(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】人工膝関節置換術用手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20221019BHJP
A61F 2/38 20060101ALI20221019BHJP
A61F 2/46 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
A61B17/15
A61F2/38
A61F2/46
(21)【出願番号】P 2021130036
(22)【出願日】2021-08-06
(62)【分割の表示】P 2017064777の分割
【原出願日】2017-03-29
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】橋田 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】森 晶規
(72)【発明者】
【氏名】津坂 真矢
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0260301(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0178524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61F 2/38
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨遠位端を切除する切除刃の切除方向をガイドするスリット、及び前記大腿骨遠位端に固定するための固定ピンが挿入される固定ピン孔、が設けられた切除ガイド部と、
前記大腿骨遠位端に設置された前記切除ガイド部を前記大腿骨遠位端に向かって押圧可能な押圧部と、を備え、
前記押圧部は、
軸部と、
前記軸部の一方の端部側に設けられ、前記切除ガイド部に対して着脱自在に連結される連結部、又は前記切除ガイド部に当接する当接部と、
前記軸部の他方の端部側に設けられ、術者に把持される部分として構成される把持部と、
を含み、
前記切除ガイド部には、該切除ガイド部が前記大腿骨遠位端に設置された状態において、前記連結部が着脱自在に連結される被連結部、又は前記当接部が当接する被当接部、が設けられており、
前記被当接部は、該切除ガイド部が前記大腿骨遠位端に設置されたときに前記大腿骨遠位端と対向する面と反対側に設けられて
おり、
前記当接部及び前記被当接部の一方は、凹部として設けられ、前記当接部及び前記被当接部の他方は、前記凹部の内面に対して摺動自在な状態で当接する凸部として設けられており、
前記凸部の外面及び前記凹部の内面は、球面の一部を含む形状に形成されていることを特徴とする、人工膝関節置換術用手術器具。
【請求項2】
請求項
1に記載の人工膝関節置換術用手術器具において、
前記凹部の内面に含まれる球面の曲率半径は、前記凸部の外面に含まれる球面の曲率半径よりも大きいことを特徴とする、人工膝関節置換術用手術器具。
【請求項3】
大腿骨遠位端を切除する切除刃の切除方向をガイドするスリット、及び前記大腿骨遠位端に固定するための固定ピンが挿入される固定ピン孔、が設けられた切除ガイド部と、
前記大腿骨遠位端に設置された前記切除ガイド部を前記大腿骨遠位端に向かって押圧可能な押圧部と、を備え、
前記押圧部は、
軸部と、
前記軸部の一方の端部側に設けられ、前記切除ガイド部に対して着脱自在に連結される連結部、又は前記切除ガイド部に当接する当接部と、
前記軸部の他方の端部側に設けられ、術者に把持される部分として構成される把持部と、
を含み、
前記切除ガイド部には、該切除ガイド部が前記大腿骨遠位端に設置された状態において、前記連結部が着脱自在に連結される被連結部、又は前記当接部が当接する被当接部、が設けられており、
前記被当接部は、該切除ガイド部が前記大腿骨遠位端に設置されたときに前記大腿骨遠位端と対向する面と反対側に設けられており、
前記当接部及び前記被当接部の一方は、凹部として設けられ、前記当接部及び前記被当接部の他方は、前記凹部の内面に対して摺動自在な状態で当接する凸部として設けられており、
前記凸部の外面は、円錐形状の少なくとも一部の形状の部分を有していることを特徴とする、人工膝関節置換術用手術器具。
【請求項4】
大腿骨遠位端を切除する切除刃の切除方向をガイドするスリット、及び前記大腿骨遠位端に固定するための固定ピンが挿入される固定ピン孔、が設けられた切除ガイド部と、
前記大腿骨遠位端に設置された前記切除ガイド部を前記大腿骨遠位端に向かって押圧可能な押圧部と、を備え、
前記押圧部は、
軸部と、
前記軸部の一方の端部側に設けられ、前記切除ガイド部に対して着脱自在に連結される連結部、又は前記切除ガイド部に当接する当接部と、
前記軸部の他方の端部側に設けられ、術者に把持される部分として構成される把持部と、
を含み、
前記切除ガイド部には、該切除ガイド部が前記大腿骨遠位端に設置された状態において、前記連結部が着脱自在に連結される被連結部、又は前記当接部が当接する被当接部、が設けられており、
前記被当接部は、該切除ガイド部が前記大腿骨遠位端に設置されたときに前記大腿骨遠位端と対向する面と反対側に設けられており、
前記連結部及び前記被連結部の一方は、貫通孔が設けられた部分を含んで構成され、前記連結部及び前記被連結部の他方は、前記貫通孔に引っかけられる鉤爪状の部分を含んで構成されていることを特徴とする、人工膝関節置換術用手術器具。
【請求項5】
大腿骨遠位端を切除する切除刃の切除方向をガイドするスリット、及び前記大腿骨遠位端に固定するための固定ピンが挿入される固定ピン孔、が設けられた切除ガイド部と、
前記大腿骨遠位端に設置された前記切除ガイド部を前記大腿骨遠位端に向かって押圧可能な押圧部と、を備え、
前記押圧部は、
軸部と、
前記軸部の一方の端部側に設けられ、前記切除ガイド部に対して着脱自在に連結される連結部、又は前記切除ガイド部に当接する当接部と、
