(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】水性液体担体中に均一に分配された微粒子の懸濁液を作製する方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A61M5/145 500
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021082054
(22)【出願日】2021-05-14
(62)【分割の表示】P 2018526139の分割
【原出願日】2016-12-21
【審査請求日】2021-06-04
(32)【優先日】2015-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511227668
【氏名又は名称】ブラッコ・スイス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Bracco Suisse SA
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ ローレン
(72)【発明者】
【氏名】リーヴァス フレドリック
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0177109(US,A1)
【文献】特表2002-526232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0117888(US,A1)
【文献】特表2001-524359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物を混合する方法であって、
前記液体組成物は、液体担体中に分散された微粒子を含み、
前記液体組成物は、
縦軸(X-X)を有するシリンジに含まれて、
ここで、前記シリンジの縦軸(X-X)は実質的に水平であり、
前記方法は:
前記シリンジが、第一の期間、第一の角速度で、第一の参照点(B)から、第一の回転角(δ)まで、時計回りおよび反時計回りに、前記
シリンジの縦軸の周りで振動される、第一の予混合ステップ;
前記シリンジが、第二の期間、第二の角速度で、第二の参照点(C;D)から、第二の回転角(γ)まで、時計回りおよび反時計回りに、前記
シリンジの縦軸の周りで振動される、前記第一の予混合ステップに次いで行われる第二の予混合ステップ;
を含み、
ここで、前記の第一の回転角は、前記の第二の回転角よりも小さく、前記の第一の期間は、前記の第二の期間よりも短く、
前記方法は、混合段階が行なわれながら前記液体組成物がインジェクション/インフュージョン段階を経る、組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップをさらに含み、ここで、前記シリンジは、第三の角速度で、第三の回転角まで、前記
シリンジの縦軸の周りで振動されて、前記の組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップは、前記の第二の予混合ステップの後に行なわれる、
方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
前記の第二の参照点(C)は、前記の第一の参照点(B)と一致する、
方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、
前記の第二の参照点(D)は、前記の第一の参照点(B)とは異なる、
方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、
前記の第二の回転角(γ)は、前記の第一の回転角(δ)の少なくとも3倍である、
方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの方法であって、
前記の第一の回転角(δ)は、20°~60°である、
方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの方法であって、
前記の第二の回転角(γ)は、90°~160°である、
方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの方法であって、
前記の第一の期間は1~3秒であり、前記の第二の期間は10~15秒である、
方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの方法であって、
前記の第一の角速度は、前記の第二の角速度と等しい、
方法。
【請求項9】
請求項1の方法であって、
前記の第一の角速度および第二の角速度は、800°/s~2200°/sに含まれる、
方法。
【請求項10】
請求項1の方法であって、
前記の組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップは、前記の第二の予混合ステップの直後に行なわれる、
方法。
【請求項11】
請求項1の方法であって、
前記の組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップの前記のインジェクション/インフュージョン段階は、前記混合段階と同時に開始されて、
または、前記の組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップの前記インジェクション/インフュージョン段階は、前記混合段階に対して遅れる、
方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかの方法であって、
前記の第一の予混合ステップは、前記シリンジを前記縦軸の周りで約180°回転させることによって、前記
シリンジを逆転するステップを含む、
方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかの方法であって、
前記の第一および第二の予混合ステップ中に生じる前記シリンジの回転方向のそれぞれの反転の前に、休止ステップが行なわれる、
方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、
前記休止ステップは、約0.1sの期間、前記シリンジの回転を止めるステップを含む、
方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかの方法であって、
前記液体組成物は超音波造影剤を含む、
方法。
【請求項16】
液体組成物を混合するためのインフュージョンポンプデバイス(10)であって、
前記液体組成物は、液体担体中に分散された微粒子を含み、
前記液体組成物は、バレル(16)、プランジャー(18)および
