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特許7161487排ガスを処理するための触媒、排気システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】排ガスを処理するための触媒、排気システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/48 20060101AFI20221019BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20221019BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20221019BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20221019BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20221019BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
B01J29/48 A ZAB
B01D53/64 100
B01D53/78
B01D53/81
B01D53/86 222
B01D53/94 400
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019552600
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 GB2018050874
(87)【国際公開番号】W WO2018178714
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】62/478,833
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1716063.1
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アルコーヴ クレイヴ, シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン, ポール ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ブランドメイヤー, マリーア
(72)【発明者】
【氏名】フーバー, マノップ
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】レップ, デーヴィッド マイケル
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530997(JP,A)
【文献】特表2010-519020(JP,A)
【文献】特表2015-530921(JP,A)
【文献】国際公開第2012/033039(WO,A1)
【文献】特開平10-230137(JP,A)
【文献】特開平09-108573(JP,A)
【文献】特開2011-121036(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101422728(CN,A)
【文献】特表2002-530190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0297413(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0192128(US,A1)
【文献】特表2008-533432(JP,A)
【文献】XU, W. et al.,Industrial & Engineering Chemistry Research,2014年12月15日,Vol.54,pp.146-152,<DOI:10.1021/ie504090m>
【文献】FAN, X. et al.,Fuel Processing Technology,2012年06月21日,Vol.104,pp.325-331,<DOI:10.1016/j.fuproc.2012.06.003>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/34 - 53/96
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SO、NO及び単体の水銀を含む排ガスを窒素還元剤の存在下で処理するための触媒であって、該触媒は、
(i)モリブデン(Mo)の酸化物及び/又はタングステン(W)の酸化物、
(ii)バナジウム(V)の酸化物、
(iii)チタン(Ti)の酸化物、並びに
(iv)MFIゼオライト
を含有する組成物を含み、
ここで組成物は、組成物の全重量を基準として、
(i)1~6重量%のMoO、及び/又は1~10重量%のWO、並びに
(ii)0.1~3重量%のV、並びに
(iii)48.5~85重量%のTiO、並びに
(iv)~50重量%のMFIゼオライト
を含み、
MFIゼオライトが、H-MFIゼオライトである、触媒。
【請求項2】
組成物が、リンを含まない、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
組成物が、MFIゼオライトと、Moの酸化物、Wの酸化物、Vの酸化物及びTiの酸化物とから成る、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
プレート触媒である、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
