スペクトル算出部
22 パワースペクトル算出部
23 ピーク周波数抽出部
24 励磁周波数算出部
25 レゾルバ回転周波数算出部
30 エラー判定部
31 励磁周波数判定部
32 レゾルバ回転周波数判定部
33 レゾルバ信号位相差判定部
34 レゾルバ信号振幅判定部
35 ノイズ判定部
36 直流成分判定部
37 S/N判定部
40 エラー出力制御部
51 オフセット調整部
52 振幅調整部
53 遅延調整部
54 ノイズ除去フィルタ
100、200、300 半導体装置
AA、AA2 角度演算回路
ADC1、ADC2 アナログ/デジタル変換器
CPU 処理部
DT 領域変換部
ED エラー検出部
EG 励磁信号生成回路
MEM メモリ
MT モータ
PG PWM信号生成回路
RDC レゾルバ/デジタル変換器
REG レジスタ
RES レゾルバ
SA スペクトル分析部
SC 信号補正回路
SD スイッチング駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21