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特許7161552課金装置、料金収受システム、課金方法、プログラム、及び、料金収受システムの製造方法
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  • 特許-課金装置、料金収受システム、課金方法、プログラム、及び、料金収受システムの製造方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】課金装置、料金収受システム、課金方法、プログラム、及び、料金収受システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20221019BHJP
   G07B 15/06 20110101ALI20221019BHJP
【FI】
G07B15/00 510
G07B15/06
G07B15/00 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020570333
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004700
(87)【国際公開番号】W WO2020161908
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】舛元 伸一
(72)【発明者】
【氏名】内田 研
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 一欽
【審査官】葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-062722(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094067(WO,A1)
【文献】特開2011-237943(JP,A)
【文献】特開2013-045204(JP,A)
【文献】特開2008-182566(JP,A)
【文献】特開2014-131236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0263207(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0063872(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0245126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 15/00-15/06
G08G 1/00- 1/16
H04B 1/00, 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ装置を介して、車線上の無線通信可能領域に応答要求信号を繰り返し発信する発信部と、
前記リーダ装置が前記応答要求信号に対する応答として受信した情報であって、車両に付された情報記録媒体に記録された識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記無線通信可能領域内に存在する車両を検知可能に配置された車両検知器から車両検知信号を取得する車両検知信号取得部と、
複数回取得した前記識別情報のうち前記車両検知信号を取得したタイミングを基準とする所定期間内に取得した識別情報を特定する識別情報特定部と、
特定された前記識別情報に基づいて課金処理を行う課金処理部と、
を備える課金装置。
【請求項2】
前記課金処理部は、前記識別情報が特定されなかった場合に、前記車線に設置された料金収受機を通じて課金処理を行う
請求項1に記載の課金装置。
【請求項3】
前記車両検知信号取得部は、前記無線通信可能領域内に存在する車両を検知可能に配置された二つの車両検知器の各々から車両検知信号を取得し、
前記識別情報特定部は、前記二つの車両検知器の各々から予め定められた順序で車両検知信号を取得した場合に、前記識別情報を特定する
請求項1又は請求項2に記載の課金装置。
【請求項4】
前記課金処理が完了した場合に、発進制御機を開制御する開閉制御部を更に備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の課金装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の課金装置と、
前記車両検知器と、
を備える料金収受システム。
【請求項6】
リーダ装置を介して車線上の無線通信可能領域に応答要求信号を繰り返し発信するステップと、
前記リーダ装置が前記応答要求信号に対する応答として受信した情報であって、車両に付された情報記録媒体に記録された識別情報を取得するステップと、
