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特許7161615シリコーン組成物及びシリコーンエラストマー物品を付加造形するための方法
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  • 特許-シリコーン組成物及びシリコーンエラストマー物品を付加造形するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】シリコーン組成物及びシリコーンエラストマー物品を付加造形するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20221019BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20221019BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221019BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20221019BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221019BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20221019BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20221019BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
B33Y70/00
B33Y10/00
B29C64/106
B33Y80/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021522371
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 CN2018112180
(87)【国際公開番号】W WO2020082359
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】516190747
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・シャンハイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES SHANGHAI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リャー・チア
(72)【発明者】
【氏名】チーユアン・ユエ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-500192(JP,A)
【文献】特開2000-136307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 3/36
B33Y 70/00
B33Y 10/00
B29C 64/106
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンエラストマー物品を付加造形するためのシリコーン組成物であって、付加反応によって架橋可能であり、以下:
(A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物A;
(B)1分子あたり、同一又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含む少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B;
(C)白金族の少なくとも1種の金属又は化合物からなる少なくとも1種の触媒C;
(D)少なくとも部分的に表面処理された少なくとも1種のシリカ補強充填剤D;
(E)アリール基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンE;
(F)任意に、少なくとも1種の架橋阻害剤F
を含み、前記シリカ補強充填剤Dの量は、全組成物の10~30重量%の範囲であることを特徴とする組成物
【請求項2】
前記1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物Aが、以下を含む請求項1に記載のシリコーン組成物:
(i)以下の式を有する、同一又は異なる少なくとも2つのシロキシル単位(A.1):
【化1】
式中、
a=1又は2であり、b=0、1又は2であり、a+b=1、2又は3であり;
記号Wは、同一又は異なる、線状又は分岐状C2~C6アルケニル基を表し;
記号Zは、同一又は異なる、1~30個の炭素原子を含む1価の線状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、前記アルキル基は、非置換であるか、1個以上のハロゲン原子によって、及び/又は1個以上のアリール基によって置換されていてよい;
(ii)任意に、以下の式を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
【化2】
式中、
c=0、1、2、又は3であり、
記号Z1は、同一又は異なる、1~30個の炭素原子を含む1価の線状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、前記アルキル基は、非置換であるか、1個以上のハロゲン原子によって、及び/又は1個以上のアリール基によって置換されていてよい。
【請求項3】
前記オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bが以下を含むオルガノポリシロキサンである、請求項1に記載のシリコーン組成物:
(i)以下の式を有する、少なくとも2つのシロキシル単位:
【化3】
式中、
d=1又は2であり、e=0、1又は2、d+e=1、2又は3であり、
記号Z3は、同一又は異なる、1~30個の炭素原子を含む1価の線状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、前記アルキル基は、非置換であるか、1個以上のハロゲン原子によって、及び/又は1個以上のアリール基によって置換されていてよい;
(ii)任意に、以下の式を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
【化4】
式中、
c=0、1、2、又は3であり、
記号Z2は、同一又は異なる、1~30個の炭素原子を含む1価の線状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、前記アルキル基は、非置換であるか、1個以上のハロゲン原子によって、及び/又は1個以上のアリール基によって置換されていてよい。
【請求項4】
前記シリコーン組成物が、前記シリコーン組成物の総重量に対して、0.3~30重量%の、アリール基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンEを含む、請求項1に記載のシリコーン組成物。
【請求項5】
前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが、式(E-1)のシロキシル単位を含むオルガノポリシロキサンである、請求項1に記載のシリコーン組成物:
【化5】
式中、
5とR6は互いに独立して、1~30個の炭素原子と水素を含む炭化水素基から選択され、
nは1以上の整数であり、
pとqは独立して0、1、2、又は3であり、
p+q=1、2又は3であり、
ただし、前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが、Si原子に直接結合した少なくとも1個のアリール基を含むこと。
【請求項6】
前記炭化水素基は、1~24個の炭素原子を含み、非置換であるか、1個以上のハロゲン又はアリール基で置換されている、線状、分岐状又は環状のアルキル及び/又はアルケニル基から選択され、あるいは、6~12個の炭素原子を含み、非置換であるか、1個以上のハロゲン及びC1~C6-アルキル基で置換されている、アリール基から選択される、請求項5に記載のシリコーン組成物。
【請求項7】
前記アリール基が、キシリル、トリル及びフェニル基からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項8】
基R5及びR6の少なくとも1つがアリール基であり、他は1~8個の炭素原子を含むアルキル基、及び2~6個の炭素原子を含むアルケニル基からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項9】
前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが、少なくとも1個のアリール基、及び少なくとも1個のアルケニル基を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項10】
