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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】複合成形体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
B29C45/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021072283
(22)【出願日】2021-04-22
(62)【分割の表示】P 2016240305の分割
【原出願日】2016-12-12
(65)【公開番号】P2021169212
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-04-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595138155
【氏名又は名称】ダイセルミライズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】板倉 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】片山 昌広
(72)【発明者】
【氏名】宇野 孝之
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120648(JP,A)
【文献】特公昭49-036166(JP,B1)
【文献】特開2013-052669(JP,A)
【文献】特表2016-514055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成形体の開口部が樹脂成形体によりシールされた複合成形体であって、
前記金属成形体が、内部に空間部を有し、前記空間部と接続された開口部を有する一つの金属成形体からなり、他の筒状の金属成形体と組み合わされていないものであり、
前記金属成形体の開口部の周囲の前記樹脂成形体との接合面が粗面化されており、前記粗面化された金属成形体の接合面が表面から平均深さ10~70μmの範囲に孔が形成された多孔構造を有しているものであり、
前記複合成形体が、前記金属成形体の開口部の前記接合面に形成された多孔構造内部に樹脂が入り込んだ状態で固まっていることで、前記金属成形体の開口部が前記樹脂成形体によりシールされているものであり、前記樹脂成形体に対して液体または気体による圧力が内側または外側から直接的に加えられた状態で使用されるものである、複合成形体。
【請求項2】
前記金属成形体が、内部に空間部を有し、前記空間部と接続された複数の開口部を有するもの、または
前記金属成形体が、内部に空間部を有し、前記空間部と接続された一つの開口部を有するものであり、
前記複数の開口部の内の一部の開口部が前記樹脂成形体でシールされているか、または前記金属成形体の一つの開口部が前記樹脂成形体でシールされているものである、請求項1記載の複合成形体。
【請求項3】
金属成形体の開口部が樹脂成形体によりシールされた複合成形体であって、
前記金属成形体が、第1金属成形体と、1または複数の他の金属成形体からなる第2金属成形体からなるものであり、
前記第1金属成形体が内部に空間部を有し、前記空間部と接続された1または複数の開口部を有するものであり、
前記第1金属成形体の一つの開口部と前記第2金属成形体が、それらの間に隙間が生じた状態で配置され、前記隙間が開口部となり、前記樹脂成形体でシールされているものであり、
前記隙間を形成している前記第1金属成形体の開口部の周囲と前記第2金属成形体のそれぞれの前記樹脂成形体との接合面が粗面化されており、前記粗面化された第1金属成形体と第2金属成形体のそれぞれの接合面が表面から平均深さ10~70μmの範囲に孔が形成された多孔構造を有しているものであり、
前記複合成形体が、前記第1金属成形体の開口部の周囲と前記第2金属成形体の前記接合面に形成された多孔構造内部に樹脂が入り込んだ状態で固まっていることで、前記第1金属成形体の開口部と前記第2金属成形体の間の隙間が前記樹脂成形体によりシールされているものであり、前記樹脂成形体に対して液体または気体による圧力が内側または外側から直接的に加えられた状態で使用されるものである、複合成形体。
【請求項4】
金属成形体の開口部が樹脂成形体によりシールされた複合成形体であって、
前記金属成形体が複数本の金属管からなるものであり、
前記複数本の金属管の開口部同士の接続部分の外表面が粗面化されており、
前記粗面化された金属成形体の接合面が、表面から平均深さ10~70μmの範囲に孔が形成された多孔構造を有しているものであり、
前記複合成形体が、前記金属管の開口部同士の接続部分の外表面に形成された多孔構造内部に樹脂が入り込んだ状態で固まることで、前記複数本の金属管の接続部分が前記樹脂成形体により外側からシールされており、前記樹脂成形体に対して液体または気体による圧力が内側から間接的に加えられた状態または外側から直接的に加えられた状態で使用されるものである、複合成形体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の開口部の周囲の接合面に対して、エネルギー密度1MW/cm2以上で、照射速度2000mm/sec以上でレーザー光を照射して粗面化する工程と、