縦軸(X-X)を備えるシリンジ(14)内に含まれて、
ここで、前記シリンジの縦軸(X-X)は実質的に水平であり、
前記バレル(16)は、クレードル配列(20)によって回転可能な様式で支持されて、
前記プランジャー(18)は、バレル(16)内でスライド可能であって、
前記バレル内で前記プランジャーがスライドする動作は、パワー被駆動ユニット(22)によって制御されて、
さらにここで、前記デバイス(10)は、前記バレル(16)を振動させるためのモーター被駆動ユニット(24)を備え、
ここで、前記モーター被駆動ユニット(24)は、第一の予混合ステップにおいて、前記シリンジを、第一の期間、第一の角速度で、第一の参照点(B)から、第一の回転角(δ)まで、時計回りおよび反時計回りに、前記
シリンジの縦軸(X-X)の周りで振動させるように構成されて;
ここで、前記モーター被駆動ユニット(24)は、前記第一の予混合ステップに次いで行われる第二の予混合ステップにおいて、前記シリンジを、第二の期間、第二の角速度で、第二の参照点(C;D)から、第二の回転角(γ)まで、時計回りおよび反時計回りに、前記
シリンジの縦軸(X-X)の周りで振動させるように構成されて;
ここで、前記の第一の回転角は、前記の第二の回転角よりも小さく、前記の第一の期間は、前記の第二の期間よりも短く、および、
前記モーター被駆動ユニット(24)は、混合段階が行なわれながら前記液体組成物がインジェクション/インフュージョン段階を経る、組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップを行うようにさらに構成され、
ここで、前記シリンジは、第三の角速度で、第三の回転角まで、前記
シリンジの縦軸の周りで振動されて、前記の組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップは、前記の第二の予混合ステップの後に行なわれる、
デバイス(10)。
【請求項17】
請求項16のデバイス(10)であって、
前記の第一の回転角(δ)は、20°~60°である、
デバイス(10)。
【請求項18】
請求項16のデバイス(10)であって、
前記の第二の回転角(γ)は、90°~160°である、
デバイス(10)。
【請求項19】
請求項16のデバイス(10)であって、
前記の第一の期間は1~3秒であり、前記の第二の期間は10~15秒である、
デバイス(10)。
【請求項20】
請求項16のデバイス(10)であって、
前記の第一の角速度および第二の角速度は、800°/s~2200°/sが含まれる、デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、液体組成物のインジェクションまたはインフュージョンによる投与に関する。液体組成物は、例えば、液体の薬品であってよい。あるいは、液体組成物は、例えば、診断的に活性の造影剤であってよい。より具体的には、本発明は、液体担体、好ましくは水性液体担体中に均一に分配された微粒子の懸濁液を、短期間で利用可能にする方法およびデバイスに関する。一実施態様では、均一に分配された微粒子の懸濁液は、患者の体に、典型的には、治療されるべき体の部分に到達する患者の血管、または患者の体の治療されるべき臓器に、インジェクションまたはインフュージョンされ得る。
【背景技術】
【0002】
EP 1 035 882 B1は、水性液体担体中に均一に分配された微粒子の懸濁液を、前記懸濁液を含むシリンジおよび前記懸濁液を患者にインジェクションするためのパワー被駆動ピストンを備えるインジェクターシステムを用いて、インジェクションまたはインフュージョンによって患者に投与する方法を開示する。その方法によれば、シリンジ内の懸濁液は、回転または振動の運動に供せられて、それにより、重力または浮力による微粒子の隔離を防止することによって前記懸濁液を均一に維持し、これは、前記粒子を損傷させることがなく、または、それらの分配を邪魔しない。
【0003】
EP 1 561 483 A1は、支持構造、シリンジと堅く関連することができてシリンジの縦軸と実質的に垂直な軸の周りでそれらが交互に回転することができるように支持構造と関連することができるシリンジのための支持体、および、交互の回転を作動するための第一のアクチュエーションおよび第一のアクチュエーションと機能的に協同するシリンジのプランジャーのスライドを作動するための第二のアクチュエーションを備えるシリンジのためのインフュージョンポンプを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EP 1 035 882の器具および方法は良好な性能を有するが、本出願人はさらに研究して、患者へのインフュージョン段階を始める前に行なわれる混合段階を改善した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記特許の教示およびその実際の使用によれば、患者へのインフュージョンまたはインジェクションは、少なくとも約90秒続く最初の混合段階後に行なわれる。液体組成物の、この最初の混合段階は、液体組成物中に存在する微粒子が適切および均一に再懸濁されるのを可能にする。この状態が有利に到達されると、インジェクション/インフュージョン段階が開始され得て、一方で、最初の混合段階はまだ行われていて、すなわち、最初の混合段階は、インジェクション/インフュージョン段階全体のあいだ、中断されず、混合およびインジェクション/インフュージョン段階全体のあいだ変更されない同一の操作条件で行なわれる。
【0006】
最初の混合段階の持続時間は、インフュージョン/インジェクション段階が開始される前に、十分に均一な懸濁液を得るために実質的に許容できると技術担当者によって判断されるが、本発明の目的は、この最初の混合時間を、懸濁液の均一性に影響を及ぼさずに有利に低減させることである。本発明のさらなる目的は、インジェクション/インフュージョン段階が開始される前の最初の混合時間を有利に低減させるだけでなく、微粒子懸濁液の均一性を改善することである。
【0007】
本発明によれば、2つの予混合ステップ、すなわち第一の予混合ステップおよび第二の予混合ステップを含む予混合段階が予想されて、そのあいだ、微粒子懸濁液を含む入れ物(すなわちシリンジ)は、特定の回転パラメーターに従って入れ物の縦軸の周りで振動する。
【0008】
第一態様によれば、本発明は、液体組成物を混合する方法を提供し、ここで、前記液体組成物は、水性液体担体中に分散された微粒子を含み、前記液体組成物は、縦軸を有する入れ物に含まれて、当該方法は:
入れ物が、第一の期間、第一の角速度で、第一の参照点から第一の回転角まで、時計回りおよび反時計回りに、前記縦軸の周りで振動される、第一の予混合ステップ;
【0009】