前記軸部の他方の端部側に設けられ、術者に把持される部分として構成される把持部と、
を含み、
前記切除ガイド部には、該切除ガイド部が前記大腿骨遠位端に設置された状態において、前記連結部が着脱自在に連結される被連結部、又は前記当接部が当接する被当接部、が設けられており、
前記被当接部は、該切除ガイド部が前記大腿骨遠位端に設置されたときに前記大腿骨遠位端と対向する面と反対側に設けられており、
前記被連結部は、前記連結部が摺動自在に嵌め込まれる連結用溝を含んで構成されていることを特徴とする、人工膝関節置換術用手術器具。
【請求項6】
請求項
5に記載の人工膝関節置換術用手術器具において、
前記連結用溝は、前記大腿骨遠位端に設置された前記切除ガイド部を前記大腿骨遠位端から抜去するための抜去治具の端部も該連結用溝に嵌め込まれるように構成されていることを特徴とする、人工膝関節置換術用手術器具。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の人工膝関節置換術用手術器具において、
前記軸部には、前記連結部と前記把持部との間において、又は前記当接部と前記把持部との間において、屈曲するように延びる屈曲部が設けられていることを特徴とする、人工膝関節置換術用手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膝関節置換術の際に用いられる人工膝関節置換術用手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節置換術では、大腿骨遠位端において骨切除が行われる際、例えば特許文献1、及び非特許文献1の37頁に開示されるような切除ガイド部が用いられる。人工膝関節置換術では、切除ガイド部が、固定ピンによって大腿骨遠位端の骨切り面に固定される。この切除ガイド部のスリットにボーンソー(切除刃)を挿入することにより、大腿骨遠位端における所望の位置を切除することができる。このように形成された骨切り面を設置面として、人工膝関節の大腿骨コンポーネントが設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】デピュイ(DePuy)、「Attune Knee System」、[online]、[平成29年3月6日検索]、インターネット〈http://synthes.vo.llnwd.net/o16/LLNWMB8/INT%20Mobile/Synthes%20International/Product%20Support%20Material/legacy_DePuy_PDFs/DSUS-JRC-0115-0680-1_LR.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにしてボーンソーで骨切除を行っている最中に、固定ピンによって大腿骨遠位端に固定された切除ガイド部が、ボーンソーの振動によって大腿骨遠位端から浮き上がってきてしまう場合がある。そうなると、予定していた位置とは異なる位置で骨切除を行ってしまうこととなる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、大腿骨遠位端の骨切除の際、切除ガイド部が大腿骨遠位端から浮き上がるのを防止できる、人工膝関節置換術用手術器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための本発明のある局面に係る人工膝関節置換術用手術器具は、大腿骨遠位端を切除する切除刃の切除方向をガイドするスリット、及び前記大腿骨遠位端に固定するための固定ピンが挿入される固定ピン孔、が設けられた切除ガイド部と、前記大腿骨遠位端に設置された前記切除ガイド部を前記大腿骨遠位端に向かって押圧可能な押圧部と、を備え、前記押圧部は、軸部と、前記軸部の一方の端部側に設けられ、前記切除ガイド部に対して着脱自在に連結される連結部、又は前記切除ガイド部に当接する当接部と、前記軸部の他方の端部側に設けられ、術者に把持される部分として構成される把持部と、を含み、前記切除ガイド部には、該切除ガイド部が前記大腿骨遠位端に設置された状態において、前記連結部が着脱自在に連結される被連結部、又は前記当接部が当接する被当接部、が設けられている。
【0008】
この構成によれば、切除ガイド部が固定ピンによって大腿骨遠位端に固定された後、切除刃がその切除ガイド部のスリットにガイドされることにより、大腿骨遠位端における各部位を適切な位置で切断することができる。
【0009】
また、この構成によれば、上述のようにして切除ガイド部のスリットに沿って大腿骨遠位端が切除される際、押圧部によって切除ガイド部が大腿骨遠位端側へ押圧される。これにより、切除刃によって大腿骨遠位端が切除される際、切除刃の振動によって固定ピンが徐々に抜けてきてしまうことに起因する、大腿骨遠位端に対する切除ガイド部の浮き上がり、を防止できる。
【0010】
しかも、この構成によれば、押圧部の当接部が切除ガイド部の被当接部に当接した状態で、又は押圧部の連結部が切除ガイド部の被連結部に連結した状態で、切除ガイド部を押圧部によって押圧することができる。これにより、大腿骨遠位端に対する切除ガイド部の浮き上がりを確実に防止することができる。
【0011】
従って、この構成によれば、大腿骨遠位端の骨切除の際、切除ガイド部が大腿骨遠位端から浮き上がるのを防止できる、人工膝関節置換術用手術器具を提供できる。
【0012】
(2)好ましくは、前記当接部及び前記被当接部の一方は、凹部として設けられ、前記当接部及び前記被当接部の他方は、前記凹部の内面に対して摺動自在な状態で当接する凸部として設けられている。
【0013】
この構成によれば、凹部として設けられた当接部及び被当接部の一方に、凸部として設けられた当接部及び被当接部の他方が当接した状態で、押圧部によって切除ガイド部が押圧される。すなわち、この構成によれば、凹部の内側に凸部が嵌まり込むため、押圧部によって切除ガイド部が押圧される際に、押圧部が切除ガイド部から滑って切除ガイド部から外れてしまうことを防止できる。