前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが、
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
又は
【化11】
である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項11】
前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが、少なくとも1個のアリール基、及び少なくとも1個のSiH基を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項12】
前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが、少なくとも1個のアリール基、少なくとも1個のアルケニル基、及び少なくとも1個のSiH基を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項13】
前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEの粘度が、3~10,000,000mPa・sの範囲である、請求項1~12のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項14】
前記シリカ補強充填剤Dが疎水性表面処理されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項15】
前記シリコーン組成物の100重量%あたりに、以下を含む請求項1~14のいずれか1項に記載のシリコーン組成物:
・10~95重量%の少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物A;
・0.1~40重量%の少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B;
10~30重量%の、少なくとも部分的に表面処理された少なくとも1種のシリカ補強充填剤D;
・0.8~20重量%のアリール基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンE;
・0.002~0.01重量%の触媒
・0.01~2重量%の少なくとも1種の架橋阻害剤F。
【請求項16】
前記シリコーン組成物の100重量%あたりに、以下を含む請求項1~15のいずれか1項に記載のシリコーン組成物:
・20~85重量%の少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物A;
・0.1~15重量%の少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B;
・10~30重量%の、少なくとも部分的に表面処理された少なくとも1種のシリカ補強充填剤D;
・1.0~15重量%のアリール基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンE;
・0.0002~0.01重量%の触媒
・0.01~1重量%の少なくとも1種の架橋阻害剤F。
【請求項17】
前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが、1.405を超え屈折率を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項18】
前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEの総重量に対して、アリール基の量が、2~70重量%である、請求項1~17のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
【請求項19】
シリコーンエラストマー物品を付加造形するための方法であって、以下のステップ:
1)押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターから選択される3Dプリンターを用いて、基板上に第1のシリコーン組成物を印刷して、第1の層を形成し、
2)前記3Dプリンターを用いて、前記第1又は前の層に、第2のシリコーン組成物を印刷して、後続の層を形成し、
3)任意に、必要な追加の層のために、独立して選択されるシリコーン組成物を使用して、ステップ2)を繰り返し、
4)前記第1及び後続の層を、任意に加熱することによって、架橋させ、シリコーンエラストマー物品を得ること
を含み、
前記シリコーン組成物の少なくとも1つの層は、請求項1~18のいずれか1項に記載のシリコーン組成物である、方法。
【請求項20】
前記3Dプリンターが押出3Dプリンターである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の方法によって製造されたシリコーンエラストマー物品。
【請求項22】
Dプリンターにおける、請求項1~18のいずれか1項に記載の付加反応によって架橋可能なシリコーン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン組成物、及び三次元エラストマーシリコーン物品を付加造形するための方法に関する。エラストマーシリコーン物品は、3Dプリンター用いて、付加反応によって架橋可能なシリコーン組成物を印刷することにより、層ごとに構築される。
【背景技術】
【0002】
付加造形技術は、成形部品の層の自動付加構築が共通の特徴であるさまざまな技術を包含する。付加架橋シリコーン組成物は、三次元エラストマーシリコーン物品又は部品を製造するための付加造形法ですでに使用されている。そのようなシリコーン組成物は、例えば、CN104559196B、CN105238064A、CN105637035A及びCN107141426Aに開示されている。
【0003】
WO2015/107333は、混合チャンバーを含む材料デリバリーシステムを有するx-y-zガントリーロボットを含む3Dプリンターを開示しており、混合チャンバーは、ミキサー本体、ミキサーノズル、及び混合パドルをさらに含む。材料デリバリーシステムは、混合チャンバーに接続可能な複数のシリンジポンプをさらに含み、印刷材料の成分の流れを混合チャンバーにデリバリーする。ミキシングパドルは、ポートブロックを介してミキシングチャンバーにねじ込まれ、モーターによって回転して、ミキサーノズルから押し出される前に印刷材料を混合する。付加架橋シリコーン組成物は、ポリジメチルシロキサン鎖、フィラー、触媒及び架橋剤を含む。これらの成分の量を変えることにより、エラストマーの機械的特性を適合させることができるが、望ましい特性は、シリコーン組成物の硬化時間と粘度、及び材料が印刷される速度にも依存する。
【0004】
高品質の成形シリコーン部品を効率的に製造するための付加造形法を提供する必要がある。付加造形技術に関連する主な問題の1つは、層ごとの生産中に、各層がその形状を維持する必要があることである。製品の高さが高くなると、下の層はその形状と流れを保持できなくなり、構造が歪んだり崩壊したりする可能性がある。その結果、不適切な形状のシリコーン部品が得られることになる。
【0005】
さまざまな解決策が提案されている。WO2016071241は、25℃で測定された、0.5s-1の剪断速度における粘度が少なくとも10Pa・sであるシリコーン組成物の使用、及び独立して空間的に制御可能な電磁エネルギーによる照射の使用により、シリコーン組成物を適用した後、シリコーン組成物を架橋又は初期架橋して、変形を防止することを開示している。
【0006】
WO2016188930は、各層の堆積後に、形成された予備構造をオーブン上で硬化する方法を開示している。
【0007】
WO2017040874は、印刷後、次の層の堆積の前に加熱することによって各層を少なくとも部分的に硬化させる方法を開示している。
【0008】
上記のすべての解決策は、同時に、又は層を印刷するステップの間に、加熱又は電磁放射を実装する必要がある。3Dプリンターが複雑になり、印刷速度が影響される。
【0009】
さらに、WackerのWO2017081028A1及びWO2017121733A1は、印刷される材料の特定のレオロジー特性と相容性のあるプリントヘッドの技術的パラメータにより、満足のいく印刷結果を得ることが可能であることを教示している。また、両方とも、エポキシ基官能性化合物、(ポリ)エーテル基官能性化合物及び(ポリ)エステル基官能性化合物から選択される1種以上の化合物をレオロジー剤として使用して、チキソトロピー特性を調整及び改善している。
【0010】