入れ物が、第二の期間、第二の角速度で、第二の参照点から第二の回転角まで、時計回りおよび反時計回りに、前記縦軸の周りで振動される、第二の予混合ステップ;を含み、
ここで、前記の第一の回転角は、前記の第二の回転角よりも小さく、前記の第一の期間は、前記の第二の期間よりも短い。
【0010】
本発明の一実施態様によれば、第二の参照点は、第一の参照点と一致する。
【0011】
本発明の代替の実施態様によれば、第二の参照点は、第一の参照点とは異なる。
【0012】
第二の態様によれば、本発明は、液体組成物を混合するためのインフュージョンポンプデバイスを提供し、前記液体組成物は、水性液体担体中に分散された微粒子を含み、前記液体組成物は、バレル、プランジャーおよび縦軸を備える入れ物内に含まれて、バレルは、クレードル配列によって回転可能な様式で支持されて、プランジャーは、バレル内でスライド可能であり、バレル内でプランジャーがスライドする動作は、パワー被駆動ユニットによって制御されて、さらにここで、デバイスは、バレルを振動させるためのモーター配列を備え、
前記モーター配列は、第一の予混合ステップにおいて、入れ物を、第一の期間、第一の角速度で、第一の参照点から第一の回転角まで、時計回りおよび反時計回りに、前記縦軸の周りで振動させるように構成されて;および
前記モーター配列は、第二の予混合ステップにおいて、入れ物を、第二の期間、第二の角速度で、第二の参照点から第二の回転角まで、時計回りおよび反時計回りに、前記縦軸の周りで振動させるように構成されて;および
前記の第一の回転角は、前記の第二の回転角よりも小さく、前記の第一の期間は、前記の第二の期間よりも短い。
【0013】
好ましい実施態様によれば、方法およびポンプデバイスは、以下の特徴の1つまたは複数を有してよい:
・第二の回転角は、前記の第一の回転角の少なくとも3倍である;
・第一の回転角(
図2.2および3.2のδ)は、20°~60°である;
・第二の回転角(
図2.3および3.3のγ)は、90°~160°である;
・第一の期間は1~3秒であり、前記の第二の期間は10~15秒である;
・第一の角速度は、前記の第二の角速度と等しい;
・第一の角速度および第二の角速度は、800°/s~2200°/sが含まれる;
・組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップが提供されて、前記液体組成物は、混合段階が行なわれながらインジェクションされて、入れ物は、第三の角速度で、第三の参照点から第三の回転角まで、前記縦軸の周りで振動されて、組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップは、前記の第二の予混合ステップの後に行なわれる。本発明の一実施態様によれば、第三の参照点は、第一の参照点および第二の参照点とは異なり;あるいは、第三の参照点は、第一の参照点および/または第二の参照点と一致する。好ましくは、混合段階は、インジェクション/インフュージョン段階の持続時間全体のあいだ連続的に行なわれる;
・組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップは、前記の第二の予混合ステップの直後に行なわれる;
・組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップは、インジェクション/インフュージョン段階が混合段階と同時に開始されるように行なわれる;あるいは、組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップのインジェクション/インフュージョン段階は、混合段階に対して遅れる。混合機能全体(第一および第二の予混合ステップ、および組み合わせられたインジェクション/インフュージョンおよび混合ステップの混合段階)が、中断されず止められないことが重要である;
・第一の予混合ステップは、後者(latter)を縦軸の周りで約180°回転させることによって、入れ物を逆転するステップを含む;
・入れ物の回転を反転するステップは、入れ物の回転方向のそれぞれの反転の前に休止ステップを含む;
・休止ステップは、約0.1sの期間、入れ物の回転を止めるステップを含む;および
・入れ物はシリンジを備え、液体組成物は超音波造影剤を含む。
【0014】
有利に、本発明の予混合段階は、上述のEP 1 035 882の教示に従って行われる最初の混合段階のようなインジェクション/インフュージョン段階が開始される前に生じる従来技術の最初の混合段階に対して、時間がより短い。
【0015】
本発明によれば、用語「微粒子、微小気泡、マイクロバルーンまたはマイクロスフェア」は、相互交換可能である。
【0016】
本発明で用いられる液体組成物の粒子は、様々な種類であってよく、例えば、封入空気または超音波検査で用いられる他のガスを含むマイクロスフェアを含む。これらのマイクロスフェアは、液体/気体界面(微小気泡)によって境界が示され得て、または、それらは、例えばアルブミンなどの変性タンパク質のような天然ポリマーまたは合成ポリラクチドから作られる、触知できる膜エンベロープを有してよい(マイクロバルーン)。微小気泡懸濁液のための担体液体は、界面活性剤、好ましくは薄板状または層状形態の飽和リン脂質、例えば、アシル基がC16またはより高い脂肪酸残基であるジアシルホスファチジル誘導体を含む。
【0017】
微小気泡またはマイクロバルーンで用いられる気体は、少なくとも1つの生理的に許容できるハロゲン化ガスを含む気体混合物または純粋な気体である。このハロゲン化ガスは、好ましくは、CF4、C2F6、C3F8、C4F8C4F10、C5F12、C6F14またはSF6の中から選択される。また、気体混合物は、空気、酸素、窒素、ヘリウム、キセノンまたは二酸化炭素のような気体を含んでもよい。実際に、多くの場合において、微小気泡またはマイクロバルーンは、1~99%の間で変化し得る比率の少なくとも1つのパーフルオロ化ガスを含む窒素または空気の混合物を含む。
【0018】
マイクロバルーンでは、膜は、生分解性ポリマー、固形トリグリセリドまたはタンパク質のような生分解性材料から作られて、好ましくは、ポリ乳酸またはポリグリコール酸のポリマーおよびそれらの共重合体、変性血清アルブミン、変性ヘモグロビン、低級アルキルポリシアノアクリレート、および、ポリグルタミン酸およびポリアスパラギン酸、トリパルミチンまたはトリステアリンなどのエステルから選択される。一実施態様では、マイクロバルーンはC3Fgで充填されて、材料エンベロープはアルブミンで作られる。
【0019】
本発明は、以下の図面を参照して読まれる、限定ではなくて例として与えられる以下の詳細な説明から完全に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の方法を実施するために用いられるインフュージョンポンプデバイスを示す。