前工程において粗面化された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置し、樹脂を射出成形または圧縮成形して形成した樹脂成形体により前記開口部をシールする工程を有している、複合成形体の製造方法。
【請求項6】
前記レーザー光を照射して粗面化する工程が、粗面化対象となる金属成形体の接合面に対して直線、曲線または直線と曲線の組み合わせになるようにレーザー光を照射するとき、レーザー光を連続照射する工程である、請求項5記載の複合成形体の製造方法。
【請求項7】
前記レーザー光を照射して粗面化する工程が、粗面化対象となる金属成形体の表面に対して、直線、曲線または直線と曲線の組み合わせになるようにレーザー光を照射するとき、レーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する工程である、請求項5記載の複合成形体の製造方法。
【請求項8】
前記レーザー光の照射工程が、レーザーの駆動電流を直接変換する直接変調方式の変調装置をレーザー電源に接続したファイバーレーザー装置を使用し、レーザー光の出力のON時間とOFF時間から下記式により求められる比であるデューティ比を調整してレーザー照射する工程である、請求項5記載の複合成形体の製造方法。
デューティ比(%)=ON時間/(ON時間+OFF時間)×100
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属成形体の開口部を樹脂成形体によりシールするシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属成形体と樹脂成形体からなる複合成形体を製造するとき、金属成形体の表面を粗面化した後で一体化させる技術が知られている。
特許文献1には、金属成形体の表面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射することで前記金属成形体の表面を粗面化する、金属成形体の粗面化方法(請求項1)が記載されている。
特許文献1の発明の粗面化方法を実施した後、樹脂成形体と接合して得た複合成形体は、金属成形体と樹脂成形体が高い接合強度で接合されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5774246号公報
【文献】特許第5701414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、金属成形体と樹脂成形体を接合することで金属成形体の開口部をシールするシール方法であって、金属成形体と樹脂成形体の接合部分のシール性、および金属成形体同士の樹脂成形体による接合部分のシール性を高くすることができるシール方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、金属成形体の開口部を樹脂成形体によりシールするシール方法であって、
前記金属成形体が、内部に空間部を有し、前記空間部と接続された開口部を有するものであり、
前記金属成形体の開口部の周囲の接合面に対して、エネルギー密度1MW/cm2以上で、照射速度2000mm/sec以上でレーザー光を照射して粗面化する工程と、
前工程において粗面化された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置し、樹脂を射出成形または圧縮成形して形成した樹脂成形体により前記開口部をシールする工程を有しており、
前記粗面化された金属成形体の接合面が、表面から平均深さ10~70μmの範囲に孔が形成された多孔構造を有している、シール方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシール方法によれば、樹脂成形体によって、金属成形体の開口部、および金属成形体同士の接続部分の隙間などを高いシール性によりシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)~(c)は本発明のシール方法を説明する図であり、(a)は金属成形体の斜視図、(b)は(a)の金属成形体の平面図と、樹脂成形体の平面図、(c)は樹脂成形体でシール後の金属成形体(複合成形体)の平面図。
図2】(a)は、図1と異なる金属成形体の斜視図で、内部が見えるように一部が切り取られた状態で示されており、(b)は、図1と異なる実施形態のシール後の金属成形体(複合成形体)の斜視図。
図3】本発明の金属成形体の粗面化方法を実施するときの一実施形態のレーザー光の照射状態を示す図。
図4図3に示す実施形態のレーザー光の照射パターンを示す図であり、(a)は同方向の照射パターン、(b)は双方向の照射パターン。
図5】(a)、(b)は、図3に示す実施形態とは異なる実施形態におけるレーザー光の照射工程を説明するための図。
図6】(a)~(c)は、図1図2とは異なる実施形態のシール方法を説明する断面図であり、(c)は樹脂成形体で隙間がシールされた2つの金属成形体(複合成形体)の断面図。
図7図1図2図6とは異なる実施形態の樹脂成形体でシール後の金属成形体(複合成形体)の断面図。
図8】(a)~(c)は、図1図2図6図7とは異なる実施形態のシール方法を説明する断面図であり、いずれも二本の金属管同士の異なる接続形態が外側からシールされた状態を示す軸方向断面図。
図9】(a)~(b)は、実施例と比較例におけるシール性の試験方法の説明図であり、(a)は平面図と断面図、(b)は平面図と断面図、(c)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)図1および図2に示すシール方法
