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特許7161544超音波観測システム、超音波観測システムの作動方法、及び超音波観測システムの作動プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】超音波観測システム、超音波観測システムの作動方法、及び超音波観測システムの作動プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A61B8/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020551639
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2018038557
(87)【国際公開番号】W WO2020079761
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 哲平
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-113628(JP,A)
【文献】特開2013-009832(JP,A)
【文献】特開2010-167032(JP,A)
【文献】特開2015-231436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送受信に基づく信号を受信し、前記信号に基づいて被検体内の空間的に離間した断面を撮像した第1の超音波画像のデータを生成する第1画像生成部と
前記第1の超音波画像群からユーザが選択した代表超音波画像においてユーザの入力に応じて輝度値が大きく変化する第1の境界を自動的に設定する領域設定部と、
前記代表超音波画像から順に前後の超音波画像を比較し、前記領域設定部が設定した前記第1の境界に基づき、前記第1の超音波画像群の各々において、前記第1の境界に対応する第2の境界を自動的に検出する境界検出部と、
前記第1の境界及び前記第2の境界の外部の画素を消去した第2の超音波画像群のデータを生成する第2画像生成部と、
前記第2の超音波画像群の各々における各画素の輝度値の大小関係を入れ換える輝度値変換部と、
を備えることを特徴とする超音波観測システム。
【請求項2】
前記輝度値変換部が輝度値の大小関係を入れ換えた前記第2の超音波画像を合成することにより3次元超音波画像のデータを生成する3次元画像生成部を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波観測システム。
【請求項3】
前記輝度値変換部は、前記輝度値の大小関係を入れ換えた後に閾値以下の輝度値をゼロにすることを特徴とする請求項1に記載の超音波観測システム。
【請求項4】
前記第1画像生成部は、前記3次元超音波画像における任意の断面の2次元断面画像のデータを生成することを特徴とする請求項2に記載の超音波観測システム。
【請求項5】
前記超音波画像、前記超音波画像を合成した3次元超音波画像、又は前記輝度値の大小関係を入れ換えた超音波画像を合成した前記3次元超音波画像を表示装置に表示させる表示制御部を備えることを特徴とする請求項2に記載の超音波観測システム。
【請求項6】
表示装置に表示された前記被検体において指定された2点間の距離を算出する距離算出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波観測システム。
【請求項7】
前記境界検出部は、前記被検体内の空間的に離間した断面を撮像した複数の前記超音波画像の各々において境界を自動的に検出することを特徴とする請求項1に記載の超音波観測システム。
【請求項8】
前記領域設定部は、前記代表超音波画像における前記第1の境界の内側に、ユーザの入力に応じて輝度値が大きく変化する第3の境界を自動的に設定し、
前記境界検出部は、前記代表超音波画像から順に前後の超音波画像を比較し、前記領域設定部が設定した前記第3の境界に基づき、前記第1の超音波画像群の各々において、前記第3の境界に対応する第4の境界を自動的に検出し、
前記第2画像生成部は、前記第1の境界と前記第3の境界との間、及び前記第2の境界と前記第4の境界との間の領域の画素を消去した第3の超音波画像群のデータを生成し、
前記輝度値変換部は、前記第3の超音波画像群の各々における各画素の輝度値の大小関係を入れ換えることを特徴とする請求項1に記載の超音波観測システム。
【請求項9】
被検体に挿入する挿入部の先端に、超音波を送受信する超音波振動子が配置されており、前記超音波振動子が受信した超音波に基づく信号である超音波エコーを出力する超音波内視鏡を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波観測システム。
【請求項10】
画像生成部が、超音波の送受信に基づく信号を受信し、前記信号に基づいて被検体内の空間的に離間した断面を撮像した第1の超音波画像のデータを生成し、