【
図2】本発明の方法の例に係る予混合ステップ(ここで、第二の参照点は、第一の参照点と一致する)、その後に、部分的にのみ表わされるインフュージョン/インジェクションおよび混合ステップのグラフを示す(ここで、第三の参照点は、第一の参照点および第二の参照点の両方と一致する)。 <
図2.1、2.2および2.3>
図2の例に係る予混合ステップを図表様式で示す。
【
図3】本発明の方法のさらなる例に係る予混合ステップ(ここで、第二の参照点は、第一の参照点とは異なる)、その後に、部分的にのみ表わされるインフュージョン/インジェクションおよび混合ステップのグラフを示す(ここで、第三の参照点は、第一の参照点および第二の参照点とは異なる)。 <
図3.1、3.2および3.3>
図3の例に係る予混合ステップを図表様式で示す。
【
図4】<
図4a、4bおよび4c> 本発明の好ましい構成に係る予混合ステップ中の液体懸濁液の特性を表わすグラフである。
【
図5】<
図5a、5bおよび5c> 従来技術の溶液と、本発明に係る予混合ステップを比較するグラフであり(前記予混合ステップは、その後にインフュージョン/インジェクションおよび混合ステップが続く)、それによれば、混合段階が名目上のインフュージョン/インジェクション段階の持続時間全体のあいだ行なわれる、名目上のインフュージョン/インジェクション段階が示される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る予混合ステップパラメーターを適切に調べるために、
図1に示されるインフュージョンポンプデバイスを用いて、いくつかの試験を行なった。
【0022】
詳しくは、
図1に示されるインフュージョンポンプデバイス10は、ベースプレート12、および、バレル16およびプランジャー18を有するシリンジ14を備える。好ましくは、シリンジ14の縦軸X-Xは、実質的に水平である。好ましくは、バレル16は、クレードル配列20によって回転可能な様式で支持される。好ましくは、プランジャー18は、バレル16内でスライドしていて、その中のプランジャーの転置は、プランジャー18の後方プッシャー末端と係合して前方および後方に移動することが可能なパワー被駆動ユニット22によって制御される。
【0023】
パワー被駆動ユニット22は、モーター手段(図示せず)、エンドレススクリュー22aおよびプッシングブロック22bを備える。モーター手段は、エンドレススクリュー22aを回転させて、それは順々に、インジェクションまたはインフュージョン段階中にプッシングブロック22bを並進させる。このようにして、プランジャー18(フランジを具備するその末端は、プッシングブロック22bによって係合される)は、シリンジバレル16内で動かされて、その中に含まれる液体組成物は押し出されて、患者へインジェクション/インフュージョンされる。インジェクション/インフュージョン段階中のプランジャー18の移動は、矢印22cによって示される。インジェクション/インフュージョン段階が終わると、エンドレススクリューは、開始位置に戻される。
【0024】
クレードル配列20は、第一の支持体20aおよび第二の支持体20bを備え、支持ブラケット30とモーター被駆動ユニット24との間にシリンジバレルを適切に並べられた位置に支持するのに貢献する。詳しくは、第二の支持体20bは、長軸方向に伸長されて、その長軸方向の伸長のほとんどの部分に関してシリンジバレル16を長軸方向に支持する。第一の支持体20aは、シリンジバレルの軸末端(すなわちシリンジノズル出口)に位置し、バレルの円柱状の外側表面のほとんどの部分を囲って、その回転運動中にシリンジバレルを係合およびブロックする。
【0025】
より具体的には、クレードル20は、シリンジ14の縦軸X-Xの周りで回転(すなわち振動)される。回転は、レスト位置(
図2.1および3.1の開始点A)から第一の参照位置(
図2.1、2.2および3.1、3.2の第一の参照点B)までの最初の回転を含んでよい。約180°の前記の最初の回転は、シリンジ壁からの液体懸濁液微小気泡の分離を開始するためにシリンジクレードルを逆転するために行なわれる。それから、回転は、前記の第一の参照位置から(周りで)少なくとも1つの振動する運動をさらに含む。
【0026】
この説明および特許請求の範囲における用語「振動する運動」は、参照位置の周りの時計回り-反時計回りの繰り返し運動を意味することが意図される。1つの例は、以下を含む:
i.参照点から第一の最大回転点に、参照点(例えば
図2.2の点B)から+δ度での(例えば
図2.2の点B’)時計回り(または反時計回り)運動;
ii.第一の最大回転点(例えば
図2.2の点B’)から第二の最大回転点に、参照点(例えば
図2.2の点B)から-δ度での(例えば
図2.2の点B’’)反時計回り(または時計回り)運動;
iii.第二の最大回転点から第一の最大回転点に、参照点から+δ度での時計回り(または反時計回り)運動。
【0027】
典型的に、振動する運動は、ii.およびiii.による多くの振動を含み、それは、参照点の周りの回転角によって定義される。例えば、用語「±40°」は、参照点の周りの40°の振動する回転運動を示す。これは、レジームにおいて、80°の全角度伸長を有する時計回り-反時計回りの回転が提供されることを意味する。
【0028】
好ましくは、時計回りおよび反時計回りの回転は、同じ角速度で行なわれる。
【0029】
回転運動は連続的であってよく、すなわち、反対方向の回転が開始する前にいかなる休止もない。あるいは、反対方向の回転が開始する前に休止が与えられる。
図1では、時計回りの運動は矢印CLKによって示されて;同様に、反時計回りの運動は矢印CCLKによって示される。
【0030】
好ましくは、ポンプデバイス10は、シリンジ上の識別マークを読み取るようにデザインされたレーザー検知器からのシグナルを処理するためのコントロールデバイスをさらに備える。このマークは、シリンジの選択におけるエラーを防止するためにデザインされる。マークのコードは、標準的なバーコードまたはカラーコードに従ってよい。
【0031】
その軸末端において、シリンジバレルは、液体組成物を適切に投与するために液体分注チュービングに接続するためのチップまたはノズルを備える。液体組成物の投与は、患者に対するものであってよい。
【0032】
インフュージョンポンプデバイスは、一実施態様では、連続的なインジェクション/インフュージョンモードで、および/またはボーラスとして、任意の超音波造影剤(USCA)を送達するように構成されるが、SonoVue(商標)が、以下の試験全体を通じて用いられた。
【0033】