本発明のシール方法は、金属成形体の樹脂成形体との接合面(シール面)に対して、エネルギー密度1MW/cm2以上で、照射速度2000mm/sec以上でレーザー光を照射して粗面化する工程を有している。
前記粗面化工程では、粗面化された金属成形体の接合面が、表面から深さ10~70μmの範囲に孔(溝も含む)が形成された多孔構造を有するように調整する。
【0009】
本発明で使用する金属成形体の金属は特に制限されるものではなく、用途に応じて公知の金属から適宜選択することができる。
例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム、亜鉛、チタン、銅、黄銅、クロムめっき鋼、マグネシウムおよびそれらを含む合金、タングステンカーバイド、クロミウムカーバイドなどのサーメットから選ばれるものを挙げることができ、これらの金属に対して、アルマイト処理、めっき処理などの表面処理を施したものに適用できる。
【0010】
本発明で使用する金属成形体は、内部に空間部を有し、前記空間部と接続された開口部を有しており、射出成形により前記開口部が閉塞できるものであれば、形状、厚さ、構造および大きさは特に制限されるものではない。
図1(a)は、本発明で使用する金属成形体の一実施形態を示すものである。筒状の金属成形体10は、第1端面11、反対側の第2端面12、周面13を有し、さらに空間部となる貫通孔14を有している。貫通孔14は、第1端面11側に第1開口部14a、第2端面12側に第2開口部14bを有している。
図1(a)に示す筒状の金属成形体10を使用して、第1開口部14aを閉塞しようとするとき、第1端面11の第1開口部14aを包囲する環状接合面15に対してレーザー光を照射して粗面化する。なお、第1端面11の全体が接合面であるときは、第1端面11の全体にレーザー光を照射する。
【0011】
図2(a)は、本発明で使用する金属成形体の別実施形態を示すものである。
金属成形体30は、天面31、反対側の底面32、四つの側面33~36を有し、さらに内部には中空部37を有している。天面31には中空部37と接続された開口部38を有している。
図2(a)に示す箱状の金属成形体30を使用して、開口部38を閉塞しようとするときは、天面31の開口部38を包囲する環状接合面39に対してレーザー光を照射して粗面化する。
【0012】
レーザー光照射して粗面化する工程におけるレーザー光の照射方法としては、
(I)粗面化対象となる金属成形体の接合面に対して直線、曲線または直線と曲線の組み合わせになるようにレーザー光を連続的に照射する方法(第1のレーザー光照射方法)と、
(II)粗面化対象となる金属成形体の表面に対して、直線、曲線または直線と曲線の組み合わせになるようにレーザー光を照射するとき、レーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する方法(第2のレーザー照射方法)のいずれかのレーザー照射方法を使用することができる。
【0013】
<第1のレーザー照射方法>
第1のレーザー照射方法は公知であり、特許第5774246号公報、特許第5701414号公報、特許第5860190号公報、特許第5890054号公報、特許第5959689号、特開2016-43413号公報、特開2016-36884号公報、特開2016-44337号公報に記載されたレーザー光の連続照射方法と同様にして実施することができる。
【0014】
但し、エネルギー密度は1MW/cm2以上にする必要がある。レーザー光の照射時のエネルギー密度は、レーザー光の出力(W)と、レーザー光(スポット面積(cm2)(π・〔スポット径/2〕2)から求められる。レーザー光の照射時のエネルギー密度は、2~1000MW/cm2が好ましく、10~800MW/cm2がより好ましく、10~700MW/cm2がさらに好ましい。
レーザー光の照射速度は2,000~20,000mm/secが好ましく、2,000~18、000mm/secがより好ましく、3,000~15、000mm/secがさらに好ましい。
レーザー光の出力は4~4000Wが好ましく、50~2500Wがより好ましく、150~2000Wがさらに好ましい。他のレーザー光の照射条件が同一であれば、出力が大きいほど孔(溝)深さは深くなり、出力が小さいほど孔(溝)深さは浅くなる。
波長は500~11,000nmが好ましい。
ビーム径(スポット径)は5~80μmが好ましい。
焦点はずし距離は、-5~+5mmが好ましく、-1~+1mmがより好ましく、-0.5~+0.1mmがさらに好ましい。焦点はずし距離は、設定値を一定にしてレーザー照射しても良いし、焦点はずし距離を変化させながらレーザー照射しても良い。例えば、レーザー照射時に、焦点はずし距離を小さくしていくようにしたり、周期的に大きくしたり小さくしたりしても良い。焦点はずし距離が-であると、孔深さは深くなる。
以上のレーザー光の照射条件によるレーザー光の照射と共に、レーザー光を照射するときの繰り返し回数を調整することで、粗面化された金属成形体の接合面が、表面から平均深さ10~70μmの範囲に孔(溝)が形成された多孔構造を有するように調整することができる。
繰り返し回数(一つの孔または溝を形成するための合計のレーザー光の照射回数)は、1~9回が好ましく、2~5回がより好ましい。同一のレーザー照射条件であれば、繰り返し回数が多いほど孔(溝)深さが深くなり、繰り返し回数が少ないほど孔(溝)深さが浅くなる。