領域設定部が、前記第1の超音波画像群からユーザが選択した代表超音波画像においてユーザの入力に応じて輝度値が大きく変化する第1の境界を自動的に設定し、
境界検出部が、前記代表超音波画像から順に前後の超音波画像を比較し、前記領域設定部が設定した前記第1の境界に基づき、前記第1の超音波画像の各々において、前記第1の境界に対応する第2の境界を自動的に検出し、
前記画像生成部が、前記第1の境界及び前記第2の境界の外部の画素を消去した第2の超音波画像群のデータを生成し、
輝度値変換部が、前記第2の超音波画像群における各画素の輝度値の大小関係を入れ換える超音波観測システムの作動方法。
【請求項11】
超音波の送受信に基づく信号を受信し、前記信号に基づいて被検体内の空間的に離間した断面を撮像した第1の超音波画像のデータを生成させ、
前記第1の超音波画像群からユーザが選択した代表超音波画像においてユーザの入力に応じて輝度値が大きく変化する第1の境界を自動的に設定させ、
前記代表超音波画像から順に前後の超音波画像を比較し、前記第1の境界に基づき、前記第1の超音波画像の各々において、前記第1の境界に対応する第2の境界を自動的に検出させ
前記第1の境界及び前記第2の境界の外部の画素を消去した第2の超音波画像群のデータを生成し、
前記第2の超音波画像群における各画素の輝度値の大小関係を入れ換えさせる
ことを超音波観測システムに実行させることを特徴とする超音波観測システムの作動プログラム。
【請求項12】
超音波の送受信に基づく信号を受信し、前記信号に基づいて被検体のすい臓の空間的に離間した断面を撮像した第1の超音波画像群のデータを生成する第1画像生成部と、
前記第1の超音波画像群からユーザが選択した代表超音波画像において、ユーザの入力に応じて輝度値が大きく変化する第1の境界を自動的に設定し、前記代表超音波画像における前記第1の境界の内側に、ユーザの入力に応じて輝度値が大きく変化する第3の境界を自動的に設定する領域設定部と、
前記代表超音波画像から順に前後の超音波画像を比較し、前記領域設定部が設定した前記第1の境界に基づき、前記第1の超音波画像群の各々において、前記第1の境界に対応する第2の境界と前記第3の境界に対応する第4の境界を自動的に検出する境界検出部と、
前記第1の境界、前記第2の境界、前記第3の境界、及び前記第4の境界を強調表示して表示装置に表示させる表示制御部と、
前記第1の境界及び前記第2の境界の外部、前記第1の境界と前記第3の境界との間、及び前記第2の境界と前記第4の境界との間の領域の画素を消去した第4の超音波画像群のデータを生成する第3画像生成部と、
前記第4の超音波画像群の各々における各画素の輝度値の大小関係を入れ換える輝度値変換部と、
を備えることを特徴とする超音波観測システム。
【請求項13】
超音波の送受信に基づく信号を受信し、前記信号に基づいて被検体内の空間的に離間した断面を撮像した第1の超音波画像群のデータを生成する第1画像生成部と、
前記第1の超音波画像群のうち代表超音波画像において、輝度値が大きく変化する第1の境界を自動的に設定する領域設定部と、
前記代表超音波画像から順に前後の超音波画像を比較し、前記領域設定部が設定した前記第1の境界に基づき、前記第1の超音波画像群の各々において、前記第1の境界に対応する第2の境界を自動的に検出する境界検出部と、
前記第1の境界及び前記第2の境界の外部の画素を消去した第2の超音波画像群のデータを生成する第2画像生成部と、
前記第2の超音波画像群の各々における各画素の輝度値の大小関係を入れ換える輝度値変換部と、
を備えることを特徴とする超音波観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の特性を観察するために、超音波を用いて生成された超音波画像を用いることがある。超音波画像は、超音波振動子が受信した生体組織からの超音波信号に対して、超音波観測装置が画像処理を施すことにより生成される。
【0003】
近年、超音波信号の輝度値を反転させることにより、輝度値が低い血管等を視認しやすくする体外式の超音波観測システムが知られている(例えば、特許文献1~3を参照)。体外式の超音波観測システムでは、超音波振動子を備えた超音波プローブを被検体の体表に接触させ、超音波の送受信を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-79821号公報
【文献】特開2005-192900号公報
