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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】駆動装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
F16H25/20 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019542297
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2018034104
(87)【国際公開番号】W WO2019054467
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2017176902
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-346707(JP,A)
【文献】米国特許第3053104(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
軸方向に沿って延び、ネジ部を有する軸体と、
前記軸体を回転させるモータと、
前記軸体が挿通される中空円筒部材であって、第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間で前記軸方向に沿って移動可能で、前記本体に対する回転が規制される中空円筒部材と、
前記中空円筒部材に回転自在に支持され、前記中空円筒部材とともに前記軸方向に移動する被駆動部材と、
前記中空円筒部材を前記第2の軸方向位置に向かって前記軸方向に付勢する第1の付勢部材と、
前記軸体の前記ネジ部に螺合し、前記第1の軸方向位置から前記第2の軸方向位置までの間において前記中空円筒部材の前記軸方向の移動を規制しつつ前記軸方向に移動するナット部材と、
前記ナット部材を挟んで前記第1の付勢部材とは反対側で前記ナット部材と係合することにより前記ナット部材の前記軸方向の移動を規制するクラッチ部材であって、前記被駆動部材とともに回転するクラッチ部材と
を備えた、駆動装置。
【請求項2】
前記ナット部材は、前記中空円筒部材が前記第2の軸方向位置に位置している状態で、前記軸体上を前記クラッチ部材に向かって移動するように構成される、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記被駆動部材及び前記中空円筒部材の一方には、周方向に沿って延びる第1のガイド溝が形成され、
前記被駆動部材及び前記中空円筒部材の他方には、前記第1のガイド溝に係合する第1の係合部が設けられる、
請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記本体及び前記中空円筒部材の一方には、前記軸方向に延びる第2のガイド溝が形成され、
前記本体及び前記中空円筒部材の他方には、前記第2のガイド溝に係合する第2の係合部が設けられる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記クラッチ部材と前記被駆動部材の一方には、前記軸方向に延びる第3のガイド溝が形成され、
前記クラッチ部材と前記被駆動部材の他方には、前記第3のガイド溝に係合する第3の係合部が設けられる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記ナット部材は、前記中空円筒部材の内周面に弾性的に接触する複数のバネ片を有している、請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記中空円筒部材は、前記ナット部材に向かって突出する第4の係合部を有し、
前記ナット部材は、前記中空円筒部材の前記第4の係合部に係合する第5の係合部を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記中空円筒部材の前記第4の係合部及び前記ナット部材の前記第5の係合部のそれぞれは、前記ナット部材と前記中空円筒部材との係合及び前記ナット部材の前記中空円筒部材からの離脱を容易にする傾斜面を有する、請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記クラッチ部材は、前記ナット部材に向かって突出する第6の係合部を有し、
