(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】血中グルコースの流入を調節する重合体ブレンド、これを含む持続血糖測定用バイオセンサ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20221019BHJP
【FI】
A61B5/1473
(21)【出願番号】P 2021514520
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 KR2019010126
(87)【国際公開番号】W WO2020067641
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115323
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510115030
【氏名又は名称】アイセンス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,イン ソク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジンソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヒュンヒ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヨン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジェ ホ
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヒ ジュン
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-515305(JP,A)
【文献】特表2005-531755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10~200%の水分吸収率を有する親水性重合体、および0~10%の水分吸収率を有する疎水性重合体を含
み、
前記親水性重合体は、ポリビニルピロリドン(PVP)、脂肪族ポリエーテル系の熱可塑性ポリウレタンまたはこれらの組み合わせであり、重合体ブレンド組成物全体重量に対して26~70重量%であり、
前記疎水性重合体は、脂肪族ポリエーテル系の熱可塑性ポリウレタンであり、重合体ブレンド組成物全体重量に対して30~74重量%である、持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜用重合体ブレンド組成物。
【請求項2】
PBS緩衝液20mLに浸漬した場合、3時間以降の水分吸収量が15~90%であることを特徴とする、請求項1に記載の持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜用重合体ブレンド組成物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜用重合体ブレンド組成物からなる持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜。
【請求項4】
請求項
3に記載の持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜を含む持続血糖モニタリングセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年9月27日付韓国特許出願第10-2018-0115323号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、持続血糖測定用バイオセンサに関し、より詳細には、身体に移植時、流入される血中グルコースの流れを調節する重合体ブレンド、前記重合体ブレンドを含んで血中グルコースを高感度で、連続的に検出および定量することができるバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、インシュリンの生成あるいは利用過程の異常で血中グルコースが増加し、それによる多様な急性、慢性合併症を伴う深刻な疾患である。米国の場合、20歳以上人口の9.6%(2000万人以上)が糖尿を有しており、発病危険の高い前糖尿病段階(pre-diabetes)患者が5000万人以上と推定される(2005年の米国national diabetes fact sheet)。2002年の直接、間接的な医療費用で1320億ドルが糖尿と関連して支出された。
【0004】
韓国の場合、2005年に疾病管理本部で施行した国民健康栄養調査によれば、30歳以上男性の9.0%、女性の7.2%が糖尿病患者であると示された。大韓糖尿病学会が発刊した2007年韓国人糖尿病研究報告書によれば、糖尿の有病率は約8%であり、毎年10%の新たな患者が発生しており、糖尿関連医療費が健康保険費用の約20%(約3兆ウォン)を占める。現在400~500万人と推算される糖尿患者数の最近の急速な増加速度を考慮すると、10~20年後には1000万人に達し得る。
【0005】
このように、世界的に問題になっている糖尿病は、老齢人口の増加および生活環境的な要因などによりその有病率がより増加すると予測されているため、それに伴う社会的、経済的問題が深刻に台頭している。このような糖尿病は、血中グルコース濃度を調節することによって管理できる疾病であるため、患者の増加により血中グルコース値の追跡観察に主に使用される血中グルコース自己測定器の需要が増加している状況である。