【文献】特開2005-342516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検体に挿入される挿入部の先端に超音波を送受信する超音波振動子が配置されている超音波内視鏡を備えた超音波観測システムにおいても、血管等の観察対象がより観察しやすい超音波観測システムが求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、観察対象がより観察しやすい超音波観測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、被検体に挿入される挿入部の先端に超音波を送受信する超音波振動子が配置されている超音波内視鏡と、前記超音波振動子が受信した信号に基づいて前記被検体内の超音波画像のデータを生成する画像生成部と、前記超音波画像における各画素の輝度値の大小関係を入れ換える輝度値変換部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、前記超音波画像を合成することにより3次元超音波画像のデータを生成する3次元画像生成部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、前記輝度値変換部は、前記輝度値の大小関係を入れ換えた後に閾値以下の輝度値をゼロにすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、前記画像生成部は、前記3次元超音波画像における任意の断面の2次元断面画像のデータを生成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、前記超音波画像、前記超音波画像を合成した3次元超音波画像、又は前記輝度値の大小関係を入れ換えた超音波画像を合成した前記3次元超音波画像を表示装置に表示させる表示制御部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、表示装置に表示された前記被検体において指定された2点間の距離を算出する距離算出部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、前記画像生成部が生成した前記超音波画像のデータより、輝度値が大きく変化する境界を自動的に検出する領域設定部を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、前記領域設定部が設定した前記境界に基づき、前記画像生成部で生成された複数の前記超音波画像の各々の境界を自動的に検出する境界検出部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、前記画像生成部は、前記領域設定部が設定した前記境界に基づいて設定された関心領域の外部を消去した画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、観察対象がより観察しやすい超音波観測システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る超音波観測システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す超音波観測システムの処理を示すフローチャートである。
図3図3は、所定の領域の超音波画像を取得する様子を表す図である。
図4図4は、生成した超音波画像群を表す図である。
図5図5は、選択した代表となる超音波画像の一例を示す図である。
図6図6は、第1関心領域を設定する様子を表す図である。
図7図7は、第2関心領域を設定する様子を表す図である。
図8図8は、第2関心領域を設定する様子を表す図である。
図9図9は、各境界を強調表示する様子を表す図である。
図10図10は、第1関心領域の外部を消去した様子を表す図である。
図11図11は、3次元超音波画像の一例を表す図である。
図12図12は、第1関心領域を消去した様子を表す図である。
図13図13は、第1関心領域を消去した様子を表す図である。
図14図14は、輝度値の大小関係を入れ換えた様子を表す図である。
図15図15は、輝度値を入れ換えた3次元超音波画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明に係る超音波観測システムの実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。本発明は、被検体に挿入される挿入部の先端に超音波を送受信する超音波振動子が配置されている超音波内視鏡を備えた超音波観測システム一般に適用することができる。
【0019】
また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0020】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る超音波観測システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、超音波観測システム1は、観測対象である被検体へ超音波を送信し、該被検体で反射された超音波を受信する超音波内視鏡2と、超音波内視鏡2が取得した超音波信号に基づいて超音波画像を生成する超音波観測装置3と、超音波観測装置3が生成した超音波画像を表示する表示装置4と、を備える。
【0021】
