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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】シャツおよびパンツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20221019BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
A41D13/00 115
A41D27/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020547842
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036462
(87)【国際公開番号】W WO2020065971
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】高畠 誠
(72)【発明者】
【氏名】草野 拳
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 靖歩
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第5845175(JP,B2)
【文献】特開2009-263841(JP,A)
【文献】実開昭49-52715(JP,U)
【文献】特開2012-7252(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043673(WO,A1)
【文献】特開2003-293203(JP,A)
【文献】特表2017-522464(JP,A)
【文献】特表2017-522463(JP,A)
【文献】特許第5192235(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/02、13/05-13/08、13/12、20/00、27/00-27/28
A41C1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の身体に配される生地の一部分として、伸縮性が隣接する部分よりも高い伸縮性付与部が配設されるシャツにおいて、
前記伸縮性付与部は、体側において背面側と前面側に跨って配設され前面側斜め下へ延びる第1部分、前面側と背面側に跨って配設され前記第1部分の下部から後方斜め下へ延びる第2部分、および前記第2部分の下部から前方斜め下へ延びる第3部分を有することを特徴とするシャツ。
【請求項2】
前記伸縮性付与部は、体側から袖に向かって延びる袖伸縮部を有することを特徴とする請求項に記載のシャツ。
【請求項3】
着用者の身体に配される生地の一部分として、伸縮性が隣接する部分よりも高い伸縮性付与部が配設されるパンツにおいて、
前記伸縮性付与部は、左右の体側において前方斜め下へ延び一端側が腰部に、他端側が裾側に配され、背面側で離間している第1部分、前記第1部分の下部から、前記第1部分の傾斜よりも緩い傾斜で前方斜め下へ延びる第2部分、および前記第2部分の下部から、前記第2部分の傾斜よりも急な傾斜で前方斜め下へ延びる第3部分を有することを特徴とするパンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ等で着用するシャツおよびパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ等で着用するウェアでは、着用者が腕部や脚部を動かし易いように伸縮性のある生地が部分的に組み込まれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、レザースーツなどモーターサイクリスト用衣服の選択された部位、例えば脚部と腕部に伸縮性挿入体が組み込まれたウェアが開示されている。ウェアは、衣服のレスト状態の形状が、着用者がオートバイ乗車時に取る姿勢に対応するよう、伸縮性挿入体の形状および適用の態様が定められる。伸縮性挿入体は、胴の両側に沿って延在する第1側部と、上方すなわち肩に向かって傾斜する第2側部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2006-504877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたウェアは、第2側部が体側部から背中側へ上方に傾斜しつつ肩へ向かうように延びている。