前記無線通信可能領域内に存在する車両を検知可能に配置された車両検知器から車両検知信号を取得するステップと、
複数回取得した前記識別情報のうち前記車両検知信号を取得したタイミングを基準とする所定期間内に取得した識別情報を特定するステップと、
特定された前記識別情報に基づいて課金処理を行うステップと、
を有する課金方法。
【請求項7】
課金装置のコンピュータに、
リーダ装置を介して、車線上の無線通信可能領域に応答要求信号を繰り返し発信するステップと、
前記リーダ装置が前記応答要求信号に対する応答として受信した情報であって、車両に付された情報記録媒体に記録された識別情報を取得するステップと、
前記無線通信可能領域内に存在する車両を検知可能に配置された車両検知器から車両検知信号を取得するステップと、
複数回取得した前記識別情報のうち前記車両検知信号を取得したタイミングを基準とする所定期間内に取得した識別情報を特定するステップと、
特定された前記識別情報に基づいて課金処理を行うステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項8】
車線上の所定位置に存在する車両を検知可能に配置された車両検知器を具備する既設の料金収受システムに対し、
前記車線上に形成される無線通信可能領域が前記所定位置を含むように、リーダ装置を追設するステップと、
前記リーダ装置を介して前記無線通信可能領域に応答要求信号を繰り返し発信する発信部と、前記リーダ装置が前記応答要求信号に対する応答として受信した情報であって、車両に付された情報記録媒体に記録された識別情報を取得する識別情報取得部と、前記車両検知器から車両検知信号を取得する車両検知信号取得部と、複数回取得した前記識別情報のうち前記車両検知信号を取得したタイミングを基準とする所定期間内に取得した識別情報を特定する識別情報特定部と、を追設するステップと、
を有する料金収受システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、課金装置、料金収受システム、課金方法、プログラム、及び、料金収受システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有料道路における料金所では、車線に設置されたRFIDのリーダ装置と、車線を走行する車両に付されたRFIDタグとの間で無線通信による情報のやり取りを行い、必要な料金を収受する料金収受システムが利用されている場合がある。
【0003】
このような料金収受システムでは、無線通信に利用する周波数帯によっては、路面や設置物等で電波が反射するなどして、料金収受の対象とする車両(以下、「対象車両」とも記載する。)以外の車両(対象車両の後続車両、他の車線を走行する車両等)との誤通信を引き起こしてしまう可能性がある。
【0004】
特許文献1には、車両検知器で車両が通信可能領域にあることを識別することで、対向車線からの通信に対し課金しないように制御する道路料金システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-222726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、誤課金が発生しにくい料金収受システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、課金装置(10)は、リーダ装置(15)を介して、車線(L)上の無線通信可能領域(Q)に応答要求信号を繰り返し発信する発信部(1000)と、前記リーダ装置が前記応答要求信号に対する応答として受信した情報であって、車両(A)に付された情報記録媒体(TG)に記録された識別情報を取得する識別情報取得部(1001)と、前記無線通信可能領域内に存在する車両を検知可能に配置された車両検知器(11A、11B)から車両検知信号(D1A、D1B)を取得する車両検知信号取得部(1002)と、複数回取得した前記識別情報のうち前記車両検知信号を取得したタイミングを基準とする所定期間内に取得した識別情報を特定する識別情報特定部(1003)と、特定された前記識別情報に基づいて課金処理を行う課金処理部(1004)と、を備える。
このようにすることで、複数回取得された識別情報のうち、課金対象とする車両が無線通信可能領域内に確実に存在するタイミングとほぼ同時刻に取得した識別情報を、その車両に付された情報記録媒体の識別情報であると推定して課金処理を行うことができる。課金対象とする車両が無線通信可能領域内に確実に存在するタイミングとほぼ同時刻に取得した識別情報を、その車両に付された情報記録媒体の識別情報であると推定することで、課金対象とする車両(車線の無線通信可能領域内に存在する車両)から正しく課金できる可能性を高めることができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様によれば、前記課金処理部は、前記識別情報が特定されなかった場合に、前記車線に設置された料金収受機(12)を通じて課金処理を行う。