超音波内視鏡2は、被検体に挿入される挿入部の先端に超音波を送受信する超音波振動子21が配置されている。超音波振動子21は、超音波観測装置3から受信した電気的なパルス信号を超音波パルス(音響パルス)に変換して被検体へ照射するとともに、被検体で反射された超音波エコーを電圧変化で表現する電気的なエコー信号(超音波信号)に変換して出力する超音波振動子21を有する。超音波振動子21は、例えばコンベックス型であるが、ラジアル型又はリニア型であってもよい。また、超音波内視鏡2は、超音波振動子21をメカ的に走査させるものであってもよいし、超音波振動子21として複数の素子をアレイ状に設け、送受信にかかわる素子を電子的に切り替えたり、各素子の送受信に遅延をかけたりすることで、電子的に走査させるものであってもよい。
【0022】
超音波内視鏡2は、通常は撮像光学系及び撮像素子を有する撮像部を備えており、被検体の消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)、又は呼吸器(気管、気管支)へ挿入され、消化管、呼吸器やその周囲臓器(膵臓、胆嚢、胆管、胆道、リンパ節、縦隔臓器、血管等)を撮像することが可能である。また、超音波内視鏡2は、撮像時に被検体へ照射する照明光を導くライトガイドを有する。このライトガイドは、先端部が超音波内視鏡2の被検体への挿入部の先端まで達している一方、基端部が照明光を発生する光源装置に接続されている。なお、超音波内視鏡2は、撮像部を備えていない構成であってもよい。
【0023】
超音波観測装置3は、送受信部31と、信号処理部32と、画像生成部33と、領域設定部34と、境界検出部35と、輝度値変換部36と、3次元画像生成部(以下において、3D画像生成部と記載する)37と、距離算出部38と、表示制御部39と、制御部40と、記憶部41と、を備える。
【0024】
送受信部31は、撮像部及び超音波振動子21との間で電気信号の送受信を行う。送受信部31は、撮像部と電気的に接続され、撮像タイミング等の撮像情報を撮像部に送信するとともに、撮像部が生成した撮像信号を受信する。また、送受信部31は、超音波振動子21と電気的に接続され、電気的なパルス信号を超音波振動子21へ送信するとともに、超音波振動子21から電気的な受信信号であるエコー信号を受信する。具体的には、送受信部31は、予め設定された波形及び送信タイミングに基づいて電気的なパルス信号を生成し、この生成したパルス信号を超音波振動子21へ送信する。
【0025】
送受信部31は、エコー信号を増幅する。送受信部31は、受信深度が大きいエコー信号ほど高い増幅率で増幅するSTC(Sensitivity Time Control)補正を行う。なお、深度とは、超音波画像における各画素の超音波振動子21からの距離に相当する。送受信部31は、増幅後のエコー信号に対してフィルタリング等の処理を施した後、A/D変換することによって時間ドメインのデジタル高周波(RF:Radio Frequency)信号(以下、RFデータともいう)を生成して出力する。
【0026】
信号処理部32は、送受信部31から受信したRFデータをもとにデジタルのBモード用受信データを生成する。具体的には、信号処理部32は、RFデータに対してバンドパスフィルタ、包絡線検波、対数変換等公知の処理を施し、デジタルのBモード用受信データを生成する。対数変換では、RFデータを基準電圧で除した量の常用対数をとってデシベル値で表現する。信号処理部32は、生成したBモード用受信データを、画像生成部33へ出力する。信号処理部32は、CPU(Central Processing Unit)や各種演算回路等を用いて実現される。
【0027】
画像生成部33は、信号処理部32から受信したBモード用受信データに基づいて超音波画像のデータを生成する。超音波画像は、超音波内視鏡2の挿入部の長手方向に直交する断面を撮像した断面画像である。画像生成部33は、Bモード用受信データに対してゲイン処理、コントラスト処理等の公知の技術を用いた画像処理を行うとともに、表示装置4における画像の表示レンジに応じて定まるデータステップ幅に応じたデータの間引き等を行うことによって超音波画像のデータであるBモード画像データを生成する。Bモード画像は、色空間としてRGB表色系を採用した場合の変数であるR(赤)、G(緑)、B(青)の値を一致させたグレースケール画像である。超音波画像において、RGBの値が輝度値であり、輝度値が大きい部分は白く、輝度値が小さい部分は黒く表現される。
【0028】
画像生成部33は、信号処理部32からのBモード用受信データに対して走査範囲を空間的に正しく表現できるよう並べ直す座標変換を施した後、Bモード用受信データ間の補間処理を施すことによってBモード用受信データ間の空隙を埋め、Bモード画像データを生成する。
【0029】
また、画像生成部33は、3D画像生成部37が生成した3次元超音波画像における任意の断面の2次元断面画像のデータを生成する。画像生成部33は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0030】
領域設定部34は、超音波画像群からユーザが選択した代表となる画像内に、ユーザの入力に応じて、後述する第1関心領域及び第2関心領域を設定する。領域設定部34は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0031】