このため背中の上部では伸縮性が高いものの、身体の前側では伸びが低く、前側の生地が腕上げ等の動作の妨げとなる虞があった。例えばバレーボールなどのスポーツにおいては、上体を後方へ反りつつ腕上げをするような動作を伴うため、体側から前側におけるウェアの伸縮性が必要となる。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、腕上げ動作や脚部の屈伸動作において伸縮性が良好なシャツおよびパンツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様はシャツである。シャツは、着用者の身体に配される生地の一部分として、伸縮性が隣接する部分よりも高い伸縮性付与部が配設されるシャツにおいて、前記伸縮性付与部は、体側において前面側斜め下へ延びる第1部分を有することを特徴とする。
【0008】
また別の態様はパンツである。パンツは、着用者の身体に配される生地の一部分として、伸縮性が隣接する部分よりも高い伸縮性付与部が配設されるパンツにおいて、前記伸縮性付与部は、体側において前方斜め下へ延びる第1部分を有することを特徴とする。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シャツおよびパンツは、腕上げ動作や脚部の屈伸動作において伸縮性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)は実施形態1に係るシャツを示す正面図であり、図1(b)は実施形態1に係るシャツを示す背面図である。
図2】着用状態におけるシャツの側面図である。
図3】生地の丈方向および周方向の剛性の一例を示すグラフである。
図4】腕上げ動作時のシャツの使用状態について説明するための模式図である。
図5図5(a)は実施形態2に係るシャツを示す正面図であり、図5(b)は実施形態2に係るシャツを示す背面図である。
図6】着用状態におけるシャツの側面図である。
図7図7(a)は実施形態2に係るパンツを示す正面図であり、図7(b)は実施形態2に係るパンツを示す背面図である。
図8】着用状態におけるパンツの側面図である。
図9】パンツの股下部分を下方から見た模式図である。
図10】シャツのマチ部の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図10を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
(実施形態1)
図1(a)は実施形態1に係るシャツ100を示す正面図であり、図1(b)は実施形態1に係るシャツ100を示す背面図である。また、図2は着用状態におけるシャツ100の側面図である。尚、図2は腕を上げた状態あるいは袖を上に持ち上げた状態を示している。シャツ100は、前身頃10、後ろ身頃11およびマチ部20を有する。前身頃10および後ろ身頃11は、肩部分において縫合されており、体側部分において、マチ部20にそれぞれ縫合される。シャツ100は、首および肩にそれぞれ襟12および袖13が縫合されている。シャツ100は、前身頃10によって前面が、後ろ身頃11によって背面側が形成される。
【0014】
マチ部20は、身体の体側に配されており、脇から概ね下方に向かって裾まで延びる帯状をなす。マチ部20は、体側において前方斜め下へ延びる、即ちシャツ100の前面側に向かうにつれて下降するように延びる第1部分21を有する。第1部分21は、体側における脇部から身体の前面側に延びており、前面側に向かって斜め下へ延びている。またマチ部20は、体側において第1部分21の下部から後方斜め下へ延びる、即ちシャツ100の背面側に向かうにつれて下降するように延びる第2部分22を有する。またマチ部20は、体側において第2部分22の下部から前方斜め下へ延びる、即ちシャツ100の前面側に向かうにつれて下降するように延びる第3部分23を有する。
【0015】
マチ部20と前身頃10との境には縫合線30が、マチ部20と後ろ身頃11との境には縫合線31が表われる。縫合線30および縫合線31は2回屈曲しており、屈曲した箇所に角ができているが、当該箇所が丸みを帯びた形状であってもよい。図2に示すマチ部20の第1部分21、第2部分22および第3部分23は、それぞれの部分における縫合線30および縫合線31が平行となっていてもよいが、これに限定されない。第1部分21、第2部分22および第3部分23における縫合線間の距離W1は同一としているが、相互に異なっていてもよい。また、縫合線30および縫合線31は、第1部分21、第2部分22および第3部分23において直線状としているが、曲線で形成され湾曲していてもよい。