詳しくは、試験は、予混合段階のプロファイルならびにインジェクション/インフュージョン段階中に行なわれる混合段階の頻度を最適化するために行なわれた。その後に、試験は、予混合段階の完全な連続的プロファイルの後に混合段階を確証して、それらは、予混合段階のあいだ、非常に良好なSonoVue(商標)懸濁液の再均一化、ならびに、インジェクション/インフュージョン段階全体のあいだ、微小気泡濃度およびサイズ分配の観点から非常に満足で安定したSonoVue(商標)保存プロファイルを示した。
【0034】
デカントされた懸濁液の混合を改善するために、本発明に係るインジェクション/インフュージョンの方法は、予混合段階を含み、それは、2つの連続的な予混合ステップに分けられる:
-シリンジバレル壁から液体懸濁液の微小気泡(または微粒子)を分離させることを目的とする、第一の予混合ステップ、および
-インフュージョン/インジェクション段階が開始する前に微小気泡(または微粒子)の均一な分配に到達することを目的とする、第二の予混合ステップ(これらの微小気泡は、シリンジ逆転ステップおよび第一の予混合ステップ中にシリンジバレル壁から引き離されている)。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、第一の予混合ステップは、第一の参照点の周りで振動する運動(すなわち、一連の連続する時計回りおよび反時計回りの回転)の後に、第二の参照点の周りで振動する運動である第二の予混合ステップを含み、ここで、第二の参照点は、第一の参照点と一致する(
図2を参照)。本発明によれば、前記の第二の参照点からの(周りの)振動する運動の全振幅(すなわち全角度伸長)は、前記の第一の参照点からの振動する運動の全振幅よりも大きい。
【0036】
この実施態様を、
図2.1、2.2および2.3に模式的に示す。
【0037】
詳しくは、
図2.1は、180°回転されて開始点Aから第一の参照点Bに動かされるクレードル(円16によって例示される)を示す。この逆転ステップは、
図2のステップ1に相当する。
【0038】
図2.2は、第一の予混合ステップを表わし、それによれば、クレードル16は、第一の参照点Bから振動される。具体的には、
図2.2の図表は、角度±δ(第一の回転角)の参照点Bの周りでの一連の連続する時計回りおよび反時計回りの回転を示す。より詳細には、例では、参照点Bから点B’への+δの時計回りの回転の後に、点B’から点B’’への反時計回りの回転が続く。引き続き、点B’’から点B’への時計回りの回転が行われる。反対回転のこの交替は、第一の予混合ステップの設定された第一の期間内により多くの回数なされて、それは、
図2のステップ2に相当する。
【0039】
図2.3は、第二の予混合ステップを表わし、それによれば、クレードル16は、第二の参照点C(この例では、第一の参照点Bに相当(一致)する)から振動される。具体的には、
図2.3の図表は、角度±γ(第二の回転角)の参照点B=Cの周りでの一連の連続する時計回りおよび反時計回りの回転を示す。より詳細には、示される例では、参照点B=Cから点C’への+γの時計回りの回転の後に、点C’から点C’’への反時計回りの回転が続く。引き続き、点C’’から点C’への時計回りの回転が行われる。反対回転のこの交替は、第二の予混合ステップの設定された第二の期間内により多くの回数なされて、それは、
図2のステップ3に相当する。
【0040】
本発明の代替の実施態様によれば、第一の予混合ステップは、第一の参照点の周りで振動する運動の後に、第二の参照点の周りで振動する運動である第二の予混合ステップを含み、ここで、第二の参照点は、第一の参照点とは異なる(
図3参照)。本発明によれば、前記の第二の参照点からの(周りの)振動する運動の全振幅(すなわち全角度伸長)は、前記の第一の参照点からの振動する運動の全振幅よりも大きい。
【0041】
この実施態様を、
図3.1、3.2および3.3に模式的に示す。
【0042】
詳しくは、
図3.1は、180°回転されて開始点Aから第一の参照点Bに動かされるクレードル(円16によって例示される)を示す。この逆転ステップは、
図3のステップ1に相当する。
【0043】
図3.2は、第一の予混合ステップを表わし、それによれば、クレードル16は、第一の参照点Bから振動される。具体的には、
図3.2の図表は、角度±δ(第一の回転角)の参照点Bの周りでの一連の連続する時計回りおよび反時計回りの回転を示す。より詳細には、例では、参照点Bから点B’への+δの時計回りの回転の後に、点B’から点B’’への反時計回りの回転が続く(およびしたがって、全回転角は2δと等しい)。引き続き、点B’’から点B’への時計回りの回転が行われる。反対回転のこの交替は、第一の予混合ステップの設定された第一の期間内により多くの回数なされて、それは
図3のステップ2に相当する。
【0044】
図3.3は、第二の予混合ステップを表わし、それによれば、クレードル16は、第二の参照点Dから振動されて、それは、第一の予混合ステップの第一の参照点Bとは異なる。特に、
図3.3の図表は、点B’から(ここで、この例によれば、クレードルは、第一の予混合ステップの最後に置かれる)、開始点Aへの第一の反時計回りの回転を示す。それから、角度±γ(第二の回転角)の参照点Dの周りでの一連の連続する時計回りおよび反時計回りの回転が開始される。より詳細には、示される例では、参照点Aから点D’への時計回りの回転(全回転角は2γと等しい)の後に、点D’から点D’’(この例では、開始点Aと一致する)への反時計回りの回転が続く。引き続き、点D’’から点D’への時計回りの回転が行われる。反対回転のこの交替は、第二の予混合ステップの設定された第二の期間内により多くの回数なされて、それは
図3のステップ3に相当する。
【0045】
第一および第二の予混合ステップでは、回転角、角速度および持続時間の変動は、完全に研究された。
【0046】
この説明では、以下の表現が用いられている:
「参照」または「参照サンプル」は、任意の試験(実験)の開始前にいかなる混合またはデカンテーションにも供されずにシリンジバレルから得られた懸濁液のサンプルを示し;微小気泡の名目上の(実際)濃度および分配に相当する;
「合計の微小気泡conc.」(conc.=濃度)は、参照における合計の微小気泡濃度の値と比較した、懸濁液の所定のサンプルの合計の微小気泡濃度のパーセンテージを示す;
「2~8μm」または「2~8μm微小気泡濃度」は、参照における同一の微小気泡直径範囲の濃度と比較した、懸濁液の所定のサンプルのmlあたり2μm~8μmの直径を有する微小気泡のパーセンテージを示す;
「MVC」または「微小気泡容積濃度」は、参照におけるml(ミリリットル)あたりの合計微小気泡容積(マイクロリットル中)と比較した、懸濁液の所定のサンプルのml(ミリリットル)あたりの合計微小気泡容積(マイクロリットル中)のパーセンテージを示す。