境界検出部35は、第1関心領域と外部との境界、及び第1関心領域と第2関心領域との境界を検出する。境界検出部35は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0032】
輝度値変換部36は、超音波画像における各画素の輝度値の大小関係を入れ換える。また、輝度値変換部36は、輝度値の大小関係を入れ換えた後に閾値以下の輝度値をゼロにする。具体的には、輝度値変換部36は、超音波画像における各画素に対して、輝度値の大小関係を反転させるネガポジ変換を行い、変換後の画像の輝度値が閾値以下の部分の輝度値をゼロにする。なお、輝度値をゼロにすることは、超音波画像において、その部分の画像を消去することに相当する。また、輝度値変換部36は、超音波画像における各画素の輝度値の大小関係を適切に入れ換えればよく、輝度値の低い側においてより輝度値の差が画面上の明るさの差に反映されるように重み付けを行って輝度値の大小関係を入れ換えてもよい。輝度値変換部36は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0033】
3D画像生成部37は、超音波画像を合成することにより3次元超音波画像のデータを生成する。3D画像生成部37は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0034】
距離算出部38は、表示装置4に表示された被検体において指定された2点間の距離を算出する。距離算出部38は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0035】
表示制御部39は、超音波画像、超音波画像を合成した3次元超音波画像、又は輝度値の大小関係を入れ換えた超音波画像を合成した3次元超音波画像を表示装置4に表示させる。具体的には、表示制御部39は、撮像信号に基づく内視鏡画像のデータ、電気的なエコー信号に対応する超音波画像のデータ、及び超音波画像を合成した3次元超音波画像のデータの生成を行う。さらに、表示制御部39は、内視鏡画像のデータ及び超音波画像のデータに種々の情報を重畳して出力し、表示装置4の表示を制御する。表示制御部39は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0036】
制御部40は、超音波観測システム1全体を制御する。制御部40は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。制御部40は、記憶部41が記憶、格納する情報を記憶部41から読み出し、超音波観測装置3の作動方法に関連した各種演算処理を実行することによって超音波観測装置3を統括して制御する。なお、制御部40を信号処理部32、画像生成部33、領域設定部34、境界検出部35、輝度値変換部36と3D画像生成部37、距離算出部38、表示制御部39等と共通のCPU等を用いて構成することも可能である。
【0037】
記憶部41は、超音波観測システム1を処理させるための各種プログラム、及び超音波観測システム1の処理に必要な各種パラメータ等を含むデータ等を記憶する。記憶部41は、例えば、超音波画像の書出し位置(超音波の送信開始位置)の初期位置(音線番号)を記憶している。
【0038】
また、記憶部41は、超音波観測システム1の作動方法を実行するための作動プログラムを含む各種プログラムを記憶する。作動プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶して広く流通させることも可能である。なお、上述した各種プログラムは、通信ネットワークを介してダウンロードすることによって取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等によって実現されるものであり、有線、無線を問わない。
【0039】
以上の構成を有する記憶部41は、各種プログラム等が予めインストールされたROM(Read Only Memory)、及び各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を用いて実現される。
【0040】
表示装置4は、超音波観測装置3に接続されている。表示装置4は、液晶又は有機EL(Electro Luminescence)等からなる表示パネルを用いて構成される。表示装置4は、例えば、超音波観測装置3が出力する超音波画像や、操作にかかる各種情報を表示する。
【0041】
次に、超音波観測システム1の処理について詳細に説明する。図2は、図1に示す超音波観測システムの処理を示すフローチャートである。図2に示すように、画像生成部33は、所望の領域の超音波画像のデータを生成する(ステップS1)。図3は、所定の領域の超音波画像を取得する様子を表す図である。図3に示すように、超音波内視鏡2の挿入部を長手方向Aに沿って動かして、例えばすい臓Pを含む領域の超音波画像を取得する。なお、超音波内視鏡2の挿入部を手動で動かしてもよいが、超音波振動子21をメカ的又は電子的にヘリカルに走査してもよい。超音波内視鏡2の挿入部の移動にともなって、画像生成部33は、順次方向Aに直交する段面の画像である超音波画像を生成し、すい臓Pを包括する超音波画像群のデータを生成する。図4は、生成した超音波画像群を表す図である。図4に示すように、超音波内視鏡2の挿入部の移動する方向Aに沿って、順次超音波画像Bn-3、Bn-2、Bn-1、Bnが生成される。生成された超音波画像群のデータは、順次記憶部41に記憶される。
