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特許7161534標的による干渉が抑制された抗薬物抗体アッセイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】標的による干渉が抑制された抗薬物抗体アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20221019BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20221019BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20221019BHJP
【FI】
G01N33/53 G
G01N33/53 U
G01N33/53 R
G01N33/543 501A
G01N33/53 N
C07K16/18 ZNA
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020529507
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018082664
(87)【国際公開番号】W WO2019105916
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-14
(31)【優先権主張番号】17204316.8
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ダール,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨルダン,グレゴール
(72)【発明者】
【氏名】スターク,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】モハイセン-ザデー,ミリアム
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530495(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226758(US,A1)
【文献】国際公開第2009/022001(WO,A1)
【文献】LLINARES-TELLO, F. et al.,THU0166 Usefulness of the Acid Dissociation in Inmunogenicity Detection in Patients in Treatment with Anti-TNF Drugs,BMJ,2014年06月12日,vol.73, No.suppl.2,p.237
【文献】KUBIAK, R. J. et al.,Storage Conditions of Conjugated Reagents Can Impact Results of Immunogenicity Assays,Journal of Immunology Research,2016年07月10日,Vol.2016, Article ID: 1485615,pp.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)固定された捕捉用抗体を、薬物、標的、及び抗薬物抗体を含む血清試料又は血漿試料と共にインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体複合体を形成する工程、
b)工程a)で形成された複合体を、標的のおよそのpIのpH値を有する、糖と洗浄剤とを含む緩衝液で洗浄する工程、
c)工程b)の洗浄した複合体を、標識にコンジュゲートさせたトレーサー抗体と共に12~24時間インキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を形成する工程、
d)工程c)で形成された複合体中の標識を決定することによって、抗薬物抗体の量を定量する工程
を含む、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体の量を、低減した標的干渉を伴い、定量するための方法であって、抗薬物抗体は、薬物抗体に特異的に結合することができ、薬物抗体は、治療標的に特異的に結合することができる、前記方法
【請求項2】
トレーサー抗体及び捕捉用抗体が薬物抗体である、請求項1記載の方法
【請求項3】
方法が、捕捉用抗体、トレーサー抗体、及び検出用抗体を使用し、ここで、該捕捉用抗体は、結合対の第一のメンバーにコンジュゲートさせた薬物であり、該トレーサー抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートさせた薬物抗体であり、該検出用抗体は、酵素にコンジュゲートさせた検出可能な標識に特異的に結合している抗体である、請求項1~2のいずれか一項記載の方法
【請求項4】
結合対の第一のメンバーが、ハプテン、抗原、及びホルモンからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
結合対が、ビオチン/アビジン又はストレプトアビジン、テオフィリン/抗テオフィリン抗体、5-ブロモ-デオキシ-ウリジン/抗5-ブロモ-デオキシ-ウリジン抗体、及びジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン抗体からなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項6】
捕捉用抗体及び/又はトレーサー抗体が、互いに独立して、全長の薬物抗体、F(ab')2、Fab、及びscFvからなる群より選択される、請求項1~のいずれか一項記載の方法
【請求項7】
糖が、単糖、二糖、又は三糖である、請求項1~のいずれか一項記載の方法
【請求項8】
糖が、ショ糖、乳糖、マルトース、イソマルトース、及びトレハロースからなる二糖の群から選択される、請求項1~のいずれか一項記載の方法
【請求項9】
糖が、6.5重量%の濃度を有する、請求項1~のいずれか一項記載の方法
【請求項10】
洗浄剤が、非イオン性洗浄剤である、請求項1~のいずれか一項記載の方法
【請求項11】
洗浄剤が、ポリアルキレングリコールエーテル(商標名ブリッジ(Brij))、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル(商標名ツイン(Tween))、オクチルフェノールエトキシレート(商標名トリオン(Trion)又はノニデット(Nonident))、オクチル-β-グリコシド、n-脂肪酸-N-メチル-D-グルカミド(商標名メガ(MEGA))、及びN,N’-ビス-(3-D-グルコンアミドプロピル)コールアミド(商標名チャップ(CHAP))からなる洗浄剤の群より選択される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法
【請求項12】
工程bのインキュベーションが14~20時間である、請求項1~11のいずれか一項記載の方法
【請求項13】
工程bのインキュベーションが15~17時間である、請求項1~12のいずれか一項記載の方法
【請求項14】
薬物が抗C5抗体であり、標的がヒトC5である、請求項1~13のいずれか一項記載の方法
【請求項15】
糖がショ糖であり、洗浄剤がポリエチレングリコールドデシルエーテルであり、薬物が抗C5抗体であり、標的がヒトC5であり、緩衝液が5.5のpH値を有する、請求項1~14のいずれか一項記載の方法
【請求項16】
試料が、試料を得る前に薬物が投与されていた、該薬物での処置を必要とする患者に由来する、請求項1~15のいずれか一項記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗薬物抗体アッセイの分野にある。本明細書において、治療薬の標的からの干渉の低減した抗薬物抗体アッセイを報告する。
【0002】
発明の背景
Moxness, M., et al.(Ann. N. Y. Acad. Sci. USA 1005(2003)265-268)は、全クラス及びIgクラスのインシュリン抗体(IAB)についての放射性リガンド結合アッセイを報告した。試験及び対照の血清をまず酸性化することにより、結合したインシュリンを解離させ、活性炭を加えて血清中のインシュリンを吸着させた。中和後、インシュリンの結合した活性炭を遠心分離によって血清から除去した。各アッセイのためのインシュリンの抽出された血清試料を、標識されていない高いレベルのインシュリンの存在下及び非存在下において放射性標識されたインシュリンと共にインキュベートすることにより、それぞれ非特異的結合及び全結合を決定した。したがって、Moxness et al.は、2つの抗薬物抗体アッセイプロトコールの比較を報告し、ここでは一晩のインキュベーション及び酸による解離とを比較した。
【0003】
Patton, A., et al.(J. Immunol. Meth. 304 (2005) 189-195)は、抗原の存在下において(すなわち、過剰の抗原を事前に除去することなく)ヒト血清中の抗体の検出を可能とするために、酸による解離工程と合わせて、共有結合した高密度の抗原表面を使用する架橋ELISAを報告した。したがって、Patton et al.は、治療用抗体の分析前に過剰の抗原が除去されていない、アッセイプロトコールを報告した。著者らは、酸で前処理された試料を、前処理されていない試料と比較するが、この点以外は同一のアッセイ手順である。
【0004】
Lee, J.W., et al.(AAPS J. 13 (2011) 99-110)は、薬品開発を支える上での生体分析の主な推進力は、データの使用目的であると報告する。循環中のモノクローナル抗体及びその抗原リガンド(L)の測定のための信頼できる方法は、有効性及び安全性の評価の裏付けとしての曝露反応関係の評価、並びに用量の選択にとって非常に重要である。リガンド結合アッセイ(LBA)は、薬物動態/薬力学(PK/PD)及び安全性の評価を支持するために、タンパク質バイオ治療薬及び抗原リガンド(L)の分析に幅広く使用されている。リガンドに非共有結合的に結合するモノクローナル抗体薬物(mAb)では特に、多数の型のモノクローナル抗体及びリガンドがインビボにおいて存在し得、これには、遊離モノクローナル抗体、遊離リガンド、及びモノクローナル抗体とリガンドの一価及び/又は二価の複合体が含まれる。投薬後の生体内で起こる動的結合平衡の複雑さ及び生体分析中の複数の平衡攪乱源を考えると、関心対象の型(遊離型、結合型、又は全体のモノクローナル抗体及びリガンド)のエクスビボにおける定量は、インビボでの実際の定量とは異なる可能性があることは明らかである。リガンド結合アッセイ試薬及びアッセイフォーマットは原則的に、全体の又は遊離型のモノクローナル抗体及びリガンドを測定するように設計され得る。しかしながら、特定の条件下で測定される型の確認は、技術的に困難であり得る。
【0005】
Kelly, M., et al.(AAPS J., 15 (2013) 646-658)は、近年注目が高まりつつあるある領域が、「遊離」及び「全体の」分析物の評価並びにそうした評価に対するアッセイフォーマットの影響にあることを報告する。著者らは、入手可能な文献の批評を提供し、薬物動態アッセイ測定に対する抗薬物抗体の及ぼし得る影響を和らげる方法を先を見越して探索している。さらに、ADA(抗薬物抗体)アッセイにおいて薬物の耐容性を増加させるための方法は、通常、免疫複合体を解体し薬物を抽出する準備工程と共に、PKアッセイにおけるADAの耐容性を評価又は増加させるために別の目的で利用され得る。このような困難な操作の実施は、後期段階の臨床生体分析にとって慣例であるとは考えられないが、薬物動態に関する方法の開発の調査段階の早い時期にそれらの解釈についての価値ある情報を提供するだろうことが注記されなければならない。最終的には、薬物の定量を助けるために使用されるあらゆる抽出プロセスにより、「完全な」評価がなされる可能性があるだろう。
【0006】
Davis, R.A., et al.(J. Pharm. Biomed. Anal. 48 (2008) 897-901)は、捕捉/酸溶出フォーマットにおいて、単一の競合していないモノクローナル抗体を使用して、高いレベルの治療用モノクローナル抗体の存在下で、全(遊離型+結合型)バイオマーカー濃度を定量するための方法を報告した。このアッセイは、200μ/ml以上の治療用モノクローナル抗体の存在下で、循環中のng/mlのバイオマーカーレベルを正確に検出及び定量する能力を有する。