【0047】
この説明および特許請求の範囲において、別段の定めのない限り、時間は秒で表される(「s」または「sec」でも示される)。角度測定は度で表される(「deg」または「°」でも示される)。角速度は度/秒で表される(「°/s」でも示される)。
【実施例】
【0048】
1. 第一の予混合ステップにおける関連のあるパラメーターの変動
1.1 予備実験
全ての試験に関し、時間ゼロは、クレードルを30分間止めて、インフュージョン段階が開始される前に測定した(インフュージョン段階中に混合段階は行なわれない)。時間ゼロサンプルは、デカンテーションの最悪の場合を表わし、集められて、参照サンプルとの比較によって分析された。
【0049】
1.2 第一の予混合ステップ中の回転の角速度
一連の試験は、第一の予混合ステップに関するインフュージョンポンプデバイスの適切な角速度を確立するために行なった。
【0050】
試験は、それぞれ、820°/sの角速度および2000°/sの角速度で行なった。
【0051】
得られた結果を、5秒の第一の予混合ステップ持続時間のあいだ、これらの2つの角速度の間で比較したが、第二の予混合ステップのパラメーターは変更しなかった。
【0052】
実験を3回繰り返した(表のバイアル1~3)。結果を、参照サンプルに対する%として計算して、平均をパーセントで表した。
【0053】
以下の表1.1および1.2は、液体懸濁液の特性の進化を示す(合計微小気泡濃度、2~8μm微小気泡濃度および微小気泡容積濃度(MVC)に焦点を当てる)。
【0054】
このシリーズの第一の試験は、シリンジクレードルを、5sの時間、約820°/sの角速度で±30°(第一の回転角δ)の間を振動させる(回転させる)ことによって行ない(このステップは第一の予混合ステップであり、例えば
図3.2に対応する)、その後に、シリンジクレードルが約820°/sの角速度で225°(第二の回転の全振幅、すなわち2γに対応する)振動されるステップが続けられた(このステップは第二の予混合ステップであり、例えば
図3.3に対応する)。この第二の予混合ステップは、
図3.1、3.2および3.3に示される実施態様に従って行われ、すなわち、第二の参照点は、第一の参照点とは異なった。回転運動のそれぞれの反転の間に(時計回りから反時計回りに、または逆も同様)、クレードルは、約0.1sのあいだ、止めたままにされた(すなわち、約0.1sの第一の休止は、表において「h」として示される225°に対応するサイクルの上側に設定されて、約0.1sの第二の休止は、表において「b」として示される0°に対応するサイクルの下側に設定された)。それぞれのクレードル反転の間でクレードルを(所定の休止時間)止めたままにすることは任意選択であり、好ましい実施態様として見なされていない。
【0055】
【0056】
このシリーズの第二の試験は、シリンジクレードルを、5sの時間、約2000°/sの角速度で±30°(第一の回転角δ)の間を振動させる(回転させる)ことによって行ない(このステップは第一の予混合ステップであり、例えば
図3.2に対応する)、その後に、シリンジクレードルが約820°/sの角速度で225°(第二の回転の全振幅、すなわち2γに対応する)振動される(回転される)ステップが続けられた(このステップは第二の予混合ステップであり、例えば
図3.3に対応する)。この第二の予混合ステップは、
図3.1、3.2および3.3に示される実施態様に従って行われ、すなわち、第二の参照点は、第一の参照点とは異なった。回転運動のそれぞれの反転の間に、クレードルは、約0.1sのあいだ、止めたままにされた(すなわち、第一の休止は、表において「h」として示される225°に対応するサイクルの上側に設定されて、第二の休止は、表において「b」として示される0°に対応するサイクルの下側に設定された)。それぞれのクレードル反転の間でクレードルを(所定の休止時間)止めたままにすることは任意選択であり、好ましい実施態様として見なされていない。
【0057】
【0058】
この第一の一連の試験は、2000°/sの角速度での結果が、820°/sの角速度でのものよりわずかに良いことを示した。
【0059】
1.3 第一の予混合ステップ中の回転角
以下の表2.1~2.5は、第一の予混合ステップ中の、異なる第一の回転角δでの、液体懸濁液の特性を示す(合計微小気泡濃度、2~8μm微小気泡濃度および微小気泡容積濃度(MVC)に焦点を当てる)。試験された回転角δは、±20°、±30°、±40°、±50°、±60°であった。それぞれの回転角に関して、クレードルおよびシリンジのアセンブリは、5秒の持続時間のあいだ、2000°/sで振動(回転)されて(第一の予混合ステップ)、それから、820°/sで225°(第二の回転の全振幅、すなわち2γに対応する)振動(回転)した(第二の予混合ステップ)。この第二の予混合ステップは、
図3.1、3.2および3.3に示される実施態様に従って行われ、すなわち、第二の参照点は、第一の参照点とは異なった。
【0060】
全ての得られた結果を参照サンプルと比較して、パーセントで示した。
【0061】
このシリーズの第一の試験は、シリンジクレードルを、5秒の間、約2000°/sの角速度で±20°(第一の回転角δ)振動させることによって行ない(このステップは第一の予混合ステップであり、例えば
図3.2の段階に対応する)、その後に、シリンジクレードルが約820°/sの角速度で225°(第二の回転の全振幅、すなわち2γに対応する)振動されるステップが続けられた(このステップは第二の予混合ステップであり、例えば
図3.3に対応する)。回転運動のそれぞれの反転の間に、クレードルは、約0.1sのあいだ、止めたままにされた(すなわち、第一の休止は、表において「h」として示される225°に対応するサイクルの上側に設定されて、第二の休止は、表において「b」として示される0°に対応するサイクルの下側に設定された)。それぞれのクレードル反転の間でクレードルを(所定の休止時間)止めたままにすることは任意選択であり、好ましい実施態様として見なされていない。
【0062】
【0063】
このシリーズの第二の試験は、第一の試験と同一の時間、同一の角速度で、シリンジクレードルを±30°(第一の回転角δ)振動させることによって行なった。他の条件は全て、変更されないままであった。
【0064】
【0065】
このシリーズの第三の試験は、第一の試験と同一の時間、同一の角速度で、シリンジクレードルを±40°(第一の回転角δ)振動させることによって行なった。他の条件は全て、変更されないままであった。
【0066】
【0067】
このシリーズの第四の試験は、第一の試験と同一の時間、同一の角速度で、シリンジクレードルを±50°(第一の回転角δ)振動させることによって行なった。他の条件は全て、変更されないままであった。