前記ナット部材は、前記クラッチ部材の前記第6の係合部に係合する第7の係合部を有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記クラッチ部材の前記第6の係合部及び前記ナット部材の前記第7の係合部のそれぞれは、前記ナット部材と前記クラッチ部材との係合及び前記ナット部材の前記クラッチ部材からの離脱を容易にする傾斜面を有する、請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記クラッチ部材を前記第1の付勢部材が前記中空円筒部材を付勢する方向とは反対の方向に付勢する第2の付勢部材をさらに備え、
前記クラッチ部材は、前記被駆動部材に対して前記軸方向に移動可能に構成される、
請求項9又は10のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記第2の付勢部材は、前記軸体の端部と前記クラッチ部材との間に配置される、請求項11に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記被駆動部材に作用する前記軸方向に沿った力が前記第1の付勢部材により吸収されるように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の駆動装置を備えた、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置及び電子機器に係り、特に電子機器内の被駆動部材を駆動するための駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器には小型化とともに多機能化が求められており、電子機器の内部に組み込まれている部品を駆動して様々な機能を実現することが望まれている。例えば、カメラが組み込まれたスマートフォンにおいては、様々な角度からの撮影を可能とするために、カメラを回転させる駆動装置をスマートフォンの内部に組み込んだものも開発されている(例えば、特許文献1参照)。最近では、電子機器の機能がますます高度化しており、電子機器の内部の部品を軸周りに回転させるだけではなく、軸方向に伸縮させる機能も必要とされることがある。
【0003】
しかしながら、ますます小型化される電子機器においては、部品を動かすための駆動装置を設置するスペースが非常に限られているため、部品を軸周りに回転させる駆動装置や部品を軸方向に伸縮させる駆動装置を電子機器に組み込むことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-15794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、被駆動部材の軸周りの回転や軸方向の伸縮を行うことができる駆動装置を提供することを第1の目的とする。
【0006】
また、本発明は、内部に組み込まれた被駆動部材の軸周りの回転や軸方向の伸縮を実現することができる小型の電子機器を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様によれば、被駆動部材の軸周りの回転や軸方向の伸縮を行うことができる駆動装置が提供される。この駆動装置は、本体と、軸方向に沿って延び、ネジ部を有する軸体と、上記軸体を回転させるモータと、上記軸体が挿通される中空円筒部材とを備える。この中空円筒部材は、第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間で上記軸方向に沿って移動可能で、上記本体に対する回転が規制される。上記駆動装置は、上記中空円筒部材に回転自在に支持され、上記中空円筒部材とともに上記軸方向に移動する被駆動部材と、上記中空円筒部材を上記第2の軸方向位置に向かって上記軸方向に付勢する第1の付勢部材と、上記軸体の上記ネジ部に螺合し、上記第1の軸方向位置から上記第2の軸方向位置までの間において上記中空円筒部材の上記軸方向の移動を規制しつつ上記軸方向に移動するナット部材と、上記ナット部材を挟んで上記第1の付勢部材とは反対側で上記ナット部材と係合することにより上記ナット部材の上記軸方向の移動を規制するクラッチ部材とを備える。上記クラッチ部材は、上記被駆動部材とともに回転する。
【0008】
このような構成により、中空円筒部材が第1の軸方向位置から第2の軸方向位置までの間に位置しているときには、モータの駆動により、ナット部材と軸体のネジ部とを含む送りネジ機構によってナット部材を軸方向に移動させ、第1の付勢部材による付勢力によって中空円筒部材とともに被駆動部材を軸方向に移動させることができる。また、ナット部材を挟んで第1の付勢部材とは反対側でクラッチ部材がナット部材と係合することによって、送りネジ機構によるナット部材の軸方向の移動が規制されるので、モータの駆動により軸体とともにナット部材が回転し、これによりクラッチ部材及び被駆動部材を回転させることができる。特に、1つの装置で被駆動部材を軸方向に伸縮させるとともに軸周りに回転させることが可能となり、装置の小型化が可能となる。
【0009】
