(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】ペロブスカイト様構造を有する光吸収材料で作られるフィルムを合成するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20221019BHJP
H01L 51/48 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/04 180
(21)【出願番号】P 2020530414
(86)(22)【出願日】2018-08-06
(86)【国際出願番号】 RU2018050093
(87)【国際公開番号】W WO2019031991
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519236860
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー クラスノヤルスク ハイドロパワー プラント(ジェイエスシー クラスノヤルスク エイチピーピー)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】タラソフ,アレクセイ ボリソヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ベリック,ニコライ アンドレーエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】グッディリン,ユージン アレクセエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ペトロフ,アンドレイ アンドレエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】グリシュコ,アレクセイ ユーリエヴィッチ
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104250723(CN,A)
【文献】国際公開第2016/094966(WO,A1)
【文献】Yingying He et al.,"Using elemental Pb surface as a precursor to fabricate large area CH3NH3PbI3 perovskite solar cells",Applied Surface Science,2016年,Vol.389, pp.540-546
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/48
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式ACB
3を有するペロブスカイト様構造の光吸収材料から作られるフィルムを合成するための方法であって、試薬Cの層及び試薬ABの層を順次堆積させることを特徴とし、前記堆積層を備えた前記基板を、反応(С+АВ+B
2=АСВ
3)を完了させるために必要かつ十分な時間、試薬B
2を含む液体媒体または気体媒体中に入れ、式中、成分Aは、CH
3NH
3
+、(NH
2)
2CH
+、C(NH
2)
3
+、Cs
+
またはそれらの混合物を表し、成分Bは、Cl
-、Br
-、I
-、またはそれらの混合物を表し、成分Cは、金属Sn、Pb、Bi、
またはそれらの混合物を表す、方法。
【請求項2】
前記液体媒体が、その中での前記試薬ABの不溶性及びB
2の溶解性によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試薬C及びABが、前記液体媒体または気体媒体中に含まれる試薬B
2と反応することで所定の厚さを有するフィルムをもたらす単位面積あたりの化学量論量で塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試薬C及びABが、真空スパッタリング、スピンコーティング、または基板への前記溶液の噴霧、によって堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応が完了したときに、前記成分Bの過剰分は、溶媒での洗浄、前記表面への前記溶媒の滴下、高温でのアニーリング、または減圧下での蒸発により除去される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばペロブスカイト型太陽電池の作製に用いることができるペロブスカイト様構造を有する有機無機光吸収材料の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術では、ペロブスカイト様構造を有する光吸収材料を得る方法が開示されている。
【0003】
本出願の枠組みの中では、これらの構造は、ペロブスカイト構造及び様々な構造変化を有する構造を直接参照する(用語は、情報源Attfield J.P.,Lightfoot P.,Morris R.E.Perovskites//Dalt.Trans.2015年、第44巻、第23号、P.10541-10542に詳述されている)。
【0004】
特に、論文[Burschka J.ら、Sequential deposition as a route to high-performance perovskite-sensitized solar cells//Nature.-2013-Т.499、-No.7458、-С.316.]には、基板をその平面に垂直な軸の周りに高速で回転させ、必要な厚さを有する層の形態で基板上にPbI2溶液を堆積させ(スピンコーティング法)、次いで得られたPbI2の薄層をMAIを含むイソプロパノール溶液に浸漬することにより、2段階でペロブスカイトCH3NH3PbI3の薄膜を作製するための方法について記載している。