US5036131は、空気に曝露されるとエラストマーに硬化する、靭性とチキソトロピー特性が改善されたシリコーン分散液を開示している。ここで使用されるシリコーン分散液は、ヒドロキシル末端ブロックされたポリジオルガノシロキサン、アルミニウム三水和物、及び水分活性化硬化システムに基づくものである。コーティングのチキソトロピー性を得るためには、未処理のヒュームシリカと組み合わせて、ヒドロキシル末端封鎖基及びフェニル又は3,3,3-トリフルオロプロピル基を有するシロキサン(2)をシリコーン分散液に含める必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、三次元シリコーンエラストマー部品の時間効率の良い製造を可能にする方法を提供することである。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、優れた製造精度を備えた3Dエラストマー部品を得ることである。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、硬化前に室温で層の崩壊又は変形が低減され、又は防止されたシリコーンエラストマー物体の付加造形のための方法を提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、優れた機械的特性及び耐熱性を備えた3Dエラストマー部品を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では、本発明は、シリコーンエラストマー物品を付加造形するための方法であって、以下のステップ:
1)押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターから選択される3Dプリンターを用いて、基板上に第1のシリコーン組成物を印刷して、第1の層を形成し、
2)前記3Dプリンターを用いて、前記第1又は前の層に、第2のシリコーン組成物を印刷して、後続の層を形成し、
3)任意に、必要な追加の層のために、独立して選択されるシリコーン組成物を使用して、ステップ2)を繰り返し、
4)前記第1及び後続の層を、任意に加熱することによって、架橋させ、シリコーンエラストマー物品を得ること
を含み、
前記シリコーン組成物の少なくとも1つの層は、以下に定義される本発明のシリコーン組成物である。
【0016】
別の態様では、本発明は、シリコーンエラストマー物品を付加造形するためのシリコーン組成物であり、前記シリコーン組成物は、付加反応によって架橋可能であり、以下を含むことを特徴とする:
(A)1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物A;
(B)1分子あたり、同一又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含む少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B;
(C)白金族の少なくとも1種の金属又は化合物からなる少なくとも1種の触媒C;
(D)少なくとも部分的に表面処理された少なくとも1種のシリカ補強充填剤D;
(E)アリール基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンE;
(F)任意に、少なくとも1種の架橋阻害剤F。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1はサンプルのさまざまな透明度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の付加架橋シリコーン組成物が、3Dプリンターに適しており、完全に硬化する前に室温で物体の崩壊又は変形を低減又は回避するのに役立つ適切なレオロジー特性を有することを発見したことは、発明者の功績である。
【0019】
レオロジー特性に関しては、非ニュートン体の低剪断速度粘度と高剪断速度粘度の比率として一般的に使用及び開示されている粘度指数の指標だけではない。これは、剪断速度を下げるときの粘度の上昇速度にも関係する。
【0020】
したがって、レオロジー特性を評価するためにパラメータ「チキソトロピー指数」が本明細書に導入され、それは非ニュートン体の低剪断速度粘度と高剪断速度粘度との間の比として表される。このパラメータの測定については、以下の本出願の実験部分で説明する。
【0021】
第1の態様では、本発明は、シリコーンエラストマー物品を付加造形するための方法である。
【0022】
第1のステップにおいて、第1の付加架橋シリコーン組成物の層は基板上に印刷され、基板上に層が形成される。基板は限定されず、任意の基板であり得る。基板は、例えば3Dプリンターの基板プレートのように、その製造方法中に3D物品を支持することができる。基板は、剛性又は可撓性であり得、連続的又は不連続的であり得る。基板自体は、例えば、基板テーブル又はプレートによって支持され得、そうすると、基板が剛性を有する必要がない。また、これは、3D物品から取り除くこともできる。あるいは、基板は、物理的又は化学的に3D物品に結合することができる。一実施形態では、基板はシリコーンであり得る。
【0023】
第1の付加架橋シリコーン組成物を印刷することによって形成された層は、任意の形状及び任意の寸法を有し得る。層は連続的又は不連続的であり得る。
【0024】
第2のステップでは、後続の層は、第1のステップで形成された前の層に、第2のシリコーン組成物を、押出3Dプリンター又は材料3D噴射プリンターで印刷することによって形成される。押出3Dプリンター及び材料3D噴射プリンターは、ステップ1)で利用された押出3Dプリンター又は材料3D噴射プリンターと同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
第2の添加架橋シリコーン組成物は、第1の添加架橋シリコーン組成物と同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
第2の付加架橋シリコーン組成物を印刷することによって形成される後続の層は、任意の形状及び任意の寸法を有し得る。後続の層は、連続又は不連続であり得る。
【0027】
第3のステップでは、第2のステップを繰り返して、必要な数の層を得る。
【0028】
第4のステップでは、層を完全に架橋させること(任意には加熱すること)により、シリコーンエラストマー物品が得られる。架橋は室温で完了することができる。通常、室温とは20~25℃の温度を指す。
【0029】
加熱は、層の架橋又は硬化を加速するために使用され得る。印刷後の熱硬化は、完全な硬化又は架橋をより速く達成するために、50~200℃、好ましくは60~100℃の温度で行うことができる。
【0030】
本明細書では、「層」という用語は、本方法の任意の段階、第1又は前の又は後続の層の層に関連し得る。層は、厚さや幅など、それぞれがさまざまな寸法であり得る。層の厚さは均一にすることも、変化させることもできる。平均厚さは、印刷直後の層の厚さに関連する。
【0031】
一実施形態では、各層は、独立して、10~3,000μm、好ましくは50~2,000μm、より好ましくは100~800μm、最も好ましくは100~600μmの厚さを有する。
【0032】
特定の実施形態では、熱又は放射としてのエネルギー源は、少なくとも10、好ましくは20層の印刷の前に、ステップ1)から3)の間に適用されない。
【0033】
3D印刷の開示
3D印刷は、一般に、コンピューターで生成された物理的物体を製造するために使用される多くの関連テクノロジー(例えば、コンピューター支援設計(CAD)、データソース)に関連する。
【0034】
本開示には、一般に、ASTM指定F2792-12a、「このASTM規格に基づく付加造形技術の標準用語」が組み込まれる。
【0035】
「3Dプリンター」は「3D印刷に使用される機械」と定義され、「3D印刷」は「プリントヘッド、ノズル、又は他のプリンター技術を使用した材料の堆積による物体の製造」と定義される。
【0036】
「付加製造(additive manufacturing、AM)」は、機械加工手法とは対照的に、「(通常は層ごとに)材料を結合して3Dモデルデータから物体を作製するプロセス」と定義される。3D印刷に関連し、それらに含まれる同義語には、付加造形、付加加工、付加技術、層付加製造、層製造、フリーフォーム加工が含まれる。付加製造(AM)は、ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping、RP)と呼ばれることもある。本明細書で使用される場合、「3D印刷」は一般に「付加造形」と交換可能であり、逆もまた同様である。
【0037】
「印刷」は、プリントヘッド、ノズル、又は別のプリンター技術を使用して、材料、ここではシリコーン組成物を堆積させることとして定義される。
【0038】
本開示において、「3D又は三次元の物品、物体又は部品」とは、上記で開示された付加造形又は3D印刷によって得られた物品、物体又は部品を意味する。
【0039】
一般に、すべての3D印刷プロセスには共通の開始点がある。これは、物体を記述することができるコンピューター生成のデータソース又はプログラムである。コンピューターで生成されたデータソース又はプログラムは、実際の物体又は仮想の物体に基づくことができる。例えば、3Dスキャナーを使用して、実際の物体をスキャンし、スキャンデータを使用してコンピューター生成のデータソース又はプログラムを作成できる。あるいは、コンピューター生成のデータソース又はプログラムをゼロから設計することもできる。