【0006】
このような糖尿病の疾患管理は、閉ループインスリン送達(closed-loop insulin delivery)に依存するが、これはインシュリンタンクに直接信号を伝達する持続血中グルコースモニタリング(continuous glucose monitoring;CGM)システムを利用すれば可能になる。しかし、指先で血液を採取する既存の酵素センサは、測定頻度が制限されるため、このようなCGMに利用され得ない。このような問題点を解消するために、最近は身体に付着することができることから、浸湿を最小化する改善されたバージョンの酵素センサが開発されてきている。このような持続的な血糖モニタリング酵素センサの場合、生体内試料から流入されるグルコースの量を調節したり制限するために使用される拡散制御膜を有している。
【0007】
しかし、生理的な側面からこのようなセンサを注意して考案しなければ、グルコースセンサは上昇したグルコース濃度範囲で十分に反応しないことがある。もしバイオセンサシステムの最外層でグルコースの流入量が増加してしまう場合、このようなセンサ測定結果は、組織内のグルコース濃度を反映するには十分でないこともあるという問題が発生する。また人体に装着する持続血糖モニタリングセンサ装置の場合、人間が継続して動くことによってかき混ぜられる効果(stirring effect)による対流によってグルコースの供給(流入)速度がより増加するようになる。
【0008】
例えばグルコースの濃度が上昇する場合、高すぎるグルコース透過度を有するようになってグルコース濃度が正常濃度以上に上昇するような高原状態(plateau)のような電流を発生することもある。さらには、グルコースのセンサ内の拡散速度が流入により増加する場合、寿命が短縮するだけでなく、線型性が低くなるという問題点も発生する。
【0009】
ところで、従来の拡散制御膜の場合、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルイミダゾール(PVI)などを使用して温度が上昇する場合、血中グルコースの流入が増加して正確な血中グルコースの測定が難しいため、必ず温度を補正しなければならないという問題点を有する。
【0010】
これと関連して、米国特許第9,085,790号では、温度に影響を受けない分析センサであって、作動電極、対向電極、作動電極に積層されたセンシング層および負の温度係数(temperature coefficient)を有する第1メンブレンと正の温度係数を有する第2メンブレンを有し、温度に実質的に関係なしに分析物質透過性を有する積層メンブレン構造を有するセンサを開示しているが、重合体の水分吸収率を利用したり特定の水分吸収率を有する重合体ブレンド技術については全く開示や暗示していない。
【0011】
一方、米国特許第7,613,491号は、シリコン基材の膜を使用する移植可能なグルコースセンサに関し、移植用グルコースセンサの短い使用期間と血中グルコースの正確性が落ちる測定上の問題を解消するために、シリコンエラストマーおよびポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド共重合体を含む拡散抵抗層を酵素層と組織の間に位置させ、酵素層をさらに含む移植可能な分析センサのための装置を開示しているが、これも重合体の水分吸収率を利用したり特定の水分吸収率を有する重合体ブレンド技術については全く開示や暗示していない。
【0012】
そこで、本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究を重ねた結果、親水性重合体および疎水性重合体を特定の比率で組み合わせた重合体ブレンドを使用して拡散制御膜を製造する場合、温度などのような多様な要素によって影響を受けずに良好にセンサ内のグルコース流入を調節して正確で耐久性が強い持続血糖モニタリングセンサを開発できることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記のような問題を解消するための本発明の目的は、親水性重合体および疎水性重合体を含む持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜用重合体ブレンド組成物を提供することにある。
【0014】
他の一つの目的は、前記拡散制御膜用重合体ブレンド組成物からなる持続血糖モニタリングセンサ用拡散制御膜を提供することにある。
【0015】
また他の一つの目的は、前記拡散制御膜を含む持続血糖モニタリングセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一つの様態として、本発明は、親水性重合体および疎水性重合体を含む持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜用重合体ブレンド組成物に関する。好ましくは、前記親水性重合体および疎水性重合体は、それぞれ1種以上、好ましくは1種~3種が含まれ得る。具体的に本発明による持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜用重合体ブレンド組成物は、特定範囲の水分吸収率を有する親水性重合体および疎水性重合体を特に組み合わせることを特徴とする。前記用語の水分吸収率とは、重合体が外部の水分を内部に透過させる比率を意味し、重合体重量に対する透過される水分の重量を意味する。
