(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール及びがんの治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 403/14 20060101AFI20221019BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221019BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221019BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221019BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20221019BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20221019BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221019BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221019BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221019BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221019BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P35/02
A61K31/506
A61P37/04
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2019542717
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 IB2018050783
(87)【国際公開番号】W WO2018146612
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-29
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】518048570
【氏名又は名称】パロビオファルマ,ソシエダッド リミターダ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ビリク,サネラ
(72)【発明者】
【氏名】カマーチョ ゴメス,ジュアン アルバート
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン,ジョン スコット
(72)【発明者】
【氏名】キャストロ-パロミノ ラリア,ジュリオ セサー
(72)【発明者】
【氏名】ハワード,ダニー ローランド,ジュニア
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-523711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される化合物:
【化1】
又はその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
単離形態にある、化合物1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール。
【請求項3】
1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩と、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項4】
治療有効量の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩と1種又は複数種の免疫療法剤とを含む組合せ物。
【請求項5】
1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩の、単独で又は1種若しくは複数種の免疫療法剤と組み合わせた、がんの治療に用いるための医薬品の製造における使用。
【請求項6】
がんの治療に使用するための、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
がんの治療に使用するための、請求項4に記載の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと1種又は複数種の免疫療法剤との組合せ物。
【請求項8】
前記がんは、肺がん、黒色腫、腎臓がん、肝臓がん、骨髄腫、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、膵臓がん、頭頸部がん、肛門がん、胃食道がん、甲状腺がん、子宮頸がん、リンパ球増殖性疾患又は血液がん、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又は白血病から選択される、請求項5に記載の使
用。
【請求項9】
前記がんは、肺がん、黒色腫、腎臓がん、肝臓がん、骨髄腫、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、膵臓がん、頭頸部がん、肛門がん、胃食道がん、甲状腺がん、子宮頸がん、リンパ球増殖性疾患又は血液がん、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又は白血病から選択される、
請求項6に記載の医薬組成物、又は請求項7に記載の組合せ物。
【請求項10】
前記がんは、癌腫、具体的には肺がん、より具体的には非小細胞肺がんである、請求項5に記載の使
用。
【請求項11】
前記がんは、癌腫、具体的には肺がん、より具体的には非小細胞肺がんである、
請求項6に記載の医薬組成物、又は請求項7に記載の使用のための組合せ物。
【請求項12】
1種又は複数種の免疫療法剤は、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体からなる群から選択される、請求項5、8、若しくは
10に記載の使
用。
【請求項13】
1種又は複数種の免疫療法剤は、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体からなる群から選択される、
請求項6、9、若しくは11に記載の医薬組成物、又は請求項7、
9、若しくは
11に記載の組合せ物。
【請求項14】
前記免疫療法剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ(CT-011)、AMP-224、AMP-514(MEDI0680)、MPDL3280A、MEDI4736、MSB0010718C、YW243.55.S70、及びMDX-1105からなる群から選択される、請求項5、8、若しくは
10に記載の使
用。
【請求項15】
前記免疫療法剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ(CT-011)、AMP-224、AMP-514(MEDI0680)、MPDL3280A、MEDI4736、MSB0010718C、YW243.55.S70、及びMDX-1105からなる群から選択される、
請求項6、9、若しくは11に記載の医薬組成物、又は請求項7、
9、若しくは
11に記載の使用のための組合せ物。
【請求項16】
前記免疫療法剤は、抗PD-1抗体である、請求項5、8、若しくは
10に記載の使
用。
【請求項17】
前記免疫療法剤は、抗PD-1抗体である、
請求項6、9、若しくは11に記載の医薬組成物、又は請求項7、
9、若しくは
11に記載の使用のための組合せ物。
【請求項18】
前記抗PD-1抗体は:
(a)配列番号4のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号13のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号15のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号1のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号10のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号12のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号41のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号13のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号15のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;又は
(d)配列番号41のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号10のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号12のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
を含む、請求項
16に記載の使
用。
【請求項19】
前記抗PD-1抗体は:
(a)配列番号4のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号13のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号15のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号1のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号10のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号12のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号41のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号13のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号15のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;又は
(d)配列番号41のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号10のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号12のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
を含む、
請求項17に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項20】
前記抗PD-1は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項
16に記載の使
用。
【請求項21】
前記抗PD-1は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLを含む、
請求項17に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項22】
前記抗PD-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項
16に記載の使
用。
【請求項23】
前記抗PD-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、
請求項17に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項24】
前記抗PD-1抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項
16に記載の使
用。
【請求項25】
前記抗PD-1抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVLを含む、
請求項17に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項26】
前記抗PD-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項
16に記載の使
用。
【請求項27】
前記抗PD-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、
請求項17に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項28】
前記抗PD-1抗体分子は、300mgの用量で3週に1回投与される、請求項
16、18、20、22、24、及び26のいずれか一項に記載の使
用。
【請求項29】
前記抗PD-1抗体分子は、300mgの用量で3週に1回投与される、請求項
請求項17、19、21、23、25、及び27に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項30】
前記抗PD-1抗体分子は、400mgの用量で4週に1回投与される、請求項
16、18、20、22、24、及び26のいずれか一項に記載の使
用。
【請求項31】
前記抗PD-1抗体分子は、400mgの用量で4週に1回投与される、
請求項17、19、21、23、25、及び27のいずれか一項に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項32】
前記免疫療法剤は、抗PD-L1抗体である、請求項
16、18、20、22、24、及び26のいずれか一項に記載の使
用。
【請求項33】
前記免疫療法剤は、抗PD-L1抗体である、
17、19、21、23、25、及び27のいずれか一項に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項34】
前記抗PD-L1抗体分子は:
(a)配列番号47のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号44のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号49のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号50のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号51のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;又は
(d)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号49のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号50のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号51のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
を含む、請求項
32に記載の使
用。
【請求項35】
前記抗PD-L1抗体分子は:
(a)配列番号47のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号44のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号49のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号50のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号51のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;又は
(d)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号49のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号50のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号51のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
を含む、
請求項33に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項36】
前記抗PD-L1抗体分子は、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、請求項
32に記載の使
用。
【請求項37】
前記抗PD-L1抗体分子は、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、
請求項33に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項38】
免疫療法剤は、単一の組成物中で一緒に、又は2種以上の異なる組成物形態で別々に投与される、請求項
12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、及び36のいずれか一項に記載の使
用。
【請求項39】
免疫療法剤は、単一の組成物中で一緒に、又は2種以上の異なる組成物形態で別々に投与される、
請求項13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、及び37のいずれか一項に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【請求項40】
前記免疫療法剤は、前記化合物:1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと同時に、その前に、又はその後に投与される、請求項
12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、及び36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記免疫療法剤は、前記化合物:1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと同時に、その前に、又はその後に投与される、
請求項13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、及び37のいずれか一項に記載の医薬組成物又は組合せ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの活性代謝産物、即ちアデノシンA2a受容体を調節する1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールに関する。特に本発明は、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールを含む医薬組成物並びにそれを調製するためのプロセス及びそのがんの治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは世界規模の主要な公衆衛生問題である。がんは現在、米国及び幾つかの先進国における死亡原因の第2位であり、数年後には死亡原因の第1位である心疾患を抜くと予測されている(Siegel R L,et al,Cancer Statistics,2015,CA Cancer J Clin 2015;65:5-29.VC 2015 American Cancer Society and references therein)。
【0003】
がんは、がん細胞内過程及び細胞外過程の両方から指令される複雑な疾患であると考えられている。肺転移がん、ヒト肺腺がん細胞、マウス黒色腫細胞、マウス卵巣がん細胞、マウス乳がん細胞を含む様々な生体外及び動物モデルで行われた幾つかの研究から、アデノシン作動性機構を標的とすることに各種治療を進展させる大きな可能性が秘められていることが確認された。腫瘍微小環境内に蓄積している重要な調節因子であるオートクリン及びパラクリンとしてのアデノシンが重要であることを強調する多くの証拠がある。通常、がん組織内に高濃度で存在する細胞外アデノシンは、がんが免疫細胞の機能を変化させる際の重要なメディエーターである。これは恐らく、厳密に調節されている免疫細胞のアデノシン受容体を介する経路が腫瘍内で大幅に変化し、それによって、これらの細胞の機能を免疫学的監視及び宿主防御からがん細胞の形質転換及び増殖の促進へと切り替えるためである(Antonioli L et al,Immunity,inflammation and cancer:a leading role for adenosine,Nature,842,December 2013,Volume 13,and references therein)。
