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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】カバー
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20221019BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
H05K5/03 A
H05K7/20 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021170786
(22)【出願日】2021-10-19
(62)【分割の表示】P 2017183274の分割
【原出願日】2017-09-25
(65)【公開番号】P2022009233
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 一旗
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1720395(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2111904(EP,A1)
【文献】特開2007-309000(JP,A)
【文献】実開平6-12813(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/03
H05K 7/20
F24F 7/04
F24F 7/06
H02B 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に形成された通気口に取り付けられ、前記通気口に挿入される枠部及び前記枠部で囲まれた領域内に設けられる梁部を有するカバー本体と、
前記枠部に形成された凹部に設けられ、前記通気口への前記カバー本体の取付け時に、当該通気口の周囲の前記壁に係合する係合部と、
を備え、
前記係合部は、
前記凹部から露出した前記梁部に保持されている撓曲部と、
前記撓曲部に設けられ、前記通気口の周囲の前記壁に外側から当接する当接部と、
前記撓曲部に設けられ、前記通気口の周囲の前記壁を前記当接部との間に内側から挟む第1爪部及び第2爪部と、
を有し、
前記第1爪部と前記第2爪部とは、前記壁の厚さに応じて選択的に用いられ、前記撓曲部及び前記当接部を介して連結されている、カバー。
【請求項2】
前記カバー本体は、前記枠部の外周に形成された鍔部をさらに有し、
前記鍔部は、前記枠部が前記通気口に挿入されたとき、前記通気口の周囲の前記壁に外側から当接するように形成されている、請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記撓曲部は、先端部と、前記先端部より前記当接部と離れた湾曲部と、前記先端部と前記湾曲部とを繋ぐ中間部を有し、
前記先端部には、前記当接部が設けられ、
前記湾曲部は、露出した前記梁部から前記カバー本体の取付方向へ向けて斜めに立ち上がると共に前記先端部へ向けて湾曲した部分である、請求項1又は請求項2に記載のカバー。
【請求項4】
前記第1爪部と前記第2爪部とは、前記当接部に相対して設けられるガイド面を有し、
前記ガイド面は、前記当接部と離れ、前記撓曲部側に傾斜している、請求項1~3の何れか一つに記載のカバー。
【請求項5】
前記第1爪部と前記当接部との間の距離と、前記第2爪部と前記当接部との間の距離と、が互いに異なる、請求項1~4の何れか一つに記載のカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気口にカバーを取り付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器には、例えば筐体内に格納された各種電子部品を冷却するために、筐体の壁に通気口が形成されたものが多く存在する。この様な通気口には、水や埃等の異物が筐体内に簡単に入り込んでしまうことを防止するべく、ルーバー等のカバーが取り付けられる。
【0003】