【0007】
Salimi-Moosavi, H., et al.(J. Pharm. Biomed. Anal. 51 (2010) 1128-1133)は、タンパク質の結合を解離し、優先的にThAを変性させるための、アルカリ及び酸/グアニジンによる処理のアプローチを報告した。中和された抗原タンパク質は、ELISAによって決定され得る。これらの方法は、ThAによる干渉を伴うことなく、全抗原タンパク質の再現性ある測定を提供する。血清試料、標準物質、及び抗原タンパク質とThAとを含む品質管理試料を、カゼインを含有しているアルカリ緩衝液(pH>13)又は酸/グアニジン緩衝液(pH<1)で処理した。2つの異なるThAシステムのための全抗原タンパク質を成功裡に測定し、干渉は、処理によって完全に消失した。これらの方法は、前臨床血清試料における分析に成功裡に適用された。
【0008】
Smith, H.W., et al.(Regul. Toxicol. Pharmacol. 49 (2007) 230-237)は、ELISAの前に、酸解離による固相抽出(SPEAD、solid-phase extraction with acid dissociation)による試料の処理を使用した、残留治療用タンパク質の存在下における、治療用タンパク質に対する抗体の検出を開示した。
【0009】
高いレベルの薬物の存在下における、モノクローナル抗体治療薬に対する抗薬物抗体の検出のための親和性捕捉溶出(ACE)アッセイは、Bourdage, J.S., et al.(J. Immunol. Meth. 327 (2007) 10-17)によって開示された。
【0010】
Zoghbi, J., et al. (J. Immunol. Meth. 426 (2015) 62-69は、患者の試料中において薬物の存在下で全ての抗薬物抗体(遊離の抗薬物抗体、及び薬物に結合した抗薬物抗体)の検出のための4つの成分を含む、免疫原性アッセイにおける薬物と標的の干渉問題を解決するための画期的で新規な方法を開示した:(1)過剰の薬物を使用して、遊離抗薬物抗体を飽和させ、薬物:抗薬物抗体複合体である、薬物に結合した抗薬物抗体を形成する、(2)ポリエチレングリコールなどの薬剤を使用して複合体を沈降させる、(3)薬物から抗薬物抗体を酸で解離し、酸性条件下で(中和せずに)遊離の抗薬物抗体(及び遊離薬物)を大きな容量の表面上に固定(捕捉)する、及び(4)特異的な抗ヒトIg検出用試薬を使用して遊離の抗薬物抗体(捕捉された薬物ではない)を検出する。
【0011】
高いレベルの薬物の存在下における、モノクローナル抗体治療薬に対する抗薬物抗体の検出のための親和性捕捉溶出(ACE)アッセイが、Bourdage, J.S., et al.(J. Immunol. Meth. 327 (2007) 10-17)によって開示された。
【0012】
現在の抗薬物抗体(ADA)アッセイのゴールドスタンダードは、形成された複合体の両面上に検出される薬物を有する、架橋アッセイである。これは、抗薬物抗体アイソタイプと抗薬物抗体の特異性を検出するのに適したアッセイフォーマットであるように思われる。
【0013】
Collet-Brose, J., et al.,(J. Immunol. Res., Article ID 5069678 (2016))は、最も適切な薬物及び標的の耐容性を示す、抗薬物抗体アッセイを選択するための、複数のイムノアッセイ技術プラットフォームの評価を開示した。この試験の目的は、アッセイ開発段階において、従って適切な厳密度をもって、抗薬物抗体の臨床アッセイのための最も適切な技術プラットフォーム及び試料の前処理手順を選択することであった。
【0014】
国際公開公報第2008/031532号は、ヒトIgGには結合しないことによって特徴付けられるカニクイザルIgGに特異的に結合している抗体、及び、二重抗原架橋イムノアッセイを使用してサル種の試料中の薬物抗体(DA)及び該薬物抗体に対する抗体(抗薬物抗体、ADA)の免疫複合体(DA/ADA複合体)を免疫学的に決定するための方法を開示した。本明細書において、ヒトIgGに交差結合しない特異的な抗カニクイザルIgGが使用され、これにより、このアッセイは、ヒト試料を分析するために使用されることはできない。さらに、可溶性治療標的の存在は、国際公開公報第2008/031532号に報告されているようなアッセイにおける疑陽性シグナルはもたらさないだろう。
【0015】
国際公開公報第2015/123315号は、沈降工程(これにより免疫複合体(抗薬物抗体と薬物)の沈降が生じる)、続いて沈降物の酸性化(これにより複合体からの抗薬物抗体の遊離が生じる)、及び測定可能な複合体の最終的な配置のための表面への抗薬物抗体の酸による吸着を含む、抗薬物抗体の存在又は量を検出するためのアッセイを開示した。
【0016】
Llinares-Tello, F., et al.(BMJ 73 (2014) THU0166)は、標準的な抗薬物抗体アッセイで、抗TNF抗体薬物を用いて処置された患者の免疫原性検出における、酸による解離の有用性を開示した。
【0017】
発明の要約
本明細書において、薬物の(治療)標的による抗薬物抗体の遮蔽は低減されているか又はさらには消失している、抗薬物抗体アッセイが報告されている。
【0018】
本明細書において、薬物、その標的及び抗薬物抗体を含む試料にとって特に有用である抗薬物抗体アッセイが報告され、ここでの薬物の(治療)標的の干渉は低減されているか又はさらには消失している。
【0019】
本発明は、少なくとも部分的には、抗薬物抗体の検出前に標的のpIで又は酸性pH値で実施されたインキュベーション工程を使用することにより、抗薬物抗体(検出)アッセイにおける血清試料又は血漿試料中に存在する治療用抗体(薬物)の標的からの干渉を低減することができるという知見に基づく。本発明に記載のアッセイは、治療用薬物の標的が凝集する傾向があり、これにより非特異的結合を引き起こす場合、又は/及び標的が二価/三価であることにより、アッセイにおいて疑陽性シグナルが通常もたらされる場合のいずれかにおいて特に有用である。
【0020】
本発明は、少なくとも部分的には、イムノアッセイにおいて分析される予定の試料中に存在する薬物(治療用抗体)の可溶性(治療)標的の干渉を、アッセイ手順において2つ以上の酸解離工程を使用することによって、低減させることができるか又はさらには消失させることができるという知見に基づく。
【0021】
本発明は、少なくとも部分的には、可溶性(治療)標的の沈降/凝集特性を、抗薬物抗体及び薬物の存在下において使用することにより、イムノアッセイにおける可溶性(治療)標的の干渉を低減させることができるという知見に基づく。低いpH値へと一般的に使用される酸性化により、高い(バックグラウンド)シグナルがもたらされ、これにより感度の低下がもたらされるだろう(例えば図18参照)。可溶性標的の失活工程を改善し/標的による干渉を低減させるために、アッセイ手順に免疫複合体の沈降を含めることは必要ではないことが判明した。イムノアッセイにおける、アッセイ感度の向上/可溶性(治療)標的による干渉の低減は、沈降物の分離及び/又は再懸濁を全く伴うことなく、酸性化及び中和によって成し遂げられ得ることが判明した。
【0022】
本発明は、少なくとも部分的には、酸処理工程を使用することにより、可溶性標的を(例えばその等電点で/等電点付近で)除去、すなわち沈降させることができるという知見に基づく。試料中の可溶性(治療)標的を除去するための及びイムノアッセイにおける標的による干渉を低減するための前記の酸処理工程の使用により、本発明に記載の方法は一般的に適用可能となる。この理論に拘るものではないが、本発明に記載の方法は、未知の免疫応答を有する臨床試料の分析により適していると推定される。なぜなら、可溶性(治療)標的は、様々な個体において同等な量で存在すると推定され得るからである。
【0023】
本発明は、少なくとも部分的には、可溶性標的のpIにおけるインキュベーションが、イムノアッセイの性能を改善するのに、例えば、標的による干渉を低減させる上で又はアッセイの感度を改善する上で有利であるという知見に基づく。
【0024】
本発明による1つの態様は、(以下の順で)以下の工程:
a)固定された捕捉用抗体を、薬物、標的、及び抗薬物抗体を含む血清試料又は血漿試料と共にインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体複合体を形成する工程、
b)工程a)で形成された複合体を、標的のほぼpIのpH値を有する糖と洗浄剤とを含む緩衝液で洗浄する工程、
c)工程b)の洗浄した複合体を、(検出可能な)標識にコンジュゲートさせたトレーサー抗体と共に12~24時間インキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を形成する工程、(及び)
d)工程c)で形成された複合体中の(検出可能な)標識を決定することによって、抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量する工程
を含む、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体(該抗薬物抗体は、薬物抗体に特異的に結合することができ、該薬物抗体は、治療標的に特異的に結合することができる)の量を、低減した標的による干渉を伴い、検出及び/又は決定及び/又は定量するためのイムノアッセイである。
【0025】
1つの実施態様では、該薬物は抗体(薬物抗体)である。
【0026】
1つの実施態様では、該トレーサー抗体及び捕捉用抗体は、薬物抗体である。
【0027】
1つの実施態様では、該イムノアッセイは、捕捉用抗体、トレーサー抗体、及び検出用抗体を含み、ここでの捕捉用抗体は、結合対の第一のメンバーにコンジュゲートさせた薬物であり、該トレーサー抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートさせた薬物抗体であり、検出用抗体は、酵素にさらにコンジュゲートされているが、これは検出可能な標識に特異的に結合している抗体である。
【0028】
1つの実施態様では、該捕捉用抗体及び/又は該トレーサー抗体は、互いに独立して、完全長/全長の薬物抗体、該薬物抗体のF(ab')2、Fab、及びscFvからなる群より選択される。1つの実施態様では、捕捉用抗体及びトレーサー抗体は各々、完全長の薬物抗体、又は該薬物抗体のF(ab')2、又は該薬物抗体のFabである。
【0029】
1つの実施態様では、該糖は単糖、二糖又は三糖である。1つの実施態様では、該糖は二糖である。1つの実施態様では、該糖は、ショ糖、乳糖、マルトース、イソマルトース、及びトレハロースからなる二糖の群から選択される。1つの好ましい実施態様では、該糖はショ糖である。
【0030】
1つの実施態様では、該糖は約6.5重量%の濃度を有する。
【0031】
1つの実施態様では、該糖は約6.5重量%の濃度のショ糖である。
【0032】
1つの実施態様では、該洗浄剤は非イオン性洗浄剤である。1つの実施態様では、該洗浄剤は、ポリアルキレングリコールエーテル(商標名ブリッジ(Brij))、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル(商標名ツイン(Tween))、オクチルフェノールエトキシレート(商標名トリオン(Trion)又はノニデット(Nonident))、オクチル-β-グリコシド、n-脂肪酸-N-メチル-D-グルカミド(商標名メガ(MEGA))、及びN,N’-ビス-(3-D-グルコンアミドプロピル)コールアミド(商標名チャップ(CHAP))からなる洗浄剤の群より選択される。1つの好ましい実施態様では、該洗浄剤はポリエチレングリコールドデシルエーテルである。
【0033】
1つの実施態様では、該糖はショ糖であり、該洗浄剤はポリエチレングリコールドデシルエーテルである。
【0034】
1つの実施態様では、インキュベーションは14~20時間である。1つの実施態様では、インキュベーションは15~17時間である。1つの実施態様では、インキュベーションは約16時間である。
【0035】
1つの実施態様では、該糖はショ糖であり、該洗浄剤はポリエチレングリコールドデシルエーテルであり、インキュベーションは15~17時間である。
【0036】
1つの実施態様では、結合対の第一のメンバーは、ハプテン、抗原及びホルモンからなる群より選択される。1つの実施態様では、結合対は、抗原/抗体の対又はハプテン/抗ハプテン抗体の対である。