【0004】
腫瘍は腫瘍の成長を促すために多くの免疫抑制機序を利用することが知られている(Koebel CM.et al,Adaptive immunity maintains occult cancer in an equilibrium state,Nature.2007,450,7171:903-907及びSchreiber RD.et al,Cancer immunoediting:Integrating immunity’s roles in cancer suppression and promotion,Science.2011,331,6024:1565-1570)。細胞外AMPの免疫抑制性アデノシンへの異化作用がこの種の機序の1つを媒介することを証明する研究がある(Ohta A.et al,A2A adenosine receptor protects tumors from antitumor T cells.Proc Natl Acad Sci U S A.2006;103:13132-13137及びOhta A.et al,A2A adenosine receptor may allow expansion of T cells lacking effector functions in extracellular adenosine-rich microenvironments.J Immunol.2009,183,9:5487-5493)。まず、細胞外ATPがエクト型酵素CD39によりAMPに変換されることになる。更に、CD73エクト型酵素を介してAMPが脱リン酸化され、その結果として、細胞外アデノシンが産生されることになる。
【0005】
この過程の最中は、アデノシンキナーゼの活性も抑制されており、それにより、この酵素のサルベージ活性が阻害され、アデノシンレベルが上昇する。例えば、炎症時又は腫瘍微小環境における低酸素状態では、アデノシンキナーゼが阻害されることにより、細胞外及び細胞内アデノシンレベルがいずれも15~20倍上昇する(Decking UK.Et al,Hypoxia-induced inhibition of adenosine kinase potentiates cardiac adenosine release.Circ.Res.1997;81(2):154-164.doi:10.1161/01.RES.81.2.154)。産生された細胞外アデノシンは、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT細胞、マクロファージ、樹状細胞、及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)を含む複数の免疫サブセット上に発現している4種の既知の細胞表面受容体(A1、A2A、A2B、及びA3)に結合する。A2A及びA2B受容体サブタイプはアデノシンの免疫抑制作用に基本的に関与している。これらは共通のシグナル伝達経路を共有しており、いずれもその結果としてアデニル酸シクラーゼを活性化させ、細胞内cAMPを蓄積させる。細胞内cAMPが、T細胞受容体によって誘発されるT細胞活性化経路の早期及び末期においてT細胞受容体のシグナル伝達を阻害するシグナル伝達分子であることを実証する更なる幾つかの証拠が得られている(Ohta A,Sitkovsky M,Role of G-protein-coupled adenosine receptors in downregulation of inflammation and protection from tissue damage,Nature,2001,414:916-920)。
【0006】
A2a受容体を遺伝子的に除去するか又はA2a受容体拮抗剤を使用してA2a受容体シグナル伝達を阻害することにより、抗腫瘍性T細胞の抑制が阻止され、腫瘍拒絶が向上することが示唆されている(Ohta A.et al,A2a adenosine receptor protects tumors from antitumor T cells.Proc Natl Acad Sci U S A.2006;103:13132-13137)。
【0007】
A2a受容体は、正常組織が巻き添えになって過度の炎症性損傷を受けることから保護する、活性化T細胞の非冗長的な負の制御因子として機能する。A2a受容体ががん性組織を「誤って」保護する可能性も提案されている。このことが実際に起こっているとすると、A2a受容体を遺伝子的に不活性化するか又は薬剤で拮抗させることにより、抗腫瘍性T細胞の抑制が阻止され、それによって、この抑制解除されたT細胞による腫瘍拒絶が向上することになると考えられる(Sitkovsky M.et al,Adenosine A2a receptor antagonists:blockade of adenosinergic effects and T regulatory cells,British Journal of Pharmacology,2008,153,S457-S464)。
【0008】
世界的ながん死亡原因の中で最も多いのが肺がんであり、1985年以降、世界中で発症率及び死亡率の両方の意味で最も高いがんである。全世界で新たに診断されるがん(新たに発症したがんの全症例の12.4%)及びがんによる死(全がん死の17.6%)を最も多く占めるのが肺がんである。
【0009】
肺がんは呼吸上皮細胞から発生し、大きく分けて2つの型に分類することができる。小細胞肺がん(SCLC)は神経内分泌性を示す細胞から発生する非常に悪性度の高い腫瘍であり、肺がん症例の15%を占める。症例の残りの85%を占める非小細胞肺がん(NSCLC)は、更に3つの主要な病理学的亜型:腺がん、扁平上皮がん、及び大細胞がんに分けられる。腺がん単独では全肺がん症例の38.5%を占め、扁平上皮がんが20%を占め、大細胞がんは2.9%を占める。ここ数十年間で腺がん発生率は著しく増加し、腺がんが扁平上皮がんに代わってNSCLCの中で最も多い型となった(De la Cruz,C et al,Lung Cancer:Epidemiology,Etiology,and Prevention,Clin Chest Med.2011 December;32(4))。
【0010】
特にNSCLCの場合、病期に応じて治療が決まり、その中には、外科手術、放射線、白金製剤との2剤併用化学療法、並びに最近標的とされている、細胞増殖及び生存に関与するシグナル伝達経路を遮断することによる療法が含まれる。疾患の初期には全身化学療法(白金製剤との2剤併用、タキサン、ゲムシタビン、ペメトレキセド)が有益であり(Azzoli CG.et al,2011 Focused Update of 2009 American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline Update on Chemotherapy for Stage IV Non-Small-Cell Lung Cancer,J Oncol Pract.2012;8:63-6 doi:10.1200/JOP.2011.000374)、その結果として適度な効果が得られるため、複合的治療戦略はNSCLC患者の重要な治療選択肢となった。幾つかの研究において、2種以上の薬剤を併用することにより優れた効果が得られるが、その代償として毒性が増加することが示されている(Yoshida T.et al,Comparison of adverse events and efficacy between gefitinib and erlotinib in patients with non-small-cell lung cancer:a retrospective analysis,Med Oncol.2013;30:349)。
【0011】
最近になって、T細胞の抗がん応答を増強し、そのがん細胞を検知及び攻撃する能力を回復させる幾つかの手法が開発されており、その中から、細胞傷害性リンパ球関連抗原4(CTLA4)及びプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に媒介されるT細胞の諸現象を遮断するmAbが開発された。
【0012】
抗CTLA4完全ヒトmAbであるイピリムマブが、SQCLC患者に非常に高い臨床的有益性を示す傾向があることが示された(Lynch TJ.et al,Ipilimumab in combination with paclitaxel and carboplatin as first-line treatment in stage IIIB/IV non-small-cell lung cancer:Results from a randomized,double-blind,multicenter phase II study,J Clin Oncol.2012;30:2046-54)。PD-1 mAb(MEDI4735、BMS-936558、BMS-936559)は、複数治療歴のある進行期NSCLC患者において顕著な持続性の腫瘍退縮を示すことが実証されている(Brahmer JR.et al,Safety and activity of anti-PD-L1 antibody in patients with advanced cancer,N Engl J Med.2012;366:2455-65)。
【0013】
複数の研究において、腫瘍の細胞外微小環境変化を誘発する変化が示されている。この種の細胞外変化の1つがアデノシンの濃度上昇であり、それによって、T細胞が媒介する拒絶が減弱化すると共に血管新生が支援される。この研究において、かなりの数の肺腺がんがアデノシンA2a受容体を発現していることが示されており、抗がん療法としてアデノシンA2a受容体拮抗剤を試験することを支持している(Mediavilla-Varela,M et al,Antagonism of adenosine A2a receptor expressed by lung adenocarcinoma tumor cells and cancer associated fibroblasts inhibits their growth,Cancer Biology & Therapy,September 2013,14:9,860-868)。
【0014】
新たな治療が開発されているにも関わらず、NSCLCは依然として5年生存率がわずか14%であり、新規な治療の継続的な研究が必要であることを示唆している(Spira A.et al,Multidisciplinary management of lung cancer,N Engl J Med.2004;350:379-92 doi:10.1056/NEJMra035536)。
【0015】
国際公開第2011/121418号パンフレット(当該開示内容を参照によりここに援用する)には、パーキンソン病等の神経変性疾患の治療に使用するためのアデノシンA2a受容体拮抗剤としての一連のアミノピリミジン誘導体が開示されている。更に、国際公開第2011/121418号パンフレットに記載されている化合物のがん治療における有効性が後に調査されている。この分類に属する具体的な化合物は、がん治療に有効であることが判明している5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンである。5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの構造を次に示す:
【化1】
【0016】
PCT/IB2016/054834号明細書には、この種の化合物を、単独で又は1種若しくは複数種の免疫療法剤と併用してがん治療に使用することが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの活性代謝産物、即ち1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩に関する。更に本発明は、上述の化合物の実質的に単離された形態を提供する。更に本発明は、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩と、少なくとも1種の医薬的に許容される担体とを含む組成物を提供する。
【0018】
更に本発明は、アデノシンA2a受容体を阻害する方法であって、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容されるな塩を投与することを含む方法を提供する。
【0019】
更に本発明は、この種の治療を必要とする対象のがんを治療するための方法であって、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩を、単独で又は1種若しくは複数種の免疫療法剤と一緒に投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】水性標準物質の5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン(MH+:308)のXICクロマトグラム、Q1及びMS/MSスペクトルを示すものである。
【
図2】ヒト肝ミクロソーム中における120分後の5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン(MH+:308)のXICクロマトグラム、Q1及びMS/MSスペクトルを示すものである。
【
図3】ヒト肝ミクロソーム中における120分後の5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの一原子酸素添加物(monooxygenated product)(MH+:324)のXICクロマトグラム、Q1及びMS/MSスペクトルを示すものである。
【
図4】水性標準物質の5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン(1μM;MH+:308)、並びにその一原子酸素添加物である1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-オール(1μM;MH+:324)及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール(1μM;MH+:324)のQ1スペクトル、並びにヒト肝ミクロソーム中における120分後の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール(MH+:324)の同定を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
したがって本発明は、実施形態1において、5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの動物、ヒト、及び/又はin-vitro細胞試験における代謝により産生する、次に示す化合物:1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール:
【化2】
に関する。
【0022】
実施形態2において、本発明は、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩の単離形態に関する。
【0023】
実施形態3において、本発明は、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩と、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0024】
実施形態4において、特に本発明は、治療有効量の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩と、1種若しくは複数種の免疫療法剤とを含む組合せ医薬である。
【0025】
実施形態5において、本発明は、この種の治療を必要とする対象のがんを治療する方法であって:それを必要とする対象に治療有効量の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩を、単独で又は1種若しくは複数種のイモセラピック剤(immotherapeutic agent)と組み合わせて投与することを含む方法に関する。
【0026】
実施形態6において、本発明は、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩の、単独で又は1種若しくは複数種の免疫療法剤と組み合わせての、がんを治療するための使用に関する。
【0027】
実施形態7において、本発明は、実施形態2による化合物1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又は実施形態3による医薬組成物の、がんの治療における使用に関する。
【0028】
実施形態8において、本発明は、がんの治療に使用するための、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと1種若しくは複数種の免疫療法剤との組合せに関する。
【0029】
実施形態9において、本発明は、対象のアデノシンA2a受容体を阻害する方法であって、対象に治療有効量の実施形態2による1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールを投与するか;又は対象に実施形態3による医薬組成物を投与することを含む方法である。
【0030】
実施形態10において、本発明は、がんは、肺がん、黒色腫、腎臓がん、肝臓がん、骨髄腫、前立腺がん、乳カンセ(cance)、結腸直腸がん、膵臓がん、頭頸部がん、肛門がん、胃食道がん、甲状腺がん、子宮頸がん、リンパ球増殖性疾患又は血液がん、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又は白血病から選択される、実施形態5の方法、実施形態6による使用、又は実施形態7による使用のための化合物、又は実施形態8による使用のための組合せに関する。
【0031】
実施形態11において、本発明は、がんは、癌腫(carcinoma)、特に肺がん、より具体的には非小細胞肺がんである、実施形態5の方法、実施形態6による使用、又は実施形態7による使用のための化合物、又は実施形態8による使用のための組合せに関する。
【0032】
実施形態12において、本発明は、1種又は複数種の免疫療法剤は、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体からなる群から選択される、実施形態5、10、又は11の方法、実施形態6、10、若しくは11による使用、又は実施形態9、10、若しくは11による使用のための組合せに関する。
【0033】
実施形態13において、本発明は、免疫療法剤は:イピリムマブ、トレメリブマブ、ニボルマブ、ペンブロリツマブ、ピジリズマブ(CT-011)、AMP-224、AMP-514(MEDI0680-Medimmune)、MPDL3280A(Genentech Roche)、MEDI4736、MSB0010718C(Merck Serono)、YW243.55.S70、及びMDX-1105からなる群から選択される、実施形態5、10、若しくは11の方法、実施形態6、10、若しくは11による使用、又は実施形態9、10、若しくは11による使用のための組合せに関する。
【0034】
実施形態14において、本発明は、免疫療法剤は抗PD-1抗体である、実施形態5、10、若しくは11の方法、実施形態6、10、若しくは11による使用、又は実施形態9、10、若しくは11による使用のための組合せに関する。
【0035】
実施形態14Aにおいて、本発明は、免疫療法剤は、ニブロマブ(Nivulomab)、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680(AMP514 Medimmune)、AMP224(Medimmune)、及び米国特許出願公開第2015/0210769号明細書に記載されている抗体)から選択される抗PD-1抗体である、実施形態5、10、若しくは11の使用、実施形態6、10、若しくは11による使用、又は実施形態9、10、若しくは11による使用のための組合せに関する。
【0036】
実施形態15において、本発明は、抗PD-1抗体は:
(a)配列番号4のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号13のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号15のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号1のVHCDR1アミノ酸配列;配列番号2のVHCDR2アミノ酸配列;及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号10のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号12のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号41のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号13のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号15のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;又は
(d)配列番号41のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号10のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号12のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
を含む、実施形態14による方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0037】
実施形態16において、本発明は、抗PD-1は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号20を含むアミノ酸配列を含むVLとを含む、実施形態14による方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0038】
実施形態17において、本発明は、抗PD-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、実施形態14による方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0039】
実施形態18において、本発明は、抗PD-1抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号16のアミノ酸配列を含むVLとを含む、実施形態14による方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0040】
実施形態19において、本発明は、抗PD-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、実施形態14による方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0041】
実施形態20において、本発明は、抗PD-1抗体分子は、3週に1回、約300mgの用量で投与される、実施形態14~19のいずれか1つによる方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0042】
実施形態21において、本発明は、抗PD-1抗体分子は、4週に1回、約400mgの用量で投与される、実施形態14~19のいずれか1つによる方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0043】
実施形態22において、本発明は、免疫療法剤は抗PD-L1抗体である、実施形態5、10、若しくは11の使用、実施形態6、10、若しくは11による使用、又は実施形態9、10、若しくは11による使用のための組合せに関する。
【0044】
実施形態22Aにおいて、本発明は、抗PD-L1抗体分子は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718C、MDX-1105、及び米国特許出願公開第2016/0108123号明細書に記されている抗PD-L1抗体から選択される、実施形態22による方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0045】
実施形態23において、本発明は、抗PD-L1抗体分子は:
(a)配列番号47のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号44のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号49のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号50のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号51のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;又は
(d)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号49のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号50のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号51のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
を含む、実施形態22による方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0046】
実施形態24において、本発明は、抗PD-L1抗体分子は、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号58アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインと、を含む、実施形態22による方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0047】
実施形態25において、本発明は、免疫療法剤は、単一組成物中で一緒に、又は2種以上の異なる組成物形態で別々に投与される、実施形態12~24のいずれか1つによる方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0048】
実施形態26において、本発明は、免疫療法剤は、化合物:-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールの投与と同時に、その前に、又はその後に投与される、実施形態12~24のいずれか1つによる方法方法、使用、又は使用のための組合せに関する。
【0049】
実施形態27において、本発明は、実施例1による1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールの製造プロセスにある。
【0050】
定義:
本文書において使用されるがんという用語は、身体の他の部位に浸潤又は拡散する可能性のある異常な細胞増殖が関与する疾患の群を指すために使用される。がんは、腫瘍細胞が類似している、つまり、その腫瘍の発生母地と推定される細胞の種類により分類される。これらの種類には、癌腫、肉腫、リンパ腫及び白血病、胚細胞腫瘍、並びに芽細胞腫が含まれる。
【0051】
本文書において用いられる癌腫という用語は、上皮細胞に由来するがんを指すために使用される。この群には、特に高齢者において最も一般的ながんの多くが含まれ、乳房、前立腺、肺、膵臓、及び結腸に発生するほぼ全てのがんが含まれる。
【0052】
例えば「がん」という用語には、これらに限定されるものではないが、固形腫瘍、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫)、及び転移巣が含まれる。一実施形態において、がんは固形腫瘍である。固形腫瘍の例としては、悪性腫瘍、例えば、肉腫及び癌腫、例えば、様々な臓器系の腺がん、例えば、肺、乳房、卵巣、リンパ系、胃腸管系(例えば、結腸)、肛門、生殖器及び尿生殖器(例えば、腎臓、尿路上皮、膀胱細胞、前立腺)、咽頭、CNS(例えば、脳、神経又は膠細胞)、頭頸部、皮膚(例えば、黒色腫)、並びに膵臓に影響を及ぼすものに加えて、結腸がん、直腸がん、腎細胞癌、肝臓がん、非小細胞肺がん、小腸のがん、及び食道のがん等の悪性腫瘍を含む腺がんが挙げられる。がんは初期、中期、後期、又は転移がんであってもよい。
【0053】
一実施形態において、がんは、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)(例えば、扁平上皮及び/若しくは非扁平上皮組織像を持つNSCLC、又はNSCLC腺がん))、黒色腫(例えば、進行期黒色腫)、腎臓がん(例えば、腎細胞がん)、肝臓がん、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、前立腺がん、乳がん(例えば、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、又はHer2/neuの1種、2種、若しくは全てを発現しない乳がん、例えば、トリプルネガティブ乳がん)、結腸直腸がん、膵臓がん、頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC))、肛門がん、胃食道がん、甲状腺がん、子宮頸がん、リンパ球増殖性疾患(例えば、移植後リンパ球増殖性疾患)又は血液がん、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又は白血病(例えば、骨髄性白血病又はリンパ性白血病)から選択される。
【0054】
他の実施形態において、がんは、例えば、本明細書に記載するがん、例えば、肺がん(扁平上皮)、肺がん(腺がん)、頭頸部がん、子宮頸がん(扁平上皮)、胃がん、甲状腺がん、黒色腫、上咽頭がん(例えば分化型癌、又は非分化型転移癌、又は局所再発上咽頭癌)、又は乳がんとすることができる。
【0055】
他の実施形態において、がんは、癌腫(例えば進行期又は転移性癌)、黒色腫、又は肺癌、例えば、非小細胞肺癌から選択される。
【0056】
一実施形態において、がんは、肺がん、例えば、非小細胞肺がん又は小細胞肺がんである。
【0057】
本文書において使用される肺がん(lung cancer)(肺の癌腫(carcinoma of the lung)又は肺癌(pulmonary carcinoma)としても知られる)という語は、肺組織の制御不能な細胞増殖を特徴とする、悪性肺腫瘍を指す場合に使用される。
【0058】
本文書において使用される非小細胞肺癌(NSCLC)という語は、小細胞肺癌(SCLC)以外の任意の種類の肺がんを指すために使用される。
【0059】
本文書において使用される、免疫療法的治療(immunotherapeutic treatment)という語は、免疫が媒介する腫瘍細胞の破壊を誘導することを指示する幅広い種類の療法を指す。前記療法には免疫療法剤が使用される。
【0060】
本発明において使用される免疫療法剤という語は、がんの免疫療法的治療を実施するのに有用な化合物、例えば、抗CTLA4抗体、例えば、イピリムマブ及びトレメリムマブ、抗PD-1抗体、例えば、MDX-1106、MK3475、CT-011、AMP-224、又は国際公開第2015/112900号パンフレットに記載されている抗PD-1抗体分子;及び抗PD-L1抗体、例えば、MEDI4736、MDX-1105、又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書に記載されている抗PD-L1抗体からなる群から選択される薬剤を指す。
【0061】
本明細書において用いられる、「プログラム死1」又は「PD-1」という語には、アイソフォーム、哺乳動物、例えばヒトPD-1、ヒトPD-1の種ホモログ、及びPD-1と共通する少なくとも1つのエピトープを含むアナログが含まれる。PD-1、例えばヒトPD-1のアミノ酸配列は、当該技術分野において、例えば、Shinohara T et al.(1994)Genomics 23(3):704-6;Finger LR,et al.Gene(1997)197(1-2):177-87から知られている。
【0062】
本明細書において用いられる「プログラム死リガンド1」又は「PD-L1」という語には、アイソフォーム、哺乳動物、例えば、ヒトPD-L1、ヒトPD-1の種ホモログ、及びPD-L1と共通する少なくとも1つのエピトープを含むアナログが含まれる。PD-L1、例えば、ヒトPD-1のアミノ酸配列は、当該技術分野において、例えば、Dong et al.(1999)Nat Med.5(12):1365-9;Freeman et al.(2000)J Exp Med.192(7):1027-34)から知られている。
【0063】
「単離形態」という語は、本発明者らによれば、化合物が、in vivoで代謝により生成した場合に通常付随するであろう成分を含まないことを意味する。例えば、それは、血清成分等の生物学的物質に加えて、他のin vivoで生成する5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの代謝産物を含まない。好適には、化合物は、精製及び単離された形態にある。「精製された」という語は、本発明者らによれば、化合物が、好都合には純度が75%超、より好都合には純度が90%超、好ましくは純度が95%超、最も好ましくは純度が98%超であることを意味する。
【0064】
本明細書において用いられる「組合せ、併用(combination)」という語は、一つの投与剤形(dosage unit form)として固定された組合せを指すか、又は式Iの化合物と併用相手(即ち免疫療法剤)とを独立に、同時に若しくは時間的な間隔を空けて別々に(特に、これらの時間的な間隔は、併用相手が協同的な、例えば相乗効果を示すことができるものである)投与することができる併用投与のいずれかを指す。単一の成分はキットとして又は別々に包装することができる。成分の一方又は両方(例えば、粉末又は液体)を投与前に所望の用量に再構成又は希釈することができる。
【0065】
本明細書において利用される「同時投与(co-administration)」又は「併用投与」又はこれに類する語は、それを必要とする単一の対象(例えば、患者)に、選択された併用相手を投与することを包含することを意味し、その薬剤が、同じ投与経路で又は同時に投与することを必ずしも必要としない治療レジメンを含むことを意図している。
【0066】
「組合せ医薬」及び「組合せ製品(combination product)」という語は互換的に使用され、一つの投与剤形中に固定された組合せを指すか、又は2種以上の治療剤を独立に同時に若しくは時間的間隔を空けて別々に(特に、これらの時間的間隔が、併用相手が協同的、例えば相乗効果を示すことが可能なものである)投与することができる、固定されていない組合せ若しくは併用投与のための構成成分(part)のキットのいずれかを指す。「固定された組合せ」という語は、式Iの化合物及び併用相手(即ち、免疫療法剤)が、両方共、患者に同時に、単一の物質(entity)又は投与量で投与されることを意味する。「固定されていない組合せ」という語は、式Iの化合物と併用相手(即ち、免疫療法剤)が両方共、患者に別々の物質として、同時に(simultaneously)、並行して(concurrently)、又は具体的な時間制限なしに順次、のいずれかで投与されることを意味し、この種の投与により、患者の体内に2種の化合物が治療有効量で提供されることを意味する。後者はまた、多剤併用療法、例えば、3種以上の治療剤の投与にも適用される。好ましい実施形態において、組合せ医薬は、固定されていない組合せである。
【0067】
「併用療法」という語は、本開示に記載するように、がんを治療するために2種以上の治療剤を投与することを指す。この種の投与は、これらの治療剤を実質的に同時に、例えば、有効成分の比率が固定された単一のカプセル剤等で同時投与することを包含する。或いは、この種の投与は、各有効成分を複数の、即ち別々の容器で(例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、及び液剤)同時投与することを包含する。散剤及び/又は液剤は、投与前に所望の用量に再構成又は希釈することができる。加えて、このような投与はまた、各種類の治療剤を、順次(ほぼ同時に又は異なる時点のいずれかで)使用することを包含する。いずれの場合においても、その治療レジメンは、本明細書に記載する状態又は障害の治療において薬物を併用することによる有益な効果をもたらすものとなる。
【0068】
本明細書において用いられる「医薬的に許容される塩」という語は、本発明の化合物の生物学的効果及び性質を保持し、生物学的又はそれ以外の形で望ましくないものではない塩も指す。多くの場合において、本発明の化合物は、アミノ基及び/若しくはカルボキシル基又はそれに類する基が存在するため、酸及び/又は塩基塩を形成することができる。医薬的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸と一緒に形成することができる、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩(napsylate)、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエンスルホン酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩である。塩を誘導することができる無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸が挙げられる。塩を誘導することができる有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイヒ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びサリチル酸が挙げられる。医薬的に許容される塩基付加塩は、無機塩基及び有機塩基と一緒に形成することができる。塩を誘導することができる無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、及びアルミニウム塩が挙げられ;アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩が特に好ましい。塩を誘導することができる有機塩基としては、例えば、1級、2級、及び3級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂、具体的には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミン等が挙げられる。本発明の医薬的に許容される塩は、親化合物、塩基性又は酸性部分から、従来の化学的方法により合成することができる。一般に、この種の塩は、これらの化合物の遊離酸形態を化学量論量の適切な塩基(例えば、Na、Ca、Mg、又はKの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等)と反応させることにより、又はこれらの化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と反応させることにより、調製することができる。この種の反応は、通常、水中又は有機溶媒中又はこれら2種の混合物中で実施される。一般に、実施可能であれば、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル等の非水性媒体が好ましい。更なる好適な塩の一覧は、例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,20th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,(1985);及び“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use”by Stahl and Wermuth(Wiley-VCH,Weinheim,Germany,2002)に記載されている。
【0069】
本発明は、本発明の医薬的に許容されるあらゆる同位体標識された化合物、即ち、(1)1個若しくは複数個の原子が、原子番号が等しく、原子質量又は質量数が自然界に通常存在する原子質量若しくは質量数とは異なる原子に置き換えられている、及び/又は(2)1個若しくは複数個の原子の同位体比が天然の比とは異なる、第1~第70実施形態の化合物を含む。
【0070】