上記ナット部材は、上記中空円筒部材が上記第2の軸方向位置に位置している状態で、上記軸体上を上記クラッチ部材に向かって移動するように構成されていることが好ましい。このような構成によれば、被駆動部材の軸方向の移動の動作と軸周りの回転の動作との間に被駆動部材が動かない工程ができるので、構成要素の急激な運動の変化を避けることができ、装置の故障を防止することができる。
【0010】
上記被駆動部材及び上記中空円筒部材の一方には、周方向に沿って延びる第1のガイド溝が形成され、上記被駆動部材及び上記中空円筒部材の他方には、上記第1のガイド溝に係合する第1の係合部が設けられていてもよい。このような構成によれば、第1の係合部を第1のガイド溝に係合させることによって、被駆動部材を軸周りに回転させることができる。
【0011】
上記本体及び上記中空円筒部材の一方には、上記軸方向に延びる第2のガイド溝が形成され、上記本体及び上記中空円筒部材の他方には、上記第2のガイド溝に係合する第2の係合部が設けられていてもよい。このような構成によれば、第2の係合部を第2のガイド溝に係合させることによって、中空円筒部材を本体内で軸方向に移動させることができる。
【0012】
上記クラッチ部材と上記被駆動部材の一方には、上記軸方向に延びる第3のガイド溝が形成され、上記クラッチ部材と上記被駆動部材の他方には、上記第3のガイド溝に係合する第3の係合部が設けられていてもよい。このような構成によれば、第3の係合部を第3のガイド溝に係合させることによって、クラッチ部材を被駆動部材に対して軸方向に移動させることができる。
【0013】
上記ナット部材は、上記中空円筒部材の内周面に弾性的に接触する複数のバネ片を有することが好ましい。このような構成によれば、ナット部材のバネ片と中空円筒部材の内周面との接触によりナット部材の回転を規制することができるので、ナット部材に複数のバネ片を形成するだけで上述した送りネジ機構を実現することができる。
【0014】
上記中空円筒部材は、上記ナット部材に向かって突出する第4の係合部を有し、上記ナット部材は、上記中空円筒部材の上記第4の係合部に係合する第5の係合部を有することが好ましい。このような構成によれば、中空円筒部材の第4の係合部とナット部材の第5の係合部とが互いに係合するので、この係合によってナット部材の回転が確実に規制され、ナット部材を確実に軸方向に移動させることができる。
【0015】
この場合において、上記中空円筒部材の上記第4の係合部及び上記ナット部材の上記第5の係合部のそれぞれは、上記ナット部材と上記中空円筒部材との係合及び上記ナット部材の上記中空円筒部材からの離脱を容易にする傾斜面を有することが好ましい。このような構成によれば、回転するナット部材の第5の係合部の傾斜面が中空円筒部材の第4の係合部の傾斜面に突き当たると、第5の係合部の傾斜面が第4の係合部の傾斜面に摺接しながら軸方向に移動することとなるため、ナット部材を回転させながら容易に中空円筒部材に係合させることができ、またナット部材を回転させながら容易に中空円筒部材から離脱させることができる。
【0016】
上記クラッチ部材は、上記ナット部材に向かって突出する第6の係合部を有し、上記ナット部材は、上記クラッチ部材の上記第6の係合部に係合する第7の係合部を有することが好ましい。このような構成によれば、クラッチ部材の第6の係合部とナット部材の第7の係合部とが互いに係合するので、この係合によってナット部材の回転が確実にクラッチ部材に伝達され、被駆動部材を確実に回転させることができる。
【0017】
この場合において、上記クラッチ部材の上記第6の係合部及び上記ナット部材の上記第7の係合部のそれぞれは、上記ナット部材と上記クラッチ部材との係合及び上記ナット部材の上記クラッチ部材からの離脱を容易にする傾斜面を有することが好ましい。このような構成によれば、回転するナット部材の第7の係合部の傾斜面がクラッチ部材の第6の係合部の傾斜面に突き当たると、第7の係合部の傾斜面が第6の係合部の傾斜面に摺接しながら軸方向に移動することとなるため、ナット部材を回転させながら容易にクラッチ部材に係合させることができ、またナット部材を回転させながら容易にクラッチ部材から離脱させることができる。
【0018】
上記クラッチ部材を上記第1の付勢部材が上記中空円筒部材を付勢する方向とは反対の方向に付勢する第2の付勢部材をさらに備え、上記クラッチ部材は、上記被駆動部材に対して上記軸方向に移動可能に構成されることが好ましい。この場合において、上記第2の付勢部材を上記軸体の端部と上記クラッチ部材との間に配置することが好ましい。このような構成によれば、ナット部材とクラッチ部材とが係合している状態で被駆動部材を無理に回転させようとすると、第2の付勢部材による付勢の下でクラッチ部材がナット部材に対して軸方向に移動してナット部材の第7の係合部とクラッチ部材の第6の係合部との係合が解除され、クラッチ部材がわずかに回転した後、コイルバネの付勢によってクラッチ部材がナット部材に対して軸方向に移動してナット部材とクラッチ部材とが再び係合する。したがって、ナット部材や軸体に大きな回転力が作用することがなく、駆動装置が壊れてしまうことを防止することができる。