【0037】
1つの実施態様では、該結合対は、ビオチン/(ストレプト)アビジン、テオフィリン/抗テオフィリン抗体、5-ブロモ-デオキシ-ウリジン/抗5-ブロモ-デオキシ-ウリジン抗体、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン抗体、及びらせん/抗らせん抗体からなる群より選択される。1つの実施態様では、該結合対は、ビオチンと(ストレプト)アビジンである。
【0038】
1つの実施態様では、該薬物は抗C5抗体であり、該標的はヒトC5である。
【0039】
1つの実施態様では、該糖はショ糖であり、該洗浄剤はポリエチレングリコールドデシルエーテルであり、該薬物は抗C5抗体であり、該標的はヒトC5である。
【0040】
1つの実施態様では、該糖はショ糖であり、該洗浄剤はポリエチレングリコールドデシルエーテルであり、該薬物は抗C5抗体であり、該標的はヒトC5であり、該緩衝液は約5.5~約5.0のpH値を有する。
【0041】
1つの実施態様では、該試料はヒト試料(ヒトの血清試料又は血漿試料)である。
【0042】
本明細書において報告されているような1つの態様は、以下の工程:
a)標的のおよそのpI値であるpH値で、血清試料又は血漿試料をインキュベートし、場合によりインキュベーション後に形成された沈降物を除去する工程、
b)約2のpH値で工程a)で得られた血清試料又は血漿試料をインキュベートし、場合により、インキュベートした試料を遠心分離にかけることにより、形成された沈降物を除去する工程、
c)pH値を約7.4に調整し、結合対の第一のメンバーにコンジュゲートさせた捕捉用抗体と、検出可能な標識にコンジュゲートさせたトレーサー抗体を、工程b)で得られた血清試料又は血漿試料に加え、混合物をインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を形成する工程、(及び)
d)工程c)で形成された複合体を測定及び/又は決定及び/又は定量し、これにより、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量する工程
を含む、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体(該抗薬物抗体は、薬物抗体に特異的に結合することができ、該薬物抗体は、治療標的に特異的に結合することができる)の量を、低減した標的による干渉を伴い、検出及び/又は決定及び/又は定量するためのイムノアッセイである。
【0043】
1つの実施態様では、該捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体(工程d))を測定及び/又は決定及び/又は定量する工程は、
d1)工程c)で得られた血清試料又は血漿試料を、固相表面にコンジュゲートさせた結合対の第二のメンバーと共にインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を捕捉し、場合により該表面を洗浄する工程、
d2)工程d1)で形成された複合体中の検出可能な標識を決定することによって、抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量する工程
を含む。
【0044】
1つの実施態様では、該標的のおよそのpI値でのインキュベーションは、該標的のpIより0.5pH単位低いpHから該標的のpI値より0.5pH単位高いpHまでの範囲内のpH値においてである。
【0045】
1つの実施態様では、工程a)におけるインキュベートが撹拌を伴う。
【0046】
1つの実施態様では、工程a)におけるインキュベートは1.5~2.5時間である。1つの好ましい実施態様では、工程a)におけるインキュベートは約2時間である。
【0047】
1つの実施態様では、工程b)におけるインキュベートは約5分間である。
【0048】
1つの実施態様では、工程b)におけるインキュベートは約60分間である。
【0049】
1つの実施態様では、トレーサー抗体及び捕捉用抗体は薬物抗体である。
【0050】
1つの実施態様では、該イムノアッセイは、捕捉用抗体、トレーサー抗体、及び検出用抗体を含み、ここでの捕捉用抗体は、結合対の第一のメンバーにコンジュゲートさせた薬物であり、該トレーサー抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートさせた薬物抗体であり、検出用抗体は、酵素にコンジュゲートされているが、これは検出可能な標識に特異的に結合している抗体である。
【0051】
1つの実施態様では、該捕捉用抗体及び/又は該トレーサー抗体は、互いに独立して、完全長/全長の薬物抗体、該薬物抗体のF(ab')2、Fab、及びscFvからなる群より選択される。1つの実施態様では、捕捉用抗体及びトレーサー抗体は各々、完全長の薬物抗体、又は該薬物抗体のF(ab')2、又は該薬物抗体のFabである。
【0052】
1つの実施態様では、該結合対の第一のメンバーは、ハプテン、抗原、及びホルモンからなる群より選択される。1つの実施態様では、該結合対は、抗原/抗体の対又はハプテン/抗ハプテン抗体の対である。
【0053】
1つの実施態様では、該結合対は、ビオチン/(ストレプト)アビジン、テオフィリン/抗テオフィリン抗体、5-ブロモ-デオキシ-ウリジン/抗5-ブロモ-デオキシ-ウリジン抗体、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン抗体、及びらせん/抗らせん抗体からなる群より選択される。1つの実施態様では、該結合対は、ビオチンと(ストレプト)アビジンである。
【0054】
1つの実施態様では、該薬物は抗C5抗体であり、該標的はヒトC5である。1つの実施態様では、工程a)におけるpH値はpH4.7からpH5.5の範囲内である。1つの好ましい実施態様では、工程a)におけるpH値はpH5.0又は約pH5.5である。
【0055】
1つの実施態様では、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体(該抗薬物抗体は、薬物抗体に特異的に結合することができ、該薬物抗体はヒトC5に特異的に結合することのできる抗C5抗体である)の量を、低減した標的による干渉を伴い、検出及び/又は決定及び/又は定量するためのイムノアッセイは、以下の工程:
a)4.7~5.5の範囲内のpH値で血清試料又は血漿試料を1.5~2.5時間インキュベートし、場合によりインキュベート後に形成された沈降物を除去する工程、
b)工程a)で得られた血清試料又は血漿試料を約2のpH値で約5分間インキュベートし、場合によりインキュベートした試料を遠心分離にかけることにより、形成された沈降物を除去する工程、
c)pH値を約7.4に調整し、ビオチンにコンジュゲートさせた捕捉用薬物抗体と、ジゴキシゲニンにコンジュゲートさせたトレーサー薬物抗体を、工程b)で得られた血清試料又は血漿試料に加え、混合物をインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を形成する工程、
d)工程c)で得られた血清試料又は血漿試料を、固相表面にコンジュゲートさせた(ストレプト)アビジンと共にインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を捕捉し、場合により該表面を洗浄する工程、(及び)
e)セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた抗ジゴキシゲニン抗体と共にインキュベートし、その後、HPPA又はTMBと共にインキュベートし、これにより血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量する(形成された複合体を、試料中の抗薬物抗体の量と相関させる)ことによって、工程d)で形成された複合体中のジゴキシゲニンを決定することによって抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量する工程
を含む。
【0056】
全ての態様の1つの実施態様では、該試料は動物由来である。1つの実施態様では、該動物は、ヒト及び実験動物から選択される。1つの実施態様では、該試料は、該試料を得る前に薬物が投与されていた動物に由来する。1つの実施態様では、該試料は、該試料を得る前に薬物が投与されていた、該薬物での処置を必要とする患者に由来する。どの場合においても、本明細書において報告されているような方法がそれを用いて実施された後に生き物に該試料が再度適用されることはない。
【0057】
全ての態様の1つの実施態様では、該試料はヒト試料(ヒトの血清試料又は血漿試料)である。
【0058】
全ての態様の1つの実施態様では、該複合体は共有結合していない複合体である。
【0059】
一般的には、イムノアッセイは、以下の工程:
a)捕捉用抗体を固相表面に固定し、場合により固定化工程後に該表面を洗浄することにより、結合していない及び非特異的に結合した捕捉用抗体を除去する工程、
b)工程a)の固定された捕捉用抗体を、血清又は血漿を含有している試料(これは場合により、イムノアッセイの検出範囲内に抗薬物抗体の濃度を有するように希釈されている)と共にインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体複合体を形成し、場合により、インキュベート工程後に該表面を洗浄することにより、結合していない及び非特異的に結合した試料を除去する工程、
c)工程b)の捕捉用抗体-抗薬物抗体複合体を標識されたトレーサー抗体と共にインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を形成し、場合によりインキュベーション工程後に該表面を洗浄することにより、結合していない及び非特異的に結合したトレーサー抗体を除去する工程、
d)工程c)の捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を、酵素にコンジュゲートさせたトレーサー抗体の標識に特異的に結合している抗体と共にインキュベートし、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体-検出用抗体複合体を形成し、場合によりインキュベーション工程後に該表面を洗浄することにより、結合していない及び非特異的に結合した検出用抗体を除去する工程、
e)工程d)の捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体-検出用抗体複合体を、無色の酵素基質(これは基質に酵素が作用すると着色した反応生成物へと変換される)と共にインキュベートし、所定の時間後に吸光度を決定する工程、(及び)
f)工程e)で決定された吸光度を検量曲線と相関させ、これにより、該試料中の抗薬物抗体の量を決定する工程
を含む。
【0060】
発明の詳細な説明
インビトロ又はインビボの起源の試料中の治療用抗体(薬物すなわち手短に言えばD)並びに該治療用抗体に対するそれぞれの抗体(抗薬物抗体すなわち手短に言えばADA)の分析のためには、それぞれのアッセイが必要である。
【0061】
ADAは、その抗原(インビトロ及びインビボ)、すなわち治療用抗体/薬物に結合し、それぞれ、遊離ADAと遊離薬物との間、並びに単一複合体を形成した薬物と二量体複合体を形成した薬物(二価の単一特異的な薬物と想定)との間の平衡が形成される。この平衡は動的であり、すなわち、この平衡に関与するある成分の濃度の変化はまた、この平衡に関与する他の全ての成分の濃度も変化させる。
【0062】
遊離している、すなわち結合していない抗薬物抗体の画分は、抗薬物抗体の抗原、すなわち薬物に対するインビボでの抗薬物抗体の結合及び結合能についての、薬物の利用可能性に相関するので、抗薬物抗体の総量の決定は、抗薬物抗体と薬物との間の相互作用を特徴付けるために使用され得る。
【0063】
薬物の完全な薬物動態の評価のために、例えば、全身循環中の、遊離(すなわち薬物結合能がある)又は薬物との複合体中のいずれかにある、抗薬物抗体の濃度の知識が重要である。遊離の抗薬物抗体をバイオマーカー候補として評価することができる。
【0064】
試料中の抗薬物抗体を決定するためのアッセイは、薬物の抗原が試料中に存在する場合には干渉される可能性がある。薬物動態の評価のために、薬物に結合することができるか又は結合した抗薬物抗体の画分が重要である。