【0017】
また好ましい様態において、本発明による重合体ブレンド組成物は、PBS緩衝液20mLに浸漬した場合、3時間以降の水分吸収量が15~90%であることを特徴とする。
【0018】
本発明のブレンド組成物に含まれる親水性重合体は、体内水分の流入および前記水分に含まれているグルコースの流入量を増加させることができる重合体を意味する。好ましくは、前記親水性重合体は、重合体の乾燥重量に対して10~200%の水分吸収率を有するものであれば制限なしに使用することができる。
【0019】
例えば、前記親水性重合体は、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエーテル基盤の熱可塑性のポリウレタンまたはこれらの組み合わせであり得るが、前記のような水分吸収率を有すれば制限なしに使用することができる。前記脂肪族ポリエーテル基盤の熱可塑性ポリウレタンは、例えばTecophilic(商標)という商標名で知られており、前記範囲の水分吸収率を有するものとしてよく知られたHP-60D-20(Lubrizol社)、HP-60D-35(Lubrizol社)、HP-60D-60(Lubrizol社)、HP-93A-100(Lubrizol社)、SP-80A-150(Lubrizol社);およびポリビニルピロリドンからなる群より選択される1種以上が挙げられるが、これに制限されるのではない。
【0020】
前記親水性重合体は、本発明のブレンド組成物の全体重量に対して26~70重量%含まれ得る。親水性重合体が26重量%未満含まれる場合、センサ内へのグルコースの流入量が過度に制限されて好ましくなく、70重量%を超えて含まれる場合、グルコースの流入量が過度に増加してこれも好ましくない。
【0021】
一方、本発明のブレンド組成物には、疎水性重合体が含まれ、これは体内水分の流入および前記水分に含まれているグルコースの流入量を減少させることができる重合体を意味する。好ましくは、前記疎水性重合体は、重合体乾燥重量に対して0~10%の水分吸収率を有するものであれば制限なしに使用することができる。
【0022】
例えば、前記疎水性重合体としては、脂肪族ポリエーテル基盤の熱可塑性のポリウレタンであって、Tecoflex(商標)という商標名で知られており、前記範囲の水分吸収率を有して疎水性重合体としてよく知られたSG80A(Lubrizol社)、SG93A(Lubrizol社)、SG60D(Lubrizol社)、EG72D(Lubrizol社)およびEG80A(Lubrizol社)からなる群より選択される1種以上が挙げられるが、これに制限されるのではない。
【0023】
前記疎水性重合体は、本発明のブレンド組成物の全体重量に対して30~74重量%含まれ得る。疎水性重合体が30重量%未満含まれる場合、センサ内へのグルコースの流入量が過度に増加して好ましくなく、74重量%を超えて含まれる場合、グルコースの流入量が過度に減少してこれも好ましくない。
【0024】
このような本発明による持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜用重合体ブレンド組成物は、親水性重合体および疎水性重合体が特定範囲にブレンドされることによって温度などのようなグルコースの流入および拡散速度に影響を与える因子の影響を最小化しながらも、適正な拡散速度でグルコースがセンサ内に流入されるようにする特徴を有する。
【0025】
さらには、このような重合体ブレンド組成物は、親水性および疎水性セグメントを有する多重重合体などとは異なり、必要に応じて重合体の含有量や種類を柔軟に変更することができるため、選択性が高く、外部環境からセンシング膜のような内部層を保護することができるという長所を有する。
【0026】
他の様態として、本発明は、前記持続血糖モニタリングセンサの拡散制御膜用重合体ブレンド組成物からなる持続血糖モニタリングセンサ用拡散制御膜、およびこれを含む持続血糖モニタリングセンサに関する。
【0027】
前記持続血糖モニタリングセンサは、好ましくは、血中グルコースを測定するための電気化学的センサである。
【0028】
このような持続的な血糖モニタリングセンサの構成として、本発明は、例えば電極、絶縁体(insulator)、基板、前記電子伝達媒介体および酸化還元酵素を含むセンシング膜(sensing layer)、保護膜(protection layer)などを含むことができる。
【0029】
前記センシング膜は、液体性生体試料を酸化還元させることができる酵素と前記酸化-還元重合体を含むことができる、電子伝達媒介体を含む電気化学的バイオセンサ用センシング膜に関するものである。酸化還元酵素は、生体の酸化還元反応を触媒する酵素を総称するもので、本発明では測定しようとする対象物質、例えばバイオセンサの場合には測定しようとする対象物質と反応して還元される酵素を意味する。このように還元された酵素は、電子伝達媒介体と反応し、この時に発生した電流変化などの信号を測定して対象物質を定量するようになる。本発明に使用可能な酸化還元酵素は、各種脱水素酵素(dehydrogenase)、酸化酵素(oxidase)、エステル化酵素(esterase)などからなる群より選択された1種以上のものであり得、酸化還元または検出対象物質によって、前記酵素群に属する酵素の中で前記対象物質を基質とする酵素を選択して使用することができる。
【0030】