【0005】
論文[Saliba M.ら、Incorporation of rubidium cations into perovskite solar cells improves photovoltaic performance//Science (80-.).2016、第354巻、第6309号、P.206-209.]には、ペロブスカイト有機溶媒の混合物を含む溶液を、その平面に垂直な軸の周りに高速で回転させることによって、薄層の形態で基板上に堆積させることによって、1段階でペロブスカイトCH3NH3PbI3の薄層を作製することについて記載している。
【0006】
上述の方法の欠点は、大面積基板上に溶液から初期成分(PbI2)またはペロブスカイトの層を得ることができないことであり、それに応じて大面積太陽電池を有するペロブスカイトを得ることができないことである。
【0007】
中国特許第104250723号明細書、09/09/2014、Zhi Zheng、Cheng Camry、Lei Yan、Jia Huimin、Ho Wei Wei、He Yingying「Chemical method for in-situ large-area controlled synthesis of perovskite type CH3NH3PbI3 membrane material based on lead simple-substance membrane」には、ヨウ素及びヨウ化メチルアンモニウムを含む有機溶媒、例えばエタノール溶液に、大面積での制御可能な厚さで均一に容易に堆積され得る金属鉛のフィルムを浸漬することにより、ペロブスカイトCH3NH3PbI3を調製するための方法について記載されている。平坦層の形態の金属鉛は、電子伝導層の非多孔質表面にマグネトロンスパッタリングによって堆積される。その後、ヨウ素分子及びヨウ化メチルアンモニウムを含む有機溶媒と接触させる。その結果、鉛の連続無孔層が、ペロブスカイトの連続無孔層に変化する。
【0008】
中国特許第105369232号明細書、16/02/2015、Zhi Zheng、He Yingying、Lei Yan、Cheng Camry、Jia Huimin, Ho Wei Wei「Lead-based perovskite-type composite elemental thin-film in-situ wide area control CH3NH3PbBr3 film material chemical method」には、臭化メチルアンモニウムを含む有機溶媒、例えばイソプロパノール溶液に、大面積での制御可能な厚さで均一に容易に堆積され得る金属鉛のフィルムを浸漬することにより、ペロブスカイトを調製するための方法について記載されている。
【0009】
上記の方法の欠点は、溶媒を使用する必要があること、及び得られるペロブスカイト層の形態の制御が不十分であることである。これにより、有機無機ペロブスカイトを作製する技術プロセスが複雑になり、時間を要するようになり、このため、生産、健康、及び環境に対するリスクにつながる。
【0010】
論文Mater.Horiz.,2017,4,625-632,Petrov Andrey A.,Belich Nikolai A.,Grishko Aleksei Y.,Stepanov Nikita M.,Dorofeev Sergey G.,Maksimov Eugene G.,Shevelkov Andrei V.,Zakeeruddin Shaik M.,Michael Graetzel,Tarasov Alexey B.,Goodilin Eugene A.,「A new formation strategy of hybrid perovskites via room temperature reactive polyiodide melts」には、金属鉛層とその上に塗布される一般組成MAI3+xを有する試薬とを反応させた結果、溶媒を使用することなくペロブスカイト層を調製するための方法について記載されている。
【0011】
既知の方法の欠点は、広い基板面積での粘性のあるポリヨウ化物(ポリハライド)試薬の均一な分布を得ることが困難であること、及び特にヨウ化鉛副層を形成し得る相互作用における化学量論量の制御が欠如し、かつ化学量論量から逸脱することである。基板上に堆積させる試薬は液体溶融物であり、これにより、最終生成物のフィルム形成反応中に前駆体の化学量論量比を制御する際に特定の複雑さがもたらされる。結果として、得られるフィルムの質(特に、厚さの均一性及び相組成)が低下し、それに伴って、製造されたフィルムを利用した最終製品、例えば太陽電池の効率に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】中国特許第104250723号明細書
【文献】中国特許第105369232号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】Attfield J.P.,Lightfoot P.,Morris R.E.Perovskites//Dalt.Trans.2015年、第44巻、第23号、P.10541-10542
【文献】Burschka J.ら、Sequential deposition as a route to high-performance perovskite-sensitized solar cells//Nature.-2013-Т.499、-No.7458、-С.316.
【文献】Saliba M.ら、Incorporation of rubidium cations into perovskite solar cells improves photovoltaic performance//Science (80-.).2016、第354巻、第6309号、P.206-209.