粗面化された金属成形体の接合面の平均孔(溝)深さは、表面から平均深さ10~65μm以下の範囲が好ましく、平均深さ10~50μm未満の範囲にすることもできる。
【0015】
<第2のレーザー照射方法>
第2のレーザー照射方法において、レーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射するとは、図3に示すように照射する実施形態を含んでいる。
図3は、レーザー光の照射部分101と隣接するレーザー光の照射部分101の間にあるレーザー光の非照射部分102が交互に生じて、全体として点線状に形成されるように照射した状態を示している。
このとき、繰り返して照射して、図3に示すように外観上1本の点線にすることもできる。繰り返し回数は、例えば1~20回にすることができる。
複数回照射するときは、レーザー光の照射部分を同じにしてもよいし、レーザー光の照射部分を異ならせる(レーザー光の照射部分をずらす)ことで、金属片全体が粗面化されるようにしてもよい。
レーザー光の照射部分を同じにして複数回照射したときは点線状に照射されるが、レーザー光の照射部分をずらして、即ち、最初はレーザー光の非照射部分であった部分にレーザー光の照射部分が重なるようにずらして照射することを繰り返すと、点線状に照射した場合であっても、最終的には実線状態に照射されることになる。
金属成形体に対して連続的にレーザー光を照射すると、照射面の温度が上昇することから、厚さの小さい成形体ではそりなどの変形が生じるおそれもあるため、冷却するなどの対策が必要になる場合がある。
しかし、図3に示すように点線状にレーザー照射すると、レーザー光の照射部分101とレーザー光の非照射部分102が交互に生じ、レーザー光の非照射部分102では冷却されていることになるため、レーザー光の照射を継続した場合、厚さの小さい成形体でもそりなどの変形が生じ難くなるので好ましい。このとき、上記のようにレーザー光の照射部分を異ならせた(レーザー光の照射部分をずらせた)場合でも、レーザー光の照射時には点線状に照射されているため、同様の効果が得られる。
【0016】
レーザー光の照射方法は、金属成形体110の表面に対して、図4(a)に示すように一方向に照射する方法、または図4(b)に示す点線のように双方向から照射する方法を使用することができる。その他、レーザー光の点線照射部分が交差するように照射する方法でもよい。
照射後の各点線の間隔b1は、金属成形体の照射対象面積などに応じて調整することができるものであるが、例えば、0.01~5mmの範囲にすることができる。
【0017】
図3に示すレーザー光の照射部分101の長さ(L1)とレーザー光の非照射部分102の長さ(L2)は、L1/L2=1/9~9/1の範囲になるように調整することができる。
レーザー光の照射部分101の長さ(L1)は、複雑な多孔構造に粗面化するためには0.05mm以上であることが好ましく、0.1~10mmがより好ましく、0.3~7mmがさらに好ましい。
【0018】
第2のレーザー照射方法では、レーザーの駆動電流を直接変換する直接変調方式の変調装置をレーザー電源に接続したファイバーレーザー装置を使用し、デューティ比(duty ratio)を調整してレーザー照射する。
レーザーの励起には、パルス励起と連続励起の2種類があり、パルス励起によるパルス波レーザーは一般にノーマルパルスと呼ばれる。
連続励起であってもパルス波レーザーを作り出すことが可能であり、ノーマルパルスよりパルス幅(パルスON時間)を短くして、その分ピークパワーの高いレーザーを発振させるQスイッチパルス発振方法、AOMやLN光強度変調機により時間的に光を切り出すことでパルス波レーザーを生成させる外部変調方式、レーザーの駆動電流を直接変調してパルス波レーザーを生成する直接変調方式によりパルス波レーザーを作り出すことができる。
上記した好ましい実施形態では、レーザーの駆動電流を直接変換する直接変調方式の変調装置をレーザー電源に接続したファイバーレーザー装置を使用することで、レーザーを連続励起させてパルス波レーザーを作り出したものであり、第1のレーザー照射方法で使用した連続波レーザーとは別のものである。
但し、エネルギー密度、レーザー光の照射速度、レーザー光の出力、波長、ビーム径(スポット径)、焦点はずし距離は、第1のレーザー照射方法と同様に実施する。
【0019】
デューティ比は、レーザー光の出力のON時間とOFF時間から次式により求められる比である。
デューティ比(%)=ON時間/(ON時間+OFF時間)×100
デューティ比は、図3に示すL1/L2に対応するものであるから、10~90%の範囲から選択することができる。
デューティ比を調整してレーザー光を照射することで、図3に示すような点線状に照射することができる。デューティ比が大きいと粗面化工程の効率は良くなるが、冷却効果は低くなり、デューティ比が小さいと冷却効果は良くなるが、粗面化効率は悪くなる。目的に応じて、デューティ比を調整する。
【0020】
第2のレーザー照射工程では、粗面化対象となる金属成形体の表面上に、間隔をおいてレーザー光を通過させないマスキング材を配置した状態でレーザーを連続照射する方法を適用できる。マスキング材は、金属成形体に直接接触しても接触していなくとも良い。複数回照射するときは、マスキング材の位置を変化させることで、金属成形体全体を粗面化させることができる。