【0065】
「治療用抗体」及び「薬物」という用語は本明細書において同義語として使用される。これらの用語は最も広義な意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、及び所望の抗原結合活性を示す限りにおいて抗体断片を含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0066】
特定の実施態様では、該薬物は単一特異的抗体である。1つの実施態様では、該薬物は単一特異的で二価の抗体である。1つの好ましい実施態様では、該薬物は、モノクローナルで単一特異的で二価の抗体である。
【0067】
特定の実施態様では、該薬物は、多重特異的抗体、例えば二重特異的抗体である。多重特異的抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施態様では、結合特異性の一方は、第一の抗原に対するものであり、他方は、異なる第二の抗原に対するものである。特定の実施態様では、二重特異的抗体は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合することができる。二重特異的抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製され得る。1つの実施態様では、該抗体は、第一の抗原と第二の抗原に特異的に結合する、二重特異的抗体である。1つの実施態様では、該二重特異的抗体は、i)第一の抗原又は抗原上の第一のエピトープに特異的に結合する第一の結合特異性、及びii)第二の抗原又は(同じ)抗原上の第二のエピトープに特異的に結合する第二の結合特異性を有する。1つの実施態様では、同じ抗原上の第二のエピトープは、重複していないエピトープである。1つの実施態様では、該抗体は二重特異的で二価の抗体である。1つの好ましい実施態様では、該抗体は、モノクローナルで二重特異的で二価の抗体である。
【0068】
多重特異的抗体は、国際公開公報第2009/080251号、国際公開公報第2009/080252号、国際公開公報第2009/080253号、国際公開公報第2009/080254号、国際公開公報第2010/112193号、国際公開公報第2010/115589号、国際公開公報第2010/136172号、国際公開公報第2010/145792号、又は国際公開公報第2010/145793号に記載されている。
【0069】
「抗C5抗体」及び「C5に(特異的に)結合する抗体」という用語は、該抗体がC5の標的化において診断剤及び/又は治療剤として有用であるような十分な親和性でC5に結合することのできる抗体を指す。1つの実施態様では、関連していないC5ではないタンパク質に対する抗C5抗体の結合度は、C5に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施態様では、抗C5抗体は、様々な種に由来するC5の間で保存されているC5のエピトープに結合する。1つの好ましい実施態様では、C5はヒトC5である。
【0070】
本明細書において使用する「C5」という用語は、霊長類(例えばヒト及びサル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳動物をはじめとする、あらゆる脊椎動物源に由来する任意の天然C5を包含する。特記されない限り、「C5」という用語は、配列番号30に示されるアミノ酸配列を有し、配列番号31に示されるβ鎖配列を含有している、ヒトC5タンパク質を指す。該用語は、「完全長」のプロセシングされていないC5、並びに、細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のC5を包含する。該用語はまた、C5の天然変異体、例えばスプライシング変異体又は対立遺伝子変異体を包含する。例示的なヒトC5のアミノ酸配列が配列番号30に示されている(「野生型」すなわち「wt」のC5)。ヒトC5の例示的なβ鎖のアミノ酸配列が配列番号31に示されている。ヒトC5のβ鎖の例示的なMG1ドメイン、MG2ドメイン、及びMG1-MG2ドメインのアミノ酸配列がそれぞれ配列番号32、33及び34に示される。例示的なカニクイザル及びマウスのC5のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号35及び96に示されている。アミノ酸配列30、31、34、35、及び96のアミノ酸残基1~19は、細胞内でのプロセシング中に除去され、したがって、対応する例示的なアミノ酸配列から欠失している、シグナル配列に相当する。
【0071】
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の個体群から得られた抗体を指し、すなわち、個体群に含まれている個々の抗体は、同一である及び/又は同じエピトープに結合し、ただし、例えば天然に生じる突然変異を含有しているか又はモノクローナル抗体調製物の生成中に生じる、起こり得る変異抗体を除き、このような変異体は一般的に少量存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される様々な抗体を典型的には含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に均一な抗体の個体群から得られた抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の生成を必要とするものと捉えられるものではない。例えば、本発明に従って使用される予定のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有しているトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない、様々な技術によって作製され得、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法及び他の例示的な方法が本明細書に記載されている。
【0072】
様々なイムノアッセイの原則が、例えば、Hage, D.S.(Anal. Chem. 71 (1999) 294R-304R)によって記載されている。Lu, B., et al.(Analyst 121 (1996) 29R-32R)は、イムノアッセイに使用するための、抗体の定方向の固定を報告している。アビジン-ビオチンにより媒介されるイムノアッセイが、例えば、Wilchek, M.,及びBayer, E.A., in Methods Enzymol. 184 (1990) 467-469によって記載されている。
【0073】
モノクローナル抗体及びそれらの定常ドメインは、結合対のメンバーにコンジュゲートさせるための、ポリペプチド/タンパク質、ポリマー(例えばポリエチレングリコール、セルロース、又はポリスチロール)又は酵素などの多くの反応性のアミノ酸側鎖を含有している。アミノ酸の化学的反応基は、例えば、アミノ基(リジン、α-アミノ基)、チオール基(シスチン、システイン、及びメチオニン)、カルボン酸基(アスパラギン酸、グルタミン酸)、及び糖-アルコール基である。このような方法は、例えば、Aslam M.,及びDent, A., in “Bioconjugation”, MacMillan Ref. Ltd. 1999, 50-100頁によって記載されている。
【0074】
抗体の最も一般的な反応基の1つは、アミノ酸リジンの脂肪族ε-アミンである。一般的には、ほぼ全ての抗体が、豊富なリジンを含有している。リジンアミンは、pH8.0(pKa=9.18)超において妥当で良好な求核剤であり、それ故、様々な試薬と容易にかつきれいに反応して安定な結合を形成する。アミン反応性試薬は主に、リジン及びタンパク質のα-アミノ基と反応する。反応性エステル、特にN-ヒドロキシ-スクシンイミド(NHS)エステルは、アミン基の修飾のために最も一般的に使用される試薬の1つである。水性環境においての反応における至適pHは、pH8.0から9.0である。イソチオシアネートはアミン修飾試薬であり、タンパク質とチオ尿素結合を形成する。それらは、水溶液中でタンパク質のアミンと反応する(至適にはpH9.0から9.5)。アルデヒドは、穏和な水性条件下で、脂肪族及び芳香族のアミン、ヒドラジン、及びヒドラジドと反応して、イミン中間体(シッフ塩基)を形成する。シッフ塩基は、穏和な又は強力な還元剤(水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素シアノナトリウムなど)を用いて選択的に還元され、安定なアルキルアミン結合を得ることができる。アミンを修飾するために使用される他の試薬は酸無水物である。例えば、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA)は、2つのアミン反応性無水物基を含有している、二官能基を有するキレート剤である。それは、アミノ酸のN末端及びε-アミン基と反応して、アミド結合を形成することができる。無水物の環が開環して、配位複合体中の金属に堅く結合することのできる多価の金属キレート形成アームを作り出す。
【0075】
抗体内の別の一般的な反応性基は、硫黄含有アミノ酸シスチン及びその還元生成物のシステイン(すなわちハーフシスチン)に由来するチオール残基である。システインは、遊離チオール基を含有し、これはアミンよりも求核性が強く、一般的にはタンパク質内の最も反応性の高い官能基である。チオールは一般的には、中性pHで反応性であり、それ故、アミンの存在下で選択的に他の分子に結合することができる。遊離スルフヒドリル基は比較的反応性が高いので、これらの基を有するタンパク質は、ジスルフィド基又はジスルフィド結合としてそれらの酸化形でスルフヒドリル基と共に存在することが多い。このようなタンパク質では、ジチオトレイトール(DTT)などの試薬を用いてのジスルフィド結合の還元が、反応性遊離チオールを生成するために必要とされる。チオール反応性試薬は、ポリペプチド上のチオール基に結合して、チオエーテルに結合した生成物を形成するであろうものである。これらの試薬は、僅かに酸性から中性のpHで急速に反応するので、アミン基の存在下で選択的に反応することができる。文献は、反応性アミノ基を介して多数のスルフヒドリル基を導入する効率的な方法を提供するために、トラウト試薬(2-イミノチオラン)、スクシンイミジル(アセチルチオ)アセテート(SATA)、及びスルホスクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(スルホ-LC-SPDP)などの、いくつかのチオール化架橋試薬の使用を報告している。ハロアセチル誘導体、例えばヨードアセトアミドはチオエーテル結合を形成し、また、チオール修飾のための試薬でもある。さらに有用な試薬はマレイミドである。チオール反応性試薬とマレイミドの反応は、ヨードアセトアミドとの反応と本質的に同じである。マレイミドは、僅かに酸性から中性のpHで急速に反応する。
【0076】
抗体内の別の一般的な反応性基はカルボン酸である。抗体は、アスパラギン酸及びグルタミン酸のC末端の位置及び側鎖内にカルボン酸基を含有している。水中でのカルボン酸の比較的低い反応性により、通常、ポリペプチド及び抗体を選択的に修飾するためにこれらの基を使用することが困難となる。これが行なわれる場合、カルボン酸基は通常、水溶性カルボジイミドの使用により反応性エステルに変換され、アミン、ヒドラジド又はヒドラジンなどの求核試薬と反応させる。アミン含有試薬は、リジンのより塩基性の高いε-アミンの存在下で活性化カルボン酸と選択的に反応して安定なアミド結合を形成するために、弱塩基性であるべきである。タンパク質の架橋は、pHが8.0を超えて上昇した場合に起こり得る。
【0077】
過ヨウ素酸ナトリウムを使用して、抗体に付着した糖鎖部分内の糖のアルコール部分を、アルデヒドに酸化することができる。各アルデヒド基は、カルボン酸について記載されているようなアミン、ヒドラジド又はヒドラジンと反応することができる。糖鎖部分は主に、抗体の結晶化可能な断片領域(Fc領域)上に見られるので、コンジュゲーションは、抗原結合部位から離れた糖鎖の部位特異的修飾を通して成し遂げられ得る。シッフ塩基中間体が形成され、これはシアノ水素化ホウ素ナトリウム(穏やかかつ選択的)又は水素化ホウ素ナトリウム(強力)の水溶性還元剤を用いての、中間体の還元を通してアルキルアミンへと還元され得る。
【0078】