【0068】
【0069】
このシリーズの第五の試験は、第一の試験と同一の時間、同一の角速度で、シリンジクレードルを±60°(第一の回転角δ)振動させることによって行なった。他の条件は全て、変更されないままであった。
【0070】
【0071】
表におけるデータから、最も良い条件は、40°~60°の回転角で得られたことが分かる。40°よりも小さい回転角は、特に、合計微小気泡濃度および2μm~8μmのサイズを有する微小気泡のパーセンテージの観点から、より満足の低い結果を提供した。
【0072】
1.4 第一の予混合ステップの持続時間
本出願人は、第一の予混合ステップの最良の持続時間を確立するために、第一の予混合ステップをさらに研究した。
【0073】
表3.1~3.3は、異なる持続時間での、合計微小気泡濃度、2~8μm微小気泡濃度および微小気泡容積濃度(MVC))に焦点を当てた試験結果を示す。試験の目的は、持続時間ができるだけ短い第一の予混合ステップの後に、第一の予混合ステップのものとは異なる操作パラメーターで行なわれる第二の予混合ステップを有することであった。
【0074】
全ての得られた結果を参照サンプルと比較して、パーセントで示した。
図4a~4cに示される曲線のそれぞれの点は、少なくとも3回の測定の平均である。これらの曲線は、表3.3に挙げられるデータから得られる。
【0075】
試験は、第一の予混合ステップに関する2秒は、微小気泡をシリンジバレル壁から引き離して、その結果、シリンジ内で良く混合された懸濁液を得るのに十分効果的であることを示した。さらに、40°の第一の回転角は、60°の第一の回転角と比較してより効果的であることが示された。
【0076】
より詳細には、第一の試験では(表3.1を参照)、以下の条件が試験された:±60°の第一の回転角δ、2000°/sの角速度、3secの第一の予混合ステップの持続時間。この第一の予混合ステップの後に、225°(=2γ)の第二の回転の全振幅および2000°/sの角速度で第二の予混合ステップを続けた。回転運動のそれぞれの反転の間に、クレードルは、約0.1sのあいだ、止めたままにされた(すなわち、第一の休止は、表において「h」として示される225°に対応するサイクルの上側に設定されて、第二の休止は、表において「b」として示される0°に対応するサイクルの下側に設定された)。それぞれのクレードル反転の間でクレードルを(所定の休止時間)止めたままにすることは任意選択であり、好ましい実施態様として見なされていない。
【0077】
【0078】
第二の試験では(表3.2を参照)、以下の条件が試験された:±60°の第一の回転角δ、2000°/sの角速度、2secの第一の予混合ステップの持続時間。この第一の予混合ステップの後に、225°(=2γ)の第二の回転の全振幅2000°/sの角速度で第二の予混合ステップを続けた。
【0079】
【0080】
第三の試験では(表3.3を参照)、以下の条件が試験された:±40°の第一の回転角δ、2000°/sの角速度、2secの第一の予混合ステップの持続時間。この第一の予混合ステップの後に、225°(=2γ)の第二の回転の全振幅および2000°/sの角速度で第二の予混合ステップを続けた。これらの値は
図3に例示されるものである。
【0081】
【0082】
以上から、第一の予混合ステップに関する最良の条件は、40°の第一の回転角、2000°/sの角速度および2secの持続時間であったことが分かる。
【0083】
2. 第二の予混合ステップにおけるパラメーターの変動
【0084】
第一の予混合ステップの後に、微小気泡は、シリンジバレル壁から引き離される結果となったが、本出願人は、第二の予混合ステップに関する最良の条件を確立するために、微小気泡(それは、第一の予混合ステップ中、シリンジバレル壁から引き離されている)の均一な分配を得ることを目的とする、さらなる試験を行なった。
【0085】
2.1 第二の予混合ステップ中の回転角
表4.1~4.3は、第二の予混合ステップ中の異なる第二の回転角に関する、液体懸濁液の特性の値を示す(合計微小気泡濃度、2~8μm微小気泡濃度および微小気泡容積濃度(MVC)に焦点を当てる)。
【0086】
この試験に関して、第一の予混合ステップはゼロに設定されて、すなわち、第一の予混合ステップは行なわれなかった(すなわち、
図2および3における段階2は無い)。全ての試験において、角速度は2000°/sに設定された。
【0087】
以下に報告される表に示されるように、最良の条件(すなわち、100%合計微小気泡濃度に出来るだけ早く到達する)は、225°(=2γ)の第二の回転の全振幅で得られた。上述の以前の試験のように、回転運動のそれぞれの反転の間に、クレードルは、約0.1sのあいだ、止めたままにされた(すなわち、第一の休止は、表において「h」として示される225°に対応するサイクルの上側に設定されて、第二の休止は、表において「b」として示される0°に対応するサイクルの下側に設定された)。それぞれのクレードル反転の間でクレードルを(所定の休止時間)止めたままにすることは任意選択であり、好ましい実施態様として見なされていない。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
既に上述のように、SonoVue(商標)懸濁液は、混合しないと相対的に急速に沈殿する。従来技術の溶液によれば、以前に示されるように、最初の混合段階が、インフュージョンまたはインジェクション段階を開始する前に液体懸濁液の微小気泡を再懸濁させるために手配されて、それから、同一の最初の混合段階が、インフュージョン/インジェクション段階中にも行なわれた。最初の混合段階(インフュージョン/インジェクション段階が開始される前に生じる)は、少なくとも約90秒続く単一ステップで行なわれた。本出願人は、インジェクション/インフュージョン段階が効果的に行なわれ得る前のこの持続時間は長すぎると考え、混合段階の持続時間を減らすために、インフュージョン/インジェクション段階が開始される前に生じる混合段階をより効果的にすることを目的とした。
【0092】
したがって、本発明によれば、異なる操作(予混合)パラメーターに従って行われる2つの別個の予混合ステップに分けられた予混合段階が行なわれる。詳しくは、予混合段階は、第一の操作パラメーターに従った第一の予混合ステップの後に、第二の操作パラメーターに従った第二の予混合ステップを含む。第一および第二の予混合ステップは切り離されず、その間にいかなる休止もせずに続けて行なわれるにもかかわらず、本発明に係る予混合段階は、2ステップの予混合段階として考えられる。
【0093】
