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特許7161631エチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-18
(45)【発行日】2022-10-26
(54)【発明の名称】エチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 4/06 20060101AFI20221019BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20221019BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20221019BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20221019BHJP
【FI】
C07C4/06
C08J11/10 ZAB
C07C11/04
C07C11/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021573357
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 CN2020129237
(87)【国際公開番号】W WO2021174910
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】202010809365.4
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521539915
【氏名又は名称】浙江科茂環境科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG COMY ENVIRONMENT TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】12-1-09, 2#Buliding No.033, 587 Lane, No.15 Juxian Road, Ningbo National Hi-Tech Industrial Development Zone Zhejiang 315100, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】辛 本恩
(72)【発明者】
【氏名】叶 宗君
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0264874(US,A1)
【文献】国際公開第2020/077187(WO,A1)
【文献】特表2019-533041(JP,A)
【文献】特表2017-512246(JP,A)
【文献】特表2019-527758(JP,A)
【文献】特開2016-117800(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103270141(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法であって、前記方法は:
S1:原料を前処理してから混合器内で過熱蒸気と混合して、均一に混合した後に触媒クラッキング反応器に入れ、触媒の作用によって、原料を高温油気と廃残渣に変え、高温油気を二段式予洗塔による降温と不純物除去を経て、軽質、重質の二種類の留分油とガス生成物を得るステップであって、前記二段式予洗塔は予熱段とデスーパーヒーティング段とを含むステップと、
S2:ステップS1における重質留分油に対し水素化反応操作を行い、軽質留分油中のオレフィン成分に対して再結合操作を行い、軽質留分油中のBTX成分を分離し軽質留分油中のアルカン成分をスチームクラッキング装置に入れるステップと、
S3:ステップS2において得られた水素化反応生成物及び再結合成物と、スチームクラッキング留分油とをステップS1の触媒クラッキング反応器に循環させて、触媒クラッキング反応器において再び選択的な触媒クラッキング反応を行うステップであって、循環総生成物量と新鮮な供給原材料との質量比は10~60:100であるステップと、
S4:ステップS1のガス生成物を前記スチームクラッキング装置に送り、メタン、エタン、エチレン、プロパンとプロピレンを分離し、エチレン、プロピレンを生成物として、エタン、プロパン及びその他のアルカンは前記スチームクラッキング装置に戻すステップと、
を含み、
以上の操作により、原料を最終的にメタン、エチレン、プロピレン、BTX生成物に変換し、エチレンとプロピレンとを合わせた収率は原料の45~75m%、芳香族炭化水素BTXの収率は原料の15~30m%であり、残りのほとんどはメタンであり