トレーサー抗体及び/又は捕捉用抗体及び/又は検出用抗体のそのコンジュゲーション相手に対するコンジュゲーションは、化学的結合、又は結合対を介した結合などの様々な方法によって行なわれ得る。本明細書において使用する「コンジュゲーション相手」という用語は、例えば、固相支持体、ポリペプチド、検出可能な標識、特異的結合対のメンバーを示す。1つの実施態様では、捕捉用抗体及び/又はトレーサー抗体及び/又は検出用抗体のそのコンジュゲーション相手に対するコンジュゲーションは、N末端及び/又はε-アミノ基(リジン)、様々なリジンのε-アミノ基、該抗体のアミノ酸骨格のカルボキシ官能基、スルフヒドリル官能基、ヒドロキシル官能基及び/又はフェノール官能基、及び/又は、該抗体の糖鎖構造の糖アルコール基を介した化学的結合によって行なわれる。1つの実施態様では、捕捉用抗体は、そのコンジュゲーション相手に結合対を介してコンジュゲートしている。1つの好ましい実施態様では、捕捉用抗体はビオチンにコンジュゲートし、固相支持体への固定は、固相支持体に固定されたアビジン又はストレプトアビジンを介して行なわれる。1つの実施態様では、捕捉用抗体は、そのコンジュゲーション相手に結合対を介してコンジュゲートしている。1つの好ましい実施態様では、トレーサー抗体は、検出可能な標識として共有結合によってジゴキシゲニンにコンジュゲートしている。
【0079】
「試料」という用語は、生きているもの又は以前に生きていたものに由来する任意の量の物質を含むがこれらに限定されない。このような生きているものとしては、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、及び他の動物が挙げられるがこれらに限定されない。1つの実施態様では、試料は、サル、特にカニクイザル、又はウサギ、又はマウス、又はラット、又はヒトから得られる。1つの好ましい実施態様では、該試料はヒト試料である。このような物質としては、1つの実施態様では、個体に由来する全血、血漿、又は血清が挙げられるがこれらに限定されず、これは臨床的慣例において最も広く使用されている試料の入手源である。
【0080】
「固相」という用語は、液体ではない物質を示し、これには、ポリマー、金属(常磁性、強磁性粒子)、ガラス、及びセラミックなどの材料から作製された粒子(微粒子及びビーズを含む);ゲル物質、例えばシリカ、アルミナ、及びポリマーゲル;キャピラリー(これはポリマー、金属、ガラス及び/又はセラミックから作製され得る);ゼオライト及び他の多孔性物質;電極;マイクロタイタープレート;固体片;及びキュベット、チューブ、又は他の分光計用の試料容器が挙げられる。固相成分は、「固相」が、その表面上に、試料中の物質と相互作用することを意図した少なくとも1つの部分を含有しているという点で、不活性な固相表面とは区別される。固相は、チューブ、片、キュベット、若しくはマイクロタイタープレートなどの静止状態の成分であっても、又は、ビーズ及び微粒子などの静止状態ではない成分であってもよい。タンパク質及び他の物質の共有結合ではない付着又は共有結合による付着のいずれかを可能とする様々な微粒子が使用され得る。このような粒子としては、ポリスチレン及びポリ(メチルメタクリレート)などのポリマー粒子;金粒子、例えば金ナノ粒子及び金コロイド;並びにセラミック粒子、例えばシリカ、ガラス、及び金属酸化物粒子が挙げられる。例えば、Martin, C.R., et al., Analytical Chemistry-News & Features, 70 (1998) 322A-327A、又はButler, J.E., Methods 22 (2000) 4-23を参照されたい。
【0081】
発色剤(蛍光基又は発光基及び色素)、酵素、NMR活性基、又は金属粒子、ハプテン、例えばジゴキシゲニンは、「検出可能な標識」の例である。検出可能な標識はまた、光活性化の可能な架橋基、例えばアジド基又はアジリン基であってもよい。電気化学発光によって検出可能な金属キレートも好ましいシグナル発生基であり、特に好ましいのはルテニウムキレート、例えばルテニウム(ビスピリジル) 2+キレートである。適切なルテニウム標識基は、例えば、欧州特許第0580979号、国際公開公報第90/05301号、国際公開公報第90/11511号、及び国際公開公報第92/14138号に記載されている。直接的な検出のための標識基は、任意の公知で検出可能なマーカー基、例えば色素、発光標識基、例えば化学発光基、例えばアクリジウムエステル若しくはジオキセタン、又は蛍光色素、例えばフルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レゾルフィン、シアニン、及びその誘導体から選択され得る。標識基の他の例は、発光金属複合体、例えばルテニウム又はユーロピウム複合体、酵素、例えばELISA又はCEDIA(クローン化酵素ドナーイムノアッセイ、例えば欧州特許出願第0061888号)のために使用されるようなもの、及び放射性同位体である。
【0082】
間接的な検出システムは、例えば、検出試薬、例えば検出抗体が、結合対の第一の対で標識されていることを含む。適切な結合対の例は、抗原/抗体、ビオチン又はビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチン、又はデスチオビオチン/アビジン又はストレプトアビジン、糖/レクチン、核酸又は核酸類似体/相補的核酸、及び受容体/リガンド、例えばステロイドホルモン受容体/ステロイドホルモンである。1つの好ましい実施態様では、第一の結合対メンバーは、ハプテン、抗原及びホルモンを含む。1つの好ましい実施態様では、該ハプテンは、ジゴキシン、ジゴキシゲニン及びビオチン、並びにその類似体からなる群より選択される。このような結合対の第二の対、例えば抗体、ストレプトアビジンなどは通常、例えば上記のような標識による直接的な検出を可能とするために標識されている。
【0083】
「イムノアッセイ」という用語は、定性的又は定量的な分析のために特異的標的を捕捉及び/又は検出するために、抗体などの特異的に結合する分子を利用する任意の技術を示す。一般的に、イムノアッセイは、以下の工程によって特徴付けられる:1)分析物の固定又は捕捉、並びに2)分析物の検出及び測定。分析物は、例えば膜、プラスチックプレートなどの任意の固相表面上に、又はいくつかの他の固相表面上に捕捉、すなわち結合させることができる。
【0084】
イムノアッセイは一般的に3つの異なるフォーマットで行なわれ得る。1つは、直接的な検出を用い、1つは間接的な検出を用いるか、又はサンドイッチアッセイによる。直接的な検出のイムノアッセイは、直接測定され得る検出用(又はトレーサー)抗体を使用する。酵素又は他の分子は、シグナルの生成を可能とし、これは色、蛍光、又は発光を発生し、これにより、シグナルの可視化又は測定が可能となる(放射性同位体も使用され得るが、今日では一般的に使用されない)。間接的なアッセイでは、分析物に結合する一次抗体を使用して、一次抗体(検出用抗体又はトレーサー抗体とも称される)によって与えられる標識に特異的に結合する二次抗体(トレーサー抗体)の規定の標的を与える。二次抗体は、測定可能なシグナルを発生する。サンドイッチアッセイは、2つの抗体、すなわち捕捉用抗体及びトレース(検出用)抗体を利用する。捕捉用抗体を使用して、溶液に由来する分析物と結合(固定)させるか、又は溶液中の分析物と結合させる。これにより、分析物を試料から特異的に除去することが可能となる。トレーサー(検出用)抗体を第二の工程で使用することにより、シグナル(上記のように直接的に又は間接的にのいずれかで)を発生させる。サンドイッチフォーマットは、各々が標的分子上に明確に異なるエピトープを有する2つの抗体を必要とする。さらに、それらは互いに干渉してはならない。なぜなら、両方の抗体が同時に標的に結合しなければならないからである。
【0085】
本発明による方法の実施態様
抗薬物抗体アッセイにおける薬物による干渉は一般的に公知の現象であるが、抗薬物抗体アッセイにおける薬物の標的による干渉はそうではない。
【0086】
一般的には、酸による解離後、中和工程が酸又は塩基による解離の後に続くことにより、結合相手は新たに架橋することが可能となり、干渉因子が依然として溶液中に存在する場合には同様に再結合が引き起こされ、問題は残る。
【0087】
酸又は塩基による解離、特異的抗体を使用した競合的な干渉の抑制、干渉因子の除去、酸解離による固相抽出(SPEAD)、親和性捕捉溶出(ACE)及び多くのその他のアプローチなどの多くのアプローチが、この問題を軽減するために使用されている。架橋アッセイにおける酸解離の使用は、抗薬物抗体の検出における薬物の耐容性の幾分の改善を示した(例えば、Moxness, M., et al., Clin. Chem. 51 (10), 1983; Patton, A., et al., J. Immunol. Methods 304 (2005) 189参照)。
【0088】
標的分子又は免疫複合体のポリエチレングリコールによる沈降は、サイズ(すなわち分子量、MW)に基づきかつポリエチレングリコール濃度に依存性である。ポリエチレングリコール濃度が高くなればなるほど、標的の分子量が低くなればなるほど、それは沈降するだろう。アルブミン及び免疫グロブリンなどの非特異的な血清タンパク質の沈降を低減させるために、低濃度のポリエチレングリコールを使用して、大きな分子量の薬物:抗薬物抗体の免疫複合体を沈降させる。酸による解離と連動した沈降の原理を使用すること、及び酸性条件下(結合対が再結合するのを防ぐ)で高容量の表面上に捕捉することにより、特異的な検出試薬を使用した抗薬物抗体又は薬物又は薬物標的の特異的な検出が可能となる。
【0089】
酸による解離は、一般的に薬物-抗薬物抗体複合体を破壊し、これにより、該免疫複合体から抗薬物抗体を遊離するために使用される。遊離した(遊離)抗薬物抗体は、その後の工程において検出用抗体と複合体を形成することができる。酸解離工程は、古典的な抗薬物抗体アッセイ(酸解離工程を含まない)と比較して、全体のアッセイ時間を短縮することができる。一般的には、焦点は同等な感度についてである。
【0090】
一般的には、標準的な抗薬物抗体アッセイは、残留薬物の存在下において抗薬物抗体と試薬との間に新たな平衡を形成するための、長いインキュベーション時間という欠点を有する。短いインキュベーション時間が適用されれば、低い薬物耐容性しか得ることができない(=残留薬物に伴う低い感度)。
【0091】
測定可能な複合体の形成は時間を要し、試薬に対する抗薬物抗体の会合速度定数に依存する。標準的な抗薬物抗体アッセイでは、免疫複合体の解離速度定数は律速工程である。この理由から、より長いインキュベーション時間(一般的に一晩)が試料及び試薬のインキュベーションに適用される。
【0092】
したがって、酸解離は主に、複合体の解離手順である。
【0093】
本発明による1つの態様は、以下の工程:
a)固定された捕捉用抗体を、薬物、標的、及び抗薬物抗体を含む血清試料又は血漿試料と共にインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体複合体を形成する工程、
b)工程a)で形成された複合体を、標的のおよそのpIのpH値を有する糖と洗浄剤とを含む緩衝液で洗浄する工程、
c)工程b)の洗浄した複合体を、標識されたトレーサー抗体と共に12~24時間インキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を形成する工程、(及び)
d)工程c)で形成された複合体中の検出可能な標識を決定することによって、抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量する工程
を含む、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体(該抗薬物抗体は、薬物抗体に特異的に結合することができ、該薬物抗体は、治療標的に特異的に結合することができる)の量を検出及び/又は決定及び/又は定量するためのイムノアッセイである。
【0094】
1つの実施態様では、該糖はショ糖であり、該洗浄剤はポリエチレングリコールドデシルエーテルであり、該薬物は抗C5抗体であり、該標的はヒトC5であり、該緩衝液は約5.5のpH値を有する。
【0095】
本発明に記載の1つの態様は、以下の工程:
a)標的のおよそのpI値であるpH値で、血清試料又は血漿試料をインキュベートし、場合によりインキュベーション後に形成された沈降物を除去する工程、