本出願人によってSonoVue(商標)を造影剤として用いて行なわれる試験によれば、第一の予混合ステップは、時間が短くあるべきであり、第一の角速度で第一の回転角によってシリンジを往復運動させることによって行なわれるべきであり、一方で、第二の予混合ステップは、第一の予混合ステップよりも時間が長くあるべきであり、第二の角速度で第二の回転角によってシリンジを往復運動させることによって行なわれるべきである。
【0094】
したがって、本発明の一実施態様によれば、第一の予混合ステップに対応する第一の持続時間t1は、第二の予混合ステップに対応する第二の持続時間t2よりも短い。好ましくは、第二の持続時間t2は、第一の持続時間t1よりも少なくとも3~4倍長い。
【0095】
一実施態様によれば、第一の持続時間t1は、約1~3秒である。好ましくは、第一の持続時間t1は、約2秒である。
【0096】
一実施態様によれば、第二の持続時間t2は、約10~20秒である。好ましくは、第二の持続時間t2は、約11~16秒である。より好ましくは、第二の持続時間t2は、約12~15秒である。さらにより好ましくは、第二の持続時間t2は、約12~13秒である。
【0097】
一実施態様によれば、第一の予混合ステップの第一の回転角δは、約20°~60°である。好ましくは、第一の回転角δは、約30°~50°である。より好ましくは、第一の回転角δは、約40°に等しい。
【0098】
好ましくは、第二の予混合ステップの第二の回転角γは、第一の回転角δよりも大きい。より好ましくは、第二の回転角γは、第一の回転角δよりも3~5倍大きい。
【0099】
一実施態様によれば、第二の回転角γは、約90°~160°である。好ましくは、第二の回転角γは、約105°~115°である。より好ましくは、第二の回転角γは、約112,5°に等しい。
【0100】
好ましくは、シリンジの角速度ω(すなわち回転速度)は、1000°/sよりも高い。より好ましくは、角速度ωは、約2000°/sである。
【0101】
既に上記で予測されるように、
図2および
図3は、本発明に係る予混合段階ならびに連続するインジェクション/インフュージョンおよび混合段階の第一の部分(すなわち、インジェクションステップの持続時間全体のあいだに行なわれる混合ステップ)を図表様式で示す。グラフは、2つの(第一および第二)予混合ステップの後に、混合段階を含むインジェクション/インフュージョン段階を有する、典型的な予混合プロファイル(時間の関数としてのクレードル回転角)を示す。
【0102】
詳しくは、
図2および
図3は、本発明の一実施態様に係る、以下のステップおよび段階を示す:
段階1:クレードルを180°回転させることにより得られるシリンジクレードル逆転を示す(
図2、2.1および3、3.1を参照);
段階2:シリンジ壁からの微小気泡を分離するための第一の予混合ステップを示す(
図2、2.2および3、3.2を参照);
段階3:シリンジバレル内に微小気泡を均一に分配するための第二の予混合ステップを示す(
図2、2.3および3、3.3を参照);
段階4:一連のクレードル逆転および予混合の全体を示す(すなわち、段階1~3の組み合わせ)(
図2および
図3を参照);
段階5:インジェクション/インフュージョン段階中に行なわれる混合段階を示す(
図2および
図3を参照).
【0103】
図4a、4bおよび4cは、表3.3に示されるデータから得られる。これらのグラフは、本発明に係る好ましい構成を有するデカントされた懸濁液(混合せずに30分)の、懸濁液の特性の進化を表わす(合計微小気泡濃度、2~8μm微小気泡濃度および微小気泡容積濃度(MVC)に焦点を当てる)。見ることができるように、これらの条件(すなわち、
図3に定義される操作パラメーター)では、30分間静置されたSonoVue
(商標)の懸濁液は、およそ15秒で良好に再懸濁される。
【0104】
図5a、5bおよび5cは、従来技術による方法で得られた結果および本発明による方法で得られた結果を比較するグラフである。
【0105】
最初に
図5aを参照すると、従来技術の方法によれば、許容できるパーセンテージの微小気泡濃度は、約90秒の時間後にのみ得られることが明らかである。この時間の前は、微小気泡濃度のパーセンテージは、100%より十分に低い。特に、約15秒後には、微小気泡濃度のパーセンテージは、約70%~75%である。
【0106】
これに反して、本発明の方法によれば、100%よりも高い微小気泡濃度の合計パーセンテージは、約15秒で得られて、この濃度の値は、名目上のインフュージョン段階全体を通じて実質的に維持される。本発明の方法を表わす曲線は、名目上のインフュージョン段階全体の間、従来技術の方法を表わす曲線の上である。したがって、本発明による方法は、微小気泡濃度の合計パーセンテージの観点ならびにインフュージョン段階を開始する前の予混合段階の持続時間の低減の観点から、より良好なパフォーマンスをもたらす。
【0107】
図5bは、従来技術の方法で得られた曲線に関する2μm~8μm微小気泡濃度のパーセンテージを示す。
【0108】
詳しくは、従来技術の方法によって得られた曲線は、15秒の期間後に、2μm~8μmのサイズを有する微小気泡のパーセンテージが、50%付近であることを示す。このパーセンテージは、次の20秒でかなり急速に増えて、約60秒で約90%の値に到達する。それから、パーセンテージは、ゆっくり増加して、最初の混合段階の開始から約90秒の合計時間後に、100%に近い値に到達する(しかしまだそれよりも下)。名目上のインフュージョン段階中、パーセンテージの値は約100%である。したがって、以前に述べたように、インフュージョン段階を開始する前の最初の混合段階の持続時間が長すぎて、ときには、操作者にとって不便であると見なされる。
【0109】
これに反して、本発明の方法によれば、2μm~8μmのサイズを有する微小気泡のパーセンテージは、たった10秒後に、100%よりも高い値に急速に増加する。予混合段階の開始から15秒で、パーセンテージの値は、100%よりも十分上である(約115%)。したがって、名目上のインフュージョン段階は、より早く、例えば10~15秒後に開始することができる。予混合段階後に、2~8μm微小気泡のパーセンテージは、約120秒間、まだ100%よりも高いままであり、それから、インフュージョン段階の時間(持続時間)の残った期間、100%付近で安定している。
【0110】
図5cは、従来技術の方法で得られた曲線に関する、微小気泡容積濃度のパーセンテージを示す。従来技術方法および本発明による方法の曲線は、
図5bに示される曲線に似ている。
【0111】
したがって、本発明に係る完全な連続的な予混合段階(第一の予混合ステップおよび第二の予混合ステップを含む)は、予混合段階のあいだの造影剤懸濁液の非常に良好な再均一化、および、インフュージョン段階全体のあいだの微小気泡濃度およびサイズ分配の観点から、非常に満足で安定した造影剤保存プロファイルを示すことが結論付けられ得る。