このようにすることで、情報記録媒体を付していない車両や、情報記録媒体に不具合がある車両に対しては、料金収受機を介して課金することができる。
【0009】
また、本発明の第3の態様によれば、前記車両検知信号取得部は、前記無線通信可能領域内に存在する車両を検知可能に配置された二つの車両検知器(11A、11B)の各々から車両検知信号(D1A、D1B)を取得し、前記識別情報特定部は、前記二つの車両検知器の各々から予め定められた順序で車両検知信号を取得した場合に、前記識別情報を特定する。
このように、二つの車両検知信号の順番を判定条件とすることで、車両が正しく進入した場合のみ課金処理を行うことができる。
【0010】
また、本発明の第4の態様によれば、上述の課金装置は、前記課金処理が完了した場合に、発進制御機を開制御する開閉制御部(1005)を更に備える。
このようにすることで、リーダ装置を介して読み取られた識別情報による課金処理が完了した場合に、直ちに発進制御機を開制御させ、課金対象の車両を車線から退出させることができる。
【0011】
また、本発明の第5の態様によれば、料金収受システム(1)は、上述の課金装置と、前記車両検知器と、を備える。
【0012】
また、本発明の第6の態様によれば、課金方法は、リーダ装置を介して車線上の無線通信可能領域に応答要求信号を繰り返し発信するステップと、前記リーダ装置が前記応答要求信号に対する応答として受信した情報であって、車両に付された情報記録媒体に記録された識別情報を取得するステップと、前記無線通信可能領域内に存在する車両を検知可能に配置された車両検知器から車両検知信号を取得するステップと、複数回取得した前記識別情報のうち前記車両検知信号を取得したタイミングを基準とする所定期間内に取得した識別情報を特定するステップと、特定された前記識別情報に基づいて課金処理を行うステップと、を有する。
【0013】
また、本発明の第7の態様によれば、プログラムは、課金装置のコンピュータに、リーダ装置を介して、車線上の無線通信可能領域に応答要求信号を繰り返し発信するステップと、前記リーダ装置が前記応答要求信号に対する応答として受信した情報であって、車両に付された情報記録媒体に記録された識別情報を取得するステップと、前記無線通信可能領域内に存在する車両を検知可能に配置された車両検知器から車両検知信号を取得するステップと、複数回取得した前記識別情報のうち前記車両検知信号を取得したタイミングを基準とする所定期間内に取得した識別情報を特定するステップと、特定された前記識別情報に基づいて課金処理を行うステップと、を実行させる。
【0014】
また、本発明の第8の態様によれば、料金収受システムの製造方法は、車線上の所定位置に存在する車両を検知可能に配置された車両検知器を具備する既設の料金収受システムに対し、前記車線上に形成される無線通信可能領域が前記所定位置を含むように、リーダ装置を追設するステップと、前記リーダ装置を介して前記無線通信可能領域に応答要求信号を繰り返し発信する発信部と、前記リーダ装置が前記応答要求信号に対する応答として受信した情報であって、車両に付された情報記録媒体に記録された識別情報を取得する識別情報取得部と、前記車両検知器から車両検知信号を取得する車両検知信号取得部と、複数回取得した前記識別情報のうち前記車両検知信号を取得したタイミングを基準とする所定期間内に取得した識別情報を特定する識別情報特定部と、を追設するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
上述の課金装置、料金収受システム、課金方法、プログラム、及び料金収受システムの製造方法によれば、誤課金の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】第1の実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す図である。
図1B】第1の実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る料金収受システムの機能構成を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る車線制御装置の処理フローを示す図である。
図4】第1の実施形態に係る車線制御装置の処理の内容を詳しく説明するための図である。
図5】第1の実施形態に係る車線制御装置の処理の内容を詳しく説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、図1A図5を参照しながら、第1の実施形態に係る料金収受システムについて詳細に説明する。
【0018】
(料金収受システムの全体構成)