【0019】
上記被駆動部材に作用する上記軸方向に沿った力が上記第1の付勢部材により吸収されるように構成されていることが好ましい。このような構成により、被駆動部材が伸長した状態で、誤って被駆動部材に対して軸方向に大きな力が作用した場合であっても、その力が第1の付勢部材によって吸収されるので、そのような力が駆動装置に与える衝撃を緩和することができる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、上述した駆動装置を備えた小型の電子機器が提供される。このような電子機器によれば、内部に組み込まれた被駆動部材を軸周りに回転させることや軸方向に伸縮させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被駆動部材を軸方向に伸縮させることや軸周りに回転させることが可能となり、装置の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態における駆動装置を含む電子機器の一部を示す模式図である。
図2図2は、図1の駆動装置の分解斜視図である。
図3図3は、図1の駆動装置の縦断面図である。
図4図7は、図2の駆動装置の軸体の斜視図である。
図5図5は、図2の駆動装置の中空円筒部材の部分破断斜視図である。
図6図6は、図2の駆動装置のナット部材の斜視図である。
図7図7は、図2の駆動装置のクラッチ部材の斜視図である。
図8A図8Aは、図2の駆動装置の動作を説明するための部分破断斜視図であり、中空円筒部材が第1の軸方向位置にある状態を示している。
図8B図8Bは、図2の駆動装置の動作を説明するための部分破断斜視図であり、中空円筒部材が第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間にある状態を示している。
図8C図8Cは、図2の駆動装置の動作を説明するための部分破断斜視図であり、中空円筒部材が第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間にある状態を示している。
図8D図8Dは、図2の駆動装置の動作を説明するための部分破断斜視図であり、中空円筒部材が第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間にある状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る駆動装置を含む電子機器の実施形態について図1から図8Dを参照して詳細に説明する。なお、図1から図8Dにおいて、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図8Dにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態における駆動装置1を含む電子機器2の一部を示す模式図である。この駆動装置1は、電子機器2の内部に埋設されている。図1の矢印で示すように、駆動装置1は、被駆動部材10を電子機器2の表面2Aから+Z方向に伸長させ、伸長させた状態でZ軸周りに回転させ、また-Z方向に縮退させて電子機器2の内部に収容できるように被駆動部材10を駆動するものである。なお、本実施形態では、便宜的に、図1における+Z方向を「上」又は「上方」といい、-Z方向を「下」又は「下方」ということとする。
【0025】
電子機器2には、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータなど、任意の電子機器が含まれる。また、駆動装置1により駆動される被駆動部材10には、撮像素子を備えたカメラモジュール、フラッシュ、各種のセンサを備えたセンサユニットなど、任意の機能的デバイスが含まれる。本実施形態では、被駆動部材10としてカメラモジュールを備えている駆動装置1を例として説明するが、これに限られないことは言うまでもない。
【0026】
図1に示すように、駆動装置1は、被駆動部材としてのカメラモジュール10と、電子機器2に固定される底部プレート20と、底部プレート20に取り付けられた本体30と、カメラモジュール10を駆動するためのモータ40とを含んでいる。本体30は、底部プレート20との間に後述する歯車機構を収容する空間を形成するベース部31と、ベース部31から軸方向(Z方向)に延びる円筒部32とを含んでいる。例えば、モータ40としてはステッピングモータなどを用いることができる。