MFIゼオライトが、H-ZSM-5ゼオライトである、請求項1からのいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
SO、NO及び単体の水銀を含む排ガスを処理するための方法であって、
排ガスの流れを、請求項1からのいずれか一項に記載の触媒と、窒素還元剤の存在下で接触させることにより、処理された排ガスをもたらすこと、
を含む、方法。
【請求項7】
窒素還元剤は、アンモニア若しくはヒドラジンであるか、又は尿素((NHCO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及びギ酸アンモニウムからなる群から選択されるアンモニア前駆体である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
請求項又はに記載の方法を行うための燃焼源のための排気システムであって、流れている排ガスを運ぶための導管と、窒素還元剤供給源と、排ガスの流路に配置された請求項1からのいずれか一項に記載の触媒と、触媒の上流を流れる排ガスへと窒素還元剤を計量供給するための手段とを含む、排気システム。
【請求項9】
処理された排ガスから酸化水銀を回収するための湿式又は乾式のスクラバーをさらに含む、請求項に記載の排気システム。
【請求項10】
燃焼源が、炉又はボイラーである、請求項又はに記載の排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスを処理するための触媒に関する。本発明は具体的には、石炭燃焼排ガスなどに含まれる単体の水銀(Hg)を酸化するために高い水準の活性を保つとともに、窒素還元剤(例えばアンモニア)の存在下でのガスに含まれる窒素酸化物を還元するために高い水準の活性を保ちながら、ガス中に含まれるSOがSOに酸化されることを最小化する触媒に関する。つまり本触媒は、酸化力のあるSOにより、単体の水銀を選択的に酸化するように設計されている。本発明はまた、本触媒を用いた排ガス処理法、また本方法を実施するための排気システムに関する。
【0002】
発電所はしばしば、エネルギー源として化石燃料(例えば石炭、石油)、又は天然ガスを利用しており、これらの燃料を燃焼させることによって排ガスが生じるが、この排ガスからは、窒素酸化物(NO)を除去しなければならず、この窒素酸化物には、NO(一酸化窒素)、NO(二酸化窒素)、及びNO(亜酸化窒素)が含まれる。発電所で生じる排気には、一般的に酸化力があり、NOは、触媒及び還元剤(通常はアンモニア又は短鎖の炭化水素)によって、選択的に還元する必要がある。選択的触媒還元(SCR)として知られるこの手法は、発電所の排ガス等からNOを除去するために、1970年代に熱心に調査された。
【0003】
石炭及び石油は、さまざまな量の硫黄を含有する。これらの発電所からの排気をSCRで処理するためは、SOの酸化を最小限に抑えつつ、高いNO還元効率を維持する必要がある。多くのSCR触媒は、アンモニアの存在下、NOを窒素及び水に変換する際に有効である。しかしながら一般的には、SOからSOへの酸化という不所望の副反応が、NO還元とともに起こる。酸性雨の成分となる三酸化硫黄(SO)の形成は、制御する必要がある。
【0004】
よって、SO酸化率(kSO)を最小限に抑えつつ、NOの還元率(kNO)を最大化する触媒が、強く望まれている。そこで近年では、SO酸化物の生成量が低いNO除去触媒に対する需要が、特に高まっている。このようなNO除去触媒は一般的に、少量のバナジウムを含有し、この少量のバナジウムは、触媒の活性成分である。
【0005】
発電所、及び様々な種類の施設から排出される煙道ガスに含まれているHg、Pb、F及びその他の痕跡量の成分が、健康問題を引き起こすことは知られている。これは、このような煙道ガスに含まれているNO及びSOに加えて、ということである。
【0006】
よって、石炭を燃やしたボイラーから排出される、蒸気圧が高い水銀(ほとんどは単体の水銀の形態)を、排ガス中のNOを還元しつつ、またSOの酸化を最小限にしながら、選択的に酸化可能な触媒をもたらすことが望ましい。従来の発電所SCR触媒では、Hg酸化活性が主に、活性成分としての酸化バナジウムによってもたらされているため、単体の水銀(Hg)の酸化活性は、バナジウム含有量(V含有量)を増加させることによって向上可能である。しかしながら、酸化バナジウムは、高いHg酸化活性を有するだけでなく、SO酸化活性も有するため、V含有量の増加により、SOの酸化が促進され、こうして生じたSOは、煙害及び酸性雨の形成につながり得る。
【0007】
揮発性が高い水銀(単体の水銀、Hg)は通常、Vによって酸化され、水銀化合物(例えば塩化水銀)になる。続いて、こうして酸化された水銀化合物は、排ガス処理システムの下流に設けられた湿式スクラバー、電気式集塵機又は脱硫装置によって、燃焼灰又は石膏とともに、除去される。このような知られたシステムでは、酸化チタン及び金属(例えばバナジウム)の酸化物を含有する触媒が、活性成分として用いられる。
【0008】
従って、石炭を燃やす発電所のためのSCR触媒には、相対的に高いSCR活性、相対的に高いHg酸化活性、及び相対的に低いSO酸化活性が必要とされる。文献の説明によれば、プレート型SCR触媒においてバナジア及びモリブデナの添加量を増加させることにより、Hg酸化活性が向上することが、示されている。
【0009】