b)約2のpH値で工程a)で得られた血清試料又は血漿試料をインキュベートし、場合により、インキュベートした試料を遠心分離にかけることにより、形成された沈降物を除去する工程、
c)pH値を約7.4に調整し、結合対の第一のメンバーにコンジュゲートさせた捕捉用抗体と、検出可能な標識にコンジュゲートさせたトレーサー抗体を、工程b)で得られた血清試料又は血漿試料に加え、混合物をインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を形成する工程、(及び)
d)工程c)で形成された複合体を測定及び/又は決定及び/又は定量し、これにより、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量する工程
を含む、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体(該抗薬物抗体は、薬物抗体に特異的に結合することができ、該薬物抗体は、治療標的に特異的に結合することができる)の量を検出及び/又は決定及び/又は定量するためのイムノアッセイである。
【0096】
1つの実施態様では、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体(工程d)を測定及び/又は決定及び/又は定量する工程は、
d1)工程c)で得られた血清試料又は血漿試料を、固相表面にコンジュゲートさせた結合対の第二のメンバーと共にインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を捕捉し、場合により該表面を洗浄する工程、(及び)
d2)工程d1)で形成された複合体中の検出可能な標識を決定することによって、抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量する工程を含む。
【0097】
1つの実施態様では、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体(該抗薬物抗体は、薬物抗体に特異的に結合することができ、該薬物抗体はヒトC5に特異的に結合することのできる抗C5抗体である)の量を検出及び/又は決定及び/又は定量するためのイムノアッセイは、以下の工程:
a)4.7~5.5の範囲内のpH値で血清試料又は血漿試料を1.5~2.5時間インキュベートし、場合によりインキュベーション後に形成された沈降物を除去する工程、
b)工程a)で得られた血清試料又は血漿試料を約2のpH値で約5分間インキュベートし、場合によりインキュベートした試料を遠心分離にかけることにより、形成された沈降物を除去する工程、
c)pH値を約7.4に調整し、ビオチンにコンジュゲートさせた捕捉用抗体と、ジゴキシゲニンにコンジュゲートさせたトレーサー薬物抗体を、工程b)で得られた血清試料又は血漿試料に加え、混合物をインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を形成する工程、
d)工程c)で得られた血清試料又は血漿試料を、固相表面にコンジュゲートさせた(ストレプト)アビジンと共にインキュベートすることにより、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体を捕捉し、場合により該表面を洗浄する工程、(及び)
e)セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた抗ジゴキシゲニン抗体と共にインキュベートし、その後、HPPA又はTMBと共にインキュベートし、これにより血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量することによって、工程d)で形成された複合体中のジゴキシゲニンを決定することによって抗薬物抗体の量を検出及び/又は決定及び/又は定量する工程を含む。
【0098】
本明細書において報告されているようなアッセイは、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体の測定及び/又は決定及び/又は定量における治療用薬物の標的による干渉に対処する。
【0099】
通常、血清試料又は血漿試料中の抗薬物抗体(ADA)の決定及び/又は測定及び/又は定量における薬物からの干渉は対処されなければならない。それ故、措置は、抗薬物抗体に対する高度に特異的な感度、試料中の平衡を遊離抗薬物抗体に向かうように影響を及ぼすこと、試料の前処理により抗薬物抗体-薬物複合体を解離すること、抗薬物抗体-薬物複合体を検出すること、又は抗薬物抗体を富化することであり得る。
【0100】
しかし、試料中の薬物の標的による干渉は、それによって対処されていない。
【0101】
本明細書において報告されているようなイムノアッセイは、治療用抗C5抗体を用いて以下に例示されている。これは、現在報告されているイムノアッセイの単なる例示として提示され、本発明を限定するものと捉えられるべきではない。
【0102】
ヒトC5は、約70μg/ml(約368nM)の血清中濃度を有する。
【0103】
様々な試料の希釈率(1:100、1:1000)、様々な捕捉用抗体並びにトレーサー抗体の濃度(各々500ng/ml、各々1000ng/ml、各々1500ng/ml、各々2000ng/ml)、様々なペルオキシダーゼ濃度(1000ng/mlの捕捉用抗体及びトレーサー抗体の濃度において、5mU、10mU、25mU、50mU)を評価した(図1及び2参照)。全ての実験について、試料を試薬と共に一晩インキュベーションした。
【0104】
本発明は、少なくとも一部には、捕捉用抗体及びトレーサー抗体の濃度が、少なくとも500ng/mlであるべきであり、これにより、1500ng/ml又はそれ以上ではさらなるシグナルの増加は達成できなかったという知見に基づく。
【0105】
しかし、かなり高いバックグラウンドが存在する。
【0106】
1%(v/v)のヒト血清の存在下では、非特異的な結合を観察することができた。ウシ血清アルブミンを用いてのプレートの遮断は、非特異的結合の問題を解決しなかった。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
ビオチン/ジゴキシゲニン試薬の非存在下でさえ、高いシグナルが得られる(「-/-」の列)ことを認めることができる。その他にも、依然として検出試薬の非特異的な結合を認めることができる(「-/ジゴキシゲニン」の列)。
【0110】
洗浄剤(ブリッジ35)の添加により、非特異的な結合の減少を認めることができる(「-/-」、「ビオチン/-」及び「-/ジゴキシゲニン」の列を参照)。洗浄剤の非存在下では、カットポイント(CP)は10240(約2562ng/ml)であり(「ビオチン/ジゴキシゲニン」の列を参照)、一方、洗浄剤の存在下ではCPは4708(約817ng/ml)であった(「ビオチン/ジゴキシゲニン」の列を参照)。しかし個体の変動係数(CV)は高い。
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
検出用酵素に対する基質の交換は、シグナル対ノイズ(S/N)比を減少させることができる。
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【0116】
HPPAを使用する場合には、カットポイント(CP)は4708(約817ng/ml)であり、一方、TMBを使用する場合にはCPは0.162(約845ng/ml)であった。
【0117】
【表7】
【0118】
長時間のインキュベーション(一晩のインキュベーション)を避けるために、酸解離工程を導入した。次いで、該方法は、pH2における30分間のインキュベーション、続いてpH7.4へのpH調整、ビオチニル化捕捉用抗体及びジゴキシゲニン化トレーサー抗体の添加、並びに1時間のインキュベーションを含む。
【0119】
8つの個体の試料に基づいて、4410の蛍光単位の平均値と9%の変動係数であると決定された。カットポイントは5059蛍光単位(1915ng/ml)であった。したがって、酸解離工程の導入により、感度は改善されなかった。
【0120】
血漿又は血清の存在は、アッセイの特徴を有意に変化させなかった。ヒト及び非ヒト霊長類の血清は、類似したアッセイの結果を与える(図3参照)。
【0121】
ウマ及びウサギの血清は、緩衝液と類似した結果を与える。ウマ及びウサギのC5は、交差反応性ではない。C5の欠失したヒト血清のブランクシグナルは緩衝液と同等であり、希釈によるシグナル4は、ヒトプール血清を用いたものよりも低い(図4参照)。
【0122】
アッセイの性能は、試料中のウマ血清の増加及びこれによりウマC5の含量の増加によって損なわれた(図5参照)。
【0123】
同様に、ヒトC5の添加はシグナルの増加を引き起こし、このことは、アッセイの干渉が、試料中の治療用抗体の標的から発していることが確認される(図6参照)。
【0124】
架橋アッセイの校正は、C5及び対照ポリクローナル抗体の両方を用いて可能であり、すなわちC5はアッセイにおいてシグナルを引き起こしていることが判明した(図7参照)。この理論に拘りたくはないが、粘着性のあるC5凝集物は問題を引き起こしていると推定される(図8(pH7.4の洗浄緩衝液)及び図9(pH5.5の洗浄緩衝液)を参照)。
【0125】
C5及びポリクローナル抗体はどちらも、治療用薬物に結合することが判明した。C5に対する薬物の比が高くなればなる程、より応答は低くなり、このことは、非特異的な結合が全くないことを示す(図10のビアコアデータを参照)。
【0126】
C5及びポリクローナル抗体はどちらも、治療薬で予めコーティングされた表面を使用して治療用薬物に結合することが判明した。C5の捕捉後、該表面は、治療用薬物に結合することができ、このことは、遊離エピトープが依然として存在することを示唆し、これは凝集したC5にも該当する(図11参照)。
【0127】
これらの知見に基づいて、該方法はさらに、pH値5.5の緩衝液を用いて6回洗浄する増強された工程を使用することによって適応されている。この理論に拘りたくはないが、これは、捕捉された凝集物の量/数量を減少させる。
【0128】
【表8】
【0129】
【表9】
【0130】
シグナル/ノイズ比は、希釈と共に低下する。カットポイント値及び最も低い校正用試料は、1%及び0.1%血清を含有している試料中において類似している。カットポイント値は、血清中の陽性対照について100ng/ml付近であった。
【0131】
アッセイを、アッセイ緩衝液への6.5重量%のショ糖の添加により、及び非イオン性洗浄剤ブリッジ35の添加により、4℃のインキュベーションで約16時間インキュベーションを実施することによって、凝集物の形成を減少させるように、本明細書において報告されているような知見が得られた。
【0132】
アッセイを、pH値5.5の洗浄緩衝液を使用することによってさらに適応させ、標的、すなわちC5に対する治療用薬物の相互作用を減少させた。
【0133】
上記に概略が示されている知見に基づいて、試料中に存在するC5凝集物が、試料中の抗薬物抗体の決定及び/又は測定及び/又は定量の前に除去される、新規アッセイフォーマットが確立された。
【0134】
本明細書において報告されているような新規アッセイフォーマットは特定の沈降工程を含み、ここでの治療用抗体の標的は、およそそのpI値のpH値で沈降する。治療用薬物としての抗C5抗体の場合、標的はヒトC5であり、沈降は、4.7~5.5の範囲内のpH値でのインキュベーションによって成し遂げられる。1つの実施態様では、インキュベーションは、約5のpH値においてである。1つの好ましい実施態様では、インキュベーションは、約5のpH値で約2時間であり、場合により撹拌を伴う。
【0135】
本明細書において報告されているような新規アッセイフォーマットは、特定の沈降工程の後に、酸解離工程を含む。この工程では、この理論に拘りたくはないが、抗薬物抗体(抗-抗-C5抗体-抗体;抗薬物抗体)が、沈降物から解離される。1つの好ましい実施態様では、酸解離は、約2のpH値で約5分間のインキュベーションによる。
【0136】
本明細書において報告されているような新規アッセイフォーマットは、場合により酸解離工程後に遠心分離工程を含む。
【0137】