【0027】
図2は、駆動装置1の分解斜視図、図3は、縦断面図である。図2及び図3に示すように、カメラモジュール10は、直方体状の本体部12と、本体部12から-Z方向に延びる円筒状の接続部14とを含んでいる。本体30の円筒部32の内側には、Z方向に延びる中空円筒部材50が収容されており、この中空円筒部材50の上端部に、上述したカメラモジュール10の接続部14が挿入されている。なお、簡略化のため、図3では一部の構成要素のみが断面で示されている。
【0028】
中空円筒部材50の中空部には、Z方向(軸方向)に沿って延びる軸体60が挿通される。図4は、軸体60の斜視図である。図4に示すように、軸体60は、外周部にネジ溝が形成されたネジ部61と、ネジ部61の上方に位置し、ネジ部61よりも径の大きい大径部62と、大径部62から上方に延び、ネジ部61よりも径の小さい小径部63と、小径部63の上端に形成された円板64とを有している。
【0029】
図2及び図3に示すように、モータ40は、本体30のベース部31上に取り付けられている。モータ40の回転軸41には歯車21が固定されており、この歯車21は歯車22と噛合するようになっている。また、歯車22は歯車23と噛合するようになっており、この歯車23には軸体60の下端部65(図4参照)が固定されている。したがって、モータ40を駆動すると、回転軸41が回転し、歯車21~23を介して軸体60が回転するようになっている。
【0030】
図5は、中空円筒部材50の部分破断斜視図である。図5に示すように、中空円筒部材50の上端部には、半径方向外側に延びる2つのフランジ51,52が形成されており、これらのフランジ51,52の間にガイド溝(第1のガイド溝)53が形成されている。すなわち、中空円筒部材50の上端部には、周方向に沿って延びるガイド溝53が形成されている。図3に示すように、カメラモジュール10の本体部12には半径方向内側に向かって延びる係合部(第1の係合部)13が形成されており、この係合部13が中空円筒部材50のガイド溝53に係合するようになっている。このような構成により、カメラモジュール10の係合部13が中空円筒部材50のガイド溝53にガイドされ、カメラモジュール10がZ軸周りに回転できるようになっている。
【0031】
また、図5に示すように、中空円筒部材50の下端部には、半径方向外側に向かって突出する1対の突起(第2の係合部)54が形成されている。図3に示すように、本体30の円筒部32の内周面にはZ方向に延びるガイド溝(第2のガイド溝)33が形成されており、このガイド溝33の内部に中空円筒部材50の突起54が収容されている。このような構成により、中空円筒部材50の突起54が円筒部32のガイド溝33にガイドされ、中空円筒部材50が円筒部32内でZ方向に移動できるようになっている。このとき、中空円筒部材50の突起54が円筒部32のガイド溝33と係合しているため、中空円筒部材50が円筒部32に対して回転することはない。
【0032】
図5に示すように、中空円筒部材50の下端部には、軸体60が挿通される開口55が形成された底板部56が設けられている。また、図3に示すように、中空円筒部材50の底板部56と円筒部32の底部との間にはコイルバネ(第1の付勢部材)70が配置されている。図3では、コイルバネ70が圧縮された状態となっており、中空円筒部材50はコイルバネ70によって上方に付勢された状態となっている。
【0033】
中空円筒部材50の内側の中空部には、軸体60のネジ部61に螺合するナット部材80が収容されている。図6は、ナット部材80の斜視図である。図6に示すように、ナット部材80は、内周にネジ溝81が形成された円筒部82と、円筒部82から半径方向外側に向かって突出する1対のバネ片83とを有している。バネ片83は、中空円筒部材50の内周面50A(図3参照)に弾性的に接触するように構成されている。バネ片83と中空円筒部材50の内周面50Aとの接触によってナット部材80の回転が規制される結果、モータ40の駆動により軸体60が回転すると、軸体60のネジ部61とナット部材80のネジ溝81との螺合による送りネジ機構によってナット部材80が軸方向(Z方向)に移動するようになっている。なお、バネ片83の数や形状は図示のものに限られるものではない。
【0034】
図3に示すように、ナット部材80を挟んでコイルバネ70とは反対側には、円筒状のクラッチ部材90が配置されている。図7は、クラッチ部材90を下方から見た斜視図である。図7に示すように、クラッチ部材90の外周面には、Z方向に延びる1対のガイド溝(第3のガイド溝)91が形成されており、このガイド溝91には、カメラモジュール10の接続部14の内周面に形成されたレール(第3の係合部)15(図8A参照)が係合するようになっている。このような構成により、カメラモジュール10のレール15がクラッチ部材90のガイド溝91にガイドされ、クラッチ部材90がカメラモジュール10に対してZ方向に移動できるようになっている。