【0016】
第1部分21と第2部分22との屈曲点は、シャツ100における丈方向の中央よりも上側に設けられている。また、第2部分22と第3部分23との屈曲点は、第1部分21と第2部分22との屈曲点と、裾との中央部やや裾側寄りに設けられている。
【0017】
図3は、生地の丈方向および周方向の剛性の一例を示すグラフである。前身頃10、後ろ身頃11およびマチ部20に用いる生地は、身体が運動し易いように各部に所定の伸縮性を持たせるべく、編み組織で構成される編み生地とすることが好ましい。例えば、前身頃10および後ろ身頃11に生地Aを用いた場合、丈方向には伸長率40%に対し4.5N/cm程度と剛性が高く、周方向には伸長率40%に対し1.1N/cm程度と剛性が低い。したがって、前身頃10および後ろ身頃11は、丈方向には伸縮性が低く、周方向には伸縮性が高い。
【0018】
マチ部20には、2種類の生地Bおよび生地Cのいずれかを用いてもよい。生地Bは、丈方向には伸長率40%に対し3.1N/cm程度と比較的に剛性が高く、周方向には伸長率40%に対し1.0N/cm程度と剛性が低い。生地Bは、丈方向において生地Aよりも剛性が低く、生地Aに比べて丈方向の伸縮性が高い。生地Bは、周方向において生地Aと同等の剛性を有し、生地Aと同等の周方向の伸縮性を有する。
【0019】
生地Cは、丈方向には伸長率40%に対し0.3N/cm程度と剛性が低く、周方向でも伸長率40%に対し0.4N/cm程度と剛性が低い。生地Cは、丈方向において生地Aよりも剛性が非常に低く、生地Aに比べて丈方向の伸縮性が非常に高い。生地Cは、周方向において生地Aよりも剛性が低く、生地Aに比べて周方向の伸縮性が高い。
【0020】
次にシャツ100の作用について説明する。図4は、腕上げ動作時のシャツ100の使用状態について説明するための模式図である。尚、図4は、図2に示す側面図に相当し、腕上げ動作がされて袖13が上方に持ち上げられた状態を表している。腕上げ動作によって、前身頃10および後ろ身頃11の肩部分、並びに袖13が上方に持ち上がる。
【0021】
仮に、マチ部20が体側において前後に屈曲することなく上下方向に直線状に設けられていた場合を考えると、マチ部20の縫合線が上下方向に真っ直ぐな直線状となり、縫合線の剛性で体側におけるシャツ100の丈方向の伸縮性が低下する。シャツ100は、体側における丈方向の伸縮性の低下によって、腕上げ動作時に全体的に引きつられて動作の妨げや着用感の低下の原因になる。
【0022】
図2および図4に示すように、マチ部20は、縫合線30および縫合線31が前後に屈曲しているため、体側において図4に示す矢印Pのようにシャツ100が持ち上がったときに、点線L1、L2およびL3のように縫合線30および縫合線31が可動して追従する。縫合線30および縫合線31は屈曲しているため、屈曲部分の角度が広がるような動きを許容しており、丈方向における伸縮性の低下が抑制される。
【0023】
上述のように前身頃10および後ろ身頃11に丈方向の剛性が高い生地Aを用い、マチ部20に丈方向の剛性が生地Aよりも低い生地Bを用いており、生地Bが丈方向に伸びつつ縫合線30および縫合線31が可動する。このように生地Bが伸びることによって、シャツ100は、腕上げ動作において伸縮性が良好となり、シャツ100の全体的な引きつりが緩和され、該動作の妨げや着用感の低下を抑制する。
【0024】
マチ部20に周方向にも剛性が生地Aよりも低い生地Cを用いることで、腕上げ動作時に生じる周方向でのシャツ100の動きに対して、生地Cが伸びつつ縫合線30および縫合線31が可動する。このように生地Cが伸びることによって、シャツ100は、腕上げ動作において伸縮性が良好となり、シャツ100の全体的な引きつりが緩和され、該動作の妨げや着用感の低下を抑制する。
【0025】
(実施形態2)
図5(a)は実施形態2に係るシャツ100を示す正面図であり、図5(b)は実施形態2に係るシャツ100を示す背面図である。また、図6は着用状態におけるシャツ100の側面図である。尚、図6は、腕上げ動作がされて袖13が上方に持ち上げられた状態を表している。実施形態2に係るシャツ100は、マチ部20が脇から袖13の下部に延びる第4部分24を有している。マチ部20は実施形態1において説明したマチ部20に加えて、第1部分21の上部から第4部分24が延びるように設けられている。
【0026】
腕上げ動作をした場合、脇から腕にかけても丈方向の伸びが生じる。シャツ100は、丈方向に伸縮性が高いマチ部20を延長し、第4部分24を袖13の下部に配設することで、脇から腕にかけての丈方向の伸びに対しても伸縮性が良くなる。