より具体的に、前記酸化還元酵素は、グルコース脱水素酵素(glucose dehydrogenase)、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase)、グルコース酸化酵素(glucose oxidase)、コレステロール酸化酵素(cholester oloxidase)、コレステロールエステル化酵素(cholesterol esterase)、乳酸酸化酵素(lactate oxidase)、アスコルビン酸酸化酵素(ascorbic acid oxidase)、アルコール酸化酵素(alcohol oxidase)、アルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)、ビリルビン酸化酵素(bilirubin oxidase)などからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0031】
一方、前記酸化還元酵素は、測定しようとする対象物質(例えば、対象物質)から酸化還元酵素が取ってきた水素を保管する役割を果たす補因子(cofactor)を共に含むことができ、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、NAD)、ピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone、PQQ)などからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0032】
また、前記センシング膜は、架橋剤、界面活性剤、水溶性高分子、第4級アンモニウム塩、脂肪酸、増粘剤などからなる群より選択された1種以上の添加剤を試薬溶解時の分散剤、試薬製造時の粘着剤、長期保管の安定剤などの役割のために追加的に含むことができる。
【0033】
電極の場合、作動電極および対向電極のような2種の電極を含むこともでき、作動電極、対向電極および基準電極のような3種の電極を含むこともできる。一実施形態において、本発明によるバイオセンサは、少なくとも二つ、好ましくは二つまたは三つの電極を備えた基板に、電子伝達媒介体と液体性生体試料を酸化還元させることができる酵素を含む試薬組成物を塗布した後、乾燥して作製した電気化学的バイオセンサであり得る。例えば、電気化学的バイオセンサにおいて作動電極および対向電極が基板の互いに反対面に備えられ、前記作動電極上に本発明による酸化-還元重合体が含まれるセンシング膜が積層され、作動電極および対向電極が備えられた基板の両側面に順次に絶縁体および拡散膜が積層されることを特徴とする平面型電気化学的バイオセンサが提供される。
【0034】
具体的な様態として、前記基板は、PET(polyethylene terephthalate)、PC(polycarbonate)およびPI(polyimide)からなる群より選択される1種以上の素材からなるものであり得る。
【0035】
また、作動電極は、炭素、金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができる。
【0036】
また、2電極を有する電気化学的バイオセンサの場合、対向電極が基準電極の役割まで共に果たすため、対向電極として金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができ、基準電極まで含む3電極の電気化学的バイオセンサの場合、基準電極として金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができ、対向電極として炭素電極を使用することができる。
【0037】
制限されない例として、2電極である場合、対向電極が基準電極の役割まで共に果たすため、塩化銀または銀が使用され得、3電極である場合、基準電極が塩化銀または銀が使用され、対向電極は炭素電極を使用することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明による親水性重合体および疎水性重合体を含む重合体ブレンド組成物、およびこれからなる拡散制御膜、およびこれを含む持続血糖測定用バイオセンサを使用する場合、過度な血中グルコースのセンサ内の拡散速度増加による流入を制御して優れた正確性および耐久性を有するセンサの製造を可能にするという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】親水性および疎水性重合体を多様な比率にしてそれぞれ製造した本発明による重合体ブレンド組成物(SP-80A-150+SG93A)を使用して製造した拡散制御膜を含む持続血糖測定用バイオセンサの時間による電流の強さを確認した結果である。
【
図2】親水性および疎水性重合体を多様な比率にしてそれぞれ製造した本発明による重合体ブレンド組成物(PVP+SG93A)を使用して製造した拡散制御膜を含む持続血糖測定用バイオセンサの時間による電流の強さを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるのではない。
【0041】
[実施例]
実施例1:親水性および疎水性重合体を含む重合体ブレンド組成物からなる拡散制御膜の製造および電気化学的シグナルの確認1
本発明による親水性および疎水性重合体を含む重合体ブレンド組成物からなる拡散制御膜を次の通り製造した。
【0042】