前記原料は都市混合廃プラスチック又は原油であり、
都市混合廃プラスチックを原料とする場合、前処理操作は:先ず、都市混合廃プラスチックを破砕、除鉄プロセスのうちの少なくとも一つの操作によって処理するステップと、そして、廃プラスチックを熱溶融釜に輸送し、過熱蒸気により前記熱溶融釜内の廃プラスチックを液化物に溶融して、前記熱溶融釜の底部に収集するステップであって、前記廃プラスチックを加熱して液化物に溶融する操作条件は、温度150~250℃、圧力0.01~0.5MPaであるステップと、最後に、廃プラスチック液化物を二段式予洗塔に送り、高温油気を熱源として予熱し、予熱された廃プラスチック液化物を原料として再び過熱蒸気と混合してから、触媒クラッキング反応器内に入れるステップと、を含み、
原油を原料とする場合、前処理操作は、電気脱塩、常圧分留及びブタン脱れきプロセスステップのうちの少なくとも1つの操作を含み、原油は常圧分留されてから、その抜頭油は前記スチームクラッキング装置に入ってエチレンを生産し、常圧第一ライン、常圧第二ラインは固定床水素化クラッキングプロセスを利用して航空燃料ケロシンを生産でき、残りの常圧ボトム油は触媒クラッキング反応器に入る
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記廃プラスチック液化物は予熱段とデスーパーヒーティング段を経てから、プレート毎に昇温し、塔釜に到達する際にその温度は250~320℃まで上がり、予熱された廃プラスチック液化物は、一部が混合器を通ってから触媒クラッキング反応器に入って触媒クラッキング反応が進行し、一部が熱溶融釜まで循環され戻される
ことを特徴とする請求項1に記載のエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法。
【請求項3】
前記常圧ボトム油を触媒クラッキング反応器に導入する前に、ブタン脱れきプロセスを選択し、常圧ボトム油を改質することで、原油中の重金属、アスファルテン、コロイド不純物を除去することが可能で、前記ブタン脱れき操作の温度は100~200℃、圧力は2.0~6.0MPaである
ことを特徴とする請求項1に記載のエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法。
【請求項4】
前記過熱蒸気は、窒素ガスである
ことを特徴とする請求項1に記載のエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法。
【請求項5】
前記二段式予洗塔の塔頂温度は100~200℃、圧力は0.05~0.30MPa、塔釜温度は250~320℃であり、デスーパーヒーティング段において、高温油気が過熱状態から飽和状態に冷却されると同時に、油気を帯びた粉塵は洗浄によって除去され、塔釜において重質留分油が得られ、塔頂油気を熱交換して冷却してから三相分離器に入れ、タンク底部から軽質留分油が出て、タンク頂部から不凝縮ガス生成物が出る
ことを特徴とする請求項1に記載のエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法。
【請求項6】
前記ステップS1において、前記触媒クラッキング反応器の操作条件は:反応温度300~600℃、反応圧力0.05~0.5MPa、触媒/油重量比6~12、空間速度0.1~30h-1であり、前記触媒クラッキング反応器内の触媒は分子篩触媒であり、前記分子篩触媒は、ZSM5、ZSM35、BETA、USY分子篩のいずれか一つ又はこれらの修飾物であり、前記触媒クラッキング反応器は、固定流動床又は循環流動床のうちの一つ、又はそれらの組み合わせである
ことを特徴とする請求項1に記載のエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法。
【請求項7】
前記ステップS2において、前記再結合反応はオリゴメリゼーション反応器において行われ、その操作条件は:反応温度40~200℃、反応圧力0.5~6.0MPa、空間速度0.1~6h-1である
ことを特徴とする請求項1に記載のエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン又はプロピレンの生産技術の分野に属し、具体的には、エチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法に関する。同時に、本発明は固形廃棄物の処理及び利用技術の分野にも属し、具体的には生活系ごみと産業廃棄物から廃プラスチックを化学的に回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチームクラッキングによるエチレンの生産は、その伝統的な原料はずっとナフサに限定されている。ナフサ資源に限りがある上に、一部のナフサは改質装置に入って芳香族炭化水素を生産しなければならないため、原料の有限性はずっとエチレンの生産能力を制約している。スチームクラッキング原料をいかに大量に広げられるかがエチレン生産量を解決するための鍵の一つである。