【0042】
超音波画像群のデータが生成されると、ユーザは、超音波画像群から代表となる超音波画像を選択する(ステップS2)。具体的には、例えばすい臓を観察する場合、ユーザは、表示装置4に表示された超音波画像群を観察し、すい臓やすい管が鮮明に写っている超音波画像を代表となる超音波画像として選択する。図5は、選択した代表となる超音波画像の一例を示す図である。図5に示すように、m番目の超音波画像である超音波画像Bmが代表となる画像に選択されたとする。超音波画像Bmには、例えばすい臓Pとすい管Dとが含まれている。
【0043】
領域設定部34は、選択した超音波画像Bm内に第1関心領域を設定する(ステップS3)。図6は、第1関心領域を設定する様子を表す図である。図6に示すように、ユーザは、超音波画像Bm内に第1関心領域R1を設定する。具体的には、ユーザが第1関心領域として設定する領域に含まれる画素を選択し、領域設定部34は、ユーザが選択した画素を含む領域の輝度値が大きく変化する境界を自動的に検出して第1関心領域R1を設定する。なお、ユーザによる入力はマウスやトラックボール、タッチパッド等の入力装置により行われる。また、ユーザが第1関心領域として設定する領域を選択し、領域設定部34は、ユーザが設定した領域の輝度値の平均値に対して、輝度値が大きく変化する境界を自動的に検出することにより、ユーザが選択した領域を補正して第1関心領域R1を設定してもよい。なお、領域設定部34は、自動学習機能を用いて、例えばすい臓Pに対応する領域を第1関心領域R1として、自動的に設定してもよい。さらに、領域設定部34は、自動的に設定した領域をユーザが補正した場合、この補正を記憶して次回の領域設定に反映させる機能を有していてもよい。
【0044】
続いて、領域設定部34は、第2関心領域を設定する(ステップS4)。図7図8は、第2関心領域を設定する様子を表す図である。図7に示すように、ユーザは、超音波画像Bm内に第2関心領域R2を設定する。具体的には、ユーザが第2関心領域として設定する領域に含まれる画素を選択し、領域設定部34は、ユーザが選択した画素を含む領域の輝度値が大きく変化する境界を自動的に検出して第2関心領域R2を設定する。また、ユーザが第2関心領域として設定する領域を選択し、領域設定部34は、ユーザが設定した領域の輝度値の平均値に対して、輝度値が大きく変化する境界を自動的に検出することにより、ユーザが選択した領域を補正して第2関心領域R2を設定してもよい。なお、図8に示すように、超音波画像Bmにすい管Dに対応する領域とのう胞に対応する領域との2つが含まれる場合、ユーザはこの2つの領域をそれぞれ第2関心領域R2として設定してもよい。また、領域設定部34は、自動学習機能を用いて、例えばすい管Dやのう胞に対応する領域を第2関心領域R2として、自動的に設定してもよい。さらに、領域設定部34は、自動的に設定した第2関心領域R2をユーザが補正した場合、この補正を記憶して次回の領域設定に反映させる機能を有していてもよい。
【0045】
境界検出部35は、前後の超音波画像を比較して各超音波画像の各領域の境界を検出する(ステップS5)。具体的には、境界検出部35は、選択した超音波画像Bmの前後の超音波画像から順に前後の超音波画像を比較し、各超音波画像の第1関心領域R1と第1関心領域R1の外部との境界、第1関心領域R1と第2関心領域R2との境界を自動的に検出する。なお、境界検出部35は、自動学習機能を用いてこれらの境界を検出してもよい。さらに、境界検出部35は、自動的に検出した境界をユーザが補正した場合、この補正を記憶して次回の境界検出に反映させる機能を有していてもよい。
【0046】
表示制御部39は、各超音波画像において境界を強調表示して表示装置4に表示させる(ステップS6)。具体的には、表示制御部39は、各超音波画像において、境界検出部35が検出した第1関心領域R1と第1関心領域R1の外部との境界、第1関心領域R1と第2関心領域R2との境界を強調表示して表示装置4に表示させる。図9は、各境界を強調表示する様子を表す図である。図9に示すように、表示制御部39は、各超音波画像において、境界検出部35が検出した第1関心領域R1と第1関心領域R1の外部との境界、第1関心領域R1と第2関心領域R2との境界を、線の太さや線種、色等により強調表示して表示装置4に表示させる。
【0047】