カバーには、通気口の周囲の壁に外側から当接する周縁部と、当該壁の内側から当接部に対峙する爪部と、を有したものが存在する(例えば、特許文献1参照)。そして、周縁部と爪部との間の距離が壁の厚さに等しく、通気口へのカバーの取付け状態において壁がカバーの周縁部と爪部との間に挟まれる様に、周縁部に対する爪部の位置が設定されている。よって、通気口にカバーを取り付けたとき、周縁部と爪部との間に壁が隙間なく介在し、その結果として、カバーがガタツキなく取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-97945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の上記カバーは、周縁部と爪部との間の距離が、通気口の周囲の壁の厚さによって規定されるため、その距離よりも厚さが大きい壁に形成された通気口には取り付けることができなかった。このため、壁の厚さが変わる毎に、周縁部と爪部との間の距離を変更する必要があり、従って、カバー自体を作り直す必要があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、少なくとも2種類の厚さの壁に形成された通気口の何れにもガタツキなく取り付けることが可能なカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカバーは、壁に形成された通気口に取り付けられ、通気口に挿入される枠部及び枠部で囲まれた領域内に設けられる梁部を有するカバー本体と、枠部に形成された凹部に設けられ、通気口へのカバー本体の取付け時に、当該通気口の周囲の壁に係合する係合部と、を備える。係合部は、凹部から露出した梁部に保持されている撓曲部と、撓曲部に設けられ、通気口の周囲の壁に外側から当接する当接部と、撓曲部に設けられ、通気口の周囲の壁を当接部との間に内側から挟む第1爪部及び第2爪部と、を有する。そして、第1爪部と第2爪部とは、壁の厚さに応じて選択的に用いられ、撓曲部及び当接部を介して連結されている。
【0008】
上記カバーによれば、通気口の周囲の壁の厚さに応じて、第1爪部と当接部との間に壁を介在させるか、又は、第2爪部と当接部との間に壁を介在させるか、を選択することができる。また、撓曲部は、凹部に設けられているため、枠部からの束縛を受けずに撓曲することができる。これにより、通気口にカバーを取り付けるとき、撓曲部が撓むことで、第1爪部と第2爪部とは、カバーが通気口を通過することができる位置まで移動する。その結果として、壁に係合部が係合する位置までカバーを挿入することが可能になる。従って、少なくとも2種類の厚さの壁に形成された通気口の何れに対しても、カバーをガタツキなく取り付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るカバーによれば、少なくとも2種類の厚さの壁に形成された通気口の何れにも、ガタツキなく取り付けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電気機器を正面視した概念図である。
図2】カバーを示した(A)正面図、(B)上面図、及び(C)下面図である。
図3】カバーを示した背面図である。
図4】(A)図2(B)に示されたIVA領域の拡大図、及び(B)図3に示されたIVB領域の拡大図である。
図5】(A)図2(A)に示されたVA-VA線での断面図、及び(B)図5(A)に示されたVB領域の拡大図である。
図6】カバーの上部を示した斜視図である。
図7】(A)(B)異なる2種類の厚さの壁に形成された通気口へのカバーの取付け状態をそれぞれ示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る電気機器を正面視した概念図である。図1に示される様に、電気機器は、通気口11が設けられた筐体1と、通気口11に取り付けられるカバー2と、を備える。一例として、電気機器は、メッキ処理装置等に用いられる電源装置であり、筐体1の内部に電源回路(不図示)が構築されている。電源回路は、平滑回路やコンバータ回路等、冷却を要する電子部品(スイッチング素子等)が組み込まれた回路を含んでいる。尚、以下に説明する電気機器の各部構成は、電源装置に限らず、通気口11を有する様々な電気機器に適用することができる。
【0012】
筐体1は、箱型を呈した外壁の一部に、通気口11が形成された壁10Aを有する。本実施形態では、壁10Aは前壁であり、通気口11は、筐体1内に格納された各種電子部品を冷却するための冷却風を通す部分である。尚、通気口11の用途は、電子部品等の冷却に限らず、筐体1の内部と外部とを連通させることを要する様々な用途に適宜変更することができる。又、通気口11が形成される壁10Aは、前壁に限らず、用途等に応じて別の壁(後壁、側壁、天壁、底壁等)に適宜変更することができる。
【0013】
通気口11は、後述するカバー2の枠部211を挿入することが可能な形状を呈している。本実施形態では、通気口11は、枠部211の形状に対応させて、四角形状に形成されている。又、後述する通過部12及び切欠13を除いて、左右対称且つ上下対称(或いは、180°回転対称)に形成されている。尚、通過部12及び切欠13(図1に示されたIA領域及びIB領域の拡大図参照)については、後述する。