図1A図1Bは、第1の実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す図である。
図1に示す料金収受システム1は、例えば、有料道路の料金所(入口料金所または出口料金所)に設置される。図1に示すように、料金収受システム1は、料金所の車線Lと、当該車線Lの路側に敷設されたアイランドIに設置されている。
なお、以下の説明では、車線Lが延在する方向(図1A図1Bにおける±X方向)を「車線方向」とも記載し、車線方向に対し水平に直交する方向(図1における±Y方向)を「車線幅方向」とも記載する。また、車線Lの車線方向において車両Aが到来する側(-X方向側)を車線Lの「上流側」とも記載し、車両Aが退出する側(+X方向側)を車線Lの「下流側」とも記載する。また、車両Aが走行する方向(+X方向)を基準に、その右側(-Y方向側)を「車線幅方向右側」とも記載し、その左側(+Y方向側)を「車線幅方向左側」とも記載する。
【0019】
車線Lの車線幅は、アイランドIによって車線L内において車両の入れ替わり(追い抜き等)ができないように調整されている。
【0020】
図1A図1Bに示すように、料金収受システム1は、車線制御装置10と、車両検知器11A、11Bと、料金収受機12と、発進制御機13と、車両検知器14と、リーダ装置15とを有してなる。
【0021】
車線制御装置10(課金装置)は、各種設置機器の全体を制御することで、車線Lに進入した車両Aの搭乗者に対する課金処理を行う。車線制御装置10が行う具体的な処理については後述する。
【0022】
車両検知器11A、11Bは、車線Lの最も上流側(図1Aにおける車線方向の位置X1A、X1B)に設けられ、車両Aの車線Lへの進入を検知する。車両検知器11A、11Bは、主に、車線L上に存在する車両のキュー管理を行う目的で設置される。
車両検知器11A、11Bは、左側のアイランドIに配置されている投光塔と、右側のアイランドIに配置されている受光塔と、を有してなる透過型の車両検知器である。車両検知器11A、11Bは、投光塔の投光素子から投光された光を受光塔の受光素子が受光した否かに応じて、車両Aの存在を検知する。
車両検知器11Bは、車両検知器11Aよりもわずかに(例えば40cm程度)下流側に設けられる。これにより、車線制御装置10は、車両検知器11A及び車両検知器11Bの各々から出力される車両検知信号を取得した順番に基づいて、車両の前進・後退を判別することができる。
【0023】
料金収受機12は、車両検知器11A、11Bの下流側(図1Aにおける車線方向の位置X2)に設けられ、到来した車両Aに搭乗する利用者からの料金の支払いを受け付ける。具体的には、料金収受機12は、利用者が所持するプリペイド式のICカードのタッチを受け付けて金額の引き去り処理を行う。また、料金収受機12は、利用者からの現金の投入を受け付けて料金を収受する。
【0024】
発進制御機13は、料金収受機12の更に下流側に設けられ、車線Lに進入した車両Aの発進を制御する。具体的には、発進制御機13は、通常時においては開閉バーBを閉状態とし、車両Aの発進(車線Lからの退出)を制限する。また、発進制御機13は、車両Aに搭乗する利用者から料金の支払いを適正に受け付けた場合には開閉バーBを開状態とし、車両Aの発進を許可する。
【0025】
車両検知器14は、車線Lの最も下流側(図1Aにおける車線方向の位置X4)に設けられ、車両Aの車線Lからの退出を検知する。車両検知器14は、車両検知器11A、11Bと同様に、車線L上に存在する車両のキュー管理を行う目的で設置される。また、車両検知器14による車両検知信号が出力されている間は、発進制御機13の開閉バーBが閉状態とならないように制御される。これにより、発進制御機13の開閉バーBが退出中の車両と接触することが防止される。
【0026】
リーダ装置15は、無線通信を介して、車両Aに付されたRFIDタグ(以下、単に「タグ」とも記載する。)TGから、当該タグTGに記録されているタグIDを読み取る。タグIDとは、タグTGに記録されている情報であって、タグTGに関連付けられた有料道路の利用者を個々に識別可能な識別情報である。
図1A図1Bに示すように、リーダ装置15は、車線Lの上方に設置され、その設置位置から下方(車線Lの路面)に向けて電波を放射する。これにより、リーダ装置15は、車線L上の所定範囲に無線通信可能領域Qを形成する。リーダ装置15は、この無線通信可能領域Qの範囲内に存在するタグTGと無線通信を行ってタグIDを読み取ることができる。しかし、リーダ装置15が放射した電波が車体や設置機器の表面で反射するなどして、無線通信可能領域Qの範囲外に存在するタグ(例えば、車線Lの隣の車線を走行する車両に付されたタグ)のタグIDを読み取ってしまう場合もある。