【0040】
コンピューター生成のデータソース又はプログラムは、通常、標準テッセレーション言語(standard tessellation language、STL)ファイル形式に変換される。ただし、他のファイル形式も代替として、又は追加で使用できる。ファイルは通常、3D印刷ソフトウェアに読み込まれ、ソフトウェアは、ファイル及び任意選択のユーザー入力を取得して、これを数百、数千、さらには数百万の「スライス」に分割する。3D印刷ソフトウェアは通常、マシン命令を出力する。これはGコードの形式であり得、3Dプリンターによって読み取られて各スライスが作成される。機械命令は3Dプリンターに転送され、3Dプリンターは、この機械命令形式のスライス情報に基づいて、層ごとに物体を構築する。これらのスライスの厚さは異なり得る。
【0041】
押出3Dプリンターは、付加造形プロセス中に材料がノズル、シリンジ、又はオリフィスから押し出される3Dプリンターである。材料の押し出しは、一般に、ノズル、シリンジ、又はオリフィスを通して材料を押し出して、物体の1つの断面を印刷することによって機能する。これは、後続の層に対して繰り返すことができる。押し出された材料は、材料の硬化中にその下の層に結合する。
【0042】
1つの好ましい実施形態では、3次元シリコーンエラストマー物品を付加造形するための方法は、押出3Dプリンターを使用する。シリコーン組成物は、ノズルを通して押し出される。ノズルを加熱して、付加架橋シリコーン組成物の投与を助けることができる。
【0043】
ノズルの平均直径は層の厚さを決める。一実施形態では、層の直径は、50~3,000μm、好ましくは100~800μm、最も好ましくは100~500μmで構成される。
【0044】
ノズルと基板の間の距離は、良好な形状を保証するための重要なパラメータである。好ましくは、それは、ノズル平均直径の60~150%、より好ましくは80~120%から構成される。
【0045】
ノズルを通して投与される付加架橋シリコーン組成物は、カートリッジのようなシステムから供給され得る。カートリッジは、関連する1個以上の流体リザーバーを備えた1個以上のノズルを含み得る。スタティックミキサーと1つのノズルのみを備えた同軸2カートリッジシステムを使用することも可能である。圧力は、投与される流体、関連するノズルの平均直径、及び印刷速度に合わせて調整される。
【0046】
ノズルの押し出し中に発生する高い剪断速度のために、付加架橋シリコーン組成物の粘度は大幅に低下し、したがって、微細な層の印刷を可能にする。
【0047】
カートリッジ圧力は、1~20バール、好ましくは2~10バール、そして最も好ましくは4~8バールまで変化し得る。100μm未満のノズル直径を使用する場合、良好な材料の押し出しを得るために、カートリッジの圧力は20バールより高くする必要がある。このような圧力に耐えるために、アルミニウムカートリッジを使用する適合機器を使用する必要がある。
【0048】
ノズル及び/又はビルドプラットフォームは、X-Y(水平面)内を移動して物体の断面を完成させ、1つの層が完了するとZ軸(垂直)平面内を移動する。ノズルの約10μmの高いXYZ移動精度を有する。各層がX、Y作業面に印刷された後、ノズルは、次の層をX、Y作業場所に適用できる距離だけ、Z方向に移動される。このようにして、3D物品となる物体は、下から上に向かって1層ずつ構築される。
【0049】
前述したように、ノズルと前の層との間の距離は、良好な形状を保証するための重要なパラメータである。好ましくは、それは、ノズル平均直径の60~150%、好ましくは80~120%から構成されるべきである。
【0050】
有利には、良好な精度と製造速度との間の最良の妥協点を得るために、印刷速度は1~50mm/秒、好ましくは5~30mm/秒で構成される。
【0051】
「材料噴射」は、「構築材料の液滴が選択的に堆積される付加造形プロセス」として定義される。材料は、個々の液滴の形で印刷ヘッドの助けを借りて、作業面の所望の位置に不連続に適用される(ジェッティング)。少なくとも1つ、好ましくは2~200の印刷ヘッドノズルを含む印刷ヘッド配置を備えた3D構造の段階的製造のための3D装置及びプロセスは、複数の材料を適切な場所に選択的適用することを可能にする。噴射印刷による材料の適用は、材料の粘度に特定の要件を課す。
【0052】
材料3D噴射プリンターでは、1個以上のリザーバーが圧力を受け、計量ラインを介して計量ノズルに接続される。リザーバーの上流又は下流に、多成分付加架橋シリコーン組成物を均一に混合すること、及び/又は溶解ガスを排出することを可能にする装置があり得る。互いに独立して作動する1個以上の噴射装置が存在して、異なる付加架橋シリコーン組成物からエラストマー物品を構築するか、又はより複雑な構造の場合、シリコーンエラストマー及び他のプラスチックから作られた複合部品を可能にすることができる。
【0053】
噴射計量手順中に計量バルブで発生する高い剪断速度のために、そのような付加架橋シリコーン組成物の粘度は大幅に低下し、したがって非常に微細な微小液滴の噴射計量を可能にする。微小液滴が基板上に堆積した後、その剪断速度が突然低下するため、その粘度は再び上昇する。このため、堆積した液滴は再び急速に高粘度になり、3次元構造の形状精度の高い構築が可能になる。
【0054】
個々の計量ノズルをx、y、z方向に正確に配置することで、基板上、又は、その後の成形部品の形成過程で、すでに配置され、任意に、すでに架橋されている付加架橋シリコーンゴム組成物上に、シリコーンゴムの液滴の正確な、ターゲットを絞った堆積を可能にすることができる。
【0055】
他の付加造形法とは異なり、構造の崩壊を回避するために、各層が印刷された後に硬化を開始するために、照射又は加熱された環境で本発明の方法を実行する必要はない。したがって、照射及び加熱操作は任意であり得る。
【0056】
典型的には、3Dプリンターは、特定の硬化性シリコーン組成物を印刷するために、ディスペンサー、例えば、ノズル又はプリントヘッドを利用する。任意に、ディスペンサーは、シリコーン組成物を投与する前、最中、及び後に加熱することができる。複数のディスペンサーを利用することができ、各ディスペンサーは独立して選択された特性を有し得る。
【0057】
一実施形態では、この方法は、支持材料を使用して物体を構築することができる。物体が支持材料又はラフトを使用して印刷される場合、印刷プロセスが完了した後、それらは通常取り除かれ、完成した物体を残す。
【0058】
後処理オプション
必要に応じて、得られた物品は、異なる後処理レジームに供され得る。一実施形態では、この方法は、三次元シリコーン物品を加熱するステップをさらに含む。加熱は硬化を促進するために使用できる。別の実施形態では、この方法は、三次元シリコーン物品をさらに照射するステップをさらに含む。硬化を促進するために、さらなる照射を使用することができる。別の実施形態では、この方法は、三次元シリコーン物品を加熱するステップと照射するステップの両方をさらに含む。
【0059】
任意に、後処理ステップにより、印刷物品の表面品質を大幅に向上させることができる。研磨は、モデルの目に見えて異なる層を削減又は取り除くための一般的な方法である。エラストマー物品の表面に熱又はUV硬化性のRTV又はLSRシリコーン組成物をスプレー又はコーティングすることで、適切な滑らかな表面を得ることができる。
【0060】
レーザーによる表面処理も可能である。
【0061】
医療用途の場合、最終的なエラストマー物品の滅菌は、物体を>100℃で又はUVオーブンで加熱することによってできる。
【0062】
付加架橋シリコーン組成物
第1及び第2の付加架橋シリコーン組成物は、互いに同じであっても異なっていてもよく、工程3)が繰り返される場合、独立して選択された付加架橋シリコーン組成物を利用することができる。本発明の方法において、付加架橋シリコーン組成物の少なくとも1つの層は、本発明のシリコーン組成物であり、これは、例えば、第1又は第2の付加架橋シリコーン組成物又は付加架橋シリコーン組成物の他の任意の追加の層であり得る。一実施形態では、付加架橋シリコーン組成物のすべての印刷された層は、本発明のシリコーン組成物である。
【0063】
簡潔にするために、第1及び第2の付加架橋シリコーン組成物は、ステップ3)が任意に繰り返されるときに利用される他の任意の付加架橋シリコーン組成物と共に、以下、単にまとめて「付加架橋シリコーン組成物」又は「シリコーン組成物」と呼ばれる。
【0064】
オルガノポリシロキサンA
特に有利なモードによれば、1分子あたり、ケイ素原子に結合した少なくとも2個のC2~C6アルケニル基を含むオルガノポリシロキサンAが、以下を含む:
(i)以下の式を有する、同一又は異なる少なくとも2つのシロキシル単位(A.1):
【化1】
式中、
a=1又は2であり、b=0、1又は2であり、a+b=1、2又は3であり;
記号Wは、同一又は異なる、線状又は分岐状C2~C6アルケニル基を表し;