本発明の化合物に含有させるのに適した同位体は、例えば、水素の同位体、例えば、2H及び3H、炭素の同位体、例えば、11C、13C、及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I及び125I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O、及び18O、リンの同位体、例えば、32P、並びに硫黄の同位体、例えば35Sを含む。
【0071】
第1~第70実施形態の特定の同位体標識された化合物、例えば、放射性同位体を組み込んだものが薬物及び/又は基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体であるトリチウム、即ち、3H、及び炭素14、即ち、14Cは、組み込みの容易性及び検出手段の準備が容易であるという観点から、特にこの目的に有用である。
【0072】
より質量の高い同位体、例えば、重水素、即ち2Hに置き換えることにより、代謝安定性がより高くなるため、特定の治療有益性を得ることが可能になる。例えば、生体内半減期が長くなるか又は必要投与量が低減され、したがって一部の状況下においては好ましい可能性がある。第1~第70実施形態の特定の化合物において、残基R9、又はR8及びR9の組合せにより形成される環は、化合物の生体内における代謝安定性を向上させるために、1個又は複数個の重水素原子を含むことができる。
【0073】
11C、18F、15O、及び13N等の陽電子放出同位体で置き換えることは、基質受容体占有率試験を行うためのポジトロン断層法(PET)研究に有用となり得る。
【0074】
第1~第70実施形態の同位体標識された化合物は、一般に、当業者に知られている従来法により、又は添付の実施例項及び調製項に記載されているプロセスに類似のプロセスにより、先に使用されていた非標識化試薬に替えて適切な同位体標識された試薬を使用して調製することができる。
【0075】
本発明による医薬的に許容される溶媒和物は、結晶化溶媒を同位体置換することができるもの、例えば、D2O、d6-アセトン、d6-DMSOを含む。
【0076】
本明細書において用いられる「医薬的に許容される担体」という語は、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤(drug stabilizer)、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、着香剤、色素、当業者に知られているだろうこれらの類似の物質及び組合せを含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329参照)。有効成分と適合しない場合を除いて、任意の従来の担体が治療用組成物又は医薬組成物中に使用されることが考えられる。
【0077】
本発明の化合物の「治療有効量」という語は、対象の生物学的又は医学的反応、例えば、酵素活性若しくはタンパク質活性の低減若しくは阻害、又は症状の回復、状態の軽減、疾患の進行の緩徐化若しくは遅延、又は疾患の予防等を誘発するだろう本発明の化合物の量を指す。非限定的な一実施形態において、「治療有効量」という語は、対象に投与した場合に、(1)(i)そのアデノシンA2a受容体によって媒介される状態若しくは障害若しくは疾患、若しくは(ii)アデノシン若しくはアデノシンA2a受容体の活性が関与する状態若しくは障害若しくは疾患、若しくは(iii)アデノシンA2a受容体の異常な活性を特徴とする状態若しくは障害若しくは疾患を、少なくともある程度軽減、阻害、予防、及び/若しくは回復するか;又は(2)そのアデノシンA2a受容体の活性を低減若しくは抑制する;のに有効な本発明化合物の量を指す。他の非限定的な実施形態において、「治療有効量」という語は、細胞、又は組織、又は非細胞生物学的物質、又は培地に投与した場合に、A2a受容体の活性を少なくともある程度低減若しくは阻害するか、又はA2a受容体の発現を少なくともある程度低減若しくは阻害するのに有効な、式Iの化合物の量を指す。
【0078】
本明細書において用いられる「対象」という語は動物を指す。好ましくは、動物は、哺乳動物である。対象は、例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚類、鳥類等も指す。好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0079】
本明細書において用いられる「阻害」又は「阻害する」という語は、所与の状態、症状、又は障害、又は疾患、又は生物学的活性若しくは生物学的過程のベースライン活性の有意な低下を低減又は抑制することを指す。
【0080】
本明細書において用いられる、任意の疾患又は障害を「治療すること」又は「治療」という語は、一実施形態において、疾患又は障害を回復させること(すなわち、疾患、又はその臨床症状の少なくとも1つの発症を、緩徐化、停止、又は低減すること)を指す。他の実施形態における「治療すること」又は「治療」とは、患者に認識されない可能性があるものを含め、物理的パラメータの少なくとも1つを軽減又は回復することを指す。更なる他の実施形態における「治療すること」又は「治療」は、疾患又は障害を、物理的(例えば、認識可能な症状の安定化)若しくは生理学的(例えば、物理的パラメータの安定化)のいずれか、又はその両方で調節することを指す。更なる他の実施形態における「治療すること」又は「治療」とは、疾患又は障害の発生(onset)又は発症(development)又は進行を予防又は遅延することを指す。
【0081】
本明細書において本発明に関連して(特に特許請求の範囲に関連して)用いられる「1の(a、an)」、「その(the)」、及びこれらに類似する語は、本明細書においてそうでないことが示唆されているか又は明らかに文脈と矛盾していない限り、単数及び複数の両方を包含することを意図している。
【0082】
本明細書に記載する全ての方法は、本明細書においてそうでないことが示唆されているか又は明らかに文脈と矛盾していない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書において示されるあらゆる例又は例示表現(例えば、「例えば」「等」(such as))の使用は、単に本発明をより十分に明らかにすることを意図するものであって、他の形で特許請求されている本発明の範囲を制限するものではない。
【0083】
本発明の化合物は、遊離形態で、その塩として、又はそのプロドラッグ誘導体としてのいずれかで得られる。
【0084】
本発明はまた、生体内で本発明の化合物に変換される本発明の化合物のプロドラッグも提供する。プロドラッグは、プロドラッグを対象に投与した後に加水分解や代謝等の生体内生理学的作用により本発明の化合物に変換される、化学修飾された活性又は不活性な化合物である。プロドラッグの適合性並びに製造及び使用が関与する技法は当業者に知られている。プロドラッグは、その概念上、2つの非排他的分類、即ち生物学的前駆体(bioprecursor)プロドラッグ及び担体型プロドラッグに分けられる。The Practice of Medicinal Chemistry,Ch.31-32(Ed.Wermuth,Academic Press,San Diego,Calif.,2001)を参照されたい。一般に、生物学的前駆体プロドラッグは、不活性な化合物であるか又は対応する活性薬物化合物と比較して活性の低い化合物であり、1個又は複数個の保護基を含み、代謝又は加溶媒分解により活性形態に変換される。活性薬物形態及び任意の放出された代謝産物は、いずれも許容可能な低毒性を有するべきである。
【0085】
担体型プロドラッグは、例えば、作用部位への取込み及び/又は局所送達を促す輸送部分を含む薬物化合物である。この種の担体型プロドラッグの薬物部分と輸送部分との間の結合は、望ましくは共有結合であり、プロドラッグは不活性であるか又は薬物化合物よりも活性が低く、放出された輸送部分は許容可能な無毒性を示す。輸送部分が取込みを促すことが意図されたプロドラッグの場合、通常、輸送部分は速やかに放出されるべきである。他の場合においては、徐放性を付与する部分、例えば、特定の高分子又は他の部分、例えば、シクロデキストリンを利用することが望ましい。担体型プロドラッグは、例えば、次に示す1つ又は複数の特性を向上するために使用することができる:高い親油性、長時間薬理学的作用を示すこと、高い部位特異性、低い毒性及び有害反応、並びに/又は薬物製剤の改善(例えば、安定性、水溶性、望ましくない官能特性又は生理化学的特性の抑制)。例えば、親油性は、ヒドロキシル基を親油性カルボン酸(例えば、少なくとも1個の親油性部分を有するカルボン酸)でエステル化することにより向上させることができる。
【0086】
例示的なプロドラッグは、例えば、アルコール又はアリールアルコールのO-アシル誘導体である。生理学的条件下における加溶媒分解により変換可能な、医薬的に許容されるエステル誘導体が好ましい。加えて、アミンは、アリールカルボニルオキシメチル置換誘導体としてマスキングされ、生体内でエステラーゼにより切断されて遊離薬物及びホルムアルデヒドを放出する(Bundgaard,J.Med.Chem.2503(1989))。更に、イミダゾール、イミド、インドール等の酸性NH基を含む薬物は、N-アシルオキシメチル基でマスキングされる(Bundgaard,Design of Prodrugs,Elsevier(1985))。ヒドロキシ基は、エステル及びエーテルとしてマスキングされる。欧州特許第039051号明細書(Sloan及びLittle)には、マンニッヒ塩基ヒドロキサム酸プロドラッグ、その調製及び使用が開示されている。
【0087】
更に、その塩を含む本発明の化合物は、その水和物の形態又はその結晶化に使用される他の溶媒を含む形態で得ることもできる。
【0088】
医薬組成物、組合せ、投与量、及び投与
他の態様において、本発明は、本発明の化合物及び担体、例えば、医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、経口投与、眼内投与(例えば、局所投与、硝子体内注射、インプラント(硝子体内、経強膜、テノン嚢下等、デポー剤等を含む)、及び非経口投与等の特定の投与経路用に処方することができる。加えて、本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、若しくは坐剤を含む固体剤形、又は溶液剤、懸濁剤、若しくは乳剤を含む液状剤形にすることができる。医薬組成物は、滅菌等の従来の製薬操作に付すことができ、及び/又は従来の不活性希釈剤、滑剤、若しくは緩衝剤に加えて、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、及び緩衝剤等の助剤を含むことができる。
【0089】
通常、医薬組成物は、活性成分を:
a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、及び/若しくはグリシン;
b)錠剤用滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム若しくはカルシウム塩、及び/若しくはポリエチレングリコール;加えて
c)必要に応じて、結合剤、例えば、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン;
d)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸若しくはそのナトリウム塩、若しくは発泡性混合物;並びに/又は
e)吸収剤、着色剤、風味剤、及び甘味剤;
と一緒に含む錠剤及びゼラチンカプセル剤である。
【0090】
錠剤は、当該技術分野において知られている方法に従い、フィルムコーティング又は腸溶性コーティングのいずれかを施すことができる。
【0091】
経口投与に適した組成物は、錠剤、ドロップ剤、水性若しくは油性懸濁剤、分散性散剤若しくは顆粒剤、乳剤、硬若しくは軟カプセル剤、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤の形態にある有効量の本発明の化合物を含む。経口使用が意図された組成物は、当該技術分野において医薬組成物の製造に関し知られている任意の方法に従い調製され、この種の組成物は、薬剤として洗練された口当たりの良い調製物を得るための甘味剤、風味剤、着色剤、及び防腐剤からなる群から選択される1種又は複数種の試剤を含むことができる。錠剤は、有効成分を、錠剤の製造に適した無毒の医薬的に許容される賦形剤との混合物して含有する。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム;造粒/崩壊剤、例えば、コーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、又はアカシアガム;並びに滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクである。錠剤は、コーティングされていないか、又は胃腸管系での崩壊及び吸収を遅らせ、それによって長期間に亘る持続作用を提供するために、公知の技法によりコーティングされている。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の遅延剤(time delay material)を使用することができる。経口用製剤は、有効成分と不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、若しくはカオリンとが混合された硬ゼラチンカプセル剤として、又は有効成分と水若しくは油性媒体、例えば、落花生油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油とが混合された軟ゼラチンカプセル剤として提供することができる。
【0092】
特定の注射用組成物は、等張水溶液又は懸濁液であり、坐剤は、有利には、脂肪質乳化液又は懸濁液から調製される。前記組成物は滅菌されていてもよく、並びに/又は防腐剤、安定剤、湿潤剤若しくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、及び/若しくは緩衝剤等の助剤を含んでいてもよい。更にこれらは、他の治療上有用な物質を含むことができる。前記組成物は、それぞれ通常の混合、造粒、又はコーティング方法に従い調製され、有効成分を約0.1~75%含有するか又は有効成分を約1~50%含有する。
【0093】
特定の注射用組成物としては、眼内インプラント並びに眼内、眼周囲、結膜下、及び/又はテノン嚢下投与に適した眼内デポー剤が挙げられる。典型的な注射用組成物は、第1~第70実施形態の化合物と、生体適合性又は生分解性高分子材料との組合せを含む。
【0094】
更に本発明は、水が特定の化合物の分解を促進し得ることに基づき、本発明の化合物を有効成分として含む無水医薬組成物及び剤形を提供する。本発明の無水医薬組成物及び剤形は、無水又は低含水量成分を使用し、低水分量又は低湿度条件下に調製することができる。無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように調製及び保管することができる。したがって無水組成物は、適切な処方キットに収容できるように、水への曝露を防ぐことが知られている材料を使用して包装するのが好ましい。好適な包装の例としては、これらに限定されるものではないが、気密封止された金属箔、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられる。
【0095】
更に本発明は、有効成分である本発明の化合物が分解する速度を低下させる1種又は複数種の薬剤を含む医薬組成物及び剤形を提供する。本明細書において「安定剤」と称される。この種の薬剤としては、これらに限定されるものではないが、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤等が挙げられる。
【0096】
好ましい実施形態において、がんの治療に使用するための1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又は医薬的に許容される塩は、非経口又は経口経路、好ましくは経口経路による投与用である。
【0097】
本発明の医薬組成物又は組合せは、約50~70kgの対象に対し、有効成分が約1~1000mg、又は有効成分が約1~500mg、約1~250mg、約1~150mg、又は約0.5~100mg、又は約1~50mgの単位用量とすることができる。化合物、医薬組成物、又はこれらの組合せの治療上有効な投与量は、対象の種、体重、年齢、及び個体の状態、治療される障害若しくは疾患又はそれらの重症度に依存する。通常の技術を有する医師、臨床家、又は獣医師は、障害又は疾患の進行を予防、治療、又は阻害するのに必要な各有効成分の有効量を容易に決定することができる。
【0098】
上述の投与量の特徴は、有利には、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、又は単離された臓器、組織、及びそれらの調製物を使用する生体外及び生体内試験で実証可能である。本発明の化合物は、生体外に溶液形態で、例えば、好ましくは水溶液で、及び生体内に経腸的、非経口的のいずれかで、有利には静脈内に、例えば懸濁液として又は水溶液中で適用することができる。生体内への投与量は、約10-3モル濃度から10-9モル濃度の間の範囲とすることができる。生体内での治療有効量は、投与経路に応じて、約0.1~500mg/kgの間、又は約1~100mg/kgの間の範囲とすることができる。
【0099】
他の実施形態においては、第1~第70実施形態に従う少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種の担体を含む医薬組成物が提供される。
【0100】
治療キット
一実施形態において、本発明は、2種以上の別々の医薬組成物を含み、そのうちの少なくとも1種が式(I)の化合物を含む、キットを提供する。一実施形態において、キットは、容器、分割されたボトル、又は分割された金属箔の小包等、前記組成物を別々に保持するための手段を含む。この種のキットの例は、錠剤やカプセル剤等の包装に通常使用されるブリスターパックである。
【0101】
本発明のキットは、異なる剤形、例えば、経口及び非経口で投与するため、別々の組成物を異なる投与間隔で投与するため、又は別々の組成物を互いに滴定するために使用することができる。本発明のキットは、通常、服薬遵守を支援するために、投与指示書を含む。
【0102】
本発明の併用療法において、式Iの化合物及び他の免疫療法剤は、同一又は異なる製造業者により製造及び/又は処方されるものであってもよい。更に、本発明の化合物及び他の治療は:(i)医師に組合せ製品を提供する前に(例えば、本発明の化合物及び他の治療剤を含むキットの場合);(ii)投与直前に医師自身により(又は医師の指導の下に);(iii)患者の体内で、例えば、本発明の化合物及び他の治療剤を連続投与する際中に;合一されて併用療法をもたらすものとすることができる。
【0103】
したがって本発明は、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩の、がんを治療するための使用であって、この医薬は他の免疫療法剤と一緒に投与するために調製される、使用を提供する。本発明はまた、がんを治療するための免疫療法剤の使用であって、この医薬は、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩と一緒に投与される、使用を提供する。
【0104】
本発明はまた、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールは、他の免疫療法剤と一緒に投与するための調製される、がんの治療方法に使用するための1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩も提供する。本発明はまた、がんの治療方法に使用するための他の免疫療法剤であって、他の免疫療法剤は、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと一緒に投与するために調製される、免疫療法剤も提供する。本発明はまた、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールは、他の免疫療法剤と一緒に投与される、がんの治療方法に使用するための1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールも提供する。本発明はまた、がんの治療方法において使用するための他の免疫療法剤であって、他の療法剤は、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと一緒に投与される、免疫療法剤も提供する。
【0105】