【0014】
(3)更に好ましくは、前記凸部の外面及び前記凹部の内面は、球面の一部を含む形状に形成されている。
【0015】
この構成によれば、押圧部によって切除ガイド部が押圧される際、凸部に含まれる球面の一部と、凹部に含まれる球面の一部とが面接触する。すなわち、この構成によれば、押圧部の当接部を、切除ガイド部の被当接部に対して、比較的広範囲に亘って密着させることができるため、押圧部からの押圧力を切除ガイド部に対して確実に伝えることができる。
【0016】
しかも、この構成によれば、凸部及び凹部の双方に含まれる球面の一部同士が密着した状態で摺動可能である。これにより、例えば切除ガイド部のスリットに切除刃を挿入して大腿骨遠位端を切除する際に押圧部が邪魔で大腿骨遠位端の切除がしにくい場合、凸部及び凹部の球面の一部同士が密着した状態を維持しつつ、切除ガイド部に対する押圧部の傾きを変えて、押圧部を切除刃から離間させることが可能となる。すなわち、この構成によれば、大腿骨遠位端の切除を行う際における切除刃と押圧部との干渉を防止できる。
【0017】
(4)更に好ましくは、前記凹部の内面に含まれる球面の曲率半径は、前記凸部の外面に含まれる球面の曲率半径よりも大きい。
【0018】
この構成によれば、例えば、凹部の内面に含まれる球面の曲率半径と凸部の外面に含まれる曲率半径とが同じである場合と比べて、凹部と凸部とを密着させつつ、押圧部を切除ガイド部に対して大きく傾けることができる。すなわち、この構成によれば、切除刃で大腿骨遠位端を切除する際に押圧部を切除刃から大きく離すことができるため、切除刃と押圧部との干渉を防止できる。
【0019】
(5)好ましくは、前記凸部の外面は、円錐形状の少なくとも一部の形状の部分を有している。
【0020】
この構成によれば、凸部の外面が有する円錐形状の少なくとも一部の形状の部分によって、切除ガイド部を大腿骨遠位端に対して押圧することができる。
【0021】
(6)好ましくは、前記連結部及び前記被連結部の一方は、貫通孔が設けられた部分を含んで構成され、前記連結部及び前記被連結部の他方は、前記貫通孔に引っかけられる鉤爪状の部分を含んで構成されている。
【0022】
この構成によれば、押圧部によって切除ガイド部が押圧される際、一方が他方に対して引っ掛けられた状態となる。よって、押圧部によって切除ガイド部を押圧する際、押圧部が切除ガイド部から外れてしまうことを防止できる。言い換えれば、押圧部による切除ガイド部の押圧状態を維持することができる。
【0023】
(7)好ましくは、前記被連結部は、前記連結部が摺動自在に嵌め込まれる連結用溝を含んで構成されている。
【0024】
この構成によれば、被連結部を、溝状に形成された連結用溝で構成できるため、被連結部の構成を簡素化できる。
【0025】
(8)更に好ましくは、前記連結用溝は、前記大腿骨遠位端に設置された前記切除ガイド部を前記大腿骨遠位端から抜去するための抜去治具の端部も該連結用溝に嵌め込まれるように構成されている。
【0026】
この構成によれば、押圧部を切除ガイド部に対して連結するための被連結部として機能する連結用溝を、抜去治具の端部を切除ガイド部に対して嵌め込むためにも用いることができる。すなわち、この構成によれば、被連結部としての連結用溝を他の用途にも流用することができるため、切除ガイド部の構成を簡略化できる。
【0027】
(9)好ましくは、前記軸部には、前記連結部と前記把持部との間において、又は前記当接部と前記把持部との間において、屈曲するように延びる屈曲部が設けられている。
【0028】
この構成によれば、押圧部で切除ガイド部を押圧する際、押圧部を切除ガイド部から大きく外側へ離間させることができる。これにより、大腿骨遠位端の切除を行う際における切除刃と押圧部との干渉を防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、大腿骨遠位端の骨切除の際、切除ガイド部が大腿骨遠位端から浮き上がるのを防止できる、人工膝関節置換術用手術器具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具を示す図である。
【
図3】
図3(A)は、
図2に示す切除ガイド部の斜視図、
図3(B)は、
図2に示す切除ガイド部を
図3(A)とは別の方向から視た斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、
図2のIVA-IVA線における断面図である。また、
図4(B)は、
図4(A)に示す被当接凹部に押圧器具の当接部が当接している状態を示す断面図である。
【
図5】切除ガイド部が大腿骨遠位端に固定された状態を示す図である。
【
図7】
図1に示す人工膝関節置換術用手術器具の使用形態の一例を示す斜視図である。
【
図8】人工膝関節置換術用手術器具の使用形態の一例を示す側面図であって、
図8(A)は、ボーンソーが前側スリットに挿入される際の状態を示す図、
図8(B)は、ボーンソーが後側スリットに挿入される際の状態を示す図、である。
【
図9】変形例に係る切除ガイド部の被当接凹部の断面部分を示す図であって、押圧器具の当接部が当接している状態を示す図である。
【
図10】
図10(A)は、変形例に係る押圧器具の当接部の形状を示す図であって、
図9(B)に示す被当接凹部に当接している状態を示す図である。また、
図10(B)は、
図10(A)に示す当接部が
図9(C)に示す被当接凹部に当接している状態を示す図である。また、
図10(C)は、
図10(A)に示す当接部が
図9(E)に示す被当接凹部に当接している状態を示す図である。
【
図11】
図11(A)は、変形例に係る押圧器具の当接部の形状を示す図であって、
図9(D)に示す被当接凹部に当接している状態を示す図である。また、
図11(B)は、変形例に係る押圧器具の当接部が、変形例に係る切除ガイド部の被当接部に当接している状態を示す図である。また、