【0014】
図2(A)~(C)及び図3はそれぞれ、カバー2を示した正面図、上面図、下面図、及び背面図である。図4(A)は、図2(B)に示されたIVA領域の拡大図であり、図4(B)は、図3に示されたIVB領域の拡大図である。図5(A)は、図2(A)に示されたVA-VA線での断面図であり、図5(B)は、図5(A)に示されたVB領域の拡大図である。図6は、カバー2の上部を示した斜視図である。これらの図に示される様に、カバー2は、カバー本体21と、係合部22と、を備える。
【0015】
図3に示される様に、カバー本体21は、通気口11に挿入される枠部211と、当該枠部211の外周に形成された鍔部212と、枠部211で囲まれた領域内に並んだ複数の羽板213と、梁部214と、から構成されている。
【0016】
枠部211は、上縁部21Aと、下縁部21Bと、左右の側縁部21Cと、から構成されている。そして、上縁部21Aには、凹部21Dが左右に1つずつ設けられ、下縁部21Bにも、凹部21Dが左右に1つずつ設けられている(図3参照)。具体的には、凹部21Dは以下の様に構成されている。尚、本実施形態では、枠部211は、後述する突起部23(図4(B)参照)を除いて、上下対称且つ左右対称(或いは、180°回転対称)に形成されている。
【0017】
先ず、上縁部21Aと、当該上縁部21Aに最も近い羽板213と、の間に、当該上縁部21Aと略並行に梁部214が設けられている(図3参照)。具体的には、梁部214は、左右の側縁部21C間を横方向に延びると共に、上縁部21Aの直下に配されている。より具体的に、上縁部21Aと梁部214とは、それらの左右両端部どうしが、左右の側縁部21Cを介して互いに連結されている。同様に、下縁部21Bと、当該下縁部21Bに最も近い羽板213と、の間にも、梁部214が設けられている。
【0018】
そして、上縁部21Aに設けられた各凹部21Dは、当該上縁部21Aの一部を切り欠くことにより、直下に配された梁部214の上面214aの一部を露出させることで形成されている(図4(B)及び図6参照)。下縁部21Bに設けられた各凹部21Dも、同様に形成されている。
【0019】
鍔部212は、通気口11に枠部211が挿入されたときに、当該通気口11から僅かにはみ出して周囲の壁10Aに前方外側から当接する様に形成されている。又、鍔部212は、後述する通過部12及び突起部23を覆い隠す様に形成されている(図7(A)及び(B)参照)。
【0020】
本実施形態では、通気口11へのカバー2の取付け時に、枠部211が通気口11に挿入されることにより、カバー2は、上下左右の方向についての位置が決められる。又、通気口11の周囲の壁10Aに対して外側から鍔部212が当接することにより、カバー2は、通気口11への取付方向(通気口11を通じて外側から内側へ向かう奥行方向)についての位置が決められる。この様な位置決め部としての鍔部212の機能は、後述する係合部22の当接部222が持つ機能と同じである。よって、特許請求の範囲に記載の「当接部」には、後述する当接部222に限らず、鍔部212が含まれてもよい。
【0021】
複数の羽板213は、枠部211で囲まれた領域において、枠部211の左右の側縁部21C間を横方向に延びている。又、複数の羽板213は、カバー2が通気口11に取り付けられたときに、羽板213のそれぞれの向き(具体的には、空気を通過させる向き)が、通気口11が形成されている壁10Aに垂直な方向に対して同じ角度で傾く様に、羽板213は並べられている。
【0022】
通気口11への取付け状態の一例として、カバー2は、上述した羽板213のそれぞれの向きが壁10Aの内側から外側に向けて斜め下方となる様に通気口11に取り付けられる(図5(A)参照)。この様に取り付けられたカバー2によれば、当該カバー2に水が降りかかった場合でも、羽板213に付着した水は、自身の重力で羽板213から筐体1の外側へ滑り落ち、その結果として、通気口11からの水の浸入が防止される。この様に、カバー2は、通気口11への取付けに関する方向性を有する。
【0023】
このため、例えば上下を逆にしてカバー2が通気口11に取り付けられたとすれば、カバー2が有する機能(本実施形態では、通気口11からの水の浸入を防止する機能)が低下する。そこで、本実施形態の電気機器には、カバー2の向きを正しく規制するための規制構造が設けられている。
【0024】