この実施形態は、図5(a)のように金属成形体110の上に間隔をおいて複数枚のマスキング材111を配置した状態で、レーザーを連続照射する。マスキング材としては、熱伝導率の小さい金属などを使用することができる。
その後、マスキング材111を取り去ると、図5(b)に示すとおり、図3と同様にレーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じた点線が形成されている。
図5(a)、(b)に示す実施形態の場合にも、マスキング材111の部分では冷却されていることになるため、レーザー光の照射を継続した場合、厚さの小さい成形体でもそりなどの変形が生じ難くなるので好ましい。
【0021】
レーザー光の照射部分101の長さ(L1)とレーザー光の非照射部分102の長さ(L2)は、L1/L2=1/9~9/1の範囲になるように調整することができる。
レーザー光の照射部分101の長さ(L1)は、複雑な多孔構造に粗面化するためには0.05mm以上であることが好ましく、0.1~10mmが好ましく、0.3~7mmがより好ましい。
【0022】
第1のレーザー照射方法と第2レーザー照射方法で使用するレーザーは公知のものを使用することができ、例えば、YVO4レーザー、ファイバーレーザー(シングルモードファイバーレーザー、マルチモードファイバーレーザー)、エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He-Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。
【0023】
レーザー光照射して粗面化する工程において、第1のレーザー照射方法または第2レーザー照射方法を実施したときは、上記したエネルギー密度と照射速度を満たすように金属成形体にレーザー光を照射すると、金属成形体の表面は溶融しながら一部が蒸発されることから、複雑な構造の多孔構造が形成される。
このときに形成される多孔構造は、特許第5774246号公報の図7図8、特許第5701414号公報の図7図8に示されるものと同じ複雑な多孔構造か、類似する多孔構造である。
一方、上記したエネルギー密度と照射速度を満たさない場合には、金属成形体の表面は昇華して孔が形成されるか(通常のパルスレーザー照射により形成される孔)、または溶融(レーザー溶接)してしまい、複雑な構造の孔は形成されない。
【0024】
次の工程にて、前工程において粗面化された金属成形体の開口部を含む接合面を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂を射出成形して前記開口部をシールする。
前工程において、図1(a)の金属成形体10の第1端面11の第1開口部14aを包囲する環状接合面15に対してレーザー光を照射して粗面化したときは、第1端面11側を金型内に配置して、環状接合面15を含む円と同じ形状および同じ大きさの円になるように射出成形または圧縮成形して樹脂成形体20を形成させ、第1開口部14aをシールして複合成形体1を得る。
射出成形時において粗面化された環状接合面15の多孔構造内部に溶融状態の樹脂が入り込んだ後で固まることで、金属成形体10の第1端面11の環状接合面15と樹脂成形体20の間が強い接合力で一体化されており、高いシール性を有している。
このため、第1開口部14aは樹脂成形体20により閉塞されており、複合成形体1の第2開口部14bから圧力を加えた状態で空気や水を流しても、第1開口部14a側からの空気漏れや水漏れが生じることはない。
【0025】
前工程において、図2(a)の金属成形体30の天面31の開口部38を包囲する環状接合面39に対してレーザー光を照射して粗面化したときは、天面31側を金型内に配置して、環状接合面39を含む円と同じ形状および同じ大きさの円になるように射出成形または圧縮成形して樹脂成形体40を形成させて、開口部38をシールして複合成形体2を得る。
射出成形時において粗面化された環状接合面39の多孔構造内部に溶融状態の樹脂が入り込んだ後で固まることで、金属成形体30の天面31の環状接合面39と樹脂成形体40が強い接合力で一体化されて、高いシール性を有している。
このため、開口部38は樹脂成形体40により閉塞されており、複合成形体2を高温および高湿度雰囲気中に長期間保存しても、開口部38から湿気が侵入することはない。
【0026】
樹脂成形体に使用する樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のほか、熱可塑性エラストマーも含まれる。
熱可塑性樹脂は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
【0027】
熱硬化性樹脂は、用途に応じて公知の熱硬化性樹脂から適宜選択することができる。例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
【0028】
熱可塑性エラストマーは、用途に応じて公知の熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを挙げることができる。
【0029】
これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーには、公知の繊維状充填材を配合することができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等のものを用いることができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維等を挙げることができる。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの合成繊維や天然繊維(セルロース系繊維など)や再生セルロース(レーヨン)繊維などを用いることができる。
【0030】
これらの繊維状充填材は、繊維径が3~60μmの範囲のものを使用することができるが、これらの中でも、例えば金属成形体10の接合面12が粗面化されて形成される開放孔30などの開口径より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。繊維径は、より望ましくは5~30μm、さらに望ましくは7~20μmである。
【0031】
(2)図6および図7に示すシール方法
図6(a)は、本発明で使用する金属成形体の別実施形態を示すものであり、第1金属成形体50と第2金属成形体60の二つの金属成形体を使用する。
第1金属成形体50は、外側環状壁部51、外側環状壁部51と同一方向に伸ばされた内側環状壁部52、外側環状壁部51と内側環状壁部52の間を接続する環状面部53を有している。外側環状壁部51と内側環状壁部52は、外側環状壁部51の長さ>内側環状壁部52の長さの関係を有している。
外側環状壁部51の環状面部53に対向する部分は大開口部54を有しており、内側環状壁部52の大開口部54に対向する部分は小開口部55を有している。
第2金属成形体60は筒状のものであり、第1端面61、反対側の第2端面62、周面63、貫通孔64、第1端面61側の第1開口部64a、第2端面62側の第2開口部64bを有している。
【0032】
レーザー照射工程では、第1金属成形体50の小開口部55の内側環状壁部52の内側面52a(長さL11)と、筒状の第2金属成形体60の第1端面61から第2端面62側の長さL11の周面63に対してレーザー光を照射して、粗面化する。
レーザー光の照射方法は、上記した第1のレーザー光照射方法または第2のレーザー光照射方法を適用する。
この粗面化工程によって、表面から平均深さ10~70μmの範囲に複雑な多孔構造が形成される。
【0033】
次に、図6(b)に示すように、第1金属成形体50の内側環状壁部52の中心軸と第2金属成形体60の中心軸が一致し、かつ第1金属成形体52の小開口部55と第2金属成形体60の第1端面61が一致するようにして、第1金属成形体50と第2金属成形体60を金型内に配置する。
その後、樹脂を射出成形して樹脂成形体69を形成させて小開口部55と第2金属成形体60の隙間をシールして、図6(c)に示す複合成形体3を得る。
射出成形時において粗面化された第1金属成形体50の内側環状壁部52の内側面52a(長さL11)と、筒状の第2金属成形体60の第1端面61から第2端面62側の長さL11の周面63のそれぞれに形成された多孔構造内部に溶融状態の樹脂が入り込んだ後で固まることで、第1金属成形体50と第2金属成形体60が樹脂成形体69を介して強い接合力で一体化されており、高いシール性を有している。
即ち、本発明のシール方法を実施することによって、樹脂成形体69により第1金属成形体50と第2金属成形体60を接続することができると共に、第1金属成形体50と樹脂成形体69との接合面、第2金属成形体60と樹脂成形体69との接合面の間を完全にシールすることができる。
このため、第1金属成形体50と第2金属成形体60の樹脂成形体69との接続部分から、気体や液体が浸入することがない。
なお、レーザー光の照射工程を実施せずにシール工程のみを実施した場合でも、図6(c)に示す複合成形体3と同様のものを製造することができるが、内側および外側から圧力が加えられる状態で使用を継続すると、第1金属成形体50と樹脂成形体69との接合面、第2金属成形体60と樹脂成形体69との接合面の間に隙間が生じてシールができなくなるおそれがある。
【0034】
図7は、本発明で使用する金属成形体の別実施形態を示すものであり、図6と同じ第1金属成形体50、第2金属成形体60に加えて、第2金属成形体60と同形状の第3金属成形体70を使用している。
第3金属成形体70は、第2金属成形体60と同じ筒状のものであり、第1端面71、反対側の第2端面72、周面73、貫通孔74、第1端面71側の第1開口部74a、第2端面72側の第2開口部74bを有している。
【0035】
レーザー照射工程では、第1金属成形体50の小開口部55の内側環状壁部52の内側面52a(長さL11)、筒状の第2金属成形体60の第1端面61から第2端面62側の長さL11の周面63、および第3金属成形体70の第1端面71から第2端面72側の長さL11の周面73に対してレーザー光を照射して、粗面化する。
レーザー光の照射方法は、上記した第1のレーザー光照射方法または第2のレーザー光照射方法を適用する。
この粗面化工程によって、表面から平均深さ10~70μmの範囲に複雑な多孔構造が形成される。
【0036】
次に図6(b)と同様にして、第1金属成形体50の内側環状壁部52の間に第2金属成形体60と第3金属成形体70が等間隔になるように金型内に配置する。
その後、樹脂を射出成形して樹脂成形体69を形成させて小開口部55と第2金属成形体60、第3金属成形体の隙間をシールして、図7に示す複合成形体4を得る。