熱可塑性ポリウレタンであって、親水性重合体としてはTecophilic(商標)という商標名でも知られたソリューショングレード(Solution grade)、メディカルグレード(Medical grade)の脂肪族、ポリエーテル基盤重合体であって、乾燥重量の150%の水分吸収率を示すSP-80A-150(Lubrizol社)を使用し、疎水性重合体としてはTecoflex(商標)という商標名でも知られたソリューショングレード(Solution grade)、メディカルグレード(Medical grade)の脂肪族、ポリエーテル基盤疎水性重合体であるSG93A(Lubrizol社)を使用した。前記親水性および疎水性重合体をそれぞれ50mg称量して1mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶かし、これをそれぞれSP-80A-150:SG93Aの体積比率で(i)100:0、(ii)85:15、(iii)75:25、(iv)25:75に混合して重合体ブレンドを製造した。
【0043】
このような重合体ブレンドをセンシング膜が固定されている電極上に5uLを載せた後、オーブンで24時間乾燥して拡散制御膜を製造した。このように作製された電極を、電気化学測定装備(CHI1030)を使用して、10mM PBS、pH7.4溶液に浸漬して安定化させた後にi-t測定法を使用してグルコース濃度変化による電流値の変化を測定した。グルコースは高濃度のグルコース溶液を電極が浸漬されているPBS溶液に一定量を注入する方法を使用してグルコース濃度が0~5mMになるまで信号を測定した。その結果を
図1に示した。
図1から確認できるように、親水性重合体:疎水性重合体の体積比率が100:0でグルコース濃度変化による電流値の変化が最も大きく測定され、親水性重合体の比率が減少するほど電流値の変化が減少する結果を示し、親水性重合体:疎水性重合体の体積比率が25:75ではグルコース濃度変化による電流値の変化がほとんど観測されないことが分かった。
【0044】
実施例2:親水性および疎水性重合体を含む重合体ブレンド組成物からなる拡散制御膜の製造および電気化学的シグナルの確認2
本発明による親水性および疎水性重合体を含む重合体ブレンド組成物からなる拡散制御膜を次の通り製造した。
【0045】
親水性重合体としては、ポリビニルピロリドン(PVP、Sigma Aldrich社)、疎水性重合体としてはSG93A(Lubrizol社)を使用した。前記SG93A 100mLを1mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶かし、PVP 200mgをエタノール1mLに溶かしてそれぞれの溶液を製造した。この溶液をそれぞれSG93A:PVPの体積比率で(i)100:0、(ii)90:10、(iii)80:20、(iv)70:30に混合して重合体ブレンドを製造した。
【0046】
このような重合体ブレンドをセンシング膜が固定されている電極上に5uLを載せた後、オーブンで24時間乾燥して拡散制御膜を製造した。このように作製された電極を、電気化学測定装備(CHI1030)を使用して、10mM PBS、pH7.4溶液に浸漬して安定化させた後にi-t測定法を使用してグルコース濃度変化による電流値の変化を測定した。グルコースは高濃度のグルコース溶液を電極が浸漬されているPBS溶液に一定量を注入する方法を使用してグルコース濃度が0~5mMになるまで信号を測定した。その結果を
図2に示した。
図2から確認できるように、親水性重合体:疎水性重合体の体積比率が30:70でグルコース濃度変化による電流値の変化が最も大きく測定され、疎水性重合体の比率が増加するほど電流値の変化が減少する結果を示すことが分かった。
【0047】
実施例3:親水性および疎水性重合体を含む重合体ブレンド組成物からなる拡散制御膜の水分吸収(Water uptake)能力分析
下記表1の組成により混合された重合体ブレンドを含む重合体膜を次のような製造方法により製造した。
【0048】
【0049】
まず、前記親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーそれぞれ1.7gを1.7mL THFに溶かし、それぞれ40℃に温度を加熱しながら攪拌してストック(stock)溶液を作った。前記各ストック溶液を比率に合うように混合した後、約半日間ローテーター(rotator)で混合した。その後、テフロン(Teflon)板上に比率に合うように混合した溶液を1.5mLずつ分注した。分注後、30分間常温に放置して表面が少し乾けば25℃オーブンで一晩中乾燥させた。溶液が流れ落ちることを防止するために常温に放置してからオーブンに入れた。
【0050】
前記のように製造された重合体膜をPBS緩衝液(10mM PBS、pH7.4(137mM NaCl、3mM KCl))20mLに浸漬しておき、0時間である時の水分吸収量を0%として計算し、3時間および70時間以降の水分吸収量を確認してこれを表2に示した。
【0051】
【0052】
表2から確認できるように、親水性ポリマーの水分吸収能力はある一定比率を吸収すれば吸収能力の限界に到達する方向に進行することを確認することができた。そして、親水性ポリマーと疎水性ポリマーをブレンドして膜を製造した時、親水性ポリマーの比率が減少することにより、水分吸収能力が比例して減少することを確認することができ、このような特性により親水性ポリマーと疎水性ポリマーのブレンド比率の調節を通じてグルコースの拡散程度を調節可能であると期待することができた。