図1A図1Bに示すように、リーダ装置15は、放射する電波によって車線L上に形成される無線通信可能領域Qが、車両検知器11A、11Bによる車両検知位置(車線方向の位置X1A、X1B)を含むように設置されている。
無線通信可能領域Qには同時に複数の車両が入らないような大きさに調整されている。例えば、無線通信可能領域Qの車線方向の長さは、1.5~2.5メートル程度に調整されるのが好ましい。これにより、ある車両の後方を走行する車両に付されたタグTGを先に読み取ってしまうことを防止することができる。
【0027】
(料金収受システムの機能構成)
図2は、第1の実施形態に係る料金収受システムの機能構成を示す図である。
図2に示すように、車線制御装置10は、CPU100と、通信インタフェース101と、メモリ102とを有している。
【0028】
CPU100は、予め用意されたプログラムに従って動作することで、各種機能を発揮する。CPU100の機能については後述する。
【0029】
通信インタフェース101は、料金収受システム1を構成する他の機器との通信用の接続インタフェースである。
【0030】
メモリ102は、いわゆる主記憶装置であって、CPU100が動作するために必要な情報を保持する記憶領域を提供する。メモリ102には、後述する取得識別情報テーブTBが記録される。
【0031】
CPU100の機能について詳しく説明する。
CPU100は、発信部1000、識別情報取得部1001、車両検知信号取得部1002、識別情報特定部1003、課金処理部1004及び開閉制御部1005としての機能を有する。
【0032】
発信部1000は、リーダ装置15を介して、車線L上の無線通信可能領域Qに応答要求信号を繰り返し発信する。
識別情報取得部1001は、リーダ装置15が応答要求信号に対する応答として受信したタグID(車両Aに付されたタグTGに記録されたタグID)を取得する。
識別情報特定部1003は、通信可能領域Qの範囲内に存在する車両を検知可能に配置された車両検知器11A、11Bから車両検知信号を取得する。
識別情報特定部1003は、複数回取得したタグIDのうち車両検知器11A、11Bからの車両検知信号を取得したタイミングを基準とする所定期間内に取得したタグIDを特定する。
課金処理部1004は、識別情報特定部1003によって特定されたタグIDに基づいて課金処理を行う。
開閉制御部1005は、課金処理部1004による課金処理が完了した場合に、発進制御機13を開制御する。また、開閉制御部1005は、車両検知器14による車両検知信号の出力が停止した場合(つまり、車両Aの車尾が位置X4を通過した場合)、発進制御機13を閉制御する。
【0033】
(車線制御装置の処理フロー)
図3は、第1の実施形態に係る車線制御装置の処理フローを示す図である。
図4図5は、第1の実施形態に係る車線制御装置の処理の内容を詳しく説明するための図である。
【0034】
第1の実施形態に係る車線制御装置10が実行する処理の流れについて、図3図5を参照しながら詳しく説明する。
【0035】
まず、車線制御装置10の発信部1000は、リーダ装置15を介して、無線通信可能領域Qに向けて応答要求信号を発信する(ステップS00)。
【0036】
車線制御装置10の識別情報取得部1001は、リーダ装置15を介して、ステップS00の応答要求信号に対するタグTGからの応答信号を受信したか否かを判定する(ステップS01)。
タグTGからの応答信号を受信した場合(ステップS01;YES)、識別情報取得部1001は、リーダ装置15を介して、当該応答信号に含まれるタグIDと、その取得時刻(タイムスタンプ)を取得識別情報テーブルTBに記録する(ステップS02)。タグTGからの応答信号を受信していない場合(ステップS01;NO)、車線制御装置10は、ステップS02の処理を行うことなく次のステップに進む。
【0037】
次に、車線制御装置10の車両検知信号取得部1002は、車両検知器11A、11Bの各々から、所定の順番(車両検知器11A、車両検知器11Bの順)で車両検知信号を取得したか否かを判定する(ステップS03)。
車両検知器11A、11Bの各々から所定の順番で車両検知信号を受け付けていない場合(ステップS03;NO)、車線制御装置10は、ステップS00に戻り、上記処理を繰り返し実行する。
【0038】
車両検知器11A、11Bの各々から所定の順番で車両検知信号を取得した場合(ステップS03;YES)、車線制御装置10の識別情報特定部1003は、この時点で取得識別情報テーブルTBに記録されている複数のタグIDのうちの一つを課金対象として特定する処理を行う。具体的には、識別情報特定部1003は、車両検知器11A、11Bの各々から所定の順番で車両検知信号を取得したタイミングから、予め定められた所定期間Δt前までの間に取得したタグIDが存在するか否かを判定する(ステップS04)。