【0003】
プラスチックは紡績産業、家電産業、建設産業、自動車産業、農業など、様々な産業で広く利用されており、プラスチック製品の消費量が増大するにつれて、廃プラスチックも増え続けている。現在、我が国の廃プラスチックは主にプラスチックフィルム、プラスチック糸と編み物、発泡プラスチック、プラスチック包装箱と容器、日用プラスチック製品、プラスチック袋と農業用マルチフィルムなどである。
【0004】
金属の回収と比べて、プラスチック回収の最大課題は機械による自動分別が難しく、工程に多くの人手がかかることである。プラスチックのリサイクル率は一般的に低く、膨大な資源が浪費されているが、大量のプラスチック製品の使用により発生したごみは、埋立、焼却などの方法で処理すれば深刻な環境汚染問題を引き起こす。
【0005】
このため、廃プラスチックやその他の石油製品を原料としてエチレン又はプロピレンの生産を最大化する生産方法の提供が急務となっている。
【発明の概要】
【0006】
本願に開示されるエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法は以下のステップを含む:
S1:原料を前処理してから混合器内で過熱蒸気と混合して、均一に混合した後に触媒クラッキング反応器に入れ、触媒の作用によって、原料を高温油気と廃残渣に変え、高温油気は予熱段とデスーパーヒーティング段とを含む二段式予洗塔による降温と不純物除去を経て、軽質、重質の二種類の留分油とガス生成物などの生成物を得る。
【0007】
S2:ステップS1における重質留分油に対し水素化反応操作を行い、軽質留分油中のオレフィン成分に対して再結合操作を行い、そのBTX成分を分離して、生成物の一つとし、そのアルカン成分をスチームクラッキング装置に入れる。
【0008】
S3:ステップS2において得られた水素化及び再結合反応の生成物と、スチームクラッキング留分油とをステップS1の触媒クラッキング反応器に循環させて、触媒クラッキング反応器において再び選択的な触媒クラッキング反応を行い、循環総生成物量と新鮮な供給原材料との質量比は10~60:100である。
【0009】
S4:ステップS1のガス生成物をスチームクラッキング装置に送り、メタン、エタン、エチレン、プロパンとプロピレンなどを集中的に分離し、エチレン、プロピレンを生成物として、エタン、プロパン、ブタン及びその他のアルカンなどはスチームクラッキング装置に戻す。
【0010】
以上の操作により、原料を最終的にメタン、エチレン、プロピレン、BTXなどの生成物に変換し、エチレンとプロピレンとを合わせた収率が原料の45~75m%、芳香族炭化水素BTXの収率が原料の15~30m%であり、残りがメタンである。
【0011】
触媒クラッキング反応の最大の特徴は、その生成物が選択可能ということである。生成物としてエチレンの生産を最大化するのであれば、上記触媒クラッキング反応の主な生成物はまずプロパンとブタンであり、その収率は原料の約60m%以上であり、プロパンとブタンに対してさらにスチームクラッキングを行ってエチレンを生成すれば、生産が最大化されたエチレンを得る。生成物としてプロピレンの生産を最大化するのであれば、上記触媒クラッキング反応の主な生成物はプロピレンであり、その収率は原料の約40m%以上であり、この場合、プロパン及びブタンをスチームクラッキングする収率は原料の約10~20m%である。これにより分かるように、触媒クラッキングプロセスは主に、プラスチック油(又はそれを廃プラスチック液化物と呼ぶ)、常圧ボトム油などの原料をプロピレンとBTX、或いはプロパンとBTXに変換する役割を果たす。一方、スチームクラッキングプロセスは主に、抜頭油及び触媒クラッキングによって生成されたプロパン、ブタンなどのアルカンを主としてエチレンに変換する役割を果たす。なお、スチームクラッキングによって生成される分解ガソリンなどの液相生成物を触媒クラッキング反応器に戻して再分留する。
【0012】
当業者は、以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付図面を参照することによって、本開示のこれら及び他の特徴、利点、及び目的をさらに理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】都市混合廃プラスチックを原料として前処理、熱溶融、触媒クラッキングなどの処理ステップを行うプロセスフローチャートである。