よって従来の触媒は、Hg酸化活性と、SO酸化活性とのトレードオフに直面しており、通常は、相対的に高いHg酸化活性と、相対的に低いSO酸化活性の双方をもたらすに至っていない。これらに鑑み、本発明の目的は、従来の触媒のトレードオフ問題を克服すること、またHg酸化活性及びSO酸化活性に関する前述の要求を満たす排ガス浄化触媒を提供すること、すなわち、Hg酸化のパーセントを相対的に高い水準に維持しつつ、SO酸化のパーセントを特異的に減少させる排ガス浄化触媒を提供することである。
【0010】
WO 2014/027207 A1は、第1の成分と第2の成分とのブレンドを含む排気ガスを処理するための触媒組成物を開示しており、第1の成分は、アルミノシリケート又はフェロシリケートのモレキュラーシーブ成分であり、モレキュラーシーブは、H型であるか、又は一若しくは複数の遷移金属でイオン交換され、第2の成分は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物担体上に担持されたバナジウム酸化物である。また、このような触媒ブレンドを組み込む又は利用する方法、システム及び触媒物品も提供される。
【0011】
米国特許出願第2002/004446号は、還元剤の存在下で窒素酸化物を分解するための触媒体を開示しており、この触媒体は、水素イオン交換された酸性ゼオライト及び活性成分を含有する活性材料を含み、この活性材料は、40~60重量%の前記ゼオライト、40~60重量%の前記活性成分を含有し、この活性成分は、70~95重量%の二酸化チタン、2~30重量%の三酸化タングステン、0.1~10重量%の酸化アルミニウム、及び0.1~10重量%の二酸化ケイ素を含有する。
【0012】
米国特許出願2013/190166 A1は、排ガスのためのNOx還元触媒を開示しており、この触媒は、チタン(Ti)、リンの酸化物、モリブデン(Mo)の酸化物及び/又はタングステン(W)の酸化物、バナジウム(V)の酸化物、並びにSiO/Al比が20以上である高シリカゼオライトを含む触媒組成物から構成され、この触媒組成物は、
(1)二酸化チタン、及びリン酸又はリン酸のアンモニウム塩を、HPOの観点で二酸化チタンに対して1重量%より多く、15重量%以下の量で、
(2)モリブデン(Mo)及び/又はタングステン(W)のオキソ酸又はオキソ塩、並びにバナジウム(V)のオキソ酸塩又はバナジル塩を、それぞれ、酸化チタンに対して0原子%より多く、8原子%以下の量で、並びに
(3)高シリカゼオライトを、酸化チタンに対して0重量%より多く、20重量%以下で、
水の存在下で混錬し、乾燥させ、か焼することによって得られる。
【0013】
日本国特許第4994008Bは、排ガス入り口部分から順に第1の層、第2の層及び第3の層から構成される、触媒充填された層を開示している。第1の層触媒は、NH又はNH前駆体による窒素酸化物還元活性と、金属の水銀を酸化させて酸化水銀にする活性とを有する成分から構成されている。第2の層触媒は、NH又はNH前駆体による窒素酸化物還元活性と、金属の水銀を酸化させる活性とを有する第1の成分と、NHの酸化分解活性を有する第2の成分の双方から構成されており、触媒表面は、NH又はNH前駆体による窒素酸化物還元活性と、金属の水銀を酸化させる活性とを有する成分でコーティングされている。第3の層触媒は、第1又は第2の層と同じ触媒から構成されている。
【0014】
WO 2015/036748は、燃焼プラントからの廃ガスにおいて一酸化窒素を還元するための触媒を開示しており、該触媒は、バナジウムを含む触媒活性成分と、少なくとも一のモレキュラーシーブ及び粘土鉱物から選択される犠牲成分とを含み、少なくとも一のモレキュラーシーブが、アルカリ金属及び遷移金属を実質的に含まず、犠牲成分が廃ガス中の触媒毒を吸収する。
【0015】
米国特許出願第2015/0071841号は、バイオマス燃焼プラントの廃ガスにおいて一酸化窒素を還元するための、バナジウムSCR触媒を開示している。この触媒は、ゼオライト及び/又は粘土鉱物(特にハロイサイト)から選択される犠牲成分を含む。稼働中、触媒の触媒活性中心が触媒毒によってブロックされないように、廃ガスに含まれる触媒毒(特にアルカリ金属)が、犠牲成分によって吸収される。
【0016】
本発明は、相対的に高いSCR(NO還元)活性、及びHg酸化活性と同時に、相対的に低いSO酸化活性を有する触媒を開示する。従って、本発明の目的は、従来技術に比して改善された触媒、方法及び/若しくはシステム、又は少なくとも市販で有用なものの代替物を提供することである。
【0017】
第1の態様によれば、SO、NO及び単体の水銀を含む排ガスを窒素還元剤の存在下で処理するための触媒がもたらされ、この触媒は、
(i)モリブデン(Mo)の酸化物及び/又はタングステン(W)の酸化物、
(ii)バナジウム(V)の酸化物、
(iii)チタン(Ti)の酸化物、並びに
(iv)MFIゼオライト
を含有する組成物を含み、
ここで組成物は、組成物の全重量を基準として、
(i)1~6重量%のMoO、及び/又は1~10重量%のWO、並びに
(ii)0.1~3重量%のV、並びに
(iii)48.5~94.5重量%のTiO、並びに
(iv)35~50重量%のMFIゼオライト
を含む。
【0018】
本開示について、以下でさらに説明する。以下の段落では、本開示の様々な態様/実施態様について、より詳細に規定する。各態様/実施態様は、その他の一又は複数の態様/実施態様と組み合わせ可能なように規定されるが、そうでない旨が明示されている場合はこの限りではない。特に、好ましい又は有利であると示されたあらゆる特徴は、好ましい又は有利であると示されたその他のあらゆる一又は複数の特徴と、組み合わせることができる。生成物との関連で開示された特徴は、方法に関して開示された特徴と組み合わせ可能なことが意図されており、その逆も成り立つ。
【0019】