画像生成部33は、各超音波画像の第1関心領域R1の外部を消去した画像を生成する(ステップS7)。図10は、第1関心領域の外部を消去した様子を表す図である。図10に示すように、画像生成部33は、各超音波画像の第1関心領域R1の外部を消去してすい臓等の対象臓器のみを残した画像を生成する。その結果、対象臓器を観察しやすくすることができる。なお、3D画像生成部37は、各超音波画像の第1関心領域R1の外部を消去した画像を合成することにより3次元超音波画像を生成してもよい。図11は、3次元超音波画像の一例を表す図である。図11に示すように、3次元超音波画像Im1により、例えばすい臓Pである対象臓器の形状を観察することができる。
【0048】
画像生成部33は、各超音波画像の第1関心領域R1を消去した画像を生成する(ステップS8)。図12図13は、第1関心領域を消去した様子を表す図である。図12に示すように、画像生成部33は、各超音波画像の第1関心領域R1を消去してすい管D等の観察対象のみを残した画像を生成する。その結果、観察対象を観察しやすくすることができる。また、図8に示すように、のう胞に対応する領域を第2関心領域R2に設定した場合、図13に示すように、画像生成部33は、各超音波画像の第1関心領域R1を消去してすい管Dとのう胞とを含む観察対象のみを残した画像を生成する。
【0049】
輝度値変換部36は、超音波画像における各画素の輝度値の大小関係を入れ換える(ステップS9)。図14は、輝度値の大小関係を入れ換えた様子を表す図である。図14に示すように、輝度値変換部36は、超音波画像における各画素に対して、輝度値の大小関係を反転させるネガポジ変換を行う。その結果、すい管Dやのう胞に対応する、本来は輝度値が低くて見えづらい領域を観察しやすくすることができる。
【0050】
3D画像生成部37は、超音波画像を合成して3次元超音波画像を生成する(ステップS10)。図15は、輝度値を入れ換えた3次元超音波画像の一例を示す図である。図15に示すように、3次元超音波画像Im2には、すい管Dやのう胞T、腫瘍性すいのう胞Iが含まれる。
【0051】
そして、表示制御部39は、表示装置4に3次元超音波画像を表示させる(ステップS11)。
【0052】
以上説明したように、実施の形態によれば、すい管Dやのう胞T、腫瘍性すいのう胞I等の観察対象をより観察しやすくすることができる。
【0053】
超音波画像において、すい管Dやのう胞T、腫瘍性すいのう胞I等は、本来輝度値が低く観察しにくい部分であるが、超音波観測システム1では、ネガポジ変換を行っているため、これらの観察対象が観察しやすい。また、従来の超音波観測システムでは図11に示す3次元超音波画像Im1のようにすい臓Pの外表面しか観察できなかったが、超音波観測システム1では、第1関心領域R1の外部、及び第1関心領域R1を削除しているため、図15に示す3次元超音波画像Im2のようにすい管Dやのう胞T、腫瘍性すいのう胞Iを観察することができる。なお、図15に示すように、第1関心領域R1と外部との境界であるすい臓Pを破線等により表示してもよい。図15を観察すると、のう胞Tによりすい管Dが圧迫されることにより、のう胞Tより右側において主すい管拡張がおきていることが容易に視認できる。
【0054】
なお、上述したフローチャートでは、第1関心領域R1の外部を削除し、第1関心領域R1を削除し、ネガポジ変換を行う例を説明したが、処理の順番はこれに限られない。例えば、ネガポジ変換を行った後に、変換後の画像の輝度値が閾値以下の部分を切り捨てることにより、第1関心領域R1の外部や第1関心領域R1を削除してもよい。この場合、第1関心領域R1と第1関心領域R1の外部との境界、第1関心領域R1と第2関心領域R2との境界の検出を行わなくてもよい。
【0055】
なお、上述した実施の形態では、輝度値変換部36が輝度値の大小関係を入れ換えた後に閾値以下の輝度値をゼロにする例を示したがこれに限られない。輝度値変換部36は、輝度値の大小関係を入れ換えた後に閾値以下の輝度値を十分に小さい所定の値とし、この部分が透過性を有することにより、内部の構造が視認できるようにしてもよい。この場合、すい臓Pの形状を視認することができ、すい管Dやのう胞T、腫瘍性すいのう胞I等の観察対象も視認することができる。
【0056】
また、超音波内視鏡として、内視鏡の処置具チャンネルに挿通可能なミニチュアプローブを用いる構成であってもよい。
【0057】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表し、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施の形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 超音波観測システム
2 超音波内視鏡
3 超音波観測装置
4 表示装置
21 超音波振動子
31 送受信部
32 信号処理部
33 画像生成部
34 領域設定部
35 境界検出部
36 輝度値変換部
37 3D画像生成部
38 距離算出部
39 表示制御部
40 制御部
41 記憶部
図1
図2
図3
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図5
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