本発明はまた、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールのがんを治療するための使用であって、患者はその前(例えば24時間以内)に他の免疫療法剤で治療されている、使用を提供する。本発明はまた、がんを治療するための他の免疫療法剤の使用であって、患者はその前(例えば24時間以内)に1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩で治療されている、使用も提供する。
【0106】
併用療法
一実施形態において、組合せ医薬(又は組合せ製品)は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩若しくはコクリスタルと、抗CTLA4抗体、例えば、イピリムマブ及びトレメリムマブ、抗PD-1抗体、例えば、MDX-1106(ニボルマブ)、MK3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピジリズマブ)、AMP-224、AMP-514(MEDI0680 Medimmune)、又は国際公開第2015/112900号パンフレット(米国特許出願公開第2015/0210769号明細書)に記載されている抗PD-1抗体分子;及び抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A、MEDI4736、MSB0010718C(Merch Sorono)、YW243.55.S70、MDX-1105、又は2015年10月13日に出願された「PD-L1に対する抗体分子及びその使用(Antibody Molecules to PD-L1 and Uses Thereof)」と題した米国特許出願公開第2016/0108123号明細書に開示されている抗PD-L1抗体分子からなる群から選択される1種又は2種以上の免疫療法剤とを含む。
【0107】
組合せ製品の成分は同一製剤中又は別々の製剤中に含まれる。
【0108】
好ましい実施形態において、組合せ製品は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩若しくはコクリスタルと、がんの治療、具体的には、がんの免疫療法的治療に有用な1種又は2種以上の免疫療法剤とを含み、この種の剤は、抗PD-1PD-1抗体、例えば、MDX-1106、MK3475、CT-011、AMP-224、又は国際公開第2015/112900号パンフレット(米国特許出願公開第2015/0210769号明細書)に記載されている抗PD-1抗体分子;及び抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A、MEDI4736、MDX-1105、又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書に開示されている抗PD-L1抗体分子からなる群から選択される。
【0109】
抗PD-1抗体分子の例
好ましい実施形態において、組合せ製品は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩若しくはコクリスタルと、抗PD-1抗体分子、例えば本明細書に記載するものとを含む。
【0110】
PD-1は、例えば、活性化されたCD4+及びCD8+T細胞、Tregs、並びにB細胞上に発現するCD28/CTLA-4ファミリーメンバーである。PD-1は、エフェクターT細胞のシグナル伝達及び機能を抑制的に調節する。PD-1は、腫瘍浸潤T細胞上に発現が誘導され、その結果として、機能の疲弊又は機能不全に陥る可能性がある(Keir et al.(2008)Annu.Rev.Immunol.26:677-704;Pardoll et al.(2012)Nat Rev Cancer 12(4):252-64)。PD-1はその2種のリガンドであるプログラム死-リガンド1(PD-L1)又はプログラム死-リガンド2(PD-L2)のいずれかと結合すると、共抑制シグナルを伝達させる。PD-L1は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞(DC)、B細胞、上皮細胞、血管内皮細胞を含む多くの種類の細胞に加えて、多くの種類の腫瘍上に発現する。マウス及びヒト腫瘍上にPD-L1が高発現していることと、様々ながんの臨床成績の悪さとが関連付けられている(Keir et al.(2008)Annu.Rev.Immunol.26:677-704;Pardoll et al.(2012)Nat Rev Cancer 12(4):252-64)。PD-L2は、樹状細胞、マクロファージ、及び一部の腫瘍上に発現する。PD-1経路の遮断は、がん免疫療法に関し前臨床的及び臨床的に実証されている。前臨床試験及び臨床試験の両方において、抗PD-1による遮断によって、エフェクターT細胞の活性を回復させることができ、強力な抗腫瘍反応がもたらされることが実証されている。例えば、PD-1経路を遮断することにより、疲弊/機能不全に陥ったエフェクターT細胞の機能を回復(例えば、増殖、IFN-g分泌、又は細胞溶解機能)及び/又はTregs細胞の機能を阻害することができる(Keir et al.(2008)Annu.Rev.Immunol.26:677-704;Pardoll et al.(2012)Nat Rev Cancer 12(4):252-64)。PD-1経路の遮断は、抗体、その抗原結合性フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はPD-1、PD-L1及び/若しくはPD-L2のオリゴへプチドを用いて行うことができる。
【0111】
一実施形態において、PD-1阻害剤は抗PD-1抗体分子である。一実施形態において、PD-1阻害剤は、2015年7月30日に公開された「PD-L1に対する抗体分子及びその使用(Antibody Molecules to PD-L1 and Uses Thereof)」と題した米国特許出願公開第2015/0210769号明細書に記載されている抗PD-1抗体分子であり、その全内容を参照によりここに援用する。
【0112】
一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、表Aに示すアミノ酸配列又は表Aに示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖可変領域から(例えば、表Aに開示するBAP049-Clone-E又はBAP049-Clone-Bの重鎖及び軽鎖可変領域配列から)の、少なくとも1、2、3、4、5、又は6の相補性決定領域(CDR)(又はまとめて全部のCDR)を含む。幾つかの実施形態において、CDRはKabatの定義(例えば、表Aに表示する通り)に従う。幾つかの実施形態において、CDRはChothiaの定義(例えば、表Aに表示する通り)に従う。幾つかの実施形態において、CDRは、Kabat及びChothiaの両方のCDR定義の組合せ(例えば、表Aに表示する通り)に従う。一実施形態において、VHCDR1のKabat及びChothiaのCDRの組合せは、アミノ酸配列GYTFTTYWMH(配列番号41)を含む。一実施形態において、CDRの1つ又は複数(又はまとめて全部のCDR)は、表Aに示すアミノ酸配列又は表Aに示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列に対し、1、2、3、4、5、6、又はそれを超える変化、例えば、アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)又は欠失を有する。
【0113】
一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、それぞれ表Aに開示されている、配列番号1のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号10のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号12のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0114】
一実施形態において、抗体分子は、それぞれ表Aに開示されている、配列番号24のヌクレオチド配列によりコードされるVHCDR1、配列番号25のヌクレオチド配列によりコードされるVHCDR2、及び配列番号26のヌクレオチド配列によりコードされるVHCDR3を含むVH;並びに配列番号29のヌクレオチド配列によりコードされるVLCDR1、配列番号30のヌクレオチド配列によりコードされるVLCDR2、及び配列番号31のヌクレオチド配列によりコードされるVLCDR3を含むVLを含む。
【0115】
一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号6のアミノ酸配列、又は配列番号6に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるアミノ酸配列を含むVHを含む。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号20のアミノ酸配列、又は配列番号20に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号6のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLを含む。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0116】
一実施形態において、抗体分子は、配列番号7のヌクレオチド配列、又は配列番号7に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるヌクレオチド配列によりコードされるVHを含む。一実施形態において、抗体分子は、配列番号21若しくは17のヌクレオチド配列、又は配列番号21若しくは17に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるヌクレオチド配列によりコードされるVLを含む。一実施形態において、抗体分子は、配列番号7のヌクレオチド配列によりコードされるVH及び配列番号21又は17のヌクレオチド配列によりコードされるVLを含む。
【0117】
一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号8のアミノ酸配列、又は配列番号8に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号22のアミノ酸配列、又は配列番号22に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号18のアミノ酸配列、又は配列番号18に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0118】
一実施形態において、抗体分子は、配列番号9のヌクレオチド配列、又は配列番号9に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるヌクレオチド配列によりコードされる重鎖を含む。一実施形態において、抗体分子は、配列番号23若しくは19のヌクレオチド配列、又は配列番号23若しくは19に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、若しくは99%、若しくはそれを超えるヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖を含む。一実施形態において、抗体分子は、配列番号9のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖及び配列番号23又は19のヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖を含む。
【0119】
本明細書に記載する抗体分子は、ベクター、宿主細胞、及び米国特許出願公開第2015/0210769号明細書(その全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)に記載されている方法により作製することができる。
【0120】
定義
VH領域及びVL領域は、「フレームワーク領域」(FR又はFW)と称される、より高度に保存された領域の間に散在している「相補性決定領域」(CDR)と称される超可変領域に細分することができる。
【0121】
フレームワーク領域及びCDRの範囲は様々な方法により正確に定義されてきた(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242;Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917;及びOxford Molecular’s AbM antibody modeling softwareに用いられているAbMの定義参照)。概要は、例えば、Antibody Engineering Lab Manualに収録されているProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer-Verlag,Heidelberg)を参照されたい。
【0122】
本明細書において用いられる「相補性決定領域」及び「CDR」という語は、抗原に特異性及び結合親和性を与える抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域には3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)があり、各軽鎖可変領域には3つのCDRがある(LCDR1、LCDR2、LCDR3)。
【0123】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al.(1991),“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」付番方式)、Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(「Chothia」付番方式)に記載されているものを含むよく知られている幾つかの任意の方式を用いることにより決定することができる。本明細書において用いられる、「Chothia」付番方式に従い定義されるCDRは「超可変ループ」と称される場合もある。
【0124】
例えば、Kabatによれば、重鎖可変ドメイン(VH)中のCDRアミノ酸残基は31~35番(HCDR1)、50~65番(HCDR2)、及び95~102番(HCDR3)であり;軽鎖可変ドメイン(VL)中のCDRアミノ酸残基は24~34番(LCDR1)、50~56番(LCDR2)、及び89~97番(LCDR3)である。Chothiaによれば、VH中のCDRアミノ酸は26~32番(HCDR1)、52~56番(HCDR2)、及び95~102番(HCDR3)であり;VL中のアミノ酸残基は26~32番(LCDR1)、50~52番(LCDR2)、及び91~96番(LCDR3)である。Kabat及びChothiaの両方のCDR定義を組み合わせると、CDRは、ヒトVHにおいては26~35番(HCDR1)、50~65番(HCDR2)、及び95~102番(HCDR3)のアミノ酸残基並びにヒトVLにおいては24~34番(LCDR1)、50~56番(LCDR2)、及び89~97番(LCDR3)のアミノ酸残基から構成される。
【0125】
一般に、特段の指定がない限り、抗PD-1抗体分子は、KabatのCDR及び/又はChothiaのCDR、例えば、表Aに記載されているものの1つ又は複数の任意の組合せを含むことができる。一実施形態において、表Aに記載する抗PD-1抗体分子に関しては以下に示す定義が用いられる:Kabat及びChothiaの両方のCDR定義の組合せに従うHCDR1、並びにKabatのCDR定義に従うHCCDR2~3及びLCCDR1~3。どの定義においても、VH及びVLは、それぞれ、通常、3つのCDR及び4つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置されている。
【0126】
配列間の相同性(homology)又は配列同一性(sequence identity)(この語は本明細書においては互換的に使用される)の算出は次に示すように行われる。
【0127】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性(%)を求めるために、配列を最適な比較ができるように整列させる(例えば、最適なアラインメントを求めるために第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の一方又は両方にギャップを挿入することができ、非相同性配列を比較目的で無視することができる)。好ましい実施形態において、比較目的で整列させる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、更に好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで対応するアミノ酸の位置又はヌクレオチドの位置においてアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1配列のある位置が第2配列の対応する位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドで占められている場合、分子はその位置において同一である(本明細書において用いられるアミノ酸又は核酸「同一性」はアミノ酸又は核酸「相同性」と同義である)。
【0128】
2つの配列間の同一性(%)は、2つの配列の最適アラインメントを求めるために挿入する必要があるギャップの数、各ギャップの長さを考慮した上での、これらの配列間で共通している同一である位置の数の関数である。
【0129】
配列の比較及び2つの配列間の同一性(%)の決定は数学アルゴリズムを使って行うことができる。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性(%)は、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comにて入手可能)のGAPプログラムに実装されているNeedleman-Wunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444-453)アルゴリズムを用いて、Blossum62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれかを使用し、ギャップの重みを16、14、12、10、8、6、又は4とし、ギャップ長の重みを1、2、3、4、5、又は6として求められる。他の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間の同一性(%)は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(www.gcg.comにて入手可能)を用いて、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用し、ギャップの重みを40、50、60、70、又は80、ギャップ長の重みを1、2、3、4、5、又は6として求められる。特に好ましいパラメータセット(かつ、特に規定されていない限り使用すべきパラメータセット)は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティを5としたBlossum62スコアリングマトリックスである。
【0130】
2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列間の同一性(%)は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に実装されているE.Meyers及びW.Millerのアルゴリズム((1989)CABIOS,4:11-17)を用いて、PAM120重み付き残基表を使用し、ギャップ長ペナルティを12、ギャップペナルティを4として求めることができる。
【0131】