図11(C)は、
図11(B)に示す当接部が、変形例に係る切除ガイド部の被当接部に当接している状態を示す図である。
【
図12】
図12(A)は、変形例に係る押圧器具の連結部の形状を示す図であって、変形例に係る切除ガイド部の連結用溝(被連結部)に連結している状態を示す図である。また、
図12(B)は、
図12(A)に示す連結用溝に抜去治具の端部が連結している状態を模式的に示す図である。
【
図14】変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具の使用形態の一例を示す斜視図である。
【
図15】変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具の使用形態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1を示す図である。また、
図2は、
図1に示す切除ガイド部2の正面図である。また、
図3(A)は、
図2に示す切除ガイド部2の斜視図、
図3(B)は、
図2に示す切除ガイド部2を
図3(A)とは別の方向から視た斜視図である。また、
図4(A)は、
図2のIVA-IVA線における断面図である。また、
図4(B)は、
図4(A)に示す被当接凹部18に押圧器具3の当接部35が当接している状態を示す断面図である。また、
図5は、切除ガイド部2が大腿骨遠位端101に固定された状態を示す斜視図である。
【0032】
なお、以下で説明する各図について、説明の便宜上、上と記載された矢印が指示する方向を上側又は上方、下と記載された矢印が指示する方向を下側又は下方、前と記載された矢印が指示する方向を前側又は前方、後と記載された矢印が指示する方向を後側又は後方、右と記載された矢印が指示する方向を右側、左と記載された矢印が指示する方向を左側、と称する。また、
図2,3,5,7,8,11,12,14,15における上下方向、前後方向、及び左右方向は、それぞれ、患者の人体の上下方向、前後方向、及び左右方向に対応する。なお、
図6,13における上下方向、前後方向、及び左右方向は、押圧器具の形状を説明するためのものであって、他の図の上下方向、前後方向、及び左右方向とは必ずしも対応しない。
【0033】
本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1は、人工膝関節置換術で用いられる。人工膝関節置換術とは、例えば変形性膝関節症や慢性関節リウマチ等により膝関節が高度に変形した患者の膝関節を人工膝関節へ置換する手術である。
【0034】
本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1は、
図1を参照して、切除ガイド部2と、押圧器具3(押圧部)とを備えている。
【0035】
[切除ガイド部の構成]
切除ガイド部2は、
図2及び
図3を参照して、上下方向に厚みを有するブロック状に形成されている。切除ガイド部2は、本体部11及び固定部20を有し、これらが一体に形成されている。本体部11は、切除ガイド部2を上下方向から視た場合における該切除ガイド部2の中央部分を構成する部分であって、矩形状に形成されている。固定部20は、本体部11における左右両縁部のそれぞれから外側へやや延びるように形成された部分である。各固定部20には、前後方向に間隔を空けて2つの固定ピン孔21が形成されている。固定ピン孔21は、切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に固定するための固定ピン5が挿入される孔である。切除ガイド部2は、患者の大腿骨100の大腿骨遠位端101に固定される際、固定ピン5が固定ピン孔21を介して大腿骨遠位端101に打ち込まれることにより、大腿骨遠位端101に対して固定される。
【0036】
切除ガイド部2には、複数のスリット12,13,14a,14bが形成されている。具体的には、切除ガイド部2には、前側スリット12と、後側スリット13と、前側チャンファー用スリット14aと、後側チャンファー用スリット14bと、が形成されている。これら複数のスリット12,13,14a,14bは、大腿骨遠位端101を切除するボーンソー50(切除刃、
図8において仮想線で図示)の切除方向をガイドするためのものである。
【0037】
前側スリット12は、切除ガイド部2が大腿骨遠位端101に設置された状態において、大腿骨遠位端101の前面側が切除される切除方向に沿って延びている。前側スリット12は、大腿骨遠位端101の前面側を切除するためのものである。前側スリット12は、
図2及び
図3に示すように、切除ガイド部2の本体部11における前側の部分に形成されている。前側スリット12は、左右方向に細長いスリット状に形成され、本体部11を上下方向において貫通している。
【0038】
後側スリット13は、切除ガイド部2が大腿骨遠位端101に設置された状態において、大腿骨遠位端101の後面側が切除される切除方向に沿って延びている。後側スリット13は、大腿骨遠位端101の後面側を切除するためのものである。後側スリット13は、
図2及び
図3に示すように、切除ガイド部2の後側の部分に形成されている。後側スリット13は、左右方向に細長いスリット状に形成され、本体部11を上下方向において貫通している。
【0039】
前側チャンファー用スリット14aは、大腿骨遠位端101における前側の部分にチャンファー面を形成するためのものである。前側チャンファー用スリット14aは、
図2及び
図3に示すように、切除ガイド部2の前面中央部分から該切除ガイド部2の裏面における中央部分と左右両側とに向かって延びるように形成されている。前側チャンファー用スリット14aは、上下左右方向に延びる面に対して斜め方向に延びるスリット状に形成されている。
【0040】
後側チャンファー用スリット14bは、大腿骨遠位端101における後側の部分にチャンファー面を形成するためのものである。後側チャンファー用スリット14bは、