【0035】
図2及び図3に示すように、軸体60の上端の円板64とクラッチ部材90の上面93との間には、軸体60の小径部63の周囲を取り囲むようにコイルバネ(第2の付勢部材)94が配置されている。図3では、コイルバネ94が圧縮された状態となっており、クラッチ部材90は、コイルバネ94によって下方に付勢されて軸体60の大径部62に突き当たった状態となっている。
【0036】
図5に示すように、中空円筒部材50の底板部56の外周縁には、ナット部材80に向かって上方に突出する複数の底部突起(第4の係合部)57が形成されている。これらの底部突起57は、周方向に沿って所定の間隔で配置されている。これに対応して、図6に示すように、ナット部材80は、円筒部82の下端の外周縁に形成された複数の下側係合片(第5の係合部)84を有している。これらの下側係合片84は周方向に沿って所定の間隔で配置されている。中空円筒部材50の底部突起57間の間隔と、ナット部材80の下側係合片84間の間隔とは同一となっており、ナット部材80の下側係合片84と中空円筒部材50の底部突起57とが互いに係合するようになっている。
【0037】
ここで、図5に示すように、中空円筒部材50の底部突起57は傾斜面57Aを有しており、図6に示すように、ナット部材80の下側係合片84は傾斜面84Aを有している。これらの傾斜面57A及び84Aは互いに相補的な形状となっている。したがって、回転するナット部材80の下側係合片84の傾斜面84Aが中空円筒部材50の底部突起57の傾斜面57Aに突き当たると、下側係合片84の傾斜面84Aが底部突起57の傾斜面57Aに摺接しながら軸方向に移動することとなるため、ナット部材80を回転させながら中空円筒部材50に係合させること及び中空円筒部材50から離脱させることが容易になる。
【0038】
また、図7に示すように、クラッチ部材90の下端の外周縁には、下方に突出する複数のクラッチ突起(第6の係合部)92が形成されている。これらのクラッチ突起92は、周方向に沿って所定の間隔で配置されている。これに対応して、図6に示すように、ナット部材80は、円筒部82の上端の外周縁に形成された複数の上側係合片(第7の係合部)85を有している。これらの上側係合片85は周方向に沿って所定の間隔で配置されている。クラッチ部材90のクラッチ突起92間の間隔と、ナット部材80の上側係合片85間の間隔とは同一となっており、クラッチ部材90のクラッチ突起92とナット部材80の上側係合片85とが互いに係合するようになっている。なお、上側係合片85間の間隔と下側係合片84間の間隔とは、同一であってもよいし、あるいは異なっていてもよい。
【0039】
ここで、図6に示すように、ナット部材80の上側係合片85は傾斜面85Aを有しており、図7に示すように、クラッチ部材90のクラッチ突起92は傾斜面92Aを有している。これらの傾斜面85A及び92Aは互いに相補的な形状となっている。したがって、回転するナット部材80の上側係合片85の傾斜面85Aがクラッチ部材90のクラッチ突起92の傾斜面92Aに突き当たると、上側係合片85の傾斜面85Aがクラッチ突起92の傾斜面92Aに摺接しながら軸方向に移動することとなるため、ナット部材80を回転させながらクラッチ部材90に係合させること及びクラッチ部材90から離脱させることが容易になる。
【0040】
次に、このような構成の駆動装置1の動作について説明する。図8Aから図8Dは、図2の駆動装置1の動作を説明するための部分破断斜視図であり、理解を容易にするために駆動装置1の主要な部分のみを図示している。
【0041】
図8Aは、カメラモジュール10が電子機器2の内部に収容されている状態(図1に示す状態)を示している。この状態では、ナット部材80の下側係合片84が中空円筒部材50の底部突起57に係合しており、ナット部材80及び中空円筒部材50が最も-Z方向側に位置している(このときの中空円筒部材50の位置を「第1の軸方向位置」ということとする)。この第1の軸方向位置では、コイルバネ70は圧縮された状態となっており、中空円筒部材50がコイルバネ70によって上方に付勢されるが、軸体60のネジ部61に螺合しているナット部材80が中空円筒部材50と係合しているため、中空円筒部材50は上方に移動できずに第1の軸方向位置を維持する。
【0042】