本明細書において報告されているような新規アッセイフォーマットは、酸解離工程の後に、試料のpH値を約7.4に調整し、続いて捕捉用抗体及びトレーサー抗体を添加し、続いてインキュベーションする工程を含む。1つの実施態様では、捕捉用抗体及びトレーサー抗体は、薬物抗体である。1つの実施態様では、捕捉用抗体は、結合対の第一のメンバーにコンジュゲートしている。1つの実施態様では、結合対は、ビオチン/(ストレプト)アビジン、ハプテン/抗ハプテン抗体、核酸/相補的核酸、及びリガンド/リガンド受容体から選択される。1つの好ましい実施態様では、結合対は、ビオチン/(ストレプト)アビジンである。1つの好ましい実施態様では、捕捉用抗体は、ビオチンにコンジュゲートしている。1つの実施態様では、トレーサー抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートしている。
【0138】
本明細書において報告されているような新規アッセイフォーマットは、捕捉用抗体及びトレーサー抗体とのインキュベーション工程後、捕捉用抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体複合体の、結合対の第二のメンバーで誘導体化された固相上への固定を含む。1つの好ましい実施態様では、結合対の第二のメンバーは(ストレプト)アビジンである。
【0139】
本明細書において報告されているような新規アッセイフォーマットは、固定化工程後、固定された複合体を、無色の基質から着色した生成物への変換を触媒する酵素にコンジュゲートさせた検出可能な標識に特異的に結合する抗体とインキュベートし、その後、無色の酵素基質とインキュベートし、形成された着色した生成物の量を決定し、形成された着色した生成物の量を検量曲線と相関させ、これにより、試料中の抗薬物抗体の量を決定することによって、固定された複合体の量を測定及び/又は決定及び/又は定量する工程を含む。1つの実施態様では、検出可能な標識はハプテンである。1つの実施態様では、ハプテンは、ビオチン、ジゴキシゲニン、テオフィリン、及びブロモデオキシウリジンから選択される。1つの好ましい実施態様では、検出可能な標識はジゴキシゲニンである。1つの好ましい実施態様では、酵素はセイヨウワサビペルオキシダーゼである。1つの実施態様では、無色基質はABTS又はHPPA又はTMBである。1つの好ましい実施態様では、無色基質はTMBである。
【0140】
30人の個体に基づいて本明細書において報告されているような方法(C5沈降アプローチ)を用いて得られた結果が、以下の表に提示されている。
【0141】
【表10】
【0142】
【表11】
【0143】
【表12】
【0144】
本明細書において報告されているような新規アッセイは、適度から高度なダイナミックレンジを有し、それは感度が高く、分析される予定の試料中に存在する個々の標的レベルに由来する干渉に対処する。
【0145】
試料の処理のために、分析前に、インキュベーション工程で標的のおよそのpIで形成された沈降物を除去する必要はない。該インキュベーション工程がなければ、干渉は存在する(図12参照):
【0146】
【表13】
【0147】
陽性対照を用いての検量、長いインキュベーション時間、及びpH5.5での洗浄が図13に示されている。15人の個体の平均値は119であり、ブランクプール値は123であり、カットポイント値は135である。
【0148】
ポリクローナル抗体を用いての検量、長いインキュベーション時間、及びpH7.4での洗浄が図14に示されている。15人の個体の平均値は145であり、ブランクプール値は157であり、カットポイント値は193である。
【0149】
ポリクローナル抗体を用いての検量、短いインキュベーション時間、及びpH5.5での洗浄が図15に示されている。15人の個体の平均値は124であり、ブランクプール値は115であり、カットポイント値は247である。
【0150】
C5の存在下におけるポリクローナル抗体を用いての検量、pH5での2時間のインキュベーション、及びpH5.5での洗浄が図16に示されている。
【0151】
C5の存在下におけるポリクローナル抗体を用いての検量、pH5での2時間のインキュベーション、及びpH7.5での洗浄が図17に示されている。
【0152】
C5の存在下におけるポリクローナル抗体を用いての検量、pH2での30分間のインキュベーション、及びpH5.5での洗浄が図18に示されている(当技術分野による酸解離を使用した抗薬物抗体アッセイ)。
【0153】
本発明の具体的な実施態様のための例示的な薬物抗体
米国特許出願第2016/0167054号は、抗C5抗体及びそれを使用する方法を開示する。いくつかの実施態様では、開示されている単離された抗C5抗体は、酸性pHよりも中性のpHにおいて、より高い親和性で、C5のβ鎖内のエピトープに結合する。
【0154】
C5は、通常の血清中に約71μg/ml(0.4μM)で見られる181kDaのタンパク質である。C5はグリコシル化されており、その質量の約1.5~3%は糖鎖に帰する。成熟C5は、66kDaのβ鎖にジスルフィド結合されている、106kDaのα鎖のヘテロ二量体である。C5は、1577アミノ酸の一本鎖前駆タンパク質(プロC5前駆体)として合成される(例えば、米国特許第6,355,245号及び米国特許第7,432,356号参照)。プロC5前駆体は切断されてアミノ末端断片であるβ鎖及びαカルボキシル末端断片である鎖を生じる。α鎖及びβ鎖のポリペプチド断片は、ジスルフィド結合を介して互いに接続され、成熟C5タンパク質を構成する。
【0155】
成熟C5は、補体経路の活性化中にC5a断片とC5b断片へと切断される。C5aは、α鎖の最初の65アミノ酸を含むアミノ末端断片として、C5転換酵素によってC5のα鎖から切り出される。成熟C5の残りの部分はC5b断片であり、これは、β鎖にジスルフィド結合したα鎖の残りを含有している。C5aの11kDaの質量の約20%は、糖鎖に帰する。
【0156】
C5aはアナフィラトキシンである。C5bは、C6、C7、C8及びC9と組み合わさり、膜侵襲複合体(MAC、C5b-9、終末補体複合体(TCC))を標的細胞の表面で形成する。十分な数のMACが標的細胞膜に挿入されると、MAC孔が形成されて、急速な浸透圧による標的細胞の溶解を媒介する。
【0157】
アナフィラトキシンは、肥満細胞の脱顆粒をトリガーすることができ、これによりヒスタミン及び他の炎症メディエーターが遊離され、結果として平滑筋の収縮、血管透過性亢進、白血球の活性化、及び他の炎症現象(細胞過形成をもたらす細胞増殖を含む)が生じる。C5aはまた、好中球、好酸球、好塩基球及び単球などの顆粒球を補体活性化部位へと誘引する役目を果たす、走化性ペプチドとしても機能する。
【0158】
C5aの活性は、血漿中の酵素カルボキシペプチダーゼNによって調節されており、これは、C5aからカルボキシ末端アルギニンを除去することによりC5a-des-Arg誘導体を形成する。C5a-des-Argは、未修飾のC5aのアナフィラキシー活性及び多形核走化性活性の僅か1%しか示さない。
【0159】
適切に機能している補体系は、感染性微生物に対する頑丈な防御を与えるが、補体の不適切な調節又は活性化は、例えば、関節リウマチ(RA);ループス腎炎;虚血再灌流障害;発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS);デンスデポジット病(DDD);黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性(AMD));溶血・肝酵素上昇・血小板減少(HELLP)症候群;血栓性血小板減少性紫斑病(TTP):自然死産;微量免疫血管炎;表皮水疱症;習慣性流産;多発性硬化症(MS);外傷性脳損傷;並びに心筋梗塞、心肺バイパス術及び血液透析から生じる損傷(例えば、Holers et al., Immunol. Rev. 223 (2008) 300-316参照)をはじめとする、様々な障害の発病に関与している。それ故、補体カスケードの過剰な活性化又は未制御な活性化の抑制は、このような障害を有する患者、特に発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を有する患者に臨床的利点を与えることができる。
【0160】
エクリズマブは、補体タンパク質C5に対して指向されるヒト化モノクローナル抗体、並びに発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)及び非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の処置に認可された初めての治療法である(例えば、Dmytrijuk et al., The Oncologist 13 (2008) 894-910参照)。エクリズマブは、C5転換酵素によるC5からC5aとC5bへの切断を阻害し、これは終末補体複合体C5b-9の生成を妨げる。C5a及びC5b-9のどちらも、発作性夜間ヘモグロビン尿症及び非典型溶血性尿毒症症候群の特徴である終末補体により媒介される事象を引き起こす(国際公開公報第2005/065607号、国際公開公報第2007/96586号、国際公開公報第2008/060790号、及び国際公開公報第2010/054403号も参照)。いくつかの報告は他の抗C5抗体も記載している。例えば、国際公開公報第86/28707号は、C5のα鎖には結合するが、C5aには結合せず、C5の活性化を遮断する、抗C5抗体を記載し、一方、国際公開公報第2002/30886号は、C5aの形成を阻害する抗C5モノクローナル抗体を記載した。他方で、国際公開公報第2004/006653号は、C5のα鎖上でC5転換酵素のタンパク質分解部位を認識し、C5からC5aとC5bへの変換を阻害する抗C5抗体を記載した。国際公開公報第2010/015608号は、少なくとも1×10/Mの親和性定数を有する抗C5抗体を記載した。1つの実施態様では、薬物はエクリズマブである。
【0161】
いくつかの実施態様では、該方法は、C5のβ鎖内のエピトープに結合している抗C5抗体に対する抗薬物抗体の検出用である。いくつかの実施態様では、抗C5抗体は、C5のβ鎖のMG1-MG2ドメイン内のエピトープに結合する。いくつかの実施態様では、抗C5抗体は、C5のβ鎖のアミノ酸27~115(配列番号31)からなる断片内のエピトープに結合する。いくつかの実施態様では、抗C5抗体は、アミノ酸38~48、61~67、及び98~101からなる群より選択された少なくとも1つの断片を含むC5のβ鎖(配列番号31)内のエピトープに結合する。いくつかの実施態様では、抗C5抗体は、配列番号31のGlu48、Asp51、His61、His63、Lys100、及びHis101からなる群より選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を含むC5のβ鎖(配列番号31)の断片内のエピトープに結合する。さらなる実施態様では、該抗体は、酸性pHよりも中性pHにおいてより高い親和性でC5に結合する。さらなる実施態様では、該抗体は、pH5.8よりもpH7.4においてより高い親和性でC5に結合する。別の実施態様では、抗C5抗体は、表1に記載の抗体と同じエピトープに結合する。さらなる実施態様では、該抗体は、pH5.8よりもpH7.4においてより高い親和性で表1に記載の抗体と同じエピトープに結合する。さらなる実施態様では、抗C5抗体は、表2又は3に記載の抗体と同じエピトープに結合する。さらなる実施態様では、該抗体は、表2又は3に記載の抗体と同じエピトープにpH5.8よりもpH7.4においてより高い親和性で結合する。
【0162】
【表14】
【0163】
【表15】
【0164】
【表16】
【0165】
特定の実施態様では、抗C5抗体は、(a)配列番号01のVH及び配列番号11のVL;(b)配列番号05のVH及び配列番号15のVL;(c)配列番号04のVH及び配列番号14のVL;(d)配列番号06のVH及び配列番号16のVL;(e)配列番号02のVH及び配列番号12のVL;(f)配列番号03のVH及び配列番号13のVL;(g)配列番号09のVH及び配列番号19のVL;(h)配列番号07のVH及び配列番号17のVL;(i)配列番号08のVH及び配列番号18のVL;並びに(j)配列番号10のVH及び配列番号20のVLから選択された、VHとVLの対を含む抗体と、C5に対する結合に関して競合する。
【0166】
特定の実施態様では、抗C5抗体は、医薬品としての使用のためのものである。1つの実施態様では、抗C5抗体は、C5の過剰な活性化又は未制御な活性化が関与する、補体により媒介される疾患又は容態の処置に使用される。追加の実施態様では、抗C5抗体は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、加齢黄斑変性、心筋梗塞、関節リウマチ、骨粗鬆症、変形性関節症、及び炎症を含むがこれらに限定されない、疾患又は障害の処置に使用される。抗C5抗体は、血漿からC5のクリアランスを増強するために使用される。