図2及び
図3に示すように、前側チャンファー用スリット14aよりも後側であって、且つ切除ガイド部2の前後方向中央部分における左右両側に形成されている。後側チャンファー用スリット14bは、上下左右方向に延びる面に対して斜め方向に延びるスリット状に形成されている。
【0041】
また、切除ガイド部2の本体部11には、一対の基準孔15,15、一対の内旋孔16,16、及び一対の外旋孔17,17が形成されている。各孔15,16,17は、本体部11を上下方向に貫通する貫通孔であって、互いに異なる孔として構成されている。これらの孔15,16,17は、詳しい説明は省略するが、術前計画に基づく切除ガイド部2の設置位置である基準位置に切除ガイド部2が配置された状態から、該切除ガイド部2を基準位置に対して回旋させた状態で大腿骨遠位端101に設置する際に用いられる孔である。
【0042】
また、切除ガイド部2の本体部11には、被当接凹部18(被当接部、凹部)が形成されている。
【0043】
被当接凹部18は、詳しくは後述する押圧器具3の先端部(当接部35)が当接する部分として設けられている。被当接凹部18は、切除ガイド部2の本体部11の中央部分よりもやや前方に形成された凹状の部分である。被当接凹部18は、本体部11の下面から上側へ向かってやや凹み、その内面18aの形状が、球面の一部を含む略半球面状に形成されている(
図4(A)参照)。
【0044】
[押圧器具の構成]
図6は、
図1に示す押圧器具3の斜視図である。押圧器具3は、大腿骨遠位端101に設置された切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に向かって押圧することにより使用される。押圧器具3は、ボーンソー50をスリット12,13,14a,14bに沿って動かして大腿骨遠位端101における各部位を切除する際に、ボーンソー50の振動に起因して切除ガイド部2が大腿骨遠位端101から浮き上がってきてしまうことを防止するためのものである。
【0045】
押圧器具3は、全体的な形状が上下方向に細長い棒状に形成された器具である。押圧器具3は、軸部31と、当接部35(凸部)と、把持部39とを含み、これらが一体に設けられている。
【0046】
軸部31は、第1軸部32と、該第1軸部32と一体に形成された第2軸部33とを有している。第1軸部32は、上下方向に延びる円柱状に形成された部分である。第2軸部33は、第1軸部32よりも外径が小さい円柱状に形成された部分であって、第1軸部32から上方へ延びるように設けられている。第1軸部32及び第2軸部33は、同軸状に配置されている。
【0047】
当接部35は、軸部31の上端面側に設けられた部分であって、押圧器具3の先端部として設けられている。当接部35は、切除ガイド部2の被当接凹部18の内面18aに対して摺動自在な状態で当接する部分として設けられている。当接部35は、上方へ向かって半球状に膨出するように形成されている。これにより、当接部35の外面35aは、球面の一部を含む半球面状に形成されている。
図4(B)を参照して、切除ガイド部2の被当接凹部18の内面18aの曲率半径R1は、当接部35の外面35aの曲率半径R2よりも大きくなるように設定されている。
【0048】
把持部39は、軸部31の下端面側に設けられた部分である。把持部39は、押圧器具3が術者によって使用される際に術者に把持される部分として構成されている。把持部39は、軸部31の下端面から下方へ延びるように形成されている。把持部39における前側の部分及び後側の部分は、平坦状に形成されている。また、把持部39における右側の部分及び左側の部分には、それぞれ、上下方向に間隔を空けて形成された4つの凹部39aが形成されている。このように、把持部39の表面に凹凸を設けることにより、術者は、滑ることなく把持部39をしっかりと把持することができる。
【0049】
[使用方法]
図7は、
図1に示す人工膝関節置換術用手術器具1の使用形態の一例を示す斜視図である。また、
図8は、人工膝関節置換術用手術器具1の使用形態の一例を示す側面図であって、
図8(A)は、ボーンソー50が前側スリット12に挿入される際の状態を示す図、
図8(B)は、ボーンソー50が後側スリット13に挿入される際の状態を示す図、である。本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1は、以下のように使用することができる。
【0050】
図5を参照して、術者は、まず、患者の大腿骨100の大腿骨遠位端101に形成された骨切り面101aに切除ガイド部2を固定する。具体的には、術者は、大腿骨遠位端101の骨切り面101aに対して、術前計画に基づく基準位置に切除ガイド部2を配置した後、固定ピン5を、切除ガイド部2の固定ピン孔21(
図2参照)を介して大腿骨遠位端101に打ち込む。これにより、大腿骨遠位端101に切除ガイド部2を固定することができる(
図5参照)。
【0051】
その後、術者は、内外側の靭帯のバランスを確認し、その靭帯バランスが適切であれば、その状態における切除ガイド部2のスリット12,13,14a,14bに沿ってボーンソー50を動かして、大腿骨遠位端101における各部位を切除する。
【0052】
ところで、上述のようにしてボーンソー50を用いて大腿骨遠位端101を切除する際、ボーンソー50の振動が大腿骨遠位端101に伝わり、その振動によって固定ピン5が徐々に抜け、それに伴い切除ガイド部2も大腿骨遠位端101から徐々に浮き上がってきてしまう虞がある。そうなると、スリット12,13,14a,14bの位置が術前計画からずれてしまうため、それらのスリット12,13,14a,14bに沿って大腿骨遠位端101が切除されることにより形成される、大腿骨コンポーネントの設置面にもずれが生じる。
【0053】