本明細書に記載する核酸及びタンパク質配列は、例えば、同ファミリーの他のメンバーの配列又は類縁配列を同定するために公的データベースに対し検索を行う「クエリー配列」として用いることができる。この種の検索は、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子の相同ヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラムを用いて、スコア=100、ワード長=12として実施することができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子の相同アミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラムを用いて、スコア=50、ワード長=3として実施することができる。比較目的でギャップが挿入されたアラインメントを得るために、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されているGappedBLASTを利用することができる。BLAST及びGappedBLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0132】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換わっているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基の群は、当該技術分野において定義されている。このような群には、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、極性無電荷側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
他の例示的なPD-1阻害剤
一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、MDX-1106、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、又はOPDIVO(登録商標)としても知られるニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)である。ニボルマブ(clone5C4)及び他の抗PD-1抗体は、米国特許第8,008,449号明細書及び国際公開第2006/121168号パンフレットに開示されている(その全内容を参照によりここに援用する)。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、例えば、表Bに開示する、ニボルマブの1つ若しくは複数のCDR配列(又はまとめて全部のCDR配列)、又は重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列を含む。
【0142】
一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、ランブロリズマブ(Lambrolizumab)、MK-3475、MK03475、SCH-900475、又はKEYTRUDA(登録商標)としても知られるペンブロリズマブ(Merck&Co)である。ペンブロリズマブ及び他の抗PD-1抗体が、Hamid,O.et al.(2013)New England Journal of Medicine 369(2):134-44、米国特許第8,354,509号明細書、及び国際公開第2009/114335号パンフレットに開示されている(その全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、例えば、表Bに開示するペンブロリズマブの1つ若しくは複数のCDR配列(又はまとめて全部のCDR配列)、重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列を含む。
【0143】
一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、CT-011としても知られるピジリズマブ(Cure Tech)を含む。ピジリズマブ及び他の抗PD-1抗体は、Rosenblatt,J.et al.(2011)J Immunotherapy 34(5):409-18、米国特許第7,695,715号明細書、米国特許第7,332,582号明細書、及び米国特許第8,686,119号明細書に開示されている(その全内容を参照によりここに援用する)。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、例えば、表Bに開示するピジリズマブの1つ若しくは複数のCDR配列(又はまとめて全部のCDR配列)、重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列を含む。
【0144】
一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、AMP-514としても知られるMEDI0680(Medimmune)である。MEDI0680及び他の抗PD-1抗体は、米国特許第9,205,148号明細書及び国際公開第2012/145493号パンフレットに開示されている(その全内容を参照によりここに援用する)。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、MEDI0680の1つ若しくは複数のCDR配列(又はまとめて全部のCDR配列)、重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列を含む。
【0145】
更なる公知の抗PD-1抗体としては、例えば、国際公開第2015/112800パンフレット、国際公開第2016/092419号パンフレット、国際公開第2015/085847号パンフレット、国際公開第2014/179664号パンフレット、国際公開第2014/194302号パンフレット、国際公開第2014/209804号パンフレット、国際公開第2015/200119号パンフレット、米国特許第8,735,553号明細書、米国特許第7,488,802号明細書、米国特許第8,927,697号明細書、米国特許第8,993,731号明細書、及び米国特許第9,102,727号明細書に記載されているものが挙げられる(その全内容を参照によりここに援用する)。
【0146】
一実施形態において、抗PD-1抗体は、本明細書に記載する抗PD-1抗体のうちの1種と同一のPD-1上のエピトープに競合的に結合する、及び/又は結合する抗体である。
【0147】
一実施形態において、PD-1阻害剤は、PD-1シグナル伝達経路を阻害するペプチド、例えば、米国特許第8,907,053号明細書(その全内容を参照によりここに援用する)に記載されているものである。一実施形態において、PD-1阻害剤は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合させたPD-L1又はPD-L2の細胞外部位又はPD-1結合部位を含むイムノアドヘシン)である。一実施形態において、PD-1阻害剤は、例えば、国際公開第2010/027827号パンフレット及び国際公開第2011/066342号パンフレット(その全内容を参照によりここに援用する)に開示されているAMP-224(B7-DCIg(Amplimmune))である。
【0148】
【0149】
【0150】
抗PD-L1抗体分子の例
一実施形態において、組合せ製品は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩若しくはコクリスタルと、本明細書に記載するものなどの抗PD-L1抗体分子とを含む。
【0151】
プログラム死リガンド1(PD-L1)は、免疫抑制性受容体であるプログラム死1(PD-1)のリガンドであると説明されている。PD-L1がPD-1に結合すると、T細胞受容体により媒介されるリンパ球の増殖及びサイトカインの分泌が阻害される(Freeman et al.(2000)J Exp Med 192:1027-34)。したがって、PD-L1を遮断することにより抗腫瘍免疫を増強させることができる。
【0152】
数種類の細胞がPD-L1を発現する。例えば、PD-L1は、活性化されたT細胞、樹状細胞(DC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、B細胞、単球、及び血管内皮細胞上に発現する。PD-L1は、ヒト肺、卵巣、及び結腸癌、及び様々な骨髄腫を含む多くのがんにおいて発現している(Iwai et al.(2002)PNAS 99:12293-7;Ohigashi et al.(2005)Clin Cancer Res 11:2947-53;Okazaki et al.(2007)Intern.Immun.19:813-24;Thompson et al.(2006)Cancer Res.66:3381-5)。PD-L1の発現は、腎臓、卵巣、膀胱、乳房、胃、及び膵臓がんを含む様々な種類のがんの予後不良と強い相関がある。
【0153】
多くの腫瘍内浸潤Tリンパ球には、正常組織中のTリンパ球や末梢血Tリンパ球と比較して圧倒的に多くのPD-1が発現している。これは、腫瘍反応性T細胞上のPD-1の上方制御が抗腫瘍免疫反応の減弱に寄与している可能性を示唆している(Ahmadzadeh et al.(2009)Blood 114:1537-44)。したがって、PD-L1発現腫瘍細胞がPD-1発現T細胞と相互作用することにより媒介されるPD-L1シグナル伝達により、T細胞の活性化が減弱化され、免疫監視をくぐり抜けることが可能になる(Sharpe et al.(2002)Nat Rev Immunol.2:116-26;Keir et al.(2008)Annu Rev Immunol.26:677-704)。PD-1を遮断することにより、エフェクターT細胞の動員が増強され、免疫原性の低い腫瘍細胞の血行性転移を阻害することができる(Iwai et al.(2005)Int.Immunol.17:133-144)。
【0154】
抗PD-L1は、例えば、PD-1及びB7-1との阻害的相互作用を両方共遮断することにより、T細胞の免疫性を増強する。抗PD-1は、PD-L2/PD-1を介した免疫調節も可能にする。PD-1及びB7-1はいずれもT細胞、B細胞、DC、及びマクロファージ上に発現し、これらの種類の細胞上でB7-1及びPD-L1の双方向性相互作用を可能にする。非造血細胞上のPD-L1は、T細胞上のB7-1に加えてPD-1とも相互作用する可能性がある。
【0155】
幾つかの実施形態において、抗PD-L1抗体分子は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718C、又はMDX-1105から選択される。
【0156】
幾つかの実施形態において、抗PD-L1抗体はMSB0010718Cである。MSB0010718C(A09-246-2とも称される;Merck Serono)は、PD-L1に結合するモノクローナル抗体である。MSB0010718C及び他のヒト化抗PD-L1抗体が国際公開第2013/079174号パンフレットに開示されており、本明細書に開示する配列を有する(又はそれと実質的に同一若しくは類似の配列を有する、例えば、配列の同一性は特定の配列に対し少なくとも85%、90%、95%、又はそれを超える)。MSB0010718Cの重鎖及び軽鎖アミノ酸配列は少なくとも以下を含む:
重鎖(国際公開第2013/079174号パンフレットに開示されている配列番号24)
【化3】
軽鎖(国際公開第2013/079174号パンフレットに開示されている配列番号25)
【化4】
【0157】
一実施形態において、PD-L1阻害剤はYW243.55.S70である。YW243.55.S70抗体は、国際公開第2010/077634号パンフレットに記載されている抗PD-L1であり(それぞれ配列番号20及び21に示されている重鎖及び軽鎖可変領域配列)、当該明細書に開示されている配列(又は実質的に同一若しくは類似の、例えば、特定の配列に対し配列同一性が少なくとも85%、90%、95%、又はそれを超える配列)を有する。
【0158】
一実施形態において、PD-L1阻害剤はMDX-1105である。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、国際公開第2007/005874号パンフレットに記載されている抗PD-L1抗体であり、当該明細書に開示されている配列(又は実質的に同一若しくは類似の、例えば、特定の配列に対し配列同一性が少なくとも85%、90%、95%、又はそれを超える配列)を有する。
【0159】
一実施形態において、PD-L1阻害剤はMDPL3280A(Genentech/Roche)である。MDPL3280Aは、PD-L1に結合するヒトFc最適化IgG1モノクローナル抗体である。MDPL3280A及びPD-L1に結合する他のヒトモノクローナル抗体は米国特許第7,943,743号明細書及び米国特許出願公開第20120039906号明細書に開示されている。
【0160】
他の実施形態において、PD-L1阻害剤は、2015年10月13日に出願された、「PD-L1に対する抗体分子及びその使用(Antibody Molecules to PD-L1 and Uses Thereof)」と題した米国特許出願公開第2016/0108123号明細書(その全内容を参照によりここに援用する)に開示されている抗PD-L1抗体分子である。
【0161】
一実施形態において、抗PD-L1抗体分子は、BAP058-hum01、BAP058-hum02、BAP058-hum03、BAP058-hum04、BAP058-hum05、BAP058-hum06、BAP058-hum07、BAP058-hum08、BAP058-hum09、BAP058-hum10、BAP058-hum11、BAP058-hum12、BAP058-hum13、BAP058-hum14、BAP058-hum15、BAP058-hum16、BAP058-hum17、BAP058-Clone-K、BAP058-Clone-L、BAP058-Clone-M、BAP058-Clone-N、若しくはBAP058-Clone-Oのいずれかのアミノ酸配列;又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に記載されているアミノ酸配列、若しくは表1のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列;又は上述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、同一性が少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれを超える)配列を含む、少なくとも1つ若しくは2つの重鎖可変ドメイン(任意選択で定常領域を含む)、少なくとも1つ若しくは2つの軽鎖可変ドメイン(任意選択で定常領域を含む)、又は両方を含む。
【0162】
更なる他の実施形態において、抗PD-L1抗体分子は、本明細書に記載する抗体、例えば、BAP058-hum01、BAP058-hum02、BAP058-hum03、BAP058-hum04、BAP058-hum05、BAP058-hum06、BAP058-hum07、BAP058-hum08、BAP058-hum09、BAP058-hum10、BAP058-hum11、BAP058-hum12、BAP058-hum13、BAP058-hum14、BAP058-hum15、BAP058-hum16、BAP058-hum17、BAP058-Clone-K、BAP058-Clone-L、BAP058-Clone-M、BAP058-Clone-N、若しくはBAP058-Clone-Oのいずれかから選択される抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域;又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に記載されている重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、若しくは米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域;又は上述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、同一性が少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれを超える)配列を有する重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域からの、少なくとも1、2、又は3の相補性決定領域(CDR)を含む。
【0163】
更なる他の実施形態において、抗PD-L1抗体分子は、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すアミノ酸配列又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域からの少なくとも1、2、又は3のCDR(又はまとめて全部のCDR)を含む。一実施形態において、1つ又は複数のCDR(又はまとめて全部のCDR)は、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すアミノ酸配列又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列に対し、1、2、3、4、5、6、又はそれを超える変化、例えば、アミノ酸置換又は欠失を含む。
【0164】
更なる他の実施形態において、抗PD-L1抗体分子は、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すアミノ酸配列又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域からの少なくとも1、2、又は3のCDR(又はまとめて全部のCDR)を含む。一実施形態において、1つ又は複数のCDR(又はまとめて全部のCDR)は、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すアミノ酸配列又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列に対し、1、2、3、4、5、6、又はそれを超える変化、例えば、アミノ酸置換又は欠失を含む。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体分子は、軽鎖CDRの置換、例えば、軽鎖のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3における1つ又は複数の置換を含む。
【0165】
他の実施形態において、抗PD-L1抗体分子は、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示されているアミノ酸配列又は表1に示されているヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖可変領域からの少なくとも1、2、3、4、5、又は6のCDR(又はまとめて全部のCDR)を含む。一実施形態において、1つ又は複数のCDR(又はまとめて全部のCDR)は、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すアミノ酸配列又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列に対し、1、2、3、4、5、6、又はそれを超える変化、例えば、アミノ酸の置換又は欠失を含む。
【0166】
一実施形態において、抗PD-L1抗体分子は、本明細書に記載する抗体、例えば、Kabat及びChothiaの定義に従うBAP058-hum01、BAP058-hum02、BAP058-hum03、BAP058-hum04、BAP058-hum05、BAP058-hum06、BAP058-hum07、BAP058-hum08、BAP058-hum09、BAP058-hum10、BAP058-hum11、BAP058-hum12、BAP058-hum13、BAP058-hum14、BAP058-hum15、BAP058-hum16、BAP058-hum17、BAP058-Clone-K、BAP058-Clone-L、BAP058-Clone-M、BAP058-Clone-N、若しくはBAP058-Clone-Oのいずれかから選択される抗体の重鎖可変領域からの少なくとも1、2、若しくは3のCDR若しくは超可変ループ(例えば、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に記載されている少なくとも1、2、又は3のCDR又は超可変ループ);又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1のヌクレオチド配列によりコードされる少なくとも1、2、若しくは3のCDR又は超可変ループ;又は上述の配列のいずれかと実質的に同一の(例えば、同一性が少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、又はそれを超える)配列を有する少なくとも1、2、若しくは3のCDR若しくは超可変ループ;又は米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すKabat及び/若しくはChothiaに従う1、2、若しくは3のCDR若しくは超可変ループに対し、少なくとも1個のアミノ酸が変化(例えば、置換、欠失、又は挿入、例えば、保存的置換)しているが、変化が2、3、若しくは4以下である、少なくとも1、2、若しくは3のCDR若しくは超可変ループを含む。