射出成形時において粗面化された第1金属成形体50の内側環状壁部52の内側面52a(長さL11)、筒状の第2金属成形体60の第1端面61から第2端面62側の長さL11の周面63および筒状の第3金属成形体70の第1端面71から第2端面72側の長さL11の周面73のそれぞれに形成された多孔構造内部に溶融状態の樹脂が入り込んだ後で固まることで、第1金属成形体50、第2金属成形体60および第3金属成形体70が樹脂成形体69を介して強い接合力で一体化されており、高いシール性を有している。
即ち、本発明のシール方法を実施することによって、樹脂成形体69により第1金属成形体50、第2金属成形体60および第3金属成形体70を接続することができると共に、第1金属成形体50と樹脂成形体69との接合面、第2金属成形体60と樹脂成形体69との接合面、第3金属成形体70と樹脂成形体69との接合面の間を完全にシールすることができる。
このため、第1金属成形体50、第2金属成形体60および第3金属成形体70の樹脂成形体69との接続部分から、気体や液体が浸入することがない。
なお、レーザー光の照射工程を実施せずにシール工程のみを実施した場合でも、図7に示す複合成形体4と同様のものを製造することができるが、内側および外側から圧力が加えられる状態で使用を継続すると、第1金属成形体50と樹脂成形体69との接合面、第2金属成形体60と樹脂成形体69との接合面、第3金属成形体70と樹脂成形体69との接合面の間に隙間が生じてシールができなくなるおそれがある。
【0037】
(3)図8に示すシール方法
図8(a)は、本発明で使用する金属成形体の別実施形態を示すものであり、第1金属管120と第2金属管130の二つの金属管を使用する。
第1金属管120は一端開口部側に第1フランジ部121を有しており、第2金属管130は一端開口部側に第2フランジ部131を有している。
第1金属管120と第2金属管130は、第1フランジ部121と第2フランジ部131が当接された状態で、ボルトとナットの組み合わせなどの締め付け手段で接続されている。
【0038】
レーザー照射工程では、第1金属管120の第1フランジ部121を含む外表面と、第2金属管130の第2フランジ部131を含む外表面に対してレーザー光を照射して、粗面化する。
レーザー光の照射方法は、上記した第1のレーザー光照射方法または第2のレーザー光照射方法を適用する。
この粗面化工程によって、表面から平均深さ10~70μmの範囲に複雑な多孔構造が形成される。
【0039】
シール工程では、第1金属管120の第1フランジ部121と第2金属管130の第2フランジ部131の接続部分を含む粗面化された部分を金型内に配置した状態で樹脂を射出成形して樹脂成形体135を形成させて、第1金属管120と第2金属管130の接続部分を外側からシールする。
図8(a)に示す従来の接続形態では、第1フランジ部121と第2フランジ部131の当接部分にシールテープを配置した状態で接続されているが、継続して内側から加えられる液体圧や気体圧によるシールテープの劣化によって、例えば数ヶ月経過後には、液漏れや気体漏れが発生するおそれがあった。
しかし、図8(a)のように外側から樹脂成形体135で覆ってシールすると、第1金属管120と第2金属管130の粗面化された多孔構造内部に溶融状態の樹脂が入り込んだ後で固まることで、第1金属管120、第2金属管130および樹脂成形体135が強い接合力で一体化できるため、高いシール性を付与することができる。
このため、従来技術のシールテープを使用する方法と比べると、はるかに長い期間、接続部分から液体漏れや気体漏れが発生することが防止される。
なお、図8(a)に示す実施形態では、樹脂成形体135を破壊すれば、第1金属管120と第2金属管130を分離することができる。
【0040】
図8(b)は、本発明で使用する金属成形体の別実施形態を示すものであり、第1金属管140と第2金属管150の二つの金属管を使用する。
第1金属管140は、第2金属管150との接続端部側の外表面にねじ部を有している。
第2金属管150は、第1金属管140との接続端部側に拡径部151を有しており、拡径部151の内表面にねじ部を有している。
第1金属管140と第2金属管150は、第1金属管140の端部を第2金属管150の拡径部151の内側にねじ込むことで接続されている。
【0041】
レーザー照射工程では、第1金属管140端部のねじ部を除いた外表面と第2金属管130端部の拡径部151を含む外表面に対してレーザー光を照射して、粗面化する。
レーザー光の照射方法は、上記した第1のレーザー光照射方法または第2のレーザー光照射方法を適用する。
この粗面化工程によって、表面から平均深さ10~70μmの範囲に複雑な多孔構造が形成される。
【0042】
シール工程では、第1金属管140と第2金属管150の接続部分を含む粗面化された部分を金型内に配置した状態で樹脂を射出成形して樹脂成形体155を形成させて、第1金属管140と第2金属管150の接続部分を外側からシールする。
図8(b)に示す従来の接続形態では、第1フランジ部140のねじ部と第2フランジ部150のねじ部の間にシールテープを配置した状態で接続されているが、継続して内側から加えられる液体圧や気体圧によるシールテープの劣化によって、例えば数ヶ月経過後には、液体漏れや気体漏れが発生するおそれがあった。
しかし、図8(b)のように外側から樹脂成形体155で覆ってシールすると、第1金属管140と第2金属管150の粗面化された多孔構造内部に溶融状態の樹脂が入り込んだ後で固まることで、第1金属管140、第2金属管150および樹脂成形体155を強い接合力で一体化できるため、高いシール性を付与することができる。