図2】原油を原料として前処理及び触媒クラッキング処理ステップを行うプロセスフローチャートである。
図3】反応中間生成物に対してアルカンのスチームクラッキングを行ってエチレン及び/又はプロピレンを生成するプロセスフローチャートである。
図4】軽質留分油に対してオレフィン再結合操作を行うプロセスフローチャートである。
図5】重質留分油に対して水素化反応を行うプロセスフローチャートである。
図6図1における二段式予洗塔を示す構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本文書において、例えば第1、第2、第3、1#、2#、3#などの関係用語は、一つの原料、生成物、機器又はユニットの操作を別の原料、生成物、機器又はユニットの操作から区別するためにのみ使用され、そのような原料、生成物、機器又はユニットの操作間の実際のこのような関係又は順序を要求又は暗示するとは限らない。用語「含む」、「備える」又はそれらの任意の他の変形は、非排他的包含をカバーし、これにより、記載されたステッププロセスにおける装置を含むのは、それらの素子だけでなく、明示的に記載されていない他の素子も含むことができることを意図している。
【0015】
本文で使用されるように、用語「及び/又は」は、二つ以上の項目のリストに使用される場合、記載された項目のうちのいずれか一つのみが使用されてもよく、又は、記載されたアイテムのうちの二つ以上の任意の組み合わせのみが使用されてもよいことを意味する。例えば、原料又は生成物が成分A及び/又は成分Bを含むように記載されている場合には、原料又はこの生成物はA又はBのいずれかのみを含んでもよく、A及びBを組み合わせて使用してもよい。
【0016】
これから図1を参照して説明し、少なくとも一つの実施例のエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法において、エチレン又はプロピレンの生産を最大化するプロセスにおいて、都市混合廃プラスチックを原料とする。都市混合廃プラスチックの主成分はポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、発泡ポリスチレン(PSF)、ポリ塩化ビニル(PVC)などである。プラスチックは石油化学工業の生成物であるため、化学構造及び含有成分から見て、プラスチックは高分子炭化水素化合物であり、高分子化合物の炭素-水素結合の切断分解と分離操作によって、ほとんどのプラスチック生産の原料であるエチレン又はプロピレン生成物に再び変換することができる。廃プラスチックからエチレン又はプロピレンの最大化生産の前に、まず、廃プラスチックに対して、破砕プロセス、除鉄プロセスの少なくとも一つを含む前処理操作を行う。破砕操作は、破砕装置101を使用して、廃プラスチック原料を破砕装置101に輸送し、砕片の大きさが適度で且つ均一に分布する廃プラスチック砕片を得るために、異なるプラスチック原料の特性に応じて、異なる破砕機又は粉砕機、又はその両方の組み合わせの方法を利用する必要がある。フィルム類、包装袋などの軟質プラスチックの場合、破砕機を選用してそれを破砕し、電器の筐体類などの硬質プラスチックの場合、粉砕機を選用してそれを粉砕する。除鉄操作は、主としてパイプ除鉄器102による含鉄不純物の磁気による除去を行うことにより、後続の廃プラスチック分解反応に対する含鉄不純物の影響を低減する。都市混合廃プラスチック原料に含まれる含鉄不純物が少なく、或いは既に除鉄処理済みであれば、除鉄ステップを省いてもよいことは理解できるであろう。破砕及び/又は除鉄操作を行った後の廃プラスチックを、輸送機械により直接熱溶融釜1に輸送して熱溶融処理を行うことができる。
【0017】
次に、熱溶融釜1内に輸送された廃プラスチックを、過熱蒸気により液化物(プラスチック油)に溶融して、前記熱溶融釜1の底部に収集する。前記廃プラスチックを加熱して液化物に溶融する操作条件は、温度が200~300℃で、圧力が0.01~0.5MPaである。加熱溶融後の廃プラスチックをプラスチック油に変換して、図6に示すように、予熱段2001とデスーパーヒーティング段2002とからなる二段式予洗塔2の塔頂に、1#移送ポンプ103により搬送する。前記二段式予洗塔2は、触媒クラッキング反応器4出口の高温油気を熱源としてプラスチック油を予熱し、前記高温油気の温度は450~550℃で、前記プラスチック油は予熱段2001とデスーパーヒーティング段2002を経てから、プレート毎に昇温し、塔釜部に到達する際にその温度は250~320℃まで上がる。予熱されたプラスチック油は、一部が2#移送ポンプ202によって混合器3に輸送され、過熱蒸気と均一に混合された後、触媒クラッキング反応器4に入り、一部が1#循環ポンプ203によって熱溶融釜1内に循環して、新鮮な原料と混合されることで、新鮮な原料の温度を上昇させ、熱溶融釜1のエネルギー消費を低減する。