具体的には、図4(A)、図4(B)、及び図6に示される様に、カバー2は、枠部211の外周面(特許請求の範囲に記載の「カバー本体の周面」に相当)に設けられた突起部23を更に備える。更に、通気口11の周囲の壁10Aに、通気口11へのカバー2の取付け時に突起部23を通す通過部12が設けられている(図1に示されたIA領域の拡大図参照)。そして、通過部12は、カバー2が正しい向きで通気口11に取り付けられたときにのみ突起部23が通過する様に配されている。本実施形態では、突起部23は、枠部211の上縁部21Aの上面中央位置に配されている。又、通過部12は、突起部23の位置に対応させて、通気口11の周囲の壁10Aの上辺中央位置に設けられている。
【0025】
一例として、本実施形態では、通過部12及び突起部23は、カバー2の鍔部212によって覆い隠される様に構成される。これにより、通気口11へのカバー2の取付け状態において、通過部12及び突起部23が外部から見えなくなり、電気機器の外観の美しさが損なわれない。他の例として、通過部12及び突起部23は、通気口11へのカバー2の取付け状態において鍔部212からはみ出る様に構成されてもよい。これにより、ユーザは、カバー2が正しい向きで取り付けられていることを、外観から確認することが可能になる。
【0026】
係合部22は、カバー本体21に設けられており(図3参照)、通気口11へのカバー2の取付け時に当該通気口11の周囲の壁10Aに係合する(図7(A)及び(B)参照)。本実施形態では、係合部22は、カバー本体21の枠部211の上縁部21Aにおいて左右に1つずつ設けられ、更に、カバー本体21の枠部211の下縁部21Bにも左右に1つずつ設けられている(図3参照)。具体的には、上縁部21A及び下縁部21Bに設けられた各凹部21D内に、係合部22が設けられている。即ち、係合部22は、カバー本体21において互いに反対側に位置する2つの縁部(ここでは、上縁部21Aと下縁部21B)のそれぞれに設けられている。
【0027】
尚、枠部211の各縁部に設けられる係合部22の数は、2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。又、異なる縁部のそれぞれに設けられる係合部22の数は、同じである場合に限らず、互いに異なっていてもよい。更に、カバー本体21において係合部22が設けられる縁部の組合せは、上縁部21A及び下縁部21Bという組合せに限らず、左右の側縁部21Cという組合せであってもよい。尚、係合部22が設けられる縁部の組合せは、対向した縁部という組合せであることが好ましい。
【0028】
以下、正面から見て右上の係合部22(上縁部21Aの右側に設けられた係合部22)について、図4(A)、図4(B)、及び図5(B)を用いて、具体的に説明する。尚、他の係合部22については、右上の係合部22と構成が同じであるので、説明を省略する。
【0029】
具体的には、係合部22は、凹部21Dから露出した梁部214の上面214aから上方背面側へ立ち上がり、正面側へ折り返される様に湾曲して延びた撓曲部221を有する。更に、係合部22は、当接部222と、第1爪部223Aと、第2爪部223Bと、を有し、これらが撓曲部221に設けられている。撓曲部221(図5(B)参照)は、当接部222が設けられた先端部221aと、湾曲部221bと、中間部221cと、を含む。湾曲部221bは、通気口11へのカバー2の取付け状態において、梁部214の上面214aから奥行方向へ向けて斜め上方へ延び出ると共に先端部221aへ(即ち、前方へ)向けて湾曲した部分である。中間部221cは、先端部221aと湾曲部221bとを繋ぐ部分である。
【0030】
撓曲部221は、凹部21Dによって上縁部21Aから切り離された状態で、梁部214に保持されている(図4(B)参照)。従って、撓曲部221は、上縁部21Aからの束縛を受けずに、先端部221a又は中間部221cの上下動に応じて凹部21D内で撓曲することが可能である。よって、先端部221a又は中間部221cが上方から押圧されたとき、撓曲部221が撓むことで、先端部221a及び中間部221cが梁部214側へ移動することが許容される。一方、先端部221a又は中間部221cが押圧から解放されたとき、撓曲部221の撓曲が解除され、先端部221a及び中間部221cは元の位置に戻る。
【0031】
そして、中間部221cに、第1爪部223A及び第2爪部223Bが設けられている。又、当接部222、第1爪部223A、及び第2爪部223Bは何れも、枠部211の外周の位置(ここでは、上縁部21Aの高さ位置)から突き出ている(図5(B)参照)。即ち、当接部222、第1爪部223A、及び第2爪部223Bは何れも、それらの高さが、通気口11へのカバー2の取付け状態において通気口11の周縁から壁10A側へはみ出る様に設定されている。即ち、カバー2の取付け状態において、当接部222が、壁10Aに対して外側から当接し、第1爪部223A及び第2爪部223Bの何れかが、壁10Aに対して内側から当接することができる。