【0027】
また、図6に示すように第4部分24が第1部分21に対して屈曲するように設けることで袖13に延長された縫合線30および縫合線31の可動性がよく、シャツ100は、袖13も含めて伸縮性が良くなる。袖13も含めて腕上げ動作において伸縮性が良好となり、シャツ100の全体的な引きつりが緩和され、該動作の妨げや着用感の低下がより抑制される。
【0028】
(実施形態3)
図7(a)は実施形態2に係るパンツ105を示す正面図であり、図7(b)は実施形態2に係るパンツ105を示す背面図である。また、図8は着用状態におけるパンツ105の側面図であり、図9はパンツ105の股下部分を下方から見た模式図である。尚、図9は裾を左右方向に引張った状態のパンツ105を模式的に表している。パンツ105は、前身頃50、後ろ身頃51、体側マチ部60および股下マチ部80を有する。前身頃50および後ろ身頃51は、体側マチ部60および股下マチ部80に縫合されている。パンツ105は、前身頃50によって前面側が、後ろ身頃51によって背面側が形成される。尚、前身頃50は左右の前身頃を縫合し、後ろ身頃51は左右の後ろ身頃を縫合して形成されている。
【0029】
体側マチ部60は、身体の体側に配されており、腰から概ね下方に向かって裾まで延びる帯状をなす。体側マチ部60は、体側において前方斜め下へ延びる、即ちパンツ105の前面側に向かうにつれて下降するように延びる第1部分61を有する。また体側マチ部60は、体側において第1部分61の下部から、水平に対する傾斜が第1部分61よりも緩い傾斜で前方斜め下へ延びる、即ちパンツ105の前面側に向かうにつれて下降するように延びる第2部分62を有する。また体側マチ部60は、体側において第2部分62の下部から、第2部分62の傾斜よりも急な傾斜で前方斜め下へ延びる、即ちパンツ105の前面側に向かうにつれて下降するように延びる第3部分63を有する。
【0030】
体側マチ部60と前身頃50との境には縫合線70が、体側マチ部60と後ろ身頃51との境には縫合線71が表われる。縫合線70および縫合線71は2回屈曲しており、屈曲した箇所に角ができているが、当該箇所が丸みを帯びた形状であってもよい。図6に示す体側マチ部60の第1部分61、第2部分62および第3部分63は、それぞれの部分における縫合線70および縫合線71が平行となっていてもよいが、これに限定されない。第1部分61、第2部分62および第3部分63における縫合線間の距離W2は同一としているが、相互に異なっていてもよい。また、縫合線70および縫合線71は、第1部分61、第2部分62および第3部分63において直線状としているが、曲線で形成され湾曲していてもよい。
【0031】
第1部分61と第2部分62との屈曲点は、パンツ105における丈方向の中央よりも上方の位置に設けられている。また、第2部分62と第3部分63との屈曲点は、パンツ105における丈方向の中央よりも下方の位置に設けられている。
【0032】
股下マチ部80は、身体の股部の中央から脚に沿って、右足側の第1部分81と左脚側の第2部分82とが前方斜め下方向へ延びている。股下マチ部80は、図9に示すように第1部分81および第2部分82が屈曲するような形状となる。股下マチ部80と前身頃50との境には縫合線90が、股下マチ部80と後ろ身頃51との境には縫合線91が表われる。縫合線90および縫合線91は中央部で1回屈曲しており、屈曲した箇所には角ができていても、丸みを帯びた形状となっていてもよい。
【0033】
例えば、前身頃50および後ろ身頃51には図3に基づき説明した生地Aを、体側マチ部60および股下マチ部80には、2種類の生地Bおよび生地Cのいずれかを用いてもよい。体側マチ部60および股下マチ部80は、前身頃50および後ろ身頃51よりも丈方向の剛性が低く、丈方向の伸縮性が高いことが好ましい。
【0034】
次にパンツ105の作用について説明する。パンツ105は、脚部の屈伸である股関節の動きによって、体側および股下において丈方向に引っ張られ、丈方向に伸縮性が十分でない場合には、脚部の屈伸等の妨げや着用感の低下の原因となる。
【0035】
図8に示すように、体側マチ部60は、縫合線70および縫合線71が屈曲しているため、体側においてパンツ105の丈方向に伸びが生じた場合に、体側マチ部60が伸びつつ、縫合線70および縫合線71が可動して追従する。同様に図9に示すように、股下マチ部80は、縫合線90と縫合線91とが屈曲しているため、股部においてパンツ105の丈方向に伸びが生じた場合に、股下マチ部80が伸びつつ、縫合線90および縫合線91が可動して追従する。