記号Zは、同一又は異なる、1~30個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子を含む1価の線状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルからなる群からさらに優先的に選択され、非置換であるか、フッ素、塩素、及び臭素原子などの1個以上のハロゲン原子によって、及び/又はフェニルなどの1個以上のアリール基によって置換されていてよく;
(ii)任意に、以下の式を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
【化2】
式中、
c=0、1、2、又は3であり、
記号Z1は、同一又は異なる、1~30個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子を含む1価の線状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルからなる群からさらに優先的に選択され、非置換であるか、フッ素、塩素、及び臭素原子などの1個以上のハロゲン原子によって、及び/又はフェニルなどの1個以上のアリール基によって置換されていてよい。
【0065】
有利には、Z及びZ1は、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択され、Wは、以下のリストから選択される:ビニル、プロペニル、3-ブテニル、5-ヘキセニル、9-デセニル、10-ウンデセニル、5,9-デカジエニル及び6-11-ドデカジエニル。好ましくは、Wはビニルである。
【0066】
好ましい実施形態では、式(A.1)ではa=1であり、a+b=2又は3であり、式(A.2)ではc=2又は3である。
【0067】
これらのオルガノポリシロキサンAは、線状、分枝状又は環状の構造を有し得る。
【0068】
それらが線状ポリマーである場合、それらは本質的に、シロキシル単位W2SiO2/2、WZSiO2/2及びZ1 2SiO2/2からなる群から選択されるシロキシル単位「D」、及びシロキシル単位W3SiO1/2、WZ2SiO1/2、W2ZSiO1/2及びZ1 3SiO1/2からなる群から選択されるシロキシル単位「M」から形成される。記号W、Z、Z1は上記の通りである。
【0069】
末端単位「M」の例として、トリメチルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ又はジメチルヘキセニルシロキシ基が挙げられる。
【0070】
単位「D」の例として、ジメチルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ又はメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0071】
前記オルガノポリシロキサンAは、25℃で約1~10,000,000mPa・s、一般に25℃で約200~1,000,000mPa・sの動粘度を有するオイルであり得る。
【0072】
本明細書で検討中のすべての粘度は、25℃での「ニュートン」動粘度の大きさに対応する。すなわち、それ自体が知られている方法で、ブルックフィールド粘度計を使用して、測定された粘度が速度勾配に依存しないように十分に低い剪断速度勾配で測定される動粘度である。
【0073】
それらが環状オルガノポリシロキサンである場合、それらは、以下の式を有するシロキシル単位「D」から形成される:W2SiO2/2、Z1 2SiO2/2又はWZSiO2/2、これらは、ジアルキルシロキシ、アルキルビニルシロキシ又はアルキルシロキシタイプであり得る。そのようなシロキシル単位の例はすでに上で述べられている。前記環状オルガノポリシロキサンAは、25℃で約1~5,000mPa・sの粘度を有する。
【0074】
オルガノヒドロゲノポリシロキサンB
好ましい実施形態によれば、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、1分子あたり、同一又は異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含み、好ましくは、分子あたり、同一又は異なるケイ素原子に直接結合した少なくとも3個の水素原子を含む、オルガノポリシロキサンである。
【0075】
有利には、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bが以下を含むオルガノポリシロキサンである:
(i)以下の式を有する、少なくとも2つのシロキシル単位、好ましくは少なくとも3つのシロキシル単位:
【化3】
式中、
d=1又は2であり、e=0、1又は2、d+e=1、2又は3であり、
記号Z3は、同一又は異なる、1~30個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子を含む1価の線状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルからなる群からさらに優先的に選択され、非置換であるか、フッ素、塩素、及び臭素原子などの1個以上のハロゲン原子によって、及び/又はフェニルなどの1個以上のアリール基によって置換されていてよい;
(ii)任意に、以下の式を有する少なくとも1つのシロキシル単位:
【化4】
式中、
c=0、1、2、又は3であり、
記号Z2は、同一又は異なる、1~30個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子を含む1価の線状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルからなる群からさらに優先的に選択され、非置換であるか、フッ素、塩素、及び臭素原子などの1個以上のハロゲン原子によって、及び/又はフェニルなどの1個以上のアリール基によって置換されていてよい。
【0076】
オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、式(B.1)のシロキシル単位のみから形成され得るか、又は式(B.2)の単位を含み得る。それは、線形、分岐、又は環状の構造を有し得る。
【0077】
式(B.1)のシロキシル単位の例は、特に次の単位である:H(CH32SiO1/2及びHCH3SiO2/2
【0078】
それらが線状ポリマーである場合、それらは本質的に以下から形成される:
・式Z2 2SiO2/2又はZ3HSiO2/2を有する単位から選択されるシロキシル単位「D」、及び
・式Z2 3SiO1/2又はZ3 2HSiO1/2を有する単位から選択されるシロキシル単位「M」。
【0079】
これらの線状オルガノポリシロキサンは、25℃で約1~1,000,000mPa・s、一般に25℃で約10~500,000mPa・s、又は好ましくは25℃で約50~10,000若しくは50~5,000mPa・sの動粘度を有するオイル、又は25℃で分子量が約1,000,000mPa・s以上のガム質であり得る。
【0080】
それらが環状オルガノポリシロキサンである場合、それらは、式Z2 2SiO2/2及びZ3HSiO2/2を有するシロキシル単位「D」から形成され、これらは、ジアルキルシロキシ型又は単位Z3HSiO2/2のみであり得る。その場合、粘度は約1~5,000mPa・sになる。
【0081】
線状オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bの例は、ヒドロメチルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するジメチルヒドロゲノメチルポリシロキサン、ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するジメチルヒドロゲノメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するヒドロゲノメチルポリシロキサン、及び環状ヒドロゲノメチルポリシロキサンである。
【0082】
一般式(B.3)に対応するオリゴマー及びポリマーは、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bとして特に好ましい。
【化5】
式中、
xとyは0~10,000の範囲の整数であり、
同一又は異なる記号R1は、互いに独立して次のことを表す:
・1~8個の炭素原子を含み、任意に少なくとも1つのハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖又は分岐アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3-トリフルオロプロピル;又は
・5~8個の環状炭素原子を含むシクロアルキル基。
・5~14個の炭素原子を含むアルキル部分と6~12個の炭素原子を含むアリール部分を持つアラルキル基。
【0083】
以下の化合物は、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bとして本発明に特に適している。
【化6】
a’、b’、c’、d’、及びe’は以下に定義される:
・式S1のポリマー中:
0≦a’≦150、好ましくは0≦a’≦100、さらに特には0≦a’≦20;