図8Aに示す状態からモータ40を駆動すると、回転軸41の回転が歯車21~23を介して軸体60に伝えられ、軸体60が回転する。このとき、ナット部材80のバネ片83と中空円筒部材50の内周面50Aとの接触及びナット部材80の下側係合片84と中空円筒部材50の底部突起57との係合によってナット部材80の回転が規制されるため、図8Bに示すように、軸体60の回転に伴って、ナット部材80と軸体60のネジ部61とを含む送りネジ機構によってナット部材80が上方に移動する。ナット部材80が上方に移動すると、コイルバネ70によって上方に付勢されている中空円筒部材50もナット部材80とともに上方に移動する。このとき、カメラモジュール10の係合部13が中空円筒部材50のガイド溝53に係合しているため、中空円筒部材50の上方への移動に伴ってカメラモジュール10も上方に移動し、電子機器2の表面2A(図1参照)からZ方向に飛び出すこととなる。
【0043】
上述のように中空円筒部材50が上方に移動すると、やがて中空円筒部材50の下端部の突起54が円筒部32のガイド溝33の上端の壁に突き当たり、中空円筒部材50はそれ以上上方には移動しない(このときの中空円筒部材50の位置を「第2の軸方向位置」ということとする)。
【0044】
中空円筒部材50が第2の軸方向位置に到達した後、さらにモータ40を駆動して軸体60を回転させると、ナット部材80のバネ片83と中空円筒部材50の内周面50Aとの接触によってナット部材80の回転が規制されるため、図8Cに示すように、軸体60の回転に伴って、ナット部材80と軸体60のネジ部61とを含む送りネジ機構によってナット部材80のみが上方に移動する。このようにしてナット部材80が中空円筒部材50の底板部56から離れて上方に移動すると、やがてナット部材80の上側係合片85がクラッチ部材90の下端のクラッチ突起92に係合することとなる。
【0045】
ナット部材80の上側係合片85がクラッチ部材90の下端のクラッチ突起92に係合した後、さらにモータ40を駆動して軸体60を回転させると、クラッチ部材90の上方に設けられたコイルバネ94による付勢によってナット部材80の上方への移動が規制されるため、やがてナット部材80を回転させる力がナット部材80のバネ片83と中空円筒部材50の内周面50Aとの間に生じる摩擦力に打ち勝って、ナット部材80が軸体60とともに回転を始める。
【0046】
このとき、ナット部材80の上側係合片85がクラッチ部材90のクラッチ突起92に係合しているため、図8Dに示すように、ナット部材80とともにクラッチ部材90も回転する。上述したように、カメラモジュール10のレール15がクラッチ部材90のガイド溝91に係合しているため、カメラモジュール10もクラッチ部材90とともに回転する。
【0047】
また、モータ40を逆方向に駆動させた場合には、上述した順序と逆の順序で動作が行われる。すなわち、カメラモジュール10が軸周りに逆回転し、その後、-Z方向に縮退して電子機器2の内部に収容される。
【0048】
このように、本実施形態によれば、中空円筒部材50が第1の軸方向位置から第2の軸方向位置までの間に位置しているときには、モータ40の駆動により、ナット部材80と軸体60のネジ部61とを含む送りネジ機構によってナット部材80をZ方向に移動させ、コイルバネ70による付勢力によって中空円筒部材50とともにカメラモジュール10をZ方向に移動させることができる。また、クラッチ部材90がナット部材80と係合することによって、送りネジ機構によるナット部材80のZ方向の移動が規制されるので、モータ40の駆動により軸体60とともにナット部材80が回転し、これによりクラッチ部材90及びカメラモジュール10を回転させることができる。このように、本実施形態における駆動装置1によれば、1つの装置でカメラモジュール10などの被駆動部材を軸方向に伸縮させるとともに軸周りに回転させることが可能となり、装置の小型化が可能となる。
【0049】
本実施形態では、中空円筒部材50が第2の軸方向位置に到達した後にモータ40を駆動すると、ナット部材80が上方に移動し、中空円筒部材50、クラッチ部材90、及びカメラモジュール10などは動かないように構成されている。このように、カメラモジュール10の軸方向の移動の動作と軸周りの回転の動作との間にカメラモジュール10が動かない工程を挿入することで、駆動装置1の構成要素の急激な運動の変化を避けることができ、装置の故障を防止することができる。なお、このような工程を挿入せず、カメラモジュール10の軸方向の移動の動作と軸周りの回転の動作とを連続して行うように構成してもよい。
【0050】
ここで、本実施形態では、コイルバネ70が中空円筒部材50の底板部56と本体30の円筒部32の底部との間に配置されているので、コイルバネ70が中空円筒部材50に作用する-Z方向の力を受けるようになっている。中空円筒部材50はカメラモジュール10に対して軸方向に移動しないため、カメラモジュール10に作用する-Z方向の力は中空円筒部材50を介してコイルバネ70に吸収されることとなる。したがって、例えば、カメラモジュール10が電子機器2から伸長した状態(図8Bから図8D)において、誤ってカメラモジュール10を電子機器2の内部に押し込むような力が作用した場合であっても、その力がコイルバネ70によって吸収されるため、そのような力が駆動装置1及び電子機器2に与える衝撃を緩和することができる。