【0018】
少なくとも一つの実施例において、前記熱溶融釜1の中間段にはフィルタ素子が配置され、前記熱溶融釜1のタンク本体には、不活性過熱媒体入口、不活性過熱媒体出口、液体出口及び固体出口がさらに設けられている。前記不活性過熱媒体入口及び不活性過熱媒体出口は、過熱蒸気の流入及び排出のために前記熱溶融釜1のタンク底部及びタンク頂部にそれぞれ設けられ、排出蒸気及びその一部の低分子ガス生成物が混合器3に輸送され、予熱されたプラスチック油と均一に混合される。新鮮な廃プラスチック砕片は、材料投入口からフィルタ素子上に入り、蒸気によって加熱溶融されることでプラスチック油となり、このプラスチック油は熱溶融釜1の底部に収集され、液体出口から排出可能である。排出されたプラスチック油の一部は、予熱されてから、還流口を通してフィルタ素子上に戻され、新鮮な原料と混合される。液化できなかった非プラスチックごみは、フィルタ素子の上部空間に滞留し、固体出口から外部に移送することもできる。
【0019】
混合器3で混合されたプラスチック油は、触媒クラッキング反応器4に入り、触媒の作用の下で、プラスチック油は高温油気と廃残渣に変化する。前記触媒クラッキング反応器4の操作条件は:反応温度300~600℃、反応圧力0.05~0.5MPa、触媒/油重量比6~12、空間速度0.1~30h-1である。前記触媒クラッキング反応器4内の触媒は分子篩触媒であり、前記分子篩触媒は、ZSM5、ZSM35、BETA、USY等の分子篩のいずれか一つ又はこれらの修飾物である。前記触媒クラッキング反応器4は、固定流動床又は循環流動床のうちの一つ、又はそれらの組み合わせを選用することができる。前記廃残渣は触媒クラッキング反応器4内に残留し、過熱蒸気を導入して吹き飛ばすことによって、廃残渣を触媒クラッキング反応器4の外に排出する。
【0020】
触媒クラッキング反応器4から排出された高温油気は、二段式予洗塔2による降温及び不純物除去を経て、軽質、重質の二種類の留分油とガス生成物などの生成物を得る。前記二段式予洗塔2の塔頂温度は100~200℃、圧力は0.05~0.30MPa、塔釜温度は250~320℃である。デスーパーヒーティング段2002において、高温油気が過熱状態から飽和状態に冷却されると同時に、油気が帯びた粉塵は洗浄によって除去され、塔釜において重質留分油が得られる。前処理された都市混合廃プラスチックのみを原料として触媒クラッキング反応を行うと、塔釜から得られる重質留分油の生産量が少なく、ひいては無視できるほどであり、高温油気は主に塔頂油気を主とする。降温及び不純物除去後の塔頂油気が熱交換して冷却されてから三相分離器201に入り、タンク底から軽質留分油が出て、タンク頂部から不凝縮ガス生成物が出て、タンク本体内には少量の汚水が残り、前記軽質留分油は下流のオリゴメリゼーション反応器21に輸送され、不凝縮ガス生成物は下流のスチームクラッキング装置16に輸送される。
【0021】
図2の方を参照し、少なくとも一つの実施例のエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法において、エチレン又はプロピレンの生産を最大化するプロセスにおいて、原油を原料とする。原油からエチレン又はプロピレンの最大化生産の前に、まず、原油に対して、前処理操作を行う。原油を原料とする場合、前記前処理操作は、電気脱塩、常圧分留及びブタン脱れき等のプロセスステップのうちの少なくとも一つの操作を含み、原油は常圧塔6を通って常圧分留され、その塔頂抜頭油は下流のスチームクラッキング装置16に入ってエチレンを大量生産し、サイド抜出の常圧第一ラインと常圧第二ラインの方は1#水素化反応器8内において固定床水素化クラッキングプロセスを利用して航空ケロシンを生産し、残りの常圧ボトム油は触媒クラッキング反応器4に入る。前記常圧ボトム油を触媒クラッキング反応器4に導入する前に、ブタン脱れき塔7内でブタン脱れきプロセスを行い、常圧ボトム油を改質することで、原油に含まれる重金属、アスファルテン、コロイド等の不純物を除去する。前記ブタン脱れき操作の温度は250~350℃、圧力は0.5~1.2MPaである。
【0022】