さらに、本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語は、「~から実質的に成る(consisting essentially of)」、又は「~から成る(consisting of)」という定義と交換可能である。「含む(comprising)」という用語は、列挙された要素が必須であるが、その他の要素を添加することもでき、それでもなお請求項の範囲の構成をなすことを意味することが、意図されている。「~から実質的に成る(consisting essentially of)」という用語は、請求項の範囲を特定の物質又は工程に限定するものであり、特許請求された発明について基本的及び新規な一又は複数の特徴に対して、著しい影響を与えるものではない。「~から成る(consisting of)」という用語は、請求項をクローズ形式にするものであり、通常関連する不純物を除いて、言及されたもの以外の物質を含まない。
【0020】
本発明は、SO、NO及び単体の水銀を含む排ガスを処理するための触媒に関する。これらのガスは、特定の燃焼システムの排気に、特に石炭若しくは石油の発電所のボイラーからの排気に含まれている。
【0021】
触媒は、窒素還元剤の存在下で排ガスを処理するために働く。窒素還元剤は好ましくは、アンモニア若しくはヒドラジンであるか、又は尿素((NHCO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及びギ酸アンモニウムからなる群から選択されるアンモニア前駆体であるか、又はこれらのうち二以上の混合物である。これらの還元剤を排気流へと計量供給するためのシステムは、当分野でよく知られている。
【0022】
本触媒は、組成物を含む。本組成物は、モリブデン(Mo)の酸化物、及び/又はタングステン(W)の酸化物を含有する。これらは、1~6重量%のMoO、及び/又は1~10重量%のWOという量で、存在するのが好ましい。より好ましくは、その合計が、2~4重量%のMoO、又は4~9重量%のWOである。本組成物はWOを含まないのが、好ましい。
【0023】
触媒の組成物は、酸化バナジウム(V)を含む。酸化バナジウム又はVOという用語は、バナジウムの酸化物を意味し、好ましくは混合酸化物担体上に分散された+5の酸化状態のバナジウムを有する、バナジウムの酸化物を意味する。バナジウムの主要な酸化物は、以下の通りである:酸化バナジウム(II)(一酸化バナジウム、VO);酸化バナジウム(III)(バナジウムセスキオキシド又は三酸化バナジウム、V);酸化バナジウム(IV)(二酸化バナジウム、VO);及び酸化バナジウム(V)(五酸化バナジウム、V)。先に論じたようにVは、酸化触媒として作用するために存在している。本組成物は、0.1~3重量%のV、好ましくは0.5~2.5重量%のVを含む。
【0024】
触媒の組成物は、酸化チタン(Ti)を含む。Tiは組成物中に、48.5~94.5重量%のTiOという量で存在する。組成物は好ましくは、75~85重量%のTiOを含む。Ti酸化物は、触媒組成物のための触媒ベース材料をもたらす。
【0025】
本組成物は、ゼオライトを含む。ゼオライトという用語は、酸素原子の、アルミニウム原子とケイ素原子との合計に対する比が2:1であるアルミノシリケート骨格を意味するものと理解される。酸化状態IVの幾つかのケイ素原子が、酸化状態IIIのアルミニウム原子と交換されている結果、骨格又は骨格構造全体が、負の電荷を獲得する。負の電荷は、骨格構造内にあるカチオンによって補償される。これらのカチオンは、交換可能なカチオンとして知られ、この交換可能なカチオンはイオン交換により、その他のカチオン、特に金属カチオンによって直ちに置き換えることができる。
【0026】
ゼオライトもまた、骨格構造が、特徴的な孔幅を有する連続細孔を備えるという事実によって区別される。MFIゼオライトは、構造骨格型により特徴づけられるゼオライトの分類として知られている。
【0027】
ゼオライトは、酸化ケイ素の、酸化アルミニウムに対するモル比に基づいて、又はこのモル比から生じる特徴的な骨格構造に従って、分類される。分類のためには、論文の“Chemical Nomenclature and Formulation of Compositions of Synthetic and Natural Zeolites”、R. M. Barrer著、Pure Appl.Chem.51 (1979), p.1091~1100を参照されたい。
【0028】
組成物は、MFIゼオライトを、組成物の全重量を基準として4~50重量%の量で含む。組成物は好ましくは、10~20重量%のMFIゼオライトを含む。有用なMFIのアイソタイプには、ZSM-5、[Fe-Si-O]-MFI、AMS-1 B、AZ-1、Bor-C、ボラライト、エンシライト、FZ-1、LZ-105、ムティーナ沸石、NU-4、NU-5、シリカライト、TS-1、TSZ、TSZ-III、TZ-01、USC-4、USI-108、ZBH、ZKQ-1 B、及びZMQ-TBが含まれ、ZSM-5が特に好ましい。このような材料について典型的なSiO/Alのモル比は、30~100である。このようなゼオライトは、当分野で知られており、市販で手に入る。
【0029】
従来技術とは異なり、本発明による触媒プレートでは、活性材料のゼオライトを金属カチオン交換すること、すなわち、ゼオライトの交換可能なカチオンを、金属カチオン(例えば銅又は鉄のカチオン)で交換することは、好ましくない。むしろゼオライトは、水素イオン交換されているのが好ましい。MFIゼオライトは好ましくは、H-MFIゼオライトである。MFIゼオライトは好ましくは、H-ZSM-5ゼオライトである。