この点につき、本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1によれば、上述のような問題を解消することができる。具体的には、ボーンソー50によって大腿骨遠位端101の各部位が切除される際、押圧器具3の当接部35が切除ガイド部2の被当接凹部18に当接された状態で、大腿骨遠位端101側へ押圧される(
図7参照)。そうすると、上述したような、大腿骨遠位端101に対する切除ガイド部2の浮き上がりが防止でき、切除ガイド部2のスリット12,13,14a,14bのずれがなくなる。これにより、大腿骨遠位端101を適切な位置で切除することができる。
【0054】
なお、術者は、いずれのスリット12,13,14a,14bにボーンソー50が挿入されるかに応じて、押圧器具3の向きを調整することが可能である。具体的には、
図8(A)を参照して、前面スリット12にボーンソー50を挿入して大腿骨遠位端101における前側の部分を切除する場合、押圧器具3を切除ガイド部2に押しつけたままの状態で、該押圧器具3における把持部39側の部分を後方へ傾けることができる。こうすることで、大腿骨遠位端101の切断時における、ボーンソー50と押圧器具3との干渉を回避できる。
【0055】
同様に、
図8(B)を参照して、後面スリット13にボーンソー50を挿入して大腿骨遠位端101における後側の部分を切除する場合、押圧器具3を切除ガイド部2に押しつけたままの状態で、該押圧器具3における把持部39側の部分を前方へ傾けることができる。こうすることで、大腿骨遠位端101の切断時における、ボーンソー50と押圧器具3との干渉を回避できる。
【0056】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1によれば、切除ガイド部2が固定ピン5によって大腿骨遠位端101に固定された後、ボーンソー50がその切除ガイド部2のスリット12,13,14a,14bにガイドされることにより、大腿骨遠位端101における各部位を適切な位置で切断することができる。
【0057】
また、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、上述のようにして切除ガイド部2のスリット12,13,14a,14bに沿って大腿骨遠位端101が切除される際、押圧器具3によって切除ガイド部2が大腿骨遠位端101側へ押圧される。これにより、ボーンソー50によって大腿骨遠位端101が切除される際、ボーンソー50の振動によって固定ピン5が徐々に抜けてきてしまうことに起因する、大腿骨遠位端101に対する切除ガイド部2の浮き上がり、を防止できる。
【0058】
しかも、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、押圧器具3の当接部35が切除ガイド部2の被当接凹部18に当接した状態で、切除ガイド部2を押圧器具3によって押圧することができる。これにより、大腿骨遠位端101に対する切除ガイド部2の浮き上がりを確実に防止することができる。
【0059】
従って、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、大腿骨遠位端101の骨切除の際、切除ガイド部2が大腿骨遠位端101から浮き上がるのを防止できる、人工膝関節置換術用手術器具を提供できる。
【0060】
また、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、凹部として設けられた被当接凹部18に凸部として設けられた当接部35が当接した状態で、押圧器具3によって切除ガイド部2が押圧される。すなわち、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、凹部の内側に凸部が嵌まり込むため、押圧器具3によって切除ガイド部2が押圧される際に、押圧器具3が切除ガイド部2から滑って切除ガイド部2から外れてしまうことを防止できる。
【0061】
また、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、押圧器具3によって切除ガイド部2が押圧される際、当接部35に含まれる球面の一部と、被当接凹部18に含まれる球面の一部とが面接触する。すなわち、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、押圧器具3の当接部35を、切除ガイド部2の被当接凹部18に対して、比較的広範囲に亘って密着させることができるため、押圧器具3からの押圧力を切除ガイド部2に対して確実に伝えることができる。
【0062】
また、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、例えば、被当接凹部の内面に含まれる球面の曲率半径と当接部の外面に含まれる曲率半径とが同じである場合と比べて、被当接凹部18と当接部35とを密着させつつ、押圧器具3を切除ガイド部2に対して大きく傾けることができる。すなわち、人工膝関節置換術用手術器具1によれば、ボーンソー50で大腿骨遠位端101を切除する際に押圧器具3をボーンソー50から大きく離すことができるため、ボーンソー50と押圧器具3との干渉を防止できる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0064】
[変形例]
(1)
図9(A)~
図9(E)は、変形例に係る切除ガイド部の被当接凹部23~27の断面部分を示す図であって、押圧器具の当接部35が当接している状態を示す図である。
【0065】
上述した実施形態では、被当接凹部18の内面18aの曲率半径R1が、当接部35の曲率半径R2よりも大きい例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、
図9(A)に示すように、被当接凹部23の内面23aの曲率半径R3が、当接部35の曲率半径R2と同じに設定されていてもよい。或いは、