【0167】
一実施形態において、抗PD-L1抗体分子は、Kabat et al.((1991),“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD)に従うVHCDR1、又はChothia et al.(1992)J.Mol.Biol.227:799-817に従うVH超可変ループ1、又はこれらの組合せ、例えば、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すものを含むことができる。一実施形態において、Kabat及びChothiaのCDRの組合せのVHCDR1は、アミノ酸配列GYTFTSYWMY(配列番号63)、又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列(例えば、少なくとも1つのアミノ酸の変化(例えば、置換、欠失、又は挿入、例えば、保存的置換)を有するが、2、3、又は4以下である)を含む。抗PD-L1抗体分子は更に、例えば、KabatらによるVHCDR2~3及びKabatらによるVLCDR1~3、例えば、米国特許出願公開第2016/0108123号明細書の表1に示すものを含む。
【0168】
好ましい実施形態において、本発明に使用するための抗PD-L1抗体分子は:
(a)配列番号47のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号44のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号49のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号50のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号51のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;又は
(d)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2アミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
を含む。
【0169】
上述の実施形態の一態様において、本発明に使用するための抗PD-L1抗体分子は、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0170】
上述の実施形態の一態様において、本発明に使用するための抗PD-L1抗体分子は、配列番号62のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
免疫療法剤の投与量及び投与
免疫療法剤(抗PD-1抗体分子又は抗PD-L1分子抗体等)は、対象の全身に(例えば、経口、非経口、皮下、静脈内、直腸内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経皮的、又は吸入若しくは腔内設置(intracavitary installation)による)、局所的に、又は鼻、喉、及び気管支等の粘膜への適用により投与することができる。
【0177】
免疫療法剤の投与量及び治療レジメン(例えば、抗PD-1抗体分子又は抗PD-L1抗体分子)は当業者が決定することができる。特定の実施形態において、免疫療法剤(例えば、抗PD-1抗体分子)は、注射(例えば、皮下又は静脈内)により、約1~30mg/kgの用量、例えば、約5~25mg/kg、約10~20mg/kg、約1~5mg/kg、又は約3mg/kgで投与される。投与スケジュールは、例えば、週1回~2、3、又は4週に1回まで変化させることができる。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、隔週で約10~20mg/kgの用量で投与される。他の実施形態において、抗PD-1抗体分子は、4週に1回、約1~10mg/Kg、又は約1~5mg/Kg、又は約3mg/kgの用量で投与される。
【0178】
例えば、抗PD-1抗体分子は、一律の用量(flat dose)又は固定用量(fixed dose)で投与又は使用される。幾つかの実施形態において、抗PD-1抗体分子は、注射により(例えば、皮下又は静脈内)、約200mg~500mgの用量(例えば、一律の用量)、例えば、約250mg~450mg、約300mg~400mg、約250mg~350mg、約350mg~450mg、又は約300mg、又は約400mgで投与される。投与スケジュール(例えば、一律用量の投与スケジュール)は、例えば、週1回~2、3、4、5、又は6週に1回まで変化させることができる。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、約300mg~400mgの用量を3週に1回又は4週に1回投与される。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、約300mgからの用量で3週に1回投与する。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、約400mgからの用量で4週に1回投与される。一実施形態において、抗PD-1抗体分子は、約300mgからの用量で4週に1回投与される、一実施形態において、抗PD-1抗体分子は約400mgからの用量で3週に1回投与される。
【0179】
別の実施形態において、抗PD-1抗体分子は、約300mg~400mgの一律の用量で3週に1回又は4週に1回投与される。この実施形態の一部において、抗PD-1抗体分子は一律の用量である約400mgで4週に1回投与される。この実施形態の更なる別の一部において、抗PD-1抗体分子は、一律の用量である約300mgで3週に1回投与される。
【実施例】
【0180】
次に示す実施例は本発明を例示することを意図するものであり、制限を意図するものと見なすべきではない。温度は摂氏度で与える。特段の指定がない限り、蒸発はいずれも減圧下、好ましくは約15mmHg~100mmHg(=20~133mbar)に実施される。最終生成物、中間体、及び出発物質の構造は標準的な分析法、例えば、微小分析及び分光特性、例えば、MS、IR、NMRにより確認される。略称は当該技術分野において従来使用されているものである。
【0181】
本発明の化合物の合成に利用する全ての出発物質、構成単位、試薬、酸、塩基、脱水剤、溶媒、及び触媒は、市販品又は当業者に知られている有機合成方法により製造できるもののいずれかである(Houben-Weyl 4th Ed.1952,Methods of Organic Synthesis,Thieme,Volume 21)。更に、本発明の化合物は以下の実施例に示す当業者に知られている有機合成法により製造することができる。
【0182】
本発明を例示するが、次に示す実施例はいかなる形でも制限を意図するものではない。
【0183】
略称
ACN:アセトニトリル
aq:水性
br:ブロードな
BSA:ウシ血清アルブミン
CPBA:3-クロロ過安息香酸
d:二重線
dd:複合二重線
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EtOAc:酢酸エチル
g:グラム
h:時間
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
IS:内部標準
LCMS:液体クロマトグラフィーと質量分析法を接続した機器分析法
M:モル濃度
m:多重線
MeOH:メタノール
min:分
mL:ミリリットル
mmol:ミリモル
MS:質量分析法
m/z:質量電荷比
NADPH:ベータ-ニコチンアミドジヌクレオチドリン酸、還元型
NMR:核磁気共鳴法
ppm:百万分率
rt:室温
Rt:保持時間
s:一重線
sat:飽和
t:三重線
THF:テトラヒドロフラン
【0184】
UPLC法:
UPLC 2min:Waters UPLC Acquity;カラム:Acquity HSS T3、1.8mm、2.1×50mm、60℃、溶離液A:水+0.05%HCOOH+3.75mM酢酸アンモニウム、B:ACN+0.04%HCOOH、グラジエント:5~98(1.4min)(%B)、流速:1.0mL/min。
UPLC 10min:Waters UPLC Acquity;カラム:Acquity HSS T3、1.8mm、2.1×50mm、60℃、溶離液A:水+0.05%HCOOH+3.75mM酢酸アンモニウム、B:ACN+0.04%HCOOH、グラジエント:5~98(9.4min、0.4min保持)(%B)、流速:1mL/min。
【0185】
実施例1:1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールの調製
【化5】
5-ブロモ-6-クロロ-2-(メチルチオ)ピリミジン-4-アミン
6-クロロ-2-(メチルチオ)ピリミジン-4-アミン(15.0g、85mmol)のDMF(150ml)溶液を冷却し、N-ブロモコハク酸イミド(16.7g、94mmol)を0℃で撹拌しながら少量ずつ加えた。10分後、水を0℃で加えることにより反応を停止した。反応混合物を飽和食塩水で希釈し、EtOAcで3回抽出した。有機相を合一して飽和NaHCO
3水溶液で2回、次いで飽和食塩水で洗浄した後、分離し、Na
2SO
4を含むフェーズセパレータで濾過することにより乾燥させた。濾液を減圧下に濃縮することにより標題化合物を無色固体として得た(18.8g、74mmol、収率80%、純度92%)。これを更に精製することなく次のステップに使用した。M/z=254/256/258[M+H]+,Rt=0.95min(UPLC2min),1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 8.03(br s,1H),7.25(br s,1H),2.42(s,3H).
【0186】
5-ブロモ-2-(メチルチオ)-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン
5-ブロモ-6-クロロ-2-(メチルチオ)ピリミジン-4-アミン(17.8g、70mmol)、1H-ピラゾール(4.7g、69mmol)、及びKOtBu(7.9g、70mmol)の混合物をDMF(250mL)中、60℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧下に減量し、残渣を飽和NaHCO3水溶液で希釈し、EtOAcで3回抽出した。有機相を合一して飽和食塩水で洗浄し、分離し、Na2SO4を含むフェーズセパレータで濾過して乾燥させた。濾液を減圧下に濃縮することにより標題化合物(20g、純度64%)を得た。これを更に精製することなく次のステップに使用した。M/z=286/288/290[M+H]+,Rt=0.85min(UPLC 2min),1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 8.35(d,J=2.5Hz,1H),8.03(br s,1H),7.81(br s,1H),7.26(br s,1H),6.55(s,1H),2.46(s,3H).
【0187】
5-ブロモ-2-(メチルスルフィニル)-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン
5-ブロモ-2-(メチルチオ)-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン(20g、純度64%)をDCM(100mL)中に懸濁させた懸濁液に、3-クロロ過安息香酸(9.3g、53.7mmol)のDCM(100mL)溶液を撹拌しながら20分間かけて0℃で滴下し、得られた混合物を23℃で16時間攪拌した。反応混合物を濾過することにより析出物を回収し、DCMで洗浄した。固体を真空乾燥させることにより標題化合物を無色固体として得た(2.4g、7.6mmol、2段階の収率11%)。M/z=302/304[M+H]+,Rt=0.53min(UPLC 2min),1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 8.63(br s,1H),8.38(d,J=2.3Hz,1H),7.87(s,1H),7.72(s,1H),6.60-6.61(m,1H),2.86(s,3H).
【0188】
(1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ボロン酸
5-ブロモ-2-(メチルスルフィニル)-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン(50mg、0.17mmol)及び(1H-ピラゾール-4-イル)ボロン酸(18mg、0.17mmol)をDMF(1ml)中で混合した混合物にCs2CO3(54mg、0.17mmol)を0℃で加えた。得られた混合物を23℃で1時間で攪拌した。反応混合物を水で希釈し、EtOAcで3回抽出した。有機相を合一して水、次いで飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4を含むフェーズセパレータで分離し、濾過することにより乾燥させた。濾液を減圧下に濃縮することにより標題化合物を得た(30mg、0.066mmol、収率40%)。これを更に精製することなく次のステップに使用した。M/z=350/352[M+H]+,Rt=0.55min(UPLC 2min).
【0189】
1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール
(1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ボロン酸(30mg、0.066mmol)のTHF(1mL)溶液を激しく攪拌しながら25wt%NaOH水溶液(0.021mL、0.13mmol)及び30%H2O2水溶液(0.020mL、0.20mmol)を0℃で添加した。30分後、更に30%H2O2水溶液(0.020mL、0.20mmol)を添加し、混合物を同温度で計2.5時間攪拌した。飽和NH4Cl水溶液で反応を停止した後、水で希釈し、DCMで4回及びDCM/MeOHの4/1混合物で3回抽出した。有機相を合一し、フェーズセパレータで濾過することにより乾燥させ、濾液を減圧下に濃縮した。粗生成物をisoluteに吸着させ、カラムクロマトグラフィーで精製した(ISCO、12gのシリカredisepカラム、流速:30ml/min、溶媒:CH2Cl2:MeOH 1:0(3min保持)~96:4(25min))。生成物の画分を合一し、減圧下に濃縮することにより標題化合物を無色固体として得た(14mg、0.040mmol、収率60%)。M/z=322/324[M+H]+,Rt=0.58min(UPLC2min);Rt=2.27min;純度254 nm:>95 %(UPLC 10min),1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 9.23(br s,1H),8.44(d,J=2.5Hz,1H),8.32(br s,1H),7.94(s,1H),7.90-7.81(m,1H),7.46(br s,2H),6.63-6.50(m,1H).
【0190】
別法として、6-クロロ-2-(メチルチオ)ピリミジン-4-アミンをまず塩基の存在下にピラゾールと反応させることにより、2-(メチルチオ)-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンを生成させることができ;次いでNBSで処理することにより5-ブロモ-2-(メチルチオ)-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンを生成した。
【0191】
実施例1A:1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-オールの調製
【化6】
5-ブロモ-6-クロロ-2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-アミン
5-ブロモ-6-クロロ-2-(メチルチオ)ピリミジン-4-アミン(13g、52mmol)をDCM(450ml)に溶解した溶液に、DCM(100ml)に溶解したm-クロロ過安息香酸(77%)(Sigma-Aldrich)(13g、57mmol)をゆっくりと滴下した。溶液を室温で1時間攪拌した。生成した白色の析出物を濾過し、DCMで数回洗浄して乾燥させた。標題化合物(14g、99%)を得た。M/z=270/272[M+H]+,Rt=0.56min(UPLC 2min),1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 8.17(d,2H),2.78(s,3H).
【0192】
5-ブロモ-6-クロロ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン
5-ブロモ-6-クロロ-2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-アミン(2g、7.4mmol)をDMF(30ml)に懸濁させた。この懸濁液に1H-ピラゾール(0.5g、7.4mmol)及び炭酸セシウム(1.5g、4.4mmol)を加えた。反応混合物を室温で10分間激しく攪拌した。溶液を冷水(200ml)に注いだ。生成した析出物を濾過し、冷水で洗浄し、乾燥させた。所望の生成物を白色固体として得る(1.5g、72%)。M/z=274/276[M+H]+,Rt=0.80min(UPLC 2min),1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 8.44(d,1H),8.15(d,2H),7.81(d,1H),6.56(dd,1H).
【0193】
(1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ボロン酸
5-ブロモ-6-クロロ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン(0.10g、0.36mmol)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(0.14g、0.73mmol)及び炭酸セシウム(0.12g、0.36mmol)をアセトニトリル(10ml)中で混合した混合物を、密封したガラス管内で60℃で4時間攪拌した。次いで溶媒を減圧下に除去した。得られた固体をエーテル/ペンタンで洗浄し、乾燥させた。ボロン酸及びボロン酸エステルの混合物を更に精製することなく次のステップに使用した。
【0194】
1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-オール
(1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ボロン酸又は5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)-6-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンのTHF(2.5ml)溶液を0℃に冷却し、1NのNaOH(2ml)及びH2O2(30%)(0.23ml、2.32mmol)を加えた。混合物を室温で30分間攪拌した。反応物を1NのHClの添加によりpH3~4に酸性化し、酢酸エチルで抽出し、無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下に濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーでDCM-MeOH(2~5%)を用いて精製した。M/z=322/324[M+H]+,Rt=0.58min(UPLC 2min);1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 9.18(br s,1H),8.57-8.78(m,1H),8.29(br s,1H),7.97(s,1H),7.79(s,1H),7.54(s,1H),7.40(br s,1H),6.55(s,1H).