【0030】
「水素イオン交換された酸性ゼオライト」という用語は、交換可能なカチオンが、主に水素イオンと交換されたゼオライトであると理解される。これは例えば、合成ゼオライト中に含まれるアンモニウムイオン(NH )を、熱変換することによって、水素イオン交換によって、又は多重に荷電されたカチオン含有ゼオライトを脱水の間に加水分解することによって、起こり得る。この文脈では特に、Kirk-Othmerの “Encyclopedia of Chemical Technology”, 3rd Edition, Volume 15, John Wiley & Sons, New York, 1981, p.640~ 669を参照されたい。
【0031】
本組成物はリンを含まないのが、好ましい。Pは、触媒調製物の活性に対する阻害物質(poison)として働く。
【0032】
本組成物の触媒成分は好ましくは、MFIゼオライト、並びにMoの酸化物、Wの酸化物、Vの酸化物及びTiの酸化物から成り、最も好ましくは、MFIゼオライト、並びにMoの酸化物、Vの酸化物、及びTiの酸化物のみから成る。これはつまり、好ましくは触媒活性構成成分の全てが、先に挙げたものだけだということである。幾つかの実施態様において、触媒はさらに、以下で論じる特定の結合剤及び/又は充填材を、触媒との組み合わせで含むことができる。触媒は、本明細書に記載する組成物のみであるのが好ましい。
【0033】
触媒は、基材にもたらされることによって、又は押出成形されたハニカム構造としてもたらされることによって、それ自体の基材が形成されるのが、好ましい。「基材」という用語は、その上に膜が置かれる固体材料を意味する。
【0034】
基材は、モノリス、プレート、又はシートの形態であってよく、好ましくはプレート又はシートの形態である。基材は、金属、好ましくは鋼、さらに好ましくはステンレス鋼又はFeCr合金で構成されていてよい。基材は、好ましくはステンレス鋼から作製され、好ましくは比較的高い幾何学的表面積を有する。基材は、メッシュ、シート、プレート、モノリス、ハニカム等の形態をとりうる。好ましい基材は、ステンレス鋼メッシュのように、有孔である。基材は好ましくは、フルーティング、積み重ね、及び/又は配置して、積み重ね可能な単位又は群にすることが可能である。基材は好ましくは、コーティングに先立ってか焼される。例えば、ステンレス鋼メッシュは好ましくは、コーティングに先立ち、炉内で、ホットプレート上で、又は別の方法によって、500℃から1000℃、好ましくは600℃から900℃に加熱される。基材はまた、グリットブラスト又はサンドブラストなどによって研磨処理されうる。
【0035】
基材は好ましくは、プレート触媒である。プレートは好ましくは、触媒を0.4~2kg/mの量で、より好ましくは0.5~1.0kg/mの量で含む。プレート触媒は、当分野でよく知られており、通常は、エキスパンドメタルシート又は有孔金属シートを備え、その上には触媒組成物の原料物質がプレスされるか、かつ/又は含浸され、それからか焼される。このような知られたプロセスは例えば、米国特許第6054408号に記載されている。
【0036】
触媒組成物を基材、例えばプレートに塗布する際には、ペーストが使用できる。化学的に安定化されたアナターゼ型の二酸化チタンに水を添加すると、混錬可能な原料物質又は組成物が形成され、それからこれに、モリブデン及びバナジウムの水溶性組成物、例えばヘプタモリブデン酸アンモニウム及びメタバナジン酸アンモニウムを、意図した濃度に従って添加し、原料物質を形成する。この原料物質を、混錬する。原料物質について所望の含水量を設定した後、無機材料(例えば粘土)及び/又は繊維材料(例えばグラスファイバー)を、機械的強度を高めるためのプロセスにおいて、原料物質に添加する。この工程の間、その他の添加剤(例えば塗膜形成剤、分散剤、粘稠剤など)を、混錬した原料物質に添加することもできる。こうして生じた原料物質を再度混錬して、触媒原料物質を形成する。添加剤(これには例えば、ガラス粒子、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、セラミック、粘土、無機酸化物、鉱物、ポリマー、又はその他の材料が含まれ得る)は、固形分の残部をなす。
【0037】
本明細書で用いるように、「か焼する」又は「か焼」という用語は、空気中又は酸素中で材料を加熱することを意味する。この定義は、IUPACのか焼の定義と一致するものである。(IUPAC.Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the “Gold Book”).Compiled by A. D. McNaught and A. Wilkinson.Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)。XMLオンライン修正ハ゛ーシ゛ョン: http://goldbook.iupac. org(2006-)、作成者M. Nic、J. Jirat、B. Kosata;改訂者A. Jenkins.ISBN 0-9678550-9-8. doi: 10.1351/ goldbook.)か焼は、金属塩を分解するため、また触媒内の金属イオンの交換を促進するため、また触媒を基材に接着させるために、行われる。か焼に用いられる温度は、か焼される材料中の成分に応じて決まり、一般には約400℃~約900℃の間で、およそ1~8時間である。幾つかの場合、か焼は約1200℃までの温度で行うことができる。本明細書に記載のプロセスに関連する用途においてか焼は、一般に約400℃~約700℃の温度で、およそ1~8時間、好ましくは約400℃~約650℃の温度で、およそ1~4時間、行われる。か焼は、好ましくは乾燥条件下で行われるが、水熱的に、すなわち、ある程度の水分含有量の存在下でも行うことができる。