車両検知器11A、11Bの各々から所定の順番で車両検知信号を取得したタイミングから所定期間Δt前までの間に取得したタグIDが存在する場合(ステップS04;YES)、識別情報特定部1003は、当該所定期間Δtの中で最も遅く取得したタグIDを課金対象として特定する(ステップS05)。
【0039】
車線制御装置10の課金処理部1004は、ステップS05で特定されたタグIDに基づいて課金処理を行う(ステップS06)。具体的には、課金処理部1004は、ステップS05で特定されたタグIDと課金額とを関連付けて上位装置に送信する。この上位装置には、タグIDと利用者に関する個人情報(例えば、口座番号等)とが関連付けられて記録されている。上位装置は、車線制御装置10からタグID及び課金額を受信すると、当該タグIDに紐づく個人情報を利用して、課金額の引き去り処理を行う。
【0040】
車両検知器11A、11Bの各々から所定の順番で車両検知信号を取得したタイミングから所定期間Δt前までの間に取得したタグIDが存在しない場合(ステップS04;NO)、車両検知器11A、11Bを通過した車両AのタグTGを正しく読み取ることができなかったか、又は、そもそも車両AがタグTGを付していないことが想定される。そこで、この場合、課金処理部1004は、車線Lに設置された料金収受機12を通じて課金処理を行う。
具体的には、課金処理部1004は、料金収受機12を有効化する。具体的には、課金処理部1004は、まず、料金収受機12での支払いに必要な情報(課金額等)を料金収受機12に送信する。課金処理部1004は、料金収受機12での支払が必要であることを車両Aの搭乗者等に通知する。例えば、課金処理部1004は、料金収受機12のスピーカやディスプレイを通じて、音声によるアナウンスや課金額等を示す案内表示を行う。
有効化された料金収受機12は、利用者からICカードのタッチ操作を待ち受ける状態、又は、利用者から現金の投入を待ち受ける状態となる。なお、他の実施形態に係る料金収受機12は、いつでも一定金額の収受を受け付けられる状態で待機し、車線制御装置10(課金処理部1004)からの信号ではなく、利用者からの操作をトリガとして料金収受してもよい。
続いて、課金処理部1004は、料金収受機12を通じた課金処理(ICカードに対する課金額の引き去り処理、投入された現金に対する処理)を行う(ステップS08)。
【0041】
タグIDによる課金処理(ステップS06)、又は、料金収受機12による課金処理(ステップS08)により課金処理が完了すると、開閉制御部1005は、発進制御機13を開制御する(ステップS09)。これにより、車両Aは、車線Lを退出することができる。
【0042】
次に、図4図5を参照しながら、図3の処理フローに基づく車線制御装置10の具体的な制御例について説明する。
図3のステップS00の処理が繰り返し実行されることで、リーダ装置15は、応答要求信号を繰り返し発信している、タグTGがこの応答要求信号を受信した場合には、直ちに応答信号Rを返信する。図4に示すタイミングチャートDRは、リーダ装置15が受信したタグTGからの応答信号Rの受信状況を時系列で示している。
なお、上述したように、リーダ装置15が受信する応答信号Rは、リーダ装置15が形成する無線通信可能領域Q内に存在するタグTGから受信したものとは限らない。リーダ装置15が放射する電波の反射等により、例えば、車線Lの隣の車線を走行する車両のタグからの応答信号を受信することも想定される。即ち、タイミングチャートDRに示す応答信号Rには、車線Lに進入した車両以外の車両に付されたタグからの応答信号も含まれている。
【0043】
車線制御装置10の識別情報取得部1001は、タイミングチャートDRに示される応答信号Rのそれぞれについて、図3のステップS01~ステップS02の処理により、各応答信号Rに含まれるタグIDと、その取得時刻とを関連付けて取得識別情報テーブルTBに記録する(図5参照)。
【0044】
また、図4に示す車両検知信号D1Aは車両検知器11Aから受信する車両検知信号である。また、図4に示す車両検知信号D1Bは、車両検知器11Bから受信する車両検知信号である。車両Aが車線Lに進入した場合、車両検知信号D1A→車両検知信号D1Bの順番で“ON”する。
【0045】
図3のステップS03の処理において、車両検知信号取得部1002は、車両検知信号D1A→車両検知信号D1Bの順番で“ON”したか否かを判定する。車両検知信号D1Aが時刻t1Aで“ON”し、続いて、車両検知信号D1Bの順番で“ON”した場合、車両検知信号取得部1002は、そのときの時刻t1Bを取得する。