改質された常圧ボトム油は、4#移送ポンプ1101により混合器3に輸送され、他の材料と均一に混合されてから、触媒クラッキング反応器4に入り、触媒の作用の下で、プラスチック油は高温油気や廃残渣に変化する。前記触媒クラッキング反応器4の操作条件は:反応温度300~600℃、反応圧力0.05~0.5MPa、触媒/油重量比6~12、空間速度0.1~30h-1である。前記触媒クラッキング反応器4内の触媒は分子篩触媒であり、前記分子篩触媒は、ZSM5、ZSM35、BETA、USY等の分子篩のいずれか一つ又はこれらの修飾物である。前記触媒クラッキング反応器4は、固定流動床又は循環流動床のうちの一つ、又はそれらの組み合わせを選用することができる。前記廃残渣は触媒クラッキング反応器4内に残留し、過熱蒸気を導入して吹き飛ばすことによって、廃残渣を触媒クラッキング反応器4の外に排出する。
【0023】
前記高温油気を二段式予洗塔2内に輸送して分離し、軽質、重質の二種類の留分油とガス生成物などの生成物を得る。二段式予洗塔2の塔底と塔頂にそれぞれ外部循環冷却装置が設置され、塔底外部循環冷却装置は2#循環ポンプ204と1#冷却器205によって構成され、塔頂外部循環冷却装置は3#循環ポンプ206と2#冷却器207によって構成される。前記二段式予洗塔2の塔頂温度は100~200℃、圧力は0.05~0.30MPa、塔釜温度は250~320℃である。高温油気が二段式予洗塔2を通ると、過熱状態から飽和状態まで冷却され、塔釜では重質留分油が得られ、塔頂では油気成分が得られる。塔頂油気が熱交換して冷却されてから三相分離器201に入り、タンク底から軽質留分油が出て、タンク頂部から不凝縮ガス生成物が出て、タンク本体内には少量の汚水が残り、前記軽質留分油は下流のオリゴメリゼーション反応器21に輸送され、不凝縮ガス生成物は下流のスチームクラッキング装置16に輸送される。
【0024】
少なくとも一つの実施例によるエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法において、原料としては都市混合プラスチックと原油からなる混合物を使用する。上記混合物中の各成分は、上記原料の前処理方法に従ってそれぞれ前処理された後、混合器3において均一に混合されてから触媒クラッキング反応器4に入って選択的な触媒クラッキング反応を行われ、高温油気が得られる。混合物中の廃プラスチックの割合が大きい場合、前処理後の混合物の供給温度は比較的低く、高温油気を熱源として、二段式予洗塔2内において、混合物と高温油気とを直接接触させて予熱することができ、高温油気が過熱状態から飽和状態まで冷却され、二段式予洗塔2の塔釜において重質留分油が得られ、塔頂において油気成分が得られる。塔頂油気が熱交換して冷却されてから三相分離器201に入り、タンク底から軽質留分油が出て、タンク頂部から不凝縮ガス生成物が出て、タンク本体内には少量の汚水が残り、前記軽質留分油は下流のオリゴメリゼーション反応器21に輸送され、不凝縮ガス生成物は下流のスチームクラッキング装置16に輸送される。
【0025】
次に図3を参照し、不凝縮ガス生成物及び/又は抜頭油は、下流のスチームクラッキング装置16に送られて、アルカンのスチームクラッキング操作が行われる。前記スチームクラッキングの反応条件は:反応温度700~1000℃、反応圧力0.01~1.0MPa、滞留時間0.01~0.6sである。スチームクラッキング装置16の頂部においてメタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレンなどのクラッキング生成物が得られ、底部においてはスチームクラッキング留分油が得られ、このスチームクラッキング留分油が循環して触媒クラッキング反応器4内に戻され、再び選択的な触媒クラッキング反応が行われる。
【0026】
クラッキング生成物は、まず脱C塔17に輸送され、脱C操作が行われる。脱C塔17の塔頂生成物は、1#塔頂冷却器172で冷却されてから、1#二相分離器170に入って冷却分離され、分離後、一部の生成物は1#還流ポンプ171によって脱C2塔17の塔頂に戻され、一部の生成物は抽出されて脱メタン塔18に輸送される。塔底の粗プロピレン留分はプロピレン塔20に輸送されてプロピレン分離操作が行われる。脱メタン塔18の塔頂生成物は、2#塔頂冷却器182で冷却されてから、2#二相分離器180に入って冷却分離され、分離後、一部の生成物は2#還流ポンプ181によって脱メタン塔18の塔頂に戻され、一部の生成物が抽出されてメタンガスが得られる。塔底粗エチレン留分は、3#移送ポンプ183によってエチレン塔19に輸送され、エチレン分離操作が行われる。エチレン塔19の塔頂生成物は、3#塔頂冷却器192で冷却されてから、3#二相分離器190に入って冷却分離され、分離後、一部の生成物は3#還流ポンプ191によってエチレン塔19の塔頂に戻され、一部の生成物が抽出されてエチレンガスが得られる。