【0038】
意外なことに、本触媒は通常、300~450℃の温度でNOx変換について向上した活性を有すると同時に、同じ温度範囲で最小化されたSO変換活性を有することが判明した(この際にNO変換及びSO変換は、大気圧で測定)。これらは例えば、石炭発電所排気内のいわゆるハイ・ダスト・ポジション(high dust position)で典型的に見られる温度である。これより低い温度範囲は、いわゆるテール・エンド・ポジション(tail end positions)で見られる。
【0039】
基材中に含浸された触媒組成物は、前駆体材料(これをか焼すると酸化物が形成される)の使用によってもたらすことができる。
【0040】
適切なVO前駆体は、か焼するとバナジウムの酸化物を形成する、バナジウム含有化合物である。このような化合物の例としては、オキシ硫酸バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、及びオキシ三塩化バナジウムが挙げられるが、これらに限られない。
【0041】
適切なMoO前駆体は、か焼するとモリブデンの酸化物を形成する、モリブデン含有化合物である。このような化合物の例としては、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、塩化モリブデン、シュウ酸モリブデン、及び酢酸モリブデンが挙げられるが、これらに限られない。
【0042】
適切なWO前駆体は、か焼するとタングステンの酸化物を形成する、タングステン含有化合物である。このような化合物の例としては、塩化タングステン、オキシ塩化タングステン、タングステン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム、又は予め製造されたタングステン/チタニアが挙げられるが、これらに限られない。
【0043】
適切なTiO前駆体は、か焼するとチタンの酸化物を形成する、チタン含有化合物である。このような化合物の例としては、四塩化チタン、三塩化チタン及びオキシ硫酸チタンが挙げられるが、これらに限られない。
【0044】
触媒を調製するために用いる原材料は、前述の触媒成分の酸化物及び塩のいずれかであり得る。
【0045】
こうして得られた複数のプレート状触媒を、知られた方法によって積み重ね、それから所定の形状を有するように成形すると、こうして生じた触媒構造は、石炭を燃やすボイラーからの排気を処理する際に詰まりにくい触媒ユニットとして使用できる。強化材(例えば無機繊維)又は微粒子状結合剤(例えばシリカゾル)を、触媒成分を含有するペーストに添加することができる。
【0046】
ペーストを基材に塗布する前に、油を除去するため、化学洗浄又は熱処理のいずれかによって、基材を処理することができる。
【0047】
さらなる態様によれば、SO、NO及び単体の水銀を含む排ガスを処理するための方法が提供され、該方法は、
排ガスの流れを、本明細書に記載の触媒と、窒素還元剤の存在下で接触させることにより、処理された排ガスをもたらすことを含む。
【0048】
さらなる態様によれば、本明細書に記載の方法を行うための燃焼源のための排気システムが提供され、該システムは、流れている排ガスを運ぶための導管と、窒素還元剤供給源と、排ガスの流路に配置された本明細書に記載の触媒と、触媒の上流を流れる排ガスへと窒素還元剤を計量供給するための手段とを含む。
【0049】
本システムは好ましくは、処理された排ガスから酸化水銀を回収するための湿式スクラバーをさらに含む。
【0050】
適切な用途としては、中でも、固定排出源(例えば火力発電所、ガスタービン、石炭火力発電所及び熱電併給プラント、化学産業及び石油化学産業に用いられるプラント及び精製用の加熱器及びボイラー、加熱炉、コークス炉、コーヒー焙煎プラント、自治体の廃棄物プラント、及び焼却炉)からの排ガス処理が挙げられる。
【0051】
燃焼源は好ましくは、ボイラー、例えば石炭又は石油発電所のためのボイラーである。コーティングされた物品及び再生された物品は、発電所、特に硫黄含有燃料(例えば石炭、石油など)をエネルギー源として使用するプラントに有用である。発電所SCR触媒は通常、大気圧下、及び高い微粒子環境下において、300℃~450℃の範囲の温度で稼働する。石炭の硫黄含量は石炭のタイプに応じて変化し、例えば瀝青炭は0.7~4.0%の硫黄含有量を有する。典型的には、排ガスは500~1500ppmの範囲の硫黄含有量を有するが、一部の排ガス源では、硫黄含有量は2000~3000ppm以上になる。硫黄含有燃料源は、SO(さらに酸化されるとSOになる)の量の制御を困難にすることがある。発電所は、NOを除去するためにSCR触媒に依存しているが、SOの酸化の割合を最小限に抑えつつ、NOを除去する能力を有する触媒を必要としている。
【0052】
NOx変換における触媒の活性は、反応器内に収容された触媒組成物を有する物品上に、NO、NH、O、HO、SO及びNの混合物を含むガスを、382℃で通過させ;NOの濃度変化を測定することによって、決定することができる。このような手順は、VGB Guideline for the Testing of DENOX Catalysts, VGB-R 302 He, 2nd revised edition (1998)に記載されている。NOの濃度は、FTIRガス分析器又は化学発光式NO分析器を使用して決定することもできる。同様に、SO変換における触媒の活性は、NO変換を測定するために用いるのと同型の反応器内に収容された触媒組成物を有する物品上に、O、HO、SO及びNの混合物を含むガスを、400℃で通過させ;湿式化学法によりSOの濃度変化を測定することによって、決定することができる。