【0036】
上述のように前身頃50および後ろ身頃51に丈方向の剛性が高い生地Aを用い、体側マチ部60に丈方向の剛性が生地Aよりも低い生地Bまたは生地Cを用いる場合、生地Bまたは生地Cが丈方向に伸びつつ縫合線70および縫合線71が可動する。このように生地Bまたは生地Cが伸びることによって、パンツ105は、脚部の屈伸動作において伸縮性が良好となり、パンツ105の全体的な引きつりが緩和され、該動作の妨げや着用感の低下を抑制する。
【0037】
(変形例)
図10はシャツ100のマチ部20の変形例を示す側面図である。尚、図10図2に相当している。この変形例に示すシャツ100は、体側において脇から後方斜め下へ延びる第5部分25の下部に、上述の第1部分21および第2部分22が設けられている。
【0038】
スポーツ等の種類に応じた腕まわりの動作によっては、前身頃側よりも後ろ身頃側でシャツ100の引きつりが生じ易く、図10に示すようにマチ部20を形成したほうが、動作の妨げや着用感の低下を抑制することができる。また、同じ腕まわりの動作であっても、シャツ100自体の形状や剛性配分によっては、図10に示すマチ部20の形状の方が丈方向の伸縮性を確保しやすい場合もある。
【0039】
上述の各実施形態においては、各身頃部位と、マチ部20、体側マチ部60および股下マチ部80とを縫合し、シャツ100およびパンツ105を形成する例について説明したが、無縫合で各図において説明したマチ部を各身頃部位と連続的に設けても良い。この場合、マチ部20、体側マチ部60および股下マチ部80が占める領域において、丈方向の剛性が身頃部位よりも低くなるように、生地の編み方や、繊維の方向、使用する繊維量等の違い、さらには樹脂等の繊維への塗布等によって、伸縮性に差異を設ければよい。
【0040】
次に、各実施形態1および変形例に係るシャツ100およびパンツ105の特徴を説明する。
シャツ100は、着用者の身体に配される生地の一部分として、伸縮性が隣接する部分よりも高い伸縮性付与部としてのマチ部20が配設される。マチ部20は、体側において前面側斜め下へ延びる第1部分21を有する。これにより、シャツ100は、腕上げ動作において伸縮性が良好となる。
【0041】
また伸縮性付与部であるマチ部20は、第1部分21の下部から後方斜め下へ延びる第2部分22を有する。これにより、シャツ100は、第1部分21に第2部分22を付加し、腕上げ動作における伸縮性がさらに良好となる。
【0042】
またマチ部20は、第2部分22の下部から前方斜め下へ延びる第3部分23を有する。これにより、シャツ100は、第1部分21および第2部分22に第3部分23を付加し、腕上げ動作における伸縮性がさらに良好となる。
【0043】
またマチ部20は、体側から袖13に向かって延びる袖伸縮部である第4部分24を有する。これにより、シャツ100は、袖13も含めて腕上げ動作における伸縮性が良好となる。
【0044】
パンツ105は、着用者の身体に配される生地の一部分として、伸縮性が隣接する部分よりも高い伸縮性付与部である体側マチ部60が配設される。体側マチ部60は、体側において前方斜め下へ延びる第1部分61を有する。これにより、パンツ105は、脚部の屈伸動作において伸縮性が良好となる。
【0045】
また体側マチ部60は、第1部分61の下部から、第1部分61の傾斜よりも緩い傾斜で前方斜め下へ延びる第2部分62を有する。これにより、パンツ105は、第1部分61に第2部分62を付加し、脚部の屈伸動作における伸縮性がさらに良好となる。
【0046】
また体側マチ部60は、第2部分62の下部から、第2部分62の傾斜よりも急な傾斜で前方斜め下へ延びる第3部分63を有する。これにより、パンツ105は、第1部分61および第2部分62に第3部分63を付加し、脚部の屈伸動作における伸縮性がさらに良好となる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0048】
20 マチ部(伸縮性付与部)、 21 第1部分、 22 第2部分、
23 第3部分、 24 第4部分(袖伸縮部)、
60 体側マチ部(伸縮性付与部)、 61 第1部分、 62 第2部分、
63 第3部分、 100 シャツ、 105 パンツ。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、シャツおよびパンツに関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10