【0032】
従って、通気口11にカバー2を取り付けるとき、当該通気口11からはみ出た第1爪部223A又は第2爪部223Bが、通気口11の周囲の壁10Aによって下方へ押される。そして、このとき撓曲部221が撓むことで、先端部221a及び中間部221cが梁部214側へ移動すると共に、第1爪部223A及び第2爪部223Bが、通気口11を通過することができる位置まで移動する。その結果として、通気口11への取付けが完了する位置(即ち、壁10Aに係合部22が係合する位置)までカバー2を挿入することが可能になる。
【0033】
通気口11にカバー2が取り付けられたとき(即ち、取付け状態において)、当接部222は、通気口11の周囲の壁10Aに外側から当接する(図7(A)及び(B)参照)。又、第1爪部223A及び第2爪部223Bは、壁10Aの厚さに応じて選択的に用いられ(図7(A)及び(B)参照)、通気口11の周囲の壁10Aを当接部222との間に内側から挟む。これにより、第1爪部223A及び第2爪部223Bのうちの選択されたものと当接部222との間に通気口11の周囲の壁10Aが介在し、その結果として、通気口11の周囲の壁10Aに係合部22が係合する。
【0034】
本実施形態では、第1爪部223Aは、当接部222から後方へ距離L1(図4(A)参照)だけ離れた位置に配されている。第2爪部223Bは、第1爪部223Aの両側に1つずつ設けられており、何れも、当接部222から後方へ、距離L1より大きい距離L2(図4(A)参照)だけ離れた位置に配されている。即ち、取付方向において、第2爪部223Bと当接部222との間の距離L2が、第1爪部223Aと当接部222との間の距離L1より大きい。
【0035】
具体的には、第1爪部223Aの前端面及び第2爪部223Bの前端面には、前方斜め下方に傾斜したガイド面Ga及びGb(図5(B)参照。中間部221cの表面に対して垂直な面を含む)がそれぞれ形成されている。ガイド面Gaの前端には、当接部222から距離L1だけ離れた位置でほぼ垂直に降下した面が形成されており、当該面と当接部222の背面との間に凹状の第1係合位置Haが形成されている。又、ガイド面Gbの前端には、当接部222から距離L2(>L1)だけ離れた位置でほぼ垂直に降下した面が形成されており、当該面と当接部222の背面との間に凹状の第2係合位置Hbが形成されている。
【0036】
距離L1及びL2(L1<L2)は、通気口11が形成された壁10Aにおいて想定し得る2つの厚さD1及びD2(D1<D2)にそれぞれ対応している。ここで、「対応」という用語には、次の様な取付け状態を得ることができる距離L1と厚さD1との関係が少なくとも含まれる。即ち、その関係によれば、厚さD1の壁10Aに形成された通気口11にカバー2が取り付けられることで、通気口11の周囲の壁10Aが、距離L1だけ離れた当接部222と第1爪部223Aとの間に介在したときに、取付方向においてカバー2にガタツキが生じない、又は、ガタツキがあったとしても許容できる範囲内となる。距離L2と厚さD2との関係についても同様である。
【0037】
一例として、厚さD1は1mmであり、これに対応させて距離L1が1.1mmに設定される。又、厚さD2は1.6mmであり、これに対応させて距離L2が1.7mmに設定される。尚、厚さD1及びD2の寸法は、電気機器の種類等に応じて適宜変更することができる。又、距離L1及びL2の寸法は、ガタツキの許容範囲等に応じて適宜変更することができる。
【0038】
通気口11の周囲の壁10Aが厚さD1(<厚さD2)の壁(例えば、薄板)である場合、当該壁10Aは、距離L1だけ離れた第1爪部223A(ガイド面Ga)と当接部222との間に形成された第1係合位置Ha(図5(B)参照)に配置され、これにより、当該第1係合位置Haにて厚さD1の壁10Aに係合部22が係合する(図7(A)参照)。尚、図7(A)は、厚さD1の壁10Aに形成された通気口11へのカバー2の取付け状態を示した斜視図である。
【0039】