【0053】
好ましい実施態様において、触媒は、Moの酸化物;V及びTiの酸化物;及びMFIゼオライト(好ましくはH-ZSM5ゼオライト)を含有する組成物を含むプレート触媒であり、ここでこの組成物は、組成物の全重量を基準として、2~4重量%のMoO、約0.5重量%又は約2.5重量%のV、15~25重量%のMFIゼオライト、及び残部のTiOを含む。
【0054】
好ましい実施態様において、触媒は、Moの酸化物;V及びTiの酸化物;及びMFIゼオライト(好ましくはH-ZSM5ゼオライト)を含有する組成物を含むプレート触媒であり、ここでこの組成物は、組成物の全重量を基準として、2~4重量%のMoO、約0.5重量%又は約2.5重量%のV、35~45重量%のMFIゼオライト、及び残部のTiOを含む。
【0055】
これらの触媒は、本明細書に記載の方法を行うための石炭若しくは石油発電所のための排気システムで提供されるのが好ましく、該システムは、流れている排ガスを運ぶための導管と、窒素還元剤供給源と、排ガスの流路に配置された本触媒と、触媒の上流を流れる排ガスへと窒素還元剤を計量供給するための手段とを含む。
【0056】
実施例
以下で本発明を具体的に、以下の非限定的な実施例により、詳細に説明する。
【0057】
比較例1の調製(参照用:1.2%のV/TiMo)
TiO上に、1.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアと、メタバナジン酸アンモニウム及びヘプタモリブデン酸アンモニウムと、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0058】
比較例2の調製(参照用:2.2%のV/TiMo)
TiO上に、2.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアと、メタバナジン酸アンモニウム及びヘプタモリブデン酸アンモニウムと、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0059】
実施例1の調製(1.2%のV/TiMo+16%のH-MFI)
TiO及び16重量%のゼオライト(H-MFI)上に、1.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアとメタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びゼオライト(H-MFI)と、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0060】
実施例2の調製(1.2%のV/TiMo+40%のH-MFI)
TiO及び40重量%のゼオライト(H-MFI)上に、1.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアとメタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びゼオライト(H-MFI)と、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0061】
実施例3の調製(2.2%のV/TiMo+13%のH-MFI)
TiO及び13重量%のゼオライト(H-MFI)上に、2.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアとメタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びゼオライト(H-MFI)とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0062】
実施例4の調製(2.2%のV/TiMo+16%のH-MFI)
TiO及び16重量%のゼオライト(H-MFI)上に、2.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアとメタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びゼオライト(H-MFI)と、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。2つの試料(実施例4A及び4B)を試験したので、以下の表で報告する。
【0063】
実施例5の調製(2.2%のV/TiMo+19%のH-MFI)
TiO及び19重量%のゼオライト(H-MFI)上に、2.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアとメタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びゼオライト(H-MFI)と、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0064】
実施例6の調製(2.2%のV/TiMo+40%のH-MFI)
TiO及び40重量%のゼオライト(H-MFI)上に、2.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアとメタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びゼオライト(H-MFI)と、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0065】