-1≦b’≦90、好ましくは10≦b’≦80、さらに特には30≦b’≦70、
・式S2のポリマー中:
0≦c’≦15
・式S3のポリマー中:
5≦d’≦200、好ましくは20≦d’≦100;
2≦e’≦90、好ましくは10≦e’≦70。
【0084】
触媒C
白金族の少なくとも1種の金属又は化合物からなる触媒Cはよく知られている。白金族の金属は、プラチノイドの名前で知られているものであり、この用語は、白金のほか、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムを包含する。白金及びロジウム化合物、例えば、白金及び有機生成物と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、前述の触媒を含むシリコーン樹脂粉末の錯体、式RhCl(Ph3P)3、RhCl3[S(C4923などで表されるようなロジウム化合物;テトラキス(トリフェニル)パラジウム、パラジウムブラックとトリフェニルホスフィンの混合物などが好ましく使用される。
【0085】
白金触媒は、室温で十分に迅速な架橋を可能にするために、触媒的に十分な量で使用されることが好ましいはずである。典型的には、全シリコーン組成物に対して、Pt金属の量に基づいて、1~10,000重量ppm、好ましくは1~100重量ppm、より好ましくは1~50重量ppmの触媒が使用される。
【0086】
シリカ補強充填剤D
十分に高い機械的強度を可能にするために、付加架橋シリコーン組成物に、少なくとも部分的に表面処理された補強充填剤Dとしてシリカ微粒子を含めることが有利である。沈降及びヒュームドシリカ並びにそれらの混合物を使用することができる。これらの活性補強充填剤の比表面積は、BET法に従って、少なくとも50m2/gであり、好ましくは、100~400m2/gの範囲であるべきである。この種の活性補強充填剤は、シリコーンゴムの分野で非常によく知られている材料である。記載されたシリカ充填剤は、親水性を有し得、又は既知のプロセスによって疎水化され得る。有利なことに、シリカ補強充填剤は、全体的な表面処理が施されている。これは、シリカ補強充填剤の表面の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%又は少なくとも90%、又は特に好ましくは全体に、疎水性処理がされていることが好ましいことを意味する。
【0087】
好ましい実施形態では、シリカ補強充填剤は、BET法に従って、少なくとも50m2/gであり、好ましくは、100~400m2/gの範囲の比表面積を有するヒュームドシリカである。疎水性表面処理を施したヒュームドシリカを使用することができる。疎水性表面処理を施したヒュームドシリカを使用する場合は、予備疎水性表面処理を施したヒュームドシリカを使用でき、又は、ヒュームドシリカをオルガノポリシロキサンAと混合する間に表面処理剤を添加して、ヒュームドシリカをその場で処理することができる。
【0088】
表面処理剤は、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタン酸塩ベースの処理剤、及び脂肪酸エステルなどの従来使用されている薬剤のいずれかから選択することができ、単一の処理剤又は2つ以上の処理剤の組み合わせのいずれかを使用することができる。2つ以上の処理剤を同時に又は異なるタイミングで使用することができる。
【0089】
付加架橋シリコーン組成物中のシリカ補強充填剤Dの量は、全組成物の2~40重量%、好ましくは5~35重量%、より好ましくは10~30重量%の範囲である。このブレンド量が2重量%未満の場合、十分なエラストマー強度が得られず、崩壊の著しい減少が得られない場合がある。一方、ブレンド量が40重量%を超える場合、実際のブレンドプロセスが困難になる場合がある。上記のより好ましい量は、崩壊、変形及び加工性に関してより顕著な改善につながるであろう。
【0090】
アリール基を有するオルガノポリシロキサンE
アリール基を有するオルガノポリシロキサンEは、Si原子に直接結合したアリール基を有する少なくとも1つのシロキシル単位を含むオルガノポリシロキサンである。
【0091】
好ましい実施形態では、アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが、式(E-1)のシロキシル単位を含むオルガノポリシロキサンである:
【化7】
式中、
5とR6は互いに独立して、1~30個の炭素原子と水素を含む炭化水素基から選択され、
nは1以上の整数であり、
pとqは独立して0、1、2、又は3であり、
p+q=1、2又は3であり、
ただし、前記アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが、Si原子に直接結合した少なくとも1個のアリール基を含む。
【0092】
1つの好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサンEは、実質的に式(E-1)のシロキシル単位からなる。
【0093】
好ましい実施形態では、炭化水素基は、1~24個、好ましくは1~18個、より好ましくは1~12個、例えば2~8個の炭素原子を含む。炭化水素基は、非置換であるか、1個以上のハロゲン又はアリール基で置換されている、線状、分岐状又は環状のアルキル又はアルケニル基であり得、あるいは、6~12個の炭素原子を含み、非置換であるか、1個以上のハロゲン及びC1~C6-アルキル基で置換されている、アリール基であり得る。
【0094】
オルガノポリシロキサンEは、線状、分岐状又は環状構造であり、好ましくは線状である。線状又は分岐状構造において、オルガノポリシロキサンEは、基-R又はSiR3によって終端され得る。ここで、Rは、互いに独立して、基R5及びR6に与えられた意味を持つ。当業者は、アリール基がオルガノポリシロキサンEの主鎖にぶら下がって、又は鎖の末端に末端基Rとして存在するか、又は末端基-SiR3に含まれ得ることを理解するであろう。
【0095】
好ましい実施形態において、アリール基は、非置換であるか、1つ以上のハロゲン及びC1~C6-アルキル基によって置換され得、そして6~12個の炭素原子を含み得る。より好ましくは、それらは、キシリル、トリル及びフェニル基からなる群から選択され、最も好ましくはフェニル基である。
【0096】
好ましい実施形態では、上記の式(E-1)において:
nは2以上の整数である。
【0097】
好ましい実施形態では、上記の式(E-1)において:
pとqは互いに独立して、1又は2である。
【0098】
好ましい実施形態では、上記の式(E-1)において:
基R5及びR6の少なくとも1つがアリール基であり、他は1~8個の炭素原子を含むアルキル基(好ましくはメチル又はエチル)、及び2~6個の炭素原子を含むアルケニル基(好ましくはビニル基)からなる群から選択される。
【0099】
さらに好ましい実施形態において、アリール基を有するオルガノポリシロキサンE(例えば式(E-1)のもの)は、少なくとも1個のアリール基(好ましくはフェニル基)、及び少なくとも1個のアルケニル基(好ましくはビニル基)を含む。
【0100】
さらに好ましい実施形態において、アリール基を有するオルガノポリシロキサンE(例えば式(E-1)のもの)は、少なくとも1個のアリール基(好ましくはフェニル基)、及び少なくとも1個のSiH基を含む。
【0101】
別の好ましい実施形態において、アリール基を有するオルガノポリシロキサンE(例えば式(E-1)のもの)は、少なくとも1個のアリール基(好ましくはフェニル基)、少なくとも1個のアルケニル基(好ましくはビニル基)、及び少なくとも1個のSiH基を含む。
【0102】
レオロジー特性及び相容性の改善を考慮して、特にオイルのにじみをさらに回避し、シリコーンエラストマー製品にとって非常に重要であり得る透明性を改善するために、オルガノポリシロキサンEがアリール基に加えて、少なくとも1個のアルケニル基(好ましくはビニル基)又はSiH基を含有することが有利である。あるいは、オルガノポリシロキサンEは、さらにアルケニル基とSi-H基の両方を含む。アリール基及びアルケニル基、ならびに任意に水素は、同一又は異なるSi原子に直接結合することができ、すなわち、同一又は異なるシロキシル単位に位置することができる。好ましくは、アルケニル基(より好ましくはビニル基)は、オルガノポリシロキサン鎖の末端基である。
【0103】
1つの有利な実施形態において、アリール基を有するオルガノポリシロキサンEは、基-R又はSiR3で終端される式(E-1)の上記のシロキシル単位からなるオルガノポリシロキサンを含むか、又はそれからなる。
【0104】
アリール基を有するオルガノポリシロキサンEの有用な例として、以下の式の化合物が挙げられる。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【0105】
アリール基(好ましくはアルケニル基)を有するオルガノポリシロキサンを調製する方法は、当技術分野で周知であり、例えば、CN105778102A、CN108329475A、CN106977723A、CN105778102A、CN101885845A、CN104403105A及びCN103012797Aにある。