図9(B)に示すように、被当接凹部24の内面24aの曲率半径R4が、当接部35の曲率半径R2よりも小さくてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、被当接凹部18の内面18aが球面の一部を含む形状に形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、
図9(C)~
図9(E)に図示するように、被当接凹部25~27の内面25a~27aが球面の一部を含まない形状であってもよい。
【0067】
(2)
図10(A)は、変形例に係る押圧器具の当接部41の形状を示す図であって、
図9(B)に示す被当接凹部24に当接している状態を示す図である。また、
図10(B)は、
図10(A)に示す当接部41が
図9(C)に示す被当接凹部25に当接している状態を示す図である。また、
図10(C)は、
図10(A)に示す当接部41が
図9(E)に示す被当接凹部27に当接している状態を示す図である。
【0068】
上述した実施形態では、当接部35の外面35aが、球面の一部を含む形状に形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、
図10(A)~
図10(C)に示すように、当接部41の外面41aが、円錐形状の少なくとも一部(例えば、円錐の側面)の形状の部分を有していてもよい。この構成によれば、当接部41の外面41aによって、切除ガイド部2を大腿骨遠位端101に対して押圧することができる。なお、当接部41が当接する被当接凹部の形状として、
図10(A)~
図10(C)に示す形状の被当接凹部を例示したが、これに限らず、被当接凹部の形状は、これら以外の形状であってもよい。
【0069】
(3)
図11(A)は、変形例に係る押圧器具の当接部42の形状を示す図であって、
図9(D)に示す被当接凹部26に当接している状態を示す図である。本変形例に係る押圧器具の当接部42は、先端面が平坦状に形成され、その先端面の周縁部がR状に形成されている。
【0070】
(4)
図11(B)は、変形例に係る押圧器具の当接部43が、変形例に係る切除ガイド部の被当接部28に当接している状態を示す図である。また、
図11(C)は、
図11(B)に示す押圧器具の当接部43が、変形例に係る切除ガイド部の被当接部29に当接している状態を示す図である。
【0071】
上述した実施形態及び各変形例では、当接部が凸状に形成された凸部として設けられ且つ被当接部が凹状に形成された凹部として設けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、
図11(B)及び
図11(C)に示すように、当接部43が凹状に形成された凹部として設けられ、被当接部28,29が凸状に形成された凸部として設けられていてもよい。被当接部28は、切除ガイド部の下面4に形成された凹部から下方へ延びるように形成され、その先端部分が球状に形成されている。被当接部29は、切除ガイド部の下面4から下方へ延びるように形成され、その先端部分が球状に形成されている。
【0072】
なお、
図11(B)及び
図11(C)では、当接部43の曲率半径と被当接部28,29の曲率半径とが同じである例を図示しているが、これに限らず、当接部43の曲率半径は被当接部28,29の曲率半径より大きくてもよい。或いは、当接部43の曲率半径は被当接部28,29の曲率半径より小さくてもよい。
【0073】
(5)
図12(A)は、変形例に係る押圧器具の連結部44の形状を示す図であって、変形例に係る切除ガイド部の連結用溝48(被連結部)に連結している状態を示す図である。また、
図12(B)は、
図12(A)に示す連結用溝48に抜去治具60の端部62が連結している状態を模式的に示す図である。
【0074】
本変形例に係る押圧器具には、上記実施形態に係る押圧器具3における当接部35の代わりに、
図12(A)に示す連結部44が設けられている。また、本変形例に係る切除ガイド部には、上記実施形態に係る切除ガイド部2における被当接凹部18の代わりに、
図12(A)に示す連結用溝48が設けられている。連結用溝48は、切除ガイド部の下面4を左右方向に延びる溝状に形成されていて、連結部44が着脱自在且つ摺動自在に連結される。本変形例に係る押圧器具及び切除ガイドでは、押圧器具の連結部44が切除ガイド部の連結用溝48に嵌め込まれた状態において(
図12(A)の状態で)、押圧器具が切除ガイド部に対して上下方向に移動不能となる。連結部44は、連結用溝48に対して着脱自在に連結される。
【0075】
また、本変形例に係る切除ガイド部の連結用溝48には、大腿骨遠位端101に固定された状態の切除ガイド部を大腿骨遠位端101から抜去するための抜去治具60の端部62も嵌合可能である。抜去治具60は、スライドハンマーのような構成を有しており、その端部62が連結用溝48に嵌合可能に構成されている。抜去治具60では、前記端部62と一体に設けられた上下方向に細長いシャフト部61に沿ってハンマー部65が下方へスライドされて、シャフト部61の下端部に設けられた被打部63に打ち付けられる。これにより、切除ガイド部が大腿骨遠位端101から離間する方向への力が切除ガイド部に対して加えられる。抜去治具60では、上述のようにハンマー部65を被打部63に打ち付ける動作を1回或いは複数回行うことにより、切除ガイド部を大腿骨遠位端101から抜去することができる。
【0076】
以上のように、本変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具によれば、被連結部を、溝状に形成された連結用溝48で構成できるため、被連結部の構成を簡素化できる。
【0077】
また、本変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具によれば、押圧器具を切除ガイド部に対して連結するための被連結部として機能する連結用溝48を、抜去治具60の端部62を切除ガイド部に対して嵌め込むためにも用いることができる。すなわち、この構成によれば、被連結部としての連結用溝48を他の用途にも流用することができるため、切除ガイド部の構成を簡略化できる。