【文献】Mater.Horiz.,2017,4,625-632,Petrov Andrey A.,Belich Nikolai A.,Grishko Aleksei Y.,Stepanov Nikita M.,Dorofeev Sergey G.,Maksimov Eugene G.,Shevelkov Andrei V.,Zakeeruddin Shaik M.,Michael Graetzel,Tarasov Alexey B.,Goodilin Eugene A.,「A new formation strategy of hybrid perovskites via room temperature reactive polyiodide melts」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許請求された発明によって解決される技術的問題は、溶媒を使用せずに、大面積基板上にペロブスカイト様構造を有する光吸収性有機無機材料を製造するための技術的方法を創出することである。
【0015】
特許請求された発明を使用して得られた技術的結果は、ピンホールがなく、高い均一性を有する単相フィルムを得る可能性がもたらされることであり、これにより、この材料を大面積太陽電池で使用できるようになる。この方法は、また、その製造可能性及び実装容易性によっても特徴付けられ、工業生産において利用しやすいものとなっている。特許請求された方法は、溶媒を使用することなく実施され、これにより、生成されたペロブスカイトの成分との望ましくない相互作用の可能性がなくなるため、最終製品の品質の改善に寄与し、また潜在的に、より環境にやさしい生産となり得る。
【0016】
定式化された課題は、構造式ACB3を有するペロブスカイト様構造を有する光吸収材料で作られるフィルムを、次のような技術的解決法に従って得るアプローチによって解決される。試薬Cの層及び試薬ABの層が順次基板上に堆積される。次に、この堆積された層を備えた基板を、試薬B2を含む液体または気体媒体中に、С+АВ+B2=АСВ3+Xの反応の進行に必要かつ十分な時間浸漬する。式中、成分Aは、CH3NH3
+、(NH2)2CH+、C(NH2)3
+、Cs+またはそれらの混合物を表し、成分Bは、Cl-、Br-、I-、またはそれらの混合物を表し、成分Cは、金属Sn、Pb、Bi、それらの融体、酸化物、または塩を表し、成分Xは、酸化物またはその塩の形態で使用されていた、成分Cの分解生成物を表す。液体媒体は、その中での試薬ABの不溶性及びB2の溶解性によって特徴付けられる。試薬C及びABは、所定の厚さのフィルムをもたらす単位面積あたりの化学量論量で塗布される。成分C及びABは、真空スパッタリング、電気化学析出、溶液のエアロゾルスプレーまたはスピンコーティングによって堆積させる。反応が完了したときに、成分Bの過剰分は、溶媒での洗浄、表面への溶媒の滴下、高温でのアニーリング、減圧下での蒸発により、除去できる。酸化物またはその塩を成分Cとして用いる場合、成分Xの除去が、C+AB+B2=ACB3+Xの反応完了後に追加的に確実に行われる。乾燥空気、アルゴン、または窒素含有ヨウ素蒸気(ハロゲンもしくはその混合物)またはキャリアガスを含まないヨウ素蒸気(ハロゲンもしくはその混合物)は、気相として使用できる。CCl4、トルエン、ジエチルエーテル、及びヨウ素を含む他の有機溶媒(ハロゲンまたはそれらの混合物)は、液相として使用できる。
【0017】
類似物とは別に、特許請求された発明の枠組み内で、堆積パラメータによって厳密に定義された比率で、基板上に前駆体フィルム(AB及びC)を事前に制御して堆積することにより、光吸収材料で作られるフィルムを形成する反応の化学量論量を正確に制御することが可能である。成分AB及びCを含む二層フィルムを、成分B2を含む溶液または気体でさらに処理すると、その表面に、以前に堆積した成分ABによって厳密に定義された量の、反応性混合物AB-B2から作られた均一なフィルムが形成される。さらに、この反応混合物が成分Cの層と反応することで、最終生成物が形成され、これにより、大面積にわたってフィルムの高い均一性を得ることが可能になる。
【0018】
試薬Cの層、及びその層の上に堆積している化学量論量の試薬ABを有する基板を、試薬B2を含む液体または気体の媒体に浸漬する場合、試薬ABは試薬B2と反応し、試薬Cと反応する組成AB-nB2(n>=1)が形成される。その結果として、次の中間反応に従ってペロブスカイトACB3が形成される:AB-nB2+C=ACB3+[(n-3)/2]B2
【0019】
特許請求された方法の枠組み内で、技術的結果を達成すること、すなわち、大面積を有する光吸収材料の単相高均質フィルムを製造することは、光吸収材料フィルムが形成される反応の化学量論量を制御することにより達成される。技術的な結果の達成に影響を与える主なパラメータは、基板上に堆積されたフィルムC及びABの厚さ及び均一性、ならびに得られた二層フィルム及び成分B2を含む溶液または気体とのさらなる相互作用のための条件である。ACB3の最も均質な単相フィルムを得るために、単位面積あたりの成分AB対Cの量の等モル比に対応する厚さを有する、成分AB及びCの厚いフィルムを均一に塗布することが推奨される。成分の比率に有意な偏差がある場合には、最終製品のフィルムに追加の相が形成され得る。
【0020】
特許請求された発明は、特に特定の組成物について特許請求された方法の実施形態の結果を表す以下の図面及び写真により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】組成ACB3を有する光吸収材料のフィルムを合成するための特許請求された方法のスキームを示す。