【0106】
本発明において、シリコーン組成物は、前記シリコーン組成物の総重量に対して、0.3~30重量%、好ましくは0.8~20重量%、より好ましくは1.0~10.0重量%、最も好ましくは1.0~7.0重量%の、アリール基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンEを含む。特に、アリール基を有するオルガノポリシロキサンEが7.0重量%未満、さらには6.5重量%又は6.0重量%未満の場合、組成物の透明性をさらに所望のレベルに保つことができ、これはいくつかの用途において特に有用であり得る。
【0107】
さらに、有利には、アリール基を有するオルガノポリシロキサンEの粘度は、3~10,000,000mPa・sの範囲であり、好ましくは10~200,000mPa・sの範囲であり、例えば、50~100,000mPa・sと100,000mPa・sである。アリール基を有するオルガノポリシロキサンEは、1.405を超え、好ましくは1.41~1.6の範囲、より好ましくは1.43~1.58の屈折率を有する。
【0108】
したがって、アリール基を有するオルガノポリシロキサンEの総重量に対して、アリール基の量が、2~70重量%、好ましくは5重量~62重量%、例えば10~58重量%である。
【0109】
架橋阻害剤F
架橋阻害剤は任意成分である。しかし、それらは一般に、室温での組成物の硬化を遅らせるために架橋シリコーン組成物に加えて使用される。架橋阻害剤Fは、以下の化合物から選択することができる:
・エチニルシクロヘキサノールなどのアセチレンアルコール
・テトラメチルビニルテトラシロキサン(2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサンなど)
・ピリジン
・オルガノホスフィン及びホスファイト
・不飽和アミド
・マレイン酸アルキル
【0110】
これらのアセチレンアルコール(FR-B-1 528464及びFR-A-2 372 874を参照)は、好ましいヒドロシリル化反応熱遮断剤の1つであり、次の式を有する:
【化15】
式中、
R’は、線状又は分岐状アルキル基、又はフェニル基であり、-R”は、H又は線状若しくは分岐状アルキル基、又はフェニル基であり、ラジカルR’及びR”と三重結合に対しα位にある炭素原子は環を形成し得る。
【0111】
R’及びR”に含まれる炭素原子の総数は、少なくとも5であり、好ましくは9~20である。前記アセチレンアルコールについて、以下の例が挙げられる:
・1-エチニル-1-シクロヘキサノール
・3-メチル-1-ドデシン-3-オール
・3,7,11-トリメチル-1-ドデシン-3-オール
・1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール
・3-エチル-6-エチル-1-ノニン-3-オール
・2-メチル-3-ブチン-2-オール
・3-メチル-1-ペンタデシン-3-オール
・マレイン酸ジアリル又はマレイン酸ジアリル誘導体
【0112】
好ましい実施形態において、架橋阻害剤は、1-エチニル-1-シクロヘキサノールである。
【0113】
より長い作業時間又は「ポットライフ」を得るために、阻害剤の量は、所望の「ポットライフ」に達するように調整される。本シリコーン組成物中の触媒阻害剤の濃度は、室温での組成物の硬化を遅らせるのに十分である。この濃度は、使用する特定の阻害剤、ヒドロシリル化触媒の性質と濃度、及びオルガノヒドロゲノポリシロキサンの性質によって大きく異なる。白金族金属1モルあたり1モルの阻害剤という低い阻害剤濃度は、場合によっては、満足のいく貯蔵安定性と硬化速度をもたらす。他の例では、白金族金属1モルあたり最大500モル以上の阻害剤の阻害剤濃度が必要とされ得る。所定のシリコーン組成物中の阻害剤の最適濃度は、ルーティン実験によって容易に決定することができる。
【0114】
有利には、付加架橋シリコーン組成物中の架橋阻害剤Fの量は、シリコーン組成物の総重量に対して、0.01~2重量%、好ましくは0.03~1重量%の範囲にある。
【0115】
抑制剤の使用は、ノズルの先端のシリコーン組成物の早すぎる硬化及びその後の印刷層の変形を回避するのに効果的である。
【0116】
他の成分G
本発明によるシリコーン組成物はまた、標準的な半強化又はパッキングフィラーのような他の添加剤、ビニル基を有するシリコーン樹脂などの他の機能性シリコーン樹脂、非反応性メチルポリシロキサン、顔料、又は接着促進剤を含み得る。
【0117】
半強化又はパッキング鉱物フィラーとして含まれ得る非珪質鉱物は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水和アルミナ、炭酸カルシウム、粉砕石英、珪藻土、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、スレークライムからなる群から選択され得る。
【0118】
本発明の文脈において、全組成物中のケイ素に結合した水素原子(Si-H)とケイ素に結合したアルケニル基(例えば、Si-CH=CH2)とのモル比は、0.2~20、好ましくは0.5~15、より好ましくは0.5~10、さらにより好ましくは0.5~5である。全組成物中のSi-H及びアルケニル基は、成分A、B及びEに含まれるものを指す。
【0119】
例示的な実施形態では、組成物全体中のアルケニル単位(好ましくはビニル単位)の質量含有量は、0.001~30%、好ましくは0.01~10%である。
【0120】
別の例示的な実施形態では、組成物全体中のSiH単位の質量含有量は、0.2~91%、好ましくは0.5~80%、より好ましくは1.0~50%である。
【0121】
好ましい実施形態では、本発明のシリコーン組成物は、シリコーン組成物の100重量%あたりに、以下を含む:
・10~95重量%の少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物A;
・0.1~40重量%の少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B;
・5~35重量%の、少なくとも部分的に表面処理された少なくとも1種のシリカ補強充填剤D;
・0.8~20重量%のアリール基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンE;
・0.002~0.01重量%の触媒、例えば白金;
・0.01~2重量%の少なくとも1種の架橋阻害剤F。
【0122】
別の好ましい実施形態では、本発明のシリコーン組成物は、シリコーン組成物の100重量%あたりに、以下を含む:
・20~85重量%の少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物A;
・0.1~15重量%の少なくとも1種のオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物B;
・10~30重量%の、少なくとも部分的に表面処理された少なくとも1種のシリカ補強充填剤D;
・1.0~15重量%のアリール基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンE;
・0.0002~0.01重量%の触媒、例えば白金;
・0.01~1重量%の少なくとも1種の架橋阻害剤F。
【0123】
上記の2つの好ましい実施形態と、本出願において前述の範囲に示されている個々の量は、単なる例示であることに留意されたい。したがって、それらのそれぞれは、当業者によく理解されているように、任意の方法で任意に組み合わせることができる。
【0124】
組成特性
本方法では、付加反応によって架橋可能なシリコーン組成物は、完全に硬化する前に室温で物体の崩壊又は変形を回避するために必要な適切なレオロジー特性を示す。
【0125】
好ましくは、異なる配合に応じて2より高い、例えば3より高い、又は4より高いチキソトロピー指数を有するシリコーン組成物が、付加造形によって物品を製造するために使用される。
【0126】
好ましい実施形態では、付加反応によって架橋可能なシリコーン組成物は、800~5,000,000mPa・s、好ましくは2,000~10,000,000mPa・s、より好ましくは5,000~1,000,000mPa・sの動粘度を有する。
【0127】
シリコーン組成物の架橋は、たとえゆっくりであっても、層が印刷されるとすぐに始まる。完全に硬化する前に室温で物体が崩壊又は変形するのを防ぐために、チキソトロピー指数が上記の範囲内に収まるようにレオロジー特性を管理する必要がある。
【0128】
マルチパーツ構成
組成物は、成分AからEを単一のパーツに含む単一パーツの組成物、あるいは、成分B及びCが同じ部分に存在しないという条件で、これらの成分を2以上のパーツに含むマルチパーツ組成物であり得る。例えば、マルチパーツ組成物は、成分Aの一部及び成分Cのすべてを含む第1のパーツと、成分Aの残りの部分及び成分Bのすべてを含む第2のパーツとを含むことができる。特定の実施形態では、成分Aは第1のパーツにあり、成分Bは第1のパーツとは別の第2のパーツにあり、成分Cは第1のパーツ、第2のパーツ、及び/又は第1のパーツ及び第2のパーツとは別の第3のパーツにある。成分D、E、及びFは、成分B又はCの少なくとも1つと共にそれぞれのパーツ(又は複数のパーツ)に存在することができ、及び/又は別個のパーツ(又は複数のパーツ)に存在することができる。