【0195】
実施例2:5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの代謝産物の単離/特性評価:液体クロマトグラフィー及び質量分光法を用いたラット、イヌ、及びヒトミクロソームにおけるin vitro代謝産物の同定
略称:
ACN:アセトニトリル
CC:検量線
IS:内部標準
DMSO:ジメチルスルホキシド
MRM:多重反応モニタリング
NADH:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(還元型)
Rpm:回転毎分
【0196】
肝ミクロソーム
ラット肝ミクロソーム(雄、プールド、Sprague Dawley)
供給源:XenoTech、LLC(Kansas、USA)
タンパク質含有量:20mg/mL
カタログ番号:RI000、ロット番号:0710623
イヌ肝ミクロソーム(雄、プールド、Beagle)
供給源:XenoTech、LLC(Kansas、USA)
タンパク質含有量:20mg/mL
カタログ番号:DI000、ロット番号:0810143
ヒト肝ミクロソーム(男女混合、プールド)
供給源:XenoTech、LLC(Kansas、USA)
タンパク質含有量:20mg/mL
カタログ番号:H0610、ロット番号:101042
【0197】
原液及び試薬
試験品
in vitroインキュベーション用に5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの2mM及び0.2mM原液をDMSO中で調製した。肝ミクロソームインキュベーション液中の最終有機物含有量を0.5%とした。
【0198】
1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-オール及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-6-オールの2.5mM原液を別々にDMSO中で調製した。この原液をクロマトグラフィー操作用として更にアセトニトリルで希釈し、1-(6-アミノ-2-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-オール及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-6-オールの濃度を1μMとした。
【0199】
in vitroインキュベーション用にジクロロフェナク及びベラパミルの0.1mM原液をDMSO中で調製した。肝ミクロソームインキュベーション液の最終有機物含有量を0.5%とした。
【0200】
in vitroミクロソームインキュベーション
肝ミクロソームタンパク質(0.5mg/mLの場合25μL;0.3mg/mLの場合15μL)、NADPH(100μL、最終濃度2mM)、及びリン酸緩衝液(0.5mg/mLの場合870μL;0.3mg/mLの場合880μL)を、マイクロチューブ内で回転式振盪培養機を用いて37℃で10分間維持することによりインキュベートした。2mM及び0.2mMの5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンを5μL添加(spiking)することにより反応を開始し(タンパク質0.5mg/mLの場合、最終濃度10μM;タンパク質0.3mg/mLの場合、最終濃度1μM;DMSO最終濃度0.5%)、試料を37℃でインキュベートした。0、60、及び120分後に反応管から分取液(200μL)を抜き取り、アセトニトリル100μLを加えて反応を停止した。反応は2連で実施した。反応停止した試料を14000rpm(約21000g)で10分間遠心分離し(Eppendorf Centrifuge 5810R)、上清をLCMS/MSで分析した。
【0201】
対照のインキュベーション(NADPH無添加)及びブランクのインキュベーション(試験品無添加)を各種毎に1連で実施した。これらの試料を0及び120分後に抜き取り、アセトニトリルを用いて反応停止した。上清をミクロソームの劣化及びマトリックスの干渉の有無について分析した。陽性対照としてジクロフェナクをラット肝ミクロソーム及びヒト肝ミクロソーム中で、並びにベラパミルをイヌ肝ミクロソーム中で使用した。反応及び対照実験を1連で実施した。ジクロフェナク及びベラパミルの代謝回転データは社内の蓄積データと一致した。
【0202】
分析法及び機器分析条件
試料をタンパク質沈殿法を用いて処理した後、HPLC/タンデム質量分析法(API 4000質量分析計)にて、運転時間を28分としてリニアグラジエントで分析した。各試料を別々に注入し、Q1(MH+/MH-)及びMS/MSにて走査した。
【0203】
試験品を含まないブランク試料を用いてマトリックスの干渉について評価した後、可能性のある異なる代謝産物のピークをQ1走査で特定し、フラグメンテーションパターン(MS/MS走査)により確認した。分析法の概要を表9に示す。
【0204】
【0205】
改良分析法:
保持時間を延長し、同定したM-1代謝産物とは別に他の代謝産物も評価するために他の分析法も考案した。同一性を確認するため、1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-オール及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール(1μM)の水溶液を、改良分析法を用いて、in vitroでインキュベートした試料と一緒にコクロマトグラフィーに付した。改良法の概要を表10に示す。
【0206】
【0207】
ヒト肝ミクロソームの物質収支測定
5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールの原液をDMSOで系列希釈し、それぞれ1、0.5、及び0.25mM並びに0.5、0.25、及び0.125mMの濃度の添加溶液を得た。
【0208】
較正用標準物質としての5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールを、各添加溶液5μLをインキュベーションバッファー995μLに添加することにより、5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの10、5、2.5、及び1.25μM試料並びに1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールの5、2.5、1.25、及び0.625μM試料を調製した。
【0209】
これらの5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン及び1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-オールの添加試料を200μL分取し、アセトニトリル100μLで希釈した。これらの試料を分取(25μL)し、更に内部標準100μLで希釈した(ハロペリドール、アセトニトリル中1μg/mL)。
【0210】
インキュベーション試料についても較正用標準物質と同様に、反応停止した試料25μLを内部標準100μLに加えることにより調製した。
【0211】
次いでインキュベーション試料を、5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールに関し独立にMRMモードで定量した。方法の詳細を表11に示す。
【0212】
【0213】
結果
in vitro試料を代謝産物の存在の有無について評価した。保持時間が異なる、可能性のある5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン代謝産物のMH+(Q1)及びプロダクトイオン(MS/MS)のフラグメンテーションパターンを表1及び以下に示す。
【0214】
【0215】
【化7】
異なる種間で検出されたこれらの5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの推定代謝産物の概要を表2に示す。
【0216】
【0217】
ミクロソーム試料中の親化合物及びその代謝産物の相対量を表3に示す。
【0218】
【0219】
水性標準物質及び選択されたミクロソーム試料の抽出イオンクロマトグラム(XIC)、Q1及びMS/MSスペクトルを
図1~3に示す。
【0220】
ラット、イヌ、及びヒト肝ミクロソームで一原子酸素添加代謝産物(M-I、6.22min)が産生された。親化合物(5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン)に対する代謝産物の比率は揃って低かった。但し、この分析はイオン化効率が代謝産物及び親化合物の両方について等しいと仮定したものである(表3)。
【0221】
それとは別に、肝ミクロソーム(タンパク質含量0.3mg/mL)中の5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン(1μM)、ジクロロフェナク(ヒト及びラットの陽性対照、0.5μM)、ベラパミル(イヌの陽性対照、0.5μM)の時間依存的消失を試験した。結果を表4及び表5に示す。
【0222】
【0223】
【0224】
5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンの対照のインキュベーション(NADPH無添加)を行った結果、120分後まで安定であることが判明し、非CYP媒介代謝が行われないことを示唆している。ブランクのインキュベーション(試験品無添加)においてはマトリックスの干渉が認められなかった(表4)。
【0225】
濃度1μMの5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン及びタンパク質含量0.3mg/mLのミクロソームを用いた場合の、試験に供した動物種間の相対的代謝量は、DLM>HLM>RLMであった。結果を表6に示す。
【0226】
【0227】
1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-オール及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールを合成した。これらの化合物の構造を次に示す。
【化8】
【0228】
次いで、ヒトミクロソームのインキュベーション試料中で検出された代謝産物を、化合物1-(6-アミノ-5-ブロモ-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-オール及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと一緒にコクロマトグラフィーを行い、Q1モードで検出することにより同定した。コクロマトグラフィー結果から、ミクロソーム試料中で検出された代謝産物(M-I)が1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと同一であることが確認された。クロマトグラムを
図4に示す。
【0229】
インキュベートしたヒト肝ミクロソーム試料中の5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン及びその代謝産物(M-I、1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール)を、4点検量線用標準物質を用いてMRMモードで定量した。親化合物と一緒に60分間インキュベートした後のヒト肝ミクロソーム中のM-I代謝産物は約15~20%である。ヒト肝ミクロソームの代謝において約95~107%の物質収支が達成された。結果を表7に示す。5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン及び1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールの検量線の概要を表8に示す。
【0230】
【0231】
【0232】
ヒト肝ミクロソーム内で生成したM-I代謝産物は、親化合物の15~20%に相当する。ラット及びイヌで生成したM-I代謝産物は定量を行わない。したがって、その代謝産物の生成はヒト肝ミクロソーム中よりも高いか又は低い可能性がある。
【0233】
結論として、5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンは、試験に供した前臨床動物種及びヒトのミクロソーム内でin vitroで酸化経路を介して代謝され、検出された代謝産物が1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと同一であることがクロマトグラフィーにて確認された。
【0234】
実施例3:in vitro hA2A放射性リガンド結合試験
放射性リガンドである[3H]-ZM241385(ARC、Cat#ART0884)及びヒトアデノシンA2A受容体を安定的に発現するHEK-293細胞から作製した膜(Perkin Elmer RBHA2AM400UA)を使用し、アッセイ用バッファーとして50mMトリス(pH7.5)、1mM MgCl
2、0.1mg/mlBSA、0.2U/mlアデノシンデアミナーゼを使用し、放射性リガンド結合(RLB)競合試験を行うことにより化合物の結合親和性を測定した。膜にケイ酸イットリウム(YSI)コムギ胚芽凝集素(WGA)SPAビーズ(Perkin Elmer RPNQ0023)に予め結合させた後、放射性リガンド(2nM 3H-ZM241385、0.5μg/well hA2A膜、50μg/well YSI WGA、最終濃度)及び濃度を変化させた被験化合物(DMSO最終濃度0.3%)を、最終量を100μLとして平衡化させた。非特異的結合(NSB)を10μM XACを用いて測定した。白色の384ウェルアッセイプレートを使用した(Greiner # 781207)。アッセイプレートを室温で平衡化するまでインキュベートした(1.5時間)後、遠心分離にかけ、ベータシンチレーションカウンターで計数し(TopCount NXT)、測定値をカウント数毎分(CPM)で記録した。CPMを次式を用いて阻害率に変換した:
【数1】
式中、全結合量(TB)は競合化合物不在下での結合量である。
【0235】
濃度反応曲線から得られたIC50をチェン=プルソフ式を用いて阻害定数(Ki)に変換した。
【0236】
【表27】
本発明は、以下の態様を含む。
<1>
化合物:
【化1】
である、5-ブロモ-2,6-ジ(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミ
ンの代謝産物;又はその医薬的に許容される塩。
<2>
単離形態にある、化合物1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1
-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール。
<3>
1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-
2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩と、少なくと
も1種の医薬的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物。
<4>
治療有効量の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-
ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩
と1種又は複数種の免疫療法剤とを含む組合せ。
<5>
がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療方法であって:それを必要とする対象
に、治療有効量の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)
-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される
塩を、単独で又は1種若しくは複数種の免疫療法剤と組み合わせて投与することを含む、
方法。
<6>
1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-
2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又はその医薬的に許容される塩の、単独で又
は1種若しくは複数種の免疫療法剤と組み合わせた、がんを治療するための使用。
<7>
がんの治療に使用するための、<1>又は<2>に記載の化合物1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オール又は<3>に記載の医薬組成物。
<8>
がんの治療に使用するための、<4>に記載の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと1種又は複数種の免疫療法剤との組合せ。
<9>
対象におけるアデノシンA2a受容体の阻害方法であって、前記対象に、治療有効量の
<1又は2に記載の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-
イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールを投与すること、又は
対象に<3>に記載の医薬組成物を投与すること、を含む、方法。
<10>
前記がんは、肺がん、黒色腫、腎臓がん、肝臓がん、骨髄腫、前立腺がん、乳カンセ(
cance)、結腸直腸がん、膵臓がん、頭頸部がん、肛門がん、胃食道がん、甲状腺が
ん、子宮頸がん、リンパ球増殖性疾患又は血液がん、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、
非ホジキンリンパ腫、又は白血病から選択される、<5>に記載の方法、<6>に記載の使用、又は<7>に記載の使用のための化合物、又は<8>に記載の使用のための組合せ。
<11>
前記がんは、癌腫、具体的には肺がん、より具体的には非小細胞肺がんである、<5>に記載の方法、<6>に記載の使用、又は<7>に記載の使用のための化合物、又は<8>に記載の使用のための組合せ。
<12>
1種又は複数種の免疫療法剤は、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L
1抗体からなる群から選択される、<5>、<10>、若しくは<11>に記載の方法、<6>、<10>、若しくは<11>に記載の使用、又は<8>、<10>、若しくは<11>に記載の使用のための組合せ。
<13>
前記免疫療法剤は:イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、
ピジリズマブ(CT-011)、AMP-224、AMP-514(MEDI0680)
、MPDL3280A、MEDI4736、MSB0010718C、YW243.55
.S70、及びMDX-1105からなる群から選択される、<5>、<10>、若しくは<11>に記載の方法、<6>、<10>、若しくは<11>に記載の使用、又は<8>、<10>、若しくは<11>に記載の使用のための組合せ。
<14>
前記免疫療法剤は、抗PD-1抗体である、<5>、<10>、若しくは<11>に記載の方法、<6>、<10>、若しくは<11>に記載の使用、又は<8>、<10>、若しくは<11>に記載の使用のための組合せ。
<15>
前記抗PD-1抗体は:
(a)配列番号4のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミノ
酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);並び
に配列番号13のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列
、及び配列番号15のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号1のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR2アミノ
酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号10の
VLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号1
2のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号41のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミ
ノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号13
のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号
15のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;又は
(d)配列番号41のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR2アミ
ノ酸配列、及び配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号10
のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列番号
12のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
を含む、<14>に記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<16>
前記抗PD-1は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号20のアミノ酸
配列を含むVLを含む、<14>に記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<17>
前記抗PD-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号22のアミ
ノ酸配列を含む軽鎖を含む、<14>に記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<18>
前記抗PD-1抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号16のアミ
ノ酸配列を含むVLを含む、<14>に記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<19>
前記抗PD-1抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号18のアミ
ノ酸配列を含む軽鎖を含む、<14>に記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<20>
前記抗PD-1抗体分子は、約300mgの用量で3週に1回投与される、<14>~<19>のいずれかに記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<21>
前記抗PD-1抗体分子は、約400mgの用量で4週に1回投与される、<14>~<19>のいずれかに記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<22>
前記免疫療法剤は、抗PD-L1抗体である、<5>、<10>、若しくは<11>に記載の方法、<6>、<10>、若しくは<11>に記載の使用、又は<8>、<10>、若しくは<11>に記載の使用のための組合せ。
<23>
前記抗PD-L1抗体分子は:
(a)配列番号47のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2ア
ミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)
;並びに配列番号52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ
酸配列、及び配列番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号44のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2ア
ミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号
49のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号50のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列
番号51のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号48のVHCDR2ア
ミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号
52のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号53のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列
番号54のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;又は
(d)配列番号63のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号45のVHCDR2ア
ミノ酸配列、及び配列番号46のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH;並びに配列番号
49のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号50のVLCDR2アミノ酸配列、及び配列
番号51のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
を含む、<22>に記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<24>
前記抗PD-L1抗体分子は、配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及
び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、<22>に記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<25>
免疫療法剤は、単一の組成物中で一緒に、又は2種以上の異なる組成物形態で別々に投
与される、<12>~<24>のいずれかに記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<26>
前記免疫療法剤は、前記化合物:-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾー
ル-1-イル)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールと同時に、そ
の前に、又はその後に投与される、<12>~<24>のいずれかに記載の方法、使用、又は使用のための組合せ。
<27>
実施例1に記載の1-(4-アミノ-5-ブロモ-6-(1H-ピラゾール-1-イル
)-ピリミジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-オールの製造プロセス。
【配列表】