一方、通気口11の周囲の壁10Aが厚さD2の壁(例えば、厚板)である場合、当該壁10Aは、第1爪部223Aと当接部222との間には収まらないため、距離L2だけ離れた第2爪部223B(ガイド面Gb)と当接部222との間に形成された第2係合位置Hb(図5(B)参照)に配置されるが、第2爪部223Bと当接部222との間に存在する第1爪部223A(図5(B)参照。ガイド面Gaを含む)に壁10Aが衝突してしまうため、その衝突を回避するための切欠13が壁10Aの上辺及び下辺に設けられている(図1に示されたIB領域の拡大図参照)。即ち、厚さD2の壁10Aには、第1爪部223Aと対峙する箇所に切欠13が設けられており、当該切欠13は、厚さD2の壁10Aとの衝突から第1爪部223Aを逃がす逃し穴として用いられる。これにより、第2係合位置Hbにて厚さD2の壁10Aに係合部22が係合する(図7(B)参照)。尚、図7(B)は、厚さD2の壁10Aに形成された通気口11へのカバー2の取付け状態を示した斜視図である。
【0040】
次に、通気口11にカバー2を取り付ける過程について、具体的に説明する。先ず、通過部12と突起部23とを目印として、カバー2の姿勢を、通過部12に突起部23を通すことができる正しい向き(本実施形態では上側に突起部23が位置する向き)となる様に調整する。その後、その正しい向きを維持しつつカバー2を前傾にして、枠部211の下縁部21Bに設けられた下側左右の係合部22を壁10Aの下辺に係合させる。このとき、下側左右の各係合部22に対して、壁10Aの下辺が、当該壁10Aの厚さに応じて選択される第1爪部223A又は第2爪部223Bと当接部222との間に挟まれる様にして押し当てられる。
【0041】
このとき、カバー2が上下逆向きの誤った向きで通気口11に取り付けられそうになった場合、突起部23が下側に位置し、従って、壁10Aの下辺に突起部23が当接することになる。従って、カバー2の位置が、突起部23の高さ分だけ通気口11から上へずれる。そして、カバー2が、上へずれた状態で通気口11に無理に押し込まれそうになると、誤って上に向けられた枠部211の下縁部21Bの後端が壁10Aの上辺に衝突し、通気口11への枠部211の挿入が阻止される。従って、カバー2が誤った向きのまま通気口11に取り付けられることが防止される。
【0042】
又、突起部23及び通過部12がそれぞれカバー2及び通気口11の上側に設けられることにより、通気口11へのカバー2の取付け時において、ユーザは、突起部23及び通過部12を視認し易くなり、その結果として、通気口11にカバー2を正しい向きで取り付けることが容易になる。尚、突起部23及び通過部12のそれぞれの位置は、カバー2及び通気口11の上側に限らず、適宜、変更することができる。
【0043】
上述した様にカバー2を正しい向きに調整し、下側の係合部22を壁10Aの下辺に係合させた後、その係合位置を支点として、カバー2の上部を、通気口11に押し込む方向に回転させる。そして、この回転により、壁10Aの上辺に設けられている通過部12に突起部23を通しつつ、通気口11への枠部211の挿入を開始する(図7(A)及び(B)参照)。
【0044】
その後、カバー2を回転させつつ通気口11へ押し込むことにより、上側左右の各係合部22について、第1爪部223A又は第2爪部223Bを通気口11の周囲の壁10Aの上辺に当接させる。本実施形態では、第2爪部223Bの後端面Ebが、第1爪部223Aの後端面Eaより後方に配されている(図5(B)参照)。又、第2爪部223Bの後端面Ebには、後ろから前方に向けて緩やかに昇る傾斜が設けられている。更に、第1爪部223Aの上端面Faと第2爪部223Bの上端面Fbとが、同一平面で揃うと共に、側面視において繋がっている(図5(B)参照)。尚、上端面Fa及びFbは、側面視において部分的に重なっていてもよい。
【0045】
よって、通気口11に枠部211を挿入する過程で、先ず、第2爪部223Bの後端面Ebに通気口11の周囲の壁10Aの上辺が斜めに当接する。当接後、カバー2が更に押し込まれることにより、撓曲部221が撓んで第2爪部223Bが梁部214側へ移動し始める。そして、壁10Aは、係合部22における撓曲部221の撓曲(即ち、梁部214側への第2爪部223Bの移動)を伴いながら、第2爪部223Bの後端面Ebに沿って相対的に摺動し、その後、第2爪部223Bの上端面Fb上へ移動する。
【0046】
壁10Aが厚さD1(<厚さD2)の壁である場合には、切欠13が設けられていないため、カバー2が更に押し込まれることにより、壁10Aは、第2爪部223Bの上端面Fb上を相対的に摺動した後、第1爪部223Aの上端面Fa上へ移動する(図5(B)参照)。そして、カバー2が更に押し込まれて、壁10Aが第1爪部223Aのガイド面Gaに達したとき、上述した様に当該ガイド面Gaは前方斜め下方に傾斜しているため、撓曲部221は、自身の復元力で元の位置に戻ろうとして上方へ移動し、これに伴い、撓曲部221に対して相対移動する壁10Aは、ガイド面Gaに沿って降りる方向へ誘導される。その後、壁10Aがガイド面Gaの前端に達することにより、撓曲部221は僅かに撓曲した状態まで復元し、その結果として、当接部222と第1爪部223Aとの間に形成された第1係合位置Haで、厚さD1の壁10Aと係合部22とが係合する。