【0078】
(3)
図13は、変形例に係る押圧器具3aの斜視図である。また、
図14は、変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具1aの使用形態の一例を示す斜視図である。
【0079】
本変形例に係る押圧器具3aは、上記実施形態に係る押圧器具3と比べて、軸部の構成が異なっている。以下では、上記実施形態と異なる箇所について主に説明し、それ以外の箇所については説明を省略する。
【0080】
本変形例に係る押圧器具3aの軸部31の第1軸部34には、当接部35と把持部39との間において、該第1軸部34の中途部分を屈曲するように延びる屈曲部34aが設けられている。これにより、第1軸部34における先端側の部分及び第2軸部33が、第1軸部34における把持部39側の部分及び把持部39に対して、斜め方向に延びている。
【0081】
本変形例に係る押圧器具3aは、上述のように、その先端部分が屈曲している。このような押圧器具3aを用いれば、押圧器具3aで切除ガイド部2を押圧する際、押圧器具3aを切除ガイド部2から大きく外側へ離間させることが可能となる。これにより、大腿骨遠位端101の切除を行う際におけるボーンソー50と押圧器具3aとの干渉を防止できる。
【0082】
(4)
図15は、変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具1bの使用形態の一例を示
す斜視図である。
【0083】
本変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具1bの切除ガイド部2aは、上記実施形態の切除ガイド部2の場合と比べて、被当接部としての被当接凹部18の代わりに、被連結部としての貫通孔部49が設けられている。また、本変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具1bの押圧器具3bは、上記実施形態の押圧器具3の場合と比べて、当接部35の代わりに、連結部としてのフック部45が設けられている。
【0084】
貫通孔部49は、切除ガイド部2の下面の中央部分に設けられていて、左右方向から視たその中央部分には貫通孔49aが形成されている。
【0085】
フック部45は、押圧器具3bの軸部31の先端側(上端面側)に設けられている。具体的には、フック部45は、軸部31の先端部から円弧状に延びる鉤爪状に形成されている。フック部45は、その先端部分が貫通孔部49の貫通孔49aに挿入されることにより、貫通孔部49に引っかけられる。これにより、フック部45は、切除ガイド部2の貫通孔部49に対して着脱自在に連結される。
【0086】
本変形例に係る人工膝関節置換術用手術器具1bは、以下のように使用することができる。具体的には、まず、上記実施形態に係る人工膝関節置換術用手術器具1が使用される場合と同じようにして、切除ガイド部2aが、大腿骨遠位端101の骨切り面101aに固定される。そして、そのようにして固定された切除ガイド部2aの貫通孔部49の貫通孔49aに、押圧器具3bのフック部45を挿通させて引っ掛けた状態で、押圧器具3bを大腿骨遠位端101側へ押圧する。これにより、スリット12,13,14a,14bに沿ってボーンソー50を動かして大腿骨遠位端101の各部位を切断する際に、切除ガイド部2aが大腿骨遠位端101から浮き上がってしまうことを防止できる。
【0087】
しかも、本変形例によれば、押圧器具3bによって切除ガイド部2aが押圧される際、一方が他方に対して引っ掛けられた状態となる。よって、押圧器具3bによって切除ガイド部2aを押圧する際、押圧器具3bが切除ガイド部2aから外れてしまうことを防止できる。言い換えれば、押圧器具3bによる切除ガイド部2aの押圧状態を維持することができる。
【0088】
なお、本変形例では、押圧器具3bに連結部としてのフック部45が設けられる一方、切除ガイド部2aに被連結部としての貫通孔部49が設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、押圧器具に連結部としての貫通孔部が設けられる一方、切除ガイド部に被連結部としてのフック部が設けられていてもよい。
【0089】
(5)上述した実施形態では、被当接部としての被当接凹部18が切除ガイド部2の中央部分付近に形成されている例を挙げて説明した。また、
図15を用いて説明した変形例では、被連結部としての貫通孔部49が切除ガイド部2aの中央部分付近に形成されている例を挙げて説明した。しかし、これに限らず、被当接部及び被連結部は、切除ガイド部におけるその他の部分に形成されていてもよい。
【0090】
(6)上述した実施形態及び各変形例では、被当接部又は被連結部が、切除ガイド部に1つ、設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、被当接部又は被連結部は、切除ガイド部に複数、形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、人工膝関節置換術の際に用いられる人工膝関節置換術用手術器具として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1,1a,1b 人工膝関節置換術用手術器具
2,2a 切除ガイド部
3,3a,3b 押圧器具(押圧部)
5 固定ピン
12 前側スリット(スリット)
13 後側スリット(スリット)
14a 前側チャンファー用スリット(スリット)
14b 後側チャンファー用スリット(スリット)
18,23~27 被当接凹部(被当接部)
28,29 被当接部
31,34 軸部
35,41,42,43 当接部
39 把持部
44 連結部
45 フック部(連結部)
48 連結用溝(被連結部)
49 貫通孔部(被連結部)
50 ボーンソー(切除刃)
101 大腿骨遠位端