エチレン塔19の塔底生成物はエタンで、エタンはスチームクラッキング装置16に輸送されてスチームクラッキングによるエチレン生産操作が行われる。プロピレン塔20の塔頂生成物は、4#塔頂冷却器212で冷却されてから、4#二相分離器210に入って冷却分離され、分離後、一部の生成物は4#還流ポンプ211によってプロピレン塔20の塔頂に戻され、一部の生成物が抽出されてプロピレンガスが得られる。プロピレン塔20の塔底生成物はプロパンで、プロパンはスチームクラッキング装置16に輸送されてスチームクラッキングによるエチレン生産操作が行われる。
【0027】
次に図4を参照し、軽質留分油はオリゴメリゼーション反応器21でオレフィンの再結合反応を行い、オレフィン成分は主にC-Cのオレフィンであり、前記再結合反応とはオレフィンのオリゴメリゼーション反応プロセスを指す。前記再結合反応の操作条件は、反応温度40~200℃、反応圧力0.5~5.0MPa、空間速度0.1~6h-1である。再結合反応の生成物は、一部が5#循環ポンプ2101を経て、オリゴメリゼーション反応器21の入口に戻され、一部が再結合生成物精留塔22で分離されてから、塔頂においてBTX(Benzene Toluene Xylene、即ちベンゼン・トルエン・キシレン混合物)副生成物が得られ、塔底において、再結合生成物が触媒クラッキング反応器4内に循環されて戻される。
【0028】
次に図5を参照し、重質留分油は、1#予熱器901で予熱されてから、2#水素化反応器9内に輸送されて水素化操作が行われ、水素化生成物は、冷却されてから高圧分離器10に送られ、高圧分離器10の頂部は未反応の水素ガスであり、前記未反応の水素ガスは圧縮機15で圧縮されてから、一部が2#水素化反応器9内に戻され、一部が供給された重質留分油と混合される。一方、高圧分離器10の底部生成物は、低圧分離器11、アルカリ洗浄器12、水洗浄器13を順に経て、底部生成物の洗浄操作を行われてから、2#予熱器1301によって昇温してから、水素化生成物精留塔14に通されて精留操作を行われ、塔底生成物は4#循環ポンプ1401によって循環されて2#水素化反応器9に戻され、塔頂生成物は触媒クラッキング反応器4に循環されて戻される。
【0029】
2#水素化反応器9の反応条件は反応温度300~550℃、反応圧力10.0~30.0MPa、空間速度0.1~3h-1である。
【0030】
前記高圧分離器10と低圧分離器11の操作圧力は0.1~20.0MPaである。
【0031】
前記アルカリ洗浄器12及び水洗浄器13の操作圧力は0.1~0.5MPaである。
【0032】
前記水素化生成物精留塔14の操作条件は圧力0.1~0.2MPa、温度100~200℃である。
【0033】
少なくとも一つの実施例において、前記過熱蒸気は温度が450~550℃で、圧力が0.2~0.5MPaである。前記過熱蒸気はまた、例えば窒素ガスなどの他の過熱不活性媒体を選用してもよい。
【0034】
上記スチームクラッキング留分油、再結合生成物、水素化反応生成物は、触媒クラッキング反応器4に循環されて戻され、再びの選択的触媒クラッキング反応を行われ、循環総生成物量と新鮮な供給原材料との質量比は10~60:100である。
【0035】
少なくとも一つの実施例において、上記触媒クラッキング反応の最大の特徴は、その生成物が選択可能であるということである。生成物としてエチレンの生産を最大化するのであれば、上記触媒クラッキング反応の主な生成物はまずプロパンとブタンであり、その収率は原料の約60m%以上であり、プロパンとブタンに対してさらにスチームクラッキングを行ってエチレンを生成すれば、生産が最大化されたエチレンを得る。生成物としてプロピレンの生産を最大化するのであれば、上記触媒クラッキング反応の主な生成物はプロピレンであり、その収率は原料の約40m%以上であり、この場合、プロパン及びブタンをスチームクラッキングする収率は原料の約10~20m%である。これにより分かるように、触媒クラッキングプロセスは、プラスチック油(又はそれを廃プラスチック液化物と呼ぶ)、常圧ボトム油などをプロピレンとBTX、或いはプロパンとBTXに変換する役割を果たす。一方、スチームクラッキングプロセスは、抜頭油及び触媒クラッキングによって生成されたプロパン、ブタンなどのアルカンを主としてエチレンに変換する役割を果たす。なお、スチームクラッキングによって生成される分解ガソリンなどの液相生成物を触媒クラッキング反応器4に戻して再分留する。
【0036】