【0129】
単一パーツ組成物は、通常、主成分と随意の任意成分を、室温で指定された比率で組み合わせることによって調製される。組成物を直ちに使用する場合、様々な成分の添加順序は重要ではないが、ヒドロシリル化触媒は、通常、組成物の早すぎる硬化を防ぐために、約30℃未満の温度で最後に添加される。
【0130】
また、各パーツの成分を組み合わせることにより、マルチパーツ構成を作成することができる。組み合わせは、特定の装置におけるバッチ又は連続プロセスのいずれかで、混合又は撹拌などの当技術分野で理解されている技術のいずれかによって達成することができる。特定のデバイスは、成分の粘度と最終組成物の粘度によって決められる。
【0131】
特定の実施形態では、シリコーン組成物がマルチパーツシリコーン組成物である場合、マルチパーツシリコーン組成物の別々のパーツは、印刷前及び/又は印刷中、ディスペンス印刷ノズル、例えば、デュアルディスペンス印刷ノズルで混合され得る。あるいは、別々のパーツを印刷の直前に組み合わせることができる。
【0132】
本発明の別の態様は、本発明に従って記載された方法によって製造されたシリコーンエラストマー物品である。
【0133】
本発明の別の態様は、3Dプリンター(好ましくは押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターから選択される)における、上記のようなシリコーン組成物の使用である。
【0134】
本発明の別の態様は、3Dプリンター(好ましくは押出3Dプリンター又は材料噴射3Dプリンターから選択される)を用いた、上記のような付加反応によって架橋可能なシリコーン組成物の使用である。
【実施例
【0135】
以下の例は、本発明を説明することを意図しており、本発明を限定することを意図していない。
【0136】
付加架橋シリコーン組成物は、本開示に従って、押出3Dプリンターを使用して調製及び印刷された。
【0137】
【表1-1】
【0138】
【表1-2】
【0139】
LSRベース構成
例1~34
例1では、全ての原材料を重量比に従って混合した。53.97部のビニル末端ポリジメチルシロキサンA-1と16.67部のA-2を23.07部のD-1を混合し、0.38部のF-1を加え、十分に混合した。2.27部のオルガノヒドロゲノポリシロキサンB-1、1.81部のオルガノヒドロゲノポリシロキサンB-2及び1.81部のオルガノヒドロゲノポリシロキサンB-3を添加及び撹拌し、続いて0.017部のC-1を添加して例1を得た。例10及び21は、表2-1及び2-2に示されるように、原材料の比率を変化させて、上記のプロセスに従って同様に調製された。例1、10及び21には、アリール基を有するオルガノポリシロキサンは含まれていなかった。
【0140】
例2では、全ての原材料を表2-1に示す重量比に従って混合した。53.97部のA-1と16.67部のA-2を23.07部のD-1と混合した。0.38部のF-1を加え、十分に混合した。2.27部のオルガノヒドロゲノポリシロキサンB-1、1.81部のオルガノヒドロゲノポリシロキサンB-2及び1.81部のオルガノヒドロゲノポリシロキサンB-3を加えて撹拌し、続いて0.017部のC-1及び1部のE-1で例2を得た。例3~9、例11~20、例22~35もまた、表2-1及び2-2に示されるように、原材料の比率を変化させて、上記のプロセスに従って同様に調製された。
【0141】
硬化可能な方法に基づく3D印刷プロセス
3D印刷プロセスは、ULTIMAKER2+装置を使用して実行した。例35の混合物を印刷材料として使用した。印刷プロセスは次のとおりである:
I.押出機にシリコーン材料の装填;
II.印刷プラットフォームのレベル調整と印刷パラメータ設定;
III.押出機による層ごとの印刷の開始。
【0142】
ここで、印刷のパラメータは以下のとおりである:
ノズル径:0.84mm
ノズルとプラットフォーム間の距離:0.5mm。
【0143】
印刷工程とサンプルを観察したところ、各層が滑らかに形成され、印刷された形状が非常に安定していることがわかった。
【0144】
特性評価
本発明によれば、調製されたサンプルの評価結果は、表2-1及び表2-2に記載されている。
【0145】
粘度:ASTM D445に従って、サンプル混合物の粘度を25℃でテストした。テスト条件の詳細は、表2-1及び2-2に示されている。例えば、式Viscosity-20(7#、20rpm)は、粘度がスピンドル7を使用して20rpmで測定されたことを意味し、同様にViscosity-2(7#、2rpm)は、スピンドル7を使用して2rpmで測定された粘度を意味する。
【0146】
チキソトロピー指数:チキソトロピー流体は、高速で撹拌すると低粘度になり、低速で高粘度になる。チキソトロピー指数は、室温で10倍異なる2つの速度(例えば、2及び20rpm)で粘度を測定することによって得られる。本明細書において、粘度-2と粘度-20との間の比、すなわち(粘度-2/粘度-20)は、流体が重力下でどれだけよく垂れ下がるか、又はどれだけよくたるみに抵抗するかを定義する。静止状態では流体は流れないが、剪断や圧力を受けると流れやすくなる。チキソトロピー比が高いほど、非ニュートン流体のチキソトロピーは強くなる。
【0147】
硬度:ASTM D2240に従って、硬化したサンプルの硬度を25℃でテストした。テスト条件の詳細は、表2-1及び2-2に示されている。硬化したサンプルは150℃、30分間で得られた。
【0148】
引張強度と破断点伸び:ASTM D412に従い、硬化サンプルの引張強度と破断点伸びを25℃でテストした。テスト条件の詳細は表2-1及び2-2に示されている。硬化したサンプルは150℃、30分間で得られた。
【0149】
引き裂き強度:ASTM D642に従って、硬化サンプルの引き裂き強度を25℃でテストした。テスト条件の詳細は表2に示されている。硬化したサンプルは150℃、30分間で得られた。
【0150】
透明性評価:サンプルの透明性を評価するために観察法を採用した。表2-1及び2-2では、「+」のマークが多いほど、透明度が高いことを意味する。図1に、サンプルのさまざまな透明度を示す。
【0151】
オイルのにじみの評価:サンプルを白い紙に置き、室温で1週間保持した。サンプルのにじみ現象が見られる場合は、オイルの斑点が見られる。より多くのマーク「+」は、サンプルの表面でより多くのオイルのにじみがあることを示す。したがって、「なし」のマークは、オイルのにじみが見られなかったことを意味する。
【0152】
【表2-1】
【0153】
【表2-2-1】
【0154】
【表2-2-2】
【0155】
シリコーン組成物のチキソトロピー特性を改善するために、さまざまなアリール含有オルガノポリシロキサン(ここではアルキルフェニルポリシロキサン)を使用した。上記の表からわかるように、アリール基を有するオルガノポリシロキサンの構造、粘度及び屈折率は、チキソトロピー特性に影響を及ぼす。シリコーン組成物の特定の配合物に関しては、アルキルフェニルポリシロキサンの量が増加するにつれて、チキソトロピー特性は通常より良くなる。しかし、過度に大量のアルキルフェニルポリシロキサンは、場合によっては、硬化した製品のオイルのにじみのリスクがある。好ましいアルキルフェニルポリシロキサンは、オイルのにじみを回避するための重付加反応をもたらすとともに、3D印刷のためのより良いチキソトロピー特性を維持することができるビニル及び/又はSiH基をさらに有する。
【0156】
シリコーン組成物のチキソトロピーを改善するために、異なるアルキルフェニルポリシロキサンを使用した。異なる回転速度での粘度比を使用して、チキソトロピーを評価した。チキソトロピーを、チキソトロピー液体の粘度変化に伴う剪断力の変化から導出した。チキソトロピー指数が高いほど、チキソトロピーが優れていることを意味する。表2-1によれば、例1と比較して、例6及び7は、メチルフェニルポリシロキサンE-3の添加により、より良好なチキソトロピーを示した。例12~17も、例10と比較して、同じ結果が得られた。一方、例22~25では、異なる量のメチルフェニルポリシロキサンE-3が添加されており、E-3の量の増加とともにチキソトロピーが良好になることを示している。
【0157】
場合によっては、メチルフェニルポリシロキサンは、例15のようなオイルのにじみの問題などの悪影響を与える可能性があり、これは特定の用途で不利でなる可能性がある。しかしながら、フェニル基とビニル基の両方を有するポリシロキサン(例26~35)を使用すると、オイルのにじみの問題のない良好なチキソトロピー特性が得られた。また、フェニル基とビニル基の両方を有するポリシロキサンを使用することにより、例26、27、及び31において透明な生成物を得ることができた。
図1