【0051】
また、本実施形態では、コイルバネ94が軸体60の上端の円板64とクラッチ部材90の上面との間に配置されており、クラッチ部材90がカメラモジュール10に対してZ方向に移動可能となっているので、ナット部材80とクラッチ部材90とが係合している状態でカメラモジュール10を無理に回転させようとしても、駆動装置1が壊れにくい構造となっている。すなわち、ナット部材80とクラッチ部材90とが係合している状態でカメラモジュール10を無理に回転させようとすると、コイルバネ94による付勢の下でクラッチ部材90がナット部材80に対して+Z方向に移動してナット部材80の上側係合片85とクラッチ部材90のクラッチ突起92との係合が解除され、クラッチ部材90がわずかに回転した後、コイルバネ94の付勢によってクラッチ部材90がナット部材80に対して-Z方向に移動してナット部材80の上側係合片85とクラッチ部材90のクラッチ突起92とが再び係合する。したがって、ナット部材80や軸体60に大きな回転力が作用することがなく、駆動装置1が壊れてしまうことを防止することができる。
【0052】
上述した実施形態では、中空円筒部材50の上端にガイド溝53を形成し、このガイド溝53に係合する係合部13をカメラモジュール10に設けた例を説明したが、周方向に沿って延びるガイド溝(第1のガイド溝)をカメラモジュール10(被駆動部材)に形成し、このガイド溝に係合する係合部(第1の係合部)を中空円筒部材50の外周側に設けてもよい。また、上述した実施形態では、本体30の円筒部32にガイド溝33を形成し、このガイド溝33に係合する突起54を中空円筒部材50に設けた例を説明したが、軸方向に延びるガイド溝(第2のガイド溝)を中空円筒部材50の外周面に形成し、このガイド溝に係合する係合部(第2の係合部)を本体30に設けてもよい。さらに、上述した実施形態では、クラッチ部材90の外周面にガイド溝91を形成し、このガイド溝91に係合するレール15をカメラモジュール10に設けた例を説明したが、軸方向に延びるガイド溝(第3のガイド溝)をカメラモジュール10(被駆動部材)に形成し、このガイド溝に係合する係合部(第3の係合部)をクラッチ部材90の外周面に設けてもよい。
【0053】
上述した実施形態の駆動装置1は、カメラモジュール10などの被駆動部材の軸方向に沿った移動(伸縮)と軸周りの回転の両方を実現するものとして説明したが、被駆動部材の軸方向に沿った移動(伸縮)のみ又は軸周りの回転のみを行うように駆動装置1を構成することも可能である。
【0054】
なお、本明細書において使用した用語「上」、「下」、「底」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。
【0055】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0056】
本出願は、2017年9月14日に提出された日本国特許出願特願2017-176902に基づくものであり、当該出願の優先権を主張するものである。当該出願の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電子機器内の被駆動部材を駆動するための駆動装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0058】
1 駆動装置
2 電子機器
10 カメラモジュール(被駆動部材)
12 本体部
13 係合部(第1の係合部)
14 接続部
15 レール(第3の係合部)
20 底部プレート
21~23 歯車
30 本体
31 ベース部
32 円筒部
33 ガイド溝(第2のガイド溝)
40 モータ
41 回転軸
50 中空円筒部材
51,52 フランジ
53 ガイド溝(第1のガイド溝)
54 突起(第2の係合部)
56 底板部
57 底部突起(第4の係合部)
57A 傾斜面
60 軸体
61 ネジ部
70 コイルバネ(第1の付勢部材)
80 ナット部材
81 ネジ溝
82 円筒部
83 バネ片
84 下側係合片(第5の係合部)
84A 傾斜面
85 上側係合片(第7の係合部)
85A 傾斜面
90 クラッチ部材
91 ガイド溝(第3のガイド溝)
92 クラッチ突起(第6の係合部)
92A 傾斜面
94 コイルバネ(第2の付勢部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D