この場合、車線制御装置10の識別情報特定部1003は、時刻t1Bから所定期間Δtだけ遡った時刻ta(=t1B-Δt)を算出する。そして、識別情報特定部1003は、図5の取得識別情報テーブルTBを参照して、各タグIDについて、その取得時刻が時刻ta~時刻t1Bの間に含まれているか否かを判定する。識別情報特定部1003は、取得時刻が時刻ta~時刻t1Bの間に含まれているタグIDを抽出する。取得時刻が時刻ta~時刻t1Bの間に含まれているタグIDが複数存在する場合は、識別情報特定部1003は、その中から最も遅く取得したタグID(図5に示す例では、“ID3”)を特定する。そうした場合、図3のステップS06の処理において、課金処理部1004は、ステップS05で特定されたタグID(“ID3”)と課金額とを関連付けて上位装置に送信する。
【0046】
なお、取得識別情報テーブルTBにおいて、時刻ta~時刻t1Bの間に取得されたタグIDが存在しなかった場合、識別情報特定部1003は、課金対象とするタグIDを特定することはできない(図3のステップS04;NO)。この場合、課金処理部1004は、料金収受機12を有効化して、当該料金収受機12を通じた課金処理を行う(図3のステップS07~ステップS08参照)。
【0047】
(作用・効果)
以上の通り、第1の実施形態に係る車線制御装置10(課金装置)は、リーダ装置15を介して車線L上の無線通信可能領域Qに応答要求信号を繰り返し発信する発信部1000と、リーダ装置15が応答要求信号に対する応答として受信した情報であって、車両Aに付されたタグTG(情報記録媒体)に記録されたタグID(識別情報)を取得する識別情報取得部1001と、通信可能領域Q内に存在する車両Aを検知可能に配置された車両検知器11A、11Bから車両検知信号を取得する車両検知信号取得部1002と、複数回取得したタグIDのうち車両検知信号を取得したタイミング(図4の時刻t1B)を基準とする所定期間内(図4の時刻ta~時刻t1Bの間)に取得したタグIDを特定する識別情報特定部1003と、識別情報特定部1003によって特定されたタグIDに基づいて課金処理を行う課金処理部1004と、を備える。
このようにすることで、複数回取得されたタグIDのうち、課金対象とする車両Aが無線通信可能領域Q内に確実に存在するタイミングとほぼ同時刻に取得したタグIDを、その車両Aに付されたタグTGのタグIDであると推定して課金処理を行うことができる。ここで、リーダ装置15は、異なる位置に複数のタグが存在した場合に、その中から最も強い応答信号に含まれるタグID(即ち、リーダ装置15に最も近いタグに記録されたタグID)を読み取りやすいという特性を有する。そのため、車両検知信号を取得したタイミングとほぼ同時刻に取得したタグIDは、その時点で無線通信可能領域Q内に存在する車両A(即ち、課金対象とする車両A)に付されたタグTGに記録されたタグIDである可能性が高い。したがって、課金対象とする車両Aが無線通信可能領域Q内に確実に存在するタイミングとほぼ同時刻に取得したタグIDを、その車両Aに付されたタグTGのタグIDであると推定することで、課金対象とする車両A(車線Lの無線通信可能領域Q内に存在する車両A)から正しく課金できる可能性を高めることができる。
以上より、第1の実施形態に係る車線制御装置10によれば、誤課金が発生しにくい料金収受システムを提供することができる。
【0048】
また、第1の実施形態に係る車線制御装置10(課金処理部1004)は、識別情報特定部1003によってタグIDが特定されなかった場合に、車線Lに設置された料金収受機12を通じて課金処理を行う(図3のステップS04;NO、ステップS07、ステップS08参照)。
このようにすることで、タグを付していない車両やタグに不具合がある車両に対しては、料金収受機12を介して課金することができる。
【0049】
また、第1の実施形態に係る車両検知信号取得部1002は、通信可能領域Q内に存在する車両を検知可能に配置された二つの車両検知器11A、11Bの各々から車両検知信号D1A、D1Bを取得する。そして、識別情報特定部1003は、当該二つの車両検知器11A、11Bの各々から予め定められた順序で車両検知信号を取得した場合に、タグIDを特定する。
このように、二つの車両検知信号の順番を判定条件とすることで、車両が正しく進入した場合のみ課金処理を行うことができる。
【0050】
また、第1の実施形態に係る開閉制御部1005は、課金処理が完了した場合に、発進制御機13を開制御する。
このようにすることで、リーダ装置15を介して読み取られたタグIDによる課金処理が完了した場合に、直ちに発進制御機13を開制御させ、車両Aを車線Lから退出させることができる。
【0051】
(第1の実施形態に係る料金収受システムの製造方法)
図1図2を参照しながら、第1の実施形態に係る料金収受システム1の製造方法について説明する。
【0052】
第1の実施形態に係る料金収受システム1は、既設の料金収受システムに対し、リーダ装置15等を追設することで製造してもよい。ここで、既設の料金収受システムは、車線制御装置10、車両検知器11A、11B、料金収受機12、発進制御機13及び車両検知器14を備えている。ただし、この段階では、車線制御装置10は、料金収受機12を通じた課金処理の機能を有するのみで、リーダ装置15を用いた課金処理に係る機能を有していない。