以上の操作により、原料を最終的にメタン、エチレン、プロピレン、BTXなどの生成物に変換し、エチレンとプロピレンとを合わせた収率が原料の45~75m%、芳香族炭化水素BTXの収率が原料の15~30m%であり、残りがメタンである。
【0037】
再び図1図2を参照し、触媒クラッキング反応がある時間行ってから、触媒クラッキング反応器4内の触媒が炭素析出により失活し、この時点で触媒を再生する。主に以下のステップを含む:触媒は、触媒アンロードラインを通って触媒クラッキング反応器4から出て、バッファタンク501内に収集され、前記バッファタンク501内に蒸気が導入されてスチームストリッピングされ、触媒に付いた油気が除去される。その後、触媒は再生器5に移送される。前記再生器5内に過熱媒体と適量の空気を導入することにより、触媒上に析出した炭素をCOとHOに変換し、触媒の活性を徐々に回復させることができる。再生後の触媒を触媒クラッキング反応器4上方の触媒添加タンク502に移送し、再生触媒の移送完了後に触媒添加タンク502内の圧力を触媒クラッキング反応器4内の圧力よりも0.1~0.2MPa高く上昇させ、圧力差と重力の作用により、触媒を再び触媒クラッキング反応器4内に入らせる。
【0038】
再生後に触媒を再利用することが可能である。触媒は複数回も循環可能であり、再生熱源としては例えば蒸気、窒素ガスなどの過熱媒体を使用することができる。再生時には、過熱媒体に一定量の空気を通さなければならない。触媒クラッキング反応器4として流動床を反応器として選択した場合、反応器と再生器5との間で触媒を連続的に循環させ、再生器5内には空気を直接導入する。
【0039】
少なくとも一つの具体的な実施例において、表1及び表2に示すように、異なる原料組成でプロピレン又はエチレンの生産を最大化するプロセスの操作条件及び生成物の分布状況が記載されている。
【0040】
表1
*****t1
【0041】


表2
*****t2
【0042】
これにより分かるように、本願に開示されたエチレン又はプロピレンの生産を最大化する方法によれば、化学生成物の収率が従来使用されている精油プロセスの組み合わせより明らかに高く、そのエチレンとプロピレンとを合わせた収率は原料の45~75m%であり、産業においてプラスチックを製造する原料として循環利用することができる。また、プロセス全体において芳香族炭化水素BTXが副生し、芳香族炭化水素の収率は原料の15~30m%であるが、副生するメタンとコークスの収率は低い。
【0043】
本願で開示されたエチレン又はプロピレンの製造を最大化する方法は、原油を触媒クラッキング反応の原料として、高価値のエチレン、プロピレン及びBTX原料の生産を最大化することができるだけではなく、さらに、都市混合廃プラスチックを原料として、廃プラスチックに対して対応の前処理を行うことで、高価値のエチレン、プロピレン及びBTX原料の生産を最大化することができ、著しい経済的、社会的効果と利益をもたらす。
【0044】
以上では、本発明の基本原理、主な特徴及び本発明の長所を開示及び説明した。当業者であれば、本発明は上記実施例に制限されず、上記実施例及び明細書で説明したのは本発明の原理であって、本考案の精神及び範囲から逸脱することを前提に、本発明はさらに様々変形及び改良を有し、これらの変化と改良は全て保護を求めようとする本発明の範囲内に含まれることは、理解できるであろう。本発明の保護を求めようとする範囲は、添付した特許請求の範囲及びその等価物によって限定される。
【符号の説明】
【0045】
熱溶融釜1、二段式洗塔2、混合器3、触媒クラッキング反応器4、再生器5、常圧塔6、ブタン脱れき塔7、1#水素化反応器8、2#水素化反応器9、高圧分離器10、低圧分離器11、アルカリ洗浄器12、水洗浄器13、水素化生成物精留塔14、圧縮機15、スチームクラッキング装置16、脱C塔17、脱メタン塔18、エチレン塔19、プロピレン塔20、オリゴメリゼーション反応器21、再結合生成物精留塔22、破砕装置101、パイプ除鉄器102、1#移送ポンプ103、三相分離器201、2#移送ポンプ202、1#循環ポンプ203、2#循環ポンプ204、1#冷却器205、3#循環ポンプ206、2#冷却器207、1#二相分離器170、1#還流ポンプ171、1#塔頂冷却器172、2#二相分離器180、2#還流ポンプ181、2#塔頂冷却器182、3#移送ポンプ183、3#二相分離器190、3#還流ポンプ191、3#塔頂冷却器192、4#二相分離器210、4#還流ポンプ211、4#塔頂冷却器212、バッファタンク501、触媒添加タンク502、1#予熱器901、4#移送ポンプ1101、2#予熱器1301、4#循環ポンプ1401、予熱段2001、デスーパーヒーティング段2002、5#循環ポンプ2101。
図1
図2
図3
図4
図5
図6