比較例7の調製:1.2%のV/TiMo+16%のMOR
TiO及び16重量%のモルデナイトゼオライト(MOR)上に、1.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアとメタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びモルデナイトゼオライト(MOR)と、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。結晶性のヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物をペーストに直接加え、この混合物をさらに混練した。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0066】
実施例8の調製:1.2%のV/TiMo+16%のFeMFI
TiO及び16重量%のゼオライト(Fe-MFI)上に、1.2重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアとメタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びFeゼオライト(Fe--MFI)と、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。結晶性のヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物をペーストに直接加え、この混合物をさらに混練した。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0067】
比較例3の調製:0.6%のV/TiMo
TiO上に、0.6重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアと、メタバナジン酸アンモニウム及びヘプタモリブデン酸アンモニウムと、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。結晶性のヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物をペーストに直接加え、この混合物をさらに混練した。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0068】
実施例9の調製:0.6%のV/TiMo+16%のH-MFI
TiO及び16重量%のゼオライト(H-MFI)上に、0.6重量%のVと、2.7重量%のMoOとを含む触媒を、チタニアとメタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム及びゼオライト(H-MFI)と、粘土、繊維及び有機結合剤とを組み合わせることによって調製し、それから混錬してペーストにした。結晶性のヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物をペーストに直接加え、この混合物をさらに混練した。このペーストを、ステンレス鋼メッシュ上に厚さ0.8mmで積層させ、か焼してプレート型触媒を形成した。
【0069】
NO、SO&Hg変換を評価するための一般的な手順
各触媒プレートをまず、25mm×400mmの寸法のストリップ状に切った。それから、これらのストリップのうち4つを、反応管に垂直に設置し、合成ガス混合物を、反応管に通過させた。NO、SO及びHg試験のための合成ガス混合物は、各試験について異なっており、これらの合成ガス混合物の組成及び条件は、下記表に記載されている。
【0070】
1.Hg試験:
反応器への入口のガスの組成、及び反応器からの出口のガスの組成を、複数の化合物を同時に分析するオンラインFTIR分光法によって決定した。装置の内部で水分の凝縮及び塩の形成を避けるために、FTIR試料セルの温度を約230℃に保持した。Hg濃度は、冷蒸気原子蛍光分析(CVAFS)を利用する市販の連続排ガス監視システム(CEM)を用いて、反応器の入口及び出口双方で分析した。Hg変換は、入口及び出口での単体のHgの濃度を用いて算出した。
【0071】
2.NOx試験:
NOx除去試験のパーセントは、化学発光法NO分析器により、触媒層の入口及び出口でNO濃度を測定することによって決定した。
【0072】
3.SOx試験:
SOのパーセントは、湿式化学法により触媒層の出口でSO濃度を測定することによって、決定した。
【0073】
【0074】
【0075】
これらの触媒の試験データから明らかなように、本発明の触媒は、良好な性能を有する。すなわち、NO除去について高い水準と、高い水銀酸化活性と、低い水準のSO酸化とを保つ。
【0076】
示されたように、本発明による実施例1~6は、改善された酸化活性と、MFIゼオライト無しの比較組成物と同等の、又はこれよりも良好なSO及びNO活性とを有する。実施例7によって示されたように、MFIゼオライト、特にH-ZSM5ゼオライトの使用は、モルデナイトよりもずっと効果的である。実施例8によって示されたように、H-MFIゼオライトの使用は、鉄で活性を向上させたMFIゼオライトよりも良好である。なぜならば後者は、過剰なSO酸化を示すからである。
【0077】
本発明の好ましい実施態様は、詳細に記載されているものの、当業者であれば、本発明又は添付特許請求の範囲を逸脱しない限りにおいて、本願実施態様に対して様々な変更が可能なことを理解するだろう。
【0078】
疑義を避けるために明記すると、本明細書で知得されたすべての文献の全内容は参照により、本明細書に組み込まれる。