【0053】
料金収受システム1を製造するにあたり、作業者は、既設の料金収受システムに対し、車線L上に形成される無線通信可能領域Qが、車両検知器11A、11Bの検知位置(位置X1、X2)を含むように、リーダ装置15を追設する。
次に、作業者は、車線制御装置10に対し、発信部1000、識別情報取得部1001、車両検知信号取得部1002及び識別情報特定部1003としての機能を追加する。
【0054】
このようにすることで、第1の実施形態に係る料金収受システム1を安価かつ簡便に製造することができる。
【0055】
(変形例)
以上、第1の実施形態に係る料金収受システム1及び車線制御装置10について詳細に説明したが、料金収受システム1及び車線制御装置10の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
【0056】
例えば、第1の実施形態に係る識別情報特定部1003は、車両検知信号を取得した時刻t1Bから所定期間Δtだけ遡った時刻taまでの間に取得したタグIDを特定するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態に係る識別情報特定部1003は、時刻t1Bから所定期間Δtだけ経過した時刻(t1B+Δt)までの間に取得したタグIDを特定してもよい。また、他の実施形態に係る識別情報特定部1003は、時刻t1Bを含む所定幅(Δt)の期間(時刻t1B-Δt1~時刻t1B+Δt2、Δt1+Δt2=Δt)に取得したタグIDを特定してもよい。
【0057】
また、第1の実施形態に係る識別情報特定部1003は、所定期間Δtの間に複数のタグIDが取得されていた場合には、その中から最も遅く取得された一つのタグIDを特定するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。即ち、識別情報特定部1003は、所定期間Δtの間に取得されていた複数のタグIDの中からいずれか一つのタグIDを特定する機能を有していれば、その手法は如何なる態様であってもかまわない。
例えば、他の実施形態に係る識別情報特定部1003は、所定期間Δtの間に複数回タグIDが取得されていた場合には、その中から、同一のタグIDとして複数回取得されているタグIDを一つ特定してもよい。より具体的な一例としては、識別情報特定部1003は、所定期間Δtの間で取得されたタグIDのうち、同一のタグIDとして最も多く取得されている一つのタグIDを特定する。
このようにすることで、タグIDが複数回取得されたことを条件として、当該車線を走行していた車両のタグIDとみなすので、誤課金が発生する可能性を一層低減することができる。
【0058】
また、第1の実施形態に係る料金収受システム1は、車線Lの上流側に設置された二つの車両検知器11A、11Bに基づいて、車両の前後進判定を行う旨を説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。例えば、他の実施形態に係る料金収受システム1は、車線Lの上流側に一つの車両検知器のみを有し、更に、前後進判定については、他の路側機器(例えば、タイヤによる押圧を検知可能な踏板など)を用いて行う態様であってもよい。
【0059】
なお、上述した車線制御装置10(課金装置)における各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ500が読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0060】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
また、車線制御装置10(課金装置)は、1台のコンピュータで構成されていても良いし、通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
上述の課金装置、料金収受システム、課金方法、プログラム、及び料金収受システムの製造方法によれば、誤課金の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 料金収受システム
10 車線制御装置(課金装置)
100 CPU
101 通信インタフェース
102 メモリ
11A、11B 車両検知器
12 料金収受機
13 発進制御機
14 車両検知器
15 リーダ装置
TG タグ(情報記録媒体)
A 車両
B 開閉バー
L 車線
I アイランド
Q 無線通信可能領域
R 応答信号
TB 取得識別情報テーブル
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5