【
図2】特許請求された方法に従って得た、光吸収有機無機ペロブスカイトCH
3NH
3PbI
3のフィルムの顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特許請求された発明は、工業生産の条件など、既知の手段及び方法を使用して具体化され得る。
【0023】
任意の導電性または非導電性材料またはそれらの組み合わせを基板として使用することができる。基板材料の面積及び選択は、光吸収層形成のさらなる特定の技術的ステップの要件によって制限され得るが、潜在的に任意であり得る。基板の面積及びフィルムの特定の厚さに基づいて、試薬C及びABの必要な量が決定される。この方法を実施するために、既知の方法により、試薬Cが選択された基板上に堆積される。最適な方法は、Cとして金属鉛、スズ、またはビスマスを使用することである。これらは、例えば、真空蒸着または電気化学蒸着によって堆積される。成分Cの酸化物または塩を使用する場合、上記の方法に加えて、例えばスピンコーティング、基板への溶液の噴霧、噴霧熱分解、化学蒸着(CVD)など、フィルムを形成するための他の方法を使用することも可能である。成分ABの層は、スパッタリング(真空蒸着など)、スピンコーティング、基板上への溶液の噴霧などの方法によって、Cの層上に堆積される。このようにして、2つの連続堆積層C及びABを有する二層フィルムが形成される。ペロブスカイト様構造を有する光吸収材料で作られるフィルムを形成する反応を実行するために、堆積層を有する得られた基板は、B2を含む液体または気体媒体に浸漬させる。キャリアガスを含まない乾燥空気、アルゴン、または窒素含有ヨウ素蒸気(ハロゲンまたはその混合物)またはヨウ素蒸気(ハロゲンまたはその混合物)は、気相として使用できる。CCl4、トルエン、ジエチルエーテル、及びヨウ素を含む他の有機溶媒(ハロゲンまたはそれらの混合物)は、液相として使用できる。実験の結果、記載された反応を実行するための最適な特性は、キャリアガスのいずれかを有するヨウ素蒸気、またはその不在下でのヨウ素蒸気、ならびにヨウ素を含むトルエン及びCCl4溶液によって実行されることが確立された。推奨反応温度は、0~150℃である。
【0024】
各特定の例について、プロセス期間は、完了するまでの化学反応の速度によって決定する。プロセスの完了は、X線位相分析などによって制御できる。反応終了時には、基板上の得られたフィルムは、成分B
2を含む媒体が収容されているチャンバーから引き出される。得られたフィルムの品質は、フィルムの連続性(ピンホールがないこと)及び微結晶の平均径などのパラメータの評価に使用される電子顕微鏡によって検査される。記載された方法で得た光吸収化合物CH
3NH
3PbI
3のフィルムは、
図2に示すように、均一な構造を有していること、及びピンホールがないこと、及び平均結晶子経が約800nmであることによって特徴が示されることが確認された。
実施例
【0025】
特許請求された方法の実施形態及び試薬として様々な成分を使用する光吸収化合物CH3NH3PbI3のフィルムの作製に関する情報は、特定の実施形態の例として提供される。
実施例1:
【0026】
真空熱蒸着により厚さ60nmの鉛層は、TiO
2のブロッキング層からなる基板上に堆積させ、FTO(フッ素化スズ酸化物)またはITO(インジウムドープスズ酸化物)の導電性基板上に堆積させた。次に、基板の単位面積あたりの金属鉛及びMAIの量の等モル比に相当する量で、真空熱蒸着によりMAI層を鉛層上に堆積させた。その後、堆積層を有する基板を飽和ヨウ素蒸気を含むアルゴンに浸漬し、40℃で10~30分間保持した。結果として、ペロブスカイト様構造MAPbI
3の層が基板上に形成された。フィルムの形態及び相組成は、走査型電子顕微鏡(
図2)及びX線位相分析によって調べた。
実施例2:
【0027】
真空熱蒸着により厚さ250nmの鉛層は、TiO2のブロッキング層からなる基板上に堆積させ、FTO(フッ素化スズ酸化物)またはITO(インジウムドープスズ酸化物)の導電性基板上に堆積させた。次に、基板の単位面積あたりの金属鉛及びMAIの量の等モル比に相当する量で、真空熱蒸着によりMAI層を鉛層上に堆積させた。その後、堆積層を有する基板を、I2含有量が10mg/mlであるヨウ素を含むCCl4溶液に浸漬し、室温で90秒間保持した。結果として、ペロブスカイト様構造MAPbI3の層が基板上に形成された。フィルムの形態及び相組成は、走査型電子顕微鏡及びX線位相分析によって調べた。
実施例3:
【0028】
真空熱蒸着により厚さ250nmの鉛層は、TiO2のブロッキング層からなる基板上に堆積させ、FTO(フッ素化スズ酸化物)またはITO(インジウムドープスズ酸化物)の導電性基板上に堆積させた。次に、MAI及びFAIの混合物(1:1のモル比)からなる層は、基板の単位面積あたりの金属鉛及びMAIの量のモル比2:1に相当する量で、真空熱蒸着により鉛層上に堆積させた。その後、堆積層を有する基板を、I2含有量が10mg/mlであるヨウ素を含むCCl4溶液に浸漬し、室温で90秒間保持した。結果として、ペロブスカイト様構造MA0.5FA0.5PbI3の層が基板上に形成された。フィルムの形態及び相組成は、走査型電子顕微鏡及びX線位相分析によって調べた。
【0029】
試薬として様々な化合物を用いる方法の実施形態の例を以下に示す。
【0030】
【0031】
この方法の実施形態の上記の例(表1)では、ペロブスカイト様構造を有する光吸収材料ACB3の高均質フィルムが、対応する大面積のフィルムを確実に作製できる方法によって得られた。
【符号の説明】
【0032】
1 基板
2 試薬Cの堆積
3 試薬ABの堆積
4 気体媒体またはB2を含む溶液。