【0167】
特定の実施態様では、該方法は、上記に提供されている実施態様のいずれかにあるようなVHと、配列番号27、28、29、105、106及び107のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖定常領域とを含む、抗C5抗体に対する抗薬物抗体の検出用である。特定の実施態様では、該方法は、上記に提供されている実施態様のいずれかにあるようなVLと、配列番号36、37及び38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域とを含む、抗C5抗体の検出用である。
【0168】
特定の実施態様では、該方法は、(a)配列番号01のVH及び配列番号11のVL;(b)配列番号22のVH及び配列番号25のVL;(c)配列番号21のVH及び配列番号24のVL;(d)配列番号05のVH及び配列番号15のVL;(e)配列番号04のVH及び配列番号14のVL;(f)配列番号06のVH及び配列番号16のVL;(g)配列番号02のVH及び配列番号12のVL;(h)配列番号03のVH及び配列番号13のVL;(i)配列番号09のVH及び配列番号19のVL;(j)配列番号7のVH及び配列番号17のVL;(k)配列番号8のVH及び配列番号18のVL;(l)配列番号23のVH及び配列番号26のVL;並びに(m)配列番号10のVH及び配列番号20のVLから選択された、VHとVLの対を含む抗体と、C5に対する結合に関して競合する抗C5抗体に対する抗薬物抗体の検出用である。
【0169】
特定の実施態様では、該方法は、(a)配列番号22のVH及び配列番号25のVL;(b)配列番号21のVH及び配列番号24のVL;(c)配列番号05のVH及び配列番号15のVL;(d)配列番号04のVH及び配列番号14のVL;(e)配列番号06のVH及び配列番号16のVL;(f)配列番号02のVH及び配列番号12のVL;(g)配列番号03のVH及び配列番号13のVL;(h)配列番号09のVH及び配列番号19のVL;(i)配列番号07のVH及び配列番号17のVL;(j)配列番号8のVH及び配列番号18のVL;(k)配列番号23のVH及び配列番号26のVLから選択された、VHとVLの対を含む抗体と、C5に対する結合に関して競合する抗C5抗体に対する抗薬物抗体の検出用である。
【0170】
以下の実施例、配列及び図面は、本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に示されている。本発明の精神から逸脱することなく、示されている手順に改変を行ない得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図1】様々な捕捉用抗体並びにトレーサー抗体の濃度の効果((1):各々500ng/ml、(2):各々1000ng/ml、(3):各々1500ng/ml、(4)各々2000ng/ml)。
図2】様々なペルオキシダーゼの濃度の効果(1000ng/mlの捕捉用抗体及びトレーサー抗体濃度において、(1):5mU、(2):10mU、(3):25mU、(4):50mU))。
図3】ヒト及び非ヒト霊長類の血清の効果((1):ヒト血清、(2)ヒト血漿、(3):カニクイザルの血清)。
図4】ウマ(1)、ウサギ(2)、C5の欠失したヒト血漿(3)、及び緩衝液(4)の効果。
図5】アッセイの性能は、試料中のウマ血清の増加によって、よってウマC5含量の増加によって損なわれた(図5参照)(0%(1)、1%(2)、5%(3)又は10%(4)ウマ血清中の1%ヒト血清)。
図6】アッセイに対するヒトC5の効果(ポリクローナル抗体+(1):ヒト血清、(2):緩衝液+ブリッジ、(3):ヒト血清中500ng/mlのC5、(4)緩衝液+ブリッジ中500ng/mlのC5)。
図7】C5((1):pH7.4、(2):pH5.5、(3)pH8.0)及び対照ポリクローナル抗体(抗イディオタイプ抗体)((4):pH7.4、(5):pH5.5、(6):pH8.0)を用いての架橋アッセイの検量。
図8】架橋アッセイにおけるpH7.4の洗浄緩衝液の使用((1)ポリクローナル抗体の抗イディオタイプ抗体及び捕捉用抗体及びトレーサー抗体を用いての、(2)捕捉用抗体の非存在下かつトレーサー抗体の非存在下においてC5を用いての)、(3)捕捉用抗体の存在下及びトレーサー抗体の非存在下においてC5を用いての、(4)捕捉用抗体の非存在下であるがトレーサー抗体の存在下においてC5を用いての、(5)捕捉用抗体及びトレーサー抗体の存在下においてC5を用いての検量)。
図9】架橋アッセイにおけるpH5.5の洗浄緩衝液の使用((1)ポリクローナル抗体の抗イディオタイプ抗体及び捕捉用抗体及びトレーサー抗体を用いての、(2)捕捉用抗体の非存在下かつトレーサー抗体の非存在下においてC5を用いての)、(3)捕捉用抗体の存在下及びトレーサー抗体の非存在下においてC5を用いての、(4)捕捉用抗体の非存在下であるがトレーサー抗体の存在下においてC5を用いての、(5)捕捉用抗体及びトレーサー抗体の存在下においてC5を用いての検量)
図10】薬物対C5の比の効果;調整された表面プラズモン共鳴センサーグラム;(1)C5、(2)C5+ポリクローナル抗体100/100nM、(3)C5+ポリクローナル抗体100/10nM、(4)C5+ポリクローナル抗体100/250nM、(5)C5+ポリクローナル抗体100/500nM、(6)C5+ポリクローナル抗体100/50nM、(7):モノクローナル抗体-C5、(8)ポリクローナル抗体-抗イディオタイプモノクローナル抗体C5、(9)緩衝液。
図11】ビオチニル化薬物でコーティングされた表面へのポリクローナル抗体(緑色)及びC5(赤色)の結合、続いて、矢印によって示されるように一度に緩衝液又はトレーサー(1、2)/ジゴキシゲニン化薬物(3、4)の添加。
図12】酸とのインキュベーション工程(3)の適用を伴わない検量と比較した、(1)遠心分離を伴わない、(2)遠心分離を伴う、架橋アッセイにおけるポリクローナル抗体の検量。
図13】陽性対照、長いインキュベーション時間、及びpH5.5での洗浄を用いての検量。
図14】ポリクローナル抗体、長いインキュベーション時間、およびpH7.4での洗浄を用いての検量。
図15】ポリクローナル抗体、短いインキュベーション時間、及びpH5.5での信頼性の高い洗浄を用いての検量。
図16】血清(1)、緩衝液(2)の存在下でpH5での2時間のインキュベーション、及びpH5.5での洗浄によるポリクローナル抗体を用いての検量、血清(3)、緩衝液(4)の存在下でpH5での2時間のインキュベーション及びpH5.5での洗浄によるC5を用いての検量。
図17】血清(1)、緩衝液(2)の存在下でpH5での2時間のインキュベーション、及びpH7.4での洗浄によるポリクローナル抗体を用いての検量、血清(3)、緩衝液(4)の存在下でpH5での2時間のインキュベーション及びpH7.4での洗浄によるC5を用いての検量。
図18】血清(1)、緩衝液(2)の存在下でpH2での0.5時間のインキュベーション、及びpH5.5での洗浄によるポリクローナル抗体を用いての検量、血清(3)、緩衝液(4)の存在下でpH2での0.5時間のインキュベーション及びpH5.5での洗浄によるC5を用いての検量。
【0172】
実施例
実施例1
ショ糖及びブリッジを用いてのアッセイ
ビオチニル化及びジゴキシゲニン化薬物を、30個の個体の血清試料と共にインキュベートした。使用された試薬の機能的試験のために、(対照)血清試料(プールされた血清)を、様々な濃度の人工陽性対照標準物質を用いて調製し、インキュベートし、個体の血清試料として処理した。標識された薬物濃度は、各々1000ng/mLに一定に保たれた。アッセイ中の最終血清濃度は1%であった。形成された免疫複合体を白色のストレプトアビジン(SA)でコーティングされたマイクロタイタープレートに移し、1時間インキュベートすることにより、ビオチンで標識された捕捉用試薬を介して複合体を固定した。上清を吸引した後、結合していない物質を、反復洗浄によって除去した。固定された複合体を、セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた抗ジゴキシゲニン抗体(抗ジゴキシゲニン抗体-ペルオキシダーゼ(ポリ))と共にインキュベートした。各工程を、6.5%ショ糖を含むPBS緩衝液、又は0.5%の濃度のブリッジ35を含むELISA用のロシュユニバーサル緩衝液のいずれかを使用することによって、同じ緩衝液を用いて実施した。最後に、形成された固定された免疫複合体を、酸化されたHPPA溶液である蛍光ペルオキシダーゼ基質の添加によって可視化した。発光を測光法で決定し(320nmの波長での励起、405nmの波長での発光)、試料中の陽性対照濃度と比較して設定した。個々の血清試料の変動係数は29%(ショ糖緩衝液アッセイ)及び181%(ブリッジを含むロシュユニバーサル緩衝液)である。
【0173】
実施例2
酸とのインキュベーション工程を含むアッセイ
個体の血清試料(N=30)及び人工の陽性対照試料を、10mMの酢酸緩衝液(pH5.0)と共に2時間インキュベートした。その後、試料を、0.1Mグリシン塩酸塩(pH2.0)と共に5分間インキュベートした。酸性化した試料をビオチニル化捕捉用抗体及びジゴキシゲニン化検出用抗体と混合し、0.5Mのトリス緩衝液(pH8.5)を用いて中和し、室温で450rpmでマイクロプレート振盪器で30分間インキュベートした。最終血清アッセイ濃度は1%であった。形成された免疫複合体をストレプトアビジン(SA)でコーティングされたマイクロタイタープレートに移し、1時間インキュベートすることにより、ビオチンで標識された捕捉用抗体を介して免疫複合体を固定した。上清の吸引後、結合していない物質を反復洗浄によって除去した。固定された免疫複合体を、セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた抗ジゴキシゲニンFab断片(抗ジゴキシゲニン抗体-ペルオキシダーゼ)と共にインキュベートした。形成された固定された免疫複合体を、酸化されたHPPA溶液である蛍光ペルオキシダーゼ基質の添加によって可視化した。発光を測光法で決定し(320nmの波長での励起、405nmの波長での発光)、血清試料中の人工陽性対照濃度と比較して設定した。人工陽性対照は、100%血清中100ng/mLで3を超えるブランク対ノイズ比を与える。個体の血清試料(N=30)の変動係数は7%である。
【0174】
実施例3
血清含量が低く、酸による解離を伴わない、アッセイ
ビオチニル化及びジゴキシゲニン化された薬物を、1%及び0.1%の最終血清濃度で32個の個体の血清と共にインキュベートした。使用された試薬の機能的試験のために、(対照)血清試料(プールされた血清)を、様々な濃度の人工陽性対照標準物質を用いて調製し、インキュベートし、個々の血清試料として処理した。標識された薬物濃度は、各々1000ng/mLに一定に保たれた。形成された免疫複合体を白色のストレプトアビジン(SA)でコーティングされたマイクロタイタープレートに移し、1時間インキュベートすることにより、ビオチンで標識された捕捉用試薬を介して複合体を固定した。上清を吸引した後、結合していない物質を、反復洗浄によって除去した。固定された複合体を、セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた抗ジゴキシゲニン抗体(抗ジゴキシゲニン抗体-ペルオキシダーゼ(ポリ))と共にインキュベートした。最後に、形成された固定された免疫複合体を、酸化されたHPPA溶液である蛍光ペルオキシダーゼ基質の添加によって可視化した。発光を測光法で決定し(320nmの波長での励起、405nmの波長での発光)、試料中の陽性対照濃度と比例していた。人工陽性対照は、1%及び0.1%のアッセイについて100%血清中約100ng/mLのアッセイ感度を示す。個体の血清試料の変動係数は74%(0.1%血清のアッセイ)及び65%(1%血清のアッセイ)である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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