このため、従来技術のシールテープを使用する方法と比べると、はるかに長い期間、接続部分から液体漏れや気体漏れが発生することが防止される。
なお、図8(b)に示す実施形態では、樹脂成形体155を破壊すれば、第1金属管140と第2金属管150を分離することができる。
【0043】
図8(c)は、本発明で使用する金属成形体の別実施形態を示すものであり、第1金属管160と第2金属管170の二つの金属管を使用する。
第1金属管160と第2金属管170は、それぞれが一本の管であり、図8(a)、(b)に示すようなフランジ部やねじ部などの接続手段は有していない。
【0044】
レーザー照射工程では、第1金属管160端部の外表面と第2金属管170端部の外表面に対してレーザー光を照射して、粗面化する。
レーザー光の照射方法は、上記した第1のレーザー光照射方法または第2のレーザー光照射方法を適用する。
この粗面化工程によって、表面から平均深さ10~70μmの範囲に複雑な多孔構造が形成される。
【0045】
シール工程では、第1金属管160の第1端面161と第2金属管170の第1端面171を当接させた状態で金型内に配置し、樹脂を射出成形して樹脂成形体175を形成させて、第1金属管160と第2金属管170を接続する共に接続部分を外側からシールする。
従来、二本の金属管を接続するためには、図8(a)に示すような、第1フランジ部12のある第1金属管120と第2フランジ部131のある第2金属管130の組み合わせを使用するか、図8(b)に示すような、互いにねじ部を有している第1金属管140と第2金属管150の組み合わせを使用する必要があった。
しかし、本発明のシール方法を使用して、図8(c)のように外側から樹脂成形体175で覆って接続してシールすると、第1金属管160と第2金属管170の粗面化された多孔構造内部に溶融状態の樹脂が入り込んだ後で固まることで、図8(a)、(b)に示すフランジ部(ボルトとナットを含む)やねじ部などの接続手段を使用することなく、樹脂成形体175を介して第1金属管160と第2金属管170を接続できると共に、高いシール性を付与することができる。このため、非常に長い期間、接続部分から液体漏れや気体漏れが発生することが防止される。
なお、図8(c)に示す実施形態では、樹脂成形体175を破壊すれば、第1金属管160と第2金属管170を分離することができる。
【実施例
【0046】
実施例1~6、比較例1~4
図9(a)に示す形状および寸法の金属成形体(アルミニウムA5052あるいはステンレスSUS304)200の環状接合面201(392.5mm2の広さ範囲)に対して、表1に示す条件でレーザー光を照射して(第1のレーザー光照射方法)、レーザー光照射面を粗面化した。
なお、照射パターンは図4(b)と同じ双方向であるが、第1のレーザー光照射方法(レーザー光の連続照射)であるから、図4(b)と同じ照射パターンで、かつ実線で示される照射パターンになる。
【0047】
レーザー装置は次のものを使用した。
発振機:IPG-Ybファイバー;YLR-300-SM
集光系:fc=80mm/fθ=100mm
焦点はずし距離:±0mm(一定)
【0048】
次に、粗面化処理後の金属成形体200を使用して、下記の方法で射出成形して、金属成形体200の穴202を樹脂成形体210で閉塞した(図9(b))。
<射出成形>
GF35%強化PPS樹脂(DURAFIDE 1135MF1:ポリプラスチックス(株)製),GF(ガラス繊維)
樹脂温度:320℃
金型温度:150℃
射出成形機:ファナック製ROBOSHOT S2000i100B)
【0049】
(溝深さ)
溝(孔)深さは、レーザー光照射後の面(392.5mm2の広さ範囲)をデジタルマイクロスコープVHX-900((株)キーエンス製)で測定した。平均溝(孔)深さは、レーザー照射面の全体に均等間隔で分散させた10箇所を測定して平均値とした。
【0050】
(シール性)
シール性は、次のように試験した。
図9(c)に示す金属製の試験用容器220の開口部に図9(b)で示す金属成形体200と樹脂成形体210の複合成形体を固定した。金属製の試験用容器220と金属成形体200は溶接固定した。
その後、試験用容器220内に複合成形体が完全に浸漬するまで水230を入れた。
この状態で、室温環境下、試験用容器220の側面から内部空間221内に空気を0.5MPaで3分間送ったときに空気漏れがあるかどうか(水230に泡が発生するかどうか)で評価した。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1~3と比較例1、2、実施例4~6と比較例3、4のシール性の対比から明らかなとおり、本発明のシール方法を適用することで高いシール性能が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のシール方法は、金属成形体と樹脂成形体の接続部分のシール性が優れているため、通常の管、三つ叉管などの一部開口部のシール、吸湿防止のための容器(複数の部品が収容されたハウジングなど)開口部のシール、金属管同士の接続およびシールなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1、2、3、4 複合成形体
10、50、60、70 金属成形体
20、40、69 樹脂成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9