【0047】
そして、第1係合位置Haで壁10Aと係合部22とが係合したとき、撓曲部221が僅かに撓曲した状態で維持されるため、壁10Aの上辺が第1係合位置Haにしっかり嵌まる。従って、当接部222が壁10Aに外側から当接すると共に、壁10Aが、当接部222と第1爪部223Aとの間に挟まれる(図7(A)参照)。この様にして、係合部22は、上述した第1係合位置Haにて厚さD1の壁10Aに係合する。尚、当接部222に代えて、或いは、当接部222と共に、鍔部212が壁10Aに外側から当接してもよい。
【0048】
一方、壁10Aが厚さD2の壁である場合には、切欠13が設けられているため、壁10Aは第1爪部223Aに衝突しない。従って、カバー2が押し込まれることにより、壁10Aは、第2爪部223Bの上端面Fb上を相対的に摺動した後、第1爪部223Aの上端面Fa上へは移動せずに第2爪部223Bのガイド面Gbに達する(図5(B)参照)。上述した様にガイド面Gbも前方斜め下方に傾斜しているため、壁10Aがガイド面Gbに達したとき、撓曲部221は、自身の復元力で元の位置に戻ろうとして上方へ移動し、これに伴い、撓曲部221に対して相対移動する壁10Aは、ガイド面Gbに沿って降りる方向へ誘導される。その後、壁10Aがガイド面Gbの前端に達することにより、撓曲部221は僅かに撓曲した状態まで復元し、その結果として、当接部222と第2爪部223Bとの間に形成された第2係合位置Hbで、厚さD2の壁10Aと係合部22とが係合する。
【0049】
そして、第2係合位置Hbで壁10Aと係合部22とが係合したとき、撓曲部221が僅かに撓曲した状態で維持されるため、当接部222が壁10Aに外側から当接すると共に、壁10Aが、当接部222と第2爪部223Bとの間に挟まれる(図7(B)参照)。この様にして、係合部22は、上述した第2係合位置Hbにて厚さD2の壁10Aに係合する。尚、この場合も、当接部222に代えて、或いは、当接部222と共に、鍔部212が壁10Aに外側から当接してもよい。
【0050】
この様に、上記電気機器は、上述した第1爪部223A及び第2爪部223Bを備えているため、壁10Aの厚さに応じて、距離L1だけ離れた当接部222と第1爪部223Aとの間(第1係合位置Ha)に壁10Aを介在させるか、又は、距離L2だけ離れた当接部222と第2爪部223Bとの間(第2係合位置Hb)に壁10Aを介在させるか、を選択することができる。そして、本実施形態では、距離L1及びL2を、壁10Aの2種類の厚さD1及びD2にそれぞれ対応させている。よって、当該2種類の厚さの壁10Aに形成された通気口11の何れに対しても、カバー2をガタツキなく取り付けることができる。
【0051】
通気口11からカバー2を取り外す場合、カバー2に設けられている上側左右の各係合部22の当接部222を下方へ移動させて撓曲部221を撓曲させることにより、壁10Aの上辺への上側の係合部22の係合を解除する。そして、上側左右の係合部22の係合を解除した状態で、下側左右の係合部22の係合位置を支点として、カバー2の上部を、通気口11から引き離す方向に回転させる。そして、この回転よってカバー2を通気口11から引き抜くことにより、通気口11からカバー2を取り外すことができる。この様に、当接部222は、撓曲部221を撓曲させるための操作部としての機能を兼ね備える。
【0052】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。例えば、上記電気機器は、通過部12及び突起部23がない構成を有していてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 筐体
2 カバー
10A 壁
11 通気口
12 通過部
13 切欠
21 カバー本体
21A 上縁部
21B 下縁部
21C 側縁部
21D 凹部
22 係合部
23 突起部
211 枠部
212 鍔部
213 羽板
214 梁部
214a 上面
221 撓曲部
221a 先端部
221b 湾曲部
221c 中間部
222 当接部
223A 第1爪部
223B 第2爪部
D1、D2 厚さ
Ea、Eb 後端面
Fa、Fb 上端面
Ga、Gb ガイド面
Ha 第1係合位置
Hb 第2係合位置
L1、L2 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7